「カスミサンショウウオ」の版間の差分
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|学名 = ''Hynobius nebulosus''<br />([[コンラート・ヤコブ・テミンク|Temminck]] & [[ヘルマン・シュレーゲル|Schlegel]], [[1838年|1838]])<ref name="iucn" /><ref name="matsui_et_al">{{Cite journal|first=Masafumi|last=Matsui|authorlink=松井正文|first2=Hiroshi|last2=Okawa|first3=Kanto|last3=Nishikawa|first4=Gen|last4=Aoki|first5=Koshiro|last5=Eto|first6=Natsuhiko|last6=Yoshikawa|first7=Shingo|last7=Tanabe|first8=Yasuchika|last8=Misawa|first9=Atsushi|last9=Tominaga|year=2019|title=Systematics of the Widely Distributed Japanese Clouded Salamander, ''Hynobius nebulosus'' (Amphibia: Caudata: Hynobiidae), and Its Closest Relatives|journal=Current Herpetology|volume=38|number=1|pages=32–90|doi=10.5358/hsj.38.32}}</ref><ref name="matsui2020">[[松井正文]] 「カスミサンショウウオ」『環境省レッドリスト2020 補遺資料』環境省自然環境局野生生物課希少種保全推進室編、環境省自然環境局野生生物課希少種保全推進室、2020年、27頁。</ref> |
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* ''Salamandra nebulosa''<br />Temminck & Schlegel, 1838 |
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* ''Ellipsoglossa nebulosa''<br />Duméril, Bibron & Duméril, 1854 |
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* ''Hynobius ikishimae'' Dunn, 1923 }} |
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'''カスミサンショウウオ'''(''Hynobius nebulosus'')は、[[有尾目]][[サンショウウオ科]][[サンショウウオ属]]に分類される有尾類。 |
'''カスミサンショウウオ''' (霞山椒魚、''Hynobius nebulosus'') は、[[両生綱]][[有尾目]][[サンショウウオ科]][[サンショウウオ属]]に分類される[[有尾類]]。サンショウウオ属の模式種。 |
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== 分布 == |
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[[日本]]([[九州]]北部および西部 - [[鹿児島県]]、[[熊本県]]、[[佐賀県]]、[[長崎県]]<[[壱岐]]・[[福江島]]を含む>、[[福岡県]])<ref name="matsui_et_al" />。 |
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[[タイプ (分類学)|模式標本]]の産地(模式産地)は長崎<!--の Mitsjama [= 三ツ山?] -->であり、[[フィリップ・フランツ・フォン・シーボルト|シーボルト]]により採取されたメスの成体のものである<ref name="matsui_et_al" />。 |
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== 形態 == |
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上顎中央部に並ぶ歯の列(鋤骨歯列)はアルファベットの |
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== 分類 == |
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以前は岐阜県以西から九州にかけて分布する広域分布種とされていたが、形態・遺伝的な地域変異が大きく複数の隠蔽種を含んでいると考えられていた<ref name=" |
以前は岐阜県以西から九州にかけて分布する広域分布種とされていたが、形態・遺伝的な地域変異が大きく複数の隠蔽種を含んでいると考えられていた<ref name="matsui_et_al" />。2019年に形態や[[ミトコンドリアDNA]]の[[シトクロムb]]の分子系統解析から本種のシノニムとされていた[[ヤマトサンショウウオ]] ''H. vandenburghi''(近畿地方東部から東海地方南部<!-- 愛知県・大阪府・京都府・岐阜県・滋賀県・奈良県・三重県 -->)を復活させ、[[アブサンショウウオ]] ''H. abuensis''(島根県・山口県)・[[アキサンショウウオ]] ''H. akiensis''(愛媛県今治市・広島県)・[[ヤマグチサンショウウオ]] ''H. bakan''(大分県・山口県)・[[イワミサンショウウオ]] ''H. iwami''(島根県北西部および広島県の県境周辺)・[[サンインサンショウウオ]] ''H. setoi''(島根県東部から兵庫県北西部にかけて)・[[セトウチサンショウウオ]] ''H. setouchi''(近畿地方西部<淡路島含む>から中国地方東部・四国東部<!-- 大阪府・岡山県・香川県・徳島県・兵庫県・広島県・和歌山県 -->)・[[ヒバサンショウウオ]] ''H. utsunomiyaorum''(広島県から兵庫県にかけての中国山地)の7種が新種記載されたことで、本種を9種に分ける説が提唱された<ref name="matsui_et_al" />。この説に従うと狭義の本種は、九州北部および西部にのみ分布する<ref name="matsui_et_al" />。 |
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属内では、[[ツシマサンショウウオ]]やヤマグチサンショウウオに近縁とされる<ref name="matsui2020" />。 |
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ファイル:Hynobius nebulosus kasumisnsyuuo01.jpg|''H. setouchi'' |
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== 生態 == |
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繁殖期は壱岐や長崎では1月下旬から、少なくとも壱岐では3月下旬まで繁殖する<ref name="matsui2020" />。水たまりや池沼・溝・水路・休耕田などで繁殖する<ref name="matsui_et_al" />。 |
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主に低地から[[丘陵]]にある[[湧水]]や[[田|水田]]の周囲にある[[二次林]]や[[竹林]]・草原などに生息するが、中国山地の個体群は標高の高い自然林にも生息する<ref name="matsui2014"/>。本州では同所的に分布する[[ヒダサンショウウオ]]・[[ブチサンショウウオ]]''H. naevius''と[[分布 (生物)#水平分布と垂直分布|垂直分布]](標高)で[[ニッチ#棲み分け|すみ分け]]を行っているが、中国山地では同じ環境に生息することもある<ref name="matsui2014" />。 |
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[[昆虫]]、[[クモ]]、[[ワラジムシ]]、[[ミミズ]]などを食べる<ref name="matsui2014" />。幼生は水生昆虫、ミジンコ、イトミミズなどを食べ、[[共食い]]も行う<ref name="matsui2014" />。 |
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森林伐採や道路・砂防ダム建設による生息地の破壊、ペット用の乱獲などにより生息数は減少している<ref name="matsui2020" />。 |
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2022年1月に特定第二種国内[[希少野生動植物種]]に指定されており、販売や頒布を目的とした捕獲や譲渡などの行為が禁止されている<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.env.go.jp/nature/kisho/domestic/list.html |title=国内希少野生動植物種一覧 |publisher =環境省 |date=2023-01 |accessdate=2023-02-06}}</ref>。 |
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繁殖様式は卵生。12 - 翌5月に浅い[[池]][[沼]]や水田の溝、[[湿原]]、流れの緩やかな沢などに50 - 179個の卵を産む<ref name="matsui2014" />。卵は3 - 4月以降に孵化する<ref name="matsui2014" />。幼生は6 - 7月に変態し幼体になる<ref name="matsui2014" />。幼生期間中の水位が高いほど変態までの期間が長い。つまり、低水位に伴って幼生期間を短縮する性質がある<ref>森啓彰、夏原由博、「[https://doi.org/10.14880/hrghsj1999.2004.3 カスミサンショウウオの幼生期間における水位低下と水温, 捕食者の影響について]」 『爬虫両棲類学会報』 2004年 2004巻 1号 p.3-11, {{doi|10.14880/hrghsj1999.2004.3}}</ref>。 |
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[[鹿児島県]]では、2014年4月22日に県指定[[天然記念物]]として指定されている<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.pref.kagoshima.jp/bc05/hakubutsukan/tennen/ken/38kasumi-sansyouo.html |title=カスミサンショウウオ |publisher=鹿児島県教育委員会 |date=2022-02-13 |accessdate=2023-02-06}}</ref>。過去には[[広島県]][[東広島市]]の市指定天然記念物として広義の「カスミサンショウウオ」が指定されていたが、先述([[#分類]])の2019年の分類見直しを受けて名称が「アキサンショウウオ」に変更された<ref name="higashihiroshima">{{Cite web|和書|date=2019-07-30|url=https://www.city.higashihiroshima.lg.jp/soshiki/kyoikuiinkaishogaigakushu/3/2/21252.html|title=東広島市指定文化財の名称変更について |publisher=東広島市 |accessdate=2023-02-06}}</ref>。 |
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土地開発による生息地の破壊、それに伴う土砂流出による水質汚濁、[[減反政策]]による乾田の増加による繁殖地の減少、人為的に移入された[[アメリカザリガニ]]・魚類などによる捕食などにより生息数は減少している<ref name="matsui2014" />。京都府・愛媛県・岐阜県・滋賀県・奈良県では条例により許可のない捕獲が禁止されている<ref name="matsui2014" />。 |
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耕作放棄水田に素掘りの池を造成することは、産卵可能な場所を増加させ産卵場所の探索途中で捕食される機会を減少させるため、生息数の減少抑制に役立つ可能性が有るとの報告がある<ref>夏原由博、「[https://doi.org/10.11257/jjeez.13.11 水田放棄がカスミサンショウウオの生息におよぼす 影響と生息場所修復の可能性]」 『環動昆』 2002年 13巻 1号 p.11-17, {{doi|10.11257/jjeez.13.11}}</ref>。 |
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== 出典 == |
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== 関連項目 == |
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* [[両生類・爬虫類レッドリスト (環境省)]] |
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==外部リンク== |
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* 夏原由博、三好文、森本幸裕、「[https://doi.org/10.5632/jila.65.523 メタ個体群存続可能性分析を用いたカスミサンショウウオの保護シナリオ]」 『ランドスケープ研究』 2001年 65巻 5号 p.523-526, {{doi|10.5632/jila.65.523}} |
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{{Animal-stub}} |
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2024年1月8日 (月) 06:23時点における最新版
カスミサンショウウオ | |||||||||||||||||||||||||||
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カスミサンショウウオ Hynobius nebulosus
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保全状況評価[1] | |||||||||||||||||||||||||||
LEAST CONCERN (IUCN Red List Ver.3.1 (2001)) | |||||||||||||||||||||||||||
分類 | |||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||
Hynobius nebulosus (Temminck & Schlegel, 1838)[1][2][3] | |||||||||||||||||||||||||||
シノニム[2] | |||||||||||||||||||||||||||
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和名 | |||||||||||||||||||||||||||
カスミサンショウウオ[3] | |||||||||||||||||||||||||||
英名 | |||||||||||||||||||||||||||
Clouded salamander[2] |
カスミサンショウウオ (霞山椒魚、Hynobius nebulosus) は、両生綱有尾目サンショウウオ科サンショウウオ属に分類される有尾類。サンショウウオ属の模式種。
分布
[編集]日本(九州北部および西部 - 鹿児島県、熊本県、佐賀県、長崎県<壱岐・福江島を含む>、福岡県)[2]。
模式標本の産地(模式産地)は長崎であり、シーボルトにより採取されたメスの成体のものである[2]。
形態
[編集]全長オス8.4 - 11.9センチメートル[3]。頭胴長4.7 - 6.7センチメートル[2]。尾は短く[3]、頭胴長の約69.5パーセント[2]。体側面に入る皺(肋条)は左右に13本ずつ[2]。種小名 nebulosus は、ラテン語で「雲状の」の意[2]。尾の背面および腹面の外縁に黄色い筋模様が入る[2]。
頭部は幅広い[2]。上顎中央部に並ぶ歯の列(鋤骨歯列)は、アルファベットの「V」字状[2]。四肢は短く、後肢の趾は5本[2]。
卵嚢は柄のような構造物はなく、表面には明瞭な筋が入らない[2]。幼生は全長2.89 - 3.15センチメートル(長崎県)[2]。幼生に爪はない[2]。背面は淡褐色で、黒い斑点が入る[2]。
分類
[編集]以前は岐阜県以西から九州にかけて分布する広域分布種とされていたが、形態・遺伝的な地域変異が大きく複数の隠蔽種を含んでいると考えられていた[2]。2019年に形態やミトコンドリアDNAのシトクロムbの分子系統解析から本種のシノニムとされていたヤマトサンショウウオ H. vandenburghi(近畿地方東部から東海地方南部)を復活させ、アブサンショウウオ H. abuensis(島根県・山口県)・アキサンショウウオ H. akiensis(愛媛県今治市・広島県)・ヤマグチサンショウウオ H. bakan(大分県・山口県)・イワミサンショウウオ H. iwami(島根県北西部および広島県の県境周辺)・サンインサンショウウオ H. setoi(島根県東部から兵庫県北西部にかけて)・セトウチサンショウウオ H. setouchi(近畿地方西部<淡路島含む>から中国地方東部・四国東部)・ヒバサンショウウオ H. utsunomiyaorum(広島県から兵庫県にかけての中国山地)の7種が新種記載されたことで、本種を9種に分ける説が提唱された[2]。この説に従うと狭義の本種は、九州北部および西部にのみ分布する[2]。
属内では、ツシマサンショウウオやヤマグチサンショウウオに近縁とされる[3]。
生態
[編集]繁殖期は壱岐や長崎では1月下旬から、少なくとも壱岐では3月下旬まで繁殖する[3]。水たまりや池沼・溝・水路・休耕田などで繁殖する[2]。
人間との関係
[編集]森林伐採や道路・砂防ダム建設による生息地の破壊、ペット用の乱獲などにより生息数は減少している[3]。
2022年1月に特定第二種国内希少野生動植物種に指定されており、販売や頒布を目的とした捕獲や譲渡などの行為が禁止されている[4]。
鹿児島県では、2014年4月22日に県指定天然記念物として指定されている[5]。過去には広島県東広島市の市指定天然記念物として広義の「カスミサンショウウオ」が指定されていたが、先述(#分類)の2019年の分類見直しを受けて名称が「アキサンショウウオ」に変更された[6]。
出典
[編集]- ^ a b IUCN SSC Amphibian Specialist Group. 2021. Hynobius nebulosus. The IUCN Red List of Threatened Species 2021: e.T149671176A149671480. doi:10.2305/IUCN.UK.2021-1.RLTS.T149671176A149671480.en. Downloaded on 19 July 2021.
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u Matsui, Masafumi; Okawa, Hiroshi; Nishikawa, Kanto; Aoki, Gen; Eto, Koshiro; Yoshikawa, Natsuhiko; Tanabe, Shingo; Misawa, Yasuchika et al. (2019). “Systematics of the Widely Distributed Japanese Clouded Salamander, Hynobius nebulosus (Amphibia: Caudata: Hynobiidae), and Its Closest Relatives”. Current Herpetology 38 (1): 32–90. doi:10.5358/hsj.38.32.
- ^ a b c d e f g h 松井正文 「カスミサンショウウオ」『環境省レッドリスト2020 補遺資料』環境省自然環境局野生生物課希少種保全推進室編、環境省自然環境局野生生物課希少種保全推進室、2020年、27頁。
- ^ “国内希少野生動植物種一覧”. 環境省 (2023年1月). 2023年2月6日閲覧。
- ^ “カスミサンショウウオ”. 鹿児島県教育委員会 (2022年2月13日). 2023年2月6日閲覧。
- ^ “東広島市指定文化財の名称変更について”. 東広島市 (2019年7月30日). 2023年2月6日閲覧。