コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

「アマチュア無線」の版間の差分

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
削除された内容 追加された内容
Cewbot (会話 | 投稿記録)
m cewbot: ウィキ文法修正 104: Unbalanced quotes in ref name
226行目: 226行目:
戦前の国際電気通信条約に付属する[[無線通信規則]]([[:en:ITU Radio Regulations|Radio Regulation]]、以下、'''RR'''と略す)では全てのアマチュア局のオペレーターに対し[[モールス符号]]による通信技能を求めていたが、初めてノーコードを容認したのは、1947年(昭和22年)の[[アトランティック・シティ]]国際無線通信会議である。周波数1,000MHz以上のアマチュアバンド<ref name="USHF">1.215-1.300GHz, 2.300-2.450GHz, 3.300-3.500GHz(Reg.2)/3.300-3.900GHz(Reg.3共用), 5.650-5.850GHz, 10.000-10.500GHz</ref>では各国の電波主管庁の判断によりモールス技能を免除できると改正され<ref name="1947RR">昭和23年逓信省告示第489号 『官報』号外 第48号(1948年12月20日) 17ページ<BR>国際電気通信条約附属無線通信規則 第42条第3項第1号<BR>「3 (一) 素人局の機器を運用する者は、モールス字号で本文を伝送し、且つ、音響受信ができることを予め証明しなければならない。もっとも、関係主管庁は、もっぱら、一、〇〇〇Mc/sを超える周波数を使用する局の場合には、この条件を適用しないことができる。」 (1949年1月1日発効)</ref>、1949年(昭和24年)1月1日に発効した。しかし[[電波監理委員会]]は、1950年(昭和25年)6月1日施行の電波法でノーコード・ライセンスである旧二級アマチュア無線技士の操作範囲を、RRに反して「[[空中線電力]]100W以下、周波数50MHz以上、8MHz以下」と定めた<ref name="1950JRR">昭和25年法律第131号 『官報』号外 第39号(1950年5月2日) 3ページ<BR>電波法 第40条<BR>「第二級アマチュア無線技士  空中線電力百ワット以下で五十メガサイクル以上又は八メガサイクル以下の周波数を使用するアマチュア無線局の無線電話の通信操作及び技術操作」 (1950年5月2日公布、1950年6月1日施行)</ref>。これにより旧二級でも3.5MHzや7MHzの無線電話で全国と交信が楽しめたが、アマチュア無線家側にも賛否両論があった<ref name="1950sampi1">梶井謙一氏がJARL理事長という肩書きで電波時報(郵政省電波監理局編)1957年(昭和32年)3月号に書いた記事"電波法はいかに改正されるべきか - アマチュアの立場"(26~27ページ)で、RRに違反している旧二級の是正、米国ノービス級にならい電信のみの三級の新設を提案している<BR>「「素人局の機器を運用する者は、モールス字号で本文を伝送し、且つ、音響受信ができることを予め証明しなければならない・・・」と規定してあるのに、第2級アマチュア無線技士の試験には電信通信術の試験の規定がない。電波法がこの国際法を無視しているかのごとき感じを与えるのは、いかなる理由に基いてであろうか。これは一日も早く国際法に基き、第2級アマチュア無線技士にも電信通信術の試験をおこない、同時に、行うことが出来る無線設備の操作のなかへ、無線電信の通信操作及び技術操作を加えるべきである。 <中略> 28Mc帯を第2級アマチュア無線技士に解放するのが適当ではあるまいか。 <中略> 第3級アマチュア無線技士の資格を増設して、8Mc以下、50Mc以上の周波数を使用するアマチュア無線局の、無線電信の通信操作及び技術操作をなさしめることを切に要望したい。」</ref><ref name="1950sampi2">日本アマチュア無線連盟編 『アマチュア無線のあゆみ 日本アマチュア無線連盟50年史』 CQ出版 1976年 361ページ<BR>「ノビス級については、アメリカにならって電信のみでよい、国際的慣習からしてアマチュアにとってモールスは必須な知識であるとする論と、電話だけで入門する方が興味をひき易く容易である、モールスはこれからの通信方式としていささか古すぎる・・・といった論がかなり先鋭に対立しJARL内部で論議されたものであった。」</ref>。なお日本に追従し、オーストラリアもRRに反するノーコード・ライセンスを1954年(昭和29年)6月より導入している<ref>Lloyd Butler、A history of amateur operators certificate and the morse code requirement in Australia、Amateur Radio, Nov.2011, Wireless Institute of Australia<br>その操作範囲は「空中線電力100W以下、周波数50MHz以上」。電波監視上で判別し易いように、Zから始まる3文字サフィックスのコールサイン(VK#Z**)が指定された。</ref>。
戦前の国際電気通信条約に付属する[[無線通信規則]]([[:en:ITU Radio Regulations|Radio Regulation]]、以下、'''RR'''と略す)では全てのアマチュア局のオペレーターに対し[[モールス符号]]による通信技能を求めていたが、初めてノーコードを容認したのは、1947年(昭和22年)の[[アトランティック・シティ]]国際無線通信会議である。周波数1,000MHz以上のアマチュアバンド<ref name="USHF">1.215-1.300GHz, 2.300-2.450GHz, 3.300-3.500GHz(Reg.2)/3.300-3.900GHz(Reg.3共用), 5.650-5.850GHz, 10.000-10.500GHz</ref>では各国の電波主管庁の判断によりモールス技能を免除できると改正され<ref name="1947RR">昭和23年逓信省告示第489号 『官報』号外 第48号(1948年12月20日) 17ページ<BR>国際電気通信条約附属無線通信規則 第42条第3項第1号<BR>「3 (一) 素人局の機器を運用する者は、モールス字号で本文を伝送し、且つ、音響受信ができることを予め証明しなければならない。もっとも、関係主管庁は、もっぱら、一、〇〇〇Mc/sを超える周波数を使用する局の場合には、この条件を適用しないことができる。」 (1949年1月1日発効)</ref>、1949年(昭和24年)1月1日に発効した。しかし[[電波監理委員会]]は、1950年(昭和25年)6月1日施行の電波法でノーコード・ライセンスである旧二級アマチュア無線技士の操作範囲を、RRに反して「[[空中線電力]]100W以下、周波数50MHz以上、8MHz以下」と定めた<ref name="1950JRR">昭和25年法律第131号 『官報』号外 第39号(1950年5月2日) 3ページ<BR>電波法 第40条<BR>「第二級アマチュア無線技士  空中線電力百ワット以下で五十メガサイクル以上又は八メガサイクル以下の周波数を使用するアマチュア無線局の無線電話の通信操作及び技術操作」 (1950年5月2日公布、1950年6月1日施行)</ref>。これにより旧二級でも3.5MHzや7MHzの無線電話で全国と交信が楽しめたが、アマチュア無線家側にも賛否両論があった<ref name="1950sampi1">梶井謙一氏がJARL理事長という肩書きで電波時報(郵政省電波監理局編)1957年(昭和32年)3月号に書いた記事"電波法はいかに改正されるべきか - アマチュアの立場"(26~27ページ)で、RRに違反している旧二級の是正、米国ノービス級にならい電信のみの三級の新設を提案している<BR>「「素人局の機器を運用する者は、モールス字号で本文を伝送し、且つ、音響受信ができることを予め証明しなければならない・・・」と規定してあるのに、第2級アマチュア無線技士の試験には電信通信術の試験の規定がない。電波法がこの国際法を無視しているかのごとき感じを与えるのは、いかなる理由に基いてであろうか。これは一日も早く国際法に基き、第2級アマチュア無線技士にも電信通信術の試験をおこない、同時に、行うことが出来る無線設備の操作のなかへ、無線電信の通信操作及び技術操作を加えるべきである。 <中略> 28Mc帯を第2級アマチュア無線技士に解放するのが適当ではあるまいか。 <中略> 第3級アマチュア無線技士の資格を増設して、8Mc以下、50Mc以上の周波数を使用するアマチュア無線局の、無線電信の通信操作及び技術操作をなさしめることを切に要望したい。」</ref><ref name="1950sampi2">日本アマチュア無線連盟編 『アマチュア無線のあゆみ 日本アマチュア無線連盟50年史』 CQ出版 1976年 361ページ<BR>「ノビス級については、アメリカにならって電信のみでよい、国際的慣習からしてアマチュアにとってモールスは必須な知識であるとする論と、電話だけで入門する方が興味をひき易く容易である、モールスはこれからの通信方式としていささか古すぎる・・・といった論がかなり先鋭に対立しJARL内部で論議されたものであった。」</ref>。なお日本に追従し、オーストラリアもRRに反するノーコード・ライセンスを1954年(昭和29年)6月より導入している<ref>Lloyd Butler、A history of amateur operators certificate and the morse code requirement in Australia、Amateur Radio, Nov.2011, Wireless Institute of Australia<br>その操作範囲は「空中線電力100W以下、周波数50MHz以上」。電波監視上で判別し易いように、Zから始まる3文字サフィックスのコールサイン(VK#Z**)が指定された。</ref>。


1958年(昭和33年)11月5日、旧二級を廃止して、ノーコード・ライセンスの電話級を新設した際に、郵政省はRRへの配慮から、その空中線電力を10Wに減じた<ref name="1958JRR1">昭和33年政令第306号 『官報』 第9561号(1958年11月4日) 37ページ<BR>無線従事者操作範囲令 第2条<BR>「電話級アマチュア無線技士  アマチュア無線局の空中線電力十ワット以下の無線電話で五十メガサイクル以上又は八千キロサイクル以下の周波数を使用するものの操作」 (1958年11月4日公布、1958年11月5日施行)</ref>。そして電波法改正法の附則第2項により「旧二級資格者は電話級の資格を受けたものとみなす」ことになったが<ref name="1958JPR2">昭和33年法律第140号 電波法の一部を改正する法律 『官報』 第9407号(1958年5月6日) 75ページ<BR>附則 第2項<BR>「2  この法律の施行の際に、現に次の表の上欄の資格を有している者は、この法律の施行の日に、それぞれこの法律による改正後の電波法の規定による同表の下欄の資格の免許を受けたものとみなす。 <中略> [表上欄] 第二級アマチュア無線技士 - [表下欄] 電話級アマチュア無線技士」 (1958年5月6日公布、1958年11月5日施行)</ref>、1963年(昭和38年)11月4日までの経過措置として、いわゆるみなし電話級が新しい二級を受験する際の科目免除や<ref name="1958JPR3>昭和33年郵政省令第28号 『官報』号外 第87号(1958年11月5日) 35ページ<BR>無線従事者国家試験及び免許規則の全部を改定する省令 附則 第12項<BR>「12  旧第二級アマチュア無線技士であって引き続き当該資格を有する者が、この省令の施行の日から五年以内に第二級アマチュア無線技士の資格の国家試験を受ける場合は、予備試験及び学科試験を免除する。」 (1958年11月5日公布、同日施行)<BR>言い換えると、旧二級者に限り電気通信術(欧文45字/分の送受5分間)のみの受験で済んだ。</ref>、引き続き空中線電力100W以下の操作が認められている<ref name="1958JPR4>昭和33年政令第306号 『官報』 第9561号(1958年11月4日) 37ページ<BR>無線従事者捜査範囲令 附則 第2項<BR>「2  改正法附則第二項の規定により電話級アマチュア無線技士の資格を受けたものとみなされた者の行うことができる無線設備の操作の範囲は、この政令の規定にかかわらず、この政令の施行の日から起算して五年間は、なお従前の例による。」 (1958年11月4日公布、1958年11月5日施行)</ref>。
1958年(昭和33年)11月5日、旧二級を廃止して、ノーコード・ライセンスの電話級を新設した際に、郵政省はRRへの配慮から、その空中線電力を10Wに減じた<ref name="1958JRR1">昭和33年政令第306号 『官報』 第9561号(1958年11月4日) 37ページ<BR>無線従事者操作範囲令 第2条<BR>「電話級アマチュア無線技士  アマチュア無線局の空中線電力十ワット以下の無線電話で五十メガサイクル以上又は八千キロサイクル以下の周波数を使用するものの操作」 (1958年11月4日公布、1958年11月5日施行)</ref>。そして電波法改正法の附則第2項により「旧二級資格者は電話級の資格を受けたものとみなす」ことになったが<ref name="1958JPR2">昭和33年法律第140号 電波法の一部を改正する法律 『官報』 第9407号(1958年5月6日) 75ページ<BR>附則 第2項<BR>「2  この法律の施行の際に、現に次の表の上欄の資格を有している者は、この法律の施行の日に、それぞれこの法律による改正後の電波法の規定による同表の下欄の資格の免許を受けたものとみなす。 <中略> [表上欄] 第二級アマチュア無線技士 - [表下欄] 電話級アマチュア無線技士」 (1958年5月6日公布、1958年11月5日施行)</ref>、1963年(昭和38年)11月4日までの経過措置として、いわゆるみなし電話級が新しい二級を受験する際の科目免除や<ref name="1958JPR3">昭和33年郵政省令第28号 『官報』号外 第87号(1958年11月5日) 35ページ<BR>無線従事者国家試験及び免許規則の全部を改定する省令 附則 第12項<BR>「12  旧第二級アマチュア無線技士であって引き続き当該資格を有する者が、この省令の施行の日から五年以内に第二級アマチュア無線技士の資格の国家試験を受ける場合は、予備試験及び学科試験を免除する。」 (1958年11月5日公布、同日施行)<BR>言い換えると、旧二級者に限り電気通信術(欧文45字/分の送受5分間)のみの受験で済んだ。</ref>、引き続き空中線電力100W以下の操作が認められている<ref name="1958JPR4">昭和33年政令第306号 『官報』 第9561号(1958年11月4日) 37ページ<BR>無線従事者捜査範囲令 附則 第2項<BR>「2  改正法附則第二項の規定により電話級アマチュア無線技士の資格を受けたものとみなされた者の行うことができる無線設備の操作の範囲は、この政令の規定にかかわらず、この政令の施行の日から起算して五年間は、なお従前の例による。」 (1958年11月4日公布、1958年11月5日施行)</ref>。


再び緩和が決議されたのは1959年(昭和34年)の[[ジュネーヴ]]無線主管庁会議である。モールス技能を免除できる周波数を1,000MHz以上から144MHz以上に改正し<ref name="1959RR">昭和36年逓信省告示第304号 『官報』号外 特第1号(1961年5月1日) 79ページ<BR>国際電気通信条約に附属する無線通信規則 第41条第3項第1号<BR>「3 (一) アマチュア局の機器を運用する者は、モールス字号による本文の正確な手送り送信及び音響受信ができることをあらかじめ証明しなければならない。もっとも、関係主管庁は、もっぱら、一四四Mc/sをこえる周波数を使用する局の場合には、この条件を適用しないことができる。」 (1961年5月1日発効)</ref><ref name="1959RR2">日本語訳ではアトランティック・シティの時のものと若干の違いがあるが、原文では周波数の数字部分が異なるだけで同じ文</ref>、1961年(昭和36年)5月1日に発効した。しかし郵政省はノーコード・ライセンスである電話級の操作範囲を「空中線電力10W以下、周波数21MHz以上、8MHz以下」と拡大させ、1961年4月10日より施行したため<ref name="1961JPR">昭和36年政令第55号 『官報』 第10281号(1961年3月30日) 733ページ<BR>無線従事者操作範囲令の一部を改正する政令<BR>「電話級アマチュア無線技士の項中「五十メガサイクル以上又は八千キロサイクル以下」を「二十一メガサイクル以上又は八メガサイクル以下」に改める。」 (1961年3月30日公布、1961年4月10日施行)</ref>、RRと電話級の操作範囲の乖離は小さくならなかった。これにより電話級でも21MHzや28MHzの無線電話で世界と交信できる道が拓かれた。
再び緩和が決議されたのは1959年(昭和34年)の[[ジュネーヴ]]無線主管庁会議である。モールス技能を免除できる周波数を1,000MHz以上から144MHz以上に改正し<ref name="1959RR">昭和36年逓信省告示第304号 『官報』号外 特第1号(1961年5月1日) 79ページ<BR>国際電気通信条約に附属する無線通信規則 第41条第3項第1号<BR>「3 (一) アマチュア局の機器を運用する者は、モールス字号による本文の正確な手送り送信及び音響受信ができることをあらかじめ証明しなければならない。もっとも、関係主管庁は、もっぱら、一四四Mc/sをこえる周波数を使用する局の場合には、この条件を適用しないことができる。」 (1961年5月1日発効)</ref><ref name="1959RR2">日本語訳ではアトランティック・シティの時のものと若干の違いがあるが、原文では周波数の数字部分が異なるだけで同じ文</ref>、1961年(昭和36年)5月1日に発効した。しかし郵政省はノーコード・ライセンスである電話級の操作範囲を「空中線電力10W以下、周波数21MHz以上、8MHz以下」と拡大させ、1961年4月10日より施行したため<ref name="1961JPR">昭和36年政令第55号 『官報』 第10281号(1961年3月30日) 733ページ<BR>無線従事者操作範囲令の一部を改正する政令<BR>「電話級アマチュア無線技士の項中「五十メガサイクル以上又は八千キロサイクル以下」を「二十一メガサイクル以上又は八メガサイクル以下」に改める。」 (1961年3月30日公布、1961年4月10日施行)</ref>、RRと電話級の操作範囲の乖離は小さくならなかった。これにより電話級でも21MHzや28MHzの無線電話で世界と交信できる道が拓かれた。

2018年1月29日 (月) 00:41時点における版

shack(シャック)の一例。本来「あばら小屋」を意味する「shack」が、転じてアマチュア無線家が無線機を置く、いわゆる無線室も指すようになった。
無線局の一例
小規模局の一例。机上に無線機が一台。
アンテナ空中線)の一例
ハム同士の交流。

アマチュア無線(アマチュアむせん)とは、金銭上の利益のためではなく、無線技術に対する個人的な興味により行う、自己訓練や技術的研究のための無線通信である[1][2]

日本国においては、運用する為の無線従事者無線従事者免許証)と、電波法に基づき許可(無線局免許状)を受けたアマチュア局(無線機・アンテナ等)が必要である。無資格で使用できる市民ラジオ、特定小電力トランシーバーやデジタル簡易無線などは、”フリーライセンス無線”、”ライセンスフリーラジオ”呼ばれ、アマチュア無線とは異なる分類である。

アマチュア無線の通信(アマチュア無線業務)を行うアマチュア無線技士(アマチュア無線家)を一般的に「ハム」と呼ぶが、誤用としてアマチュア無線自体のことをそう表現することがある(後述)。

概要

無線通信で使用する周波数は、その性質から「人類共通の財産」であり、ごく微弱なものを除き、電波を利用する者(電波利用者)は、全世界の人々と分け合って利用するものとされている。従って使用可能な周波数を電波利用者に割り当て、監理する(周波数を割当・監理する)のは各国の無線主官庁であり、また各国間の周波数割当調整も行う。

アマチュア無線はその割り当てられた周波数を利用する、各国でそれぞれ区分される各種無線業務における「アマチュア業務」のことであり、学究無線業務のひとつである。なお、通信において「アマチュア」とは「私的学究」を意味し「素人」の意味ではない。→#非営利・自由な私的学究無線

アマチュア業務を行おうとする者は、各国主官庁の実施する技術・技能認定試験(無線従事者試験)に合格し、所定の無線従事者免許を受けた後、各国主官庁にアマチュア業務を行う無線局=「アマチュア局」の開設を申請・許可を受けなければならない。なお、アマチュア業務を行う無線従事者 amateur radio operatorham(ハム)と呼ばれることがある。

電波利用、無線業務の区分は国によってまちまちであるが、アマチュア業務については、航空無線船舶無線などと同じく、国際的にほぼ共通したものとされ、他国との通信を制限あるいは禁止している国を除き、基本的に各国のアマチュア局は全世界のアマチュア局との通信が認められている国際無線局である。

国際法、すなわち国際電気通信連合憲章に規定する『無線通信規則』においてアマチュア業務とは「金銭上の利益のためでなく、もっぱら個人的に無線技術に興味を持ち、正当に許可された者が行う自己訓練、通信及び技術的研究の業務(第1条第78項)」と定義され、日本の電波法施行規則においても「金銭上の利益のためでなく、もつぱら個人的な無線技術の興味によつて行う自己訓練、通信及び技術的研究の業務をいう」と定義されている。日本ではともすれば単なる個人の趣味とされがちであるが、直接にアマチュア局を利用しての有償無線通信業務等の実施が禁じられているだけであり、アマチュア業務によって個人の得た知見や技能などを他の事業用無線局の運用や物品製造業務などに有償で用いることは全く自由であり、一般的な概念の趣味とは一線を画す。→#条約・法律上の規定・定義

非営利・自由な私的学究無線

今日の電波利用は「営利」「非営利」のふたつに大別され、例えばアメリカ合衆国であれば、Commercial radioNon-commercial radio とされているが、アマチュア無線は後者である。

電波利用の歴史的経緯より、Non-commercial radio の代表として、各国でアマチュア無線は法的に明確に分類、定義されている。

日本の場合、電波利用は日本国憲法を最上位主根拠として三大別(これを「三大電波利用」と呼ぶ。)されているが、その内訳は日本国憲法第23条学問の自由の下にある「アマチュア業務」、同第21条表現の自由の下にある「放送業務」、通信の自由の下にある、アマチュア、放送業務以外の「業務用無線」である[3][4]

電波利用は、公共の福祉増進のために行われる(日本では電波法第1条)ものであり、本来、金銭利益目的(営利目的)にされるものではない、としている。このため、金銭利益を目的としない(してはならない)ことが明文化されている、アマチュア無線・アマチュア無線局は、世界的にあらゆる点で優遇される、自由度の高い無線局である。

日本では、空中線電力といった点で、事業用無線局との比較をされがちであるが、他の無線局の場合、一つの周波数の割当てを受けるだけでも、総務省に対して膨大な書類手続きなどを必要とし、提供する地域、空中線(アンテナ)の性能にまで細かく制限を受ける。しかし、送信機からアンテナまで、自由に通信・製作し、サービスエリアなどの制限もなく、かつ長波からミリ波まで様々な周波数を「帯域」として広く自由に利用できるのは、今日、私的学究目的のアマチュア無線だけである。

2014年現在、トータルで携帯電話事業者5社分ともいわれる周波数帯域を、たった一人でも自由に利用することが許されているアマチュア業務の性格上、従事者の責任は大きく、アマチュア無線を始めようとする者は全て、まず無線従事者にならなければならない(日本では電波法第39条の13規定)。

限定された周波数を利用する事業用無線局では、従事する者全員に無線従事者免許は要求されないのに対し、数多くの周波数の全てについて、無線設備、すなわちアンテナや送信機の設計・製作、これらを用いての通信が認められているアマチュア無線の場合、無線従事者免許証(「従免」と略称される。)を所有しない者が従事することはできない。この免許保持者が『アマチュア無線技士』で、日本では、第一級から第四級までの4つに区分されている。

なお日本では、一部の事業用無線従事者免許でアマチュア業務を行えるが、これは「アマチュア無線技士の操作の範囲に属する操作」とされる日本国内のみでの特例であり、日本国外でこの免許でアマチュア局を開設・運用しようとすると、国家によっては拒否されたり無免許とみなされることがある。

アマチュア無線技士は、アマチュア局無線局免許状(「局免」と略称される。)を受け、免許人となってアマチュア業務を開始できる。

事業用無線局は、その殆どが個人ではなく法人が開設するものであり、法人または経営責任者(代表取締役など)が無線局の免許人となり、業務を行うのに必要な無線従事者は、「排他的に確保(従業員として雇用する、派遣会社から派遣を受けるなど)」される。

条約・法律上の規定・定義

国際法および各国の法律で、アマチュア無線は「個人的な無線技術の興味によって行う自己訓練、通信及び技術的研究の業務」と規定されている。

国際電気通信連合憲章

国際電気通信連合憲章に規定する『無線通信規則』」における規定

アマチュア業務
金銭上の利益のためでなく、もっぱら個人的に無線技術に興味を持ち、正当に許可された者が行う自己訓練、通信及び技術的研究の業務(第1条第78項)

各国

日本

電波法施行規則の定義

アマチユア業務
金銭上の利益のためでなく、もつぱら個人的な無線技術の興味によつて行う自己訓練、通信及び技術的研究の業務(同規則第3条第1項第15号)
アマチユア局
金銭上の利益のためでなく、専ら個人的な無線技術の興味によつて自己訓練、通信及び技術的研究の業務を行う無線局(同規則第4条第1項第24号)

促音、拗音の表記は原文ママ

歴史

世界の初期

無線通信の黎明期、実用開始前は、グリエルモ・マルコーニに代表される個人の研究者が、自らの技術的興味を満たすために無線機器を作って無線通信を行っていた。スコットランドジェームズ・クラーク・マクスウェルにより、理論的に予想されていた電磁波(電波)の存在が確認されたのは、1888年のハインリヒ・ヘルツの実験によるが、この時点ではまだ通信には用いられず、実際の利用は1895年、ロシアアレクサンドル・ポポフ 、同年イタリアのグリエルモ・マルコーニの無線電信実験の成功以降である。

その後、急速に電波の商業・軍事などへの利用が始まり、各国で電波利用に関する法律が制定され、アマチュア無線もその下に置かれるようになった。初期の商業・軍事無線通信などには、長・中波帯域が大電力で使われ、混雑した状況となり[5]、アマチュア無線家には、当時あまり使用価値がないと思われていた短波の利用しか認められなくなった[5]。しかし、アマチュア無線家らは緻密な計画や訓練によって短波の有用性を見出し、1923年11月27日に小電力による大西洋横断通信を成功させた[5]

この功績などが無線界で認められたことをきっかけとして[5]、その後の国際電気通信連合(ITU)での周波数分配会議などにおいて、アマチュア無線用に専用周波数帯が割り当てられるようになった[5]タイタニック号沈没事件を契機として、国際的な電波管理の枠組みが構築され、電波の国家管理が始まった後の時代においても、アマチュア無線の保護には格別の配慮が図られ、幅広い周波数帯の利用が認められ、今日でも長波からマイクロ波までの様々な周波数が、アマチュア無線に割り当てられている[3][6]

日本の初期

太平洋戦争まで

日本では、1915年(大正4年)11月1日に施行された無線電信法第2条第5号により、無線電信または無線電話に関する実験に専用する目的で施設する私用無線電信無線電話について、逓信大臣の許可により開設できることになった[7][8]。しかし、当初許可されたのは無線機器製作業者や大学・専門学校による学術研究や機器に関する実験のための私設無線電信のみであった[9][10][11]

個人による無線科学の学術研究や機器に関する実験のための施設、いわゆるアマチュア無線が法的に最初に許可されたのは1922年(大正11年)である[12][13]。2月に濱地常康(東京一番・二番)[14]、次いで8月には本堂平四郎(東京五番・六番)[15]に私設無線電話施設が許可された。また、翌1923年(大正12年)4月には安藤博に私設無線電信無線電話施設(JFWA、東京九番)が許可された[16](同年11月には第2装置増設(JFPA、東京十九番)が許可された[17]。)。大正年間に許可されたのはこれら3施設のみであった[12]

1920年代前半になるとアンカバー局(無免許の無線局)による活動が東京、大阪、神戸などでしだいに活発になり、1926年(大正15年)6月には37人の盟員によって日本素人無線聯盟(JARL、現・日本アマチュア無線連盟)が設立された[18][19]

1927年(昭和2年)になると、短波長が割り当てられた無線局が次々に誕生した。4月には楠本哲秀(JLZB)[20]と有坂磐雄(JLYB、有坂磐雄)[21]、5月には國米藤吉(JMPB)[22]、9月には草間貫吉(JXAX、草間貫吉)[23]に私設無線電信無線電話施設が許可された。

1930年(昭和5年)にはすでに逓信省によって「アマチュア無線」という語が使用されていたが[12]、無線電信法第2条第5号により許可された施設に対する正式な名称はまだなかった[7]。しかし1934年(昭和9年)1月に施行された私設無線電信無線電話規則の第3条で、無線電信法第2条第5号により施設する私設無線電信無線電話に対して「実験用私設無線電信無線電話」の語が正式に与えられた[24](「私設無線電信無線電話実験局」という語は通称)。ただし、これは無線機器製造業者による機器実験のための施設を含むものであった(完全に「非営利私的学究無線」と位置付けられ、正式に「アマチュア無線」の呼称になったのは、太平洋戦争後、新たに制定された現行電波法からである[3])。

実験用私設無線電信無線電話は国家総動員法による体制に組み込まれていき、各地で「無線義勇団」「国防無線隊」が結成された。1941年(昭和16年)には個人による実験施設数がおよそ330局になっていたが[5]、同年12月8日の太平洋戦争開戦に伴い、同日をもって、実験用私設無線電信無線電話による電波発射は禁止された[25]。以降、アマチュア無線家はその技術・技能ゆえに、最前線の通信隊あるいは国内での軍用通信機の設計・製作に終戦まで従事し(或いはさせられ)、少なからぬアマチュア無線家が帰らぬ人となった。

太平洋戦争後

太平洋戦争敗戦すると、すぐに、第二次世界大戦で生き残ったアマチュア無線家による、日本におけるアマチュア無線の再開運動が始められた[5]八木秀次といった著名な科学者・技術者も行った。)が、国の完全掌握下にあった日本の電波の全ては、そのまま直ちに占領軍の管理下に置かれ、アマチュア業務用の周波数についても、占領軍およびその関係者のアマチュア業務用として占有された。GHQは、日本語で行われる通信内容の検閲が困難、対立、朝鮮戦争といった理由より再開を認めず、日本のアマチュア無線はサンフランシスコ平和条約が発効し、国際法上、連合国との戦争状態が終結し、日本が完全に主権を回復した1952年(昭和27年)にようやく再開された。(1950年(昭和25年)施行の電波法で「アマチュア局」という名称や資格制度、国家試験の内容も定められたが、実際の再開は1952年であった[5]。)

日本では、1958年(昭和33年)11月に電信級・電話級の初級資格が設置され、1966年(昭和41年)には、これが養成課程講習会の修了試験合格者にも与えられるようになり、ハードルが低くなったためにアマチュア無線家の爆発的な増加をもたらした[5]。その後、高度経済成長と、科学技術に対する国民の高い関心を背景として、日本のアマチュア無線は発展し、1970年代には「趣味の王様」と呼ばれるほどのブームとなり、1980年代には米国を抜いて、世界一のアマチュア無線人口を擁するに至った[3]

現代

今日のアマチュア無線は直接的に広く実用できる新しい無線通信技術などを開発して世界に提供するという部分での役目は終えている。しかし、しばしば争奪戦が繰り広げられるほど貴重な資源である周波数のうち、多くの周波数が今日においても、自由に使うことのできる「周波数帯」(これは軍隊も同じで、どの周波数にどの局が現れるかは担当者の一存)としてアマチュア無線に割当てられているのは、学究目的であるアマチュア無線が、今日でも科学技術に従事する人材の継続的育成に大きな役割を果たし続けていることによる。電気・情報分野の第一線で活躍している科学者技術者には、現役あるいは元アマチュア無線家が多く、事業用無線通信業務を行っている会社も、アマチュア無線クラブを擁していることが多い。(電話会社や各放送局、無線機器メーカーや通信機事業部を持つ電器メーカーのアマチュア無線クラブなどは、その規模も大きい。)[6]

米国では、公共サービスとして地域パレードでの通信を担うなど、趣味の範囲を超えて運用されることがある。米国では開拓時代から現代までボランティアが大きな役割を果たしており、ボランティア活動にアマチュア無線が貢献してきたことから、国際法でのアマチュア無線の定義の範囲を超える運用(臨時に・無償で公衆網を接続し有線通信の無線中継局とするなど)を国内法で認めている。ちなみに、米国のアマチュア無線家の全国団体は『アメリカ無線中継連盟 ARRL 』というが、これはボランティア活動のための通信を中継して広い国土に伝えるために、アマチュア無線家を組織化したことに由来する。

アマチュア局の現状

日本の現状

最盛期には約135万局あったアマチュア無線局が、1995年(平成7年)を境に減少に転じ、2015年(平成27年)には約43万局となった[26]

この原因として、以下の様な理由が挙げられている[27]

  • 少子高齢化による自然減。
  • 公衆電気通信網(商業通信)と異なり、元来の目的が異なるアマチュア局の通信には多くの制限があり、内容は軽微で公衆電気通信網に依らない私的事項に限るとされ、営利目的、第三者の依頼、また暗語などの使用も禁じられている(そのような用途で無線通信を使いたい人は業務無線簡易無線の秘話機能を使用しなければならない)。そのため通常の電話のような利用はできず、誰でも簡単に使える携帯電話の登場と普及により、以前はアマチュア無線を簡単な電話代わりとしていた層が廃局した。
  • 無線通信にはそれなりの設備が必要で、遠距離と通信しようとすれば大がかりで複雑なものとなる。広い私有地を確保し難い日本では、個人で高能率の大掛かりな空中線を所有・管理することが難しい。また大出力とすると、近隣電波障害対策、電波の強度に対する安全施設の構築が難しくなるため、手軽に多目的に使えるインターネットの登場と普及により、見知らぬ相手や外国人と交流したい場合は、電子掲示板チャットFacebookTwitterなどを利用するようになった。
  • これらの事情から、秋葉原を中心に日本各地に存在したアマチュア無線関連の専門店が多数閉店し、家電販売店も収益の上がらないアマチュア無線部門から撤退(あるいは開店当初から扱わず)、機器を購入したり、目にする場が減った。またアマチュア無線用機器の生産・販売数が減って価格が上昇し、開局のハードルが高くなった[27]

世界の現状

  • アメリカ合衆国のアマチュア局数は、1990年頃から一時、漸減傾向となり、1994年には約65万局となっていたが、その後再び漸増傾向に転じ、2009年現在、約69万局と過去最高数になっている。またアメリカ合衆国では、2005年以降、10代を中心とした若年アマチュア無線家の増加がはっきりしてきていることなどから、ARRLでは2011年現在、「静かなブームになっている。」と分析している。
  • またヨーロッパ各国の状況も、横ばいか漸増傾向にある[28][29]

免許制度

アマチュア無線(アマチュア業務)を行うには、無線従事者免許と、その業務を行う国などでアマチュア局の免許を受ける必要がある。 電波監理は国家単位で行われるため、いずれも国によって制度に違いがある。

無線従事者免許は、概ねアマチュア業務を行うために必要な「アマチュア無線技士」などとして他の無線従事者免許と独立しており、アマチュア業務を行うに必要な基本概念の理解と基本知識の取得を証明する試験に合格した者に与えられる [30]。 日本など、他の無線従事者免許でこれを満たすならば、その無線従事者免許をもってアマチュア業務を行うことができるとしている国もある。

無線局免許は、無線従事者免許と完全に分離されている国もあれば、米国のように一体としている国もある。

アマチュア局には呼出符号(コールサイン)が指定されるが、国際通信を行う無線局であることから、国籍が判別できるように最初の1ないし3文字は、ITUにより各国に分配された国際呼出符字列による。

「国際呼出符字列分配表」については「世界のコールサイン割り当て一覧」を参照

各国の免許制度

アマチュア無線
英名 Amateur radio
実施国 世界の旗 世界
資格種類 国家資格
分野 無線
試験形式 筆記試験
認定団体 郵便・電気・情報通信主管庁
後援 国際電気通信連合
根拠法令 国際電気通信連合憲章
国際電気通信連合条約
公式サイト Amateur services page(英語)
ウィキプロジェクト ウィキプロジェクト 資格
ウィキポータル ウィキポータル 資格
テンプレートを表示

日本

アマチュア無線に限らず、無線の免許には、

  • 必要な技術・技能・法律知識を持っている人に与えられる無線従事者免許
  • 必要な技術基準を満たしている無線設備に与えられる無線局免許

の二つがあり、無線局免許を受けた無線設備を、無線従事者免許の所有者が運用あるいは監理することが求められる。

事業用無線局の場合、無資格の者でも無線設備の操作などが認められる[31]が、アマチュア局の場合、所定の無線従事者免許および後述の相互運用協定に掲げる国の免許を保有する者以外は認められない。

アマチュア無線技士の資格は、下位から次の4種類がある。どの級からでも受験でき、年齢制限もない。

  • 第四級アマチュア無線技士
  • 第三級アマチュア無線技士
  • 第二級アマチュア無線技士
  • 第一級アマチュア無線技士

このほかに、第三級海上無線通信士以外の無線通信士および陸上無線技術士は、アマチュア無線技士と同等以上の技術・技能・法知識を持っているとみなされ、アマチュア業務を行える。

詳細は「総合無線通信士#操作範囲」、「海上無線通信士#操作範囲」、「航空無線通信士#操作範囲」および「陸上無線技術士#操作範囲」を参照

日本のアマチュア局は「国際無線局」であり、無線局としては最上位にあり[32]アマチュア局の開局手続きなどは簡略化されてはいるが、「本式の」国際無線局であるアマチュア局の開局、また本式の運用や監理を要求されるアマチュア局の免許人となるのはハードルが高い[33]

なお144MHz帯および430MHz帯のアマチュア用の無線機は不法無線局に使われやすいものとして、1994年より指定無線設備とされている。これらの販売業者は、指定無線設備の“使用には免許が必要”などと告知する義務がある。

個人局と社団局

アマチュア局の無線局免許には

  • 個人が開設するアマチュア局に与えられる個人局(1950年より)
  • 団体が開設するアマチュア局に与えられる社団局(1959年より)通称はクラブ局

の二つがある。社団局は、学校や職場、地域などのアマチュア無線クラブが開設する。博物館などの科学教育施設や福祉施設などに設置されていることもある。

呼出符号(コールサイン)

基本的に「JA1A××」のように、(日本に分配された国際呼出符字列の頭2文字)+(地域番号の1数字)+(2または3英字)で構成される。 記念局などの地域番号以降は、この限りではない。

空中線電力

電波法施行令に第一級アマチュア無線技士が操作できる空中線電力の制限はないが、国際協議の結果を受けての電波法関係審査基準に、日本の無線局の空中線電力は1kW以下までとされており[34]、アマチュア局もこれに従う。1kWを超過する空中線電力のアマチュア局の開設は不可能ではないが、当該アマチュア局の業務に必要な最小限度の電力だと国際的にも認められるような、正当で明確な理由の説明が必要になる[35]。 その場合、アマチュア局の開設の可否そのものが国際的な判断を求められるため、各総合通信局沖縄総合通信事務所を含む。以下同じ。)決裁ではなく、本省、すなわち総務省総合通信基盤局回付、つまり他の業務用大電力局、送信所などと全く同じく総務大臣直接免許となり、個人所有の無線局ではおよそ不可能な相当の困難が伴う。実際、短波以外における大出力が月面反射通信専用設備以外で許可された例はほとんど無い[36]

ゲストオペレータ制度

アマチュア業務を行うことができる資格者(ゲスト)が、一定の条件下で他人(ホスト)のアマチュア局の運用をすることができる制度である。

米国

下位資格から順に次の種類に分かれている。所管は連邦通信委員会 (en:U.S. Federal Communications Commission)。

  • ノビス(Novice)級(廃止)
  • テクニシャン(Technician)級
  • ゼネラル(General)級
  • アドバンスト(Advanced)級(廃止)
  • アマチュア・エクストラ(Amateur extra)級

2000年にノビス級、アドバンスト級は廃止されたが、これらの試験および新規の資格付与を行わないという意味であり、当該資格を既に取得している者には影響は及ばない。

試験はElementと呼ばれる単位に分かれている。従前はテクニシャン級以外はモールス符号の試験が課されたが、2000年にElement 1に簡素化・統合され2007年に廃止された。

  • Element 1(モールス)(廃止)5語/分の速度のモールス符号を受信し、内容に関する質問に10問中8問の正解、または25文字連続の正確な書取りで合格。
  • Element 2(テクニシャン級)35問中26問で合格。
  • Element 3(ゼネラル級)35問中26問で合格。
  • Element 4(エクストラ級)50問中37問で合格。
    • これらは、四年周期で見直される。

試験は最下位資格から受験しなければならない。すなわち、

  • テクニシャン級の取得には、Element 2のみ
  • ゼネラル級の取得には、Element 2とElement 3
  • エクストラ級の取得には、Element 2からElement 4のすべて

に合格せねばならない。ただし、条件が揃えば一日で全てを受験することも可能である。

従前はElement 2とElement 1に合格した場合には上位資格に許可される周波数帯域の一部が運用できた。

  • これはTechnician plus、Technician with HFなどと呼ばれていた。
  • Element 1の廃止に伴いこの範囲はテクニシャン級に組み込まれている。

試験はVolunteer Examiner (ボランティア試験官、VEと略す。)と呼ばれるVolunteer Examiner Coordinator(ボランティア試験官コーディネーター、VECと略す。)により認定を受けた三名以上のアマチュア無線資格者により実施される。

  • 試験は米国外でも実施されており、米国で郵便を受けられる住所がある限り、全世界で受験可能である[37]
  • 試験問題は公開されている[38]

日本と比べて、初級資格でも比較的大電力の空中線電力を扱える(級を問わず最大1.5kW)一方、周波数帯の制限は厳しく、日本の局がFCCの監視局から郵政省(当時)を通じて周波数逸脱を警告された例[39]もある。

資格区分によってコールサインを変えることができ、資格外運用を容易に判別できる上級資格を取得するモチベーションを刺激される制度である。 ただし、コールサインの変更は資格保持者の任意であるため、コールサインのみでの資格の判断が困難な場合[40]がある。資格者の情報はデータベース化されていて誰でも参照できる。

また、日本でいう無線従事者免許証と無線局免許状が一体となった包括免許方式であるため、資格内での運用である限り無線機の登録などは必要なく、しかも取得の定義がFCCのUniversal License System(ULS)サーバに入力された時点なので、無線機が手元にあれば、登録確認次第、すぐに運用を開始することができる。

2015年2月17日をもって、希望しない限り免許証が発行されないと改正された。必要な場合は、FCCに発行を申請するか、前述のULSより公式写本(Official Copy)を各自プリンタで印刷する。

ノーコード・ライセンス

かつての日本の免許制度の特徴として、電波法制定以来、入門級(第四級、従前は旧第二級[41]または電話級)はモールス符号による実技試験がないノーコード・ライセンスだったことが挙げられる。

戦前の国際電気通信条約に付属する無線通信規則Radio Regulation、以下、RRと略す)では全てのアマチュア局のオペレーターに対しモールス符号による通信技能を求めていたが、初めてノーコードを容認したのは、1947年(昭和22年)のアトランティック・シティ国際無線通信会議である。周波数1,000MHz以上のアマチュアバンド[42]では各国の電波主管庁の判断によりモールス技能を免除できると改正され[43]、1949年(昭和24年)1月1日に発効した。しかし電波監理委員会は、1950年(昭和25年)6月1日施行の電波法でノーコード・ライセンスである旧二級アマチュア無線技士の操作範囲を、RRに反して「空中線電力100W以下、周波数50MHz以上、8MHz以下」と定めた[44]。これにより旧二級でも3.5MHzや7MHzの無線電話で全国と交信が楽しめたが、アマチュア無線家側にも賛否両論があった[45][46]。なお日本に追従し、オーストラリアもRRに反するノーコード・ライセンスを1954年(昭和29年)6月より導入している[47]

1958年(昭和33年)11月5日、旧二級を廃止して、ノーコード・ライセンスの電話級を新設した際に、郵政省はRRへの配慮から、その空中線電力を10Wに減じた[48]。そして電波法改正法の附則第2項により「旧二級資格者は電話級の資格を受けたものとみなす」ことになったが[49]、1963年(昭和38年)11月4日までの経過措置として、いわゆるみなし電話級が新しい二級を受験する際の科目免除や[50]、引き続き空中線電力100W以下の操作が認められている[51]

再び緩和が決議されたのは1959年(昭和34年)のジュネーヴ無線主管庁会議である。モールス技能を免除できる周波数を1,000MHz以上から144MHz以上に改正し[52][53]、1961年(昭和36年)5月1日に発効した。しかし郵政省はノーコード・ライセンスである電話級の操作範囲を「空中線電力10W以下、周波数21MHz以上、8MHz以下」と拡大させ、1961年4月10日より施行したため[54]、RRと電話級の操作範囲の乖離は小さくならなかった。これにより電話級でも21MHzや28MHzの無線電話で世界と交信できる道が拓かれた。

また1970年代に、電話級を取得した学生に人気があった50MHzバンドの運用さえも、「144MHz以上のアマチュア局のオペレーターに限りモールス技能を免除できる」というRRの規定に反していた。この「144MHz以上」の規定は20年間続き、1982年(昭和57年)1月1日より「30MHz以上」へ緩和された[55]。アメリカではRRに準拠した50MHzバンド以上で運用できるノーコード・ライセンスを1991年(平成3年)2月14日より導入した[56][57]

そして2003年(平成15年)のジュネーヴ世界無線通信会議では、モールス符号による通信技能をアマチュアに課すか否かは各国の電波主管庁の判断に委ねられることになり[58]、2005年(平成17年)1月1日に発効した。日本のノーコード・ライセンスは半世紀を経てようやくRRに準拠したのである。最終的に第三級以上に課せられてきたモールス符号の実技試験は2011年(平成23年)10月1日に全廃された。廃止後は、欧文モールス符号の知識を法規の科目内で取り扱うものとしている。また各国でも次々とノーコード・ライセンスが導入されている。

相互運用協定

アマチュア局は、電波を発射する場所の中央政府の規制を受ける(属地主義)ため、原則として当該国のアマチュア無線の許可(ライセンス)を受ける必要があるが、一部の国々との間では、相手国のアマチュア資格を自国で受け入れる代わりに、自国のライセンスで相手国でも運用ができるように、政府同士が相互運用協定を締結している場合がある。

日本から見た相互運用

告示 [59] に定める国と相互運用協定を締結している。

外国の資格による日本での運用は、アマチュア局の開局手続き#資格を、日本の資格による外国での運用は、アマチュア無線技士#外国での運用を参照のこと。

なお、臨時に告示された場合は相互運用協定を締結していない国の資格者でも運用できる。

相互運用協定を締結していない国においても、恒常的に日本の資格を認めて運用を許可したり、発展途上国の場合は、許可に関する規定が整備されていないことも多く、交渉により特別に許可する場合がある。 基本的に事前に申請し許可を受ける必要がある。書類の審査のみで、試験は課されないことがほとんどである。 例として、

  • パラオ共和国は、日本のアマチュア無線技士免許を受けていれば、日本での級に関係なく最上級ライセンスが1年間認められ、持ち帰ることを条件に無線機を持ち込める。
  • 中華人民共和国は、無線機の持込みはできないが、グループ運用局に訪問しゲストとして運用を2年間許される。

相互運用協定が締結されているわけではないので、逆にこれらの国々の人が日本で運用することはできず、厚意によるものであるから、爾後、許可が出ることを保証されているわけではない。

通信方式

アマチュア無線で使われる通信方式(電波型式)には以下のようなものがある。

電話

音声による通信(電話
短波では、占有帯域幅が狭く遠くまで電波の届くSSBが、VHF以上では音質の良いFMが使われることが多い。また自作が容易なことから、周波数に余裕のある50MHz帯や28MHz帯あるいは日本では2009年に拡張された7MHz帯の上端部でAMも愛好者を中心に使用される。符号分割多元接続D-STARC4FMデジタル変調方式による音声通信も、UHF帯以上の一部で行われはじめている。

電信

モールス信号を打つための電鍵(キー)の一例。接点が2つある高速入力用。この機種は単独では使えず、マイクロコンピュータを内蔵したエレクトロニクスキーヤ(自動式符号送出機)に繋いで使うことが絶対条件になる。
符号による通信(電信
手送りのモールス符号 (CW)
モールス符号による通信は、デジタル技術に取って代わられ、他業務では一部の海事や軍事用途を除いて廃止されているが、アマチュア無線では熱心な愛好者が多い。
  • 最大占有周波数を500Hz程度しか必要としないため、混信に対して非常に強い。
  • 同じ理由で、電波が弱くても明瞭に通信ができる(音さえ聞こえればいい)。
  • 最低限、世界共通のQ符号略符号を並べて打鍵するだけで交信が成立することから、英語や外国の言語を喋るのが苦手でも、世界との交信にあまり困らない。
  • 和文符号を使うと電文は、片仮名による普通文となる。ベテラン層に愛好者が多く、国内との通信が主体となる3.5・7・144・430MHz帯の利用が多い。
印刷または画面表示によるラジオテレタイプ (RTTY)
印字通信である。古くは機械式のテレタイプ端末と、これを無線装置に接続する変復調器などによって構成されていた。今日ではパソコンのサウンド入出力端子に、簡単なインターフェイスを介して無線装置を接続し、ソフトウェアMMTTYなど)でRTTYの送受信ができるシステムが作られ、日本語マルチバイト文字通信も可能なPSK31といった通信方式も登場したことにより運用しやすくなっている。
自動打鍵によるもの[60]
アマチュア無線において、帯域が特に狭く、雑音や送信電力の条件も厳しい135kHzや475kHz帯を中心に、帯域幅を手送りよりも、さらに絞った自動打鍵が行われている。
  • 短点ないしはこれに相当する打鍵の時間を数秒から数十分程度まで延ばすことにより、打鍵時の帯域広がりを抑えて帯域幅を数Hz以下に圧縮する方法が主流。極めて狭い帯域幅を実現するため、ppm単位の周波数精度が要求される。
  • モールス符号に基づく通信方式としてQRSS[61]やDFCW、モールス符号以外の符号化を使用するものとしてWSPRやOpera[62]、Slow-hellなどがある。
  • 打鍵時間や交信時間の長さゆえに聴覚による受信は事実上不可能であり、受信はもっぱらソフトウェアによる自動処理が使用されている。しかし、日本においては、少なくともQRSSおよびOperaは電波型式をA1Aとしているので、送信には第三級以上が必要となる。

なお,第4級アマチュア無線技士の場合、DFCWおよびSlow-Hellは多周波通信と見なして電波形式をF1Bとして許可される。

  • 自動受信が必須なことから、ビーコンを用いた受信レポートの自動収集が行われている。

特殊モード

モードとは電波型式のことで、この節で掲げるのは電信・電話以外のものである。

コンピュータによるデータ通信(パケット通信
パソコン通信インターネットが利用されている。
アマチュアテレビ (ATV)
デジタルテレビ放送と同一規格の映像(国際宇宙ステーションとのDVB)をやり取りするものと、SSTV(低速度走査=スロースキャンテレビ)と呼ばれるものがある。前者は周波数帯域を広く(最大占有周波数6MHz)必要とするため、UHF以上が利用される。日本では従前は430MHz帯にも免許されたが、1992年以降はバンドプランの法制化により[63]、1200MHz帯以上で免許される。後者は「テレビ」という名称が付いてはいるが、実際には1枚の静止画像を30秒かけて送信するものである。その代わり必要とする使用する周波数帯域は音声と同程度(2.5kHz程度)であるため、短波を使用して海外局とのやり取りも楽しめる。近年ではパソコンのサウンド入出力端子に無線装置を接続し、ソフトウェアのみでSSTVを実現するシステムなどが作られている。
アマチュアFAX
古くからあるが事例は少ない。パソコンの普及に伴いサウンド入出力端子に無線装置を接続し、ソフトウェアのみでアマチュアFAXを実現するシステムなどが作られている。

楽しみ方

アマチュア無線家によって楽しみ方はさまざまにある。以下は代表的なもの。

交信を楽しむ

ラグチュー

いわゆる雑談である。英語の「Chew the rag(チュー・ザ・ラグ=ぼろ切れを噛む)」を語源とし、転じて、くだらない話や他愛もないお喋りを止めどなく続けることを指す。 アマチュア無線では、国内、国際法ともに重要な内容(例えば絶対的に秘密を守らなければならないような内容)を含む通信を禁じているので、基本的に第三者に聞かれてもよい程度の世間話、すなわち「友人同士の雑談」のみであり、また見知らぬ友人を求める趣味でもあることから、ラグチューはアマチュア無線の基本のひとつということになる[2]携帯電話の登場と普及前、友人とのラグチューを目的としてアマチュア無線を始める者も少なくなかった。

遠距離通信 (DX)

DXとは、短波においては海外、VHF以上では見通し距離外の局との通信を目指す、遠距離通信のことをいう。

  • 「DX」とは、英語の"Distance"を略したものである。
  • 1937年には既にARRLが「DXCC」というアワード(後述)を制定している。

単に空中線電力を上げるだけでは受信はおぼつかなく、交信が成立しなくなることもあるため、高利得のアンテナが必要となる。またトランシーバではなく、送受信機を別にし、アンテナもまた送信・受信で独立させるといった高度なシステムと技量も必要になる。良好な電波伝搬を得るため、適した場所に移動して運用することもある。

国外に設備とキャンプ装備一式を担いで行き、無人島や定住アマチュア無線家のいない地域から電波を発射して全世界からの交信リクエストに応える「DXペディション(DX-pedition)」(DX+Expedition、冒険)というものもある[64]。一部の発展途上国では、民間人の短波無線機使用に対し、非常に厳しい目を向ける政府もあり(スパイ活動防止のため)、こういう国家では、まず許可取得に非常に苦労することになる。

世界のアマチュア無線家と親しくなると、交信相手と直接面会することもある。アマチュア無線家が民間外交官と呼ばれる所以である。なお、無線で話している者同士が直接面会することをアイボールQSO(目玉で交信を意味する)という。インターネットオフラインミーティングと同じものであるが、アマチュア無線のアイボールQSOは、国境を越えることが珍しくない[64]

コンテスト

アマチュア無線のコンテストとは、参加者同士で得点を競う競技である。

アワード

アマチュア無線のアワードとは、積み重ねた交信が決められた条件を満たしたときに与えられる賞である。

QSLカード

アマチュア無線では、交信をすると、その証明となるQSLカード(交信証明書)を交換する慣習がある。 これは、法的な義務ではない

自作を楽しむ

アマチュア無線は、技術研究を楽しむ趣味であるため、法的にも無線設備を全て自分で作り、検査に合格して運用することが許されている。無線黎明期は、無線設備の全てを自作して無線通信を行っていた[3]

今日では、検査に係る無線設備(無線機本体)などは、技適マークの市販品を用い、簡易な免許手続で開局し、アンテナや電源などの検査に関わらない周辺機器を、必要に応じて自作するのが一般的であるが、敢えて無線機(送信機)本体の自作に挑戦し、スプリアス検査などに合格して運用するアマチュア無線家もいる。

外に出ることを楽しむ

アマチュア無線は無線機を使って他者と対話するものであるため、ともすれば自宅などのシャック(無線室)にこもりがちであるが、屋外に無線機やアンテナを持ち出す移動運用の楽しみ方もある。

モービル

モービルとは、自動車やオートバイに小型の無線機とヘッドセットや特殊な送受システムを組み込み、移動して通信実験を行うことを指す。 運転しながら通信操作を行うことを考え、安全運転のために様々な研究が重ねられてきた(パトカーや消防車は複数乗務。タクシー運転手は走行中にタクシー無線のマイクを握ることは絶対にない。)が、携帯電話やカーナビゲーションシステムの登場と運転中の使用等による交通事故が問題となり、道路交通法第71条第5号の5によって併せて規制対象となった。 しかし規制前よりヘッドセットや各種分割型ワンタッチスイッチなどがモービルでは研究・実現されており、規制後も、モービル通信法のノウハウとともにそのまま使用可能である [65]

フォックスハンティング

受信機を手に目標物を探すARDFの競技者
ARDF世界大会(2004年チェコ)にて

隠れている電波発信源(送信機)を探し出すことである。 通常、小形で鋭い指向性を有する空中線を高感度の受信機にセットし、これを用いて送信機を探し出す。 古くからアマチュア無線家の間で競技として行われてきた。 決められたエリア内に置かれた送信機を全て探し出すまでの時間を競う。 通常、送信機は物陰などに隠すか何かに偽装して置かれるが、競技によってはスタッフが所持して移動することもある[66]

二点以上の場所から電波の到来方向を調べることにより、無線局の位置を特定できることから従来、沿岸地域にある複数のアマチュア局が、遭難信号を送出している船の位置を共同で探索し、救助に協力することもあった。 またテレビ・ラジオなどに受信障害を発生させている発信源の発見と除去に、アマチュア無線家が自らのフォックスハンティングの技術をもって協力することもある[67]

信号を発しているポールを求めて、これをオリエンテーリングに似たルールで競技化したものがARDF (Amateur Radio Direction Finding)である。 ARDFは自分の足で野山を走り回るハードなスポーツであるという点で、他のアマチュア無線の楽しみ方と大きく異なる。

自然物・自然現象を利用して通信する

自然物・自然現象を利用した通信は不安定であるため、絶対安定した通信が条件となる商業通信では嫌われるが、これに敢えて挑んで不安定さを排除する方法を見出し、「使い物にならない」と考えられていた周波数を事業用として可能にしたなどの歴史的業績がある。今日でも熱心に研究を続けているアマチュア無線家は多い。

電離層反射通信

短波が電離層と地表との間で反射を繰り返しながら遠方まで伝搬する性質を用いて遠距離通信を行うのが電離層反射通信である。電離層には下層から順にD層、E層、F層という名前がつけられており、各層の性質を利用して通信を行う。初夏から夏にかけ、E層付近にスポラディックE層(Eスポ)と呼ばれる高密度の電離層が局地的に発生することがある。これはVHFまでの電波を反射するため、ラジオやテレビにとっては混信原因となる迷惑者だが、アマチュア無線家にとっては普段交信できない地域と交信するチャンスである。Eスポが発生するかどうかはある程度予測可能であり、また太陽活動の変動に伴い「当たり年」となることもあるため、これを狙って通常その周波数帯では不可能な遠距離通信を試みることができる。なお太陽活動はほぼ11年周期で変動しているが、その程度にはむらがあるため、特にSSN(Sun Spot Number, 太陽黒点指数)が太陽活動の状況を知るためのものとして重視されている。

流星散乱通信

宇宙空間の微細な塵が大気に突入する際に大気中の原子を電離させると、一時的に微小な電離層が発生したようになり、そこで電波を反射することがある。通常の電離層と異なり存在する場所が限定されるため、反射された電波を受信できるのは短時間であるが、テキスト通信として実用化もされている。年に何度かある流星群の時期にはある程度連続して現象が発生するためこの時期を狙ってアマチュア無線の交信を試みることもある。通信手法の確保の観点から流星バースト通信 (Meteor Burst Communication, MBC) と呼ばれることも多い。

月面反射通信

電波を反射する相手として月を選ぶのが、月面反射通信(EME:Earth-Moon-Earth)である。

小電力通信に挑む

「QRP」と呼ぶ。QRPとはQ符号の一つで、空中線電力を下げることを意味するが、法にある「必要最小限度」ではなく、「限りなく小電力で」遠距離通信に挑むことを指す。

中継設備を利用する

個人が開設しているものから、JARLが開設しているものまで、様々な中継設備が運用されている。これにより通信可能な範囲が広がる。

アマチュア衛星通信

宇宙空間にはアマチュア無線家によって製作された、アマチュア無線のための通信衛星であるアマチュア衛星が打ち上げられている。現在ではアマチュア通信用の衛星は常時10基以上運用されているので、アマチュア無線家にとっては身近なものとなっている[68]。衛星には通信を中継する機能や、地上から送信された信号を一定時間記憶し再送出する機能が搭載されており、電話・電信で直接交信するほか、コンピュータを用いてデータ伝送を行ったりする。ただしアマチュア衛星は静止軌道には投入されておらず、通信中はアンテナで衛星を追尾する必要があるため、ある程度の慣れと設備を必要とする。

レピータ

見晴らしの良い山頂やビルなどにレピータ(レピーター、リピータ)と呼ばれる中継局を設置し、これを介して遠距離通信を安定的に実現する。

フォーンパッチ

中継に有線通信を用いるものである。 通信の途中に電話回線インターネットによる中継を挟むことで、直接電波が届かない地域との通信を実現する。 有線用の電話機から公衆回線を通じてアマチュア無線に接続する形態、つまり電話機側の人がアマチュア無線家でないこともあり得る。 欧米では古くから実用化されており、特にアメリカでは普及していた。

日本においては、従前の公衆電気通信法下では公衆通信回線に無線機を接続することは警察消防など公共目的以外には禁止されていた。 1985年の公衆電気通信法廃止および電気通信事業法施行により、原則として禁止されるものではなくなった [69] が、1998年になって郵政省電気通信局(現総務省総合通信基盤局)が要件を明確にしたことにより認められた。 有線回線を中継して互いが無線機を用いるD-STARJVCケンウッドアイコムとJARLが推奨)やWiRES-II八重洲無線が提唱)、EcholinkeQSOIRLP(いずれもフリーソフト)がある。

パケット通信

アマチュア無線を用いたデータ通信である。OSI参照モデルに基づき、各階層でのプロトコルやサービスが開発されている。データリンク層プロトコルとしてはパケット交換方式であるAX.25が事実上の標準規格であり、このことからパケット通信と呼ばれるようになった。上位層では、RBBS (Radio BBS) が運用されているほか、TCP/IPを実装してインターネットと接続することも行われている。

アパマンハム

アパートマンションなどの共同住宅のベランダや屋上にアンテナを設置するアマチュア無線家のことを「アパマンハム」と呼ぶ。 一軒家による運用と比べると、隣家(隣室)との距離が短く、共同資産もある事から、それらに対する配慮がさらに必要となる。 小型・高性能・安全なアンテナが要求されるため、その技術的研究が盛んに行われており、 個人のウェブサイトや書籍 [70] にアイデアを公開しているケースも多い。

この造語は日本では便利で一般的である一方、日本国外でも同様のアパマンハムがいる。例えば、Hidden Stealthなどの形容詞、Apartment Dweller, Antenna Restriction, CC&Rなどの規制、制限条件などから具体的なカテゴリーや表現を用いるが、「限られたスペースでいかにアンテナを動作させるか」という同義での研究が盛んである。また、日本のマンションと日本国外のマンションの定義も異なり、むしろ日本でいうところのマンションもアパートのカテゴリーと定義できる。更には、アパートでの接地条件が垂直系アンテナの効率に大きく影響するため、接地条件が不良なケースでの研究対象やアンテナの展開の仕方、材料なども論議されている。このように広義なアパマンハムにとり、技術的には車や移動運用で使用するアンテナを応用、活用できるという共通部分も少なくない。また、戸建所有者にあっても、地面がなく、密集地であったり、ベランダのみでの運用を余儀なくされるなどの住宅事情から、その研究テーマや条件はアパマンハムと共通であることが多い。

社会貢献

科学技術の発展に以外にもアマチュア無線の社会貢献はある。

非常通信

アマチュア無線の社会的貢献が取り上げられるものとして、災害時など非常時の通信がある[1]携帯電話インターネットが広く普及した今日にあっても、アマチュア無線の災害時対応などについては、社会からの期待がある [71]

日本では、

などの事例がある。

国際的にも、2004年に発生したスマトラ島沖地震を契機に、国際条約の整備を目指した国際会議が発足し、各国関係主管庁への働きかけが進められている。先進的な法整備がなされている米国では、災害時など非常時の通信を主目的とするアマチュア無線による非営利の公共業務 (public service) を従来のアマチュア業務に加え、これを推進するための関連法を整備している[71]

なお、日本におけるアマチュア局の非常通信の取扱いについては議論がある。詳しくは日本でのアマチュア無線をめぐる諸問題を参照。

社会福祉

障害者、特に視覚障害者にとっては、アマチュア無線は社会参加の有力な手段の一つである。そのため、社会福祉施設などにクラブ局が設置され、アマチュア無線の交信を通じて社会参加を図る場面が見受けられる。

特殊な場所のアマチュア局

アマチュア無線従事者資格を持つ、特殊な環境下で観測などの業務を行っている科学者や技術者が、業務時間外の余暇を利用してアマチュア局を運用することがある。かつては過酷な環境下に居る運用者の精神衛生を保つ効果もあったが、衛星通信の発達によりイベント的な要素が強くなった。アマチュア無線家にとっては機会の少ない場所との通信という希少価値がある。

大きなイベント、特に国際的なイベントの際には記念局が開設されることがあり、来訪するアマチュア無線家が運用する。アマチュア無線の交信は最もわかりやすい民間レベルの国際交流であるため、国際的なイベント(万博オリンピックFIFAワールドカップなど)には記念局が積極的に開設される。記念局の運用やそことの交信も、アマチュア無線家にとって記念になる。

日本の事例はアマチュア局#特殊なアマチュア局を参照。

国際宇宙ステーション

第24次長期滞在 のフライト・エンジニアである、NASA の宇宙飛行 Doug Wheelock 大佐 (KF5BOC) は 国際宇宙ステーションズヴェズダ_(ISS) サービス・モジュールで NA1SS を運用した。 無線機は KENWOOD TM-D700E を使用。

国際宇宙ステーションでは、アマチュア無線局ARISS (Amateur Radio on the ISS) が運用されている。各宇宙飛行士が余暇時間を用いて運用を行う。 通常の通信の他に教育を目的として、あらかじめ特定の学校と日時を決めて通信を行う、スクールコンタクトと呼ばれる運用も行われている。 この際のコールサインはNA1SSとRS0ISSが用いられる。

他にスペースシャトルミールでも同様の運用実績があり、それぞれSAREX, MIREXと呼んだ。

南極

などが知られている。

アマチュア無線家

アマチュア業務をおこなう無線従事者のことを一般にアマチュア無線家 (radio amateur) という。

アマチュア・コード

JARLが1959年に社団法人化された際、アマチュア無線家が社会人市民として守るべき以下の5つの徳目を定めた。これが「アマチュアコード」である。

  • アマチュアは善き社会人であること
  • アマチュアは健全であること
  • アマチュアは親切であること
  • アマチュアは進歩的であること
  • アマチュアは国際的であること

ハム」の由来

アマチュア無線家のことをハム (HAM) とも呼ぶが、この言葉の由来には諸説あり、

  • amateurの最初の2文字をとり発音しやすいようにhをつけたもの。
  • いわゆる“大根役者”(アマチュア)のことを英語でhamと言うことから。
  • アマチュア無線の黎明期に有名だったアマチュア局のコールサインから。
  • アマチュア無線の黎明期に有名だった3人のアマチュア無線家のイニシャルから。
  • 電源交流の回込みやアンプの低周波の発振によるブーンというノイズをハムノイズ、略してハムとも言い、往年のアマチュアの機材ではよくこれが電波に乗ったところから来ているという説。しかしその綴りは hum である。

などがあげられる。

また「アマチュア無線」そのものもハムと呼ぶことがあるがこれは一般的に誤用とされ、正しくは先述の通り「アマチュア無線家」のことである。英語圏では、アマチュア無線のことは、"amateur radio" または "ham radio" といい、"ham" とだけ言うことはない。"hammy"(ハミー)と呼ぶことはある。

アマチュア無線に用いられる用語

他の無線通信業務と同じく、定められた無線用語Q符号通話表)が使われるが、その他、アマチュア業務に適した用語が用いられている。ただしアマチュア業務において暗語の使用は禁止されている(日本では電波法第58条)。これはアマチュア局の通信の相手方が「全世界不特定のアマチュア局」であることに由来する。他の無線通信業務においても通信の相手方が同様のものについては暗語の使用は禁止されている。

通信内容

アマチュア無線は法律上、発信者の身元保証や通信内容について厳格に規定されており(虚偽の通信の禁止と罰則規定―電波法第106条)、通信内容の正確性が担保されているとされる。なお無線局運用規則第259条により、非常通信などを除いて、第三者の依頼による通報はできない。

アマチュア無線が引き起こす問題

他の機器などへの電波障害

アマチュア局はその近隣に電波障害を与えることがある。テレビ・ラジオパソコン無線LAN[74]医療機器 [75] あるいは他の無線装置などにアマチュア無線の電波が妨害・混信を与え問題となることがある。

アマチュア局は、自局の発射する電波が他の無線局の運用または放送の受信に支障を与え、または与えるおそれがあるときは、すみやかに当該周波数による電波の発射を中止しなければならない[76]。アマチュア局はそのような状態を避けるため細心の注意を払わなければならないと法令に定められている。

電波の人体に与える影響

他の無線局と同様、電波、すなわち電磁波が健康に悪影響を及ぼしている、あるいは及ぼしている可能性があるとされることがある。

2013年現在、病理学的に電磁波の生体に与える影響は明確ではない。 どのくらいのレベルの電磁波から規制するかは、国によって差がある[77]。 日本では、アマチュア局を含む無線局は周波数と輻射電力などに応じた防護策を講じること(電波防護指針と呼ぶ。)が電波法施行規則第21条の3 [78] に定められている。

国際非電離放射線防護委員会ガイドラインや電波防護指針を基に磁界強度だけでなく電界強度まで考慮すると、例えば磁界放出型のループアンテナ(周波数14MHz、空中線電力10Wと想定)などは、人体から2m以上の距離を確保しなければならない[79]とされる。

アマチュア無線が登場する作品

アマチュア無線が登場する作品。点景に過ぎないもの、SFまたはファンタジーなど現実離れした設定のものも含まれている。

映画
テレビドラマ
テレビアニメ

ラジオドラマ

  • 『ずるいチャーリーは死んだ』ラジオ劇場(1984年・NHK-FM NHK札幌制作)
  • 『声命線』FMシアター(2017年・NHK-FM)
小説
日本の漫画

参考文献

脚注・出典

  1. ^ a b アマチュア無線ってなあに? JARD
  2. ^ a b アマチュア無線の楽しみ方 同上
  3. ^ a b c d e 日本アマチュア無線連盟編 『アマチュア無線のあゆみ 日本アマチュア無線連盟50年史』 CQ出版 1976年
  4. ^ 『放送ハンドブック:文化をになう民放の業務知識』 日本民間放送連盟編、東洋経済新報社、1992年3月16日(原著1991年5月23日)ISBN 4492760857
  5. ^ a b c d e f g h i 『世界大百科事典』平凡社 1988, vol.1, p.437「アマチュア無線」、小室圭五 執筆
  6. ^ a b 日本アマチュア無線連盟編 『アマチュア無線のあゆみⅢ 日本アマチュア無線連盟70年史』 CQ出版 1997年
  7. ^ a b 「無線電信法」(大正4年法律第26号) 『官報』第865号(1915年6月21日) 481 - 483ページ
  8. ^ 「無線電信法施行期日ノ件」(大正4年勅令第185号) 『官報』第971号(1915年10月26日) 553ページ
  9. ^ 「合資会社沖商会私設無線電信施設許可」(大正6年逓信省告示第275号) 『官報』第1391号(1917年3月24日) 530ページ
  10. ^ 「合資会社安中電機製作所私設無線電信施設許可」(大正6年逓信省告示第276号) 『官報』第1391号(1917年3月24日) 530ページ
  11. ^ 「早稲田大学私設無線電信施設許可」(大正8年逓信省告示第518号) 『官報』第2010号(1919年4月18日) 452ページ
  12. ^ a b c 「実験用無線施設」 逓信省編 『逓信事業史 第4巻』(逓信協会、1940年) 914 - 916ページ
  13. ^ 「日本アマチュア無線局名録(昭和5年9月30日現在)」 『外国無線電信無線電話制度調査資料 第4号』(逓信省電務局業務課、1930年) 183 - 191ページ
  14. ^ 「濱地常康私設無線電話施設許可」(大正11年逓信省告示第332号) 『官報』第2871号(1922年3月1日) 8ページ
  15. ^ 「本堂平四郎私設無線電話施設許可」(大正11年逓信省告示第1555号) 『官報』第3018号(1922年8月22日) 601ページ
  16. ^ 「安藤博私設無線電信無線電話施設許可」(大正12年逓信省告示第708号) 『官報』第3209号(1923年4月14日) 420ページ
  17. ^ 「安藤博施設私設無線電信無線電話第二装置増設許可」(大正12年逓信省告示第1679号) 『官報』第3378号(1923年11月26日) 355 - 356ページ
  18. ^ 「JARLの成立」 日本アマチュア無線連盟50年史編集委員会編 『アマチュア無線のあゆみ - 日本アマチュア無線連盟50年史』(日本アマチュア無線連盟、1976年) 46 - 52ページ
  19. ^ JARL90年のあゆみ(アマチュア無線年表)(JARL創立90周年記念サイト)
  20. ^ 「楠本哲秀私設無線電信施設許可」(昭和2年逓信省告示第831号) 『官報』第77号(1927年4月5日) 137ページ
  21. ^ 「有坂磐雄私設無線電信無線電話施設許可」(昭和2年逓信省告示第838号) 『官報』第78号(1927年4月6日) 165ページ
  22. ^ 「國米藤吉私設無線電信施設許可」(昭和2年逓信省告示第1145号) 『官報』第106号(1927年5月10日) 241ページ
  23. ^ 「草間貫吉私設無線電信無線電話施設許可」(昭和2年逓信省告示第2002号) 『官報』第212号(1927年9月10日) 256ページ
  24. ^ 「私設無線電信無線電話規則」(昭和8年逓信省令第60号) 『官報』号外(1933年12月29日) 7 - 17ページ
  25. ^ 開戦当日の正午頃に、逓信省の役人たちが各局を回って設備を封印して回った。封止証の実物写真
  26. ^ 総務省 無線局統計情報 2015年
  27. ^ a b (社)電波産業会『電波産業年鑑2010』 2010年
  28. ^ "New FCC Licenses Issued 2005 Through 2009”ARRL 2010
  29. ^ "The ARRL Letter 2011”ARRL 2011
  30. ^ Recommendation M.1544 Minimum Qualifications For Radio Amateurs ITU
  31. ^ 身近な例としては携帯電話がある。携帯電話端末陸上移動局であるが、携帯電話会社により包括免許され、電波利用料を利用者に代わって収益(基本料・通話料)から支払うため、誰でも使用できる。
  32. ^ 通信の相手方は「アマチュア局」とされ「相手国」の制限はなく、全世界の不特定アマチュア局との通信が許可される。他の無線局の場合、そのほとんどが通信の相手方を限定されており、多くは国内局である。放送局の場合でも、いわゆる「サービスエリア」として地域を限定される。
  33. ^ 過程自体は他の無線従事者を必要とする無線局と同じであり、開局、運用にあたっての各種要求も変わらない。なお無線局が「簡易」なものか否かの区別は、厳密には無線従事者による通信操作、技術操作を必要とする無線設備か否かに依り、電波法施行規則第33条およびこれに基づく平成2年郵政省告示第240号 電波法施行規則第33条の規定に基づく無線従事者の資格を要しない簡易な操作[1] の「無線従事者の資格を要しない簡易な操作」による。アマチュア局の場合には、もとより電波の質に係る広範な技術操作や広範な通信操作が認められていることから該当しない。2012年現在の総務省見解においても、アマチュア局の無線設備は「そもそも簡易な取扱いのできる無線設備ではない」とされており、特例のある日本でも、他の事業用無線従事者免許をもってアマチュア局を開設、アマチュア業務に従事できるのは、総合無線通信士など、アマチュア局の運用範囲を包含する一部の無線従事者に限られている。
  34. ^ これは日本国政府の単独裁量で免許できる空中線電力で、短波の移動しない局の場合である。移動する局や超短波以上では、これより低い枠が周波数帯ごとに定められている。
  35. ^ 電波監理審議会(第861回)議事要旨 総務省平成14年6月27日公表(国立国会図書館アーカイブ 2009年1月13日収集)
  36. ^ V/U 500W免許”. 7J2YAF/JN2SIP (現JS2HZM). 2013年2月4日閲覧。
  37. ^ 郵便が受けられるという条件なので、米国内の私書箱や友人などの住所でも構わない。
  38. ^ question-pools (ARRL)
  39. ^ 1962年の歴史 アマチュア無線の歴史(CQ出版)
  40. ^ 上位資格者に限定されているコールサインであれば資格の推定は可能であるが、その逆は困難である。
  41. ^ 現行の第二級とは異なるので旧を冠して区別する。
  42. ^ 1.215-1.300GHz, 2.300-2.450GHz, 3.300-3.500GHz(Reg.2)/3.300-3.900GHz(Reg.3共用), 5.650-5.850GHz, 10.000-10.500GHz
  43. ^ 昭和23年逓信省告示第489号 『官報』号外 第48号(1948年12月20日) 17ページ
    国際電気通信条約附属無線通信規則 第42条第3項第1号
    「3 (一) 素人局の機器を運用する者は、モールス字号で本文を伝送し、且つ、音響受信ができることを予め証明しなければならない。もっとも、関係主管庁は、もっぱら、一、〇〇〇Mc/sを超える周波数を使用する局の場合には、この条件を適用しないことができる。」 (1949年1月1日発効)
  44. ^ 昭和25年法律第131号 『官報』号外 第39号(1950年5月2日) 3ページ
    電波法 第40条
    「第二級アマチュア無線技士  空中線電力百ワット以下で五十メガサイクル以上又は八メガサイクル以下の周波数を使用するアマチュア無線局の無線電話の通信操作及び技術操作」 (1950年5月2日公布、1950年6月1日施行)
  45. ^ 梶井謙一氏がJARL理事長という肩書きで電波時報(郵政省電波監理局編)1957年(昭和32年)3月号に書いた記事"電波法はいかに改正されるべきか - アマチュアの立場"(26~27ページ)で、RRに違反している旧二級の是正、米国ノービス級にならい電信のみの三級の新設を提案している
    「「素人局の機器を運用する者は、モールス字号で本文を伝送し、且つ、音響受信ができることを予め証明しなければならない・・・」と規定してあるのに、第2級アマチュア無線技士の試験には電信通信術の試験の規定がない。電波法がこの国際法を無視しているかのごとき感じを与えるのは、いかなる理由に基いてであろうか。これは一日も早く国際法に基き、第2級アマチュア無線技士にも電信通信術の試験をおこない、同時に、行うことが出来る無線設備の操作のなかへ、無線電信の通信操作及び技術操作を加えるべきである。 <中略> 28Mc帯を第2級アマチュア無線技士に解放するのが適当ではあるまいか。 <中略> 第3級アマチュア無線技士の資格を増設して、8Mc以下、50Mc以上の周波数を使用するアマチュア無線局の、無線電信の通信操作及び技術操作をなさしめることを切に要望したい。」
  46. ^ 日本アマチュア無線連盟編 『アマチュア無線のあゆみ 日本アマチュア無線連盟50年史』 CQ出版 1976年 361ページ
    「ノビス級については、アメリカにならって電信のみでよい、国際的慣習からしてアマチュアにとってモールスは必須な知識であるとする論と、電話だけで入門する方が興味をひき易く容易である、モールスはこれからの通信方式としていささか古すぎる・・・といった論がかなり先鋭に対立しJARL内部で論議されたものであった。」
  47. ^ Lloyd Butler、A history of amateur operators certificate and the morse code requirement in Australia、Amateur Radio, Nov.2011, Wireless Institute of Australia
    その操作範囲は「空中線電力100W以下、周波数50MHz以上」。電波監視上で判別し易いように、Zから始まる3文字サフィックスのコールサイン(VK#Z**)が指定された。
  48. ^ 昭和33年政令第306号 『官報』 第9561号(1958年11月4日) 37ページ
    無線従事者操作範囲令 第2条
    「電話級アマチュア無線技士  アマチュア無線局の空中線電力十ワット以下の無線電話で五十メガサイクル以上又は八千キロサイクル以下の周波数を使用するものの操作」 (1958年11月4日公布、1958年11月5日施行)
  49. ^ 昭和33年法律第140号 電波法の一部を改正する法律 『官報』 第9407号(1958年5月6日) 75ページ
    附則 第2項
    「2  この法律の施行の際に、現に次の表の上欄の資格を有している者は、この法律の施行の日に、それぞれこの法律による改正後の電波法の規定による同表の下欄の資格の免許を受けたものとみなす。 <中略> [表上欄] 第二級アマチュア無線技士 - [表下欄] 電話級アマチュア無線技士」 (1958年5月6日公布、1958年11月5日施行)
  50. ^ 昭和33年郵政省令第28号 『官報』号外 第87号(1958年11月5日) 35ページ
    無線従事者国家試験及び免許規則の全部を改定する省令 附則 第12項
    「12  旧第二級アマチュア無線技士であって引き続き当該資格を有する者が、この省令の施行の日から五年以内に第二級アマチュア無線技士の資格の国家試験を受ける場合は、予備試験及び学科試験を免除する。」 (1958年11月5日公布、同日施行)
    言い換えると、旧二級者に限り電気通信術(欧文45字/分の送受5分間)のみの受験で済んだ。
  51. ^ 昭和33年政令第306号 『官報』 第9561号(1958年11月4日) 37ページ
    無線従事者捜査範囲令 附則 第2項
    「2  改正法附則第二項の規定により電話級アマチュア無線技士の資格を受けたものとみなされた者の行うことができる無線設備の操作の範囲は、この政令の規定にかかわらず、この政令の施行の日から起算して五年間は、なお従前の例による。」 (1958年11月4日公布、1958年11月5日施行)
  52. ^ 昭和36年逓信省告示第304号 『官報』号外 特第1号(1961年5月1日) 79ページ
    国際電気通信条約に附属する無線通信規則 第41条第3項第1号
    「3 (一) アマチュア局の機器を運用する者は、モールス字号による本文の正確な手送り送信及び音響受信ができることをあらかじめ証明しなければならない。もっとも、関係主管庁は、もっぱら、一四四Mc/sをこえる周波数を使用する局の場合には、この条件を適用しないことができる。」 (1961年5月1日発効)
  53. ^ 日本語訳ではアトランティック・シティの時のものと若干の違いがあるが、原文では周波数の数字部分が異なるだけで同じ文
  54. ^ 昭和36年政令第55号 『官報』 第10281号(1961年3月30日) 733ページ
    無線従事者操作範囲令の一部を改正する政令
    「電話級アマチュア無線技士の項中「五十メガサイクル以上又は八千キロサイクル以下」を「二十一メガサイクル以上又は八メガサイクル以下」に改める。」 (1961年3月30日公布、1961年4月10日施行)
  55. ^ 昭和55年郵政省告示第915号 『官報』号外 第88号(1980年12月26日) 96ページ
    国際電気通信条約に付属する無線通信規則 第32条第3項第1号
    「3 (一) アマチュア局の機器を操作するための許可を得ようとする者は、モールス符号の信号によって文を正確に手送り送信し、及び聴覚受信することを証明しなければならない。ただし、関係主管庁は、専らもっぱら30MHzを超える周波数を使用する局については、この要件を課すことを要しない。」 (1982年1月1日発効)
    1979年のジュネーヴ世界無線通信主管庁会議WARC-79での決議による
  56. ^ 'Morse Code Requirement For Ham Radio Is Lifted', The New York Times, February 14, 1991
  57. ^ アメリカにおけるモールス技能不要のアマチュア資格はこれがはじめてだった
  58. ^ 平成16年総務省告示第975号 『官報』号外 第281号(2004年12月20日) 33ページ
    国際電気通信連合憲章に規定する無線通信規則 第25条第3項第1号
    「3 (一) 主管庁は、アマチュア局を運用するための免許を得ようとする者にモールス信号によって文を送信及び受信する能力を実証すべきかどうか判断する。」 (2005年1月1日発効)
  59. ^ 平成5年郵政省告示第326号 電波法施行規則第34条の8及び第34条の9の規定に基づく外国において電波法第40条第1項第5号に掲げる資格に相当する資格、当該資格を有する者が行うことのできる無線設備の操作の範囲及び当該資格によりアマチュア局の無線設備の操作を行おうとする場合の条件総務省電波関係法令集(総務省電波利用ホームページ)
  60. ^ 135kHzバンドあれこれ JH1GVY
  61. ^ 広義にはDFCWなどもQRSSの一種であるが、単にQRSSと言った場合はon-off keyingによるものを指すことが多い。
  62. ^ EA5HVK Jose Alberto Nieto Rosが考案した狭帯域デジタル通信方式、およびこれを実装するソフトウェア。[2]、2014年5月5日閲覧。
  63. ^ 平成4年郵政省告示第316号アマチュア業務に使用する電波の型式及び周波数の使用区別制定
  64. ^ a b CQ出版社編 『DXハンドブック』 CQ出版社 昭和43年
  65. ^ CQ出版社編 『ダイナミック・ハムシリーズ3 モービルハム ハンドブック』 CQ出版 昭和55年
  66. ^ 西本陸雄著 『フォックスハンティング入門』 山海堂 昭和49年
  67. ^ 例えば日本では、総務省受信環境クリーン協議会の各年度報告にJARLの活動としてその対応数などが報告される。
  68. ^ 『電波伝播ハンドブック』Realize SE, 1999, ISBN 489808012X, p.384
  69. ^ 事業法等の施行に伴う自由化の拡大 昭和60年版通信白書第1章第1節5.自営電気通信(2)(総務省情報通信データベース)
  70. ^ アパマン・ハム・ハンドブック(CQ出版)など
  71. ^ a b 中山間地の孤立対策へのアマチュア無線の活用 (PDF) 上野勝利・森 篤史・中野 晋・吉田 敦也(第30回土木学会地震工学研究発表会論文集)
  72. ^ 1964年の歴史 同上
  73. ^ 1995年の歴史 同上
  74. ^ ブルース・ポッター『802.11セキュリティ』O'Reilly Japan, 2003, ISBN 4873111285 p.25
  75. ^ 電磁波障害の実際 野島俊雄 医科器械学 vol.69, No.2, pp.61-66,1999(日本医療機器学会)
  76. ^ 無線局運用規則第258条
  77. ^ 「電波ばく露による生物学的影響に関する評価試験及び調査」平成18年度 海外基準・規制動向調査報告書 (PDF) 電波の安全性に関する調査及び評価技術(総務省電波利用ホームページ)
  78. ^ 平成10年郵政省令第78号による改正時に追加
  79. ^ 三浦正悦『電磁界の健康影響 工学的・科学的アプローチの必要性』東京電機大学出版局、2004, ISBN 4501324007 p.236

関連団体

関連項目

電波関連

外部リンク