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「チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星」の版間の差分

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{{pp|vandalism|small=yes}}
{{ 彗星 |
{{天体 基本
| 日本語名 = チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星
| 符号 = 67P
| = 彗星
| 和名 = チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星
| 周期彗星番号 = 67
| 英名 = Churyumov-Gerasimenko
| 英名 = 67P/Churyumov-Gerasimenko
| 画像 = [[ファイル:Comet_67P_on_19_September_2014_NavCam_mosaic.jpg|300px]]
| 画像ファイル = File:Comet_67P_on_19_September_2014_NavCam_mosaic.jpg
| 画像サイズ = 300px
| 発見者 = [[クリム・チュリュモフ]]<br />[[スヴェトラナ・ゲラシメンコ]]
| 画像説明 = ロゼッタにより撮影されたチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の[[グレースケール]]画像。
| 発見日 = [[1969年]][[9月11日]]
| 符号・別名 = 1982 VIII = 1982f =<br />1989 VI = 1988i =<br />67P/1969 R1 = 1969 IV = 1969h =<br />67P/1975 P1 = 1976 VII = 1975i
| 符号・別名 = 1969 R1, 1969 IV, 1969h<br />1975 P1, 1976 VII, 1975i<br />1982 VIII, 1982f<br />1989 VI, 1988i{{R|jpldata}}
| 元期 = [[2002年]][[9月3日]]
| 分類 = [[周期彗星]]
| 離心率 = 0.6315284
| 軌道長半径 = 3.5072946
| 近日点距離 = 1.2923384
| 遠日点距離 = 5.7222508
| 公転周期 = 6.57
| 軌道傾斜角 = 7.12039
| 近日点引数 = 11.45200
| 昇交点黄経 = 50.96860
| 前回近日点通過 = [[2009年]][[2月28日]]
| 次回近日点通過 = [[2015年]][[8月13日]]
}}
}}
{{天体 発見
'''チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星'''(チュリュモフ・ゲラシメンコすいせい、67P/Churyumov-Gerasimenko、露:67P/Чурюмова―Герасименко)は、[[1969年]]に[[クリム・チュリュモフ]]と[[スヴェトラナ・ゲラシメンコ]]が発見した、[[周期]]6.57年の[[周期彗星]]である。[[2014年]]に[[ヨーロッパ宇宙機関]] (ESA) の[[宇宙探査機|探査機]][[ロゼッタ (探査機)|ロゼッタ]]が周回軌道に到達、着陸機[[フィラエ]]による世界初の彗星着陸が行われた。
| 色 = 彗星
| 発見者 = [[クリム・チュリュモフ]]{{R|kronk}}
| 発見日 = 1969年9月11日{{R|kronk}}
| 発見場所 = [[アルマトイ|アルマ・アタ]]{{R|kronk}}
}}
{{天体 軌道
| 色 = 彗星
| 元期 = TDB 2457559.5(2016年6月20.0日)
| 離心率 = 0.63413{{R|jpldata}}
| 軌道長半径 = 3.4647 [[天文単位|au]]{{R|jpldata}}
| 近日点距離 = 1.2427 au{{R|jpldata}}
| 遠日点距離 = 5.6868 au{{R|jpldata}}
| 公転周期 = 6.45 [[ユリウス年|年]]{{R|jpldata}}
| 軌道傾斜角 = {{0}}7.044 &deg;{{R|jpldata}}
| 近日点引数 = 12.839 &deg;{{R|jpldata}}
| 昇交点黄経 = 50.095 &deg;{{R|jpldata}}
| 平均近点角 = 47.654 &deg;{{R|jpldata}}
| 最小交差距離 = 0.258 au(地球){{R|jpldata}}<br />0.083 au(木星){{R|jpldata}}
| ティスラン・パラメータ = 2.745{{R|jpldata}}
| 前回近日点通過 = 2021年11月2日{{R|kinoshita}}
| 次回近日点通過 = 2028年4月9日{{R|kinoshita}}
}}
{{天体 物理
| 色 = 彗星
| 三軸径 = 4.1 km&times;3.3 km&times;1.8 km(大きい塊){{R|esa-vital}}<br />2.6 km&times;2.3 km&times;1.8 km(小さい塊){{R|esa-vital}}
| 絶対等級 = 12.7([[核 (彗星)|核]]+[[コマ (彗星)|コマ]]){{R|jpldata}}
| 平均密度 = 533 &plusmn; 6 kg/m{{sup|3}}([[仮比重]]){{R|Patzold2016}}
| 質量 = 9.982 &plusmn;{{E|12}} kg{{R|Patzold2016}}
| 体積 = 18.7 km{{sup|3}}{{Efn2|質量9982{{E|9}} kg。平均密度533 kg/m{{sup|3}} <nowiki>=</nowiki> 533{{E|9}} kg/m{{sup|3}}から計算。}}
| 自転周期 = 12.4043 &plusmn; 0.0007 時間{{R|Mottola2014}}
| 赤道傾斜角 = 52 &deg;{{R|esa-vital}}
| アルベド = 0.06{{R|esa-vital}}
| 最大表面温度 = -43 ℃{{R|esa-vital}}
| 平均表面温度 =
| 最小表面温度 = -93 ℃{{R|esa-vital}}
}}
{{天体 項目|地下温度|{{天体 表面温度|-243 ℃{{R|esa-vital}}||-113 ℃{{R|esa-vital}}}}}}
{{天体 終了|彗星}}
'''チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星'''({{lang-en|67P/Churyumov-Gerasimenko}}、{{lang-ru|67P/Чурюмова―Герасименко}})は、[[公転周期]]6.45年の[[周期彗星]]である{{R|jpldata}}。現在は[[木星族彗星]]であるが、もとは[[エッジワース・カイパーベルト天体]]であったと考えられている{{R|AP20141211}}。[[自転周期]]は約12.4時間{{R|Mottola2014}}、最大速度は時速13万5000kmである{{R|esa-rosettaQ}}。大きさは約4.3km x 4.1kmで、完全な球形ではなく、2つの塊を繋げたような形をしている{{R|esa-vital}}。チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星は1969年に[[ソビエト連邦]]の天文学者、[[クリム・チュリュモフ]]が[[スヴェトラナ・ゲラシメンコ]]の写真上で初めて発見したため、この名前となった{{R|kronk}}。2021年11月2日には太陽に最も近くなる[[近日点]]を通過し{{R|yoshida|mpc|kinoshita}}、次は2028年の4月に回帰することが予測されている{{R|kinoshita}}

また、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星は2004年3月に打ち上げられた[[欧州宇宙機関]](ESA)の[[ロゼッタ (探査機)|ロゼッタ]]の探査対象にもなった{{R|NYTimes20140805}}。2014年8月6日には[[ランデブー (宇宙開発)|ランデブー]]に成功し{{R|planetary20140806|esa20140806}}、9月10日には着陸のための軌道に入った{{R|esablog2014a}}。探査機ロゼッタの着陸機である[[フィラエ]]は11月12日にチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に着陸し、[[核 (彗星)|彗星核]]に到達した初めての探査機となった{{R|nasa20141112|NYTimes20141112|bbc20141113}}。2016年9月30日にはマアトと呼ばれる地域に着陸して任務を終了した{{R|NS20160930|space20160930}}。


== 発見 ==
== 発見 ==
[[1969年]][[ソビエ連邦]]のアルマアタ(現[[カザフスタン]]の[[アルマトイ]])での彗星サーヴェイ参加すため、ソ連(現[[ウクライナ]])の[[キエフ]]の[[キエフ大学]]から天文学者たちが{{仮リンク|アルマアタ天体物理研究所|en|Fesenkov Astrophysical Institute}}に集まっていた。[[9月11日]]アルマアタ天体物理研究所の[[スヴェトラナ・ゲラシメンコ]]が[[コマス・ソラ彗星]] (32P/Comas Solá) を撮影し、その写真を調べキエフ大学の[[クリム・チュリュモフ]]写真乾板の端近くに彗星のようなた。
チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星は1969年に[[キエフ大学]]天文台の[[クリム・チュリュモフ]]が初めて発見した。彼は[[スヴェラナ・ゲラシメンコ]]が旧[[カザフ・ソビエト社会主義共和国]]の[[アルマトイ|アルマ・アタ]]に{{Efn2|在は[[カザスタン]]にあり都市の名称もアルマトイになっている。}}天体物理研究所{{sub|([[:en:Fesenkov Astrophysical Institute|英語版]])}}9月11日に[[コマス・ソラ彗星]]を撮影するための写真から発見しチュリュモフは[[写真乾板]]の端の方で彗星のような天体を見つけがその時はコマス・ソラ彗星だろうと推定された{{R|kronk}}


その像をチュリュモフは・ソラ彗星だと当初は思い込んだもの、キエフに戻後に、念のため写真乾板全体詳細に調べてみた。翌月の10月22日に、その天体コマス・ソラ彗星予想位置から1.8度もれていたと判明し別の天体である可能性が高まった。もっと写真乾板を詳しく調べると、予想通りの位置にコマス・ソラ彗星がかすかに写っていたので写真乾板端近くに写っていた天体は、新彗星であった事が明らかになった。
チュリュモフはアル・アタから旧[[ウクライナ・ソビエト社会主義共和国]][[キエフ]]{{Efn2|現在は[[ウクライナ]]にある。}}に戻ると撮影された写真乾板をより綿密に調べた。翌月の10月22日には彼見つけた天体コマス・ソラ彗星であるとすれば、予想より1.8[[ (角度)|度]]れておりコマス・ソラ彗星りえないことに気づいた。さらに詳しく調べ続けた結果、予測された位置に薄暗く写ったコマス・ソラ彗星を確認し見つけ彗星のような天体は異なる天体であることされ{{R|kronk}}


== 物理的特徴 ==
== 見た目 ==
[[ファイル:Comet 67P - flyby context.jpg|thumb|left|[[ロゼッタ (探査)|ロゼッタ]]が撮影したチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星]]
[[File:Comet 67P-Churyumov-Gerasimenko.stl|left|thumb|[[欧州宇宙|ESA]]によるチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の[[3次元コンピュータグラフィックス|3D画像]]。クリックしたまま動かすことで操作できる。]]
2014年7月14日にロゼッタにより撮影された画像からこの彗星の[[核 (彗星)|核]]が不規則な形をしていることが明らかになり{{R|Ast20140717|nasa20140717}}、大きさは当時は3.5km&times;4kmと推定された{{R|SandT20140717}}。形としては2つの塊がくっついてできたアヒルのおもちゃのような形状をしており、大きいほうの塊は4.1 km&times;3.3 km&times;1.8 km、小さいほうは2.6 km&times;2.3 km&times;1.8 kmほどの大きさである{{R|esa-vital}}。そして太陽からの熱を受けてそれぞれの塊はガスやダストを放出して質量を失っている。ロゼッタの着陸機フィラエの電池が切れる前の測定によるとチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に積もったダストの層は20 cmほどの厚さであり、その下には氷、あるいは氷とダストが混じったものが含まれている。[[ポロシティ]](空隙率、空間の割合)は中心に向かうにつれて大きくなっている{{R|esa20141118}}。1回公転するたびに1.0&plusmn;0.5 mほど、表面が薄くなると推定されている{{R|Bertaux2015}}。質量はおよそ100億トン(=1.0{{E|13}} kg)である{{R|Patzold2016}}。


当初は接触連星のようにして2天体からできたものか(衝突説)、氷の昇華によってその特異的な形が生じたのか(浸食説)で2つの意見があった{{R|NYTimes20140805|esa20140806|natgeo20151002}}。2015年9月には前者の仮説が明らかに正しいと結論づけられた{{R|Massironi2015|esa20150928}}。衝突説によるとこの彗星は2つの塊が低速で穏やかに衝突して形成されたと考えられており、いわば[[太陽系小天体]]同士の[[接触連星]]である。2つの塊の内部には[[段丘]]状の層があり、外層がダストやガスを放出してはぎ取られるときに見える。この層は2つの塊を比較すると別方向に向いており、このことからこの2つの塊はもとは別の天体であったと考えられる{{R|natgeo20150929|Massironi2015}}。
チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星は、2つの彗星がゆっくりとぶつかってそのまま結合したような2重の構造を持つアヒルのオモチャのような奇妙な形状をしている<ref name="NASA20140717"/>。[[核 (彗星)|核]]の大きさは、小さな側が 2.5 x 2.5 x 2.0&nbsp;km、大きな側が 4.1 x 3.2 x 1.3&nbsp;km、核全体の質量は10<sup>13</sup> kgで、約12.4時間に1回の周期で自転している<ref name="rosettablog"/>。


2020年の研究によるとチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の表面は太陽から離れているときは赤みを帯び、太陽に接近しているときは青みを帯びている。これは太陽から遠い間は彗星表面がダストで覆われているため赤みを示し、太陽に接近すると地下にあった水が露出して青みを示すようになるためである。逆に[[コマ (彗星)|コマ]]は太陽から遠い間はダストがほとんど含まれていないが水が含まれているため青く見え、接近するとダストが放出されるため赤く見えるようになる{{R|Filacchione2020|AA20200213|sorae20200210}}。
表面の地形としては、底が平らな[[クレーター]]や点在する大きな岩などが確認されており<ref name="afpbb20150707" />、崖崩れなどにより、水の氷が新たに露出したと考えられる明るい部分も発見された<ref>{{Cite web|url=http://www.astroarts.co.jp/news/2015/06/25comet_cg/index-j.shtml|title=チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の表面に水の氷|publisher=アストロアーツ|date=2015-06-25|accessdate=2015-07-12}}</ref>。また、側面が切り立った穴が多数発見され、中には直径220 m、深さ185 mに達する穴も存在していた。[[2015年]]7月現在、穴の形成過程は解明されていないが、彗星の内部に空洞が存在しており、表面が崩れ落ち形成されたという推測がなされている。空洞が存在する理由については諸説あるが、この彗星は、小さな彗星同士が合体して形成されたためではないかといった説が提唱された<ref>{{Cite web|url=http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/15/070200166/|title=チュリュモフ彗星の謎の穴、正体を究明|publisher=[[ナショナルジオグラフィック (雑誌)|ナショナルジオグラフィック]]|date=2015-07-02|accessdate=2015-07-12}}</ref>。


=== チュリュムーン ===
{{Clearleft}}
2019年8月12日、ESAの研究者らはロゼッタが2015年10月21日に撮影した映像上にチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の周辺を公転する小さな断片が存在することに気付いた。また、ただ1日だけ見えたわけではなく、10月23日まで観測された。この断片の大きさは直径4 mほどでこれまで彗星の周りに観測された塊としては最も大きい。ロゼッタの研究者らはこの小物体をチュリュムーン({{lang-en|Churymoon}})と名付けた{{R|space20190813|esa-churymoon|sorae20190813}}。
== 軌道の変化 ==
チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の[[軌道 (力学)|軌道]]は一定していない。かつてこの彗星は、近日点距離が4.0 [[天文単位|AU]]の、太陽から遠い軌道を回っていて、まったく観測できなかった。[[1840年]]、この彗星は[[木星]]へ接近し、[[近日点]]距離は3.0 AUまで縮んだ。[[1959年]]にまた木星に接近し、近日点距離が1.28 AUになり、現在にいたっている。


== 探査 ==
== 表面 ==
[[File:67P Churyumov-Gerasimenko surface.gif|thumb|right|チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星表面のダストや[[宇宙線]]の様子。背景で動いているのは[[恒星]]である。探査機ロゼッタに搭載されたOSIRIS{{sub|([[:en:Optical, Spectroscopic, and Infrared Remote Imaging System|英語版]])}}により撮影された。]]
[[ファイル:Rosetta's Philae on Comet 67P Churyumov-Gerasimenko.jpg|thumb|着陸する[[フィラエ]](想像図)]]
[[File:Pristine view of 67P-C–G after removal of outliers..gif|thumb|right|ロゼッタで観測されたチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の表面。(A)は撮影し、加工なしの画像。(B)は実際の表面を映すために飛び散っているダスト等を加工処理した画像。(C)は逆にそれだけを取り出し、表面を消した画像。]]
チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の表面は26の地域に分けることができ、そのすべてが[[古代エジプト]]の[[神]]にちなんで名付けられている。2つの塊のうち大きい塊のほうは男の神、小さい塊のほうは[[女神]]の名前が充てられている。最初に地域が区画された論文では南側{{Efn2|自転軸を中心に反時計回りを自転の方向としたときに上に来るほうを北側、下に来るほうを南側としている}}はまだ詳細に見えなかったためまず19の地域が命名された{{R|El-Maarry2015|space20150719}}。その後、南側も明らかになると7の地域が同様の命名法で名付けられた{{R|El-Maarry2016|esablog2016}}。
{{clear|left}}
{| class="wikitable"
|-
! 地域名{{Efn2|リンク先は由来となった神}} || 状態 || 地域名 || 状態 || 地域名 || 状態
|-
| [[マート|Ma'at]] || ダストで覆われている
| Ash{{sub|([[:en:Ash (deity)|英語版]])}} || ダストで覆われている
| Babi{{sub|([[:en:Babi (mythology)|英語版]])}} || ダストで覆われている
|-
| [[セト|Seth]] || くぼみがあり壊れやすい
| [[ハトメヒト|Hatmehit]] || 大規模な低地
| [[ヌト|Nut]] || 大規模な低地
|-
| [[アテン|Aten]] || 大規模な低地
| [[ハピ|Hapi]] || 滑らか
| [[イムホテプ|Imhotep]] || 滑らか
|-
| [[アヌビス|Anubis]] || 滑らか
| Maftet{{sub|([[:en:Mafdet|英語版]])}} || 固い
| [[バステト|Bastet]] || 固い
|-
| [[セルケト|Serqet]] || 固い
| [[ハトホル|Hathor]] || 固い
| [[アヌケト|Anuket]] || 固い
|-
| [[ケプリ|Khepry]] || 固い
| Aker{{sub|([[:en:Aker (deity)|英語版]])}} || 固い
| [[アトゥム|Atum]] || 固い
|-
| [[アピス|Apis]] || 固い
| [[コンス|Khonsu]] || 固い
| [[ベス|Bes]] || 固い
|-
| Anhur{{sub|([[:en:Anhur|英語版]])}} || 固く砕けやすい
| [[ゲブ|Geb]] || 固い
| [[セベク|Sobek]] || 固い
|-
| [[ネイト (エジプト神話)|Neith]] || 固い
| Wosret{{sub|([[:en:Wosret|英語版]])}} || 固い
|}
表面の地形としては、底が平らな[[クレーター]]や点在する大きな岩などが確認されており{{R|afpbb20150707}}、崖崩れなどにより、水の氷が新たに露出したと考えられる明るい部分も発見された{{R|AA20150625}}。また、側面が切り立った穴が多数発見され、中には直径220 m、深さ185 mに達する穴も存在していた。穴の形成過程は解明されていないが、彗星の内部に空洞が存在しており、表面が崩れ落ち形成されたという推測がなされている{{R|natgeo20150702}}。また、この穴は彗星が急激に増光するアウトバーストにも関連するものだと考えられている{{R|Vincent2015}}。。


=== 門のような地形 ===
チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星には門のような地形があり周辺よりも突出している。発見されたのは2箇所で、ロゼッタの探査計画に関わったが、亡くなってしまった者の名前が付けられている{{R|esablog2015a}}。
{| class="wikitable"
|-
! 名称 !! 由来
|-
| C. Alexander Gate || Claudia Alexander{{sub|([[:en:Claudia Alexander|英語版]])}}
|-
| A. Coradini Gate || Angioletta Coradini{{sub|([[:en:Angioletta Coradini|英語版]])}}
|}

=== 表面の変化 ===
ロゼッタが観測を続けている間、この彗星の表面では特に[[近日点]]付近で様々な変化が見られた{{R|El-Maarry2017|esa20170321|nasa20170322}}。表面の地質が滑らかなImhotep地域では円形の構造が発達していく様子が確認され、その大きさは1日に数メートルほど大きくなっていった{{R|Groussin2015|esablog2015b}}。また、彗星の首にあたる部分では裂け目が2014年に発見されてから2016年には再度観測され、伸びていることが分かった{{R|esa20170320a}}。さらに新しい裂け目も近くに生成されているのが確認された。数10mの丸石が動いているのも同じ場所で確認された{{R|esa20170320b}}。

崖の崩壊する様子も観測されており、その一例として2015年7月にロゼッタに搭載されたカメラに崖崩れによって出てきた光が映し出された。ロゼッタの研究チームはこの崖の崩壊が彗星が急に増光するアウトバーストという現象に関係しているものと考えた。崖崩れによってアウトバーストが起こったと報告されたのは初めてであった{{R|Pajola2017|WP20170321}}。

2021年11月17日にもアウトバーストは起こり、[[見かけの等級]]は12.16から11.52まで変化した。このアウトバーストを発見したZwicky Transient Facility{{sub|([[:en:Zwicky Transient Facility|英語版]])}}によると、そのときのチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星は太陽から1.23 au、地球から0.42 au離れていた{{R|AST20211119}}。

=== Cheops ===
チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の大きい塊のほうには'''Cheops'''と名付けられた45m程度の巨石がある。その形が[[ギザの大ピラミッド]]を連想させるため、[[クフ]]にちなんでCheopsと名付けられた{{R|esa20141009|space20141014}}。

== 軌道 ==
[[File:Comet 67P orbit perihelion 2015.png|left|thumb|チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の軌道。[[近日点]]では火星の軌道より内側にあるが、[[遠日点]]では木星の軌道よりも外側にある。]]
[[File:NavCam Comet 67P animation 20140806 (cropped).gif|thumb|upright|ロゼッタがチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に接近したときに撮影された86枚の画像を合成したアニメーション。2014年8月ごろ。]]
チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星は現在は[[木星族彗星]]であり、もとは他の彗星と同様[[エッジワース・カイパーベルト天体]]であったと考えられている{{R|AP20141211}}。

1840年までは彗星の近日点距離は4.0 auほどあり彗星として太陽からの熱を受けて核を蒸発させて輝くことはできなかった。しかし、1840年に木星の付近を通過し、近日点距離は3.0 auまで減少し、その後にまた接近して2.77 auまで減少した{{R|esa20190901}}。

1959年2月にも木星付近を通過したことにより、近日点距離は1.29 auにまで減少し{{R|jpldata}}、現在も1.21 au程度である{{R|kinoshita}}。2220年にも木星に接近することが予測されているが、それ以降は軌道がどう変化するかが不確定な状態でありまだ分からない{{R|Krolikowska2003}}。

2009年に近日点を通過する前は[[自転周期]]が12.76時間であったが、通過後、12.4時間に減少した。これはおそらくガスなどが[[昇華 (化学)|昇華]]する過程において[[トルク]]が働いたためであると考えられている{{R|Mottola2014}}。

=== 2015年の近日点通過 ===
2014年9月時点でチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の[[見かけの等級]]は約20であった{{R|mpc}}。2015年8月13日には近日点に達した{{R|yoshida|kinoshita}}。2014年12月から2015年9月までは[[離角]]が45 &deg;未満であった{{R|MPC-emp}}。2015年2月10日には離角5 &deg;で[[合 (天文)|合]]の状態になり、地球とこの彗星の距離は太陽をはさんで3.35 au離れた位置にあった{{Efn2|r(太陽とチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の距離)<nowiki>=</nowiki>2.35 auより[[余弦定理]]から導ける。}}{{R|MPC-emp}}。2015年5月5日には[[天の赤道]]([[赤緯]]0 &deg;)を通過した{{R|MPC-emp}}。近日点を通過してすぐのときには[[ふたご座]]の位置にあり、12[[等級 (天文)|等]]程度で見えたが、2016年7月にもなると20等程度にまで下がっていった{{R|yoshida2015}}。

== ロゼッタ計画 ==
{{Main|ロゼッタ (探査機)|フィラエ}}
{{Main|ロゼッタ (探査機)|フィラエ}}
{{See also|ロゼッタ探査機の経過}}
ロゼッタ計画は彗星の表面に関するデータの収集と彗星に数年間[[ランダー]](着陸機)を着陸させることを初めて成功させた{{R|esa-chaser}}。探査機は2004年に打ち上げられ、2014年に目標としていたチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に着陸し、2016年に彗星上に着陸して役目を終えた{{R|SfN20160930}}。


=== 接近前の観測 ===
チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星は[[2004年]]に打ち上げられた[[ヨーロッパ宇宙機関]] (ESA) の[[宇宙探査機|探査機]][[ロゼッタ (探査機)|ロゼッタ]]のターゲットとして選定された。ロゼッタの探査の準備として、[[2003年]]3月には[[ハッブル宇宙望遠鏡]] (HST) が撮影した彗星の写真が詳しく分析され、核の全周3-Dモデルが作られ、さまざまな角度からの[[コンピュータグラフィックス|CG]]が描かれた。
ロゼッタ計画はもとは[[ワータネン彗星]]の探査が目的であったが、打ち上げが遅れてしまったためチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星となった。準備のため、2003年3月12日に[[ハッブル宇宙望遠鏡]]はチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星を撮影した。その結果、3Dモデルが作られ、当時は楕円形をしていると考えられていた{{R|hubble2003}}。


2012年4月25日には[[アマチュア天文家]]Nick Howes、Giovanni Sostero、Ernesto Guidoらにより地上の望遠鏡から[[遠日点]]あたりにあるチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星が確認された{{R|nbc20120501}}。
[[2014年]]7月14日には、ロゼッタが1万4,000kmの地点から撮影した写真が公開された。観測により彗星が2つの彗星がゆっくりとぶつかってそのまま結合したような奇妙な形状であることが分かった。また20分間隔で撮影した画像を組み合わせて動画にし自転の様子も分かるようになった<ref name="NASA20140717"/>。


=== ランデブー ===
ロゼッタはその後、打ち上げから10年後の2014年8月6日に、彗星と公転軌道に沿って、ロゼッタも太陽を公転する軌道への投入を達成した。ロゼッタによる観測では、詳細な地表写真などが撮影され、さらに着陸機[[フィラエ]]による世界初の彗星軟着陸が試みられた。同機は2014年11月12日15時35分 (UTC)、彗星表面への着陸に成功した。
{{multiple image |align=right |direction=horizontal |total_width=440
|image1=Animation of Rosetta trajectory.gif |caption1=2004年3月2日から2016年9月9日までのロゼッタの軌道。<br /> {{legend2|magenta|ロゼッタ}}{{·}}{{legend2|lime|チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星}}{{·}}{{legend2|blue|地球}}{{·}}{{legend2|maroon|火星}}{{·}}{{legend2|Cyan|小惑星[[ルテティア (小惑星)|ルテティア]]}}{{·}}{{legend2|Gold|小惑星[[シュテインス (小惑星)|シュテインス]]}}
|image2=Animation of Rosetta trajectory around 67P.gif |caption2=チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星を中心にした時のロゼッタの2014年8月1日から2015年3月31日までの軌道。<br /> {{legend2|magenta|ロゼッタ}}{{·}}{{legend2|Lime|チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星}}
}}
2014年5月よりロゼッタは8月6日のランデブーに向けて地上からの操作により速度を落とし始め、彗星との[[相対速度]]が2800km/hになるように調整された{{R|NYTimes20140805|esa20140801|csm20140804}}。そして、ランデブーの当日になると、相対速度は1m/sにまで落とされた。これは人間の歩く速さとほぼ同じである{{R|esa20140806|planetary20140806|esa20140801}}。9月10日には核に30 kmまで接近した{{R|esablog2014a|planetary20140815}}。

=== 着陸 ===
[[File:Rosetta's Philae on Comet 67P Churyumov-Gerasimenko.jpg|thumb|right|着陸する[[フィラエ]](想像図)]]
{{Further|topic=彗星への着陸|フィラエ#着陸}}
2014年11月12日午前8時30分([[協定世界時|UST]])ごろ{{Efn2|日本時間では午後17時30分ごろ}}にランダーの降下が始まった{{R|AA20141113}}。ランダーの[[フィラエ]]の重量は220 [[ポンド (質量)|lb]](100kg)であった{{R|NYTimes20140805|NYTimes20141110}}。着地場所はエジプトの[[アスワン・ハイ・ダム]]建設後に[[フィラエ神殿]]が移設された{{仮リンク|アギルキア島|en|Agilkia Island}}にちなんで ''Agilkia'' と名付けられた{{R|bbc20141104}}。[[重力加速度]]は2004年のシミュレーションによると1.0{{E|-3}}m/s(地球の1万分の1程度)と見積もられていた{{R|Hilchenbach2004}}。

質量が100 kgと比較的小さいため、彗星に着地するためにはランダーのフィラエを固定する技術を必要とする。フィラエには事前にチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の弱い重力に対応できる設計がなされており、[[銛]]のように撃ち込んで固定するもの{{R|bbc20141112}}やねじのようにして彗星表面に固定させるもの、ゆっくり着地するための[[スラスター]]{{R|esa20140916}}、降下中に姿勢を保つ[[フライホイール]]{{R|regi20141112|eo-rosetta}}などが搭載されていた。しかしスラスターや銛のようなものは着地の際にうまく機能しなかった{{R|regi20141112|bbc-rosetta}}。ランダーは2回バウンドし{{R|nasa20141113}}、最初の着地から2時間後、3回目にしてようやく静止した{{R|SandT20141112}}。

フィラエとの通信は2014年11月15日に電池切れのために途絶えてしまった。しかしESAの[[欧州宇宙運用センター]](ESOC)は2015年6月13日、約7か月ぶりに信号を得ることに成功した{{R|nature20150614}}。2016年9月2日にはチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星のどの位置にあるか不明であったフィラエがロゼッタにより確認された。フィラエはそのとき暗い隙間の中で静止しており、本体と2つの足が確認された{{R|esa20160905|SandT20160905}}。この発見により、フィラエが撮影してきた場所がどのあたりかを特定することができた{{R|SandT20160905}}。

=== ロゼッタによる成果 ===
{{multiple image |align=right |direction=horizontal |total_width=440
|image1=Rosetta's first sighting of its target in 2014 – narrow angle view (14813677376).jpg |caption1=ロゼッタが2014年3月21日に撮影した最初の写真。[[へびつかい座]]の[[M107 (天体)|M107]]が中央やや左下に写っており、丸で囲まれているのがチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星である。 |image2=Comet 67P on 14 July 2014 OSIRIS, processed.png |caption2=2014年7月14日に撮影されたチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の加工写真。その特異な形が初めてあらわになった。|image3=Crescent Comet 67P.jpg |caption3=2015年4月15日にロゼッタにより撮影されたガスを放出するチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星。色はフォールスカラー(光の波長ごとに色を後付け)によるものである。}}
;水の存在と重水素
2014年6月6日、ロゼッタが36万kmまで接近したとき毎秒1Lの割合で水蒸気が放出されているのが検出された。このときの太陽からの距離は3.93 auであった{{R|esablog2014b|nasa20140630}}。ロゼッタから観測されたチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星上の[[水蒸気]]の組成は地球上にあるものとかなり異なっており、水に含まれる[[重水素]]と[[軽水素]]の比率が地球の3倍よりも大きいことが明らかになった。これにより、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星と似た彗星が地球に水をもたらした可能性は低くなった{{R|AP20141211|nasa20141210|NYTimes20141210|AA20141212}}。また、水蒸気には水に対する存在比で[[ホルムアルデヒド]]が0.32 %、[[メタノール]]が0.21 %含まれており、この割合は太陽系内の彗星では一般的な範囲に収まっている{{R|Schuhmann2019}}。2015年1月22日にNASAは2014年の6月から8月にかけて水蒸気を放出した量が10倍になったと公表した{{R|nasa20150122}}。

;彗星上の磁場
核はフィラエの下降・着陸中に行われた測定によると[[磁場]]を持っていない。これが多くの彗星に適用されるならば太陽系の形成において[[磁性]]はあまり重要ではなかったことを示唆している{{R|esa20150414|Schiermeier2015}}。

;分子の分解反応
彗星の核からコマに放出された水や二酸化炭素分子は分解されることが知られていたが、その原因は太陽からの光、すなわち[[光子]]によるものであると考えられていた。しかし、ロゼッタに搭載された分光器ALICEによりそうではなく、核の上空1 kmほどで太陽放射により水分子が[[光イオン化]]したときに生成される[[電子]]が分解を引き起こしていることが明らかになった{{R|nasa20150602|Feldman2015}}。

;有機化合物の存在
フィラエに搭載されたCOSAC、Ptolemyという装置によりチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星からは16種類もの[[有機化合物]]が検出された。この中でも[[アセトアミド]]、[[アセトン]]、[[イソシアン酸メチル]]、[[プロピオンアルデヒド]]の4種類の物質は彗星からは初めて検出された{{R|phys20150730|esa20150730|Bibring2015}}。[[宇宙生物学]]者のChandra WickramasingheとMax Wallisはこのように彗星表面に有機物が含まれているという特性から[[微生物]]の[[地球外生命]]の存在を説明できると述べた{{R|TG20150706|sky20150706}}。彼らは微生物の活動によって地下に高圧ガスを含んだ空洞が形成され、これが割れることで有機物質が表面に供給されているとしている{{R|afpbb20150707}}。ただし、ロゼッタの研究者らはその意見については推測にすぎないと述べている{{R|TT20150706}}。探査機ロゼッタも着陸機フィラエもどちらも生命を直接検出する装置は搭載していなかった{{R|TG20150706}}。これまでに彗星上で見つかっている[[アミノ酸]]は[[グリシン]]のみでその[[前駆体]]である[[メチルアミン]]や[[エチルアミン]]とともに発見されている{{R|Altwegg2016|AA20160530}}。これらが発見されたのはチュリュモフ・ゲラシメンコ彗の他にも[[ヴィルト第2彗星]]でも発見されている{{R|Altwegg2016}}。

彗星から放出されたダスト中にも固体の有機化合物が確認された。そしてこの有機化合物は[[炭素質コンドライト]]中に含まれる不溶性の物質のように巨大分子の形で結合している。このことから彗星で観測された有機化合物は隕石中にある不溶性の物質と起源が同じで、彗星に取り込まれる前後でも変化していないと考えられている{{R|Fray2016}}。

;酸素原子の存在
ロゼッタのミッションの中で最も優れた発見は彗星付近で多量の遊離[[酸素]]分子を検出したことである。現在の太陽系形成モデルではチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星が形成された46億年前には水素と酸素が反応して水になる激しく、高温の過程を経るため酸素分子は消滅していたはずであった{{R|space20151029}}。

彗星での測定から酸素・水の比({{chem2|O2}}/{{chem2|H2O}})が[[コマ (彗星)|コマ]]内で[[等方的と異方的|等方的]]で太陽からの距離に左右されないということが分かった。このため、酸素分子は彗星が形成された際に核内に取り込まれたと考えられている{{R|Bieler2015}}。ただし、のちの研究で酸素を含む物質が表面にあるとき、水とそれが衝突して酸素分子が生じる可能性が示唆された{{R|Yao2017}}。そのうえ、窒素分子が検出されたことから、30 [[ケルビン|K]]よりも低温の状況下でこの彗星が形成されたことも示唆された{{R|Rubin2015}}。しかし、2018年7月3日にはそれだけでは十分に説明できないと指摘された{{R|Heritier2018}}。他にも[[過酸化水素]]の分解による説などが提唱されている{{R|Dulieu2017}}。

== 今後の探査 ==
チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の[[サンプルリターン|サンプルリターンミッション]]として探査機{{仮リンク|CAESAR (探査機)|en|CAESAR (spacecraft)|label=CAESAR}}が提案されている{{R|nasa20171221|NYTimes20171219}}。このミッションはNASAの[[ニューフロンティア計画]]の4つ目の計画の候補の中で最後の2つにまで選ばれた{{R|IBT20171220}}。2019年6月には最終的にもう一つの候補であった[[ドラゴンフライ (探査機)|ドラゴンフライ]]が選ばれたため見送りとなった{{R|NYTimes20190627|SN20190627}}。


== ギャラリー ==
== 地球外生命の可能性 ==
<gallery mode="packed" heights="130px">
チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の[[#物理的特徴|物理的特徴]]については、彗星表面下に生存する[[微生物]]の活動に由来するものだとの仮説が提唱されている。ロゼッタの観測では、複雑な[[有機化合物|有機物質]]が発見されているが、この説ではそれらを生物由来と推測しており、微生物の活動によって地下に高圧ガスを含んだ空洞が形成され、これが割れることで有機物質が表面に供給されているとしている。彗星が太陽に近づくにつれ、表面の氷は融け雪のような状態となるため、この微生物は液体の水を用いている可能性がある。<ref name="afpbb20150707">{{Cite web|url=http://www.afpbb.com/articles/-/3053861|title=彗星に地球外「生命」存在の可能性、英天文学者チーム|publisher=[[フランス通信社|AFPBB]]|date=2015-07-07|accessdate=2015-07-12}}</ref>
File:67PNucleus.jpg|2003年のハッブル宇宙望遠鏡の観測に基づいて再現されたチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の核。
File:VLT Tracks Rosetta's Comet.jpg|2014年8月11日に[[超大型望遠鏡VLT|VLT]]により観測されたチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星{{R|eso-VLT}}。
File:Comet_67P on 22 August 2014 NavCam.jpg|2014年8月22日、ロゼッタが撮影。
File:Comet 67P on 14 September 2014 NavCam mosaic.jpg|2014年9月14日、ロゼッタが撮影。
File:All-round activity - ESA Rosetta NAVCAM 20150225 26 27 27.jpg|ロゼッタが撮影した彗星核(2015年2月末)


File:67P-C-G - March 28 2015 (32370930490).jpg|2015年3月28日、ロゼッタが撮影。
== 画像 ==
File:67P-C-G - May 2 2015 (32730086746).jpg|2015年5月2日、ロゼッタが撮影。
<gallery>
File:Comet on 7 July 2015 NavCam.jpg|2015年7月7日、ロゼッタが撮影。
ファイル:VLT Tracks Rosetta's Comet.jpg|地球から見たチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星
File:Cliffs of Comet 67P.jpg|2014年12月10日に撮影されたチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星上のでこぼこした崖。
ファイル:67PNucleus.jpg|[[ハッブル宇宙望遠鏡]]の写真をもとにした彗星核の3-D CG(2003年当時)
File:NAVCAM top 10 at 10 km – 5 (15765224912).jpg|彗星表面の切り立った地形(10km上空より)
ファイル:All-round activity - ESA Rosetta NAVCAM 20150225 26 27 27.jpg|[[ロゼッタ (探査機)|ロゼッタ]]が撮影した彗星核(2015年)
ファイル:NAVCAM top 10 at 10 km 5 (15765224912).jpg|彗星表面の切り立った地形(10km上空より)
File:Comet Churyumov-Gerasimenko, 14 February 2015 close flyby, 14-15 GMT.jpg|彗星表面の平らな地形(6km上空より)
File:Phosphorus-bearing molecules found in a star-forming region and comet 67P.tif|[[星形成]]領域、および彗星で[[リン]]が確認されたことを示す画像。彗星とはチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星のことで、星形成領域とは[[アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計|アルマ望遠鏡]]が観測したAFGL 5142のことである{{R|eso2001|alma20200123}}
ファイル:Comet Churyumov-Gerasimenko, 14 February 2015 close flyby, 14-15 GMT.jpg|彗星表面の平らな地形(6km上空より)
</gallery>
</gallery>


== 脚注 ==
== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
<references>
=== 注釈 ===
<ref name="NASA20140717">{{cite news
{{Notelist2}}
| title = Rosetta Spacecraft Approaching Twofold Comet
| url = http://www.nasa.gov/jpl/rosetta/comet-67p-churyumov-gerasimenko-20140717/index.html
| publisher = NASA
| date = 2014-07-17
| accessdate = 2014-7-21}}
</ref>
<ref name="rosettablog">{{cite web
| title = MEASURING COMET 67P/C-G
| url = http://blogs.esa.int/rosetta/2014/10/03/measuring-comet-67pc-g/
| publisher = ESA
| author = Emily Baldwin
| date = 2014-10-06
| accessdate = 2014-11-13}}
</ref>
</references>


== 参考文献 ==
=== 出典 ===
{{Reflist|2|refs=
* {{note|Kolikowska}}{{cite journal

| author=Krolikowska, Malgorzata
<ref name="AA20141113">{{Cite web |url=https://www.astroarts.co.jp/article/hl/a/77_philae |title=史上初の快挙、フィラエが彗星表面に着陸 |publisher=アストロアーツ |date=2014-11-13 |accessdate=2022-02-11 }}</ref>
| title=67P/Churyumov-Gerasimenko - potential target for the Rosetta mission

| journal=Acta Astronomica
<ref name="AA20141212">{{Cite web |url=https://www.astroarts.co.jp/article/hl/a/126_rosetta |title=チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星、地球と異なる水の起源 |publisher=アストロアーツ |date=2014-12-12 |accessdate=2022-02-11 }}</ref>
| year=2003

| volume=53
<ref name="AA20150625">{{Cite web|url=http://www.astroarts.co.jp/news/2015/06/25comet_cg/index-j.shtml |title=チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の表面に水の氷 |publisher=アストロアーツ |date=2015-06-25 |accessdate=2022-02-11 }}</ref>
| pages=195-209

}} [http://arxiv.org/abs/astro-ph/0309130 Preprint at astro-ph]
* 吉田誠一 「[http://www.aerith.net/comet/catalog/0067P/2002-j.html チュリュモフ-ゲラシメンコ周期彗星]」『[http://www.aerith.net/comet/catalog/index-update-j.html 彗星カタログ]』
<ref name="AA20160530">{{Cite web |url=https://www.astroarts.co.jp/article/hl/a/846_67p |title=チュリュモフゲラシメンコ彗星にアミノ酸やリンを検出 |publisher=アストロアーツ |date=2016-05-30 |accessdate=2022-02-11 }}</ref>

* Gary W. Kronk, "[http://cometography.com/pcomets/067p.html 67P/Churyumov-Gerasimenko]", [http://www.cometography.com/ Cometography.com].
<ref name="AA20200213">{{Cite web |url=https://www.astroarts.co.jp/article/hl/a/11091_67p |title=彗星の色の変化を追いかける |publisher=アストロアーツ |date=2020-02-13 |accessdate=2022-02-11 }}</ref>

<ref name="afpbb20150707">{{Cite web |url=http://www.afpbb.com/articles/-/3053861 |title=彗星に地球外「生命」存在の可能性、英天文学者チーム|publisher=[[フランス通信社|AFPBB]] |date=2015-07-07 |accessdate=2022-02-11 }}</ref>

<ref name="alma20200123">{{Cite web |url=https://alma-telescope.jp/news/phosphorus-202001?doing_wp_cron=1644533359.9823410511016845703125 |title=彗星と星形成領域にリンを含む分子を検出 -アルマ望遠鏡と彗星探査機ロゼッタの協働 |publisher=国立天文台 アルマ望遠鏡 |date=2020-01-23 |accessdate=2022-02-11 }}</ref>

<ref name="Altwegg2016">{{Cite journal |title=Prebiotic chemicals--amino acid and phosphorus--in the coma of comet 67P/Churyumov-Gerasimenko |last1=Altwegg |first1=K. |last2=Balsiger |first2=H. |last3=Bar-Nun |first3=A. ;|last4=Berthelier |first4=J. -J. |last5=Bieler |first5=A. |last6=Bochsler |first6=P. |last7=Briois |first7=C. |last8=Calmonte |first8=U. |last9=Combi |first9=M. R. |display-authors=9<!-- 実際は32人 --> |journal=Science Advances |volume=2 |issue=5 |page=e1600285 |year=2016 |doi=10.1126/sciadv.1600285 |bibcode=2016SciA....2E0285A }}</ref>

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<ref name="AST20211119">{{cite news |first1=Michael S. P. |last1=Kelley |first2=Kritti |last2=Sharma |first3=Vishwajeet |last3=Swain |first4=Harsh |last4=Kumar |first5=Varun |last5=Bhalerao |first6=G. C. |last6=Anupama |first7=Sudhanshu |last7=Barway |first8=Daniel |last8=Gardener |first9=Tim |last9=Lister |first10=Helen |last10=Usher |first11=Tony |last11=Angel |title=ATel #15053 - Apparent Outburst of Comet 67P/Churyumov-Gerasimenko |url=https://www.astronomerstelegram.org/?read=15053 |date=2021-11-19 |work=The Astronomer's Telegram |accessdate=2022-02-07 }}</ref>

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<ref name="Bertaux2015">{{Cite journal |title=Estimate of the erosion rate from H2O mass-loss measurements from SWAN/SOHO in previous perihelions of comet 67P/Churyumov-Gerasimenko and connection with observed rotation rate variations |last=Bertaux |first=Jean-Loup |journal=[[アストロノミー・アンド・アストロフィジックス|Astronomy & Astrophysics]] |volume=583 |issue=A38 |pages=10 pp |year=2015 |doi=10.1051/0004-6361/201525992 |bibcode=2015A&A...583A..38B }}</ref>

<ref name="Bibring2015">{{Cite journal |title=Philae's First Days on the Comet |last1=Bibring |first1=J. -P. |last2=Taylor |first2=M. G. G. T. |last3=Alexander |first3=C. |last4=Auster |first4=U. |last5=Biele |first5=J. |last6=Finzi |first6=A. Ercoli |last7=Goesmann |first7=F. |last8=Klingelhoefer |first8=G. |last9=Kofman |first9=W. |last10=Mottola |first10=S. |last11=Seidensticker |first11=K. J. |last12=Spohn |first12=T. |last13=Wright |first13=I. |journal=Science |volume=349 |issue=6247 |page=493 |year=2015 |doi=10.1126/science.aac5116 |bibcode=2015Sci...349..493B }}</ref>

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<ref name="El-Maarry2015">{{Cite journal |title=Regional surface morphology of comet 67P/Churyumov-Gerasimenko from Rosetta/OSIRIS images |last1=El-Maarry |first1=M. R. |last2=Thomas |first2=N. |last3=Giacomini |first3=L. |last4=Massironi |first4=M. |last5=Pajola |first5=M. |last6=Marschall |first6=R. |last7=Gracia-Berná |first7=A. |last8=Sierks |first8=H. |last9=Barbieri |first9=C. |display-authors=9<!-- 実際は54人 --> |journal=Astronomy & Astrophysics |volume=583 |issue=A26 |pages=28 pp |year=2015 |doi=10.1051/0004-6361/201525723 |bibcode=2015A&A...583A..26E }}</ref>

<ref name="El-Maarry2016">{{Cite journal |title=Regional surface morphology of comet 67P/Churyumov-Gerasimenko from Rosetta/OSIRIS images: The southern hemisphere |last1=El-Maarry |first1=M. R. |last2=Thomas |first2=N. |last3=Gracia-Berná |first3=A. |last4=Pajola |first4=M. |last5=Lee |first5=J. -C. |last6=Massironi |first6=M. |last7=Davidsson |first7=B. |last8=Marchi |first8=S. |last9=Keller |first9=H. U. |display-authors=9<!-- 実際は52人 --> |journal=Astronomy & Astrophysics |volume=593 |issue=A110 |pages=20 pp |year=2016 |doi=10.1051/0004-6361/201628634 |bibcode=2016A&A...593A.110E }}</ref>

<ref name="El-Maarry2017">{{Cite journal |title=Surface changes on comet 67P/Churyumov-Gerasimenko suggest a more active past |last1=El-Maarry |first1=M. Ramy |last2=Groussin |first2=O. |last3=Thomas |first3=N. |last4=Pajola |first4=M. |last5=Auger |first5=A. -T. |last6=Davidsson |first6=B. |last7=Hu |first7=X. |last8=Hviid |first8=S. F. |last9=Knollenberg |first9=J. |display-authors=9<!-- 実際は56人 --> |journal=[[サイエンス|Science]] |volume=355 |issue=6332 |pages=1392-1395 |year=2017 |doi=10.1126/science.aak9384 |bibcode=2017Sci...355.1392E }}</ref>

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<ref name="eso-VLT">{{Cite web |url=https://www.eso.org/public/images/potw1436a/ |title=VLT tracks Rosetta's comet |date=2014-09-08 |publisher=ESA |accessdate=2022-02-11 }}</ref>

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<ref name="Filacchione2020">{{Cite journal |title=An orbital water-ice cycle on comet 67P from colour changes |last1=Filacchione |first1=Gianrico |last2=Capaccioni |first2=Fabrizio |laast3=Ciarniello |first3=Mauro |last4=Raponi |first4=Andrea |last5=Rinaldi |first5=Giovanna |last6=De Sanctis |first6=Maria Cristina |last7=Bockelèe-Morvan |first7=Dominique |last8=Erard |first8=Stèphane |last9=Arnold |first9=Gabriele |last10=Mennella |first10=Vito |last11=Formisano |first11=Michelangelo |last12=Longobardo |first12=Andrea |last13=Mottola |first13=Stefano |journal=Nature |volume=578 |issue=7793 |pages=49-52 |year=2020 |doi=10.1038/s41586-020-1960-2 |bibcode=2020Natur.578...49F }}</ref>

<ref name="Fray2016">{{Cite journal |title=High-molecular-weight organic matter in the particles of comet 67P/Churyumov-Gerasimenko |last1=Fray |first1=Nicolas |last2=Bardyn |first2=Anaïs |last3=Cottin|first3=Hervé |last4=Altwegg |first4=Kathrin |last5=Baklouti |first5=Donia |last6=Briois |first6=Christelle |last7=Colangeli |first7=Luigi |last8=Engrand |first8=Cécile |last9=Fischer |first9=Henning |display-authors=9<!-- 実際は42人 --> |journal=Nature |volume=538 |issue=7623 |pages=72-74 |year=2016 |doi=10.1038/nature19320 |bibcode=2016Natur.538...72F }}</ref>

<ref name="Groussin2015">{{Cite journal |title=Temporal morphological changes in the Imhotep region of comet 67P/Churyumov-Gerasimenko |last1=Groussin |first1=O. |last2=Sierks |first2=H. |last3=Barbieri |first3=C. |last4=Lamy |first4=P. |last5=Rodrigo |first5=R. |last6=Koschny |first6=D. |last7=Rickman |first7=H. |last8=Keller |first8=H. U. |last9=A'Hearn |first9=M. F. |display-authors=9<!-- 実際は48人 --> |journal=Astronomy & Astrophysics |volume=583 |issue=A36 |pages=4 pp |year=2015 |doi=10.1051/0004-6361/201527020 |arxiv=1509.02794 |bibcode=2015A&A...583A..36G }}</ref>

<ref name="Heritier2018">{{Cite journal |title=On the origin of molecular oxygen in cometary comae |last1=Heritier |first1=K. L. |last2=Altwegg |first2=K. |last3=Berthelier |first3=J. -J. |last4=Beth |first4=A. |last5=Carr |first5=C. M. |last6=De Keyser |first6=J. |last7=Eriksson |first7=A. I. |last8=Fuselier |first8=S. A. |last9=Galand |first9=M. |display-authors=9<!-- 実際は17人 --> |journal=Nature Communications |volume=9 |page=2580 |doi=10.1038/s41467-018-04972-5 |bibcode=2018NatCo...9.2580H }}</ref>

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}}


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
* [[周期彗星の一覧]]
{{Commonscat|67P/Churyumov-Gerasimenko}}
* [[ロゼッタ (探査機)]]
* [[ルテティア (小惑星)]]
* [[シュテインス (小惑星)]]
* [[フィラエ]]


== 外部リンク ==
{{Commonscat|67P/Churyumov-Gerasimenko}}
* {{JPL small body|67P}}
* {{MPC link|67P|チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星}}
* [http://www.aerith.net/comet/catalog/0067P/index-j.html 吉田誠一のホームページ]
{{周期彗星ナビゲーター|デュトワ彗星|クレモラ彗星}}
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2022年2月27日 (日) 10:21時点における版

チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星
67P/Churyumov-Gerasimenko
ロゼッタにより撮影されたチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星のグレースケール画像。
ロゼッタにより撮影されたチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星のグレースケール画像。
分類 周期彗星
発見
発見日 1969年9月11日[1]
発見者 クリム・チュリュモフ[1]
発見場所 アルマ・アタ[1]
軌道要素と性質
元期:TDB 2457559.5(2016年6月20.0日)
軌道長半径 (a) 3.4647 au[2]
近日点距離 (q) 1.2427 au[2]
遠日点距離 (Q) 5.6868 au[2]
離心率 (e) 0.63413[2]
公転周期 (P) 6.45 [2]
軌道傾斜角 (i) 07.044 °[2]
近日点引数 (ω) 12.839 °[2]
昇交点黄経 (Ω) 50.095 °[2]
平均近点角 (M) 47.654 °[2]
前回近日点通過 2021年11月2日[3]
次回近日点通過 2028年4月9日[3]
最小交差距離 0.258 au(地球)[2]
0.083 au(木星)[2]
ティスラン・パラメータ (T jup) 2.745[2]
物理的性質
三軸径 4.1 km×3.3 km×1.8 km(大きい塊)[4]
2.6 km×2.3 km×1.8 km(小さい塊)[4]
体積 18.7 km3[注 1]
質量 9.982 ±×1012 kg[5]
平均密度 533 ± 6 kg/m3仮比重[5]
自転周期 12.4043 ± 0.0007 時間[6]
絶対等級 (H) 12.7(+コマ[2]
アルベド(反射能) 0.06[4]
赤道傾斜角 52 °[4]
表面温度
最低 平均 最高
-93 ℃[4] -43 ℃[4]
地下温度
最低 平均 最高
-243 ℃[4] -113 ℃[4]
Template (ノート 解説) ■Project

チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星英語: 67P/Churyumov-Gerasimenkoロシア語: 67P/Чурюмова―Герасименко)は、公転周期6.45年の周期彗星である[2]。現在は木星族彗星であるが、もとはエッジワース・カイパーベルト天体であったと考えられている[7]自転周期は約12.4時間[6]、最大速度は時速13万5000kmである[8]。大きさは約4.3km x 4.1kmで、完全な球形ではなく、2つの塊を繋げたような形をしている[4]。チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星は1969年にソビエト連邦の天文学者、クリム・チュリュモフスヴェトラナ・ゲラシメンコの写真上で初めて発見したため、この名前となった[1]。2021年11月2日には太陽に最も近くなる近日点を通過し[9][10][3]、次は2028年の4月に回帰することが予測されている[3]

また、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星は2004年3月に打ち上げられた欧州宇宙機関(ESA)のロゼッタの探査対象にもなった[11]。2014年8月6日にはランデブーに成功し[12][13]、9月10日には着陸のための軌道に入った[14]。探査機ロゼッタの着陸機であるフィラエは11月12日にチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に着陸し、彗星核に到達した初めての探査機となった[15][16][17]。2016年9月30日にはマアトと呼ばれる地域に着陸して任務を終了した[18][19]

発見

チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星は1969年にキエフ大学天文台のクリム・チュリュモフが初めて発見した。彼はスヴェトラナ・ゲラシメンコが旧カザフ・ソビエト社会主義共和国アルマ・アタにある[注 2]天体物理研究所英語版で9月11日にコマス・ソラ彗星を撮影するための写真から発見した。チュリュモフは写真乾板の端の方で彗星のような天体を見つけたがその時はコマス・ソラ彗星だろうと推定された[1]

チュリュモフはアルマ・アタから旧ウクライナ・ソビエト社会主義共和国キエフ[注 3]に戻ると撮影された写真乾板をより綿密に調べた。翌月の10月22日には彼の見つけた天体がコマス・ソラ彗星であるとすれば、予想より1.8もずれており、コマス・ソラ彗星ではありえないことに気づいた。さらに詳しく調べ続けた結果、予測された位置に薄暗く写ったコマス・ソラ彗星を確認し、彼の見つけた彗星のような天体は異なる天体であることが証明された[1]

見た目

ESAによるチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の3D画像。クリックしたまま動かすことで操作できる。

2014年7月14日にロゼッタにより撮影された画像からこの彗星のが不規則な形をしていることが明らかになり[20][21]、大きさは当時は3.5km×4kmと推定された[22]。形としては2つの塊がくっついてできたアヒルのおもちゃのような形状をしており、大きいほうの塊は4.1 km×3.3 km×1.8 km、小さいほうは2.6 km×2.3 km×1.8 kmほどの大きさである[4]。そして太陽からの熱を受けてそれぞれの塊はガスやダストを放出して質量を失っている。ロゼッタの着陸機フィラエの電池が切れる前の測定によるとチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に積もったダストの層は20 cmほどの厚さであり、その下には氷、あるいは氷とダストが混じったものが含まれている。ポロシティ(空隙率、空間の割合)は中心に向かうにつれて大きくなっている[23]。1回公転するたびに1.0±0.5 mほど、表面が薄くなると推定されている[24]。質量はおよそ100億トン(=1.0×1013 kg)である[5]

当初は接触連星のようにして2天体からできたものか(衝突説)、氷の昇華によってその特異的な形が生じたのか(浸食説)で2つの意見があった[11][13][25]。2015年9月には前者の仮説が明らかに正しいと結論づけられた[26][27]。衝突説によるとこの彗星は2つの塊が低速で穏やかに衝突して形成されたと考えられており、いわば太陽系小天体同士の接触連星である。2つの塊の内部には段丘状の層があり、外層がダストやガスを放出してはぎ取られるときに見える。この層は2つの塊を比較すると別方向に向いており、このことからこの2つの塊はもとは別の天体であったと考えられる[28][26]

2020年の研究によるとチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の表面は太陽から離れているときは赤みを帯び、太陽に接近しているときは青みを帯びている。これは太陽から遠い間は彗星表面がダストで覆われているため赤みを示し、太陽に接近すると地下にあった水が露出して青みを示すようになるためである。逆にコマは太陽から遠い間はダストがほとんど含まれていないが水が含まれているため青く見え、接近するとダストが放出されるため赤く見えるようになる[29][30][31]

チュリュムーン

2019年8月12日、ESAの研究者らはロゼッタが2015年10月21日に撮影した映像上にチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の周辺を公転する小さな断片が存在することに気付いた。また、ただ1日だけ見えたわけではなく、10月23日まで観測された。この断片の大きさは直径4 mほどでこれまで彗星の周りに観測された塊としては最も大きい。ロゼッタの研究者らはこの小物体をチュリュムーン(英語: Churymoon)と名付けた[32][33][34]

表面

チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星表面のダストや宇宙線の様子。背景で動いているのは恒星である。探査機ロゼッタに搭載されたOSIRIS英語版により撮影された。
ロゼッタで観測されたチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の表面。(A)は撮影し、加工なしの画像。(B)は実際の表面を映すために飛び散っているダスト等を加工処理した画像。(C)は逆にそれだけを取り出し、表面を消した画像。

チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の表面は26の地域に分けることができ、そのすべてが古代エジプトにちなんで名付けられている。2つの塊のうち大きい塊のほうは男の神、小さい塊のほうは女神の名前が充てられている。最初に地域が区画された論文では南側[注 4]はまだ詳細に見えなかったためまず19の地域が命名された[35][36]。その後、南側も明らかになると7の地域が同様の命名法で名付けられた[37][38]

地域名[注 5] 状態 地域名 状態 地域名 状態
Ma'at ダストで覆われている Ash英語版 ダストで覆われている Babi英語版 ダストで覆われている
Seth くぼみがあり壊れやすい Hatmehit 大規模な低地 Nut 大規模な低地
Aten 大規模な低地 Hapi 滑らか Imhotep 滑らか
Anubis 滑らか Maftet英語版 固い Bastet 固い
Serqet 固い Hathor 固い Anuket 固い
Khepry 固い Aker英語版 固い Atum 固い
Apis 固い Khonsu 固い Bes 固い
Anhur英語版 固く砕けやすい Geb 固い Sobek 固い
Neith 固い Wosret英語版 固い

表面の地形としては、底が平らなクレーターや点在する大きな岩などが確認されており[39]、崖崩れなどにより、水の氷が新たに露出したと考えられる明るい部分も発見された[40]。また、側面が切り立った穴が多数発見され、中には直径220 m、深さ185 mに達する穴も存在していた。穴の形成過程は解明されていないが、彗星の内部に空洞が存在しており、表面が崩れ落ち形成されたという推測がなされている[41]。また、この穴は彗星が急激に増光するアウトバーストにも関連するものだと考えられている[42]。。

門のような地形

チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星には門のような地形があり周辺よりも突出している。発見されたのは2箇所で、ロゼッタの探査計画に関わったが、亡くなってしまった者の名前が付けられている[43]

名称 由来
C. Alexander Gate Claudia Alexander英語版
A. Coradini Gate Angioletta Coradini英語版

表面の変化

ロゼッタが観測を続けている間、この彗星の表面では特に近日点付近で様々な変化が見られた[44][45][46]。表面の地質が滑らかなImhotep地域では円形の構造が発達していく様子が確認され、その大きさは1日に数メートルほど大きくなっていった[47][48]。また、彗星の首にあたる部分では裂け目が2014年に発見されてから2016年には再度観測され、伸びていることが分かった[49]。さらに新しい裂け目も近くに生成されているのが確認された。数10mの丸石が動いているのも同じ場所で確認された[50]

崖の崩壊する様子も観測されており、その一例として2015年7月にロゼッタに搭載されたカメラに崖崩れによって出てきた光が映し出された。ロゼッタの研究チームはこの崖の崩壊が彗星が急に増光するアウトバーストという現象に関係しているものと考えた。崖崩れによってアウトバーストが起こったと報告されたのは初めてであった[51][52]

2021年11月17日にもアウトバーストは起こり、見かけの等級は12.16から11.52まで変化した。このアウトバーストを発見したZwicky Transient Facility英語版によると、そのときのチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星は太陽から1.23 au、地球から0.42 au離れていた[53]

Cheops

チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の大きい塊のほうにはCheopsと名付けられた45m程度の巨石がある。その形がギザの大ピラミッドを連想させるため、クフにちなんでCheopsと名付けられた[54][55]

軌道

チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の軌道。近日点では火星の軌道より内側にあるが、遠日点では木星の軌道よりも外側にある。
ロゼッタがチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に接近したときに撮影された86枚の画像を合成したアニメーション。2014年8月ごろ。

チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星は現在は木星族彗星であり、もとは他の彗星と同様エッジワース・カイパーベルト天体であったと考えられている[7]

1840年までは彗星の近日点距離は4.0 auほどあり彗星として太陽からの熱を受けて核を蒸発させて輝くことはできなかった。しかし、1840年に木星の付近を通過し、近日点距離は3.0 auまで減少し、その後にまた接近して2.77 auまで減少した[56]

1959年2月にも木星付近を通過したことにより、近日点距離は1.29 auにまで減少し[2]、現在も1.21 au程度である[3]。2220年にも木星に接近することが予測されているが、それ以降は軌道がどう変化するかが不確定な状態でありまだ分からない[57]

2009年に近日点を通過する前は自転周期が12.76時間であったが、通過後、12.4時間に減少した。これはおそらくガスなどが昇華する過程においてトルクが働いたためであると考えられている[6]

2015年の近日点通過

2014年9月時点でチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の見かけの等級は約20であった[10]。2015年8月13日には近日点に達した[9][3]。2014年12月から2015年9月までは離角が45 °未満であった[58]。2015年2月10日には離角5 °での状態になり、地球とこの彗星の距離は太陽をはさんで3.35 au離れた位置にあった[注 6][58]。2015年5月5日には天の赤道赤緯0 °)を通過した[58]。近日点を通過してすぐのときにはふたご座の位置にあり、12程度で見えたが、2016年7月にもなると20等程度にまで下がっていった[59]

ロゼッタ計画

ロゼッタ計画は彗星の表面に関するデータの収集と彗星に数年間ランダー(着陸機)を着陸させることを初めて成功させた[60]。探査機は2004年に打ち上げられ、2014年に目標としていたチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に着陸し、2016年に彗星上に着陸して役目を終えた[61]

接近前の観測

ロゼッタ計画はもとはワータネン彗星の探査が目的であったが、打ち上げが遅れてしまったためチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星となった。準備のため、2003年3月12日にハッブル宇宙望遠鏡はチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星を撮影した。その結果、3Dモデルが作られ、当時は楕円形をしていると考えられていた[62]

2012年4月25日にはアマチュア天文家Nick Howes、Giovanni Sostero、Ernesto Guidoらにより地上の望遠鏡から遠日点あたりにあるチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星が確認された[63]

ランデブー

2004年3月2日から2016年9月9日までのロゼッタの軌道。
      ロゼッタ ·       チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星 ·       地球 ·       火星 ·       小惑星ルテティア ·       小惑星シュテインス
チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星を中心にした時のロゼッタの2014年8月1日から2015年3月31日までの軌道。
      ロゼッタ ·       チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星

2014年5月よりロゼッタは8月6日のランデブーに向けて地上からの操作により速度を落とし始め、彗星との相対速度が2800km/hになるように調整された[11][64][65]。そして、ランデブーの当日になると、相対速度は1m/sにまで落とされた。これは人間の歩く速さとほぼ同じである[13][12][64]。9月10日には核に30 kmまで接近した[14][66]

着陸

着陸するフィラエ(想像図)

2014年11月12日午前8時30分(UST)ごろ[注 7]にランダーの降下が始まった[67]。ランダーのフィラエの重量は220 lb(100kg)であった[11][68]。着地場所はエジプトのアスワン・ハイ・ダム建設後にフィラエ神殿が移設されたアギルキア島英語版にちなんで Agilkia と名付けられた[69]重力加速度は2004年のシミュレーションによると1.0×10−3m/s(地球の1万分の1程度)と見積もられていた[70]

質量が100 kgと比較的小さいため、彗星に着地するためにはランダーのフィラエを固定する技術を必要とする。フィラエには事前にチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の弱い重力に対応できる設計がなされており、のように撃ち込んで固定するもの[71]やねじのようにして彗星表面に固定させるもの、ゆっくり着地するためのスラスター[72]、降下中に姿勢を保つフライホイール[73][74]などが搭載されていた。しかしスラスターや銛のようなものは着地の際にうまく機能しなかった[73][75]。ランダーは2回バウンドし[76]、最初の着地から2時間後、3回目にしてようやく静止した[77]

フィラエとの通信は2014年11月15日に電池切れのために途絶えてしまった。しかしESAの欧州宇宙運用センター(ESOC)は2015年6月13日、約7か月ぶりに信号を得ることに成功した[78]。2016年9月2日にはチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星のどの位置にあるか不明であったフィラエがロゼッタにより確認された。フィラエはそのとき暗い隙間の中で静止しており、本体と2つの足が確認された[79][80]。この発見により、フィラエが撮影してきた場所がどのあたりかを特定することができた[80]

ロゼッタによる成果

ロゼッタが2014年3月21日に撮影した最初の写真。へびつかい座M107が中央やや左下に写っており、丸で囲まれているのがチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星である。
2014年7月14日に撮影されたチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の加工写真。その特異な形が初めてあらわになった。
2015年4月15日にロゼッタにより撮影されたガスを放出するチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星。色はフォールスカラー(光の波長ごとに色を後付け)によるものである。
水の存在と重水素

2014年6月6日、ロゼッタが36万kmまで接近したとき毎秒1Lの割合で水蒸気が放出されているのが検出された。このときの太陽からの距離は3.93 auであった[81][82]。ロゼッタから観測されたチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星上の水蒸気の組成は地球上にあるものとかなり異なっており、水に含まれる重水素軽水素の比率が地球の3倍よりも大きいことが明らかになった。これにより、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星と似た彗星が地球に水をもたらした可能性は低くなった[7][83][84][85]。また、水蒸気には水に対する存在比でホルムアルデヒドが0.32 %、メタノールが0.21 %含まれており、この割合は太陽系内の彗星では一般的な範囲に収まっている[86]。2015年1月22日にNASAは2014年の6月から8月にかけて水蒸気を放出した量が10倍になったと公表した[87]

彗星上の磁場

核はフィラエの下降・着陸中に行われた測定によると磁場を持っていない。これが多くの彗星に適用されるならば太陽系の形成において磁性はあまり重要ではなかったことを示唆している[88][89]

分子の分解反応

彗星の核からコマに放出された水や二酸化炭素分子は分解されることが知られていたが、その原因は太陽からの光、すなわち光子によるものであると考えられていた。しかし、ロゼッタに搭載された分光器ALICEによりそうではなく、核の上空1 kmほどで太陽放射により水分子が光イオン化したときに生成される電子が分解を引き起こしていることが明らかになった[90][91]

有機化合物の存在

フィラエに搭載されたCOSAC、Ptolemyという装置によりチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星からは16種類もの有機化合物が検出された。この中でもアセトアミドアセトンイソシアン酸メチルプロピオンアルデヒドの4種類の物質は彗星からは初めて検出された[92][93][94]宇宙生物学者のChandra WickramasingheとMax Wallisはこのように彗星表面に有機物が含まれているという特性から微生物地球外生命の存在を説明できると述べた[95][96]。彼らは微生物の活動によって地下に高圧ガスを含んだ空洞が形成され、これが割れることで有機物質が表面に供給されているとしている[39]。ただし、ロゼッタの研究者らはその意見については推測にすぎないと述べている[97]。探査機ロゼッタも着陸機フィラエもどちらも生命を直接検出する装置は搭載していなかった[95]。これまでに彗星上で見つかっているアミノ酸グリシンのみでその前駆体であるメチルアミンエチルアミンとともに発見されている[98][99]。これらが発見されたのはチュリュモフ・ゲラシメンコ彗の他にもヴィルト第2彗星でも発見されている[98]

彗星から放出されたダスト中にも固体の有機化合物が確認された。そしてこの有機化合物は炭素質コンドライト中に含まれる不溶性の物質のように巨大分子の形で結合している。このことから彗星で観測された有機化合物は隕石中にある不溶性の物質と起源が同じで、彗星に取り込まれる前後でも変化していないと考えられている[100]

酸素原子の存在

ロゼッタのミッションの中で最も優れた発見は彗星付近で多量の遊離酸素分子を検出したことである。現在の太陽系形成モデルではチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星が形成された46億年前には水素と酸素が反応して水になる激しく、高温の過程を経るため酸素分子は消滅していたはずであった[101]

彗星での測定から酸素・水の比(O
2
/H
2
O)がコマ内で等方的で太陽からの距離に左右されないということが分かった。このため、酸素分子は彗星が形成された際に核内に取り込まれたと考えられている[102]。ただし、のちの研究で酸素を含む物質が表面にあるとき、水とそれが衝突して酸素分子が生じる可能性が示唆された[103]。そのうえ、窒素分子が検出されたことから、30 Kよりも低温の状況下でこの彗星が形成されたことも示唆された[104]。しかし、2018年7月3日にはそれだけでは十分に説明できないと指摘された[105]。他にも過酸化水素の分解による説などが提唱されている[106]

今後の探査

チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星のサンプルリターンミッションとして探査機CAESAR英語版が提案されている[107][108]。このミッションはNASAのニューフロンティア計画の4つ目の計画の候補の中で最後の2つにまで選ばれた[109]。2019年6月には最終的にもう一つの候補であったドラゴンフライが選ばれたため見送りとなった[110][111]

ギャラリー

脚注

注釈

  1. ^ 質量9982×109 kg。平均密度533 kg/m3 = 533×109 kg/m3から計算。
  2. ^ 現在はカザフスタンにあり、都市の名称もアルマトイになっている。
  3. ^ 現在はウクライナにある。
  4. ^ 自転軸を中心に反時計回りを自転の方向としたときに上に来るほうを北側、下に来るほうを南側としている
  5. ^ リンク先は由来となった神
  6. ^ r(太陽とチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の距離)=2.35 auより余弦定理から導ける。
  7. ^ 日本時間では午後17時30分ごろ

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関連項目

外部リンク

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