「ラジニーシ教団によるバイオテロ事件」の版間の差分
改名提案 |
m MICCAgo がページ「ラジニーシによるバイオテロ」を「ラジニーシ教団によるバイオテロ」に移動しました: 正確でないため |
(相違点なし)
|
2020年6月2日 (火) 12:00時点における版
ラジニーシによるバイオテロは、1984年にアメリカ合衆国オレゴン州のレストランで、ラジニーシ教団の運営トップであるシーラ・シルバーマン(マ・アンーナンダ・シーラ、Ma Anand Sheela)ら信者が起こした、サルモネラ菌を使った無差別バイオテロである[1]。750人以上の地元住民が食中毒になり、うち45人が入院した[2]。当初は集団食中毒であると考えら、原因解明には1年にわたる警察の調査を要した[2][3]。アメリカ初のバイオテロであり、同じく宗教団体のテロ事件であるオウム真理教の地下鉄サリン事件を契機に、改めて広く報道され知られるようになった[2]。
概要
インド人グルのバグワン・シュリ・ラジニーシが主催する新興宗教団体は、巨大なコミュニティの建設を強引に進めて周辺住民ともめており、密かにサルモネラ菌を培養していた[4]。20世紀のバイオテロ・犯罪を研究するアメリカ大学のセス・カルス(Seth Carus)の研究によると、ラジニーシ教団運営トップのシーラ・シルバーマンが計画を立て、教祖ラジニーシに報告した際に、彼は「人々を傷つけないのが一番だが、何人か死んでも気にすることはない」と答えており、教祖がサルモネラ菌散布を承知していたことが分かる[5]。
1984年、オレゴン州ワスコ郡ザ・ダルズのレストランのサラダバーで、サルモネラ菌による食中毒が発生、751人の患者を出す広がりを見せた[2][3]。
事件の翌年、教団運営中枢のシルバーマンをはじめとする幹部たちが、警察の逮捕が間近との情報を受けて出国した[6]。ラジニーシは、教団での4年間の意図的な沈黙と孤立を破って記者会見を開き、幹部たちを非難し、自らの無実をアピールしてFBIに調査を依頼した[6]。調査の結果、教団施設でサルモネラ菌製造の秘密工場が発見され、教団員の証言から、教団員らが次回の選挙で住民を病気にして投票を邪魔するための実験として起こしたバイオテロだと分かった[6][3][1][2]。オレゴン州とアメリカ連邦捜査局(FBI)は、ラジニーシ教団の秘密の実験室から開封されたサルモネラ菌入りバイアルビンを押収し、これは食中毒にあった患者由来株と生化学的、遺伝学的に区別できないという調査結果になり、ラジニーシ教団のメンバーが故意にサルモネラ菌をサラダバーに汚染させ、食中毒が発生したと結論づけた[3]。
サルモネラ菌は、ラジニーシのコミュニティを視察に来た郡の委員二人にも使用されたという[1]。
事件の主要メンバーだったラジニーシ教団の2人シルバーマンとサルモネラ菌製造の中心人物ダイアン・イヴォンヌ・オナン(マ・アーナンダ・プジャ)が逮捕され、懲役20年の実刑判決を受け服役した[7]。模範囚だったため、29か月で仮釈放されている[7]。
出典
- ^ a b c 足沢 2000, pp. 80–81.
- ^ a b c d e “History of Biowarfare”. PBS (2002年). 2020年4月30日閲覧。
- ^ a b c d 野菜、果物による食中毒 元大阪府立公衆衛生研究所細菌課長・小林一寬(財団法人大阪防疫協会機関誌MAKOTOアーカイブ)
- ^ Margaret Haberman (2018年4月22日). “Inside the Rajneeshee secret files”. OregonLive. 2020年4月30日閲覧。
- ^ 足達 2017, p. 5.
- ^ a b c Kevin R. D. Shepherd (2014年). “BHAGWAN SHREE RAJNEESH (OSHO)”. www.kevinrdshepherd.info. 2020年5月8日閲覧。
- ^ a b James & Oroszi 2015, p. 44.
参考文献
- 足達好正「CBRN テロリズム論」『グローバルセキュリティ研究叢書』第2巻、防衛大学校先端学術推進機構 グローバルセキュリティセンター、2017年。
- Weapons of Mass Psychological Destruction and the People Who Use Them (Practical and Applied Psychology). Larry C. James, Terry L. Oroszi 編集. Praeger Pub Text. (2015)
- ジュディス・ミラー『バイオテロ!―細菌兵器の恐怖が迫る』朝日新聞出版、2002年
- 足沢一成、島岩、坂田貞二(編)、2000、「ラジニーシ教団 教団の形成・外部社会との対立・対立の回避」、『聖者たちのインド』、春秋社