笠松泰洋
笠松 泰洋(かさまつ やすひろ、1960年1月11日 - )は、日本の作曲家。日本著作権協会正会員、日本作曲家協議会会員。駿河台大学客員教授。平成30年度文化庁文化交流使[1]。クリスタルアーツ所属。管楽器奏者としてライブハウスなど演奏活動も展開中。
来歴・人物
[編集]福井県福井市生まれ。福井市松本小学校、福井市進明中学校、福井県立藤島高等学校を経て、東京大学文学部美学芸術学科卒業。オーボエを岩崎勇、作曲を三善晃、ピアノをゴールドベルク山根美代子らに師事。
主な活動
[編集]室内楽を中心に作品を発表、弦楽四重奏曲第3・4番はウィーン弦楽四重奏団により初演され、4番は同グループのレパートリーとなる。オーケストラと朗読のための『アガメムノンとカッサンドラ』、東京佼成ウインドオーケストラの委嘱による『コントラバスとウィンドアンサンブルのためのコンチェルトグロッソ、オーケアニスの海』など大きな編成の作品も発表。
一方で、演劇、ダンスといった舞台作品に数多くの音楽を提供して、世界的に活躍する舞台人から高い信頼を得ている。
演劇の分野では、蜷川幸雄[2]や江守徹演出作品、ダンスでは森山開次[3]、平山素子[4]、加賀谷香[5]といったダンサーの作品、映像では是枝裕和[6][2]や岡崎栄[7]ら監督の作品に音楽を提供し、海外のフェスティバルで演奏・上演される。舞台で培った要素を音楽の世界に持ち込んで新しい音楽作品を作ることを1つの目標としている。
2011年より石川県立音楽堂の邦楽セクションより委嘱され「若き鼓動~芸の息吹」シリーズに参加。森山開次のダンスと和洋楽器の混声アンサンブルに寄せて作曲した『ウタウラ』『YUMEJI』『神の子勧進帳』[8]などの作品、また新国立劇場での加賀谷香構成振付の『エゴイズム』(サンセバスチャンフェスティバル参加)[5]は、新しい邦楽の可能性を示す作品として、また新しいダンスの音楽として注目を浴びる。
2003年 室内オペラ「エレクトラ三部作」発表。王子ホール委嘱シリーズを3年にわたり上演[注釈 1]、自ら台本、作曲、指揮を担当する。
2005年 民族音楽的要素の強い新オリエント楽派を結成、新作を発表する。演奏家としてもオーボエ、ズルナとメイ(トルコの民族オーボエ)を用いると、地中海地方の民族音楽の伝統を現代にアレンジした。
2009年 東京文化会館を起点に『音楽×空間』シリーズを開始。舞台性のある音楽作品に挑む。
2010年 朗読、ダンスと室内楽のための「四谷怪談」
2011年 室内オペラ「人魚姫」上演[11][注釈 2]。埼玉県立近代美術館SMF「俳句 × 音楽 × ダンス」にて演奏[12]。パソナが淡路島で進める、芸術家の独立支援と地域活性化の人材育成事業「ここから村」の舞台活動の音楽監督[13]を務める(『ONE STEP ~ここから村から始まる最初の一歩~』)。
2012年 「ネオ胡楽・桜バンド」結成し、和楽器にオリエント系の楽器が融合する新しい音楽を提唱。これは作曲家自身のオーボエにアラブパーカッション、サズ/ウード、ヴァイオリンに龍笛、薩摩琵琶を加えたもの。朗読と音楽による『耳なし芳一』等を上演。
2015年 音楽劇『星の王子さま』公共ホール共同制作(水戸芸術館等)、青木豪(台本、演出)
2017年 『神の子勧進帳』の音楽を監督。能楽「安宅」と歌舞伎「勧進帳」に取材しバレエダンサーを起用した台本を支える楽曲を三味線や笛、鳴物と西洋楽器ヴィオラとチェロで構成(石川県立音楽堂制作、森山開次振付、出演)[8]。
2018年 劇団四季「恋に落ちたシェイクスピア」の音楽を担当[14][15]。
2019年 伝統と創造シリーズvol.10 『HANAGO-花子-』(音楽・演奏)音楽監督、演奏。
主な委嘱作品
[編集]受嘱先の50音順に示す。
- 石川県立音楽堂「若き鼓動~芸の息吹」シリーズ(2011年–)
- 王子ホール「室内オペラ〈エレクトラ三部作〉」(2003年–2005年)
- 水戸芸術館等 音楽劇『星の王子さま』(2015年)公共ホール共同制作
脚注
[編集]注釈
- ^ 第2話「エレクトラ」は笠松の作曲・台本構成に岡本おさみが台本と詞を書きYOUYAが演出・振付[9]に就き、麻実れいが物語を語った。飯田みち代(ソプラノ)とダンスのYOUYAを迎える8人の演奏陣には弦楽器とピアノ、木管楽器と打楽器、ドタール(大平清)を揃えている。第3話「弟オレステスの放浪と帰還」は笠松と振付・出演の森山開次に鈴木勝秀(演出・台本)、岡本おさみ(作詞・台本協力)、白石英輔(舞台監督)が担当する[10]。
- ^ 《笠松泰洋『音楽×空間』vol.3 モノオペラ『人魚姫』中嶋彰子》は中嶋彰子が人魚姫、晴雅彦が王子ほか複数の役を演じるオペラ。2011年の公演は東京(9月14日)埼玉、兵庫県を巡った。共同演出広崎うらん、原作クリスチャン・アンデルセン、オペラ台本岩切正一郎、舞台監督白石英輔。演奏は早川りさこ(ハープ)と石亀協子(Vn)、小林玉紀(同)、青木史子(Va)、安田謙一郎(Vc)による弦楽四重奏。株式会社せきれい制作。
出典
- ^ “笠松泰洋 文化庁文化交流使 (平成30年度・長期派遣型)”. 文化庁. 2019年1月11日閲覧。
- ^ a b 是枝裕和 (2016-10-05). “第四章 演出家と語る—水田伸生、三谷幸喜、蜷川幸雄&笠松泰洋、森 達也、鴨下信一”. 世界といまを考える. PHP文庫. PHP研究所. ISBN 978-4569765693
- ^ セルリアンタワー能楽堂; 森山開次(演出・振付・出演)、酒井はな、津村禮次郎、笠松泰洋(作曲)、録音演奏〈北川綾乃(箏)、伊藤美恵(バロックハープ)、岩川光(ケーナ)、望月太満衛(囃子)、笠松(メイ)〉、新居幸治(衣裳:Eatable of Many Orders). “伝統と創造シリーズ vol.10「HANAGO-花子-」”. 東急Bunkamura. 2019年1月11日閲覧。
- ^ “平山素子「Hybrid -Rhythm & Dance」”. 新国立劇場. 2019年1月11日閲覧。
- ^ a b “加賀谷香 Dance-SHAN 「エゴイズム」—近松DANCE弐題Bプログラム2011/2012シーズン”. 新国立劇場 (2011年11月). 2019年1月11日閲覧。
- ^ ワンダフルライフ製作委員会; 是枝裕和(監督・脚本・編集)、山崎裕(照明)、佐藤譲(撮影)、笠松泰洋(音楽)ほか (1998年). “ワンダフルライフ”. BANDAI NAMCO. 2019年1月11日閲覧。
- ^ 岡崎栄(監督); 笠松泰洋(音楽)、出演〈津川雅彦、渡辺美佐子、石原さとみ〉. “ザ・プレミアム「スペシャルドラマ戦艦武蔵」”. NHK. 2019年1月11日閲覧。
- ^ a b “神の子勧進帳 (初演委嘱)”. 邦楽ルネッサンス 第2部 世界的コンテンポラリーダンサー森山開次の世界 vol. 5. 石川県立音楽堂. 2019年1月11日閲覧。
- ^ “ギリシャ劇「エレクトラ3部作」<アトレウス家の崩壊と再生>第2話「エレクトラ」”. 王子ホール (2004年7月15日). 2019年1月11日閲覧。
- ^ “ギリシャ劇「エレクトラ3部作」<アトレウス家の崩壊と再生>第3話「弟オレステスの放浪と帰還」”. 王子ホール (2005年7月14日). 2019年1月11日閲覧。
- ^ “インタビュー@クラシック:笠松泰洋(作曲/演出)”. クラシック・ニュース (2011年9月11日). 2017年3月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年1月11日閲覧。
- ^ “SMFアートラボ”. サイタマ・ミューズ・フォーラム. 2023年11月21日閲覧。
- ^ “若者150名が地域の活性化を目指してオリジナルショーを開催『ONE STEP ~ここから村から始まる最初の一歩~』 ~兵庫県淡路島にて12月17日(土)、18日(日)開催~”. パソナグループ (2011年12月6日). 2017年9月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年1月11日閲覧。
- ^ “【更新】新作海外ストレートプレイ『恋におちたシェイクスピア』上演決定!2018年6月東京を皮切りに、京都・福岡を巡演”. 劇団四季 (2017年11月14日). 2019年1月11日閲覧。
- ^ “劇団四季、新たな風を求めて 12年ぶり新作台詞劇「恋におちたシェイクスピア」”. 朝日新聞. (2018年7月28日)