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生活維持省

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

生活維持省」(せいかついじしょう)は、星新一短編SF小説ショートショート)。

初出は「宝石1960年11月号[1]。戯曲や舞台化のほか、2008年NHK総合星新一ショートショート』でアニメ化、2022年BSプレミアムの『星新一の不思議な不思議な短編ドラマ』でドラマ化された。

あらすじ

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よく晴れたある日、勤務先へ出勤した男が上司へ挨拶すると、上司は本日の仕事として何枚かのカードを手渡してきた。男は、さっそく同僚と車に乗り込むと、カードに記載されている住所を告げ、勤務先である「生活維持省」を後にした。

その道中、男と同僚は、穏やかな街並みや道行くカップルから自分たちの将来に思いを馳せ、「こんなに平和なのは政府の方針のおかげだ」とつぶやく。『政府の方針』のおかげで全ての国民に充分な土地が確保され、公害犯罪戦争自殺者交通事故さえも存在しない健康文化的な世界が実現したのである。たった一つのことを除いて。

男と同僚は、カードに記載されたとある人物の住む家へと到着する。呼び鈴を押し、応対した女性に対し、女性の娘の名前を告げる。女性から身分を尋ねられた男が、生活維持省の役人であることを示すと、女性は「死神…」と口走って卒倒しかける。女性は震えながら命乞いをし、娘の身代わりになることを提案するが、それは法律で禁止されているとして却下される。

男が娘の所在を尋ねると、女性は娘が外出中であることを告げ、さらに政府の方針を非難し始める。それに対して男は、「国民がこのように平和で自由に安心して生活するためには、皆で決めた方針に従うしかない。」「皆がワガママを言い出してこの方針を辞めたら、たちまち昔のように人口爆発都市開発治安の悪化、交通事故が発生し、生活水準は下がり、ノイローゼ自殺貧困暴力が公害や犯罪を蔓延らせる。行き着く先はいつも同じ、戦争です。」といった内容のことを言い、女性を論破する。

実は『政府の方針』とは、徹底した人口制限である。毎日、生活維持省のコンピュータで年齢・性別・職業に関係なく完全に公平に選抜した者を殺処分するのである。男と同僚は、その業務を遂行する執行官だった。 そこへ、女性の娘が帰宅するためにこちらへ向かって来ていた。男は娘に気付かれないように玄関の物陰に隠れ、娘を射殺した。

男と同僚は車に戻り、同僚が次の行先を男に尋ねる。すると、男は何故か「さっき通った小川のほとりが良いな」と言う。休憩でもするつもりなのかと同僚が尋ねると、男はカードに記載された自身の名前を見せた。そして男は、「生存競争と戦争の恐怖がない世界でこれだけ生きれて、楽しかったな。」とつぶやくのだった。

書籍

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  • 星新一『人造美人 ショート・ミステリイ』新潮社、1961年2月。 
  • 星新一『ボッコちゃん』新潮社〈新潮文庫〉、1971年5月。ISBN 978-4-10-109801-2 

参照

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  1. ^ 初出リスト星新一公式サイト

関連項目

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  • イキガミ - 間瀬元朗の漫画。本作との類似点が指摘され、星新一の遺族である星マリナと出版社との間で、盗作ではないかとして論争が起こった(訴訟には至らなかった)。