「ハッシュドビーフ」の版間の差分
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19世紀以前の欧米の書籍には、Hashed Beef という古い[[イギリス料理]]のレシピがしばしば掲載されている。味付けは現在の日本におけるものとは大きく異なるが、薄切り牛肉の煮込み料理という点では共通しており、これが明治期に伝わりローカライズされたという推測は可能である。 |
19世紀以前の欧米の書籍には、Hashed Beef という古い[[イギリス料理]]のレシピがしばしば掲載されている。味付けは現在の日本におけるものとは大きく異なるが、薄切り牛肉の煮込み料理という点では共通しており、これが明治期に伝わりローカライズされたという推測は可能である。 |
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*[[1788年]]に発行されたイギリス料理の本に記されたレシピでは、残り物の[[ローストビーフ]]を薄く切って[[エシャロット]]や[[ピクルス]]と共に煮込む<ref>{{Cite book|author=Richard Briggs|title=[[:en:The English Art of Cookery|The English Art of Cookery]]|publisher=G. G. J. and J. Robinson|location=London, England|year=1788|pages=212-213}} ([https://babel.hathitrust.org/cgi/pt?id=hvd.rsmd1t;view=1up;seq=274 Online version] at [[ハーティトラスト|HathiTrust Digital Library]])</ref>。 |
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*[[1881年]]に[[アメリカ合衆国|アメリカ]]で発行された家庭百科事典では、牛肉の薄切りと[[たまねぎ]]をアンチョビーソースとマッシュルームケチャップと肉汁のスープで煮込むレシピが紹介されている<ref>[https://scribd.com/document/87606/Household-Cyclopedia-of-1881 |
*[[1881年]]に[[アメリカ合衆国|アメリカ]]で発行された家庭百科事典では、牛肉の薄切りと[[たまねぎ]]をアンチョビーソースとマッシュルームケチャップと肉汁のスープで煮込むレシピが紹介されている<ref>{{Cite book|author=Henry Hartshorne|title=The Household Cyclopedia of General Information|publisher=Thomas Kelley|location=New York, NY, USA|year=1881|page=341}} ([https://scribd.com/document/87606/Household-Cyclopedia-of-1881 Online version] at [[Scribd]])</ref>。 |
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*[[1888年]]に日本で刊行された料理書に、ローストビーフ(原文は「ロースビフ」)と[[デミグラスソース]](原文は「スチウのソース」)を用いる現在のハッシュドビーフに近い味付けの料理が「ハヤシビフ」という名前で登場する<ref>[http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/849016/20 国立国会図書館デジタルコレクション |
*[[1888年]]に日本で刊行された料理書に、ローストビーフ(原文は「ロースビフ」)と[[デミグラスソース]](原文は「スチウのソース」)を用いる現在のハッシュドビーフに近い味付けの料理が「ハヤシビフ」という名前で登場する<ref>{{Cite book|和書|author1=マダーム・ブラン(口述)|author2=洋食庖人(筆記)|author3=松井鉉太郎(奥付著者)|title=軽便西洋料理法指南 : 実地応用 一名・西洋料理早学び|publisher=新古堂書店|location=東京、日本|year=1888|pages=26-27}} ([http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/849016/20 国立国会図書館デジタルコレクション])</ref>。 |
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*[[1909年]]発行の主婦向けの指南書では、小麦粉を炒ってとろみを付ける[[ブラウンソース]]の手法を用いた「ハヤシビーフ」のレシピが紹介されている<ref>[http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/757230/40 国立国会図書館デジタルコレクション |
*[[1909年]]発行の主婦向けの指南書では、小麦粉を炒ってとろみを付ける[[ブラウンソース]]の手法を用いた「ハヤシビーフ」のレシピが紹介されている<ref>{{Cite book|和書|title=女道大鑑|author=三八光商会編輯部|year=1909|publisher=三八光商会|location=東京、日本|pages=70-71}} ([http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/757230/40 国立国会図書館デジタルコレクション])</ref>。 |
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これらはいずれも汁気の多いスープ料理としての紹介であるが、日本においてハヤシライスへと変化していく中で現在のようなレシピやスタイルが形成されていったと考えられる。 |
これらはいずれも汁気の多いスープ料理としての紹介であるが、日本においてハヤシライスへと変化していく中で現在のようなレシピやスタイルが形成されていったと考えられる。 |
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なお、Hashed Beef というイギリス料理は英語圏においても現在はほとんど認知されておらず、提供する店もない。 |
なお、Hashed Beef というイギリス料理は英語圏においても現在はほとんど認知されておらず、提供する店もない。 |
2018年1月19日 (金) 15:02時点における版
ハッシュドビーフ (英: hashed beef)は、薄切りの牛肉を洋風のソースで煮込んだ料理。
概要
現在広く知られているハッシュドビーフは、外国料理の技法を元に明治時代に成立した日本の洋食である。 ハヤシライスの別名あるいは英訳として一部のレストランでのみ使用されていたこの名称が一般に浸透したのは、1989年(平成元年)にハウス食品から「ハウス ハッシュドビーフ」という商品名のハヤシライスルーが発売されて以降のことである[1]。
→「ハヤシライス」も参照
なお、これとは異なるハッシュドビーフも19世紀以前には存在していた。(後述)
歴史
19世紀以前の欧米の書籍には、Hashed Beef という古いイギリス料理のレシピがしばしば掲載されている。味付けは現在の日本におけるものとは大きく異なるが、薄切り牛肉の煮込み料理という点では共通しており、これが明治期に伝わりローカライズされたという推測は可能である。
- 1788年に発行されたイギリス料理の本に記されたレシピでは、残り物のローストビーフを薄く切ってエシャロットやピクルスと共に煮込む[2]。
- 1862年に発行された料理本には、薄切りにした牛肉をマッシュルームケチャップと肉汁のスープで煮る、ワインビネガーとケチャップを煮詰めたソースで煮る、温めたクルミのピクルスを添えるなどのレシピが記載されている[3]。
- 1881年にアメリカで発行された家庭百科事典では、牛肉の薄切りとたまねぎをアンチョビーソースとマッシュルームケチャップと肉汁のスープで煮込むレシピが紹介されている[4]。
- 1888年に日本で刊行された料理書に、ローストビーフ(原文は「ロースビフ」)とデミグラスソース(原文は「スチウのソース」)を用いる現在のハッシュドビーフに近い味付けの料理が「ハヤシビフ」という名前で登場する[5]。
- 1909年発行の主婦向けの指南書では、小麦粉を炒ってとろみを付けるブラウンソースの手法を用いた「ハヤシビーフ」のレシピが紹介されている[6]。
これらはいずれも汁気の多いスープ料理としての紹介であるが、日本においてハヤシライスへと変化していく中で現在のようなレシピやスタイルが形成されていったと考えられる。 なお、Hashed Beef というイギリス料理は英語圏においても現在はほとんど認知されておらず、提供する店もない。
作り方
- 薄切りの牛肉に、食塩、コショウで下味をつけ、小麦粉をまぶす。
- タマネギを薄切り、ニンニクを微塵切りにする。
- 鍋に油を熱してニンニクを炒める。加えて牛肉を炒める。
- 肉の色が変わったら一度取り出し、バターを鍋に溶かしてタマネギを炒める。
- タマネギがしんなりしたら肉を戻し、マッシュルームと水、赤ワイン、ローリエを加えて10分程煮込む。
- 更にドミグラスソースとトマトまたはトマトケチャップ、ウスターソースを加えて10分程煮込む。
- 皿に盛り、仕上げに生クリームなどをかけて完成。
マッシュルームは缶詰のものでもよいが、生のものを使う場合はタマネギとともに炒める。 また水と一緒に市販のコンソメを加えてもよい。
食べ方
白飯にかけてハヤシライスとする。バターライスを用いたり、パスタやパン、マッシュポテトなどと共に食べてもよい。
類似する料理
注釈
出典
- ^ 澁川祐子『ニッポン定番メニュー事始め』2013年、210頁。ISBN 978-4-7791-1934-7。
- ^ Richard Briggs (1788). The English Art of Cookery. London, England: G. G. J. and J. Robinson. pp. 212-213 (Online version at HathiTrust Digital Library)
- ^ Charles Elmé Francatelli (1862, 2nd Edition). The Cook's Guide, and Housekeeper's & Butler's Assistant. London, England: Richard Bentley. p. 207 (Online version at HathiTrust Digital Library)
- ^ Henry Hartshorne (1881). The Household Cyclopedia of General Information. New York, NY, USA: Thomas Kelley. p. 341 (Online version at Scribd)
- ^ マダーム・ブラン(口述)、洋食庖人(筆記)、松井鉉太郎(奥付著者)『軽便西洋料理法指南 : 実地応用 一名・西洋料理早学び』新古堂書店、東京、日本、1888年、26-27頁。 (国立国会図書館デジタルコレクション)
- ^ 三八光商会編輯部『女道大鑑』三八光商会、東京、日本、1909年、70-71頁。 (国立国会図書館デジタルコレクション)