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エイジツエキスは、[[おでき]]、[[尋常性痤瘡|にきび]]、[[腫れ|腫れ物]]に効果があるといわれていて、化粧品成分に利用されている。皮膚の保護作用、[[収れん作用]]、[[抗酸化物質|抗酸化]]性、[[美白]]性、保湿性、皮膚細胞の活性効果を持つ。民間療法では消炎作用を利用して、にきび、腫れ物に前記の煎液を冷ましてから使い、患部を洗ったり、[[ガーゼ]]などの布に含ませて[[湿布|冷湿布]]するのがよいとされる{{sfn|田中孝治|1995|p=154}}。


== 文化 ==
== 文化 ==

2020年8月25日 (火) 00:51時点における版

ノイバラクロンキスト体系
ノイバラ(神奈川県横浜市・2007年5月)
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 双子葉植物綱 Magnoliopsida
亜綱 : バラ亜綱 Rosidae
: バラ目 Rosales
: バラ科 Rosaceae
亜科 : バラ亜科 Rosoideae
: バラ属 Rosa
: ノイバラ R. multiflora
学名
Rosa multiflora Thunb.[1]
シノニム
和名
ノイバラ(野茨)
英名
Japanese rose
Eijitsu rose

ノイバラ(野茨、学名:Rosa multiflora)は、バラ科の落葉性のつる性低木。ノバラ(野薔薇)ともいう[3]。日本のノバラの代表的な種。沖縄以外の日本各地の山野に多く自生し、枝に鋭いトゲがある。赤い果実は、利尿や便秘の治療に薬用される。

名称

和名の由来は、とげが多い木であることから、元々有棘の低木類のバラ(いばら)と呼んでいて[4]、野生であることから「野」がついてノイバラとなったものである[3]。別名ノバラ(野バラ)とも呼び親しまれ、日本のバラの代表的な原種である[5]。身近に見られるいわゆる「野バラ」は、大半が本種である[6]。古名はウバラあるいばウマラで、転じてノバラになったとされる[7]。イバラは棘がある小低木のバラ類の総称であったが、次第に特定植物の名称になった[8]

学名(小種名) multiflora の由来は、白い花を房状に沢山つけるところから、ラテン語で「花が多い」を意味する。

分布と生育環境

日本北海道から九州まで[5]、国外では朝鮮半島に分布する[9]

山地の林縁[4]原野野原草原道端河岸に自生し[3]、日当たりのよい山野のヤブ河川敷など[9]、攪乱(かくらん)の多い場所によく生え、刈り込まれてもよく萌芽する、雑草的な性格が強い。

特徴

つる性落葉低木[10]。日本を代表する野生のバラで、高さは1 - 3メートル (m) ぐらいになる[4]は半つる性で、細く長く伸び、直立または半直立でよく枝分かれして、茂みとなって繁茂する[11][6]。ふつう枝には鋭いとげがあって、時にとげのないものもある[10][5]。高さ2 mほどに伸びて斜めに立ち上がるようになると、茎はしなだれるようになり、他の木にとげを引っかけて持たれるようにして伸びていく[5]。とげは表皮が変形したもので、葉腋の下に1対つき、赤褐色で下向きに歪曲している[5]樹皮は灰褐色や黒紫色、若い枝は緑色か紅紫色[12]。成木になると樹皮は縦に裂けて薄片となって剥がれてトゲはなく、若い幹にはトゲが残る[12]

はバラ科に特徴的な奇数羽状複葉互生[10]小葉が2 - 4対、5 - 9枚つき[3]、長さは10センチメートル (cm) ほどになる。小葉は、長さ2 - 5 cmほどの楕円形・長楕円卵形・卵形で、頂小葉は側小葉よりもやや大きい[11][13]葉縁には細かい鋸歯があり[3]、葉身は薄くて軟らかくしわがあり、表面は光沢がなく無毛、裏面は軟毛が密生する[13]。小葉がついている葉軸には、軟毛と小さなとげがある[13]。葉柄の基部には櫛形の托葉がつき、葉柄に合着していて縁に細かい切れ込みがある[11][13]

花期は初夏(4 - 6月)[3][10]円錐花序で、枝の端に白色のを房状に多数つける[13]。個々の花は径25 - 30ミリメートル (mm) 程度[11]、白色の若干乱れた形の5弁花で野趣があり、花びらは先端が浅いハート形で凹んだ丸形で、やさしい芳香がある[3][9][13]雄しべは黄色く多数つき、雌しべは合着して1本になった花柱が花の中央に立つ[13]

果期は秋(9 - 10月)で[8]、球形で固い果実(正確には偽果)が結実し、赤く熟して目立つ[3][10]。偽実は萼筒が肥大したもので、直径6 - 10 mmの球形で、先端には萼片が残る[11][13]。果皮は薄くて堅くつやがあり、その中に5 - 12個の痩果が入っている[13]。落葉後も冬まで果実は残っているが、やがて黒く変色する[13]

冬芽は短枝の先端につく仮頂芽や、側芽が互生してつき、形は小さな円錐形やイボ状で、4 - 6枚の芽鱗に覆われる[12]。落葉後の葉痕は細長い三日月状か横線形をしていて、維管束痕は3個あるが不明瞭[12]

道端にも多く出現し、棘が多いので雑草としては嫌われる。刈り取っても根本から萌芽し、根絶は難しい。

栽培

春の発芽前に、昨年生の切り取った枝を挿し木で繁殖させる[10]。小枝が多く出てやぶになるので、混雑したら剪定して短く仕立て上げる[10]

利用

各種バラの品種改良に使われ、園芸品種に房咲き性をもたらした基本原種である[11][5]。園芸用バラ類の接ぎ木の台木に使われ、台木として重要である[6][8][5]挿し木したものよりも、実生のほうがよい台木になるといわれている[8]

花は芳香があり蒸留して香水の原料にするほか[9][8]、まは花は、花材としても使われ[8]、実もリースなどに使われる[9]。赤く完熟した果実は甘味があって食べることができ[6][12]、また薬用にもなる[11]

薬用

果実(偽果)には、ムルチフロリンクエルセチンラムノグルコシドなどのフラボノイド(フラボン配糖体)と、リコピンを含んでいる[3]。 ムロチフロチンは少量摂取しても緩下作用があるといわれている[3]。また、利尿作用もあるといわれている[3]

果実は営実(えいじつ)と称し、瀉下薬利尿薬になり[10]日本薬局方にも記載され、漢方薬として用いる[8]。営実とは、赤い星(火星)の意に由来する[8]。果実は落葉し始める10月ごろに採取した、青味が多少残り完全に紅熟しない半熟のものが良品とされ、天日干しで乾燥して仕上げる[3][10]

民間療法では、便秘に営実1日量2 - 10グラムを水400 - 600 で煎じて、3回に分けて服用する用法が知られている[3][10]。ただし、腹痛や激しい下痢を引き起こすこともあり、用量には注意が必要となるので、はじめは少量から始め、効果を見ながら増量する[10]。腎臓や脚気浮腫には、1日量3 - 5グラムを水300 ccで煎じて、2 - 3回に分けて分服する用法が知られる[10]

エイジツエキスは、おできにきび腫れ物に効果があるといわれていて、化粧品成分に利用されている。皮膚の保護作用、収れん作用抗酸化性、美白性、保湿性、皮膚細胞の活性効果を持つ。民間療法では消炎作用を利用して、にきび、腫れ物に前記の煎液を冷ましてから使い、患部を洗ったり、ガーゼなどの布に含ませて冷湿布するのがよいとされる[3]

文化

ノイバラの花言葉は、「素朴なかわいらしさ」[8]である。

古くはうまらあるいはうばらと呼ばれ、『風土記』と『万葉集』に登場する[注釈 1]

道の辺の うまらの末(うれ)に 這(は)ほ豆の からまる君を はなれか行かむ — 丈部鳥(はせつかべのとり)、『万葉集』巻二十 4352

「うまらの先に這いつく豆のように、私に絡みつくお前を、ふりほどいてまで行かねばならないのか」の意味である[8]

近縁種

  • テリハノイバラ (Rosa luciae) - 葉はクチクラ層が発達しているため光沢があり、つるが地面を這うが[10]、他の立木に絡みつくことが多い[3]。果実(偽果)は、ノイバラ同様の薬効があり利用される[3][10]。また花はノイバラより1か月ほど遅く咲き[3]、一回り大きく、数が少ない。

脚注

注釈

  1. ^ 「うまら」と「いばら」は同じ語の異形どうしで、「魚」を意味する「うを⇔いを」などと同様、「う-」の形と「い-」の形が(あるいは地域を隔てて)併存していたものと考えられる。またマ行とバ行の交替は現代語「淋しい」などにも見られる、珍しくない現象。

出典

  1. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Rosa multiflora Thunb.”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2020年6月7日閲覧。
  2. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Rosa polyantha Siebold et Zucc.”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2020年6月7日閲覧。
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q 田中孝治 1995, p. 154.
  4. ^ a b c 大嶋敏昭監修 2002, p. 333.
  5. ^ a b c d e f g 谷川栄子 2015, p. 142.
  6. ^ a b c d 林将之 2011, p. 149.
  7. ^ 田中潔 2011, p. p=69.
  8. ^ a b c d e f g h i j 田中潔 2011, p. 69.
  9. ^ a b c d e 平野隆久監修 永岡書店編 1997, p. 179.
  10. ^ a b c d e f g h i j k l m n 馬場篤 1996, p. 89.
  11. ^ a b c d e f g 西田尚道監修 学習研究社編 2000, p. 62.
  12. ^ a b c d e 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2014, p. 155.
  13. ^ a b c d e f g h i j 谷川栄子 2015, p. 143.

参考文献

  • 大嶋敏昭監修『花色でひける山野草・高山植物』成美堂出版〈ポケット図鑑〉、2002年5月20日、333頁。ISBN 4-415-01906-4 
  • 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽:四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年10月10日、155頁。ISBN 978-4-416-61438-9 
  • 田中潔『知っておきたい100の木:日本の暮らしを支える樹木たち』主婦の友社〈主婦の友ベストBOOKS〉、2011年7月31日、69頁。ISBN 978-4-07-278497-6 
  • 田中孝治『効きめと使い方がひと目でわかる 薬草健康法』講談社〈ベストライフ〉、1995年2月15日、154頁。ISBN 4-06-195372-9 
  • 谷川栄子『里山のつる性植物 観察の楽しみ』NHK出版、2015年6月20日、142 - 143頁。ISBN 978-4-14-040271-9 
  • 西田尚道監修 学習研究社編『日本の樹木』学習研究社〈増補改訂ベストフィールド図鑑 5〉、2000年4月7日、62頁。ISBN 978-4-05-403844-8 
  • 馬場篤『薬草500種-栽培から効用まで』大貫茂(写真)、誠文堂新光社、1996年9月27日、89頁。ISBN 4-416-49618-4 
  • 林将之『葉っぱで気になる木がわかる:Q&Aで見わける350種 樹木鑑定』廣済堂あかつき、2011年6月1日、149頁。ISBN 978-4-331-51543-3 
  • 平野隆久監修 永岡書店編『樹木ガイドブック』永岡書店、1997年5月10日、179頁。ISBN 4-522-21557-6 
  • 北村四郎・村田源『原色日本植物図鑑・木本編II』保育社、1979年。

関連項目