「ナーストケラトプス」の版間の差分
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'''ナーストケラトプス'''(''Nasutoceratops'')は、[[白亜紀]]後期の[[ユタ州]]で発見された、[[セントロサウルス亜科]]の[[角竜]]である。 |
'''ナーストケラトプス'''(''Nasutoceratops'')は、[[白亜紀]]後期の[[ユタ州]]で発見された、[[セントロサウルス亜科]]の[[角竜]]である<ref name="Michael J 2017">{{Cite journal|author1=Kentaro Chiba |author2=Michael J. Ryan |author3=Federico Fanti |author4=Mark A. Loewen |author5=David C. Evans |year=2018 |title=New material and systematic re-evaluation of ''Medusaceratops lokii'' (Dinosauria, Ceratopsidae) from the Judith River Formation (Campanian, Montana) |journal=Journal of Paleontology |volume=in press |issue= 2|pages= 272–288|doi=10.1017/jpa.2017.62 }}</ref>。'''ナストケラトプス'''、 '''ナスートケラトプス'''とも表される。 |
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'''ナストケラトプス'''、 '''ナスートケラトプス'''とも表される。 |
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{{生物分類表 |
{{生物分類表 |
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ナーストケラトプスは[[アメリカ合衆国]]・[[ユタ州]]の[[白亜紀]]後期の地層から発見され、2013年に命名された。原始的な[[セントロサウルス亜科]]の動物だが、目の上に2本の角を生やしており、鼻の上の角は発達していなかった。このようなタイプの他のセントロサウルス亜科は[[ケラトプス科#ディアブロケラトプス|ディアブロケラトプス]]や[[アルベルタケラトプス]]などが知られているが、いずれもナーストケラトプスが生息していた時代には絶滅していた。 |
ナーストケラトプスは[[アメリカ合衆国]]・[[ユタ州]]の[[白亜紀]]後期の地層から発見され、2013年に命名された。原始的な[[セントロサウルス亜科]]の動物だが、目の上に2本の角を生やしており、鼻の上の角は発達していなかった。このようなタイプの他のセントロサウルス亜科は[[ケラトプス科#ディアブロケラトプス|ディアブロケラトプス]]や[[アルベルタケラトプス]]などが知られているが、いずれもナーストケラトプスが生息していた時代には絶滅していた。 |
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名前は「大きな鼻と角のある顔」を意味するが、その名の通り内鼻孔が上下に伸び、吻部が前後方向に短くなっていて、鼻が大きくなっていた。また[[ウシ]]を彷彿とさせるような、横方向に強く湾曲しながら前上方に伸びる上眼窩角もほかの角竜とは異なっている<ref>{{cite web|title=NATIONAL GEOGRAPHIC日本版 ニュース 大きな鼻の角竜、ユタ州で発見|url=http://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/8169/?ST=m_news|accessdate=13 May 2015}}</ref>。 |
名前は「大きな鼻と角のある顔」を意味するが、その名の通り内鼻孔が上下に伸び、吻部が前後方向に短くなっていて、鼻が大きくなっていた。また[[ウシ]]を彷彿とさせるような、横方向に強く湾曲しながら前上方に伸びる上眼窩角もほかの角竜とは異なっている<ref>{{cite web|title=NATIONAL GEOGRAPHIC日本版 ニュース 大きな鼻の角竜、ユタ州で発見|url=http://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/8169/?ST=m_news|accessdate=13 May 2015}}</ref>。 |
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== 発見と種 == |
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[[File:Nasutoceratops holotype.jpg|thumb|left|複数の角度から見た既知の頭骨要素]] |
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ナストケラトプスはホロタイプ、UMNH VP 16800 から知られる。これは部分的に関節した頭骨、後頭顆、頸椎、三つの部分的な前方胴椎、肩甲骨、関節していない左前肢、右前肢の一部、および皮膚印象である。他に2つの標本も参照されている。UMNH VP 19466 は、関節していない成体の頭骨で不完全な前上顎骨、上顎骨および鼻骨で構成される。UMNH VP 19469 は、亜成体の癒合した[[鱗状骨]]である。ホロタイプは2006年にユタ大学が指揮したカイパロウィッツ・プロジェクトの期間中に発見・採集された。その化石はグランド・ステアーケース・エスカランテ国立公園の[[カイパロウィッツ累層]]上部中層の砂岩に覆われていた。その堆積物は[[後期白亜紀]][[カンパニアン]]後期(約7500万年前)のものと推定される<ref>M. A. Getty, M. A. Loewen, E. M. Roberts, A. L. Titus, and S. D. Sampson. 2010. Taphonomy of horned dinosaurs (Ornithischia: Ceratopsidae) from the late Campanian Kaiparowits Formation, Grand Staircase-Escalante National Monument, Utah. In M. J. Ryan, B. J. Chinnery-Allgeier, D. A. Eberth (eds.), New Perspectives on Horned Dinosaurs: The Royal Tyrrell Museum Ceratopsian Symposium. Indiana University Press, Bloomington 478-494</ref>。 |
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その標本は2010年にナストゥケラトプス・ティトゥシ ''Nasutuceratops titusi'' としてエリック・カール・ランドEric Karl Lund によって記載された<ref name=Nasutuceratops>{{cite journal |year=2010 |title=''Nasutuceratops titusi'', a new basal centrosaurine dinosaur (Ornithischia: Ceratopsidae) from the upper cretaceous Kaiparowits Formation, Southern Utah |url=http://content.lib.utah.edu:81/cgi-bin/showfile.exe?CISOROOT=/etd3&client_addr=5.103.58.97&CISOPTR=528&filename= |journal=Department of Geology and Geophysics University of Utah |pages=172 pp |author=Eric Karl Lund |url-status=dead |archiveurl=https://web.archive.org/web/20150402103645/http://content.lib.utah.edu:81/cgi-bin/showfile.exe?CISOROOT=%2Fetd3&client_addr=5.103.58.97&CISOPTR=528&filename= |archivedate=2015-04-02 }}</ref>。しかしこれは nomen ex dissertatione(学位論文上での命名)であり、記載を伴う出版ではないため無効名である。スコット・サンプソン、ランド、マーク・ローウェン、アンドリュー・ファルケ、およびキャサリン・クレイトンは2013年にナストケラトプスを正式に記載した。[[模式種]]はナストケラトプス・ティトゥシ ''Nasutoceratops titusi''である。[[属名]]は[[ラテン語]]で「大きな鼻」を意味する ''nasutus'' と[[古代ギリシア語]]で「角のある顔」を意味する ''ceratops''の合成である。種小名はGSENMで化石を剖出したアラン・L・タイタス Alan L. Titus への献名である<ref name=Nasutoceratops/>。 |
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== 記載 == |
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[[File:Nasutoceratops skeleton.jpg|thumb|left|骨格図。発見部位を白色で示している]] |
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ホロタイプの頭骨は約1.5mの長さである。全長は4.5m、体重は1.5tと推定されている<ref name=G.S.Paul2016>Paul, G.S., 2016, ''The Princeton Field Guide to Dinosaurs 2nd edition'', Princeton University Press p. 287</ref>。ナストケラトプスはいくつかの独特な[[固有派生形質]]をもつ。鼻骨における鼻孔周辺部分が強く発達しており、頭骨における眼窩より前の部分の約4分の3を占めている。 鼻骨後部が大きな内鼻孔によってくり抜かれたようになっている。上顎骨と前上顎骨の関節面が非常に大きい。 上顎骨には、2つの水平面を介して前上顎骨に接触する大きな内部突縁が存在する。上眼窩角の付け根が前方外向きであり、角は内側に湾曲したのち最終的にねじれて先端が上向きになる<ref name=Nasutoceratops>{{Cite journal | last1 = Sampson | first1 = S. D. | last2 = Lund | first2 = E. K. | last3 = Loewen | first3 = M. A. | last4 = Farke | first4 = A. A. | last5 = Clayton | first5 = K. E. | title = A remarkable short-snouted horned dinosaur from the Late Cretaceous (late Campanian) of southern Laramidia | doi = 10.1098/rspb.2013.1186 | journal = Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences | volume = 280 | issue = 1766 | pages = 20131186 | year = 2013 | pmid = 23864598| pmc = 3730592}} [http://rspb.royalsocietypublishing.org/content/280/1766/20131186.full.pdf full text]</ref>。 |
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またナストケラトプスはそれぞれの特徴そのものは独特ではないものの、組み合わせとしては個性的な特徴を備える。鼻角は低く狭く、基部が拡張されている。鱗状骨上面に、鱗状骨の縁から眼窩にかけて走る高い隆起がある。フリルは多少丸みを帯びていて正中線において最も広い。フリルの縁の[[皮骨]](縁頭頂骨と縁鱗状骨)は尖っておらず、低い単純な三日月状である。頭頂骨の正中線上の遠位端は切れ込んでおらず、代わりに第0縁頭頂骨がある<ref name=Nasutoceratops/>。 |
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[[File:Nasutoceratops skull.jpg|thumb|頭骨の図]] |
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ナストケラトプスの吻は短く高い。 |
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その鼻骨には、鼻腔から骨に入り込む空洞が見られる。 他の角竜類では鼻腔の空洞は知られていないことから、この特徴はこの属独自の派生形質を表していると思われる。上顎には29本分もの歯槽があり、一つ一つに数本の歯が積み重なっている。 眼窩の間にある頭蓋天井は隆起しており、鼻先よりも明らかに高い。 水平方向に突起し湾曲した上眼窩角の配置は、古生物学者デビッド・ホーンによって現代の[[ウシ]]のようだと表現された<ref name="Hone">{{cite web|last=Hone |first=Dave |url=https://www.theguardian.com/science/lost-worlds/2013/jul/17/dinosaur-nasutoceratops-cow-horns |title=Newly discovered dinosaur Nasutoceratops had cow-like horns |work=guardian.co.uk |location=London, UK |publisher=Guardian |date=2013-07-17 |accessdate=2013-07-17}}</ref>。上眼窩角は頭骨全体の約40%を占め、ほとんど吻部の頂点に届く高さに達し、骨芯の長さは457mmにも及び、絶対的にも相対的にも[[セントロサウルス亜科]]内で最も長いことが知られている<ref name=Nasutuceratops/>。 |
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縁頬骨(頬角) は85mmの長さで、これも既知のセントロサウルス亜科内で最大である。フリルはほどほどに長く、両脇には大きな腎臓形の頭頂骨窓が貫通している。 正中線上頭頂を除いて両側に7個の縁頭頂骨があり、4〜5個程度の縁鱗状骨がある<ref name=Nasutuceratops/>前肢において、尺骨は非常に頑健で、膝頭の突起(尺骨肘頭突起)が大きい。 左肩の近くで見つかった皮膚印象を持つ3つのパッチのうち1つは、小さな三角形の鱗に囲まれた8〜11mm幅の大きな六角形の鱗のパターンを示している<ref name=Nasutuceratops/>。 |
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== 分類 == |
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[[File:Ceratopsids utah natural history museum.jpg|thumb|[[系統樹]]上に配置された角竜類の頭骨。ナストケラトプスは中央左]] |
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[[File:Nasutoceratops during preparation.jpg|thumb|プレパレーション中のホロタイプ頭骨]] |
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ナストケラトプスは2013年に基盤的[[セントロサウルス亜科]]として記載された。サンプソンらによる[[系統解析]]で、ナストケラトプスは[[アヴァケラトプス]]の[[姉妹群]]であることが示唆された。この研究によるとナストケラトプスの存在は、[[ララミディア大陸]]の北と南の間の動物相分離の仮説を支持するものである。 ナストケラトプスは、北方系のセントロサウルス亜科とは異なり、長い上眼窩角と短い鼻角を保持しており、[[カスモサウルス亜科]]と[[収斂]]した短い縁頭頂骨が発達していることが明らかになった<ref name=Nasutoceratops/>。2016年、このグループはナストケラトプス族(Nasutoceratopsini)と命名された。ナストケラトプスのほか、ANSP 15800(アヴァケラトプスのホロタイプ)、MOR 692(以前はアヴァケラトプスの成体標本として扱われていた)、[[オールドマン累層]]から新たに報告されたCMN 8804、[[マルタケラトプス]]を含んでいる<ref name="ryan2016">{{cite journal | last1 = Ryan | first1 = M.J. | last2 = Holmes | first2 = R. | last3 = Mallon | first3 = J. | last4 = Loewen | first4 = M. | last5 = Evans | first5 = D.C. | title = A basal ceratopsid (Centrosaurinae: Nasutoceratopsini) from the Oldman Formation (Campanian) of Alberta, Canada | doi = 10.1139/cjes-2016-0110 | journal = Canadian Journal of Earth Sciences | volume = 54 | pages = 1–14 | date = 2017 }}</ref>。以下に示す[[クラドグラム]]は2017年の千葉謙太郎らによるセントロサウルス亜科の系統解析に基づく<ref name="Michael J 2017"/>。 |
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|2=[[アルベルタケラトプス]] |
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== 古環境 == |
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[[File:Kaiparowits fauna.jpg|thumb|right|ナストケラトプス(後方中央)は他のケラトプス類や[[デイノニコサウリア]]、[[ステゴケラス]]などと共存していた。]] |
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既知のナストケラトプスの標本はユタ州南部の[[カイパロウィッツ累層]]のみで発見されている。[[アルゴン - アルゴン法]]では7610万〜7400万年前、後期白亜紀カンパニアン期の堆積物であるとされている<ref>Roberts EM, Deino AL, Chan MA (2005) 40Ar/39Ar age of the Kaiparowits Formation, southern Utah, and correlation of contemporaneous Campanian strata and vertebrate faunas along the margin of the Western Interior Basin. Cretaceous Res 26: 307–318.</ref><ref>Eaton, J.G., 2002. Multituberculate mammals from the Wahweap(Campanian, Aquilan) and Kaiparowits (Campanian, Judithian)formations, within and near Grand Staircase-Escalante NationalMonument, southern Utah. Miscellaneous Publication 02-4, UtahGeological Survey, 66 pp.</ref>。 |
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白亜紀後期、カイパロウィッツ層の古生物たちは、北米を西のラララミディア山脈と東のアパラチア山脈に分断した大きな内海である[[西部内陸海路]]の西岸近くに生息していた。 恐竜が住んでいた台地は、大きな水路と豊富な湿地の泥炭湿地、池、湖が支配する古代の氾濫原で、高地に囲まれていた。 気候は温暖湿潤で、豊富で多様な生物が生息していた<ref>Titus, Alan L. and Mark A. Loewen (editors). At the Top of the Grand Staircase: The Late Cretaceous of Southern Utah. 2013. Indiana University Press. Hardbound: 634 pp.</ref>。この地層は白亜紀後期の陸生層としては、世界最高かつ最も連続した記録の一つである<ref>{{cite web|last=Clinton|first=William|title=Preisdential Proclamation: Establishment of the Grand Staircase-Escalante National Monument|url=http://geology.utah.gov/online/c/c-93/gseprocl.htm|work=September 18, 1996|accessdate=9 November 2013|url-status=dead|archiveurl=https://web.archive.org/web/20130828042919/http://www.geology.utah.gov/online/c/c-93/gseprocl.htm|archivedate=28 August 2013}}</ref>。 |
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ナストケラトプスは[[環境]]を[[ドロマエオサウルス科]]、[[トロオドン科]]の[[タロス]]、[[オルニトミムス科]]、[[オヴィラプトロサウリア]]の[[ハグリフス]]、[[ティラノサウルス科]]の[[テラトフォネウス]]のような[[獣脚類]]、[[アカイナケファルス]]のような[[鎧竜]]、[[パラサウロロフス]]や[[グリポサウルス]]のような[[鳥脚類]]、そして[[ユタケラトプス]]や[[コスモケラトプス]]のような他の[[ケラトプス科]]などと共有していた<ref name=ZS05>{{cite journal |last=Zanno |first=Lindsay E. |author2=Sampson, Scott D. |year=2005 |title=A new oviraptorosaur (Theropoda; Maniraptora) from the Late Cretaceous (Campanian) of Utah |journal=Journal of Vertebrate Paleontology |volume=25 |issue=4 |pages=897–904 |doi=10.1671/0272-4634(2005)025[0897:ANOTMF]2.0.CO;2}}</ref>。また[[軟骨魚類]]、[[カエル]]、[[サンショウウオ]]、[[カメ]]、[[トカゲ]]、[[ワニ]]などの化石もカイパロウィッツ層から発見されている<ref name=ECHKP99>{{cite book |last=Eaton |first=Jeffrey G. |author2=Cifelli, Richard L. |author3=Hutchinson, J. Howard |author4=Kirkland, James I. |author5= Parrish, J. Michael |year=1999 |chapter=Cretaceous vertebrate faunas from the Kaiparowits Plateau, south-central Utah |editor=Gillete, David D.|title=Vertebrate Paleontology in Utah |publisher=Utah Geological Survey |location=Salt Lake City |series=Miscellaneous Publication 99-1 |pages=345–353 |isbn=1-55791-634-9 }}</ref>。 |
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== 文化面 == |
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2019年に公開された[[コリン・トレヴォロウ]]監督の短編映画、『[[w:Battle at Big Rock|バトル・アット・ビッグ・ロック]]』でナーストケラトプスをモチーフにした恐竜が[[コンピュータ・グラフィックス]]と[[アニマトロニクス]]で描かれている。これは[[ジュラシック・パーク]]フランチャイズの一部で、『[[ジュラシック・ワールド/炎の王国]]』(2018)の出来事の後日談であり、キャンプ場に現れたナーストケラトプスが[[アロサウルス]]と対決するシーンが見せ場となっている<ref name=Weintraub>{{cite web|last=Weintraub|first=Steve|title=Exclusive: Colin Trevorrow on How He Secretly Made the 'Jurassic World' Short Film 'Battle at Big Rock'|url=http://collider.com/jurassic-world-short-film-colin-trevorrow-interview/|website=[[Collider (website)|Collider]]|accessdate=September 11, 2019|date=September 11, 2019}}</ref>。 |
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== 脚注 == |
== 脚注 == |
2020年3月29日 (日) 06:55時点における版
ナーストケラトプス(Nasutoceratops)は、白亜紀後期のユタ州で発見された、セントロサウルス亜科の角竜である[1]。ナストケラトプス、 ナスートケラトプスとも表される。
ナーストケラトプス Nasutoceratops | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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N. titusi 頭骨
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地質時代 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
白亜紀後期 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
分類 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Nasutoceratops Sampson et al, 2013 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
種 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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形態
ナーストケラトプスはアメリカ合衆国・ユタ州の白亜紀後期の地層から発見され、2013年に命名された。原始的なセントロサウルス亜科の動物だが、目の上に2本の角を生やしており、鼻の上の角は発達していなかった。このようなタイプの他のセントロサウルス亜科はディアブロケラトプスやアルベルタケラトプスなどが知られているが、いずれもナーストケラトプスが生息していた時代には絶滅していた。 名前は「大きな鼻と角のある顔」を意味するが、その名の通り内鼻孔が上下に伸び、吻部が前後方向に短くなっていて、鼻が大きくなっていた。またウシを彷彿とさせるような、横方向に強く湾曲しながら前上方に伸びる上眼窩角もほかの角竜とは異なっている[2]。
発見と種
ナストケラトプスはホロタイプ、UMNH VP 16800 から知られる。これは部分的に関節した頭骨、後頭顆、頸椎、三つの部分的な前方胴椎、肩甲骨、関節していない左前肢、右前肢の一部、および皮膚印象である。他に2つの標本も参照されている。UMNH VP 19466 は、関節していない成体の頭骨で不完全な前上顎骨、上顎骨および鼻骨で構成される。UMNH VP 19469 は、亜成体の癒合した鱗状骨である。ホロタイプは2006年にユタ大学が指揮したカイパロウィッツ・プロジェクトの期間中に発見・採集された。その化石はグランド・ステアーケース・エスカランテ国立公園のカイパロウィッツ累層上部中層の砂岩に覆われていた。その堆積物は後期白亜紀カンパニアン後期(約7500万年前)のものと推定される[3]。
その標本は2010年にナストゥケラトプス・ティトゥシ Nasutuceratops titusi としてエリック・カール・ランドEric Karl Lund によって記載された[4]。しかしこれは nomen ex dissertatione(学位論文上での命名)であり、記載を伴う出版ではないため無効名である。スコット・サンプソン、ランド、マーク・ローウェン、アンドリュー・ファルケ、およびキャサリン・クレイトンは2013年にナストケラトプスを正式に記載した。模式種はナストケラトプス・ティトゥシ Nasutoceratops titusiである。属名はラテン語で「大きな鼻」を意味する nasutus と古代ギリシア語で「角のある顔」を意味する ceratopsの合成である。種小名はGSENMで化石を剖出したアラン・L・タイタス Alan L. Titus への献名である[5]。
記載
ホロタイプの頭骨は約1.5mの長さである。全長は4.5m、体重は1.5tと推定されている[6]。ナストケラトプスはいくつかの独特な固有派生形質をもつ。鼻骨における鼻孔周辺部分が強く発達しており、頭骨における眼窩より前の部分の約4分の3を占めている。 鼻骨後部が大きな内鼻孔によってくり抜かれたようになっている。上顎骨と前上顎骨の関節面が非常に大きい。 上顎骨には、2つの水平面を介して前上顎骨に接触する大きな内部突縁が存在する。上眼窩角の付け根が前方外向きであり、角は内側に湾曲したのち最終的にねじれて先端が上向きになる[5]。
またナストケラトプスはそれぞれの特徴そのものは独特ではないものの、組み合わせとしては個性的な特徴を備える。鼻角は低く狭く、基部が拡張されている。鱗状骨上面に、鱗状骨の縁から眼窩にかけて走る高い隆起がある。フリルは多少丸みを帯びていて正中線において最も広い。フリルの縁の皮骨(縁頭頂骨と縁鱗状骨)は尖っておらず、低い単純な三日月状である。頭頂骨の正中線上の遠位端は切れ込んでおらず、代わりに第0縁頭頂骨がある[5]。
ナストケラトプスの吻は短く高い。
その鼻骨には、鼻腔から骨に入り込む空洞が見られる。 他の角竜類では鼻腔の空洞は知られていないことから、この特徴はこの属独自の派生形質を表していると思われる。上顎には29本分もの歯槽があり、一つ一つに数本の歯が積み重なっている。 眼窩の間にある頭蓋天井は隆起しており、鼻先よりも明らかに高い。 水平方向に突起し湾曲した上眼窩角の配置は、古生物学者デビッド・ホーンによって現代のウシのようだと表現された[7]。上眼窩角は頭骨全体の約40%を占め、ほとんど吻部の頂点に届く高さに達し、骨芯の長さは457mmにも及び、絶対的にも相対的にもセントロサウルス亜科内で最も長いことが知られている[4]。
縁頬骨(頬角) は85mmの長さで、これも既知のセントロサウルス亜科内で最大である。フリルはほどほどに長く、両脇には大きな腎臓形の頭頂骨窓が貫通している。 正中線上頭頂を除いて両側に7個の縁頭頂骨があり、4〜5個程度の縁鱗状骨がある[4]前肢において、尺骨は非常に頑健で、膝頭の突起(尺骨肘頭突起)が大きい。 左肩の近くで見つかった皮膚印象を持つ3つのパッチのうち1つは、小さな三角形の鱗に囲まれた8〜11mm幅の大きな六角形の鱗のパターンを示している[4]。
分類
ナストケラトプスは2013年に基盤的セントロサウルス亜科として記載された。サンプソンらによる系統解析で、ナストケラトプスはアヴァケラトプスの姉妹群であることが示唆された。この研究によるとナストケラトプスの存在は、ララミディア大陸の北と南の間の動物相分離の仮説を支持するものである。 ナストケラトプスは、北方系のセントロサウルス亜科とは異なり、長い上眼窩角と短い鼻角を保持しており、カスモサウルス亜科と収斂した短い縁頭頂骨が発達していることが明らかになった[5]。2016年、このグループはナストケラトプス族(Nasutoceratopsini)と命名された。ナストケラトプスのほか、ANSP 15800(アヴァケラトプスのホロタイプ)、MOR 692(以前はアヴァケラトプスの成体標本として扱われていた)、オールドマン累層から新たに報告されたCMN 8804、マルタケラトプスを含んでいる[8]。以下に示すクラドグラムは2017年の千葉謙太郎らによるセントロサウルス亜科の系統解析に基づく[1]。
セントロサウルス亜科 |
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古環境
既知のナストケラトプスの標本はユタ州南部のカイパロウィッツ累層のみで発見されている。アルゴン - アルゴン法では7610万〜7400万年前、後期白亜紀カンパニアン期の堆積物であるとされている[9][10]。 白亜紀後期、カイパロウィッツ層の古生物たちは、北米を西のラララミディア山脈と東のアパラチア山脈に分断した大きな内海である西部内陸海路の西岸近くに生息していた。 恐竜が住んでいた台地は、大きな水路と豊富な湿地の泥炭湿地、池、湖が支配する古代の氾濫原で、高地に囲まれていた。 気候は温暖湿潤で、豊富で多様な生物が生息していた[11]。この地層は白亜紀後期の陸生層としては、世界最高かつ最も連続した記録の一つである[12]。 ナストケラトプスは環境をドロマエオサウルス科、トロオドン科のタロス、オルニトミムス科、オヴィラプトロサウリアのハグリフス、ティラノサウルス科のテラトフォネウスのような獣脚類、アカイナケファルスのような鎧竜、パラサウロロフスやグリポサウルスのような鳥脚類、そしてユタケラトプスやコスモケラトプスのような他のケラトプス科などと共有していた[13]。また軟骨魚類、カエル、サンショウウオ、カメ、トカゲ、ワニなどの化石もカイパロウィッツ層から発見されている[14]。
文化面
2019年に公開されたコリン・トレヴォロウ監督の短編映画、『バトル・アット・ビッグ・ロック』でナーストケラトプスをモチーフにした恐竜がコンピュータ・グラフィックスとアニマトロニクスで描かれている。これはジュラシック・パークフランチャイズの一部で、『ジュラシック・ワールド/炎の王国』(2018)の出来事の後日談であり、キャンプ場に現れたナーストケラトプスがアロサウルスと対決するシーンが見せ場となっている[15]。
脚注
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- ^ Weintraub, Steve (September 11, 2019). “Exclusive: Colin Trevorrow on How He Secretly Made the 'Jurassic World' Short Film 'Battle at Big Rock'”. Collider. September 11, 2019閲覧。