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「パヨク」の版間の差分

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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[[物江潤]]によれば、ネトウヨ ([[ネット右翼]])と反対の立場の人を批判的にとらえた表現<ref>物江 (2019)、4頁。</ref>、[[千葉麗子]]によれば「劣化した左翼」<ref>{{Cite web |author= |date=2016-04-25|url=https://www.sankei.com/life/news/160422/lif1604220015-n1.html|title= 元祖電脳アイドル千葉麗子さん"パヨク"の実態暴露 反原発デモ痛感した独善的体質|publisher= |accessdate=2019-10-01}}</ref>、[[倉山満]]によれば、「劣化左翼」、「頭が悪い左翼」、「頭がパーな左翼」といった意味で用いられているという<ref name="倉山2018-15"/>、[[山下里香]]によれば、[[在日韓国・朝鮮人|在日コリアン]]に味方すると見做されている「[[リベラル]]」を指す[[右派]]の[[ジャーゴン]] ([[隠語]])<ref name="Yamashita2019-228/>、[[佐藤優 (作家)|佐藤優]]によれば、[[ネット右翼]]が左翼やリベラル派を揶揄、罵倒するときに使う呼称<ref>{{Cite web |author=[[佐藤優 (作家)|佐藤優]]|date=2019-07-09|url=https://gendai.ismedia.jp/articles/-/65694|title=「ネトウヨ」「パヨク」の洗脳と攻撃から身を守る、3つの方法|publisher=[[週刊現代]] |accessdate=2019-10-01}}</ref>であるという。真鍋によれば、[[反日]]的でリベラル色が強いとされ<ref name="真鍋2019"/>、[[はすみとしこ]]によれば、「反日左翼」<ref name="倉山2018-15"/>、千葉によれば、右でも左でもない「反日」に取りつかれたような壊れた翼「破翼」、または「端翼」(異端)のことも意味するという<ref name="千葉2016">{{Cite web |author= |date=2016-12-26|url=https://www.sankei.com/affairs/news/161226/afr1612260021-n1.html|title=【回顧2016】「『パヨク』は時代遅れ」元祖電脳アイドル・千葉麗子氏 世界情勢読み切れない情報弱者が多い|publisher=[[産経新聞]]|accessdate=2019-10-01}}</ref>。
[[物江潤]]によれば、ネトウヨ ([[ネット右翼]])と反対の立場の人を批判的にとらえた表現<ref>物江 (2019)、4頁。</ref>、[[千葉麗子]]によれば「劣化した左翼」<ref>{{Cite web |author= |date=2016-04-25|url=https://www.sankei.com/life/news/160422/lif1604220015-n1.html|title= 元祖電脳アイドル千葉麗子さん"パヨク"の実態暴露 反原発デモ痛感した独善的体質|publisher= |accessdate=2019-10-01}}</ref>、[[倉山満]]によれば、「劣化左翼」、「頭が悪い左翼」、「頭がパーな左翼」といった意味で用いられているという<ref name="倉山2018-15"/>、[[山下里香]]によれば、[[在日韓国・朝鮮人|在日コリアン]]に味方すると見做されている「[[リベラル]]」を指す[[右派]]の[[ジャーゴン]] ([[隠語]])<ref name="Yamashita2019-228/>、[[佐藤優 (作家)|佐藤優]]によれば、[[ネット右翼]]が左翼やリベラル派を揶揄、罵倒するときに使う呼称<ref>{{Cite web |author=[[佐藤優 (作家)|佐藤優]]|date=2019-07-09|url=https://gendai.ismedia.jp/articles/-/65694|title=「ネトウヨ」「パヨク」の洗脳と攻撃から身を守る、3つの方法|publisher=[[週刊現代]] |accessdate=2019-10-01}}</ref>であるという。真鍋によれば、[[反日]]的でリベラル色が強いとされ<ref name="真鍋2019"/>、[[はすみとしこ]]によれば、「反日左翼」<ref name="倉山2018-15"/>、千葉によれば、右でも左でもない「反日」に取りつかれたような壊れた翼「破翼」、または「端翼」(異端)のことも意味するという<ref name="千葉2016">{{Cite web |author= |date=2016-12-26|url=https://www.sankei.com/affairs/news/161226/afr1612260021-n1.html|title=【回顧2016】「『パヨク』は時代遅れ」元祖電脳アイドル・千葉麗子氏 世界情勢読み切れない情報弱者が多い|publisher=[[産経新聞]]|accessdate=2019-10-01}}</ref>。


==起源==
== 起源 ==
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2015年に、[[在日特権を許さない市民の会|在特会]]の[[排外主義]]的な主張を批判する一方で暴力事件をはじめとした[[反社会的行動|反社会的な行動]]を展開してきた[[レイシストをしばき隊]]のメンバーの言動<ref name="物江2019-27"/>、[[Twitter]]で[[千葉麗子]]に「おはよう」と言うために使っていた挨拶である「ぱよぱよちーん」の語感が妙なウケ方をしたこと (ぱよぱよちーん騒動{{Efn|詳細については、千葉麗子『さよならパヨク~チバレイが見た左翼の実態~』青林堂、平成28年4月16日 初版発行、ISBN 978-4-7926-0546-9、{{Cite web |author=春山修司|date=2015-11-09 |url=https://news.livedoor.com/article/detail/10806957/|title=千葉麗子のツイートが「ぱよぱよちーん」男の身元特定に貢献|publisher=デイリーニュースオンライン|accessdate=2019-10-06}}などを参照。}})<ref>{{Cite web |author=[[中川淳一郎]]|date= |url=https://www.news-postseven.com/archives/20160327_397218.html/2|title=「サヨク」を「パヨク」と呼び始めたネット論争とその余波|publisher=[[週刊ポスト]] 2016年4月8日号|accessdate=2019-10-01}}</ref>がきっかけとなって生まれた[[造語]]だという<ref name="物江2019-27"/>。
2015年に、[[在日特権を許さない市民の会|在特会]]の[[排外主義]]的な主張を批判する一方で暴力事件をはじめとした[[反社会的行動|反社会的な行動]]を展開してきた[[レイシストをしばき隊]]のメンバーの言動<ref name="物江2019-27"/>、[[Twitter]]で[[千葉麗子]]に「おはよう」と言うために使っていた挨拶である「ぱよぱよちーん」の語感が妙なウケ方をしたこと (ぱよぱよちーん騒動{{Efn|詳細については、千葉麗子『さよならパヨク~チバレイが見た左翼の実態~』青林堂、平成28年4月16日 初版発行、ISBN 978-4-7926-0546-9、{{Cite web |author=春山修司|date=2015-11-09 |url=https://news.livedoor.com/article/detail/10806957/|title=千葉麗子のツイートが「ぱよぱよちーん」男の身元特定に貢献|publisher=デイリーニュースオンライン|accessdate=2019-10-06}}などを参照。}})<ref>{{Cite web |author=[[中川淳一郎]]|date= |url=https://www.news-postseven.com/archives/20160327_397218.html/2|title=「サヨク」を「パヨク」と呼び始めたネット論争とその余波|publisher=[[週刊ポスト]] 2016年4月8日号|accessdate=2019-10-01}}</ref>がきっかけとなって生まれた[[造語]]だという<ref name="物江2019-27"/>。


==対象の拡大==
== 使用の対象 ==
次第に幅広い対象に使用されるようになり、リベラルを称しながら主張が支離滅裂と見做された人物のほか、[[国民民主党]]や[[立憲民主党]]といった政党全体を指す場合や[[自由民主党 (日本)|自由民主党]]の[[石破茂]]にも使われる場合があり<ref name="物江2019-27"/>{{Efn|倉山は、[[中村喜四郎]]、[[二階俊博]]、[[岸田文雄]]、[[河野洋平]]にも言及している<ref name="倉山2018-115-131">倉山 (2018)、115~131頁。</ref>。}}、ネトウヨと呼ばれる人たちにとって気に食わない存在は、いつでもパヨクと名指しされる可能性がある、という<ref name="物江2019-28">物江 (2019)、28頁。</ref>{{Efn|倉山は、「モノホン・パヨク」として[[外務省]]、[[文部科学省]]、[[男女共同参画局|内閣府男女共同参画局]]、[[人権擁護局|法務省人権擁護局]]、[[日本弁護士連合会|日弁連]]、[[日本教職員組合|日教組]]、[[全日本自治団体労働組合|自治労]]、[[ピースボート]]、[[ヒューマンライツ・ナウ]]、[[有田芳生]]&[[対レイシスト行動集団|しばき隊]]に言及している<ref name="倉山2018-207-236">倉山 (2018)、207~236頁。</ref>。}}。
リベラルを称しながら主張が支離滅裂と見做された人物のほか、[[国民民主党]]や[[立憲民主党]]といった政党や[[自由民主党 (日本)|自由民主党]]の[[石破茂]]にも使われることがあり<ref name="物江2019-27"/>{{Efn|倉山は、[[中村喜四郎]]、[[二階俊博]]、[[岸田文雄]]、[[河野洋平]]にも言及している<ref name="倉山2018-115-131">倉山 (2018)、115~131頁。</ref>。}}、ネトウヨと呼ばれる人たちにとって気に食わない存在は、いつでもパヨクと名指しされる可能性がある、という<ref name="物江2019-28">物江 (2019)、28頁。</ref>{{Efn|倉山は、「モノホン・パヨク」として[[外務省]]、[[文部科学省]]、[[男女共同参画局|内閣府男女共同参画局]]、[[人権擁護局|法務省人権擁護局]]、[[日本弁護士連合会|日弁連]]、[[日本教職員組合|日教組]]、[[全日本自治団体労働組合|自治労]]、[[ピースボート]]、[[ヒューマンライツ・ナウ]]、[[有田芳生]]&[[対レイシスト行動集団|しばき隊]]に言及している<ref name="倉山2018-207-236">倉山 (2018)、207~236頁。</ref>。}}。


山下里香は、[[日本第一党]]の[[桜井誠 (活動家)|桜井誠]]の2016年12月12日付ツイート{{Efn|桜井誠@Doronpa01. 少しずつですが世の流れが変わりつつあります。パヨク側は「[[ヘイトスピーチ]]を止めるニダ」と喚き散らしますが、[[日本人]]は馬鹿ではありません。これまでパヨクが[[念仏]]のように唱えてきた「([[鮮人]]の)人権」とやらになびいていた人たちが、その欺瞞性に気付き始めています。我が国に日本第一主義を!}}を例示し、「パヨク」および「~ニダ」の使用で敵意が表現され、桜井がツイートで「パヨク」と呼んだ人々には、桜井の味方ではない全ての日本人が含まれる、と主張している。また、{{仮リンク|エリノア・オックス|en|Elinor Ochs}}の「{{仮リンク|指標性|en| Indexicality}}」という記号概念を援用し、「~ニダ」は「直接指標」を通じ[[朝鮮民族|朝鮮人]]に、「パヨク」は「間接指標」を通じ[[左派]]に割り当てられている、と分析している<ref name="Yamashita2019-228"/>。
山下里香は、[[日本第一党]]の[[桜井誠 (活動家)|桜井誠]]の2016年12月12日付ツイート{{Efn|桜井誠@Doronpa01. 少しずつですが世の流れが変わりつつあります。パヨク側は「[[ヘイトスピーチ]]を止めるニダ」と喚き散らしますが、[[日本人]]は馬鹿ではありません。これまでパヨクが[[念仏]]のように唱えてきた「([[鮮人]]の)人権」とやらになびいていた人たちが、その欺瞞性に気付き始めています。我が国に日本第一主義を!}}を例示し、「パヨク」および「~ニダ」の使用で敵意が表現され、桜井がツイートで「パヨク」と呼んだ人々には、桜井の味方ではない全ての日本人が含まれる、と主張している。また、{{仮リンク|エリノア・オックス|en|Elinor Ochs}}の「{{仮リンク|指標性|en| Indexicality}}」という記号概念を援用し、「~ニダ」は「直接指標」を通じ[[朝鮮民族|朝鮮人]]に、「パヨク」は「間接指標」を通じ[[左派]]に割り当てられている、と分析している<ref name="Yamashita2019-228"/>。
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[[田中辰雄 (経済学者)|田中辰雄]]は、「ネトウヨ」「パヨク」が相手を敵視し攻撃する言葉ばかり飛び交い、保守とリベラルの意見が{{仮リンク|過激化|en|Radicalization}}・極端化し、{{仮リンク|政治的分極化|en|Political polarization|label=分極化}}が行き過ぎると議論を通じた相互理解が不可能になり社会が分断化されていくと危惧している<ref>{{Cite web |author=[[田中辰雄 (経済学者)|田中辰雄]]|date=2018-12-21|url=https://webronza.asahi.com/science/articles/2018121200003.html|title=「パヨク、ネトウヨはネットが作る」の幻想|publisher=[[論座]]|accessdate=2019-10-01}}</ref>。
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物江潤は、ネトウヨやパヨクと呼ばれる人々を「対話不能な人」と広く定義し<ref>物江 (2019)、5頁。</ref>、[[ユルゲン・ハーバーマス|ハーバーマス]]の「議論の参加者は完全に自由で平等だ」との考えを援用し、主張の内容より発言者の立場 (今でいう[[スクールカースト]])で発言の良し悪しが決まってはならないとし<ref>物江 (2019)、29~30頁。</ref>、「ネトウヨ・パヨク」と「保守・リベラル」の違いは、議論のルールを守れるかどうか、つまり対話可能かどうかのみによって判定されるべきであると考えている<ref>物江 (2019)、30~31頁。</ref><ref>{{Cite journal |和書|author=[[KAZUYA]]|date= |url=https://www.dailyshincho.jp/article/2019/07050555/?all=1|title=ネトウヨ・パヨクに見る「話せばわかる」の限界|journal=[[週刊新潮]]|issue=2019年7月4日号|publisher=[[新潮社]]|accessdate=2019-10-01}}</ref>。また、①自らの主張は[[仮説]]にすぎないと確信すること、②人の[[発言権]]を奪わないこと、③どれほど奇妙奇天烈に思える主張でも、理由付け (論拠) や事実で、その良し悪しを判定すること ([[スティーヴン・トゥールミン|トゥールミン]]の[[議論学#理論|議論モデル]]を参照) の三つのルールを守れば、ネトウヨでもパヨクでもないと提唱している<ref name="物江2019-32-35">物江、32~35頁。</ref>。
物江潤は、ネトウヨやパヨクと呼ばれる人々を「対話不能な人」と定義し<ref>物江 (2019)、5頁。</ref>、[[ユルゲン・ハーバーマス|ハーバーマス]]の「議論の参加者は完全に自由で平等だ」との考えを援用し、主張の内容より発言者の立場 (今でいう[[スクールカースト]])で発言の良し悪しが決まってはならないとし<ref>物江 (2019)、29~30頁。</ref>、「ネトウヨ・パヨク」と「保守・リベラル」の違いは、議論のルールを守れるかどうか、つまり対話可能かどうかのみによって判定されるべきであると考えている<ref>物江 (2019)、30~31頁。</ref><ref>{{Cite journal |和書|author=[[KAZUYA]]|date= |url=https://www.dailyshincho.jp/article/2019/07050555/?all=1|title=ネトウヨ・パヨクに見る「話せばわかる」の限界|journal=[[週刊新潮]]|issue=2019年7月4日号|publisher=[[新潮社]]|accessdate=2019-10-01}}</ref>。また、①自らの主張は[[仮説]]にすぎないと確信すること、②人の[[発言権]]を奪わないこと、③どれほど奇妙奇天烈に思える主張でも、理由付け (論拠) や事実で、その良し悪しを判定すること ([[スティーヴン・トゥールミン|トゥールミン]]の[[議論学#理論|議論モデル]]を参照) の三つのルールを守れば、ネトウヨでもパヨクでもないと述べている<ref name="物江2019-32-35">物江、32~35頁。</ref>。


[[篠田英朗]]は、日本の[[大学人]]の多くが「ネトウヨ批判」ビジネスを、在野の言論人が大手新聞社や左翼知識人を批判・揶揄する「パヨク」嘲笑ビジネスを展開する[[循環論法]]で閉じられた円環で完結しているため、日本言論界が閉塞したと考えている<ref>{{Cite web |author=[[篠田英朗]]|date=2019-08-18|url=http://agora-web.jp/archives/2041001.html|title=ネトウヨ批判を存在証明とする「知識人」たち|publisher=[[アゴラ]]|accessdate=2019-10-01}}</ref>。
[[篠田英朗]]は、日本の[[大学人]]の多くが「ネトウヨ批判」ビジネスを、在野の言論人が大手新聞社や左翼知識人を批判・揶揄する「パヨク」嘲笑ビジネスを展開する[[循環論法]]で閉じられた円環で完結しているため、日本言論界が閉塞したと考えている<ref>{{Cite web |author=[[篠田英朗]]|date=2019-08-18|url=http://agora-web.jp/archives/2041001.html|title=ネトウヨ批判を存在証明とする「知識人」たち|publisher=[[アゴラ]]|accessdate=2019-10-01}}</ref>。
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== 脚注 ==
== 脚注 ==
=== 注釈 ===
=== 注釈 ===
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=== 出典 ===
=== 出典 ===

2019年10月9日 (水) 14:42時点における版

パヨク (英語: payoku[1]) とは、サヨク(左翼)に韻を踏ませ[1]もじった言葉[2]ネットスラング[3][4]。サヨクの「サ」を「パ」にしたのがパヨク[5]。 略称はパヨ[5]ネット左翼[6][7]とも。対義語ネトウヨ[8][9]派生語に「パヨクメディア」、「パヨク新聞」[注釈 1]、「パヨク学者」[注釈 2]、「パヨクコメンテーター」[注釈 3]、「パヨク番組」[注釈 4]、「パヨク大学」[5]、「反日パヨク」[14][15][16]などがある。動詞は「パヨる」で、パヨクの中にいて無意識のうちに影響を受けパヨク的な行動や思考に走ってしまうことを意味するという[17]

定義や解釈

梶井彩子によれば、ネトウヨと同様に侮蔑語[4]西川伸一によれば、左翼の蔑称[18]であるといい、蔑称、悪口として用いられるため、「ネトウヨ」や「パヨク」を自称として用いる人は基本的にはいないという[9][6]真鍋厚によれば、「侮蔑語」であるため定義付けは困難だという[8]

物江潤によれば、ネトウヨ (ネット右翼)と反対の立場の人を批判的にとらえた表現[19]千葉麗子によれば「劣化した左翼」[20]倉山満によれば、「劣化左翼」、「頭が悪い左翼」、「頭がパーな左翼」といった意味で用いられているという[3]山下里香によれば、在日コリアンに味方すると見做されている「リベラル」を指す右派ジャーゴン (隠語)[1]佐藤優によれば、ネット右翼が左翼やリベラル派を揶揄、罵倒するときに使う呼称[21]であるという。真鍋によれば、反日的でリベラル色が強いとされ[8]はすみとしこによれば、「反日左翼」[3]、千葉によれば、右でも左でもない「反日」に取りつかれたような壊れた翼「破翼」、または「端翼」(異端)のことも意味するという[22]

起源

2015年に、在特会排外主義的な主張を批判する一方で暴力事件をはじめとした反社会的な行動を展開してきたレイシストをしばき隊のメンバーの言動[2]Twitter千葉麗子に「おはよう」と言うために使っていた挨拶である「ぱよぱよちーん」の語感が妙なウケ方をしたこと (ぱよぱよちーん騒動[注釈 5])[23]がきっかけとなって生まれた造語だという[2]

使用の対象

リベラルを称しながら主張が支離滅裂と見做された人物のほか、国民民主党立憲民主党といった政党や自由民主党石破茂にも使われることがあり[2][注釈 6]、ネトウヨと呼ばれる人たちにとって気に食わない存在は、いつでもパヨクと名指しされる可能性がある、という[25][注釈 7]

山下里香は、日本第一党桜井誠の2016年12月12日付ツイート[注釈 8]を例示し、「パヨク」および「~ニダ」の使用で敵意が表現され、桜井がツイートで「パヨク」と呼んだ人々には、桜井の味方ではない全ての日本人が含まれる、と主張している。また、エリノア・オックス英語版の「指標性英語版」という記号概念を援用し、「~ニダ」は「直接指標」を通じ朝鮮人に、「パヨク」は「間接指標」を通じ左派に割り当てられている、と分析している[1]

「ネトウヨ・パヨク」と「保守・リベラル」

千葉麗子によれば、①「差別だ」「レイシストだ」「ネトウヨだ」とレッテルを貼る。②相手の個人情報をインターネット上にさらす。③相手の勤務先などに執拗な攻撃を加える。④自分の意見に相手が合わせるまで罵倒したり、暴力も辞さないことなどの特徴があるという[22]

田中辰雄は、「ネトウヨ」「パヨク」が相手を敵視し攻撃する言葉ばかり飛び交い、保守とリベラルの意見が過激化英語版・極端化し、分極化英語版が行き過ぎると議論を通じた相互理解が不可能になり社会が分断化されていくと危惧している[27]

物江潤は、ネトウヨやパヨクと呼ばれる人々を「対話不能な人」と定義し[28]ハーバーマスの「議論の参加者は完全に自由で平等だ」との考えを援用して、主張の内容より発言者の立場 (今でいうスクールカースト)で発言の良し悪しが決まってはならないとし[29]、「ネトウヨ・パヨク」と「保守・リベラル」の違いは、議論のルールを守れるかどうか、つまり対話可能かどうかのみによって判定されるべきであると考えている[30][31]。また、①自らの主張は仮説にすぎないと確信すること、②人の発言権を奪わないこと、③どれほど奇妙奇天烈に思える主張でも、理由付け (論拠) や事実で、その良し悪しを判定すること (トゥールミン議論モデルを参照) の三つのルールを守れば、ネトウヨでもパヨクでもないと述べている[32]

篠田英朗は、日本の大学人の多くが「ネトウヨ批判」ビジネスを、在野の言論人が大手新聞社や左翼知識人を批判・揶揄する「パヨク」嘲笑ビジネスを展開する循環論法で閉じられた円環で完結しているため、日本言論界が閉塞したと考えている[33]

脚注

注釈

  1. ^ 倉山は、パヨクマスコミ・出版として朝日新聞毎日新聞NHK琉球新報沖縄タイムス東京書籍山川出版社岩波書店噂の眞相リテラ週刊金曜日に言及している[10]
  2. ^ 倉山は、パヨク学者として上野千鶴子古市憲寿姜尚中香山リカ木村草太田嶋陽子北岡伸一加藤陽子に言及している[11]
  3. ^ 倉山は、パヨク有名人として本多勝一古館伊知郎鳥越俊太郎関口宏望月衣塑子室井佑月吉永小百合に言及している[12]
  4. ^ 倉山は、パヨク番組としてサンデーモーニングNEWS23報道特集報道ステーションに言及している[13]
  5. ^ 詳細については、千葉麗子『さよならパヨク~チバレイが見た左翼の実態~』青林堂、平成28年4月16日 初版発行、ISBN 978-4-7926-0546-9春山修司 (2015年11月9日). “千葉麗子のツイートが「ぱよぱよちーん」男の身元特定に貢献”. デイリーニュースオンライン. 2019年10月6日閲覧。などを参照。
  6. ^ 倉山は、中村喜四郎二階俊博岸田文雄河野洋平にも言及している[24]
  7. ^ 倉山は、「モノホン・パヨク」として外務省文部科学省内閣府男女共同参画局法務省人権擁護局日弁連日教組自治労ピースボートヒューマンライツ・ナウ有田芳生&しばき隊に言及している[26]
  8. ^ 桜井誠@Doronpa01. 少しずつですが世の流れが変わりつつあります。パヨク側は「ヘイトスピーチを止めるニダ」と喚き散らしますが、日本人は馬鹿ではありません。これまでパヨクが念仏のように唱えてきた「(鮮人の)人権」とやらになびいていた人たちが、その欺瞞性に気付き始めています。我が国に日本第一主義を!

出典

  1. ^ a b c d Yamashita, Rika (2019-06-13), “14 Code-switching, language crossing and mediatized translinguistic practices”, Routledge Handbook of Japanese Sociolinguistic, Routledge, ISBN 978-0-415-79027-7  p. 228.
  2. ^ a b c d 物江潤『ネトウヨとパヨク〈新潮新書 812〉』新潮社、2019年5月20日 発行、ISBN 978-4-10-610812-9、27頁。
  3. ^ a b c 倉山満はすみとしこ『面白いけど笑ってはいけない! (国民の敵はここにいる)』ビジネス社、2018年6月9日 第1刷発行、ISBN 978-4-8284-2029-5、15頁。
  4. ^ a b 梶井彩子 (2019年6月2日). “中高生が『ネトウヨとパヨク』に一直線 !?”. アゴラ. 2019年10月1日閲覧。
  5. ^ a b c 古谷経衡『愛国奴』駒草出版、2018年6月9日 初版発行、ISBN 978-4-905447-97-9、096頁。
  6. ^ a b デイリー新潮編集部・物江潤 (2019年6月4日). “ネトウヨとパヨクはなぜ極端なことを言い続けるのか”. デイリー新潮. 2019年10月7日閲覧。
  7. ^ 物江潤 (2019年5月28日). “ネトウヨやパヨクは「対話不能な人」”. アゴラ. 2019年10月7日閲覧。
  8. ^ a b c 真鍋厚 (2019年8月3日). “「ネトウヨVSパヨク」なぜ生まれた? 「国の重大事」への現実逃避”. ウィズニュース. 2019年10月1日閲覧。
  9. ^ a b デイリー新潮編集部 (2019年5月31日). “「ネトウヨ、パヨク」と「保守、リベラル」は何が違うのか”. デイリー新潮. 2019年10月4日閲覧。
  10. ^ 倉山 (2018)、15~68頁。
  11. ^ 倉山 (2018)、177~204頁。
  12. ^ 倉山 (2018)、71~94頁。
  13. ^ 倉山 (2018)、28~39頁。
  14. ^ 千葉麗子『チバレイの日本国史─日本の國體とは』青林堂、2019年7月26日 初版発行、ISBN 978-4-7926-0654-1、59頁。
  15. ^ 古谷 (2018)、137頁。
  16. ^ 孫向文『日本に帰化したい!!』青林堂、平成29年8月18日 初版発行、ISBN 978-4-7926-0600-8帯紙
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