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|社名=朝日アルミ産業株式会社
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'''朝日アルミ産業株式会社'''(あさひあるみさんぎょうかぶしきがいしゃ、{{Lang-en|Asahi Aluminium Industrial Co.}})は、[[岡山県]][[総社市]]下原のアルミニウムリサイクル業者<ref name="yomiuri20170407"/>、[[非鉄金属]][[製造業|製造会社]]。[[アルミニウム]]二次合金メーカーの「[[アサヒセイレン]]」(大阪府八尾市)の子会社であり<ref name="nikansangyo20110427">アサヒセイレン/合金3工場を休止/需要不振 RSIは増産継続 2011.04.27 日刊産業新聞 11頁 非鉄 (全572字)</ref>、総社市にあるアサヒセイレンの岡山工場の管理、運営を担っていた<ref name="nikansangyo20110427"/>。[[平成30年7月豪雨]]によって爆発事故が起こり、事業を停止した。
'''朝日アルミ産業爆発事故'''(あさひあるみさんぎょうばくはつじこ)とは、[[2018年]][[7月]]に発生した事故。
==概要==
1980年9月に総社市に朝日アルミ産業を新設。


== 概要 ==
== 事業内容 ==
[[ファイル:Asahi aluminum201807-42.jpg|thumb|200px|朝日アルミ産業で製造された製鉄用の脱酸素剤である粗アルミニウム]]
[[ファイル:Shimobara cropped GSI CCG20071-C18-51 20071010.jpg|thumb|left|300px|爆発前の[[岡山県]][[総社市]][[下原 (総社市)|下原]]の航空写真([[2007年]][[10月10日]]撮影)]]
製鉄用のアルミ脱酸剤を製造する<ref name="nikansangyo20110427"/><ref name="nikkansangyo20150707">工場ルポ/朝日アルミ産業/アサヒセイレンの脱酸剤拠点/幅広い製品、5キロから/2015.07.07 日刊産業新聞 11頁 非鉄 (全1,611字)</ref>。アルミ脱酸剤はアルミスクラップを原料として製造され、高品位な製鉄に必須の材料であり{{efn|[[銑鉄]]の酸素および非金属不純物の除去を目的に[[転炉]]または[[電気炉]]に投入される}}、その需要は粗鋼生産量に強い影響を受けた<ref name="nikansangyo20110427"/><ref name="nikkansangyo20150707"/>。製鉄用としての用途だけでなく、化学分野で触媒用としても販売された<ref name="nikkansangyo20150707"/>{{efn|化学触媒用としては、重量1グラムないしそれ以下の粒の小さな製品が使用される}}。脱酸剤の生産能力は毎月2300トンで、2015年時点の生産実績は毎月1800トンであった<ref name="nikkansangyo20150707"/>{{efn|2018年7月9日現在の会社広報には1500トンとある}}。社風として、挨拶時には必ず対象者と握手をすることを取り決めていた<ref name="nikkansangyo20150707"/>{{efn|この社風は、アサヒレイレングループ全体で行われている}}。
[[2018年]][[7月]]、活発な[[梅雨前線]]により、[[岡山県]][[総社市]]は豪雨となった。降りしきる雨は、総社市に本社を置く朝日アルミ産業も包んでいた。朝日アルミ産業は、アサヒセイレンの子会社であり、総社市にあるアサヒセイレンの岡山工場の管理、運営を担っていた。この雨により、工場は浸水した。その途端、突如として大爆発が起きた。


== 爆発の状況 ==
== 立地 ==
[[ファイル:Shimobara cropped GSI CCG20071-C18-51 20071010.jpg|thumb|300px|[[高梁川]](右)と[[新本川]](左)に挟まれて立地する朝日アルミ産業(中央)([[2007年]][[10月10日]]撮影)]]
周囲からは、巨大な光球が目撃された。その後、工場は、まばゆいばかりの輝きを放った。その結果、岡山県総社市の付近一帯はこの爆発に巻き込まれた。朝日アルミ産業の工場だけでなく、同社とは無関係の周辺の建築物はいずれも大破するなど、損傷をこうむった。また、この爆発より、同社とは無関係の周辺の建物が、複数全焼した<ref>[https://www.asahi.com/articles/ASL772VZXL77PPZB00J.html 岡山・総社の工場が爆発 「二次爆発」の恐れで避難指示:朝日新聞デジタル]</ref><ref>[https://mainichi.jp/articles/20180707/dde/041/040/044000c/ アルミ工場爆発:浸水漏電原因か 岡山・3棟全焼 - 毎日新聞]</ref><ref>[https://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/article/430744/ 岡山の工場で爆発、十数人けが 付近の3棟全焼|【西日本新聞】]</ref><ref>[https://www.jiji.com/jc/article?k=2018070700354 アルミ工場で爆発=浸水影響か、土砂崩れも-岡山:時事ドットコム]</ref><ref>[http://www.sanyonews.jp/article/746732/1/ 総社工場爆発 溶解炉冠水が原因か 民家に延焼、住民十数人けが:山陽新聞デジタル|さんデジ]</ref><ref>[https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180708/k10011523061000.html アルミ工場爆発 周辺数百メートルで被害判明 岡山 | NHKニュース]</ref><ref>[https://mainichi.jp/articles/20180707/k00/00e/040/225000c/ 工場:アルミ溶解炉が爆発 3棟全焼 十数人けが 岡山 - 毎日新聞]</ref><ref>[http://www.sanyonews.jp/article/747251/ 爆発の工場跡、無残な光景広がる 総社で避難中の住民「隕石か」:山陽新聞デジタル|さんデジ]</ref>。また、多数の怪我人が発生した。
[[山陽自動車道]]の[[倉敷インターチェンジ]]から車で20分、JR[[総社駅]]から車で10分の場所に工場があった<ref name="nikkansangyo20150707"/>。工場のすぐ東側に[[高梁川]]が流れ、西側には[[新本川]](しんぽん)が流れ、2つの河川の間に工場を構える形となっていた<ref name="nikkansangyo20150707"/>。過去にも大水の際は敷地が浸水したことがあった<ref name="nhk-news-20180720">岡山のアルミ工場・浸水で水蒸気爆発か 従業員 「過去にも川氾濫で浸水」 2018.07.20 NHKニュース (全474字)</ref>。アサヒセイレングループの中では、最も西側に位置する拠点となり、中国・四国・九州地方のスクラップの集荷拠点としても機能していた<ref name="nikkansangyo20150702">朝日アルミ産業/生産効率15%引上げ/移動・選別方法見直しで/バラ積みスクラップ強化 2015.07.02 日刊産業新聞 19頁 非鉄 (全734字)</ref>。


== 爆発後の状況 ==
== 設備 ==
敷地面積は5000平方メートル<ref name="nikkansangyo20150707"/>、工場を鉄骨平屋約1800平方メートルでだった<ref name="yomiuri20170407"/><ref name="nikkansangyo20150707"/>。2015年の従業員は33人<ref name="nikkansangyo20150707"/>。40トンと13トンの溶解炉を備え、鋳造機は4基保有していた<ref name="nikkansangyo20150707"/>。その他の主要設備としては、集塵機5基にダライ粉用乾燥ライン1ライン、ドロス絞り機1基が挙げられる<ref name="nikkansangyo20150707"/>。溶解炉はオープンウエル式[[反射炉]]でだった<ref name="nikkansangyo20150707"/>。建物や中心となる設備は1980年9月に操業開始当時のままであり、目立った更新は無かった<ref name="nikkansangyo20150707"/>。場内のレイアウトは、南側(川下側)に原料ヤードと製品検査・出荷エリア、北側(川上側)にダライ粉用乾燥ライン、中央に溶解設備を配置している<ref name="nikkansangyo20150707"/>。まずアルミスクラップを溶解炉に投入して溶解し、溶湯の成分の分析が行われた<ref name="nikkansangyo20150707"/>。溶けたアルミを主体とした溶湯は、鋳造設備で型に注入され、冷却後ベルトコンベヤーのラインに乗せ、手選別や篩(ふるい)で不良品を取り除く工程となっていた<ref name="nikkansangyo20150707"/>。
現在も二次爆発の恐れがあるため、いま現在も岡山県総社市[[下原 (総社市)|下原]]には避難指示が発令されている。

== 原料 ==
朝日アルミ産業ではプレス加工や[[パレット (輸送)|パレット]]積みされたアルミスクラップを主原料としてきたが<ref name="nikkansangyo20150702"/>、2014年頃より原料価格が急騰して原料確保に苦労するようになり、収益も悪化傾向となった<ref name="nikkansangyo20150702"/>。そのため、原料として「バラ積みのスクラップ」も取り扱うようにしたが、既存の設備では「バラ積みスクラップ」の施設内運搬が困難であったため、2015年に2000万円を投資して「バラ積みスクラップ」を把持可能なツカミのアタッチメントを装備した能力0.8立方メートルの[[油圧ショベル]]機を導入した<ref name="nikkansangyo20150702"/>。同時にヤード内における原料の移動や選別方法を見直し、生産効率を従来比15%改善している<ref name="nikkansangyo20150702"/>。

== 製品 ==
アルミ脱酸剤には、ブロックやショット、ペレット、ブリケットなど様々な形態があるが<ref name="nikkansangyo20150707"/>、朝日アルミ産業で製造されていた製品は、ブロックとおはじきを小さくしたようなショットの2種類である<ref name="nikkansangyo20150707"/>。重量は1つあたり1グラムから130グラムまであり、アルミ含有率も90-94%、97%、99%、99.7%以上と細かく製品が分けられていた<ref name="nikkansangyo20150707"/>。出荷も、ダンプ車によるバラ積みや[[フレキシブルコンテナバッグ]]、5-20kgの袋詰めなど、納入先の状況に応じて複数用意された<ref name="nikkansangyo20150707"/>。取り扱われる最少ロットは5kgからとなっており、大手鉄鋼メーカーのみならず中小鋳物メーカーの注文にも対応していた<ref name="nikkansangyo20150707"/>。

== 事故 ==
=== 2011年の重油流出 ===
2011年8月20日、敷地内の地下重油タンク(容量3万リットル)に、タンクローリーから「[[A重油]]」を補充する作業中に重油が溢出し、新本川に約1600リットルが流入する事故が起きた<ref name="yomiuri20110821"/>。重油は高梁川にも流れ、総社市と倉敷市の消防隊が[[オイルフェンス]]を張るなどして対処したが<ref name="yomiuri20110821">「高梁川に重油流出 事業所タンクに注入中」『読売新聞』2011年(平成23年)8月21日付大阪本社朝刊35面(岡山)。</ref><ref name="mainichi20110821"/>、油膜が5km下流にある倉敷市の[[酒津浄水場]]付近まで広がった<ref name="mainichi20110821">石井尚「重油1600㍑流出 総社・高梁川に」『毎日新聞』2011年(平成23年)8月21日付大阪本社朝刊21面(岡山)。</ref>。

=== 2017年の火災 ===
2017年4月5日、工場内の機械上部より出火して天井や壁など30平方メートルを焼く火事があった<ref name="yomiuri20170407"/>。ダクトが高温になり、堆積していたアルミ粉末が燃えたのが原因だった<ref name="yomiuri20170407"/>。従業員6人が作業中であったが、負傷者はなし<ref name="yomiuri20170407">「総社の工場一部焼ける」『読売新聞』2017年(平成29年)4月7日付大阪本社朝刊27面(岡山)。</ref>。

=== 2018年の爆発事故 ===
[[ファイル:Asahi aluminum201807-6194.jpg|thumb|200px|爆発した設備(2018年7月22日撮影)|代替文=]]
[[ファイル:Asahi aluminum201807-6244.jpg|thumb|200px|爆発事故により壁と屋根が吹き飛び鉄骨だけになった社屋(手前)、爆発と火災で倒壊した社屋(奥)([[2018年]][[7月22日]]撮影)]]
[[ファイル:Asahi aluminum201807-6275.jpg|thumb|200px|爆発事故により崩壊した設備(2018年7月22日撮影)]]
[[平成30年7月豪雨]]によって周囲が冠水し、溶解炉が水に漬かったために大爆発を起こした<ref name="asahiASL772VZXL"/>。爆発は7月6日午後11時30-35分頃で、爆発によって周囲の多数の店舗や建物の窓ガラスが割れ、火災で付近の民家や倉庫など4棟が全焼した<ref name="asahiASL772VZXL"/><ref name="tokyo20180720"/>。職員は豪雨のために午後10頃に作業を切り上げて退避済みであったが<ref>[https://mainichi.jp/articles/20180707/dde/041/040/044000c/ アルミ工場爆発:浸水漏電原因か 岡山・3棟全焼 - 毎日新聞] 2018年7月7日</ref>、吹き飛んだガラス片などによって十数人の住民が負傷し、5人が救急搬送された<ref name="asahiASL772VZXL">[https://www.asahi.com/articles/ASL772VZXL77PPZB00J.html 岡山・総社の工場が爆発 「二次爆発」の恐れで避難指示:朝日新聞デジタル] 2018年7月7日</ref><ref>[https://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/article/430744/ 岡山の工場で爆発、十数人けが 付近の3棟全焼|【西日本新聞】]</ref><ref>[https://www.jiji.com/jc/article?k=2018070700354 アルミ工場で爆発=浸水影響か、土砂崩れも-岡山:時事ドットコム]</ref><ref>[http://www.sanyonews.jp/article/746732/1/ 総社工場爆発 溶解炉冠水が原因か 民家に延焼、住民十数人けが:山陽新聞デジタル|さんデジ]</ref><ref>[https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180708/k10011523061000.html アルミ工場爆発 周辺数百メートルで被害判明 岡山 | NHKニュース 2018年7月8日]</ref><ref>[https://mainichi.jp/articles/20180707/k00/00e/040/225000c/ 工場:アルミ溶解炉が爆発 3棟全焼 十数人けが 岡山 - 毎日新聞 2018年7月7日]</ref>。爆発は翌日の午前3時ごろまで断続的に続いた<ref>[http://www.sanyonews.jp/article/747251/ 爆発の工場跡、無残な光景広がる 総社で避難中の住民「隕石か」:山陽新聞デジタル|さんデジ]</ref>。周辺の家屋の火災は、飛び散った溶解アルミニウムによるものであった<ref name="tokyo20180720"/>。工場と民家は新本川を隔てて100m以上離れていたが、吹き飛んだ溶解アルミ塊が屋根を突き破って民家の中に突入した<ref name="tokyo20180720">浸水で?爆発工場 爪痕深く 岡山・総社骨組みあらわ 東京新聞 2018.07.20 夕刊 9頁 社会面 (全419字)</ref>。連日の雨によって周囲の川の水位が上昇し、従業員は危機感を持っており、上司は操業を続けるように指示していたという<ref>[https://www3.nhk.or.jp/lnews/okayama/20180724/4020001022.html アルミ工場爆発「上司と連絡」NHK岡山 NEWS WEB 2018年07月24日 13時34分]</ref>。

アルミニウムの溶解炉は、6日早朝から停止作業が行われていた<ref name="sanyonews753647"/>。溶解炉の中の溶解アルミニウムを取り出す作業を始めたのは、川が氾濫注意水位を超えた午後8時頃だったとされる<ref name="nhk-news-20180720"/>。当時運転中だったのは、容量40トンの溶解炉であったが、全て取り出す前に工場が浸水し午後10時に炉内に溶解アルミニウムが20トンほど残っている状態で全職員が退避した<ref name="sanyonews753647"/><ref name="nhk-news-20180720"/>。溶解炉が浸水し、中に残った溶解アルミニウムと水が化学反応が起したものと考えられた<ref name="sanyonews753647">[http://www.sanyonews.jp/article/753647/1/?rct=kisyou_saigai 総社・アルミ工場の事故現場調査 県警など、浸水で水蒸気爆発か 山陽新聞デジタル 2018年07月19日 11時12分]</ref>{{efn|出典によっては『水蒸気爆発』とも報道されている}}。300人が避難した。

7月19-20日に、[[岡山県警]]と[[総務省]][[消防庁]]が合同で[[業務上過失傷害]]の疑いで家宅捜索と調査を行った<ref name="sanyonews753647"/>。被害範囲が広いため、調査にはドローンも利用された<ref name="sanyonews753647"/>。親会社の「アサヒセイレン」は、被害を受けた家屋の修繕費や負傷者治療費を補償するとともに、朝日アルミ産業の事業については「住民の理解を得るのは難しい」として再建を断念する意向を表明した<ref name="yomiuri20180724">総社の工場爆発 家屋修繕費補償へ 再稼働断念の見通し=岡山 読売新聞 2018.07.24 大阪朝刊 30頁 (全327字)</ref>。従業員35人の雇用は維持するものとした<ref name="yomiuri20180724"/>。

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ファイル:Asahi aluminum201807-6217.jpg|爆発で破壊された工場の設備
ファイル:Asahi aluminum201807-6232.jpg|高梁川の河川敷まで吹き飛んだ朝日アルミ産業の部品。飛翔距離は200m程
ファイル:Asahi aluminum201807-6210.jpg|裏手(西側)に崩れ落ちた工場の設備。奥の橋の柵も破壊されている。
ファイル:Asahi aluminum201807-6234.jpg|被害を受けた隣の鉄工所。写真中央右は、吹き飛んできた朝日アルミ産業の工場の部品
ファイル:Asahi aluminum201807-6148.jpg|被害を受けた集落
ファイル:Asahi aluminum201807-6146.jpg|被害を受けた民家。窓、屋根、壁などに被害を受けている
ファイル:Asahi aluminum201807-6271.jpg|壁が破壊された近隣の工場
ファイル:Asahi aluminum201807-6144.jpg|崩れた瓦屋根
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== 脚注 ==
== 脚注 ==
=== 注釈 ===
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=== 出典 ===
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== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
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2018年8月7日 (火) 06:08時点における版

朝日アルミ産業株式会社
Asahi Aluminium Industrial Co.
朝日アルミ産業の航空写真
2007年10月10日撮影)
種類 株式会社
機関設計 監査役設置会社
市場情報 非上場
略称 朝日アルミ産業
本店所在地 日本の旗 日本
719-1145
岡山県総社市下原1430番地の1
北緯34度39分24.3秒 東経133度43分25.7秒 / 北緯34.656750度 東経133.723806度 / 34.656750; 133.723806
設立 1980年9月
業種 非鉄金属
法人番号 4260001015793
事業内容 製鋼アルミニウム脱酸剤の
製造
アルミニウム合金地金など
各種の製造
主要株主 アサヒセイレン 株式会社
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朝日アルミ産業株式会社(あさひあるみさんぎょうかぶしきがいしゃ、英語: Asahi Aluminium Industrial Co.)は、岡山県総社市下原のアルミニウムリサイクル業者[1]非鉄金属製造会社アルミニウム二次合金メーカーの「アサヒセイレン」(大阪府八尾市)の子会社であり[2]、総社市にあるアサヒセイレンの岡山工場の管理、運営を担っていた[2]平成30年7月豪雨によって爆発事故が起こり、事業を停止した。

概要

1980年9月に総社市に朝日アルミ産業を新設。

事業内容

朝日アルミ産業で製造された製鉄用の脱酸素剤である粗アルミニウム

製鉄用のアルミ脱酸剤を製造する[2][3]。アルミ脱酸剤はアルミスクラップを原料として製造され、高品位な製鉄に必須の材料であり[注釈 1]、その需要は粗鋼生産量に強い影響を受けた[2][3]。製鉄用としての用途だけでなく、化学分野で触媒用としても販売された[3][注釈 2]。脱酸剤の生産能力は毎月2300トンで、2015年時点の生産実績は毎月1800トンであった[3][注釈 3]。社風として、挨拶時には必ず対象者と握手をすることを取り決めていた[3][注釈 4]

立地

高梁川(右)と新本川(左)に挟まれて立地する朝日アルミ産業(中央)(2007年10月10日撮影)

山陽自動車道倉敷インターチェンジから車で20分、JR総社駅から車で10分の場所に工場があった[3]。工場のすぐ東側に高梁川が流れ、西側には新本川(しんぽん)が流れ、2つの河川の間に工場を構える形となっていた[3]。過去にも大水の際は敷地が浸水したことがあった[4]。アサヒセイレングループの中では、最も西側に位置する拠点となり、中国・四国・九州地方のスクラップの集荷拠点としても機能していた[5]

設備

敷地面積は5000平方メートル[3]、工場を鉄骨平屋約1800平方メートルでだった[1][3]。2015年の従業員は33人[3]。40トンと13トンの溶解炉を備え、鋳造機は4基保有していた[3]。その他の主要設備としては、集塵機5基にダライ粉用乾燥ライン1ライン、ドロス絞り機1基が挙げられる[3]。溶解炉はオープンウエル式反射炉でだった[3]。建物や中心となる設備は1980年9月に操業開始当時のままであり、目立った更新は無かった[3]。場内のレイアウトは、南側(川下側)に原料ヤードと製品検査・出荷エリア、北側(川上側)にダライ粉用乾燥ライン、中央に溶解設備を配置している[3]。まずアルミスクラップを溶解炉に投入して溶解し、溶湯の成分の分析が行われた[3]。溶けたアルミを主体とした溶湯は、鋳造設備で型に注入され、冷却後ベルトコンベヤーのラインに乗せ、手選別や篩(ふるい)で不良品を取り除く工程となっていた[3]

原料

朝日アルミ産業ではプレス加工やパレット積みされたアルミスクラップを主原料としてきたが[5]、2014年頃より原料価格が急騰して原料確保に苦労するようになり、収益も悪化傾向となった[5]。そのため、原料として「バラ積みのスクラップ」も取り扱うようにしたが、既存の設備では「バラ積みスクラップ」の施設内運搬が困難であったため、2015年に2000万円を投資して「バラ積みスクラップ」を把持可能なツカミのアタッチメントを装備した能力0.8立方メートルの油圧ショベル機を導入した[5]。同時にヤード内における原料の移動や選別方法を見直し、生産効率を従来比15%改善している[5]

製品

アルミ脱酸剤には、ブロックやショット、ペレット、ブリケットなど様々な形態があるが[3]、朝日アルミ産業で製造されていた製品は、ブロックとおはじきを小さくしたようなショットの2種類である[3]。重量は1つあたり1グラムから130グラムまであり、アルミ含有率も90-94%、97%、99%、99.7%以上と細かく製品が分けられていた[3]。出荷も、ダンプ車によるバラ積みやフレキシブルコンテナバッグ、5-20kgの袋詰めなど、納入先の状況に応じて複数用意された[3]。取り扱われる最少ロットは5kgからとなっており、大手鉄鋼メーカーのみならず中小鋳物メーカーの注文にも対応していた[3]

事故

2011年の重油流出

2011年8月20日、敷地内の地下重油タンク(容量3万リットル)に、タンクローリーから「A重油」を補充する作業中に重油が溢出し、新本川に約1600リットルが流入する事故が起きた[6]。重油は高梁川にも流れ、総社市と倉敷市の消防隊がオイルフェンスを張るなどして対処したが[6][7]、油膜が5km下流にある倉敷市の酒津浄水場付近まで広がった[7]

2017年の火災

2017年4月5日、工場内の機械上部より出火して天井や壁など30平方メートルを焼く火事があった[1]。ダクトが高温になり、堆積していたアルミ粉末が燃えたのが原因だった[1]。従業員6人が作業中であったが、負傷者はなし[1]

2018年の爆発事故

爆発した設備(2018年7月22日撮影)
爆発事故により壁と屋根が吹き飛び鉄骨だけになった社屋(手前)、爆発と火災で倒壊した社屋(奥)(2018年7月22日撮影)
爆発事故により崩壊した設備(2018年7月22日撮影)

平成30年7月豪雨によって周囲が冠水し、溶解炉が水に漬かったために大爆発を起こした[8]。爆発は7月6日午後11時30-35分頃で、爆発によって周囲の多数の店舗や建物の窓ガラスが割れ、火災で付近の民家や倉庫など4棟が全焼した[8][9]。職員は豪雨のために午後10頃に作業を切り上げて退避済みであったが[10]、吹き飛んだガラス片などによって十数人の住民が負傷し、5人が救急搬送された[8][11][12][13][14][15]。爆発は翌日の午前3時ごろまで断続的に続いた[16]。周辺の家屋の火災は、飛び散った溶解アルミニウムによるものであった[9]。工場と民家は新本川を隔てて100m以上離れていたが、吹き飛んだ溶解アルミ塊が屋根を突き破って民家の中に突入した[9]。連日の雨によって周囲の川の水位が上昇し、従業員は危機感を持っており、上司は操業を続けるように指示していたという[17]

アルミニウムの溶解炉は、6日早朝から停止作業が行われていた[18]。溶解炉の中の溶解アルミニウムを取り出す作業を始めたのは、川が氾濫注意水位を超えた午後8時頃だったとされる[4]。当時運転中だったのは、容量40トンの溶解炉であったが、全て取り出す前に工場が浸水し午後10時に炉内に溶解アルミニウムが20トンほど残っている状態で全職員が退避した[18][4]。溶解炉が浸水し、中に残った溶解アルミニウムと水が化学反応が起したものと考えられた[18][注釈 5]。300人が避難した。

7月19-20日に、岡山県警総務省消防庁が合同で業務上過失傷害の疑いで家宅捜索と調査を行った[18]。被害範囲が広いため、調査にはドローンも利用された[18]。親会社の「アサヒセイレン」は、被害を受けた家屋の修繕費や負傷者治療費を補償するとともに、朝日アルミ産業の事業については「住民の理解を得るのは難しい」として再建を断念する意向を表明した[19]。従業員35人の雇用は維持するものとした[19]

脚注

注釈

  1. ^ 銑鉄の酸素および非金属不純物の除去を目的に転炉または電気炉に投入される
  2. ^ 化学触媒用としては、重量1グラムないしそれ以下の粒の小さな製品が使用される
  3. ^ 2018年7月9日現在の会社広報には1500トンとある
  4. ^ この社風は、アサヒレイレングループ全体で行われている
  5. ^ 出典によっては『水蒸気爆発』とも報道されている

出典

  1. ^ a b c d e 「総社の工場一部焼ける」『読売新聞』2017年(平成29年)4月7日付大阪本社朝刊27面(岡山)。
  2. ^ a b c d アサヒセイレン/合金3工場を休止/需要不振 RSIは増産継続 2011.04.27 日刊産業新聞 11頁 非鉄 (全572字)
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v 工場ルポ/朝日アルミ産業/アサヒセイレンの脱酸剤拠点/幅広い製品、5キロから/2015.07.07 日刊産業新聞 11頁 非鉄 (全1,611字)
  4. ^ a b c 岡山のアルミ工場・浸水で水蒸気爆発か 従業員 「過去にも川氾濫で浸水」 2018.07.20 NHKニュース (全474字)
  5. ^ a b c d e 朝日アルミ産業/生産効率15%引上げ/移動・選別方法見直しで/バラ積みスクラップ強化 2015.07.02 日刊産業新聞 19頁 非鉄 (全734字)
  6. ^ a b 「高梁川に重油流出 事業所タンクに注入中」『読売新聞』2011年(平成23年)8月21日付大阪本社朝刊35面(岡山)。
  7. ^ a b 石井尚「重油1600㍑流出 総社・高梁川に」『毎日新聞』2011年(平成23年)8月21日付大阪本社朝刊21面(岡山)。
  8. ^ a b c 岡山・総社の工場が爆発 「二次爆発」の恐れで避難指示:朝日新聞デジタル 2018年7月7日
  9. ^ a b c 浸水で?爆発工場 爪痕深く 岡山・総社骨組みあらわ 東京新聞 2018.07.20 夕刊 9頁 社会面 (全419字)
  10. ^ アルミ工場爆発:浸水漏電原因か 岡山・3棟全焼 - 毎日新聞 2018年7月7日
  11. ^ 岡山の工場で爆発、十数人けが 付近の3棟全焼|【西日本新聞】
  12. ^ アルミ工場で爆発=浸水影響か、土砂崩れも-岡山:時事ドットコム
  13. ^ 総社工場爆発 溶解炉冠水が原因か 民家に延焼、住民十数人けが:山陽新聞デジタル|さんデジ
  14. ^ アルミ工場爆発 周辺数百メートルで被害判明 岡山 | NHKニュース 2018年7月8日
  15. ^ 工場:アルミ溶解炉が爆発 3棟全焼 十数人けが 岡山 - 毎日新聞 2018年7月7日
  16. ^ 爆発の工場跡、無残な光景広がる 総社で避難中の住民「隕石か」:山陽新聞デジタル|さんデジ
  17. ^ アルミ工場爆発「上司と連絡」NHK岡山 NEWS WEB 2018年07月24日 13時34分
  18. ^ a b c d e 総社・アルミ工場の事故現場調査 県警など、浸水で水蒸気爆発か 山陽新聞デジタル 2018年07月19日 11時12分
  19. ^ a b 総社の工場爆発 家屋修繕費補償へ 再稼働断念の見通し=岡山 読売新聞 2018.07.24 大阪朝刊 30頁 (全327字)

関連項目