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COVID-19が(2020年3月の)改正前の本法上の「新感染症」とすることができるかどうかについて、2020年2月28日の[[衆議院]]の[[財務金融委員会]]で、[[国民民主党 (日本 2018)|国民民主党]]の[[日吉雄太]]委員への答弁として、内閣総理大臣安倍晋三は、対象となる感染症の種類が異なることを理由に、新型インフルエンザ等特別措置法の適用は「難しいと判断している」と法解釈を答弁した<ref>[https://www.jiji.com/jc/article?k=2020022800770&g=pol 新型肺炎、まん延防止へ法整備 インフル特措法参考に―安倍首相:時事ドットコム] 2020年2月28日18時03分, 2020年3月2日閲覧</ref>。[[厚生労働大臣]][[加藤勝信]]は「何が原因か分からないものがあるための『新感染症』という規定だ。今回は新型コロナウイルスだと分かっており『新感染症』ではない」と説明した<ref name="mainichi20200303"/>。一方、3月13日の参院内閣委員会で、参考人として出席した[[尾身茂]](政府の[[新型コロナウイルス感染症対策専門家会議|同感染症専門家会議]]の副座長、並びに[[地域医療機能推進機構]]理事長)は、同感染症を「新しい感染症」だとする意見を述べた<ref>[http://web.archive.org/web/20200314134935/https://mainichi.jp/articles/20200313/k00/00m/010/171000c 新型コロナ 専門家は「新感染症」 法改正根拠に異議 参院内閣委]</ref>。 |
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== 構成 == |
== 構成 == |
2020年12月25日 (金) 09:19時点における版
この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。 |
新型インフルエンザ等対策特別措置法 | |
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日本の法令 | |
通称・略称 | 新型インフル特措法 |
法令番号 | 平成24年法律第31号 |
種類 | 医事法 |
効力 | 現行法 |
成立 | 2012年(平成24年)4月27日 |
公布 | 2012年(平成24年)5月11日 |
施行 | 2013年(平成25年)4月13日 |
所管 | 内閣官房、厚生労働省 |
主な内容 | 新型インフルエンザ等の感染症に対する対策強化 |
関連法令 | 感染症予防法(感染症法) |
条文リンク | 新型インフルエンザ等対策特別措置法 - e-Gov法令検索 |
新型インフルエンザ等対策特別措置法の一部を改正する法律 | |
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日本の法令 | |
通称・略称 | 新型コロナウイルス特措法、新型コロナ特措法 |
法令番号 | 令和2年法律第4号 |
種類 | 医事法(特別措置法) |
効力 | 現行法 |
成立 | 2020年(令和2年)3月13日 |
公布 | 2020年(令和2年)3月13日 |
施行 | 2020年(令和2年)3月14日 |
主な内容 | 新型コロナウイルスを新型インフルエンザ等対策特別措置法に規定する新型インフルエンザ等とみなす |
関連法令 | 感染症予防法(感染症法) |
条文リンク | 令和2年3月13日官報特別号外第27号 |
新型インフルエンザ等対策特別措置法(しんがたインフルエンザとうたいさくとくべつそちほう、平成24年法律第31号)は、新型インフルエンザ等の感染症に対する対策強化を図ることにより、国民の生命や健康を保護し、生活や経済への影響を最小にすることを目的として制定された日本の法律。略称として新型インフル特措法[1]のほか、2020年(令和2年)3月13日成立の「改正する法律」または改正法成立以後の本法律を指して新型コロナウイルス特措法や新型コロナ特措法も用いられる[2][3]。
概説
新型インフルエンザ等対策の実施に関する計画、発生時における措置、新型インフルエンザ等緊急事態措置等を定めることにより、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(以下、感染症法)、検疫法、予防接種法と相まって[4]、新型インフルエンザ等に対する対策の強化を図り、もって新型インフルエンザ等の発生時において国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済に及ぼす影響が最小となるようにすることを目的とする(第1条)。
自然災害に備えた災害対策基本法や、テロリズムへの対処を定めた武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律(国民保護法)をモデルに制定された[5]。2013年(平成25年)4月の施行以降、適用された例はなかった[6]が、2020年(令和2年)における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の蔓延のおそれにより、一定期間、COVID-19を新型インフルエンザ等とみなす為の法改正が行われ(後述)、本法に基づき7都府県の区域を対象に緊急事態宣言が行われ、のちに全都道府県の区域に対象が拡大された。
経緯
法の制定過程
2009年(平成21年)に世界的に流行したH1N1亜型インフルエンザウイルスへの対応が混乱したことを踏まえ、2010年(平成22年)3月より厚生労働省が講じた対策の総括を行い、今後のH1N1亜型インフルエンザの再流行時の対応及び鳥インフルエンザ(H5N1亜型)発生時の対策の見直しに活かすため、「新型インフルエンザ(A/H1N1)対策総括会議」が厚生労働省新型インフルエンザ対策推進本部の下に開催され[7]、2010年(平成22年)6月に厚生労働省に対する提言を取りまとめた。この中で、対策の実効性を確保するため、各種対策の法的根拠の明確化を図ることが提言された[8]。
これを受けて、2011年(平成23年)11月10日の「新型インフルエンザ及び鳥インフルエンザ等に関する関係省庁対策会議」で、新型インフルエンザ対策のために必要な法制度の論点整理について議論し、日本国政府で法整備が検討された[9]。2012年(平成24年)4月27日の参議院本会議で、民主党・公明党などの賛成多数で可決、成立した。共産党・社民党は反対し、自民党は田中直紀防衛相及び前田武志国土交通相の問責決議後の審議拒否中に法案が内閣委員会で採決されたことを理由に欠席した[10]。5月11日に本法が公布された[1][11]。
結果、医療の確保を確かなものにするための「医療関係者に対する補償制度の創設」や「知事の権限」の法的根拠の明確化等が図られた。「知事の権限」については、全国知事会からの「災害対策基本法に類似した知事の権限を付与するなど、法的な整備を進めるべき」という強い要望があった[12]。
公布の日から1年以内(2013年(平成25年)5月10日)で政令で定める日に施行と規定されており、中華人民共和国で鳥インフルエンザ(H7N9亜型)の感染が広がったことを受け、予定より前倒しされ、施行日を定める政令[13]を同年4月2日に閣議決定し、同日の官報(特別号外第10号)で公布、翌13日に施行された[1][5]。
新型コロナウイルス感染症への対象拡大
2020年(令和2年)3月13日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を改正法の施行日から最長2年間本法の対象とする旨の改正が行われ、翌14日に施行された[14]。
以下、この改正に至る経緯を記述する。2019年(令和元年)12月以降、世界的に流行している新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、2020年1月の政令によって、感染症法に基づく指定感染症(感染症法6条8項)及び検疫法に基づく検疫感染症に指定された。
一方、この感染症について、政府は本法の対象となる「新感染症」には該当しないとの法解釈を採ることを表明し、その解釈を採る以上、COVID-19について本法は改正しなければ適用できないこととなった(解釈に関する議論について後述)。安倍晋三首相は2020年3月2日の第201回国会・参議院予算委員会にて、本法をCOVID-19にも適用可能なように改正する方針を表明[15]、3月4日の同委員会一般審議においても、改正した上で本法32条に基づく緊急事態宣言を発令できるようにする方針を改めて示した[16][17]。
内閣は、2020年3月10日にCOVID-19の発生及びそのまん延により、国民の生命及び健康に重大な影響を与えることが懸念される状況に鑑み、2年を超えない範囲内において政令で定める日までの間、COVID-19を新型インフルエンザ等対策特別措置法に規定する『新型インフルエンザ等』とみなし、同法に基づく措置を実施するために「新型インフルエンザ等対策特別措置法の一部を改正する法律案」を閣議決定し[18]、同日衆議院へ提出した[19]。3月11日、衆議院内閣委員会で可決[19][20]され、3月12日に衆議院本会議で可決された[19][21]。採決では、野党共同会派(立憲民主・国民・社保・無所属フォーラム)の賛成方針に従わず反対票を投じたり、欠席する造反者が現れ、日本共産党は反対したことから、主要野党の足並みの乱れと報道された[22]。3月13日、参議院内閣委員会[23]及び参議院本会議にて可決され成立した[24][25]。同日付けの官報号外特第27号で公布[14]され、翌14日に施行された。
COVID-19を新型インフルエンザ等とみなす期間は、政令[26]により(施行日から)2021年1月31日までと定められた[27]。
法案の審議において野党の要求で、各種対策を実施する場合においては、国民の自由と権利の制限は、必要最小限のものとすることなどを求める附帯決議(衆議院20項目、参議院25項目)が、衆参の内閣委員会にてなされている[28][29]。
新感染症への該当可否についての議論
COVID-19が(2020年3月の)改正前の本法上の「新感染症」とすることができるかどうかについて、2020年2月28日の衆議院の財務金融委員会で、国民民主党の日吉雄太委員への答弁として、内閣総理大臣安倍晋三は、対象となる感染症の種類が異なることを理由に、新型インフルエンザ等特別措置法の適用は「難しいと判断している」と法解釈を答弁した[30]。厚生労働大臣加藤勝信は「何が原因か分からないものがあるための『新感染症』という規定だ。今回は新型コロナウイルスだと分かっており『新感染症』ではない」と説明した[6]。一方、3月13日の参院内閣委員会で、参考人として出席した尾身茂(政府の同感染症専門家会議の副座長、並びに地域医療機能推進機構理事長)は、同感染症を「新しい感染症」だとする意見を述べた[31]。
構成
- 第一章 総則(第1条-第5条)
- 第二章 新型インフルエンザ等対策の実施に関する計画等(第6条-第13条)
- 第三章 新型インフルエンザ等の発生時における措置(第14条-第31条)
- 第四章 新型インフルエンザ等緊急事態措置
- 第一節 通則(第32条-第44条)
- 第二節 まん延の防止に関する措置(第45条・第46条)
- 第三節 医療等の提供体制の確保に関する措置(第47条-第49条)
- 第四節 国民生活及び国民経済の安定に関する措置(第50条-第61条)
- 第五章 財政上の措置等(第62条-第70条)
- 第六章 雑則(第71条-第75条)
- 第七章 罰則(第76条-第78条)
- 附則 第1条の2 新型コロナウイルス感染症に関する特例
対象とする疾患
本法の対象とする「新型インフルエンザ等」とは、感染症法6条第7項に規定する「新型インフルエンザ等感染症」と、感染症法6条第9項に規定する「新感染症」のうち「全国的かつ急速なまん延のおそれのあるもの」を指し、新型インフルエンザだけでなく、急激に流行して国民に重大な影響を及ぼすおそれのある、新たな感染症が発生した場合にも対応できる(第2条第1号)。
感染症法によれば、「新型インフルエンザ等感染症」とは、新型インフルエンザ[注釈 1]及び、再興型インフルエンザ[注釈 2]をいう。
また、「新感染症」とは、感染症法では、人から人に伝染すると認められる疾病であって、既に知られている感染性の疾病とその病状又は治療の結果が明らかに異なるもので、かかった場合の病状の程度が重篤であり、かつ、まん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められるものをいう。更に本法では「全国的かつ急速なまん延のおそれのあるもの」に限定されている。
2020年3月13日の法改正により、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)についても最長2年間は対象とすることとなった。
行動計画の作成
日本国政府や地方公共団体、指定された公共機関は、新型インフルエンザ等の発生に備え、行動計画を作成することとなっている(第6条から第9条)。
発生時の対応
新型インフルエンザ等の発生が確認された場合、内閣総理大臣は原則として政府対策本部を設置する(第15条第1項)。政府対策本部が設置されたときは、政府対策本部の名称並びに設置の場所及び期間を国会に報告するとともに、これを公示しなければならない(第15条第2項)。また、政府対策本部が設置されたときは、都道府県知事及び市町村長も対策本部を設置しなければならない(第22条、第34条)。また、医療従事者等へのワクチンの先行接種の指示が可能になる(第28条)。
新型コロナウイルス感染症対策本部の設置
2020年3月26日の持ち回り閣議で「新型コロナウイルス感染症対策本部の設置について」の一部改正についてが行われ、新型コロナウイルス感染症対策本部を新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づくものとした[32]。設置の公示は、2020年3月26日付官報特別号外第33号で行われた[33]。
都道府県対策本部長による協力要請
第24条9項は「都道府県対策本部長は、当該都道府県の区域に係る新型インフルエンザ等対策を的確かつ迅速に実施するため必要があると認めるときは、公私の団体又は個人に対し、その区域に係る新型インフルエンザ等対策の実施に関し必要な協力の要請をすることができる。」としている。この規定を用い、2020年に、新型コロナウイルス感染症に対応するため、一定の種類の施設の使用停止等の要請が行われ、緊急事態宣言以後ほとんどの都道府県において行われた(後述)。
2020年5月4日、国は内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室長名の事務連絡を各都道府県知事に発出し、緊急事態措置の維持及び緩和等に関して留意すべき事項を示した[34]。これは、特定警戒都道府県[35]及び特定警戒都道府県以外の特定都道府県に区分して、緊急事態宣言延長後の措置についての留意すべき事項を示したものである。
新型インフルエンザ等緊急事態
全国的かつ急速なまん延により、国民の生活及び経済に甚大な影響を及ぼし、又はそのおそれがあるものとして政令で定める要件[36]に該当する事態となった場合、政府対策本部本部長(内閣総理大臣)は「新型インフルエンザ等緊急事態宣言」を行う。新型インフルエンザ等緊急事態宣言は、新型インフルエンザ等緊急事態措置を実施すべき期間(2年以内、1年以内の延長可能)、新型インフルエンザ等緊急事態措置を実施すべき区域等を公示し、国会に報告するものとされている(32条)。
新型インフルエンザ等緊急事態において、以下の措置が可能になる[37]。
- 外出制限要請、興行場、催物等の制限等の要請・指示(潜伏期間、治癒するまでの期間等を考慮)
- 都道府県知事は住民に対し、生活の維持に必要な場合を除き外出の停止を要請できる(45条1項)。また、罰則はないものの、多数の者が利用する施設(学校、社会福祉施設、建築物の床面積の合計が1,000平方メートルを超える劇場、映画館や体育館やショッピングセンターなど)の使用制限・停止又は催物の開催の制限・停止を要請することができる(45条2項)。正当な理由がないのに要請に応じないときは、特に必要があると認めるときに限り、要請に係る措置を講ずべきことを指示できる。外出制限や使用制限の期間は、新型インフルエンザ等対策特別措置法の新型インフルエンザ発生後の制定当時は、最初の1-2週間が目安とされていた[38]。しかし2020年に、新型コロナウイルス感染症に対して発動された際は、これを超える最大50日近い期間が対象になった。
- 住民に対する予防接種の実施(国による必要な財政負担)
- 医療提供体制の確保(臨時の医療施設等)
- 臨時の医療施設を開設するため、土地や建物を権利者の同意なしに強制使用[注釈 3]することが可能である(49条)。
- 緊急物資の運送の要請・指示
- 医薬品、食品その他の政令で定める物資[39]の売渡しの要請・収用
- 49条に基づく使用、55条に基づく収用の場合は「通常生ずべき損失を補償」が必要になる(62条1項)
- 埋葬・火葬の特例(墓地、埋葬等に関する法律による、市町村長の火葬許可証のない状態での火葬の許容)[注釈 5]
- 生活関連物資等の価格の安定(国民生活安定緊急措置法等の的確な運用)
- 行政上の申請期限の延長等
- 政府関係金融機関等による融資 等
ただし、個人の自由や権利の制限につながるおそれもあることから、法の制定の時点で、日本弁護士連合会や日本ペンクラブが2012年3月に本法への反対声明を出すなど、慎重な運用を求める声もあった[38][41]。なお、第5条において、国民の自由と権利の制限は必要最小限のものでなければならないと定められている。また、法の制定の時に、野党であった自民党の要求で緊急事態宣言を恣意的に行わないことなどを求める[6]、附帯決議が衆参の内閣委員会にて付けられている[42][43]。
事例
2020年4月7日17時45分、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の全国的かつ急速なまん延による国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがある事態が発生したと判断したとして、本法32条1項に基づく緊急事態宣言を発令。19時より国民向け記者会見(NHK(日本放送協会)・民放各局によるテレビ・ラジオ放送及びYouTube Live・ニコニコ生放送によるライブストリーミング配信にて生中継)を行った後、同日付官報特別号外第44号[44]において、「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言に関する公示」として公示された。
4月7日時点での緊急事態措置を実施すべき期間は、2020年4月7日から同5月6日まで。緊急事態措置を実施すべき区域は、埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県・大阪府・兵庫県及び福岡県の区域とされた。
4月7日より後、対象外とされた愛知県や京都府など、自治体独自で緊急事態宣言[45]を行う自治体が見られた事と、各地で感染者の急増が止まらない状況を鑑み、同年4月16日、緊急事態措置を実施すべき区域が全都道府県の区域に拡大された。緊急事態措置を実施すべき期間については、既指定の7都府県を除いては、2020年4月16日から同5月6日までとされた(「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言に関する公示の全部を変更する公示」同年4月16日付官報特別号外第50号)[46][47]。
政府の新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針によると、4月16日の全都道府県の区域に拡大について、北海道、茨城県、石川県、岐阜県、愛知県、京都府については、4月7日に指定された7都府県と同程度にまん延が進んでいるとして緊急事態措置を実施すべき区域に加えるとし、それ以外の県については「全都道府県が足並みをそろえて感染拡大防止の取組が行われることが必要である」との理由としている[35]。
政府の新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針は、当初の7都府県及び同程度にまん延が進んでいるとした北海道、茨城県、石川県、岐阜県、愛知県、京都府の13都道府県を総称して、以下「特定警戒都道府県」とし、緊急事態措置として外出自粛等を求めるものとしている[35]。
2020年5月4日、「当面、新規感染者を減少させる取組を継続する必要があるほか、地域や全国で再度感染が拡大すれば、医療提供体制への更なる負荷が生じるおそれもある」[48]として、緊急事態措置を実施すべき期間が、全都道府県を対象に、2020年5月31日まで延長された(「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言に関する公示の全部を変更する公示」同年5月4日付官報特別号外第58号)[49][50]。
2020年5月14日、「感染状況の変化等について分析・評価を行い、後述する考え方を踏まえて総合的に判断」[51]として、北海道、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、京都府、大阪府及び兵庫県は宣言を継続し、他の39県については緊急事態措置を解除した(「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言に関する公示の全部を変更する公示」同年5月14日付官報特別号外第63号)[52]。
続いて5月21日、京都府、大阪府、兵庫県の緊急事態措置を解除(「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言に関する公示の全部を変更する公示」同年5月21日付官報特別号外第66号)[53][54]。
最後に残された関東1都3県(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県)及び北海道も、5月25日、「改めて感染状況の変化等について分析・評価を行い、「区域判断にあたっての考え方」を踏まえて総合的に判断」[55]として、緊急事態措置を実施する必要がなくなったと認め、緊急事態が終了した旨を宣言した(「新型コロナウイルス感染症緊急事態解除宣言に関する公示」同年5月25日付官報特別号外第68号)[56]。
財政上の措置等
国や都道府県による費用の負担についての規定の他、損失補償や損害補償等についても本法で規定している。国、都道府県は、検疫のためにやむを得ず特定病院等を同意なく使用する場合や臨時の医療施設開設のため、土地等を使用する場合等による損失を補償しなければならない。また要請や指示による医療等を行う医療関係者に対して、実費を弁償しなければならない(62条)。要請や指示による医療の提供を行う医療関係者が、そのため死亡や負傷した場合等は、損害を補償しなければならない(63条)。
施設の使用停止等の要請等
既述のとおり、都道府県知事は施設の使用停止等の要請(休業要請とも呼ばれる)、外出自粛要請を新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき行なうことができる。
物資の売渡しの要請・収用
2020年4月26日、時事通信は「高額マスク、政府が強制収用へ」と報道した[57]。「マスクの品薄が続く中、政府が高額販売などで「不当な利益」を得る事業者への対策を強化する方針を固めたことが25日、明らかになった」「新たな対策では、物流・小売業者がマスクの値上がりを見込んだ買い占めや売り惜しみをしていないか調査。「不当」と判断した場合、特措法55条に基づき、都道府県は売り渡し要請や収用措置が可能となる」との報道である[57]。
この報道では、どのように明らかになったかは伝えていない。なお新型インフルエンザ等対策特別措置法第55条に基づく収用の場合、「当該処分により通常生ずべき損失を補償しなければならない」(第62条第1項)と規定されている。
2020年4月27日の菅官房長官は、記者会見で、売り渡しの要請などを行うことについても都道府県と連携しながら検討していきたい」と述べた[58][59][60][61][62]。
2020年4月26日の報道に関する続報は、2020年6月2日現在、確認できない。また2020年4月27日の菅官房長官の発言にある検討についても報道や公式の発表についても同様に確認できない。
脚注
注釈
- ^ 新たに人から人に伝染する能力を有することとなったウイルスを病原体とするインフルエンザであって、一般に国民が免疫を獲得していないことから、全国的かつ急速なまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められるもの
- ^ かつて世界的規模で流行したインフルエンザであってその後流行することなく長期間が経過しているものとして厚生労働大臣が定めるものが再興したものであって、一般に現在の国民の大部分が免疫を獲得していないことから、全国的かつ急速なまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められるもの
- ^ 土地や建物については、所有権を移転する「収用」はできず、後に返還を前提とする「使用」のみが可能である。
- ^ 物資は消費されるため、所有権を移転する「収用」となっている。
- ^ 死後(または死産後)24時間以内の埋葬禁止の除外は、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づくものではなく、感染症予防法第30条第3項[40]に基づくものである。
出典
- ^ a b c 「新型インフル特措法施行 外出自粛要請の発令可能に」 『産経新聞』 2013年4月13日付け、東京本社発行15版、3面。
- ^ 新型コロナ特措法成立 「緊急事態」首相が判断
- ^ 安倍首相、緊急事態宣言を発令へ
- ^ Microsoft PowerPoint - 高城室長イイノホール(Revised Ver.)研修会 厚生労働省健康局結核感染症課新型インフルエンザ対策推進室(2014年)「新型インフルエンザ等対策特別措置法及び政府行動計画を踏まえた新型インフルエンザ対策について~医療体制・予防接種体制を中心に~」(2020年3月2日閲覧)
- ^ a b 「新型インフルエンザ:特措法施行、前倒し 世界的流行に備え」毎日新聞, 2013年4月12日, 東京夕刊, 15頁
- ^ a b c 「新型肺炎:新型肺炎 首相、特措法改正を明言 外出自粛要請 人権制限焦点に」毎日新聞, 2020年3月3日, 東京朝刊, 5頁
- ^ 新型インフルエンザ対策専門員会(仮称)の設置について 「新型インフルエンザ(A/H1N1)対策総括会議開催要綱」 2020年3月2日閲覧
- ^ 新型インフルエンザ(A/H1N1)対策総括会議 提言(案) 「新型インフルエンザ(A/H1N1)対策総括会議 報告書 平成22年6月10日」 2020年3月2日閲覧
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- ^ 官報、2012年5月11日、号外 第104号、p.2-13
- ^ 三和護(2013)「感染症法があるのに、なぜ「特措法」が必要だったのか:新型インフルエンザ等対策有識者会議が『中間とりまとめ』」 日経メディカル
- ^ 新型インフルエンザ等対策特別措置法の施行期日を定める政令(平成25年4月12日政令第121号)
- ^ a b 令和2年3月13日付官報(特別号外第27号)p.1
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- ^ “業者にマスク売り渡し要請も 品薄で「高値販売」に政府が警鐘”. 毎日新聞. (2020年4月27日) 2020年5月21日閲覧。
- ^ “マスク高値販売業者、売り渡し要請を検討…菅官房長官”. 読売新聞. (2020年4月27日) 2020年5月21日閲覧。
関連項目
- 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律
- 新興感染症
- 新型インフルエンザ
- 2009年新型インフルエンザの世界的流行
- H7N9鳥インフルエンザの流行
- 日本における2019年コロナウイルス感染症の流行状況
- 新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく休業
外部リンク
- 新型インフルエンザ等対策特別措置法 - e-Gov法令検索
- 新型インフルエンザ等対策特別措置法施行令 - e-Gov法令検索
- “新型インフルエンザ等対策”. 内閣官房. 2020年3月2日閲覧。
- “新型コロナウイルス感染症対策”. 内閣官房. 2020年5月5日閲覧。
- “47都道府県の休業要請や時短要請等の内容”. 農林水産省. 2020年5月5日閲覧。
- “インフルエンザ”. 厚生労働省. 2020年3月2日閲覧。
- 新型インフルエンザ等対策特別措置法案に反対する会長声明 日本弁護士連合会、2012年3月22日(2020年3月2日閲覧)