「性的少数者」の版間の差分
→恋愛指向: 特定の団体のみの見解を記すのは中立性に欠けるので、複数の当事者団体・支援者団体の見解を明記。 |
→恋愛的指向: 日本語版なので日本語の典拠を追加。単一の団体の一次資料のみでは中立性に欠けるため。 |
||
(2人の利用者による、間の2版が非表示) | |||
9行目: | 9行目: | ||
世間的に、[[異性]]と惹かれ合うことや、[[性別の割り当て|出生時に割り当てられた性別]]がそのまま自分の[[ジェンダー]]として違和感も持たないことが当たり前として暗黙で扱われてきた歴史があり、これらは性におけるマジョリティ(多数者・強者)として疑問視されずに社会に存在してきた<ref name=jobrainbow210331>{{Cite web|url= https://jobrainbow.jp/magazine/whatissexualminority |title= セクシュアルマイノリティ・セクマイとは?【定義や種類は「LGBT」と違う?】 |accessdate=2021/04/13|publisher= JobRainbow |author= |date=2021/03/31 }}</ref>。セクシュアル・マイノリティはそれらに当てはまらない人たちを指す。 |
世間的に、[[異性]]と惹かれ合うことや、[[性別の割り当て|出生時に割り当てられた性別]]がそのまま自分の[[ジェンダー]]として違和感も持たないことが当たり前として暗黙で扱われてきた歴史があり、これらは性におけるマジョリティ(多数者・強者)として疑問視されずに社会に存在してきた<ref name=jobrainbow210331>{{Cite web|url= https://jobrainbow.jp/magazine/whatissexualminority |title= セクシュアルマイノリティ・セクマイとは?【定義や種類は「LGBT」と違う?】 |accessdate=2021/04/13|publisher= JobRainbow |author= |date=2021/03/31 }}</ref>。セクシュアル・マイノリティはそれらに当てはまらない人たちを指す。 |
||
といっても、セクシュアル・マイノリティは[[人類史]]において常にマイノリティだったわけではなく、例えば同性愛は[[古代イスラエル]]や[[古代ギリシャ]]では普通にありふれていた<ref name=apa-history>{{Cite web|url= https://www.apa.org/pi/lgbt/resources/history |title= History of Lesbian, Gay, Bisexual and Transgender Social Movements |accessdate=2021/04/14|publisher= American Psychological Association |author= |date= }}</ref>。しかし、世界の変容とともにしだいに迫害を受ける立場に追いやられた{{R| apa-history}}。その結果、当事者たちは自分らしさを隠しながら生きるしかなかった。[[ハーレム・ルネサンス]]に重なる1920年代のニューヨークの都会ではゲイ・コミュニティが栄え、[[アフリカ系アメリカ人]]女性の[[ブルース]]音楽は、レズビアンを表現した{{R| apa-history}}。そ |
といっても、セクシュアル・マイノリティは[[人類史]]において常にマイノリティだったわけではなく、例えば同性愛は[[古代イスラエル]]や[[古代ギリシャ]]では普通にありふれていた<ref name=apa-history>{{Cite web|url= https://www.apa.org/pi/lgbt/resources/history |title= History of Lesbian, Gay, Bisexual and Transgender Social Movements |accessdate=2021/04/14|publisher= American Psychological Association |author= |date= }}</ref>。中近世の日本では、[[衆道]]([[男色]])が一般的に広く根付いていた<ref name=president210611>{{Cite web|url= https://president.jp/articles/-/46819 |title= 「日本の伝統と言いながら日本史に無知」LGBTをやたらに恐れる保守派の無教養 |accessdate=2021/06/11|publisher= PRESIDENT Online |author= |date=2021/06/11 }}</ref>。しかし、世界の変容とともにしだいに迫害を受ける立場に追いやられた{{R| apa-history}}。その結果、当事者たちは自分らしさを隠しながら生きるしかなかった。[[ハーレム・ルネサンス]]に重なる1920年代のニューヨークの都会の裏ではゲイ・コミュニティが栄え、[[アフリカ系アメリカ人]]女性の[[ブルース]]音楽は、レズビアンを密かに表現した{{R| apa-history}}。それでも迫害は強まるばかりだった。1950年代から1960年代にかけてアメリカ政府は[[共産主義者]]を標的にした[[赤狩り]]の一環として、同愛者とおぼしき人を粛清する大規模な取り組みを実行した({{仮リンク| ラベンダーの恐怖|en| Lavender scare}})<ref name=nglcc171003>{{Cite web|url= https://www.nglcc.org/blog/lgbt-history-lavender-scare |title= LGBT History: The Lavender Scare |accessdate=2021/06/08|publisher= nglcc.org |author= |date=2017/10/03 }}</ref>。[[精神医学]]の権威だった{{仮リンク| チャールズ・ソカリデス|en| Charles W. Socarides}}を始め、多くの医学界の専門家は同性愛を精神的な病と見なした<ref name=newyorker130408>{{Cite web|url= https://www.newyorker.com/news/news-desk/coming-out-to-my-father |title= Coming Out to My Father |accessdate=2021/06/08|publisher= The New Yorker |author=Richard Socarides |date=2013/04/08 }}</ref><ref name="ソカリデス" group="注釈">なお、チャールズ・ソカリデスの息子であるリチャード・ソカリデスはゲイである。</ref>。 |
||
そんな中、1969年6月28日、ニューヨークのゲイバー「ストーンウォール・イン」が警察による踏み込み捜査を受けた際、居合わせた性的少数者らが初めて警官に真っ向から立ち向かったことで([[ストーンウォールの反乱]])、当事者はマイノリティとしての現状に声を上げるという転機を迎えた{{R| apa-history}}。1969年のストーンウォールでの出来事直後から、「{{仮リンク| Gay Liberation Front |en| Gay Liberation Front}}(GLF)」や「{{仮リンク| Street Transvestite Action Revolutionaries |en| Street Transvestite Action Revolutionaries}}(STAR)」といった当事者団体が続々と結成され、平等や権利を公で主張し始めた{{Sfn|ジェローム・北丸(訳)|2019|p=80}}。1977年、[[ハーヴェイ・ミルク]]は[[カリフォルニア州]][[サンフランシスコ市]]の市会議員に当選し、アメリカで初めて選挙で選ばれたゲイを公表していた公職者となった<ref name=milk>{{Cite web|url= https://milkfoundation.org/about/harvey-milk-biography/ |title= The Official HARVEY MILK Biography |accessdate=2021/06/08|publisher= Milk Foundation |author= |date= }}</ref><ref name="ミルク" group="注釈">1978年11月27日、射殺された。</ref>。しかし、すぐに差別が無くなることもなく、正しい理解と平等への道のりは険しいものだった。[[エイズ]]が大流行をし始めた1980年代初期には、エイズは「ゲイの[[癌]]」とセンセーショナルに報道された(実際は同性愛者に限らず感染する)<ref name=npr-gaycancer>{{Cite web|url= https://www.npr.org/templates/story/story.php?storyId=5391495 |title= Remembering the Early Days of 'Gay Cancer' |accessdate=2021/06/09|publisher= NPR |author= |date=2006/05/08 }}</ref>。 |
|||
それ以降、世界中で性的少数者は重大なトピックとなった。2006年の[[ジョグジャカルタ原則]]では性的少数者の[[人権]]を守るべく、国家がとるべき措置をあげ、29の原則にまとめられた<ref name=hurights>{{Cite web|url= https://www.hurights.or.jp/archives/newsinbrief-ja/section4/2017/12/lgbti10201711.html |title= LGBTIの人の権利に関する文書「ジョグジャカルタ原則」10年ぶりに更新 |accessdate=2021/04/16 |publisher= ヒューライツ大阪 |author= |date= }}</ref>{{Sfn|LGBT法連合会|2019|p=14}}。2011年6月17日には、性的指向と性自認に関する声明と[[ウィーン宣言及び行動計画]]の実現のため、国際連合人権理事会は国際連合人権高等弁務官に2011年12月までに、全世界の性的指向と性自認による人権蹂躙の詳細の調査を求め、その問題を理事会で審議するという決議を採択した<ref>[http://ilga.org/ilga/static/uploads/files/2011/6/17/RESOLUTION%20L9rev1.pdf Human Rights Council Resolution, seventeenth session]</ref>。 これを受け、[[国際連合人権高等弁務官事務所]]は2011年11月17日付けで報告書を作成した<ref>[http://www2.ohchr.org/english/bodies/hrcouncil/docs/19session/A.HRC.19.41_en.pdf Discriminatory laws and practices and acts of violence against individuals based on their sexual orientation and gender identity, A/HRC/19/41]</ref>。 |
それ以降、世界中で性的少数者は重大なトピックとなった。2006年の[[ジョグジャカルタ原則]]では性的少数者の[[人権]]を守るべく、国家がとるべき措置をあげ、29の原則にまとめられた<ref name=hurights>{{Cite web|url= https://www.hurights.or.jp/archives/newsinbrief-ja/section4/2017/12/lgbti10201711.html |title= LGBTIの人の権利に関する文書「ジョグジャカルタ原則」10年ぶりに更新 |accessdate=2021/04/16 |publisher= ヒューライツ大阪 |author= |date= }}</ref>{{Sfn|LGBT法連合会|2019|p=14}}。2011年6月17日には、性的指向と性自認に関する声明と[[ウィーン宣言及び行動計画]]の実現のため、国際連合人権理事会は国際連合人権高等弁務官に2011年12月までに、全世界の性的指向と性自認による人権蹂躙の詳細の調査を求め、その問題を理事会で審議するという決議を採択した<ref>[http://ilga.org/ilga/static/uploads/files/2011/6/17/RESOLUTION%20L9rev1.pdf Human Rights Council Resolution, seventeenth session]</ref>。 これを受け、[[国際連合人権高等弁務官事務所]]は2011年11月17日付けで報告書を作成した<ref>[http://www2.ohchr.org/english/bodies/hrcouncil/docs/19session/A.HRC.19.41_en.pdf Discriminatory laws and practices and acts of violence against individuals based on their sexual orientation and gender identity, A/HRC/19/41]</ref>。 |
||
31行目: | 33行目: | ||
== 含まれる範囲 == |
== 含まれる範囲 == |
||
性的少数者は[[多様性]]に富んでいるが、性的指向と性自認の2つの観点から語られることが多い<ref name=verywell201130>{{Cite web|url= https://www.verywellmind.com/what-are-sexual-minorities-21876 |title= What Sexual Minority Means |accessdate=2021/04/13|publisher= Verywell Mind |author= |date=2020/11/30 }}</ref>。実際はさらに{{仮リンク|性表現|en| Gender expression}} |
性的少数者は[[多様性]]に富んでいるが、性的指向と性自認の2つの観点から語られることが多い<ref name=verywell201130>{{Cite web|url= https://www.verywellmind.com/what-are-sexual-minorities-21876 |title= What Sexual Minority Means |accessdate=2021/04/13|publisher= Verywell Mind |author= |date=2020/11/30 }}</ref>。実際はさらに[[恋愛的指向]]や{{仮リンク|性表現|en| Gender expression}}なども加わって複雑で無数の組み合わせがあり、グラデーションのように幅(スペクトル)もあって流動的である<ref name=trevor-comingout>{{Cite web|url= https://www.thetrevorproject.org/wp-content/uploads/2019/10/Coming-Out-Handbook.pdf |title= COMING OUT A Handbook for LGBTQ Young People |accessdate=2021/04/20 |publisher= The Trevor Project |author= |date= }}</ref>{{Sfn|アイリス・野中(訳)|2021|p=20}}{{Sfn|アシュリー・須川(訳)|2017|p=41}}。 |
||
=== 性的指向 === |
=== 性的指向 === |
||
性的指向とは、どんなジェンダーに性的な魅力を感じるか(もしくは感じないか)ということである{{Sfn|アシュリー・須川(訳)|2017|p=140}}<ref name=verymind210601>{{Cite web|url= https://www.verywellmind.com/glossary-of-must-know-sexual-identity-terms-5186275 |title= Glossary of Must-Know Sexual Identity Terms |accessdate=2021/06/06|publisher= Verywell Mind |author= |date=2021/06/01 }}</ref>。 |
|||
性的指向については、マイノリティとされている主なものは、以下のとおりである{{R| verywell201130}}<ref name="セクシャル" group="注釈">日本語では「セクシュアル」を「セクシャル」と表記することもある(例えば、バイセクシャル、パンセクシャル、アセクシャルなど)。</ref>。 |
性的指向については、マイノリティとされている主なものは、以下のとおりである{{R| verywell201130}}<ref name="セクシャル" group="注釈">日本語では「セクシュアル」を「セクシャル」と表記することもある(例えば、バイセクシャル、パンセクシャル、アセクシャルなど)。</ref>。 |
||
44行目: | 48行目: | ||
** '''[[ホモフレキシブル]]''' … 基本的に同性愛だが、時折そうでないことがある{{R| verywell210327p}}。 |
** '''[[ホモフレキシブル]]''' … 基本的に同性愛だが、時折そうでないことがある{{R| verywell210327p}}。 |
||
** '''[[アブロセクシュアル]]''' … どのジェンダーに惹かれるかは流動的{{R| verywell210327p}}。 |
** '''[[アブロセクシュアル]]''' … どのジェンダーに惹かれるかは流動的{{R| verywell210327p}}。 |
||
* '''[[アセクシュアル]]'''(無性愛)… どのジェンダーにも性的に惹かれない。 |
* '''[[アセクシュアル]]'''(無性愛)… どのジェンダーにも性的に惹かれない。総称としても用いられる{{Sfn|アシュリー・須川(訳)|2017|p=173}}。 |
||
** '''[[デミセクシュアル]]''' … 他者との情緒的なつながり(信頼関係)がある場合のみ、性的に惹かれる<ref name=aven-general>{{Cite web|url= https://www.asexuality.org/?q=general.html |title= General FAQ |accessdate=2021/04/14|publisher= The Asexual Visibility and Education Network |author= |date= }}</ref>。 |
** '''[[デミセクシュアル]]''' … 他者との情緒的なつながり(信頼関係)がある場合のみ、性的に惹かれる<ref name=aven-general>{{Cite web|url= https://www.asexuality.org/?q=general.html |title= General FAQ |accessdate=2021/04/14|publisher= The Asexual Visibility and Education Network |author= |date= }}</ref>。 |
||
** '''[[グレイセクシュアル]]''' … ごく稀にしか性的に惹かれない{{R| aven-general}}。 |
** '''[[グレイセクシュアル]]''' … ごく稀にしか性的に惹かれない{{R| aven-general}}。 |
||
** '''[[リスセクシュアル]]''' … 性的に惹かれるが、その感情を返してほしいとは思わない。もしくはパートナーになることにこだわらない<ref name=huff201104>{{Cite web|url= https://www.huffingtonpost.jp/entry/story-asexual-survey_jp_5f9fae76c5b658b27c3c283a |title= 「他者に恋愛的/性的に惹かれない」アロマンティック/アセクシュアル約1700人対象の調査結果が公表 |accessdate=2021/04/15|publisher= ハフポスト|author= |date=2020/11/04 }}</ref> |
** '''[[リスセクシュアル]]''' … 性的に惹かれるが、その感情を返してほしいとは思わない。もしくはパートナーになることにこだわらない<ref name=huff201104>{{Cite web|url= https://www.huffingtonpost.jp/entry/story-asexual-survey_jp_5f9fae76c5b658b27c3c283a |title= 「他者に恋愛的/性的に惹かれない」アロマンティック/アセクシュアル約1700人対象の調査結果が公表 |accessdate=2021/04/15|publisher= ハフポスト|author= |date=2020/11/04 }}</ref> |
||
** '''[[キュピオセクシュアル]]''' … 他者に性的に惹かれないが、性的な関係や行動には興味がある<ref name=healthline-terms>{{Cite web|url= 46 Terms That Describe Sexual Attraction, Behavior, and Orientation |title= https://www.healthline.com/health/different-types-of-sexuality |accessdate=2021/05/19 |publisher= healthline |author= |date= }}</ref>。 |
** '''[[キュピオセクシュアル]]''' … 他者に性的に惹かれないが、性的な関係や行動には興味がある<ref name=healthline-terms>{{Cite web|url= 46 Terms That Describe Sexual Attraction, Behavior, and Orientation |title= https://www.healthline.com/health/different-types-of-sexuality |accessdate=2021/05/19 |publisher= healthline |author= |date= }}</ref>。 |
||
** '''[[エースフラックス]]''' … ある日はデミセクシュアルと感じ、別の日は完全にアセクシュアルだと感じるなど、揺れ動く{{Sfn|アシュリー・須川(訳)|2017|p=173}}。 |
|||
* '''[[オートセクシュアル]]''' … 自分自身に性的に惹かれる{{R| healthline-terms}}。 |
* '''[[オートセクシュアル]]''' … 自分自身に性的に惹かれる{{R| healthline-terms}}。 |
||
バイセクシュアルの人は、ゲイやレズビアンになる途中段階だと誤解されやすいが、明確な性的指向である<ref name=glaad-bisexual>{{Cite web|url= https://www.glaad.org/reference/bisexual |title= GLAAD Media Reference Guide - In Focus: Covering the Bisexual Community |accessdate=2021/04/20 |publisher= GLAAD |author= |date= }}</ref>。 |
「ゲイ」という言葉は、男性に限らず同性愛者含めたマイノリティな性的指向全般を総称して指すこともあるが、この用法を嫌う人もいる{{Sfn|アシュリー・須川(訳)|2017|p=152}}。バイセクシュアルの人は、ゲイやレズビアンになる途中段階だと誤解されやすいが、明確な性的指向である<ref name=glaad-bisexual>{{Cite web|url= https://www.glaad.org/reference/bisexual |title= GLAAD Media Reference Guide - In Focus: Covering the Bisexual Community |accessdate=2021/04/20 |publisher= GLAAD |author= |date= }}</ref>。 |
||
=== 恋愛的指向 === |
|||
「性的なもの(性的指向)」と「ロマンチックなもの(恋愛的指向)」に分けて考える場合もあり<ref name=verywell210223a>{{Cite web|url= https://www.verywellmind.com/what-to-do-when-youre-questioning-your-sexuality-5112793 |title= What to Do When You're Questioning Your Sexuality |accessdate=2021/04/13|publisher= Verywell Mind |author= |date=2021/02/23 }}</ref>、これは「Split Attraction Model(SAM)」と呼ばれ、主にアセクシュアルのコミュニティでよく用いられている{{R| betterhelp201119}}。恋愛的指向も含めた性的マイノリティの総称として「GSRMs」が使われることもある{{R|Lapointe2016|Choudhuri2019}}。具体的には、性的に誰にも惹かれない人を「アセクシュアル」というのに対して、恋愛的に誰にも惹かれないのは「'''[[アロマンティック]]'''」といった表現となる<ref name=gqmagazine201206>{{Cite web|url= https://www.gq-magazine.co.uk/lifestyle/article/asexuality-meaning |title= Everything you ever wanted to know about asexuality |accessdate=2021/04/13|publisher= British GQ |author= |date=2020/12/06 }}</ref><ref name=betterhelp201119>{{Cite web|url= https://www.betterhelp.com/advice/attraction/what-is-the-split-attraction-model/ |title= What Is The Split Attraction Model? |accessdate=2021/04/17|publisher= Betterhelp |author= |date=2020/11/19 }}</ref><ref name=aurea-term>{{Cite web|url= https://www.aromanticism.org/en/basic-terms |title= Basic Terms |accessdate=2021/06/06|publisher= AUREA |author= |date= }}</ref>。性的指向と恋愛的指向が一致しないことは「クロス・オリエンテーション(cross orientation)」と呼ばれる<ref name=Lund2016 >{{Cite journal|last1=Lund|first1=Emily M.|last2=Thomas|first2=Katie B.|last3=Sias|first3=Christina M.|last4=Bradley|first4=April R.|date=2016-10-01|title=Examining Concordant and Discordant Sexual and Romantic Attraction in American Adults: Implications for Counselors|journal=Journal of LGBT Issues in Counseling|volume=10|issue=4|pages=211–226|doi=10.1080/15538605.2016.1233840|s2cid=151856457|issn=1553-8605}}</ref>。 |
|||
指向が性的と恋愛的に分離できると考えるようになったのは最近のことではなく、例えば、1879年に[[性科学]]の専門家で人権社会運動家でもある{{仮リンク|カール・ハインリッヒ・ウルリッヒス|en| Karl Heinrich Ulrichs}}がそうした考えを提唱していた<ref name=aurea190802>{{Cite web|url= https://www.aromanticism.org/en/news-feed/splitting-attraction-history-j4y96 |title= Splitting Attraction: A History of Discussing Orientation |accessdate=2021/06/06|publisher= AUREA |author= |date=2019/08/02 }}</ref>。1979年には心理学者の{{仮リンク|ドロシー・テノフ|en| Dorothy Tennov}}が著作『Love and Limerence』の中で、ロマンティックな魅力からくる精神状態を「{{仮リンク| limerent |en| Limerence}}」と表現し、その状態がないことを「non-limerent」と位置付けた<ref name=limerence200905>{{Cite web|url= https://livingwithlimerence.com/what-is-limerence/ |title= What is limerence? |accessdate=2021/06/14|publisher= Living with Limerence |author= |date=2020/09/05 }}</ref>。その後、2000年から2005年の間にアセクシュアル当事者の最大のオンラインコミュニティである「AVEN」が中心となって「Split Attraction Model」が定着し始めた<ref name=eusci201026>{{Cite web|url= https://eusci.org.uk/2020/10/26/exploring-asexuality-how-research-and-awareness-benefit-each-other-for-this-minority-identity/ |title= Exploring asexuality: how research and awareness benefit each other for this minority identity |accessdate=2021/06/14|publisher= University of Edinburgh’s Science Magazine |author= |date=2020/10/26 }}</ref>。現在では多くの団体や組織が性的指向と恋愛的指向を混同せずに分けて権利や平等を訴えている<ref name=refinery160610>{{Cite web|url= https://www.refinery29.com/en-gb/2016/06/113484/what-is-asexual-definition-experiences |title= This Is What It Feels Like To Lack Sexual Attraction To Other People |accessdate=2021/06/21|publisher= Refinery29 UK |author= |date=2016/06/10 }}</ref><ref name=guardian171011>{{Cite web|url= https://www.theguardian.com/lifeandstyle/2017/oct/11/meet-the-aromantics-not-cold-dont-have-romantic-feelings-sex |title= Meet the aromantics: ‘I’m not cold – I just don’t have any romantic feelings’ |accessdate=2021/06/21|publisher= The Guardian |author= |date=2017/10/11 }}</ref><ref name=acesaros-re>{{Cite web|url= https://acesandaros.org/resources/ |title= Resources |accessdate=2021/06/12|publisher= aces & aros |author= |date= }}</ref><ref name=trp210503>{{Citation|last=東京レインボープライド|title=【TRP2021】11:LGBTQの多様性(NPO法人にじいろ学校 今徳はる香氏)【LGBTQの今を知る15選】|date=2021/05/03|url= https://www.youtube.com/watch?v=HN-z9FLfv14|access-date=2021/06/12}}</ref><ref name="SRGM">{{Cite web |url = https://acecommunitywestjapan.amebaownd.com/posts/12575478?categoryIds=3422558 | title = 【声明】性的指向と恋愛指向の混同は人権侵害である| publisher = 日本SRGM連盟 | accessdate = 2021-01-07 }}</ref><ref name="senpo">{{Cite web| url = https://www.sejp.net/archives/5530| title = 「性的指向と恋愛指向の混同は人権侵害」性的少数者団体が声明| publisher = [[選報日本]]| accessdate = 2021-01-07 }}</ref><ref>{{Cite web| url = https://jobrainbow.jp/magazine/romanticorientation| title = 恋愛指向とは?【あなたは誰を好きになりますか?】| publisher = 株式会社JobRainbow| accessdate = 2021-06-02 }}</ref><ref>{{Cite web | url = https://www.outjapan.co.jp/pride_japan/glossary/ra/2.html | title = 恋愛的指向 | publisher = 株式会社 アウト・ジャパン | accessdate = 2021-06-02 }}</ref>。「AUREA(Aromantic-spectrum Union for Recognition, Education, and Advocacy)」というアロマンティックのコミュニティは毎年「{{仮リンク| Aromantic Spectrum Awareness Week |en| List of LGBT awareness periods}}」を実施し、恋愛的指向の普及啓発に努めている<ref name=lgbtqnation210215>{{Cite web|url= https://www.lgbtqnation.com/2021/02/ready-celebrate-big-aromantic-holiday-year/ |title= Are you ready for Aromantic Spectrum Awareness Week? |accessdate=2021/06/14|publisher= LGBTQ Nation |author= |date=2021/02/15 }}</ref>。 |
|||
何を「恋愛」と受け止めるかは人によって異なり、例えば[[性行為|セックス]]を恋愛と関係ないとみなす人もいれば、恋愛と関係があると考える人もいる{{Sfn|アシュリー・須川(訳)|2017|p=140}}。ある人に恋愛的に惹かれているからといって、性的にも惹かれているとは限らない<ref name=usd-soro>{{Cite web|url= https://www.usd.edu/diversity-and-inclusiveness/office-for-diversity/safe-zone-training/sexual-orientation-versus-romantic-orientation |title= Sexual Orientation vs. Romantic Orientation |accessdate=2021/06/06|publisher= University of South Dakota |author= |date= }}</ref>。性的指向と恋愛的指向は一般には区別されないことも多いが、当事者にとっては大切な自己認識のひとつである{{Sfn|アシュリー・須川(訳)|2017|p=140}}。 |
|||
恋愛的指向については、マイノリティとされている主なものは、以下のとおりである<ref name=unc-aaro>{{Cite web|url= https://lgbtq.unc.edu/resources/exploring-identities/asexuality-attraction-and-romantic-orientation |title= Asexuality, Attraction, and Romantic Orientation |accessdate=2021/06/06|publisher= UNC Student Affairs |author= |date= }}</ref><ref name=greatist210115>{{Cite web|url= https://greatist.com/connect/romantic-orientation |title= How Knowing Your Romantic Orientation Can Change the Way You Date |accessdate=2021/06/06|publisher= Greatist |author= |date=2021/01/15 }}</ref>。 |
|||
* '''[[ホモロマンティック]]''' … 同性同士で惹かれ合う。 |
|||
* '''[[バイロマンティック]]''' … 2つ以上の性別に惹かれる。 |
|||
* '''[[パンロマンティック]]''' … あらゆるジェンダーに惹かれる。 |
|||
* '''[[アロマンティック]]''' … どのジェンダーにも恋愛的に惹かれない。総称としても用いられる{{Sfn|アシュリー・須川(訳)|2017|p=173}}。 |
|||
** '''[[デミロマンティック]]''' … 他者との情緒的なつながり(信頼関係)がある場合のみ、惹かれる。 |
|||
** '''[[グレイロマンティック]]''' … ごく稀にしか惹かれない。 |
|||
性的指向と恋愛的指向を組み合わせることで、例えば、「アセクシュアル・ホモロマンティック」「パンセクシュアル・グレイロマンティック」「ヘテロセクシュアル・バイロマンティック」といった表現が可能になる。アセクシュアルとアロマンティックは合わせて「a-spec(A spectrum)」と総称される<ref name=glaad181027>{{Cite web|url= https://www.glaad.org/amp/ace-guide-finding-your-community |title= Explore the spectrum: Guide to finding your ace community |accessdate=2021/06/06|publisher= GLAAD |author= |date=2018/10/27 }}</ref>。自分が感じる魅力が性的であるかプラトニックであるかわからない、もしくはそもそも魅力を感じているのかもわからない人は「'''クワセクシュアル(クォイセクシュアル)'''」と呼ばれる{{R| jobrainbow210331}}。 |
|||
日本では「'''ノンセクシュアル'''」という用語が性的に誰にも惹かれないが恋愛はするという指向として使われることがある{{R| jobrainbow210331}}<ref name=outjapan-asexual>{{Cite web|url= https://www.outjapan.co.jp/lgbtcolumn_news/out_proud/2028.html |title= LGBTコラム アセクシュアルとは |accessdate=2021/04/14|publisher= OUT JAPAN Co.Ltd. |author= |date= }}</ref>。 |
|||
性的魅力や恋愛的魅力以外にも魅力は存在し、例えば、セックスや恋愛とは無関係に人の外観を高く評価する「美的魅力(Aesthetic attraction)」や、セックスや恋愛とは無関係に人の感覚(主に触覚や嗅覚)に訴える「感覚的魅力(Sensual attraction)」などがある{{R| aven-general}}。 |
|||
=== 性自認(性同一性) === |
=== 性自認(性同一性) === |
||
生殖機能に基づいて分類する2つの主要な区分(男女・雄雌)は「'''生物学的な性(Sex)'''」と呼ばれるが、これらはあくまで社会的にラベル付けされた概念である{{Sfn|アシュリー・須川(訳)|2017|p=43}}。人間の場合、染色体やホルモン、生殖器などを基準に「男」と「女」に出生時に分類されるが、典型的なパターンに一致しない人もおり、中には典型的なパターンに一致させるべく強制的に手術を受けさせられる人もいる(インターセックスなど){{Sfn|アシュリー・須川(訳)|2017|p=48}}。その「生物学的な性」に対して「'''ジェンダー(Gender)'''」とは、生物学的な特徴を越えて「自分が何者なのか」という感覚に基づいたものであり{{Sfn|アシュリー・須川(訳)|2017|p=57}}、社会的に構築されている<ref name=who-gender>{{Cite web|url= https://www.who.int/health-topics/gender#tab=tab_1 |title= Gender and health |accessdate=2021/06/04|publisher= WHO |author= |date= }}</ref><ref name=cihr-gender>{{Cite web|url= https://cihr-irsc.gc.ca/e/48642.html |title= What is gender? What is sex? |accessdate=2021/06/04|publisher= Canadian Institutes of Health Research |author= |date= }}</ref>。そのため、「生物学的な性」と「ジェンダー」が一致する人もいれば、一致しない人もいる{{Sfn|アシュリー・須川(訳)|2017|p=57}}。 |
|||
性自認とは、自分自身のジェンダーをどう理解し、どう振る舞い、どう見られたいのかを示す識別名である{{Sfn|アシュリー・須川(訳)|2017|p=57}}。 |
|||
性自認については、マイノリティとされている主なものは、以下のとおりである{{R| verywell201130}}<ref name=verywell210223n>{{Cite web|url= https://www.verywellmind.com/what-does-it-mean-to-be-non-binary-or-have-non-binary-gender-4172702 |title= What Does It Mean to Be Nonbinary? |accessdate=2021/04/13|publisher= Verywell Mind |author= |date=2020/11/16 }}</ref>。 |
性自認については、マイノリティとされている主なものは、以下のとおりである{{R| verywell201130}}<ref name=verywell210223n>{{Cite web|url= https://www.verywellmind.com/what-does-it-mean-to-be-non-binary-or-have-non-binary-gender-4172702 |title= What Does It Mean to Be Nonbinary? |accessdate=2021/04/13|publisher= Verywell Mind |author= |date=2020/11/16 }}</ref>。 |
||
61行目: | 94行目: | ||
*** '''[[バイジェンダー]]''' … 同時に2つのジェンダーを持つ。 |
*** '''[[バイジェンダー]]''' … 同時に2つのジェンダーを持つ。 |
||
*** '''[[ジェンダーフルイド]]''' … 2つ以上のジェンダーを流動的に移る。 |
*** '''[[ジェンダーフルイド]]''' … 2つ以上のジェンダーを流動的に移る。 |
||
* '''[[デミ]]''' … あるジェンダーに部分的に結びつきを感じている。デミガール、デミボーイ、デミガイ、デミノンバイナリーなどがある{{Sfn|アシュリー・須川(訳)|2017|p=106}}。 |
|||
ノンバイナリーの人たちの中には「enby(エンビー)」という俗語で自分を表現する者もいる{{Sfn|アシュリー・須川(訳)|2017|p=111}}。ノンバイナリーと意味がよく似た用語として「'''[[ジェンダークィア]]'''」があり、重複している部分もあるが、使われ方が違っている場合もあり、実際は個人の意思が尊重される<ref name=healthline-gq >{{Cite web|url= https://www.healthline.com/health/transgender/genderqueer |title= What Does It Mean to Identify as Genderqueer? |accessdate=2021/04/17|publisher= healthline |author= |date= }}</ref>。 |
|||
日本では英語圏における「ノンバイナリー」とほぼ同様の意味で「'''[[Xジェンダー]]'''」という表現がよく用いられる{{R| jobrainbow210331}}。 |
日本では英語圏における「ノンバイナリー」とほぼ同様の意味で「'''[[Xジェンダー]]'''」という表現がよく用いられる{{R| jobrainbow210331}}。 |
||
社会における男女二元論的な規範とは異なるかたちで自分を認識したり、表現したりする人の総称として「'''{{仮リンク|ジェンダー・ノンコンフォーミング|en| Gender nonconforming}}'''」があり、ジェンダークィアと違ってアイデンティティとしてだけでなく特定のグループや表現、パターンを指すことが多い{{Sfn|アシュリー・須川(訳)|2017|p=111}}。 |
|||
「デミ」は、例えば「デミガール」であれば、自分は女性だと強く感じる面もありつつ、同時に女性ではないとも感じるといったアイデンティティを意味する{{Sfn|アシュリー・須川(訳)|2017|p=106}}。たいていのデミガールは、出生時に決められた生物学的な性は女性である<ref name=cosmopo210125>{{Cite web|url= https://www.cosmopolitan.com/sexopedia/a35308826/demigirl/ |title= Demigirl |accessdate=2021/06/06|publisher= Cosmopolitan |author= |date=2021/01/25 }}</ref>。 |
|||
「'''[[トランスセクシュアル]]'''(Transsexual)」という用語は古いもので、包括的な意味を持たないので使われなくなった<ref name=glaad-trans>{{Cite web|url= https://www.glaad.org/reference/transgender |title= GLAAD Media Reference Guide - Transgender |accessdate=2021/04/13|publisher= GLAAD |author= |date=}}</ref>。 |
「'''[[トランスセクシュアル]]'''(Transsexual)」という用語は古いもので、包括的な意味を持たないので使われなくなった<ref name=glaad-trans>{{Cite web|url= https://www.glaad.org/reference/transgender |title= GLAAD Media Reference Guide - Transgender |accessdate=2021/04/13|publisher= GLAAD |author= |date=}}</ref>。 |
||
70行目: | 108行目: | ||
アイデンティティとして[[異性装]]をする人は「'''[[クロスドレッサー]]'''」や「'''[[ドラァグ]]'''」と呼ばれるが、これは性自認や性的指向とは必ずしも関係ない<ref name=tser>{{Cite web|url= https://transstudent.org/about/definitions/ |title= Definitions |accessdate=2021/04/14|publisher= Trans Student Educational Resources |author= |date=}}</ref>。なお、そのような人たちを「'''[[トランスヴェスタイト]]'''(Transvestite)」と表現する場合もあるが、この言葉は蔑称とみなされることがある{{R| tser}}。 |
アイデンティティとして[[異性装]]をする人は「'''[[クロスドレッサー]]'''」や「'''[[ドラァグ]]'''」と呼ばれるが、これは性自認や性的指向とは必ずしも関係ない<ref name=tser>{{Cite web|url= https://transstudent.org/about/definitions/ |title= Definitions |accessdate=2021/04/14|publisher= Trans Student Educational Resources |author= |date=}}</ref>。なお、そのような人たちを「'''[[トランスヴェスタイト]]'''(Transvestite)」と表現する場合もあるが、この言葉は蔑称とみなされることがある{{R| tser}}。 |
||
=== 性表現(ジェンダー表現)=== |
|||
=== その他 === |
|||
自分のジェンダーを明らかにして表現する方法は、言葉づかい、仕草、声、服装、メイク、髪形、名前、[[代名詞]]、どの施設(トイレ・更衣室)を利用するかなどさまざまである{{Sfn|アシュリー・須川(訳)|2017|p=71}}<ref name= alberta-gender>{{Cite web|url= https://myhealth.alberta.ca/Alberta/Pages/gender-ID-expression-LGBTQ.aspx |title= Gender, gender identity, and gender expression |accessdate=2021/06/04|publisher= MyHealth.Alberta.ca |author= |date= }}</ref>。これらは「'''性表現'''(ジェンダー表現;Gender expression)」と呼ばれる{{Sfn|アシュリー・須川(訳)|2017|p=71}}。一方でこれらの表現が必ずしもジェンダーと結びついているとは限らず、それは個人の自由である{{Sfn|アシュリー・須川(訳)|2017|p=71}}。性自認と一致させる必要もない<ref name= insider201114>{{Cite web|url= https://www.insider.com/explained-difference-between-gender-gender-expression-and-sexuality-2020-11 |title= Explained: The difference between gender, gender expression, and sexuality |accessdate=2021/06/04|publisher= Insider |author= |date=2020/11/14 }}</ref>。 |
|||
また、場合によっては、以下のものもセクシュアル・マイノリティに含む{{R| verywell201130}}。 |
|||
==== 恋愛指向 ==== |
|||
{{See also|恋愛的指向}} |
|||
男らしさと女らしさの両方の特徴を併せ持つこと、そのどちらでもない特徴を持つこと、その間の特徴を持つことを「'''アンドロジナス'''(androgynous)」と呼び、ジェンダーに限らず(シスジェンダーでもトランスジェンダーでも)自由にこの言葉を使用することができる{{Sfn|アシュリー・須川(訳)|2017|p=121}}<ref name=cosmopo210125-andro>{{Cite web|url= https://www.cosmopolitan.com/sex-love/a26859619/androgyne-definition/ |title= Androgyne |accessdate=2021/06/06|publisher= Cosmopolitan |author= |date=2021/01/25 }}</ref>。 |
|||
「性的なもの(性的指向)」と「ロマンチックなもの(恋愛的指向)」に分けて考える場合もあり<ref name=verywell210223a>{{Cite web|url= https://www.verywellmind.com/what-to-do-when-youre-questioning-your-sexuality-5112793 |title= What to Do When You're Questioning Your Sexuality |accessdate=2021/04/13|publisher= Verywell Mind |author= |date=2021/02/23 }}</ref>、これは「Split Attraction Model(SAM)」と呼ばれ、恋愛的指向も含めた性的マイノリティの総称として「GSRMs」が使われることもある{{R|Lapointe2016|Choudhuri2019}}。 |
|||
具体的には、性的に誰にも惹かれない人を「アセクシュアル」というのに対して、恋愛的に誰にも惹かれないのは「'''[[アロマンティック]]'''」といった表現となる<ref name=gqmagazine201206>{{Cite web|url= https://www.gq-magazine.co.uk/lifestyle/article/asexuality-meaning |title= Everything you ever wanted to know about asexuality |accessdate=2021/04/13|publisher= British GQ |author= |date=2020/12/06 }}</ref><ref name=betterhelp201119>{{Cite web|url= https://www.betterhelp.com/advice/attraction/what-is-the-split-attraction-model/ |title= What Is The Split Attraction Model? |accessdate=2021/04/17|publisher= Betterhelp |author= |date=2020/11/19 }}</ref>。性的指向と恋愛的指向を分けて考えることで、「アセクシュアル・ホモロマンティック」「パンセクシュアル・グレイロマンティック」「ヘテロセクシュアル・バイロマンティック」といった表現が可能になる。自分が感じる魅力が性的であるかプラトニックであるかわからない、もしくはそもそも魅力を感じているのかもわからない人は「'''クワセクシュアル(クォイセクシュアル)'''」と呼ばれる{{R| jobrainbow210331}}。 |
|||
==== 代名詞 ==== |
|||
日本では「'''ノンセクシュアル'''」という用語が性的に誰にも惹かれないが恋愛はするという指向として使われることがある{{R| jobrainbow210331}}<ref name=outjapan-asexual>{{Cite web|url= https://www.outjapan.co.jp/lgbtcolumn_news/out_proud/2028.html |title= LGBTコラム アセクシュアルとは |accessdate=2021/04/14|publisher= OUT JAPAN Co.Ltd. |author= |date= }}</ref>。 |
|||
英語圏では「he」や「she」など代名詞がジェンダーを表すことになり、これもまた性表現のひとつとなる{{Sfn|アシュリー・須川(訳)|2017|p=80}}。しかし、従来から一般に使用されている「he」や「she」では典型的な「男」と「女」しか表現できないため、ノンバイナリーのジェンダーを表現したい人を中心に、ジェンダーニュートラルな代名詞が用いられるようになった(主なものは以下のとおり)<ref name= vogue200330>{{Cite web|url= https://www.vogue.co.jp/change/article/gender-neutral-pronouns-cnihub |title= あなたはどう呼ばれたい? 多様性時代の代名詞考察 |accessdate=2021/06/04|publisher= Vogue Japan |author= |date=2020/03/30 }}</ref><ref name=them200522>{{Cite web|url= https://www.them.us/story/gender-neutral-pronouns-101-they-them-xe-xem |title= Gender-Neutral Pronouns 101: Everything You've Always Wanted to Know |accessdate=2021/04/13|publisher= them |author= |date=2020/05/22 }}</ref>。 |
|||
{| class="wikitable" |
|||
「性的指向と恋愛指向の混同は人権侵害である」とする声明を出している当事者団体<ref name="SRGM">{{Cite web |url = https://acecommunitywestjapan.amebaownd.com/posts/12575478?categoryIds=3422558 | title = 【声明】性的指向と恋愛指向の混同は人権侵害である| publisher = 日本SRGM連盟 | accessdate = 2021-01-07 }}</ref><ref name="senpo">{{Cite web| url = https://www.sejp.net/archives/5530| title = 「性的指向と恋愛指向の混同は人権侵害」性的少数者団体が声明| publisher = [[選報日本]]| accessdate = 2021-01-07 }}</ref>や「本来は意味が異なる」<ref>{{Cite web| url = https://jobrainbow.jp/magazine/romanticorientation| title = 恋愛指向とは?【あなたは誰を好きになりますか?】| publisher = 株式会社JobRainbow| accessdate = 2021-06-02 }}</ref>「特にアセクシュアル / アロマンティックの方々にとって、恋愛的指向と性的指向を区別することは大切」<ref>{{Cite web | url = https://www.outjapan.co.jp/pride_japan/glossary/ra/2.html | title = 恋愛的指向 | publisher = 株式会社 アウト・ジャパン | accessdate = 2021-06-02 }}</ref>との見解を示している支援者団体も存在する。 |
|||
|+ ジェンダーの多様性を意識した英語の人称代名詞(三人称)の一例 |
|||
! !! 主格 !! 目的格 !! 所有格 !! 所有代名詞 !! 再帰代名詞 |
|||
|- |
|||
! 男性 |
|||
| he || him || his || his || himself |
|||
|- |
|||
! 女性 |
|||
| she || her || her || hers || herself |
|||
|- |
|||
! rowspan="4" | ジェンダーニュートラル |
|||
| they || them || their || theirs || themself |
|||
|- |
|||
| Ze || Zir || Zir || Zirs || Zirself |
|||
|- |
|||
| Xe || Xem || Xer || Xirs || Xirself |
|||
|- |
|||
| Sie || Hir || Hir || Hirs || Hirself |
|||
|} |
|||
「they」はこれまでは三人称複数の代名詞として利用されてきたが、ジェンダーニュートラルとして使用されるときは三人称単数として扱われる{{Sfn|アシュリー・須川(訳)|2017|p=80}}。ジェンダーニュートラルな代名詞としては「they」が最も好まれている{{R| them200522}}。アメリカ方言学会は2010年代を象徴する言葉としてこのジェンダーニュートラルな代名詞である「they」を選んでいる<ref name=mirai200317>{{Cite web|url= https://www.mirai-port.com/people/859/ |title= 言語学者が選ぶ2010年代の言葉は、三人称単数形「they」 |accessdate=2021/06/04|publisher= MIRAI PORT |author= |date=2020/03/17 }}</ref>。 |
|||
=== その他 === |
|||
また、場合によっては、以下のものもセクシュアル・マイノリティに含む{{R| verywell201130}}。 |
|||
==== 先住民族の第3の性 ==== |
==== 先住民族の第3の性 ==== |
||
95行目: | 154行目: | ||
[[インターセックス]]は、出生時から男性または女性の典型的な定義にあてはまらない生殖・性的構造を持って生まれた人である<ref name=verywell210318i>{{Cite web|url= https://www.verywellmind.com/what-is-intersex-5092841 |title= What Is Intersex? |accessdate=2021/04/17 |publisher= Verywell Mind |author= |date=2021/03/18}}</ref>。[[両性具有]]とは異なる<ref name=newsweek180607>{{Cite web|url= https://www.newsweekjapan.jp/sakamaki/2018/06/post-52.php |title= 手術されるインターセックスの子供たち トップモデルが壮絶な告白 |accessdate=2021/05/19 |publisher= ニューズウィーク |author= |date=2018/06/07}}</ref>。 |
[[インターセックス]]は、出生時から男性または女性の典型的な定義にあてはまらない生殖・性的構造を持って生まれた人である<ref name=verywell210318i>{{Cite web|url= https://www.verywellmind.com/what-is-intersex-5092841 |title= What Is Intersex? |accessdate=2021/04/17 |publisher= Verywell Mind |author= |date=2021/03/18}}</ref>。[[両性具有]]とは異なる<ref name=newsweek180607>{{Cite web|url= https://www.newsweekjapan.jp/sakamaki/2018/06/post-52.php |title= 手術されるインターセックスの子供たち トップモデルが壮絶な告白 |accessdate=2021/05/19 |publisher= ニューズウィーク |author= |date=2018/06/07}}</ref>。 |
||
インターセックス(インターセクシュアリティ)は医学的に診断され、出生時にわかる場合もあれば、後で判明することもある<ref name=front180608>{{Cite web|url= https://front-row.jp/_ct/17171776 |title= 「LGBTI」の「I」である「インターセックス(intersex)」とは? |accessdate=2021/04/17 |publisher= フロントロウ |author= |date=2018/06/08}}</ref>{{R| verywell210318i}}。インターセックスだからといってトランスジェンダーやノンバイナリーと同じというわけではなく、インターセックスの人々がどのジェンダーやセクシュアリティを選ぶかは個人しだいである{{R| front180608}}<ref name=interact-intersex>{{Cite web|url= https://interactadvocates.org/faq/intersex-lgbtqia/ |title= FAQ: Intersex, Gender, and LGBTQIA+ |accessdate=2021/04/17 |publisher= interACT: Advocates for Intersex Youth |author= |date=}}</ref>。インターセックスの他に「DSD(disorders of sex development)」という医学用語も使われており(日本語では「[[性分化疾患]]」と訳されることがある)、双方の言葉をめぐって論争も起きている<ref name=intersex080629>{{Cite web|url= http://www.intersexinitiative.org/articles/dsdfaq.html |title=Frequently Asked Questions about the "DSD" Controversy |accessdate=2021/04/23 |publisher= Intersex Initiative |author= |date=2008/06/29 }}</ref><ref name=interact-dsd>{{Cite web|url=https://interactadvocates.org/interact-statement-on-intersex-terminology/ |title=interACT Statement on Intersex Terminology |accessdate=2021/04/23 |publisher= interACT: Advocates for Intersex Youth |author= |date= }}</ref>。 |
インターセックス(インターセクシュアリティ)は医学的に診断され、出生時にわかる場合もあれば、後で判明することもある<ref name=front180608>{{Cite web|url= https://front-row.jp/_ct/17171776 |title= 「LGBTI」の「I」である「インターセックス(intersex)」とは? |accessdate=2021/04/17 |publisher= フロントロウ |author= |date=2018/06/08}}</ref>{{R| verywell210318i}}。インターセックスだからといってトランスジェンダーやノンバイナリーと同じというわけではなく、インターセックスの人々がどのジェンダーやセクシュアリティを選ぶかは個人しだいである{{R| front180608}}<ref name=interact-intersex>{{Cite web|url= https://interactadvocates.org/faq/intersex-lgbtqia/ |title= FAQ: Intersex, Gender, and LGBTQIA+ |accessdate=2021/04/17 |publisher= interACT: Advocates for Intersex Youth |author= |date=}}</ref>。インターセックスの他に「DSD(disorders of sex development)」という医学用語も使われており(日本語では「[[性分化疾患]]」と訳されることがある)、双方の言葉をめぐって論争も起きている<ref name=intersex080629>{{Cite web|url= http://www.intersexinitiative.org/articles/dsdfaq.html |title=Frequently Asked Questions about the "DSD" Controversy |accessdate=2021/04/23 |publisher= Intersex Initiative |author= |date=2008/06/29 }}</ref><ref name=interact-dsd>{{Cite web|url=https://interactadvocates.org/interact-statement-on-intersex-terminology/ |title=interACT Statement on Intersex Terminology |accessdate=2021/04/23 |publisher= interACT: Advocates for Intersex Youth |author= |date= }}</ref>。2019年には[[国際疾病分類]]にて「DSD(disorders of sex development)」の名称が使用され続けていることに反発し、世界のインターセックス当事者団体が共同で[[世界保健機関]]に対して改善を求める声明を発表した<ref name=ihra190628>{{Cite web|url= https://ihra.org.au/35299/joint-statement-icd-11/ |title= Joint statement on the International Classification of Diseases 11 |accessdate=2021/06/13|publisher= Intersex Human Rights Australia |author= |date=2019/06/28 }}</ref>。 |
||
==== ポリアモリー ==== |
==== ポリアモリー ==== |
||
102行目: | 161行目: | ||
=== マイノリティではないもの === |
=== マイノリティではないもの === |
||
性的指向において、異性に惹かれるのみの人は「'''[[ヘテロセクシュアル]](ストレート、異性愛者)'''」と呼ばれ、マイノリティではなくマジョリティである<ref name=glaad-lgbq>{{Cite web|url= https://www.glaad.org/reference/lgbtq |title= GLAAD Media Reference Guide - Lesbian / Gay / Bisexual Glossary Of Terms |accessdate=2021/04/13|publisher= GLAAD |author= |date=}}</ref>{{Sfn|石田|2019|p=15}}。また、何かしらのジェンダーに性的に惹かれる人(つまりアセクシュアルではない人)は「'''アロセクシュアル(allosexual)'''」と呼ばれる{{R| gqmagazine201206}}。 |
性的指向において、異性に惹かれるのみの人は「'''[[ヘテロセクシュアル]](ストレート、異性愛者)'''」と呼ばれ、マイノリティではなくマジョリティである<ref name=glaad-lgbq>{{Cite web|url= https://www.glaad.org/reference/lgbtq |title= GLAAD Media Reference Guide - Lesbian / Gay / Bisexual Glossary Of Terms |accessdate=2021/04/13|publisher= GLAAD |author= |date=}}</ref>{{Sfn|石田|2019|p=15}}。また、何かしらのジェンダーに性的に惹かれる人(つまりアセクシュアルではない人)は「'''アロセクシュアル(allosexual)'''」と呼ばれる{{R| gqmagazine201206}}{{Sfn|アシュリー・須川(訳)|2017|p=177}}。 |
||
性自認において、自分の認識しているジェンダーが出生時に割り当てられた性別と一致する人は「'''[[シスジェンダー]]'''」と呼ばれ、マイノリティではなくマジョリティである{{R| glaad-trans}}{{Sfn|石田|2019|p=15}}。シスジェンダーといった用語は、マイノリティではない人たちが[[特権]]を持っていることを注意喚起させるために用いられる<ref name=ucsf-defini>{{Cite web|url= https://lgbt.ucsf.edu/glossary-terms |title= General Definitions |accessdate=2021/04/17|publisher= LGBT Resource Center |author= |date=}}</ref>。 |
性自認において、自分の認識しているジェンダーが出生時に割り当てられた性別と一致する人は「'''[[シスジェンダー]]'''」と呼ばれ、マイノリティではなくマジョリティである{{R| glaad-trans}}{{Sfn|石田|2019|p=15}}。シスジェンダーといった用語は、マイノリティではない人たちが[[特権]]を持っていることを注意喚起させるために用いられる<ref name=ucsf-defini>{{Cite web|url= https://lgbt.ucsf.edu/glossary-terms |title= General Definitions |accessdate=2021/04/17|publisher= LGBT Resource Center |author= |date=}}</ref>。 |
||
114行目: | 173行目: | ||
性的マイノリティとよく似た言葉で、しばしば混同される概念・言葉として、'''LGBT''' がある。これは、レズビアン(Lesbian)、ゲイ(Gay)、バイセクシュアル(Bisexual)、トランスジェンダー(Transgender)の頭文字から作られた[[頭字語]]である<ref name=verywell201130b>{{Cite web|url= https://www.verywellmind.com/what-does-lgbtq-mean-5069804 |title= What Does LGBTQ+ Mean? |accessdate=2021/04/13|publisher= Verywell Mind |author= |date=2020/11/30 }}</ref>。LGBTという言葉は1990年代から使用されている{{R| verywell201130b}}。 |
性的マイノリティとよく似た言葉で、しばしば混同される概念・言葉として、'''LGBT''' がある。これは、レズビアン(Lesbian)、ゲイ(Gay)、バイセクシュアル(Bisexual)、トランスジェンダー(Transgender)の頭文字から作られた[[頭字語]]である<ref name=verywell201130b>{{Cite web|url= https://www.verywellmind.com/what-does-lgbtq-mean-5069804 |title= What Does LGBTQ+ Mean? |accessdate=2021/04/13|publisher= Verywell Mind |author= |date=2020/11/30 }}</ref>。LGBTという言葉は1990年代から使用されている{{R| verywell201130b}}。 |
||
LGBTは、インターセックスを加えて '''LGBTI''' と言ったり、クィア(Queer)または[[クエスチョニング (セクシャリティおよびジェンダー)|クエスチョニング]](Questioning)を加えて '''LGBTQ''' もしくは '''LGBTQ+''' と表記したりもする{{R| verywell201130b}}。 |
LGBTは、インターセックスを加えて '''LGBTI''' と言ったり、クィア(Queer)または[[クエスチョニング (セクシャリティおよびジェンダー)|クエスチョニング]](Questioning)を加えて '''LGBTQ''' もしくは '''LGBTQ+''' と表記したりもする{{R| verywell201130b}}。また、インターセックスやアセクシュアルを加えて '''LGBTQIA+ '''{{Sfn|アシュリー・須川(訳)|2017|p=204}}、さらにトゥー・スピリットを加えて '''LGBTQIA2S+ '''と表現することもある<ref name=Thomas-lgbt>{{Cite web|url= https://www.stthomas.edu/studentdiversity/resources/resources/lgbtqia2s/ |title= LGBTQIA2S+ Student Diversity & Inclusion Services |accessdate=2021/05/26|publisher= University of St. Thomas |author= |date= }}</ref>。 |
||
これら頭字語による用語は個々の性的少数者ではなく、コミュニティを包括的に示すものである{{R| verywell201130b}}。性的少数者とLGBTの違いとして、その言葉のなりたちが挙げられる。「性的少数者」という言葉が客観的に性におけるマイノリティを定義しているのに対し、「LGBT」は[[1988年]]頃にアメリカの活動家が使い始めた言葉であって<ref name=Research>[https://books.google.com/books?ei=PW9JTfOeOtPd4AbR54SjDA&ct=result&id=PiglAQAAIAAJ Research, policy and practice: Annual meeting]</ref>、当初の[[ゲイ・コミュニティ|ゲイのコミュニティ]]からさらに包括的で相互関係を重視した連帯を意味する「LGBT」へと変移していった{{R| Smalley2017}}{{R| withnews160501}}。 |
これら頭字語による用語は個々の性的少数者ではなく、コミュニティを包括的に示すものである{{R| verywell201130b}}。性的少数者とLGBTの違いとして、その言葉のなりたちが挙げられる。「性的少数者」という言葉が客観的に性におけるマイノリティを定義しているのに対し、「LGBT」は[[1988年]]頃にアメリカの活動家が使い始めた言葉であって<ref name=Research>[https://books.google.com/books?ei=PW9JTfOeOtPd4AbR54SjDA&ct=result&id=PiglAQAAIAAJ Research, policy and practice: Annual meeting]</ref>、当初の[[ゲイ・コミュニティ|ゲイのコミュニティ]]からさらに包括的で相互関係を重視した連帯を意味する「LGBT」へと変移していった{{R| Smalley2017}}{{R| withnews160501}}。 |
||
124行目: | 183行目: | ||
自分が性的少数者であるかどうかを認識するのは、どの年齢でも起きうることであり、認識に時間がかかることもあるし、人生の中で変化することもある{{R| verywell210223a}}<ref name=healthychild-comingout>{{Cite web|url= https://www.healthychildren.org/English/ages-stages/teen/dating-sex/Pages/Four-Stages-of-Coming-Out.aspx |title=Coming Out: Information for Parents of LGBT Teens |accessdate=2021/04/24|publisher=HealthyChildren.org |author= |date=}}</ref>。性的経験([[性行為]]など)がなくても自分の性的指向を認識することはできる<ref name=apa-facts>{{Cite web|url= https://www.apa.org/pi/lgbt/resources/just-the-facts |title=Just the Facts about Sexual Orientation and Youth|accessdate=2021/04/24|publisher=American Psychological Association |author= |date=}}</ref>。偏見がなく信頼ができる他者や専門家と話すことは、自分が性的少数者かどうかを理解する手助けとなる{{R| verywell210223a}}。自分の性自認や性的指向を探している状態の人々は「'''[[クエスチョニング (セクシャリティおよびジェンダー)|クエスチョニング]]'''」と呼ばれたりもする<ref name=teen190403>{{Cite web|url= http://www.teenissues.co.uk/HowToCopeWithYourSexualIdentity.html |title= How to Cope With Your Sexual Identity |accessdate=2021/04/14|publisher= teenissues |author= |date=2019/04/03 }}</ref>。 |
自分が性的少数者であるかどうかを認識するのは、どの年齢でも起きうることであり、認識に時間がかかることもあるし、人生の中で変化することもある{{R| verywell210223a}}<ref name=healthychild-comingout>{{Cite web|url= https://www.healthychildren.org/English/ages-stages/teen/dating-sex/Pages/Four-Stages-of-Coming-Out.aspx |title=Coming Out: Information for Parents of LGBT Teens |accessdate=2021/04/24|publisher=HealthyChildren.org |author= |date=}}</ref>。性的経験([[性行為]]など)がなくても自分の性的指向を認識することはできる<ref name=apa-facts>{{Cite web|url= https://www.apa.org/pi/lgbt/resources/just-the-facts |title=Just the Facts about Sexual Orientation and Youth|accessdate=2021/04/24|publisher=American Psychological Association |author= |date=}}</ref>。偏見がなく信頼ができる他者や専門家と話すことは、自分が性的少数者かどうかを理解する手助けとなる{{R| verywell210223a}}。自分の性自認や性的指向を探している状態の人々は「'''[[クエスチョニング (セクシャリティおよびジェンダー)|クエスチョニング]]'''」と呼ばれたりもする<ref name=teen190403>{{Cite web|url= http://www.teenissues.co.uk/HowToCopeWithYourSexualIdentity.html |title= How to Cope With Your Sexual Identity |accessdate=2021/04/14|publisher= teenissues |author= |date=2019/04/03 }}</ref>。 |
||
2020年のギャラップによるアメリカの調査によると、成人の5.6%が自らをレズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーのいずれかと認識しているという結果がある<ref name=busin210301>{{Cite web|url= https://www.businessinsider.jp/post-230319 |title= 認知と受容の高まりを反映か…… アメリカのZ世代、6人に1人は「LGBT」を自認 |accessdate=2021/04/13|publisher= Business Insider Japan |author= |date=2021/03/01 }}</ref>。また、その割合は1997年から2012年の間に生まれた[[Z世代]]で特に高く、16%(およそ6人の1人)となっている{{R| busin210301}}。この調査でセクシュアル・マイノリティと答えた人のうち、54.6%がバイセクシュアルと回答した{{R| busin210301}}。 |
2020年のギャラップによるアメリカの調査によると、成人の5.6%が自らをレズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーのいずれかと認識しているという結果がある<ref name=busin210301>{{Cite web|url= https://www.businessinsider.jp/post-230319 |title= 認知と受容の高まりを反映か…… アメリカのZ世代、6人に1人は「LGBT」を自認 |accessdate=2021/04/13|publisher= Business Insider Japan |author= |date=2021/03/01 }}</ref>。また、その割合は1997年から2012年の間に生まれた[[Z世代]]で特に高く、16%(およそ6人の1人)となっている{{R| busin210301}}。この調査でセクシュアル・マイノリティと答えた人のうち、54.6%がバイセクシュアルと回答した{{R| busin210301}}。2019年のイギリスの調査では、16歳以上のイギリス人の2.7%がゲイ、レズビアン、またはバイセクシュアルであると回答し、この割合は増加傾向にある<ref name=them210528>{{Cite web|url= https://www.them.us/story/a-record-number-of-people-in-the-uk-identify-as-queer |title= A Record Number of People in the U.K. Identify As Queer |accessdate=2021/06/06|publisher= them |author= |date=2021/05/28 }}</ref>。 |
||
2020年の[[電通]]による日本の調査によれば、セクシュアル・マイノリティに該当すると答えたのは全体の約8.9%だった<ref name=dentsu210408>{{Cite web|url= https://www.dentsu.co.jp/news/release/2021/0408-010364.html |title= 電通、「LGBTQ+調査2020」を実施 |accessdate=2021/04/13|publisher= 電通 |author= |date=2021/04/08 }}</ref>。その内容は、ゲイが1.94%、レズビアンが1.33%、バイセクシュアルもしくはパンセクシュアルが2.94%、アセクシュアルもしくはアロマンティックが0.81%、性的指向のクエスチョニングが1.63%、トランスジェンダーが0.64%、Xジェンダーが1.20%、性自認のクエスチョニングは0.62%であった{{R| dentsu210408}}。 |
2020年の[[電通]]による日本の調査によれば、セクシュアル・マイノリティに該当すると答えたのは全体の約8.9%だった<ref name=dentsu210408>{{Cite web|url= https://www.dentsu.co.jp/news/release/2021/0408-010364.html |title= 電通、「LGBTQ+調査2020」を実施 |accessdate=2021/04/13|publisher= 電通 |author= |date=2021/04/08 }}</ref>。その内容は、ゲイが1.94%、レズビアンが1.33%、バイセクシュアルもしくはパンセクシュアルが2.94%、アセクシュアルもしくはアロマンティックが0.81%、性的指向のクエスチョニングが1.63%、トランスジェンダーが0.64%、Xジェンダーが1.20%、性自認のクエスチョニングは0.62%であった{{R| dentsu210408}}。 |
||
131行目: | 190行目: | ||
自らがセクシュアル・マイノリティであると他人に打ち明けることは「[[カミングアウト]]」といい、これは「coming out of the closet」を短縮したものである{{R| trevor-comingout}}<ref name=jibun200617>{{Cite web|url= https://jibun-rashiku.jp/column/column-1656 |title= カミングアウトとは?どんな意味?芸能人で公表している方も多数いる。 |accessdate=2021/04/14|publisher= 自分らしく生きるプロジェクト |author= |date=2020/06/17 }}</ref>。自分が性的少数者であると公にしていない人は「[[クローゼット (性的指向)|クローゼット]]」という<ref name=jibun200914>{{Cite web|url= https://jibun-rashiku.jp/column/column-2873 |title= クローゼット(性的指向)とは?意味や言葉の起源は?LGBTに関わる用語を解説。 |accessdate=2021/04/14|publisher= 自分らしく生きるプロジェクト |author= |date=2020/09/14 }}</ref>。毎年多くのセレブ(芸能人・政治家など)が性的少数者であることをカミングアウトしている<ref name=insider201229>{{Cite web|url= https://www.insider.com/celebrities-come-out-as-lgbtq-this-year-2020-9 |title= 17 celebrities who have come out as LGBTQ in 2020 |accessdate=2021/04/14|publisher= Insider |author= |date=2020/12/29 }}</ref><ref name=pride201231>{{Cite web|url= https://www.pride.com/comingout/2020/12/31/these-71-celebrities-came-out-2020 |title= These 71 Celebrities Came Out in 2020 |accessdate=2021/04/14|publisher= Pride |author= |date=2020/12/31 }}</ref>。 |
自らがセクシュアル・マイノリティであると他人に打ち明けることは「[[カミングアウト]]」といい、これは「coming out of the closet」を短縮したものである{{R| trevor-comingout}}<ref name=jibun200617>{{Cite web|url= https://jibun-rashiku.jp/column/column-1656 |title= カミングアウトとは?どんな意味?芸能人で公表している方も多数いる。 |accessdate=2021/04/14|publisher= 自分らしく生きるプロジェクト |author= |date=2020/06/17 }}</ref>。自分が性的少数者であると公にしていない人は「[[クローゼット (性的指向)|クローゼット]]」という<ref name=jibun200914>{{Cite web|url= https://jibun-rashiku.jp/column/column-2873 |title= クローゼット(性的指向)とは?意味や言葉の起源は?LGBTに関わる用語を解説。 |accessdate=2021/04/14|publisher= 自分らしく生きるプロジェクト |author= |date=2020/09/14 }}</ref>。毎年多くのセレブ(芸能人・政治家など)が性的少数者であることをカミングアウトしている<ref name=insider201229>{{Cite web|url= https://www.insider.com/celebrities-come-out-as-lgbtq-this-year-2020-9 |title= 17 celebrities who have come out as LGBTQ in 2020 |accessdate=2021/04/14|publisher= Insider |author= |date=2020/12/29 }}</ref><ref name=pride201231>{{Cite web|url= https://www.pride.com/comingout/2020/12/31/these-71-celebrities-came-out-2020 |title= These 71 Celebrities Came Out in 2020 |accessdate=2021/04/14|publisher= Pride |author= |date=2020/12/31 }}</ref>。 |
||
カミングアウトした性的少数者たちは連帯を示し、社会に平等を訴えるために運動を各地で行っている。有名なのが[[プライド・パレード]]であり、世界各地で実施されている<ref name=time200626>{{Cite web|url= https://time.com/5858086/pride-parades-history/ |title= What’s Changed—and What Hasn’t—in 50 Years of Pride Parades |accessdate=2021/04/16|publisher= Time |author= |date=2020/06/26 }}</ref>。[[レインボーフラッグ (LGBT)|レインボー・フラッグ]](虹をモチーフとした旗)は、性的少数者ないしLGBTの象徴となっており、この旗は1978年にゲイ・コミュニティの象徴となる旗のデザインを依頼された[[ギルバート・ベイカー]]が考案した<ref name=cnn200601>{{Cite web|url= https://edition.cnn.com/2020/06/01/health/pride-month-origin-trnd/index.html |title= It's Pride Month. Here's what you need to know |accessdate=2021/04/16|publisher= CNN |author= |date=2020/06/01 }}</ref>。 |
カミングアウトした性的少数者たちは連帯を示し、社会に平等を訴えるために運動を各地で行っている。有名なのが[[プライド・パレード]]であり、世界各地で実施されている<ref name=time200626>{{Cite web|url= https://time.com/5858086/pride-parades-history/ |title= What’s Changed—and What Hasn’t—in 50 Years of Pride Parades |accessdate=2021/04/16|publisher= Time |author= |date=2020/06/26 }}</ref>。[[レインボーフラッグ (LGBT)|レインボー・フラッグ]](虹をモチーフとした旗)は、性的少数者ないしLGBTの象徴となっており、この旗は1978年にゲイ・コミュニティの象徴となる旗のデザインを依頼された[[ギルバート・ベイカー]]が考案した<ref name=cnn200601>{{Cite web|url= https://edition.cnn.com/2020/06/01/health/pride-month-origin-trnd/index.html |title= It's Pride Month. Here's what you need to know |accessdate=2021/04/16|publisher= CNN |author= |date=2020/06/01 }}</ref>。また、それぞれの性自認・性的指向・恋愛的指向ごとに独自のフラッグが考案されており、当事者のコミュニティが自分たちのアイデンティティを示すのに用いている<ref name=harpers210603>{{Cite web|url= https://www.harpersbazaar.com/jp/lifestyle/daily-life/g36614921/lgbtq-pride-flags-210603-lift1/ |title= いくつ知ってる? LGBTQコミュニティを象徴するフラッグとその意味 |accessdate=2021/06/06|publisher= ハーパーズ バザー |author= |date=2021/06/03 }}</ref>。 |
||
こうした人権運動において活動家として著名な人物や組織もいる。[[マーシャ・P・ジョンソン]]はトランスジェンダー活動家として尽力した有名人のひとりであり、[[ビリー・ジーン・キング]]は差別が蔓延るスポーツ界で同性愛者であることを告白したアメリカ初のスポーツ選手となり、{{仮リンク|バイヤード・ラスティン|en| Bayard Rustin }}は[[キング牧師]]の右腕でありながらゲイゆえに公民権運動家からも批判されるも自分の性的指向を隠さずに貫いた<ref name=cosmopo210612>{{Cite web|url= https://www.cosmopolitan.com/jp/trends/society/a36584229/lgbtq-pride-activists/ |title= 社会を変えた!歴史に名を残したLGBTQ+アクティビスト |accessdate=2021/06/12|publisher= Cosmopolitan |author= |date=2021/06/12 }}</ref>。 |
|||
性的少数者を積極的に支援する行動をとる人のことを「[[ストレート・アライ|アライ]](Ally)」と呼ぶ<ref name=outjapan-ally>{{Cite web|url= https://www.outjapan.co.jp/lgbtcolumn_news/out_proud/2.html |title= LGBTコラム LGBTフレンドリー/アライとは |accessdate=2021/04/14|publisher= OUT JAPAN Co.Ltd. |author= |date= }}</ref>。 |
性的少数者を積極的に支援する行動をとる人のことを「[[ストレート・アライ|アライ]](Ally)」と呼ぶ<ref name=outjapan-ally>{{Cite web|url= https://www.outjapan.co.jp/lgbtcolumn_news/out_proud/2.html |title= LGBTコラム LGBTフレンドリー/アライとは |accessdate=2021/04/14|publisher= OUT JAPAN Co.Ltd. |author= |date= }}</ref>。 |
||
=== ジェンダー違和 === |
|||
出生時に決められた性別と自認するジェンダーが一致しない人は、人生において苦痛や不快感が生じることがあり、これは「'''[[性別違和|ジェンダー違和]] '''(性別違和;Gender dysphoria)」と呼ばれる{{Sfn|アシュリー・須川(訳)|2017|p=90}}<ref name=nhs-gd>{{Cite web|url= https://www.nhs.uk/conditions/gender-dysphoria/ |title= Gender dysphoria |accessdate=2021/06/05|publisher= NHS |author= |date= }}</ref>。ジェンダー違和には、社会的状況によって引き起こされる「社会的違和」と身体と関連してくる「身体的違和」がある{{Sfn|アシュリー・須川(訳)|2017|p=90}}。このジェンダー違和の程度は個人差が大きく、かなり強い苦悩を抱える者もいれば、全く感じない者もいる{{Sfn|アシュリー・須川(訳)|2017|p=90}}。 |
|||
医学的には、[[アメリカ精神医学会]]の[[精神障害の診断と統計マニュアル]](DSM-5)によれば、別のジェンダーへの強い願望に関連する臨床的に重大な苦痛または障害として認められる概念を指す<ref name=psychiatry-gd>{{Cite web|url= https://www.psychiatry.org/patients-families/gender-dysphoria/what-is-gender-dysphoria |title= What Is Gender Dysphoria? |accessdate=2021/06/05|publisher= psychiatry.org |author= |date= }}</ref>。以前は「性同一性障害(Gender Identity Disorder)」とも呼ばれていた<ref name=outjapan190527>{{Cite web|url= https://www.outjapan.co.jp/pride_japan/news/2019/5/13.html |title= WHOが性同一性障害を「精神障害」の分類から除外しました |accessdate=2021/06/05|publisher= psychiatry.org |author= |date=2019/05/27 }}</ref>。2019年には[[国際疾病分類]]の改定版(ICD-11)が了承されたことで、「精神障害」の分類から除外され、「性の健康に関連する状態」という分類の中の「Gender Incongruence(性別不合)」に変更された{{R| outjapan190527}}。そのため今では精神疾患とはみなされない<ref name=webmd210520>{{Cite web|url= https://www.webmd.com/sex/gender-dysphoria |title= When You Don’t Feel at Home With Your Assigned Gender |accessdate=2021/06/05|publisher= WebMD |author= |date=2021/05/20 }}</ref>。 |
|||
一方で、何らかのかたちで自分のジェンダーを肯定されたことで得られる幸福や心地よさを「ジェンダー多幸感(Gender euphoria)」と呼び、ジェンダー違和とは対極にある感覚である{{Sfn|アシュリー・須川(訳)|2017|p=90}}。 |
|||
===移行=== |
|||
ジェンダー違和を抱えたままでは性的少数者にとっては生きるのに困難がともなう。そこでジェンダー違和を和らげて、自分のジェンダーを肯定し、人生を送りやすくするための何かしらのプロセスをとることがおり、それは「'''{{仮リンク|移行|en| Gender transitioning }}'''(transition)」と呼ばれる{{Sfn|アシュリー・須川(訳)|2017|p=90}}。 |
|||
移行の具体例としては以下の行為が挙げられる{{Sfn|アシュリー・須川(訳)|2017|p=90}}<ref name=planned-transition>{{Cite web|url= https://www.plannedparenthood.org/learn/gender-identity/transgender/what-do-i-need-know-about-transitioning |title= What do I need to know about transitioning? |accessdate=2021/06/05|publisher= Planned Parenthood |author= |date= }}</ref>。 |
|||
* 名前や代名詞を変える。 |
|||
* 服装や髪形を変える。 |
|||
* 胸や生殖器を物理的に締め付けるなどして目立たなくする。 |
|||
* [[ホルモン補充療法]]を受ける。 |
|||
* [[性別適合手術]]を受ける。 |
|||
* カミングアウトをする。 |
|||
* その他の行動の変化。 |
|||
トランスジェンダーなどと露骨に判断されることなく、他人に疑われることもなく、自分の望むジェンダーそのままに社会で通用できることは「{{仮リンク|パス|en| Passing (gender)}}(パッシング;passing)」と呼ばれる<ref name=cosmopo161115>{{Cite web|url= https://www.cosmopolitan.com/sexopedia/a8281277/what-is-transgender-definition/ |title= Transgender |accessdate=2021/06/06|publisher= Cosmopolitan |author= |date=2016/11/15 }}</ref>。 |
|||
== レプリゼンテーション == |
== レプリゼンテーション == |
||
142行目: | 225行目: | ||
これらの誤った表象は性的少数者のステレオタイプや誤解を助長する。ステレオタイプの例としては、例えば「レズビアンのカップルは必ず[[ブッチとフェム]]である」<ref name=huff130824>{{Cite web|url= https://www.huffpost.com/entry/lesbian-stereotypes-_n_3808202 |title= Lesbian Stereotypes: The Worst (And Most Hilarious) Ideas Many Have About The Community |accessdate=2021/04/19|publisher=Huffpost |author= |date= 2013/08/24}}</ref>「バイセクシュアルの人はグループセックスを好む」<ref name=buzz200614>{{Cite web|url= https://www.buzzfeed.com/kellymartinez/bisexual-stereotypes-in-tv-movies |title=17 Bisexual Stereotypes In TV And Movies That People Are Really Sick Of |accessdate=2021/04/19|publisher=BuzzFeed |author= |date= 2020/06/14}}</ref>「トランスジェンダーは不幸な犠牲者となる」<ref name=glad-transimeges>{{Cite web|url= https://www.glaad.org/publications/victims-or-villains-examining-ten-years-transgender-images-television |title=Victims or Villains: Examining Ten Years of Transgender Images on Television |accessdate=2021/04/19|publisher=GLAAD |author= |date= }}</ref>「アセクシュアルの人はセックスの楽しさを知らないだけで一度経験させればわかってくれる」<ref name=huff130620>{{Cite web|url= https://www.huffpost.com/entry/asexual-discrimination_n_3380551 |title=Battling Asexual Discrimination, Sexual Violence And ‘Corrective’ Rape |accessdate=2021/04/19|publisher=Huffpost |author= |date=2013/06/20 }}</ref>などがある。 |
これらの誤った表象は性的少数者のステレオタイプや誤解を助長する。ステレオタイプの例としては、例えば「レズビアンのカップルは必ず[[ブッチとフェム]]である」<ref name=huff130824>{{Cite web|url= https://www.huffpost.com/entry/lesbian-stereotypes-_n_3808202 |title= Lesbian Stereotypes: The Worst (And Most Hilarious) Ideas Many Have About The Community |accessdate=2021/04/19|publisher=Huffpost |author= |date= 2013/08/24}}</ref>「バイセクシュアルの人はグループセックスを好む」<ref name=buzz200614>{{Cite web|url= https://www.buzzfeed.com/kellymartinez/bisexual-stereotypes-in-tv-movies |title=17 Bisexual Stereotypes In TV And Movies That People Are Really Sick Of |accessdate=2021/04/19|publisher=BuzzFeed |author= |date= 2020/06/14}}</ref>「トランスジェンダーは不幸な犠牲者となる」<ref name=glad-transimeges>{{Cite web|url= https://www.glaad.org/publications/victims-or-villains-examining-ten-years-transgender-images-television |title=Victims or Villains: Examining Ten Years of Transgender Images on Television |accessdate=2021/04/19|publisher=GLAAD |author= |date= }}</ref>「アセクシュアルの人はセックスの楽しさを知らないだけで一度経験させればわかってくれる」<ref name=huff130620>{{Cite web|url= https://www.huffpost.com/entry/asexual-discrimination_n_3380551 |title=Battling Asexual Discrimination, Sexual Violence And ‘Corrective’ Rape |accessdate=2021/04/19|publisher=Huffpost |author= |date=2013/06/20 }}</ref>などがある。 |
||
また、陰惨な事件の引き金になることもある。『{{仮リンク| ジェニー・ジョーンズ・ショー |en|The Jenny Jones Show}}』というテレビ番組の1995年3月6日の放送にて、同性愛者の男性が同僚男性のジョナサン・シュミッツに片思いしていたことを本人の前で告白するという企画があり、この放送の3日後、シュミッツは告白してきた男性を殺害するという事件を引き起こした([[ゲイ・パニック・ディフェンス]])<ref name=ajc170826>{{Cite web|url= https://www.ajc.com/news/national/killer-jenny-jones-gay-crush-murder-released-from-prison/CMKsybhg5nhHzggybvHdNO/ |title= Killer in ‘Jenny Jones’ gay crush murder released from prison |accessdate=2021/06/09|publisher= The Atlanta Journal Constitution |author= |date=2017/08/26 }}</ref>。 |
|||
日本の映像界では、性的少数者ではない人たちが主体となってセクシュアル・マイノリティが描かれていることに対して、消費や搾取となっている問題点が指摘されており、改善が求められている<ref name=huff201204>{{Cite web|url= https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_5fc5dacac5b63d1b770f341b |title= LGBTQ、日本でどう描かれてきたか。企画展が開催中、 「ゲイ男性を描く作品が多い」などの特徴も |accessdate=2021/04/15 |publisher= ハフポスト |author= |date= 2020/12/04}}</ref>。 |
|||
映像作品における性的少数者に関するより良い表象は増えつつあり、少しずつ改善している。1977年には『{{仮リンク| That Certain Summer |en| That Certain Summer}}』が放映され、同性愛を同情的観点から描いた最初のテレビ映画となった<ref name=out141101>{{Cite web|url= https://www.out.com/today-gay-history/2014/11/01/today-gay-history-hal-holbrook-martin-sheen-loving-partners-certain-summer |title= Today In Gay History: That Certain Summer |accessdate=2021/06/08|publisher= Out |author= |date=2014/11/01 }}</ref>。1978年には『{{仮リンク| A Question of Love |en| A Question of Love}}』というレズビアンの女性を真面目に描いたテレビ映画も登場した<ref name= startribune200214>{{Cite web|url= https://www.startribune.com/gay-rights-documentary-visible-out-on-television-deserves-to-be-seen/567872122/ |title= Gay rights documentary 'Visible: Out on Television' deserves to be seen |accessdate=2021/06/08|publisher=Star Tribune |author= |date=2020/02/14 }}</ref>。2014年から配信されたアニメ『{{仮リンク| ボージャック・ホースマン |en| BoJack Horseman}}』ではこれまで表象として描かれることはほぼ無かったアセクシュアルのキャラクターが明確に登場し、当事者から称賛を受けた<ref name= pride170912>{{Cite web|url= https://www.pride.com/tv/2017/9/12/todd-chavez-tvs-first-openly-asexual-character-and-people-are-emotional |title= Bojack Horseman's Todd Chavez Comes Out as Asexual, Makes TV History |accessdate=2021/06/08|publisher=Pride |author= |date=2017/09/12 }}</ref>。『[[JUNO/ジュノ]]』での演技によりアカデミー主演女優賞にノミネートされた経験のある[[エリオット・ペイジ]]は2020年に男性であるとカミングアウトし、世界で最も有名なトランスジェンダーのひとりとなり、大きな話題を集めた<ref name= time210316>{{Cite web|url= https://time.com/5947032/elliot-page/ |title= Elliot Page Is Ready for This Moment |accessdate=2021/06/08|publisher=Time |author= |date=2021/03/16 }}</ref>。 |
|||
[[GLAAD]]の調査によれば、2020年のメジャースタジオが公開した118本の映画のうち、性的少数者として識別できるキャラクターがいた作品は22本(18.6%)だった<ref name=glaad-studio>{{Cite web|url= https://www.glaad.org/sri/2020 |title= 2020 GLAAD Studio Responsibility Index|accessdate=2021/04/14|publisher= GLAAD |author= |date= }}</ref>。具体的にどの性的少数者だったかという内訳は、ゲイ男性が68%、レズビアンが36%、バイセクシュアルが14%で、トランスジェンダーはいなかった{{R| glaad-studio}}。また別の調査からは、2020年のテレビシリーズとして放送された773のシリーズレギュラーキャラクターのうち、9.1%が性的少数者であったという結果がでている<ref name=glaad-tv>{{Cite web|url= https://www.glaad.org/whereweareontv20 |title= Where We Are on TV Report – 2020 |accessdate=2021/04/14|publisher= GLAAD |author= |date= }}</ref>。 |
[[GLAAD]]の調査によれば、2020年のメジャースタジオが公開した118本の映画のうち、性的少数者として識別できるキャラクターがいた作品は22本(18.6%)だった<ref name=glaad-studio>{{Cite web|url= https://www.glaad.org/sri/2020 |title= 2020 GLAAD Studio Responsibility Index|accessdate=2021/04/14|publisher= GLAAD |author= |date= }}</ref>。具体的にどの性的少数者だったかという内訳は、ゲイ男性が68%、レズビアンが36%、バイセクシュアルが14%で、トランスジェンダーはいなかった{{R| glaad-studio}}。また別の調査からは、2020年のテレビシリーズとして放送された773のシリーズレギュラーキャラクターのうち、9.1%が性的少数者であったという結果がでている<ref name=glaad-tv>{{Cite web|url= https://www.glaad.org/whereweareontv20 |title= Where We Are on TV Report – 2020 |accessdate=2021/04/14|publisher= GLAAD |author= |date= }}</ref>。 |
||
[[コンピュータゲーム]]の世界においても現在では数多くの性的少数者の表象が確認できるが、昔は珍しかった。1999年に開催された「[[Electronic Entertainment Expo]](E3)」にて『[[シムピープル]]』というシミュレーションゲームの試作が展示されたが、その際にゲーム内で女性キャラクター同士の結婚が展開され、多くのゲームファンは騒然となった<ref name= wp210324>{{Cite web|url= https://www.washingtonpost.com/video-games/2021/03/23/lgbtq-representation-video-games/ |title= How video games can help LGBTQ+ players feel like themselves |accessdate=2021/06/11|publisher=The Washington Post |author= |date=2021/03/24 }}</ref>。それから20年、ゲームの表象は激変し、2020年には「[[The Game Awards]]」で「Game of the Year」に輝いたゲーム『[[The Last of Us Part II]]』ではレズビアンの主人公とトランスジェンダーのキャラクターが大々的に登場した<ref name= indep200619>{{Cite web|url= https://www.independent.co.uk/arts-entertainment/games/feature/last-us-2-tlou2-lgbt-queer-ellie-lev-representation-a9571186.html |title= The Last of Us Part II’s queer representation is groundbreaking. Is it enough? |accessdate=2021/06/11|publisher=The Independent |author= |date=2020/06/19 }}</ref>。 |
|||
一方、日本の映像界では、性的少数者ではない人たちが主体となってセクシュアル・マイノリティが描かれていることに対して、消費や搾取となっている問題点が指摘されており、改善が求められている<ref name=huff201204>{{Cite web|url= https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_5fc5dacac5b63d1b770f341b |title= LGBTQ、日本でどう描かれてきたか。企画展が開催中、 「ゲイ男性を描く作品が多い」などの特徴も |accessdate=2021/04/15 |publisher= ハフポスト |author= |date= 2020/12/04}}</ref>。 |
|||
文学では昔から性的少数者を明確には描写できなくとも、暗示させるような表象があったことが知られている。ゲイ表象としては[[紫式部]]の『[[源氏物語]]』(1008年)<ref name=harchette >{{Cite web|url= https://www.hachettebookgroup.com/travel/planning/gay-and-lesbian-culture-in-japan/ |title= LGBT Culture in Japan |accessdate=2021/06/28|publisher= Hachette Book Group |author= |date= }}</ref>、[[オスカー・ワイルド]]の『[[ドリアン・グレイの肖像]]』(1890年)<ref name=newyorker110801>{{Cite web|url= https://www.newyorker.com/magazine/2011/08/08/deceptive-picture |title= How Oscar Wilde Painted Over “Dorian Gray” |accessdate=2021/06/28|publisher= The New Yorker |author= |date=2011/08/01 }}</ref>、レズビアン表象としては[[ジョゼフ・シェリダン・レ・ファニュ]]の『[[カーミラ]]』(1872年)<ref name=bookriot190507>{{Cite web|url= https://bookriot.com/lesbian-representation-in-carmilla/ |title= Lesbian Representation in the Vampire Classic CARMILLA |accessdate=2021/06/28|publisher= BOOK RIOT |author= |date=2019/05/07 }}</ref>、{{仮リンク| ラドクリフ・ホール |en| Radclyffe Hall}}の『{{仮リンク| 寂しさの泉 |en| The Well of Loneliness}}』(1928年)<ref name=bl201023>{{Cite web|url= https://www.bl.uk/womens-rights/articles/the-censorship-of-lesbian-literature |title= The censorship of lesbian fiction: From The Well of Loneliness to Tipping the Velvet |accessdate=2021/06/28|publisher= The British Library |author= |date=2020/10/23 }}</ref>など枚挙にいとまがない。初期のトランスジェンダー文学としては[[ヴァージニア・ウルフ]]の『[[オーランドー]]』(1928年)が有名である<ref name=guardian-orlando>{{Cite web|url= https://www.theguardian.com/books/2018/sep/03/different-sex-same-person-how-woolfs-orlando-became-a-trans-triumph |title= ‘Different sex. Same person’: how Woolf’s Orlando became a trans triumph |accessdate=2021/06/28|publisher= The Guardian |author= |date=}}</ref>。 |
|||
== 不平等と差別 == |
== 不平等と差別 == |
||
189行目: | 280行目: | ||
性的指向などを治療できるとインターネット上のサービスで発信することは規制対象となることがあり、[[YouTube]]では[[ヘイトスピーチ]]としてチャンネル削除の対処をとっている<ref name=cnn210421>{{Cite web|url= https://www.cnn.co.jp/tech/35169708.html |title=ユーチューブ、テレビ伝道師のチャンネル削除 「同性愛治療」の動画めぐり |accessdate=2021/04/21|publisher=CNN |author= |date=2021/04/21 }}</ref>。 |
性的指向などを治療できるとインターネット上のサービスで発信することは規制対象となることがあり、[[YouTube]]では[[ヘイトスピーチ]]としてチャンネル削除の対処をとっている<ref name=cnn210421>{{Cite web|url= https://www.cnn.co.jp/tech/35169708.html |title=ユーチューブ、テレビ伝道師のチャンネル削除 「同性愛治療」の動画めぐり |accessdate=2021/04/21|publisher=CNN |author= |date=2021/04/21 }}</ref>。 |
||
=== 健康 |
=== 健康・自殺・性被害 === |
||
差別や不平等に苦しめられる性的少数者の若者は、そうではない人たちと比べて、[[自殺]]念慮と自殺未遂、[[アルコール]]や[[薬物]]の使用、暴力、[[メンタルヘルス]]など健康や生命を脅かされている状況にある人の割合が高いと指摘されている<ref name=apa-health>{{Cite web|url= https://www.apa.org/advocacy/health/lgbtq-health |title= Sexual and Gender Minority Health |accessdate=2021/04/14|publisher= American Psychological Association |author= |date= }}</ref><ref name=cdc-health>{{Cite web|url= https://www.cdc.gov/healthyyouth/disparities/health-disparities-among-lgbtq-youth.htm |title= Health Disparities Among LGBTQ Youth |accessdate=2021/04/17|publisher= CDC |author= |date= }}</ref>。同性愛者や両性愛者の若者は異性愛者と比べて自殺を考える人の割合が3倍高いという報告もある<ref name=meditoday210323>{{Cite web|url= https://www.medicalnewstoday.com/articles/lgbt-youth-and-mental-health |title= What to know about sexual orientation and mental health in youth |accessdate=2021/04/17 |publisher= Medical News Today |author= |date=2021/03/23 }}</ref>。イギリスの調査によれば、[[ホームレス]]となっている性的少数者の若者のうち6人に1人が家族から性的虐待を受けている<ref name=pink210414>{{Cite web|url= https://www.pinknews.co.uk/2021/04/14/lgbt-youth-homelessness-report-act-sexua-abuse/ |title= One in six homeless LGBT+ youth have been sexually abused by family members, damning report finds |accessdate=2021/04/15|publisher= PinkNews |author= |date=2021/04/14 }}</ref>。日本の複数の調査では、性的少数者のうち約4割が、[[レイプ]]や[[セクハラ]]などの性被害に遭ったことが明らかになっている<ref name=huff210320>{{Cite web|url= https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_6052a41ac5b6e32eb4af0835 |title= レイプでも「被害届なんて出せない」と警察官が一蹴。見過ごされる性的少数者の性被害 |accessdate=2021/04/14|publisher= ハフポスト|author= |date=2021/03/20 }}</ref>。警察や相談機関の現場では、性的少数者の性暴力被害が見過ごされ、差別的対応を受けることもある{{R| huff210320}}。 |
差別や不平等に苦しめられる性的少数者の若者は、そうではない人たちと比べて、[[自殺]]念慮と自殺未遂、[[アルコール]]や[[薬物]]の使用、暴力、[[メンタルヘルス]]など健康や生命を脅かされている状況にある人の割合が高いと指摘されている<ref name=apa-health>{{Cite web|url= https://www.apa.org/advocacy/health/lgbtq-health |title= Sexual and Gender Minority Health |accessdate=2021/04/14|publisher= American Psychological Association |author= |date= }}</ref><ref name=cdc-health>{{Cite web|url= https://www.cdc.gov/healthyyouth/disparities/health-disparities-among-lgbtq-youth.htm |title= Health Disparities Among LGBTQ Youth |accessdate=2021/04/17|publisher= CDC |author= |date= }}</ref>。同性愛者や両性愛者の若者は異性愛者と比べて自殺を考える人の割合が3倍高いという報告もある<ref name=meditoday210323>{{Cite web|url= https://www.medicalnewstoday.com/articles/lgbt-youth-and-mental-health |title= What to know about sexual orientation and mental health in youth |accessdate=2021/04/17 |publisher= Medical News Today |author= |date=2021/03/23 }}</ref>。性的少数者の若者は性的少数者ではない人と比べて[[摂食障害]]になる可能性が3倍高い<ref name=justlikeyou210511>{{Cite web|url= https://www.justlikeus.org/single-post/lgbt-young-people-three-times-more-likely-eating-disorder |title= LGBT+ young people are three times more likely to have an eating disorder |accessdate=2021/06/06|publisher= justlikeus.org |author= |date=2021/05/11 }}</ref>。また、アセクシュアルの若者の約48%が[[不安障害]]の経験があるという報告もされている<ref name=justlikeyou210509>{{Cite web|url= https://www.justlikeus.org/single-post/asexual-visibility-day-young-people-mental-health |title= Asexual young people struggle more with mental health than their peers |accessdate=2021/06/06|publisher= justlikeus.org |author= |date=2021/05/09 }}</ref>。イギリスの調査によれば、[[ホームレス]]となっている性的少数者の若者のうち6人に1人が家族から性的虐待を受けている<ref name=pink210414>{{Cite web|url= https://www.pinknews.co.uk/2021/04/14/lgbt-youth-homelessness-report-act-sexua-abuse/ |title= One in six homeless LGBT+ youth have been sexually abused by family members, damning report finds |accessdate=2021/04/15|publisher= PinkNews |author= |date=2021/04/14 }}</ref>。日本の複数の調査では、性的少数者のうち約4割が、[[レイプ]]や[[セクハラ]]などの性被害に遭ったことが明らかになっている<ref name=huff210320>{{Cite web|url= https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_6052a41ac5b6e32eb4af0835 |title= レイプでも「被害届なんて出せない」と警察官が一蹴。見過ごされる性的少数者の性被害 |accessdate=2021/04/14|publisher= ハフポスト|author= |date=2021/03/20 }}</ref>。警察や相談機関の現場では、性的少数者の性暴力被害が見過ごされ、差別的対応を受けることもある{{R| huff210320}}。 |
||
こうした健康格差を解消するべく、[[アメリカ心理学会]]はセクシュアル・マイノリティに対応できるようにトレーニング・プログラムを提供している{{R| apa-health}}。 |
こうした健康格差を解消するべく、[[アメリカ心理学会]]はセクシュアル・マイノリティに対応できるようにトレーニング・プログラムを提供している{{R| apa-health}}。性的少数者の自殺防止に取り組む非営利団体として「トレバー・プロジェクト(The Trevor Project)」などがある<ref name=nowthis210603>{{Cite web|url= https://nowthisnews.com/news/6-lgbtq-organizations-to-know-use-and-support |title= 6 LGBTQ+ Organizations To Know, Use, And Support |accessdate=2021/06/04|publisher= NowThis |author= |date=2021/06/03 }}</ref>。 |
||
{{Main|LGBTの人々に対する暴力}} |
{{Main|LGBTの人々に対する暴力}} |
||
202行目: | 293行目: | ||
== 脚注 == |
== 脚注 == |
||
{{脚注ヘルプ}} |
|||
=== 注釈 === |
=== 注釈 === |
||
{{Notelist}} |
|||
{{Reflist|group="注釈"}} |
|||
=== 出典 === |
=== 出典 === |
||
{{Reflist|2}} |
{{Reflist|2}} |
||
212行目: | 304行目: | ||
* {{Wikicite|ref={{Sfnref|石田|2019}} |reference=石田仁『はじめて学ぶLGBT 基礎からトレンドまで』 [[ナツメ社]]、2019年、264頁。{{ISBN2|978-4816365829}}。}} |
* {{Wikicite|ref={{Sfnref|石田|2019}} |reference=石田仁『はじめて学ぶLGBT 基礎からトレンドまで』 [[ナツメ社]]、2019年、264頁。{{ISBN2|978-4816365829}}。}} |
||
* {{Wikicite|ref={{Sfnref|LGBT法連合会|2019}} |reference=LGBT法連合会『日本と世界のLGBTの現状と課題』 [[かもがわ出版]]、2019年、160頁。{{ISBN2|978-4780310160}}。}} |
* {{Wikicite|ref={{Sfnref|LGBT法連合会|2019}} |reference=LGBT法連合会『日本と世界のLGBTの現状と課題』 [[かもがわ出版]]、2019年、160頁。{{ISBN2|978-4780310160}}。}} |
||
* {{Wikicite|ref={{Sfnref|ジェローム・北丸(訳)|2019}} |reference= ジェローム・ポーレン 著、[[北丸雄二]] 訳『LGBTヒストリーブック 絶対に諦めなかった人々の100年の闘い』 フィルムアート社、2019年、191頁。{{ISBN2|978-4-909125-18-7}}。}} |
|||
== 関連項目 == |
== 関連項目 == |
2021年6月29日 (火) 03:03時点における版
LGBT関連トピックの概略 |
LGBT |
---|
レズビアン ∙ ゲイ ∙ バイセクシュアル ∙ トランスジェンダー |
LGBTポータル |
性的少数者(せいてきしょうすうしゃ)とは、何らかの意味で「性」(「性別」も参照)のあり方が多数派と異なる人のこと。英語のSexual Minority(セクシュアル〈セクシャル〉・マイノリティ)の日本語訳である。略してセクマイの他に性的少数派、性的マイノリティ、ジェンダー・マイノリティとも言う。一般的に同性愛者、両性愛者、トランスジェンダーなどが含まれる。最近の英語圏では、総称としてGSM(Gender and Sexual Minority)[1]が用いられている。
歴史
マイノリティ(minority)という言葉は、大多数のなかで少数であること、また、社会学的には社会的弱者であることを指す。セクシュアル・マイノリティはその名のとおり、性におけるマイノリティである。
世間的に、異性と惹かれ合うことや、出生時に割り当てられた性別がそのまま自分のジェンダーとして違和感も持たないことが当たり前として暗黙で扱われてきた歴史があり、これらは性におけるマジョリティ(多数者・強者)として疑問視されずに社会に存在してきた[2]。セクシュアル・マイノリティはそれらに当てはまらない人たちを指す。
といっても、セクシュアル・マイノリティは人類史において常にマイノリティだったわけではなく、例えば同性愛は古代イスラエルや古代ギリシャでは普通にありふれていた[3]。中近世の日本では、衆道(男色)が一般的に広く根付いていた[4]。しかし、世界の変容とともにしだいに迫害を受ける立場に追いやられた[3]。その結果、当事者たちは自分らしさを隠しながら生きるしかなかった。ハーレム・ルネサンスに重なる1920年代のニューヨークの都会の裏ではゲイ・コミュニティが栄え、アフリカ系アメリカ人女性のブルース音楽は、レズビアンを密かに表現した[3]。それでも迫害は強まるばかりだった。1950年代から1960年代にかけてアメリカ政府は共産主義者を標的にした赤狩りの一環として、同愛者とおぼしき人を粛清する大規模な取り組みを実行した(ラベンダーの恐怖)[5]。精神医学の権威だったチャールズ・ソカリデスを始め、多くの医学界の専門家は同性愛を精神的な病と見なした[6][注釈 1]。
そんな中、1969年6月28日、ニューヨークのゲイバー「ストーンウォール・イン」が警察による踏み込み捜査を受けた際、居合わせた性的少数者らが初めて警官に真っ向から立ち向かったことで(ストーンウォールの反乱)、当事者はマイノリティとしての現状に声を上げるという転機を迎えた[3]。1969年のストーンウォールでの出来事直後から、「Gay Liberation Front (GLF)」や「Street Transvestite Action Revolutionaries (STAR)」といった当事者団体が続々と結成され、平等や権利を公で主張し始めた[7]。1977年、ハーヴェイ・ミルクはカリフォルニア州サンフランシスコ市の市会議員に当選し、アメリカで初めて選挙で選ばれたゲイを公表していた公職者となった[8][注釈 2]。しかし、すぐに差別が無くなることもなく、正しい理解と平等への道のりは険しいものだった。エイズが大流行をし始めた1980年代初期には、エイズは「ゲイの癌」とセンセーショナルに報道された(実際は同性愛者に限らず感染する)[9]。
それ以降、世界中で性的少数者は重大なトピックとなった。2006年のジョグジャカルタ原則では性的少数者の人権を守るべく、国家がとるべき措置をあげ、29の原則にまとめられた[10][11]。2011年6月17日には、性的指向と性自認に関する声明とウィーン宣言及び行動計画の実現のため、国際連合人権理事会は国際連合人権高等弁務官に2011年12月までに、全世界の性的指向と性自認による人権蹂躙の詳細の調査を求め、その問題を理事会で審議するという決議を採択した[12]。 これを受け、国際連合人権高等弁務官事務所は2011年11月17日付けで報告書を作成した[13]。
国際レズビアン・ゲイ協会の欧州地区が評価している「Rainbow Map and Index」によれば、2020年のヨーロッパにおいて性的少数者に対する施策が最も進んでいる国の上位トップ5か国は、上からマルタ、ベルギー、ルクセンブルク、デンマーク、ノルウェーとなっている[14]。
語源
この言葉は、1960年代にLaws Ullerstam(sv)の著書に影響を受けて、少数民族(ethnic minority)の類語として生まれたとされている[15]。
「Sexual Minority」という表現では、性的指向(sexual orientation)に関するものだけしか意味していないように思われるため、性自認(性同一性;gender identity)も含めるべく、「Gender and Sexual Minority(GSM)」や「Sexual and Gender Minority(SGM)」と表現する場合もある[16]。
これ以外にも「Sexual Minority」に代わる用語として、「Gender, Sexual and Romantic Minorities(GSRMs)」[17][18]や「Gender and Sexual Diversities(GSD)」[19]などが一部の団体から提案されているが、主流として普及はしていない。
性的少数者という表現を言葉のイメージから使用したくないと考える当事者もいる[20]。
近年では性的少数者に代わる用語として「クィア(Queer)」が当事者の運動や研究において多用されている[21]。もともとは蔑称だったが、それを逆手にとるかたちで世間的にマイノリティとして扱われているジェンダーやセクシュアリティを包括的に表す言葉に生まれ変わった[21]。ただし、クィアが何を意味するかは個人によって差異があり、受け入れるかどうかも違ってくるので留意が必要とされる[22]。
なお、「SOGI(Sexual Orientation and Gender Identity)」という表現もあるが、これはセクシュアル・マイノリティに限らず全ての人に関わる性的指向および性自認を指している[23]。
含まれる範囲
性的少数者は多様性に富んでいるが、性的指向と性自認の2つの観点から語られることが多い[24]。実際はさらに恋愛的指向や性表現なども加わって複雑で無数の組み合わせがあり、グラデーションのように幅(スペクトル)もあって流動的である[25][26][27]。
性的指向
性的指向とは、どんなジェンダーに性的な魅力を感じるか(もしくは感じないか)ということである[28][29]。
性的指向については、マイノリティとされている主なものは、以下のとおりである[24][注釈 3]。
- ゲイ(男性の同性愛)… 男性同士で惹かれ合う[注釈 4]。
- レズビアン(女性の同性愛)… 女性同士で惹かれ合う。
- バイセクシュアル(両性愛)… 2つ以上の性別に惹かれる[30][注釈 5]。
- パンセクシュアル(全性愛)… あらゆるジェンダーに惹かれる。
- アセクシュアル(無性愛)… どのジェンダーにも性的に惹かれない。総称としても用いられる[31]。
- オートセクシュアル … 自分自身に性的に惹かれる[34]。
「ゲイ」という言葉は、男性に限らず同性愛者含めたマイノリティな性的指向全般を総称して指すこともあるが、この用法を嫌う人もいる[35]。バイセクシュアルの人は、ゲイやレズビアンになる途中段階だと誤解されやすいが、明確な性的指向である[36]。
恋愛的指向
「性的なもの(性的指向)」と「ロマンチックなもの(恋愛的指向)」に分けて考える場合もあり[37]、これは「Split Attraction Model(SAM)」と呼ばれ、主にアセクシュアルのコミュニティでよく用いられている[38]。恋愛的指向も含めた性的マイノリティの総称として「GSRMs」が使われることもある[17][18]。具体的には、性的に誰にも惹かれない人を「アセクシュアル」というのに対して、恋愛的に誰にも惹かれないのは「アロマンティック」といった表現となる[39][38][40]。性的指向と恋愛的指向が一致しないことは「クロス・オリエンテーション(cross orientation)」と呼ばれる[41]。
指向が性的と恋愛的に分離できると考えるようになったのは最近のことではなく、例えば、1879年に性科学の専門家で人権社会運動家でもあるカール・ハインリッヒ・ウルリッヒスがそうした考えを提唱していた[42]。1979年には心理学者のドロシー・テノフが著作『Love and Limerence』の中で、ロマンティックな魅力からくる精神状態を「limerent 」と表現し、その状態がないことを「non-limerent」と位置付けた[43]。その後、2000年から2005年の間にアセクシュアル当事者の最大のオンラインコミュニティである「AVEN」が中心となって「Split Attraction Model」が定着し始めた[44]。現在では多くの団体や組織が性的指向と恋愛的指向を混同せずに分けて権利や平等を訴えている[45][46][47][48][49][50][51][52]。「AUREA(Aromantic-spectrum Union for Recognition, Education, and Advocacy)」というアロマンティックのコミュニティは毎年「Aromantic Spectrum Awareness Week 」を実施し、恋愛的指向の普及啓発に努めている[53]。
何を「恋愛」と受け止めるかは人によって異なり、例えばセックスを恋愛と関係ないとみなす人もいれば、恋愛と関係があると考える人もいる[28]。ある人に恋愛的に惹かれているからといって、性的にも惹かれているとは限らない[54]。性的指向と恋愛的指向は一般には区別されないことも多いが、当事者にとっては大切な自己認識のひとつである[28]。
恋愛的指向については、マイノリティとされている主なものは、以下のとおりである[55][56]。
- ホモロマンティック … 同性同士で惹かれ合う。
- バイロマンティック … 2つ以上の性別に惹かれる。
- パンロマンティック … あらゆるジェンダーに惹かれる。
- アロマンティック … どのジェンダーにも恋愛的に惹かれない。総称としても用いられる[31]。
- デミロマンティック … 他者との情緒的なつながり(信頼関係)がある場合のみ、惹かれる。
- グレイロマンティック … ごく稀にしか惹かれない。
性的指向と恋愛的指向を組み合わせることで、例えば、「アセクシュアル・ホモロマンティック」「パンセクシュアル・グレイロマンティック」「ヘテロセクシュアル・バイロマンティック」といった表現が可能になる。アセクシュアルとアロマンティックは合わせて「a-spec(A spectrum)」と総称される[57]。自分が感じる魅力が性的であるかプラトニックであるかわからない、もしくはそもそも魅力を感じているのかもわからない人は「クワセクシュアル(クォイセクシュアル)」と呼ばれる[2]。
日本では「ノンセクシュアル」という用語が性的に誰にも惹かれないが恋愛はするという指向として使われることがある[2][58]。
性的魅力や恋愛的魅力以外にも魅力は存在し、例えば、セックスや恋愛とは無関係に人の外観を高く評価する「美的魅力(Aesthetic attraction)」や、セックスや恋愛とは無関係に人の感覚(主に触覚や嗅覚)に訴える「感覚的魅力(Sensual attraction)」などがある[32]。
性自認(性同一性)
生殖機能に基づいて分類する2つの主要な区分(男女・雄雌)は「生物学的な性(Sex)」と呼ばれるが、これらはあくまで社会的にラベル付けされた概念である[59]。人間の場合、染色体やホルモン、生殖器などを基準に「男」と「女」に出生時に分類されるが、典型的なパターンに一致しない人もおり、中には典型的なパターンに一致させるべく強制的に手術を受けさせられる人もいる(インターセックスなど)[60]。その「生物学的な性」に対して「ジェンダー(Gender)」とは、生物学的な特徴を越えて「自分が何者なのか」という感覚に基づいたものであり[61]、社会的に構築されている[62][63]。そのため、「生物学的な性」と「ジェンダー」が一致する人もいれば、一致しない人もいる[61]。
性自認とは、自分自身のジェンダーをどう理解し、どう振る舞い、どう見られたいのかを示す識別名である[61]。
性自認については、マイノリティとされている主なものは、以下のとおりである[24][64]。
- トランスジェンダー … 自分の認識しているジェンダーが出生時に割り当てられた性別と異なる。
- デミ … あるジェンダーに部分的に結びつきを感じている。デミガール、デミボーイ、デミガイ、デミノンバイナリーなどがある[65]。
ノンバイナリーの人たちの中には「enby(エンビー)」という俗語で自分を表現する者もいる[66]。ノンバイナリーと意味がよく似た用語として「ジェンダークィア」があり、重複している部分もあるが、使われ方が違っている場合もあり、実際は個人の意思が尊重される[67]。
日本では英語圏における「ノンバイナリー」とほぼ同様の意味で「Xジェンダー」という表現がよく用いられる[2]。
社会における男女二元論的な規範とは異なるかたちで自分を認識したり、表現したりする人の総称として「ジェンダー・ノンコンフォーミング」があり、ジェンダークィアと違ってアイデンティティとしてだけでなく特定のグループや表現、パターンを指すことが多い[66]。
「デミ」は、例えば「デミガール」であれば、自分は女性だと強く感じる面もありつつ、同時に女性ではないとも感じるといったアイデンティティを意味する[65]。たいていのデミガールは、出生時に決められた生物学的な性は女性である[68]。
「トランスセクシュアル(Transsexual)」という用語は古いもので、包括的な意味を持たないので使われなくなった[69]。
アイデンティティとして異性装をする人は「クロスドレッサー」や「ドラァグ」と呼ばれるが、これは性自認や性的指向とは必ずしも関係ない[70]。なお、そのような人たちを「トランスヴェスタイト(Transvestite)」と表現する場合もあるが、この言葉は蔑称とみなされることがある[70]。
性表現(ジェンダー表現)
自分のジェンダーを明らかにして表現する方法は、言葉づかい、仕草、声、服装、メイク、髪形、名前、代名詞、どの施設(トイレ・更衣室)を利用するかなどさまざまである[71][72]。これらは「性表現(ジェンダー表現;Gender expression)」と呼ばれる[71]。一方でこれらの表現が必ずしもジェンダーと結びついているとは限らず、それは個人の自由である[71]。性自認と一致させる必要もない[73]。
男らしさと女らしさの両方の特徴を併せ持つこと、そのどちらでもない特徴を持つこと、その間の特徴を持つことを「アンドロジナス(androgynous)」と呼び、ジェンダーに限らず(シスジェンダーでもトランスジェンダーでも)自由にこの言葉を使用することができる[74][75]。
代名詞
英語圏では「he」や「she」など代名詞がジェンダーを表すことになり、これもまた性表現のひとつとなる[76]。しかし、従来から一般に使用されている「he」や「she」では典型的な「男」と「女」しか表現できないため、ノンバイナリーのジェンダーを表現したい人を中心に、ジェンダーニュートラルな代名詞が用いられるようになった(主なものは以下のとおり)[77][78]。
主格 | 目的格 | 所有格 | 所有代名詞 | 再帰代名詞 | |
---|---|---|---|---|---|
男性 | he | him | his | his | himself |
女性 | she | her | her | hers | herself |
ジェンダーニュートラル | they | them | their | theirs | themself |
Ze | Zir | Zir | Zirs | Zirself | |
Xe | Xem | Xer | Xirs | Xirself | |
Sie | Hir | Hir | Hirs | Hirself |
「they」はこれまでは三人称複数の代名詞として利用されてきたが、ジェンダーニュートラルとして使用されるときは三人称単数として扱われる[76]。ジェンダーニュートラルな代名詞としては「they」が最も好まれている[78]。アメリカ方言学会は2010年代を象徴する言葉としてこのジェンダーニュートラルな代名詞である「they」を選んでいる[79]。
その他
また、場合によっては、以下のものもセクシュアル・マイノリティに含む[24]。
先住民族の第3の性
先住民などの文化的な伝統がある第3の性も存在する。主なものは、以下のとおりである。
- トゥー・スピリット … アメリカ先住民における男女規範に当てはまらない人[80]。
- マーフー … ハワイ先住民やタヒチの文化における第3の性[81]。
- ファアファフィネ … サモアの文化における第3の性[82]。
インターセックス
インターセックスは、出生時から男性または女性の典型的な定義にあてはまらない生殖・性的構造を持って生まれた人である[83]。両性具有とは異なる[84]。
インターセックス(インターセクシュアリティ)は医学的に診断され、出生時にわかる場合もあれば、後で判明することもある[85][83]。インターセックスだからといってトランスジェンダーやノンバイナリーと同じというわけではなく、インターセックスの人々がどのジェンダーやセクシュアリティを選ぶかは個人しだいである[85][86]。インターセックスの他に「DSD(disorders of sex development)」という医学用語も使われており(日本語では「性分化疾患」と訳されることがある)、双方の言葉をめぐって論争も起きている[87][88]。2019年には国際疾病分類にて「DSD(disorders of sex development)」の名称が使用され続けていることに反発し、世界のインターセックス当事者団体が共同で世界保健機関に対して改善を求める声明を発表した[89]。
ポリアモリー
ポリアモリーは、互いの同意のもとで成立する一対一ではない性愛関係である[90]。ポリアモリーを性的少数者に含むかどうかは様々な意見が存在している[24][91]。
マイノリティではないもの
性的指向において、異性に惹かれるのみの人は「ヘテロセクシュアル(ストレート、異性愛者)」と呼ばれ、マイノリティではなくマジョリティである[92][93]。また、何かしらのジェンダーに性的に惹かれる人(つまりアセクシュアルではない人)は「アロセクシュアル(allosexual)」と呼ばれる[39][94]。
性自認において、自分の認識しているジェンダーが出生時に割り当てられた性別と一致する人は「シスジェンダー」と呼ばれ、マイノリティではなくマジョリティである[69][93]。シスジェンダーといった用語は、マイノリティではない人たちが特権を持っていることを注意喚起させるために用いられる[95]。
BDSM含むフェティシズムは個人の性的指向や性自認を反映して性的少数者と重複する可能性もあるが、多くの場合、相関関係はない[96]。逆に一部のフェティシスト(主に異性愛者でシスジェンダーの男性)はレズビアンやバイセクシュアル、トランスジェンダーといった性的少数者を自らのフェティシズムの対象とし、性的興奮を得ようとする[97]。これは性的少数者にとって嫌がらせや搾取と受け止められる[97]。また、一部のフェティシズム(ファーリー・ファンダムなど)を性的少数者の連帯運動の輪に入れようとする動きもあるが、性的少数者からの反発は強い[98]。
また、社会的に受容される範囲を逸脱するもの、例えば、性依存症や児童への性的虐待、性的倒錯などはセクシュアル・マイノリティとは扱われない[24]。
LGBTとの違い
性的マイノリティとよく似た言葉で、しばしば混同される概念・言葉として、LGBT がある。これは、レズビアン(Lesbian)、ゲイ(Gay)、バイセクシュアル(Bisexual)、トランスジェンダー(Transgender)の頭文字から作られた頭字語である[99]。LGBTという言葉は1990年代から使用されている[99]。
LGBTは、インターセックスを加えて LGBTI と言ったり、クィア(Queer)またはクエスチョニング(Questioning)を加えて LGBTQ もしくは LGBTQ+ と表記したりもする[99]。また、インターセックスやアセクシュアルを加えて LGBTQIA+ [100]、さらにトゥー・スピリットを加えて LGBTQIA2S+ と表現することもある[101]。
これら頭字語による用語は個々の性的少数者ではなく、コミュニティを包括的に示すものである[99]。性的少数者とLGBTの違いとして、その言葉のなりたちが挙げられる。「性的少数者」という言葉が客観的に性におけるマイノリティを定義しているのに対し、「LGBT」は1988年頃にアメリカの活動家が使い始めた言葉であって[102]、当初のゲイのコミュニティからさらに包括的で相互関係を重視した連帯を意味する「LGBT」へと変移していった[16][20]。
今では新しいジェンダーやセクシュアリティが認知されるたびに頭文字が追加され、どんどん長くなる傾向にあり、それを嘲笑したり、過剰だと非難する人も一部では存在する[103]。一方で、そのラベルは連帯のために必要であり、誰もが自分自身のジェンダーやセクシュアリティに名前をつけて表現してもいいと主張する声もある[103]。
認識と割合
自分が性的少数者であるかどうかを認識するのは、どの年齢でも起きうることであり、認識に時間がかかることもあるし、人生の中で変化することもある[37][104]。性的経験(性行為など)がなくても自分の性的指向を認識することはできる[105]。偏見がなく信頼ができる他者や専門家と話すことは、自分が性的少数者かどうかを理解する手助けとなる[37]。自分の性自認や性的指向を探している状態の人々は「クエスチョニング」と呼ばれたりもする[106]。
2020年のギャラップによるアメリカの調査によると、成人の5.6%が自らをレズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーのいずれかと認識しているという結果がある[107]。また、その割合は1997年から2012年の間に生まれたZ世代で特に高く、16%(およそ6人の1人)となっている[107]。この調査でセクシュアル・マイノリティと答えた人のうち、54.6%がバイセクシュアルと回答した[107]。2019年のイギリスの調査では、16歳以上のイギリス人の2.7%がゲイ、レズビアン、またはバイセクシュアルであると回答し、この割合は増加傾向にある[108]。
2020年の電通による日本の調査によれば、セクシュアル・マイノリティに該当すると答えたのは全体の約8.9%だった[109]。その内容は、ゲイが1.94%、レズビアンが1.33%、バイセクシュアルもしくはパンセクシュアルが2.94%、アセクシュアルもしくはアロマンティックが0.81%、性的指向のクエスチョニングが1.63%、トランスジェンダーが0.64%、Xジェンダーが1.20%、性自認のクエスチョニングは0.62%であった[109]。
自らがセクシュアル・マイノリティであると他人に打ち明けることは「カミングアウト」といい、これは「coming out of the closet」を短縮したものである[25][110]。自分が性的少数者であると公にしていない人は「クローゼット」という[111]。毎年多くのセレブ(芸能人・政治家など)が性的少数者であることをカミングアウトしている[112][113]。
カミングアウトした性的少数者たちは連帯を示し、社会に平等を訴えるために運動を各地で行っている。有名なのがプライド・パレードであり、世界各地で実施されている[114]。レインボー・フラッグ(虹をモチーフとした旗)は、性的少数者ないしLGBTの象徴となっており、この旗は1978年にゲイ・コミュニティの象徴となる旗のデザインを依頼されたギルバート・ベイカーが考案した[115]。また、それぞれの性自認・性的指向・恋愛的指向ごとに独自のフラッグが考案されており、当事者のコミュニティが自分たちのアイデンティティを示すのに用いている[116]。
こうした人権運動において活動家として著名な人物や組織もいる。マーシャ・P・ジョンソンはトランスジェンダー活動家として尽力した有名人のひとりであり、ビリー・ジーン・キングは差別が蔓延るスポーツ界で同性愛者であることを告白したアメリカ初のスポーツ選手となり、バイヤード・ラスティンはキング牧師の右腕でありながらゲイゆえに公民権運動家からも批判されるも自分の性的指向を隠さずに貫いた[117]。
性的少数者を積極的に支援する行動をとる人のことを「アライ(Ally)」と呼ぶ[118]。
ジェンダー違和
出生時に決められた性別と自認するジェンダーが一致しない人は、人生において苦痛や不快感が生じることがあり、これは「ジェンダー違和 (性別違和;Gender dysphoria)」と呼ばれる[119][120]。ジェンダー違和には、社会的状況によって引き起こされる「社会的違和」と身体と関連してくる「身体的違和」がある[119]。このジェンダー違和の程度は個人差が大きく、かなり強い苦悩を抱える者もいれば、全く感じない者もいる[119]。
医学的には、アメリカ精神医学会の精神障害の診断と統計マニュアル(DSM-5)によれば、別のジェンダーへの強い願望に関連する臨床的に重大な苦痛または障害として認められる概念を指す[121]。以前は「性同一性障害(Gender Identity Disorder)」とも呼ばれていた[122]。2019年には国際疾病分類の改定版(ICD-11)が了承されたことで、「精神障害」の分類から除外され、「性の健康に関連する状態」という分類の中の「Gender Incongruence(性別不合)」に変更された[122]。そのため今では精神疾患とはみなされない[123]。
一方で、何らかのかたちで自分のジェンダーを肯定されたことで得られる幸福や心地よさを「ジェンダー多幸感(Gender euphoria)」と呼び、ジェンダー違和とは対極にある感覚である[119]。
移行
ジェンダー違和を抱えたままでは性的少数者にとっては生きるのに困難がともなう。そこでジェンダー違和を和らげて、自分のジェンダーを肯定し、人生を送りやすくするための何かしらのプロセスをとることがおり、それは「移行(transition)」と呼ばれる[119]。
移行の具体例としては以下の行為が挙げられる[119][124]。
トランスジェンダーなどと露骨に判断されることなく、他人に疑われることもなく、自分の望むジェンダーそのままに社会で通用できることは「パス(パッシング;passing)」と呼ばれる[125]。
レプリゼンテーション
人間が創作した演劇・映像・文学・芸術などの中における表象を「レプリゼンテーション(representation)」と呼ぶ(日本語ではリプレゼンテーションとも表記される)[126]。性的少数者の人々が公正に描かれることがレプリゼンテーションでは重視される[126]。
性的少数者は映画やドラマ番組などの映像作品において正しく描写されてこなかった歴史がある。ドキュメンタリーの『セルロイド・クローゼット』(1981年)や『トランスジェンダーとハリウッド: 過去、現在、そして』(2020年)、『テレビが見たLGBTQ』(2020年)ではその性的少数者のレプリゼンテーションに関する歴史が語られている[127][128][129][130]。テレビ番組、演芸、企業の広報などが性的少数者を侮蔑的に笑いものにする事例もたびたび起きている[131][132][133]。
これらの誤った表象は性的少数者のステレオタイプや誤解を助長する。ステレオタイプの例としては、例えば「レズビアンのカップルは必ずブッチとフェムである」[134]「バイセクシュアルの人はグループセックスを好む」[135]「トランスジェンダーは不幸な犠牲者となる」[136]「アセクシュアルの人はセックスの楽しさを知らないだけで一度経験させればわかってくれる」[137]などがある。
また、陰惨な事件の引き金になることもある。『ジェニー・ジョーンズ・ショー 』というテレビ番組の1995年3月6日の放送にて、同性愛者の男性が同僚男性のジョナサン・シュミッツに片思いしていたことを本人の前で告白するという企画があり、この放送の3日後、シュミッツは告白してきた男性を殺害するという事件を引き起こした(ゲイ・パニック・ディフェンス)[138]。
日本の映像界では、性的少数者ではない人たちが主体となってセクシュアル・マイノリティが描かれていることに対して、消費や搾取となっている問題点が指摘されており、改善が求められている[139]。
映像作品における性的少数者に関するより良い表象は増えつつあり、少しずつ改善している。1977年には『That Certain Summer 』が放映され、同性愛を同情的観点から描いた最初のテレビ映画となった[140]。1978年には『A Question of Love 』というレズビアンの女性を真面目に描いたテレビ映画も登場した[141]。2014年から配信されたアニメ『ボージャック・ホースマン 』ではこれまで表象として描かれることはほぼ無かったアセクシュアルのキャラクターが明確に登場し、当事者から称賛を受けた[142]。『JUNO/ジュノ』での演技によりアカデミー主演女優賞にノミネートされた経験のあるエリオット・ペイジは2020年に男性であるとカミングアウトし、世界で最も有名なトランスジェンダーのひとりとなり、大きな話題を集めた[143]。
GLAADの調査によれば、2020年のメジャースタジオが公開した118本の映画のうち、性的少数者として識別できるキャラクターがいた作品は22本(18.6%)だった[144]。具体的にどの性的少数者だったかという内訳は、ゲイ男性が68%、レズビアンが36%、バイセクシュアルが14%で、トランスジェンダーはいなかった[144]。また別の調査からは、2020年のテレビシリーズとして放送された773のシリーズレギュラーキャラクターのうち、9.1%が性的少数者であったという結果がでている[145]。
コンピュータゲームの世界においても現在では数多くの性的少数者の表象が確認できるが、昔は珍しかった。1999年に開催された「Electronic Entertainment Expo(E3)」にて『シムピープル』というシミュレーションゲームの試作が展示されたが、その際にゲーム内で女性キャラクター同士の結婚が展開され、多くのゲームファンは騒然となった[146]。それから20年、ゲームの表象は激変し、2020年には「The Game Awards」で「Game of the Year」に輝いたゲーム『The Last of Us Part II』ではレズビアンの主人公とトランスジェンダーのキャラクターが大々的に登場した[147]。
文学では昔から性的少数者を明確には描写できなくとも、暗示させるような表象があったことが知られている。ゲイ表象としては紫式部の『源氏物語』(1008年)[148]、オスカー・ワイルドの『ドリアン・グレイの肖像』(1890年)[149]、レズビアン表象としてはジョゼフ・シェリダン・レ・ファニュの『カーミラ』(1872年)[150]、ラドクリフ・ホール の『寂しさの泉 』(1928年)[151]など枚挙にいとまがない。初期のトランスジェンダー文学としてはヴァージニア・ウルフの『オーランドー』(1928年)が有名である[152]。
不平等と差別
同性婚と同性での性行為
同性婚を認める国・地域は増えており、ヨーロッパ、北アメリカ、南アメリカ、アフリカ、アジアを含む世界中に存在し、2020年5月時点で世界の約20%の国・地域に及んでいる[153]。同性婚を異性婚と同じ扱いとして世界最初に法的に認めた国はオランダで、2001年のことだった[154]。2019年には台湾がアジアで初となる同性結婚が法的に認められた国となった[155]。
一方で、同性婚に強く反発する国・政治家なども多く、同性婚の実現を求める当事者や支援者と対立している。同性婚に反対する主張者の一部は「少子化が進む」と懸念を挙げるが、同性婚の導入が出生率に影響したという科学的な証明はない[156]。アメリカでは同性カップルのうち16.2%が子育てをしている[157]。イスラエルでは同性カップルが子育てをするのがブームとなり、国全体の出生率も上がっている[158]。
また、同性での結婚のみならず、同性間の合意に基づく性行為を犯罪とする国も存在しており、その数は70カ国で、うち12カ国では死刑に処せられる可能性もある[159][160]。迫害が深刻で命の危機もある一部の国々に暮らす性的少数者は亡命せざるを得ない状況に追い込まれている[161]。
アウティング
性的少数者であることを本人の同意なく暴露することは「アウティング」といい、当事者にとっては人生や生命にも関わる深刻な問題となりうる(例:一橋大学アウティング事件)[162][163]。日本での調査によれば、性的少数者の約25%がアウティングの経験があると答えている[163]。近年の日本では自治体などでアウティング禁止の条例を強く求める動きが拡大し、2021年には三重県で都道府県で初めてのアウティング禁止条例が成立した[164]。
日本ではセクシュアル・マイノリティに対するいじめや差別を禁止する法律・条例の制定について、87.7%が「賛成」「やや賛成」と答えている[165][166]。また、別の調査では88.7%が学校で性の多様性を「教えるべき」「できれば教えるべき」と回答した[109]。
差別用語
性的少数者を差別する用語がいくつもある。同性愛者を示すうえで「homosexual(ホモセクシュアル)」という言葉は避けるべきとされ、「gay(ゲイ)」や「lesbian(レズビアン)」という表現が推奨されている[92]。また、性的指向を「性的嗜好(sexual preference)」と表現するのも望ましくない[92]。他にも無数の誹謗中傷とみなされる言葉があり、注意が必要となる[92]。日本語においても「ホモ」「オカマ」「レズ」などは差別的呼称とされている[167]。こうした差別的な言動は常に悪意に基づくとは限らず、日常的に意図せずに起きることもあり、マイクロアグレッションと呼ばれたりもする[168]。
性的少数者は以前は精神障害として扱われた歴史もあったが、今ではそれは過去のものとなり、性的少数者を病気や倒錯とみなすのは偏見や差別となる[92]。小児性愛(ペドフィリア)や性暴力加害者と関連付けることも不適切である[92]。
性的少数者に対して恐怖・憎悪・不快感・不信感を抱く人々を、同性愛の場合は「ホモフォビア」、バイセクシュアルの場合は「バイフォビア」、トランスジェンダーの場合は「トランスフォビア」と呼ぶ[169]。アセクシュアルの場合は「エースフォビア(acephobia)」[170]もしくは「aphobia」[171]と呼ばれる。
トランスジェンダー関連
トランスジェンダーの人々の中には性別適合手術を受ける人もいるが、全員がそうであるわけではない[69]。医学的診断に基づき「性別違和(性同一性障害)」と判断される人もいるが、これもまたトランスジェンダーと同一の意味ではない[69]。それに関連して「性転換(sex change)」というフレーズは使用すべきではないとされている[69]。そもそもトランスジェンダーの人に対して安易に性器や手術など医学的な話題に焦点をあてたり、外見に言及したりすることは控えるべきと注意喚起がなされている[172][173]。
また、とくにトランスジェンダー(ノンバイナリーなどを含む)においては、必ず本人が選んだ名前と性別と代名詞を用いるべきであり、デッドネーミングは厳禁である[69][174]。ジェンダーニュートラルな代名詞としては「they / them」が最も好まれている[78]。本人の性自認と異なる性別で扱うことは「ミスジェンダリング」と呼ばれ、その人の生き方を否定する侮辱的な行為として問題視される[175][176]。
公的な書類や登録の性別の変更が難しかったり、男女以外の自分の性別がなかったりするケースもある。日本では戸籍上の性別の変更を行うには厳しい要件があり、とくに生殖機能を失わせるという要件に関しては世界保健機関なども反対している[177]。書類の性別欄の見直しも求められており、履歴書などの性別欄を削除する動きもある[178][179][180]。
トランスジェンダー女性は、トイレ、空港の航空保安検査などで不当な扱いを受けることが多く、社会問題となっている[181][182]。また、男女の区分が平然と存在してきたスポーツ界でもトランスジェンダーに関しては論争が起きている[183]。
ヘイトクライム
FBIは2014年のヘイトクライムに関するレポートにて、性的指向が原因で標的にされた犠牲者が1248人(全体の18.6%)、性自認が原因で標的にされた犠牲者が109人(全体の1.8%)いたことを報告している[184]。 トランスジェンダーの女性はとくにヘイトクライムの被害に遭いやすい[172]。
転向療法
同性愛や無性愛であること自体は病気でも精神障害でもなく、性の機能不全というわけでもない[185][186][187]。性的指向をセラピーや治療、説得で強制的に変更することはできず、修正する必要もない[188][189]。心理的または精神的介入を用いて個人の性的指向・性自認・性表現を矯正しようとする「転向療法(コンバージョン・セラピー)」を行う個人や組織も存在するが、多くの専門家や学会はその危険性を指摘し、反対を表明している[190][191]。
性的指向などを治療できるとインターネット上のサービスで発信することは規制対象となることがあり、YouTubeではヘイトスピーチとしてチャンネル削除の対処をとっている[192]。
健康・自殺・性被害
差別や不平等に苦しめられる性的少数者の若者は、そうではない人たちと比べて、自殺念慮と自殺未遂、アルコールや薬物の使用、暴力、メンタルヘルスなど健康や生命を脅かされている状況にある人の割合が高いと指摘されている[193][194]。同性愛者や両性愛者の若者は異性愛者と比べて自殺を考える人の割合が3倍高いという報告もある[195]。性的少数者の若者は性的少数者ではない人と比べて摂食障害になる可能性が3倍高い[196]。また、アセクシュアルの若者の約48%が不安障害の経験があるという報告もされている[197]。イギリスの調査によれば、ホームレスとなっている性的少数者の若者のうち6人に1人が家族から性的虐待を受けている[198]。日本の複数の調査では、性的少数者のうち約4割が、レイプやセクハラなどの性被害に遭ったことが明らかになっている[199]。警察や相談機関の現場では、性的少数者の性暴力被害が見過ごされ、差別的対応を受けることもある[199]。
こうした健康格差を解消するべく、アメリカ心理学会はセクシュアル・マイノリティに対応できるようにトレーニング・プログラムを提供している[193]。性的少数者の自殺防止に取り組む非営利団体として「トレバー・プロジェクト(The Trevor Project)」などがある[200]。
インターセクショナリティ
同じ性的少数者であっても全員が同じ境遇にあるわけではない。ゲイの男性は同性愛差別に直面するが、ゲイの黒人男性であれば人種差別も受けることになる。また、女性であれば女性差別が加わり、イスラム教徒であれば宗教差別が加わる。車椅子のユーザーとなれば障害者差別は無視できない。このような個人のアイデンティティが複数組み合わさることによって起こる問題は「インターセクショナリティ(交差性)」という言葉で議論される[201]。
性的少数者が声を上げるきっかけとなったストーンウォールの反乱は有色人種のトランスジェンダーの活動家が一石を投じた功績が大きいが、一方でその後に続いた性的少数者の活動ではゲイの白人が主流となっていた[202]。そして性的少数者のコミュニティにおける運動の中でさえ、トランスジェンダーの人たちは多数派であるゲイの人々の一部から誹謗中傷を受けることもあった[202][203]。また、レズビアンの中にもトランスジェンダー女性への偏見を公然と表明する者もいた[203]。いまだに一部のフェミニストはトランスジェンダー女性を排除することに肯定的な言動をとることもあり、そうしたフェミニストは「TERF」と呼ばれる[204][205]。
脚注
注釈
出典
- ^ “GENDER AND SEXUAL MINORITY STUDENTS (LGBTIQA)”. University of Derby. 2021年4月15日閲覧。
- ^ a b c d “セクシュアルマイノリティ・セクマイとは?【定義や種類は「LGBT」と違う?】”. JobRainbow (2021年3月31日). 2021年4月13日閲覧。
- ^ a b c d “History of Lesbian, Gay, Bisexual and Transgender Social Movements”. American Psychological Association. 2021年4月14日閲覧。
- ^ “「日本の伝統と言いながら日本史に無知」LGBTをやたらに恐れる保守派の無教養”. PRESIDENT Online (2021年6月11日). 2021年6月11日閲覧。
- ^ “LGBT History: The Lavender Scare”. nglcc.org (2017年10月3日). 2021年6月8日閲覧。
- ^ Richard Socarides (2013年4月8日). “Coming Out to My Father”. The New Yorker. 2021年6月8日閲覧。
- ^ ジェローム・北丸(訳) 2019, p. 80.
- ^ “The Official HARVEY MILK Biography”. Milk Foundation. 2021年6月8日閲覧。
- ^ “Remembering the Early Days of 'Gay Cancer'”. NPR (2006年5月8日). 2021年6月9日閲覧。
- ^ “LGBTIの人の権利に関する文書「ジョグジャカルタ原則」10年ぶりに更新”. ヒューライツ大阪. 2021年4月16日閲覧。
- ^ LGBT法連合会 2019, p. 14.
- ^ Human Rights Council Resolution, seventeenth session
- ^ Discriminatory laws and practices and acts of violence against individuals based on their sexual orientation and gender identity, A/HRC/19/41
- ^ “Rainbow Europe 2020”. ILGA-Europe. 2021年4月16日閲覧。
- ^ Ullerstam, Lars (1967). The Erotic Minorities: A Swedish View 12 March 2015閲覧。
- ^ a b Smalley, K. Bryant; Warren, Jacob C.; Barefoot, K. Nikki (2017). LGBT Health Meeting the Needs of Gender and Sexual Minorities
- ^ a b Lapointe, Alicia (2016). Critical Concepts in Queer Studies and Education. New York: Palgrave Macmillan US. pp. 205–218. ISBN 978-1-137-55424-6
- ^ a b Choudhuri, Devika Dibya; Curley, Kate (2019-09-20). Rethinking LGBTQIA Students and Collegiate Contexts. Routledge. pp. 3–16. ISBN 978-0-429-44729-7
- ^ “Organisation proposes replacing the ‘limiting’ term LGBT with ‘more inclusive’ GSD”. PinkNews (2013年2月25日). 2021年4月13日閲覧。
- ^ a b “LGBTと性的少数者の違い、日本人の誤解とは? 当事者で対立の歴史も”. withnews (2016年5月1日). 2021年4月13日閲覧。
- ^ a b “LGBTコラム クィアとは”. OUT JAPAN Co.Ltd.. 2021年4月14日閲覧。
- ^ “What Does It Really Mean to Be Queer?”. Cosmopolitan (2020年9月21日). 2021年4月17日閲覧。
- ^ “LGBTコラム SOGIとは”. OUT JAPAN Co.Ltd.. 2021年4月13日閲覧。
- ^ a b c d e f “What Sexual Minority Means”. Verywell Mind (2020年11月30日). 2021年4月13日閲覧。
- ^ a b “COMING OUT A Handbook for LGBTQ Young People”. The Trevor Project. 2021年4月20日閲覧。
- ^ アイリス・野中(訳) 2021, p. 20.
- ^ アシュリー・須川(訳) 2017, p. 41.
- ^ a b c アシュリー・須川(訳) 2017, p. 140.
- ^ “Glossary of Must-Know Sexual Identity Terms”. Verywell Mind (2021年6月1日). 2021年6月6日閲覧。
- ^ a b c d e “What Is Pansexual?”. Verywell Mind (2021年3月27日). 2021年4月20日閲覧。
- ^ a b c アシュリー・須川(訳) 2017, p. 173.
- ^ a b c “General FAQ”. The Asexual Visibility and Education Network. 2021年4月14日閲覧。
- ^ “「他者に恋愛的/性的に惹かれない」アロマンティック/アセクシュアル約1700人対象の調査結果が公表”. ハフポスト (2020年11月4日). 2021年4月15日閲覧。
- ^ a b “[46 Terms That Describe Sexual Attraction, Behavior, and Orientation https://www.healthline.com/health/different-types-of-sexuality]”. healthline. 2021年5月19日閲覧。
- ^ アシュリー・須川(訳) 2017, p. 152.
- ^ “GLAAD Media Reference Guide - In Focus: Covering the Bisexual Community”. GLAAD. 2021年4月20日閲覧。
- ^ a b c “What to Do When You're Questioning Your Sexuality”. Verywell Mind (2021年2月23日). 2021年4月13日閲覧。
- ^ a b “What Is The Split Attraction Model?”. Betterhelp (2020年11月19日). 2021年4月17日閲覧。
- ^ a b “Everything you ever wanted to know about asexuality”. British GQ (2020年12月6日). 2021年4月13日閲覧。
- ^ “Basic Terms”. AUREA. 2021年6月6日閲覧。
- ^ Lund, Emily M.; Thomas, Katie B.; Sias, Christina M.; Bradley, April R. (2016-10-01). “Examining Concordant and Discordant Sexual and Romantic Attraction in American Adults: Implications for Counselors”. Journal of LGBT Issues in Counseling 10 (4): 211–226. doi:10.1080/15538605.2016.1233840. ISSN 1553-8605.
- ^ “Splitting Attraction: A History of Discussing Orientation”. AUREA (2019年8月2日). 2021年6月6日閲覧。
- ^ “What is limerence?”. Living with Limerence (2020年9月5日). 2021年6月14日閲覧。
- ^ “Exploring asexuality: how research and awareness benefit each other for this minority identity”. University of Edinburgh’s Science Magazine (2020年10月26日). 2021年6月14日閲覧。
- ^ “This Is What It Feels Like To Lack Sexual Attraction To Other People”. Refinery29 UK (2016年6月10日). 2021年6月21日閲覧。
- ^ “Meet the aromantics: ‘I’m not cold – I just don’t have any romantic feelings’”. The Guardian (2017年10月11日). 2021年6月21日閲覧。
- ^ “Resources”. aces & aros. 2021年6月12日閲覧。
- ^ 東京レインボープライド (2021/05/03), 【TRP2021】11:LGBTQの多様性(NPO法人にじいろ学校 今徳はる香氏)【LGBTQの今を知る15選】 2021年6月12日閲覧。
- ^ “【声明】性的指向と恋愛指向の混同は人権侵害である”. 日本SRGM連盟. 2021年1月7日閲覧。
- ^ “「性的指向と恋愛指向の混同は人権侵害」性的少数者団体が声明”. 選報日本. 2021年1月7日閲覧。
- ^ “恋愛指向とは?【あなたは誰を好きになりますか?】”. 株式会社JobRainbow. 2021年6月2日閲覧。
- ^ “恋愛的指向”. 株式会社 アウト・ジャパン. 2021年6月2日閲覧。
- ^ “Are you ready for Aromantic Spectrum Awareness Week?”. LGBTQ Nation (2021年2月15日). 2021年6月14日閲覧。
- ^ “Sexual Orientation vs. Romantic Orientation”. University of South Dakota. 2021年6月6日閲覧。
- ^ “Asexuality, Attraction, and Romantic Orientation”. UNC Student Affairs. 2021年6月6日閲覧。
- ^ “How Knowing Your Romantic Orientation Can Change the Way You Date”. Greatist (2021年1月15日). 2021年6月6日閲覧。
- ^ “Explore the spectrum: Guide to finding your ace community”. GLAAD (2018年10月27日). 2021年6月6日閲覧。
- ^ “LGBTコラム アセクシュアルとは”. OUT JAPAN Co.Ltd.. 2021年4月14日閲覧。
- ^ アシュリー・須川(訳) 2017, p. 43.
- ^ アシュリー・須川(訳) 2017, p. 48.
- ^ a b c アシュリー・須川(訳) 2017, p. 57.
- ^ “Gender and health”. WHO. 2021年6月4日閲覧。
- ^ “What is gender? What is sex?”. Canadian Institutes of Health Research. 2021年6月4日閲覧。
- ^ “What Does It Mean to Be Nonbinary?”. Verywell Mind (2020年11月16日). 2021年4月13日閲覧。
- ^ a b アシュリー・須川(訳) 2017, p. 106.
- ^ a b アシュリー・須川(訳) 2017, p. 111.
- ^ “What Does It Mean to Identify as Genderqueer?”. healthline. 2021年4月17日閲覧。
- ^ “Demigirl”. Cosmopolitan (2021年1月25日). 2021年6月6日閲覧。
- ^ a b c d e f “GLAAD Media Reference Guide - Transgender”. GLAAD. 2021年4月13日閲覧。
- ^ a b “Definitions”. Trans Student Educational Resources. 2021年4月14日閲覧。
- ^ a b c アシュリー・須川(訳) 2017, p. 71.
- ^ “Gender, gender identity, and gender expression”. MyHealth.Alberta.ca. 2021年6月4日閲覧。
- ^ “Explained: The difference between gender, gender expression, and sexuality”. Insider (2020年11月14日). 2021年6月4日閲覧。
- ^ アシュリー・須川(訳) 2017, p. 121.
- ^ “Androgyne”. Cosmopolitan (2021年1月25日). 2021年6月6日閲覧。
- ^ a b アシュリー・須川(訳) 2017, p. 80.
- ^ “あなたはどう呼ばれたい? 多様性時代の代名詞考察”. Vogue Japan (2020年3月30日). 2021年6月4日閲覧。
- ^ a b c “Gender-Neutral Pronouns 101: Everything You've Always Wanted to Know”. them (2020年5月22日). 2021年4月13日閲覧。
- ^ “言語学者が選ぶ2010年代の言葉は、三人称単数形「they」”. MIRAI PORT (2020年3月17日). 2021年6月4日閲覧。
- ^ “What Is the Two-Spirit Community?”. Verywell Mind (2020年12月13日). 2021年4月20日閲覧。
- ^ “Definitions”. Vanderbilt University. 2021年4月20日閲覧。
- ^ “Beyond Gender: Indigenous Perspectives, Fa’afafine and Fa’afatama”. Natural History Museum. 2021年4月24日閲覧。
- ^ a b “What Is Intersex?”. Verywell Mind (2021年3月18日). 2021年4月17日閲覧。
- ^ “手術されるインターセックスの子供たち トップモデルが壮絶な告白”. ニューズウィーク (2018年6月7日). 2021年5月19日閲覧。
- ^ a b “「LGBTI」の「I」である「インターセックス(intersex)」とは?”. フロントロウ (2018年6月8日). 2021年4月17日閲覧。
- ^ “FAQ: Intersex, Gender, and LGBTQIA+”. interACT: Advocates for Intersex Youth. 2021年4月17日閲覧。
- ^ “Frequently Asked Questions about the "DSD" Controversy”. Intersex Initiative (2008年6月29日). 2021年4月23日閲覧。
- ^ “interACT Statement on Intersex Terminology”. interACT: Advocates for Intersex Youth. 2021年4月23日閲覧。
- ^ “Joint statement on the International Classification of Diseases 11”. Intersex Human Rights Australia (2019年6月28日). 2021年6月13日閲覧。
- ^ “What Is Polyamory?”. Verywell Mind (2020年5月20日). 2021年5月19日閲覧。
- ^ “用語一覧”. にじいろ学校. 2021年4月28日閲覧。
- ^ a b c d e f “GLAAD Media Reference Guide - Lesbian / Gay / Bisexual Glossary Of Terms”. GLAAD. 2021年4月13日閲覧。
- ^ a b 石田 2019, p. 15.
- ^ アシュリー・須川(訳) 2017, p. 177.
- ^ “General Definitions”. LGBT Resource Center. 2021年4月17日閲覧。
- ^ ““Sexual Orientation” Vs “Gender Identity” Vs “Fetish””. Baltimore Outloud. 2021年4月19日閲覧。
- ^ a b “A fetish is not an excuse to sexualize LGBTQ people”. The Orion (2019年9月13日). 2021年4月19日閲覧。
- ^ “Pups, Furries & Kinksters have no place in Pride”. The Critic Magazine (2020年8月21日). 2021年4月19日閲覧。
- ^ a b c d “What Does LGBTQ+ Mean?”. Verywell Mind (2020年11月30日). 2021年4月13日閲覧。
- ^ アシュリー・須川(訳) 2017, p. 204.
- ^ “LGBTQIA2S+ Student Diversity & Inclusion Services”. University of St. Thomas. 2021年5月26日閲覧。
- ^ Research, policy and practice: Annual meeting
- ^ a b “Why We Need More Queer Identity Labels, Not Fewer”. slate.com (2018年1月16日). 2021年4月17日閲覧。
- ^ “Coming Out: Information for Parents of LGBT Teens”. HealthyChildren.org. 2021年4月24日閲覧。
- ^ “Just the Facts about Sexual Orientation and Youth”. American Psychological Association. 2021年4月24日閲覧。
- ^ “How to Cope With Your Sexual Identity”. teenissues (2019年4月3日). 2021年4月14日閲覧。
- ^ a b c “認知と受容の高まりを反映か…… アメリカのZ世代、6人に1人は「LGBT」を自認”. Business Insider Japan (2021年3月1日). 2021年4月13日閲覧。
- ^ “A Record Number of People in the U.K. Identify As Queer”. them (2021年5月28日). 2021年6月6日閲覧。
- ^ a b c “電通、「LGBTQ+調査2020」を実施”. 電通 (2021年4月8日). 2021年4月13日閲覧。
- ^ “カミングアウトとは?どんな意味?芸能人で公表している方も多数いる。”. 自分らしく生きるプロジェクト (2020年6月17日). 2021年4月14日閲覧。
- ^ “クローゼット(性的指向)とは?意味や言葉の起源は?LGBTに関わる用語を解説。”. 自分らしく生きるプロジェクト (2020年9月14日). 2021年4月14日閲覧。
- ^ “17 celebrities who have come out as LGBTQ in 2020”. Insider (2020年12月29日). 2021年4月14日閲覧。
- ^ “These 71 Celebrities Came Out in 2020”. Pride (2020年12月31日). 2021年4月14日閲覧。
- ^ “What’s Changed—and What Hasn’t—in 50 Years of Pride Parades”. Time (2020年6月26日). 2021年4月16日閲覧。
- ^ “It's Pride Month. Here's what you need to know”. CNN (2020年6月1日). 2021年4月16日閲覧。
- ^ “いくつ知ってる? LGBTQコミュニティを象徴するフラッグとその意味”. ハーパーズ バザー (2021年6月3日). 2021年6月6日閲覧。
- ^ “社会を変えた!歴史に名を残したLGBTQ+アクティビスト”. Cosmopolitan (2021年6月12日). 2021年6月12日閲覧。
- ^ “LGBTコラム LGBTフレンドリー/アライとは”. OUT JAPAN Co.Ltd.. 2021年4月14日閲覧。
- ^ a b c d e f アシュリー・須川(訳) 2017, p. 90.
- ^ “Gender dysphoria”. NHS. 2021年6月5日閲覧。
- ^ “What Is Gender Dysphoria?”. psychiatry.org. 2021年6月5日閲覧。
- ^ a b “WHOが性同一性障害を「精神障害」の分類から除外しました”. psychiatry.org (2019年5月27日). 2021年6月5日閲覧。
- ^ “When You Don’t Feel at Home With Your Assigned Gender”. WebMD (2021年5月20日). 2021年6月5日閲覧。
- ^ “What do I need to know about transitioning?”. Planned Parenthood. 2021年6月5日閲覧。
- ^ “Transgender”. Cosmopolitan (2016年11月15日). 2021年6月6日閲覧。
- ^ a b “LGBTコラム リプレゼンテーションとは”. OUT JAPAN Co.Ltd.. 2021年4月14日閲覧。
- ^ “the celluloid closet”. cinemaqueer.com. 2021年4月14日閲覧。
- ^ “映画やドラマでトランスジェンダーがどのように描かれてきたかが本当によくわかるドキュメンタリー『Disclosure トランスジェンダーとハリウッド: 過去、現在、そして』”. g-lad xx(グラァド). 2021年4月14日閲覧。
- ^ “『トランスジェンダーとハリウッド 過去、現在、そして』感想(ネタバレ)…Netflix;私はここにいる”. シネマンドレイク (2020年6月25日). 2021年4月14日閲覧。
- ^ “見えない危機描く2020年ドキュメンタリーシリーズ6選<後編>「テレビが見たLGBTQ」他”. シネマトゥデイ (2020年5月2日). 2021年4月14日閲覧。
- ^ “テレビ番組がトランスジェンダー女性を笑いものに”. Human Rights Watch (2019年11月21日). 2021年4月20日閲覧。
- ^ “企業PR動画にゲイを侮辱するようなキャラクターが登場していることに批判の声”. OUT JAPAN Co.Ltd. (2020年7月24日). 2021年4月20日閲覧。
- ^ “保毛尾田保毛男(ほもおだほもお)は何が問題なのか、専門家が時系列にまとめて解説”. ビジネス+IT (2017年10月20日). 2021年4月20日閲覧。
- ^ “Lesbian Stereotypes: The Worst (And Most Hilarious) Ideas Many Have About The Community”. Huffpost (2013年8月24日). 2021年4月19日閲覧。
- ^ “17 Bisexual Stereotypes In TV And Movies That People Are Really Sick Of”. BuzzFeed (2020年6月14日). 2021年4月19日閲覧。
- ^ “Victims or Villains: Examining Ten Years of Transgender Images on Television”. GLAAD. 2021年4月19日閲覧。
- ^ “Battling Asexual Discrimination, Sexual Violence And ‘Corrective’ Rape”. Huffpost (2013年6月20日). 2021年4月19日閲覧。
- ^ “Killer in ‘Jenny Jones’ gay crush murder released from prison”. The Atlanta Journal Constitution (2017年8月26日). 2021年6月9日閲覧。
- ^ “LGBTQ、日本でどう描かれてきたか。企画展が開催中、 「ゲイ男性を描く作品が多い」などの特徴も”. ハフポスト (2020年12月4日). 2021年4月15日閲覧。
- ^ “Today In Gay History: That Certain Summer”. Out (2014年11月1日). 2021年6月8日閲覧。
- ^ “Gay rights documentary 'Visible: Out on Television' deserves to be seen”. Star Tribune (2020年2月14日). 2021年6月8日閲覧。
- ^ “Bojack Horseman's Todd Chavez Comes Out as Asexual, Makes TV History”. Pride (2017年9月12日). 2021年6月8日閲覧。
- ^ “Elliot Page Is Ready for This Moment”. Time (2021年3月16日). 2021年6月8日閲覧。
- ^ a b “2020 GLAAD Studio Responsibility Index”. GLAAD. 2021年4月14日閲覧。
- ^ “Where We Are on TV Report – 2020”. GLAAD. 2021年4月14日閲覧。
- ^ “How video games can help LGBTQ+ players feel like themselves”. The Washington Post (2021年3月24日). 2021年6月11日閲覧。
- ^ “The Last of Us Part II’s queer representation is groundbreaking. Is it enough?”. The Independent (2020年6月19日). 2021年6月11日閲覧。
- ^ “LGBT Culture in Japan”. Hachette Book Group. 2021年6月28日閲覧。
- ^ “How Oscar Wilde Painted Over “Dorian Gray””. The New Yorker (2011年8月1日). 2021年6月28日閲覧。
- ^ “Lesbian Representation in the Vampire Classic CARMILLA”. BOOK RIOT (2019年5月7日). 2021年6月28日閲覧。
- ^ “The censorship of lesbian fiction: From The Well of Loneliness to Tipping the Velvet”. The British Library (2020年10月23日). 2021年6月28日閲覧。
- ^ “‘Different sex. Same person’: how Woolf’s Orlando became a trans triumph”. The Guardian. 2021年6月28日閲覧。
- ^ “世界の同性婚”. EMA日本. 2021年4月15日閲覧。
- ^ “世界で初めて同性婚を実現した国オランダがいまの日本に伝えたいこと”. クーリエ・ジャポン (2021年4月10日). 2021年4月20日閲覧。
- ^ “台湾における同性婚の実現について”. EMA日本 (2019年5月17日). 2021年5月19日閲覧。
- ^ “よくあるご質問”. Marriage for All Japan. 2021年4月15日閲覧。
- ^ “How Many Same-Sex Couples in the US are Raising Children?”. Williams Institute. 2021年4月17日閲覧。
- ^ “イスラエルが「ゲイであること」が当たり前の社会を実現できた独特の背景”. クーリエ・ジャポン (2021年4月13日). 2021年4月20日閲覧。
- ^ “世界の現状(LGBTキャンペーン)”. アムネスティ日本 AMNESTY. 2021年4月15日閲覧。
- ^ “DATA”. NIJI BRIDGE. 2021年4月22日閲覧。
- ^ “LGBT in Africa: 'Persecution at home made me an immigrant'”. CNN (2020年9月15日). 2021年4月21日閲覧。
- ^ “Why Outing Can Be Deadly”. National LGBTQ Task Force. 2021年4月20日閲覧。
- ^ a b “性的マイノリティの25%がアウティングされた経験を持つことが、調査で明らかになりました”. OUT JAPAN Co.Ltd.. 2021年4月14日閲覧。
- ^ 今野晴貴(NPO法人POSSE代表) (2021年4月8日). “LGBTQの「アウティング」に全面謝罪 当事者は「制度」をどう活用したのか?”. Yahoo!ニュース. 2021年4月14日閲覧。
- ^ 松岡宗嗣(一般社団法人fair代表理事) (2021年1月28日). “国際人権法の視点「世論が法律を作るのではない」性的マイノリティの人権、国家に求められる責務”. Yahoo!ニュース. 2021年4月14日閲覧。
- ^ “「LGBT平等法」求める10万筆超の署名を自民党に提出。議員立法での成立求める”. ハフポスト (2021年3月25日). 2021年4月14日閲覧。
- ^ “LGBTなどを差別する「SOGIハラ」って?”. them (2020年4月23日). 2021年4月13日閲覧。
- ^ “マイノリティが日々傷ついている「無意識の差別」の正体”. 現代ビジネス (2020年8月15日). 2021年4月13日閲覧。
- ^ “What is homophobia?”. Planned Parenthood. 2021年4月13日閲覧。
- ^ “Acephobia & Anti-asexual hate crime”. Galop. 2021年4月15日閲覧。
- ^ “Asexuality Is All the Rage”. Vice. 2021年4月15日閲覧。
- ^ a b “GLAAD Media Reference Guide - In Focus: Covering the Transgender Community”. GLAAD. 2021年4月14日閲覧。
- ^ “Supporting the Transgender People in Your Life: A Guide to Being a Good Ally”. National Center for Transgender Equality. 2021年4月17日閲覧。
- ^ “Understanding Non-Binary People: How to Be Respectful and Supportive”. National Center for Transgender Equality. 2021年4月17日閲覧。
- ^ “トランスジェンダー差別から考えるミスジェンダリング”. NOISE (2020年12月22日). 2021年4月15日閲覧。
- ^ 鈴木みのり (2020年6月24日). “Black Trans Lives Matter特集をはじめるにあたって”. Wezzy. 2021年4月15日閲覧。
- ^ “望まない手術、性別変更の高い壁...映画「I Am Here」が描く、トランスジェンダーたちの日常のリアル”. ハフポスト (2020年10月16日). 2021年4月15日閲覧。
- ^ “履歴書の性別欄「男・女」の選択肢を削除へ 記入は任意に。 厚労省が様式例を公表”. ハフポスト (2021年4月16日). 2021年4月16日閲覧。
- ^ “「男・女・LGBT?」多様な人々が答えやすい“性別欄”とは”. wezzy (2021年3月10日). 2021年4月16日閲覧。
- ^ 今野晴貴(NPO法人POSSE代表) (2021年4月20日). “日本の「履歴書」は差別的? 政府が新モデルを提示。国際比較も”. Yahoo!ニュース. 2021年4月22日閲覧。
- ^ “Why toilets are a battleground for transgender rights”. BBC (2016年6月8日). 2021年4月15日閲覧。
- ^ “Trans woman shares ‘immense anxiety’ she feels going through airport security: ‘The system is broken’”. PinkNews (2021年3月22日). 2021年4月15日閲覧。
- ^ “The fight for the future of transgender athletes”. The Washington Post (2021年4月15日). 2021年4月16日閲覧。
- ^ “GLAAD Media Reference Guide - In Focus: Hate Crimes”. GLAAD. 2021年4月14日閲覧。
- ^ “Gay, Lesbian, and Bisexual Teens: Facts for Teens and Their Parents”. HealthyChildren.org. 2021年4月24日閲覧。
- ^ “Asexuality was considered a disorder?!”. Ace Week. 2021年4月24日閲覧。
- ^ “Asexuality Isn’t A Mental Disorder Or Sexual Dysfunction – It’s A Sexual Orientation”. Indiana University (2018年4月13日). 2021年4月24日閲覧。
- ^ “What causes sexual orientation?”. Planned Parenthood. 2021年4月14日閲覧。
- ^ “Tips for Parents of LGBTQ Youth”. Johns Hopkins Medicine. 2021年4月17日閲覧。
- ^ “The Lies and Dangers of Efforts to Change Sexual Orientation or Gender Identity”. HRC. 2021年4月14日閲覧。
- ^ “What is conversion therapy?”. GLAAD. 2021年4月14日閲覧。
- ^ “ユーチューブ、テレビ伝道師のチャンネル削除 「同性愛治療」の動画めぐり”. CNN (2021年4月21日). 2021年4月21日閲覧。
- ^ a b “Sexual and Gender Minority Health”. American Psychological Association. 2021年4月14日閲覧。
- ^ “Health Disparities Among LGBTQ Youth”. CDC. 2021年4月17日閲覧。
- ^ “What to know about sexual orientation and mental health in youth”. Medical News Today (2021年3月23日). 2021年4月17日閲覧。
- ^ “LGBT+ young people are three times more likely to have an eating disorder”. justlikeus.org (2021年5月11日). 2021年6月6日閲覧。
- ^ “Asexual young people struggle more with mental health than their peers”. justlikeus.org (2021年5月9日). 2021年6月6日閲覧。
- ^ “One in six homeless LGBT+ youth have been sexually abused by family members, damning report finds”. PinkNews (2021年4月14日). 2021年4月15日閲覧。
- ^ a b “レイプでも「被害届なんて出せない」と警察官が一蹴。見過ごされる性的少数者の性被害”. ハフポスト (2021年3月20日). 2021年4月14日閲覧。
- ^ “6 LGBTQ+ Organizations To Know, Use, And Support”. NowThis (2021年6月3日). 2021年6月4日閲覧。
- ^ “Intersectionality”. Equality Network. 2021年4月23日閲覧。
- ^ a b “Privilege, Power, and Pride: Intersectionality within the LGBT Community”. Impakter (2017年8月14日). 2021年4月23日閲覧。
- ^ a b “A Look at Transphobia Within the LGBTQ community”. LGBTQ Victory Institute (2018年8月9日). 2021年4月23日閲覧。
- ^ “「女性専用スペースからトランス女性を排除しなければならない」という主張に、フェミニストやトランスはどう抵抗してきたか”. wezzy (2019年2月16日). 2021年4月20日閲覧。
- ^ “Over 450 Celebrities Sign Onto Letter Condemning TERFs, Supporting Trans Equality”. them (2021年3月31日). 2021年4月23日閲覧。
参考文献
- アイリス・ゴットリーブ 著、野中モモ 訳『イラストで学ぶジェンダーのはなし みんなと自分を理解するためのガイドブック』 フィルムアート社、2021年、210頁。ISBN 978-4845920228。
- アシュリー・マーデル 著、須川綾子 訳『13歳から知っておきたいLGBT+』 ダイヤモンド社、2017年、216頁。ISBN 978-4478102961。
- 石田仁『はじめて学ぶLGBT 基礎からトレンドまで』 ナツメ社、2019年、264頁。ISBN 978-4816365829。
- LGBT法連合会『日本と世界のLGBTの現状と課題』 かもがわ出版、2019年、160頁。ISBN 978-4780310160。
- ジェローム・ポーレン 著、北丸雄二 訳『LGBTヒストリーブック 絶対に諦めなかった人々の100年の闘い』 フィルムアート社、2019年、191頁。ISBN 978-4-909125-18-7。
関連項目
- LGBT
- 社会的少数者(マイノリティ)
- 差別
- 表現の自由 / 言論の自由 / 思想・良心の自由 / 平等権
- フェミニズム
- マスキュリズム
- ジェンダーフリー
- ピンク・トライアングル
- ブラック・トライアングル