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[[エウリーピデース]]の[[ギリシア悲劇|悲劇]]『[[アンドロマケ (エウリピデス)|アンドロマケー]]』では、ネオプトレモスはプティーアに帰国して[[ヘルミオネー]]と結婚するが、アンドロマケーとの間にモロッソス(劇中では名前について言及がない)が生まれたために、ネオプトレモスが留守にしている間に、ヘルミオネーとその父[[メネラーオス]]は彼らを殺そうとする。アンドロマケーはモロッソスを他所に預けて自分は[[テティス]]神殿に逃げ込むが、メネラーオスはモロッソスを手中に収めて[[人質]]とし、アンドロマケーに神殿から出てくるよう命じる。しかしそこに[[ペーレウス]]が現れて2人を助ける。ネオプトレモスは[[デルポイ]]で[[オレステース]]に殺害されるが、テティスによってアンドロマケーはヘレノスと結婚してモロッシアーに移住し、モロッソスはアイアキダイ([[アイアコス]]の一族)最後の生き残りとしてその地で王となり、子孫は末代まで栄えることが予言される<ref>『アンドロマケー』。</ref>。 |
[[エウリーピデース]]の[[ギリシア悲劇|悲劇]]『[[アンドロマケ (エウリピデス)|アンドロマケー]]』では、ネオプトレモスはプティーアに帰国して[[ヘルミオネー]]と結婚するが、アンドロマケーとの間にモロッソス(劇中では名前について言及がない)が生まれたために、ネオプトレモスが留守にしている間に、ヘルミオネーとその父[[メネラーオス]]は彼らを殺そうとする。アンドロマケーはモロッソスを他所に預けて自分は[[テティス]]神殿に逃げ込むが、メネラーオスはモロッソスを手中に収めて[[人質]]とし、アンドロマケーに神殿から出てくるよう命じる。しかしそこに[[ペーレウス]]が現れて2人を助ける。ネオプトレモスは[[デルポイ]]で[[オレステース]]に殺害されるが、テティスによってアンドロマケーはヘレノスと結婚してモロッシアーに移住し、モロッソスはアイアキダイ([[アイアコス]]の一族)最後の生き残りとしてその地で王となり、子孫は末代まで栄えることが予言される<ref>『アンドロマケー』。</ref>。 |
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[[パウサニアス]]によると、ネオプトレモスはやはり帰国せずにエーペイロス地方に移住し、同地でヘルミオネーと結婚したが子供はなく、アンドロマケーとの間にモロッソス、ピエロス、ペルガモスが生まれたとしている。ネオプトレモスが殺害された後、アンドロマケーはヘレノスと結婚し、ケストリーノスが生まれた<ref name="パウサニアス" />。ヘレノスは死に際して王権をモロッソスに譲り、ピエロス以外の兄弟は他の土地に移住して王となった<ref>パウサニアス、1巻11・2。</ref>。 |
[[パウサニアス (地理学者)|パウサニアス]]によると、ネオプトレモスはやはり帰国せずにエーペイロス地方に移住し、同地でヘルミオネーと結婚したが子供はなく、アンドロマケーとの間にモロッソス、ピエロス、ペルガモスが生まれたとしている。ネオプトレモスが殺害された後、アンドロマケーはヘレノスと結婚し、ケストリーノスが生まれた<ref name="パウサニアス" />。ヘレノスは死に際して王権をモロッソスに譲り、ピエロス以外の兄弟は他の土地に移住して王となった<ref>パウサニアス、1巻11・2。</ref>。 |
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なお、[[ストラボン]]はエーペイロス地方でモロッソス人が勢力を誇ったのは、彼らがアイアキダイの王家に属し<ref name=St_7_7_6>ストラボン、7巻7・6。</ref><ref>ストラボン、7巻7・8。</ref>、また領域内に[[ドードーナ]]の神託所があったためとしている<ref name=St_7_7_6 />。 |
なお、[[ストラボン]]はエーペイロス地方でモロッソス人が勢力を誇ったのは、彼らがアイアキダイの王家に属し<ref name=St_7_7_6>ストラボン、7巻7・6。</ref><ref>ストラボン、7巻7・8。</ref>、また領域内に[[ドードーナ]]の神託所があったためとしている<ref name=St_7_7_6 />。 |
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* [[アポロドーロス]]『ギリシア神話』[[高津春繁]]訳、[[岩波文庫]](1953年) |
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* [[ストラボン]]『[[地理誌|ギリシア・ローマ世界地誌]]』飯尾都人訳、龍渓書舎(1994年) |
* [[ストラボン]]『[[地理誌|ギリシア・ローマ世界地誌]]』飯尾都人訳、龍渓書舎(1994年) |
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* [[パウサニアス]]『ギリシア記』飯尾都人訳、龍渓書舎(1991年) |
* [[パウサニアス (地理学者)|パウサニアス]]『ギリシア記』飯尾都人訳、龍渓書舎(1991年) |
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* 『ギリシア悲劇全集6 [[エウリーピデース]]II』、[[岩波書店]](1991年) |
* 『ギリシア悲劇全集6 [[エウリーピデース]]II』、[[岩波書店]](1991年) |
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* 高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』、[[岩波書店]](1960年) |
* 高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』、[[岩波書店]](1960年) |
2021年11月15日 (月) 11:06時点における最新版
モロッソス(古希: Μολοσσός, Molossos, 英: Molossus)は、ギリシア神話の人物である。ギリシア北方に位置するエーペイロス地方のモロッシアーとモロッソス人の王。トロイア戦争の英雄ネオプトレモスとアンドロマケーの子で、ピエロス、ペルガモスと兄弟[1]。また異父兄弟にアンドロマケーと予言者ヘレノスとの間に生まれたケストリーノスがいる[1]。
神話
[編集]一般的な伝承では、ネオプトレモスはトロイア戦争後、ヘクトールの寡婦であり奴隷の境遇に置かれたアンドロマケーを褒美として受け取り、テッサリアー地方のプティーアには帰国せず、モロッソス人の支配するエーペイロス地方に赴いて支配した。そしてこの地でアンドロマケーとの間にモロッソスをもうけた[2]。
エウリーピデースの悲劇『アンドロマケー』では、ネオプトレモスはプティーアに帰国してヘルミオネーと結婚するが、アンドロマケーとの間にモロッソス(劇中では名前について言及がない)が生まれたために、ネオプトレモスが留守にしている間に、ヘルミオネーとその父メネラーオスは彼らを殺そうとする。アンドロマケーはモロッソスを他所に預けて自分はテティス神殿に逃げ込むが、メネラーオスはモロッソスを手中に収めて人質とし、アンドロマケーに神殿から出てくるよう命じる。しかしそこにペーレウスが現れて2人を助ける。ネオプトレモスはデルポイでオレステースに殺害されるが、テティスによってアンドロマケーはヘレノスと結婚してモロッシアーに移住し、モロッソスはアイアキダイ(アイアコスの一族)最後の生き残りとしてその地で王となり、子孫は末代まで栄えることが予言される[3]。
パウサニアスによると、ネオプトレモスはやはり帰国せずにエーペイロス地方に移住し、同地でヘルミオネーと結婚したが子供はなく、アンドロマケーとの間にモロッソス、ピエロス、ペルガモスが生まれたとしている。ネオプトレモスが殺害された後、アンドロマケーはヘレノスと結婚し、ケストリーノスが生まれた[1]。ヘレノスは死に際して王権をモロッソスに譲り、ピエロス以外の兄弟は他の土地に移住して王となった[4]。
なお、ストラボンはエーペイロス地方でモロッソス人が勢力を誇ったのは、彼らがアイアキダイの王家に属し[5][6]、また領域内にドードーナの神託所があったためとしている[5]。
脚注
[編集]参考文献
[編集]- アポロドーロス『ギリシア神話』高津春繁訳、岩波文庫(1953年)
- ストラボン『ギリシア・ローマ世界地誌』飯尾都人訳、龍渓書舎(1994年)
- パウサニアス『ギリシア記』飯尾都人訳、龍渓書舎(1991年)
- 『ギリシア悲劇全集6 エウリーピデースII』、岩波書店(1991年)
- 高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』、岩波書店(1960年)