登山鉄道
登山鉄道(とざんてつどう)とは、急峻な山岳の勾配を登り降りする鉄道路線の通称。
「登山鉄道」という決められた定義があるわけではないが、ラック式鉄道やケーブルカー、一般の鉄道・軌道において山岳地で連続する勾配や急曲線を通過するために特殊な構造・装備を持つ鉄道車両のみが走行できる路線、またはそうした路線を経営する会社の名に、しばしば使われている。また路線名や社名にはなくても、鉄道路線のなかでも特に険しい条件が絡む山岳路線を指すこともある。ここではその両者について「登山鉄道」と呼ぶことにする。
なお、リニアインダクションモーター推進方式を採用する一部の地下鉄[* 1][1]や、モノレールやトロリーバスなど鉄の車輪とレールを使用しない鉄道には、50‰(パーミル)以上の勾配を持つものがほかにも多くあり、スカイレールサービス広島短距離交通瀬野線のように、勾配が263‰に達するものまであるが、これらは普通は登山鉄道とみなされない。
概要
[編集]日本では普通の鉄道で越えられる勾配は最大で35‰と決められていて、これを超える勾配区間は特認扱いとなる。特に50‰を超える路線を走る車両は、ブレーキなどに特殊な装備を施している。
粘着方式で走行できるのは短編成で済む区間なら80‰程度(海外では例外的に100‰程度の例もある)までで、これ以上の勾配や長大編成となる区間はラックレールなどの特殊な装備を敷設する。
登山鉄道(ケーブルカー)一覧
[編集]登山鉄道(一般の鉄軌道)一覧
[編集]勾配が50‰以上の(地下鉄以外の)鉄道路線。「Category:登山鉄道」も参照のこと。それ以外は「山岳鉄道」を参照。()内は最急勾配。
- 日本国内
- ▲印の事業者は「全国登山鉄道‰会(ぜんこくとざんてつどうパーミルかい)」を構成している。本表以外では富士山麓電気鉄道(富士急行線:最急勾配40‰)とアルピコ交通が加盟、共同で登山鉄道のアピールを行っている[2]。
- ☆印は鉄道事業法・軌道法や旧地方鉄道法に準拠しない鉄道。
- 関東地方
- 中部地方
- 関西地方
- 中国地方
- 尾道鉄道(50‰、廃止)
- 日本国外
- 著名なもののみ。「山岳鉄道」も参照。
- ダージリン・ヒマラヤ鉄道(インド、粘着式、世界遺産)
- ネロベルク登山鉄道(ドイツ、水を利用したケーブルカー)
- レーティッシュ鉄道(スイス、72‰、粘着式、世界遺産)
- ユングフラウ鉄道(スイス、250‰、ラック式。終点は海抜3454メートルでヨーロッパ最高所の駅)
- ピラトゥス鉄道(スイス、480‰、ラック式。自走型の鉄道で世界最急)
- ブリエンツ・ロートホルン鉄道(スイス、250‰、ラック式)
- ゴルナーグラート鉄道(スイス、200‰、ラック式。終点は海抜3089メートル)
- ペストリングベルク鉄道(オーストリア、105‰。粘着式でヨーロッパ最急)
- 阿里山森林鉄路(祝山線は標高2451m、57‰、粘着式)
- コグ鉄道(アメリカ合衆国、374‰、ラック式。世界最古の歯車式登山鉄道。自走型の鉄道で世界第二位に急)
- フロム線(ノルウェー、55‰、粘着式)
季語
[編集]登山鉄道(とざんてつどう)は季語として歳時記に挙げられていないが、登山電車(とざんでんしゃ)は、夏の季語(晩夏の季語)である[3]。分類は行事/人事[4][* 3]。「登山電車」は季語「登山」の子季語[* 4]である[3]。詳しくは、親季語「登山」を参照のこと。
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ リニア地下鉄では60‰まで許可されている。最も急勾配なのは横浜市営地下鉄グリーンラインの58‰、次は仙台市地下鉄東西線の57‰。ほかに都営地下鉄大江戸線に55‰など。
- ^ シェルパくんが運行されている線路は基本的に下り線で、上り線の66.7‰区間は走行していない。
- ^ 「行事」も「人事」も、季語としては「人間が行う事柄」を指す。
- ^ ある主要な季語について別表現と位置付けされる季語を、親子の関係になぞらえて、親季語に対する「子季語」という。「傍題」ともいうが、傍題は本来「季題」の対義語である。なお、子季語の季節と分類は親季語に準ずる。「登山電車」が行事/人事に分類されているのも、親季語に準じているからである。