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福島原子力人材開発センター

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

福島原子力人材開発センター(ふくしまげんしりょくじんざいかいはつセンター)とは東京電力が原子力関係保修技術者の養成、訓練を目的に設置した組織、施設である。活動拠点を福島県に所在する原子力発電所に置き、保有施設は社外の下請業者にも使用している。

概要

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1978年(1977年8月とする報道もある[1])に福島第一原子力発電所内に設置された[2]

主な目的は被曝軽減の3原則[3]を作業に織り込むため、作業者の熟練化を促進することにある。『原子力の周辺』ではCRD(制御棒駆動装置)の交換作業訓練が紹介されている。この作業は東芝系列の作業員10数名でチームを組み、訓練所内に設置された実物大模型にて実施していた。作業場である原子炉圧力容器の底面とその下の足場の間は1.5mしかなく、CRDを固定する8本のボルトレンチで外している。2号機を例にとるとCRDは137本あり、1回の定期検査で約30本を交換しているという[4]

なお、同訓練所は原子力訓練センターに改称、1982年度より施設を大幅に拡充(約2倍)した。1982年に新設されたのは2棟で、放射線計測、超音波探傷機器を設備し、完成は1983年9月を予定し、保修に使用する特殊工具の開発拠点として計画した[1]

本施設は1982年に福島第二原子力発電所が運転を開始した後同発電所構内にも拠点を持つ。また日本原子力技術協会による保全技量認定指定試験組織の一つである[5]。2005年10月「福島原子力人材開発センター」に改組した[6]

訓練内容

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研修は集合研修の形で、社内外より講師を選任して机上講義、実技訓練を実施する。同センターで実施している技能訓練は『エネルギーレビュー』1996年5月号によると下記のようになっている。

技能訓練センター主要設備、訓練項目(1996年当時)[7]
設備 訓練項目
原子炉模擬設備 ・圧力容器及び原子炉ウェル
・燃料取替機
・炉内構造物各種[8]
・燃料取替作業
・制御棒取替作業
・LPRM[9]取替作業
・ジェットポンプ
・その他炉内作業
・圧力容器ペデスタル
・CRD、CRD交換プラットフォーム
・SRM[10]、IRM[11]駆動機構
・CRD洗浄分解水槽、作業架台
・CRD取外、取付作業
・CRD分解、組立作業
・SRM、IRM駆動機構点検作業

機械関係設備 ・各種ポンプ ・ポンプ分解、点検、手入れ、センタリング、試運転
・各種弁 分解、点検、手入れ、ディスクシート摺合せ、グランドパッキン取替
・原子炉再循環ポンプメカニカルシール ・メカニカルシール取替、分解組立、漏洩率、耐圧試験
・非破壊検査設備 ・非破壊検査
溶接 ・溶接機取扱い
電気・計装設備 ・屋内形高圧閉鎖配電盤 遮断器の構造、分解点検及び機能試験
・480Vパワーセンター[12] ・遮断器の構造、分解点検及び機能試験
電動機 ・電動機の構造、分解点検及び機能試験
・静止型無停電電源装置(CVCF) ・CVCF機能試験
ブラシモックアップ装置 ・ブラシの取替
・発電機保護継電器 ・継電器特性試験、校正
・電気油圧タービン制御(EHC)盤 ・タービン制御系特性試験、基板調整
・タービン監視装置 ・タービン監視計器の点検、校正
・中性子計装盤 ・中性子計装系特性試験、基板調整
・タービン監視装置 ・タービン監視計器の点検、校正
・中性子計装盤 ・中性子計装系特性試験、基板調整
・給水制御盤 ・給水制御系特性試験、演算器点検、校正
シーケンス、コントローラ盤 ・ロジックローダー取扱い、プログラム作成、変更
計装ラック ・計装器点検、校正
・分析計ラック ・分解、点検、校正
放射線関係設備 ・放射線計器(サーベイメータ) ・計測器の取扱い、分解、点検、校正
・全面マスク、セルフエアーセット、フードマスク ・各マスクの適用基準と取扱い
・水質測定機器(導電率計、蛍光光度計分光光度計、pH計) ・水質測定器の取扱い
モニタリングポスト ・モニタリングポストの構造、取扱い

脚注

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  1. ^ a b 「東電、福島第1原発の原子力訓練センターを拡充 技術進歩に対応、下請け含め訓練」『日経産業新聞』1982年5月22日3面
  2. ^ 座談会 1978, pp. 6.
  3. ^ 被曝軽減の3原則とは当時次の原則を指していた。「放射線源に対して距離を保つ」「線源を遮蔽する」「線源付近(放射線管理区域内)での作業時間を短縮する」
    とうでん編集部(別冊) 『原子力の周辺』 東京電力〈『社報』別冊〉、1979年3月P59
  4. ^ とうでん編集部(別冊) 1979, pp. 60–61「満身の力を込めて」
  5. ^ 保全技量認定 指定試験組織 日本原子力技術協会(平成24年4月2日現在)
  6. ^ 参考3-2_福島原子力人材開発センター技能訓練棟 『原子力発電所の安全確保について』内 東京電力 2010年2月(スライド22ページ)
  7. ^ 平田秀雄 1996, p. 18.
  8. ^ シュラウド、上部格子板、炉心支持板、燃料集合体、制御棒、局部出力モニタ、ジェットポンプ
  9. ^ LPRMとは局部出力領域モニタのこと。運転中炉内の中性子の計測に使用する核計装品の一種
  10. ^ 中性子源領域検出器のこと。原子炉停止時、起動時に炉内の中性子量を計測するのに使用する。
  11. ^ Intermediate Range Monitor(中間領域検出器)の略。原子炉の起動及び停止時に炉内の中性子量を監視するのに使用するのはSRMと同じだが、中性子量が3桁ほど増加してくるとSRMで計測不能となるため中間領域と呼ばれる中性子量の範囲ではIRMで計測する。
  12. ^ パワーセンターとはP/Cとも呼ばれ、高圧配電盤から受電した電力を480Vまで降圧し、遮断器を介してMCC(モーターコントロールセンター)などの所内機器に電力を供給する。④パワーセンター(P/C) 原子力安全・保安院による解説

参考文献

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  • 座談会「原子力開発の最前線で~大切なのは忍耐と努力~」『とうでん : 東京電力社報』第324巻、東京電力、1978年6月、2-12頁。 
  • 平田秀雄「運転員及び技術系社員の教育と訓練」『エネルギーレビュー』、エネルギーレビューセンター、1996年5月、17-19頁。 

関連項目

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