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「ラーセン棚氷」の版間の差分

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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ラーセンC棚氷では亀裂が確認されているが反映されていないため最新の情報を追加
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== 構成と変化 ==
== 構成と変化 ==
ラーセン棚氷は3つに分けられる。北から南に向かってラーセンA、ラーセンB、ラーセンCと呼ばれている。
ラーセン棚氷は3つに分けられる。北から南に向かってラーセンA、ラーセンB、ラーセンCと呼ばれている。
=== ラーセンA棚氷 ===
ラーセンA棚氷は2000年以上前から存在していたと推定される棚氷。ラーセンA棚氷は1995年に崩壊した<ref name="bbc">[http://www.bbc.com/japanese/38527550 南極の棚氷に亀裂 巨大な氷山が海に?] BBC NEWS JAPAN、2017年1月10日閲覧。</ref>。


=== ラーセンB棚氷 ===
ラーセンA棚氷は2000年以上前から存在していたと推定されているが、1995年1月に崩壊した。7年後の2002年2月には、12000年もの歴史を持つと思われる<ref name=Queens>Press Release (2005) "Ice Shelf disintigration threatens environment, Queen's study" Queens University, Kingston, Ontario, [http://www.eurekalert.org/pub_releases/2005-08/qu-isd080305.php online]</ref>ラーセンB棚氷も崩壊し<ref>[http://mainichi.jp/articles/20160907/dde/041/040/018000c 南極、大陸の棚氷、割れ目が急拡大 消滅の可能性も] [[毎日新聞]](2016年9月7日)</ref>、2002年だけで3275平方キロメートルの面積を有する720立方キロメートルもの氷が失われた<ref name=Hulbe>[http://web.pdx.edu/~chulbe/science/Larsen/larsen2002.html Hulbe, Christina (2002) "Larsen Ice Shelf 2002, warmest summer on record leads to disintegration" (Portland State University)]</ref>。
ラーセンB棚氷は12000年もの歴史を持つとれる棚氷<ref name=Queens>Press Release (2005) "Ice Shelf disintigration threatens environment, Queen's study" Queens University, Kingston, Ontario, [http://www.eurekalert.org/pub_releases/2005-08/qu-isd080305.php online]</ref>。2002年2月には、ラーセンB棚氷も崩壊し<ref>[http://mainichi.jp/articles/20160907/dde/041/040/018000c 南極、大陸の棚氷、割れ目が急拡大 消滅の可能性も] [[毎日新聞]](2016年9月7日)</ref>、2002年だけで3275平方キロメートルの面積を有する720立方キロメートルもの氷が失われた<ref name=Hulbe>[http://web.pdx.edu/~chulbe/science/Larsen/larsen2002.html Hulbe, Christina (2002) "Larsen Ice Shelf 2002, warmest summer on record leads to disintegration" (Portland State University)]</ref>。

=== ラーセンC棚氷 ===
ラーセンC棚氷は、南極の主要な棚氷のうち最北に位置している<ref name="bbc" />。2016年にはイギリスに本拠を置く研究グループ「MIDAS」がラーセンC棚氷の亀裂の急速な拡大を報告している<ref name="bbc" />。

== 棚氷の崩壊と影響 ==
棚氷の分離は必ずしも気候変動に関連して発生する現象ではなく地理学的なものであるが、地球温暖化が棚氷の分離を加速させているとみられている<ref name="bbc" />。


通常こうした棚氷は端から小さな氷山が徐々に分離して融解するが、ラーセンA、Bの崩壊では膨大な範囲の氷が多数の小片となって分解し、短期間のうちに消滅した点で異常とされる<ref name="Hulbe"/>。崩壊前には、棚氷の下が暖かい海流で削られていくのが確認されている<ref name=Pearce>Pearce, Fred (2006) ''The Last Generation: How Nature Will Take Her Revenge for Climate Change,'' Eden Project Books, p. 92</ref>。崩壊は、わずか3週間ほどで終わった。この際には融けた水が大きな役割を果たし、表面付近で夏の日差しに照らされて池を形成したのち、隙間を通って氷の中へ流れ落ち、[[楔]]のように氷を破壊したと考えられている<ref>[http://nsidc.org/iceshelves/larsenb2002/ Larsen B Ice Shelf Collapses in Antarctica]</ref><ref>[http://www.colorado.edu/news/releases/2001/14.html Antarctic Ice Shelf Collapse Triggered By Warmer Summers] Office of News Services, University of Colorado at Boulder, Jan. 16, 2001</ref>。
通常こうした棚氷は端から小さな氷山が徐々に分離して融解するが、ラーセンA、Bの崩壊では膨大な範囲の氷が多数の小片となって分解し、短期間のうちに消滅した点で異常とされる<ref name="Hulbe"/>。崩壊前には、棚氷の下が暖かい海流で削られていくのが確認されている<ref name=Pearce>Pearce, Fred (2006) ''The Last Generation: How Nature Will Take Her Revenge for Climate Change,'' Eden Project Books, p. 92</ref>。崩壊は、わずか3週間ほどで終わった。この際には融けた水が大きな役割を果たし、表面付近で夏の日差しに照らされて池を形成したのち、隙間を通って氷の中へ流れ落ち、[[楔]]のように氷を破壊したと考えられている<ref>[http://nsidc.org/iceshelves/larsenb2002/ Larsen B Ice Shelf Collapses in Antarctica]</ref><ref>[http://www.colorado.edu/news/releases/2001/14.html Antarctic Ice Shelf Collapse Triggered By Warmer Summers] Office of News Services, University of Colorado at Boulder, Jan. 16, 2001</ref>。


南極半島では1940年代以降10年に0.5℃の割合で気温が上昇しており、ラーセン棚氷の崩壊にも南極半島での[[地球温暖化]]が影響していると考えられている<ref name=Connor>Connor, Steve (2005) "Ice shelf collapse was biggest for 10,000 years since Ice Age" ''The Independent,'' London (Aug 4), [http://findarticles.com/p/articles/mi_qn4158/is_20050804/ai_n14872277 online]</ref>。
地球温暖化が棚氷の分離を加速させているとみられているが、その直接的な根拠は示されていない<ref name="bbc" />。
ただ、南極半島では1940年代以降10年に0.5℃の割合で気温が上昇しており、ラーセン棚氷の崩壊にも南極半島での[[地球温暖化]]が影響していると考えられている<ref name=Connor>Connor, Steve (2005) "Ice shelf collapse was biggest for 10,000 years since Ice Age" ''The Independent,'' London (Aug 4), [http://findarticles.com/p/articles/mi_qn4158/is_20050804/ai_n14872277 online]</ref>。

ラーセンC棚氷が分離すると5000平方キロメートルもの氷が漂流し始めることになる<ref name="bbc" />。


海面上昇も懸念されている。海面上昇は棚氷で堰き止められていた氷河が棚氷の崩壊によって海に浮かぶことなく大量に流入し、その流入速度が増すことによって生じると考えられている<ref name="bbc" />。ラーセンC棚氷によって堰き止められている氷がすべて海に流入すると海面は10cm上昇すると推計されている<ref name="bbc" />。
ラーセンC棚氷はいまのところは安定しているように見える<ref name=RRR>Riedl C, Rott H, Rack W (2004) "Recent Variations of Larsen Ice Shelf, Antarctic Peninsula, Observed by Envisat" ''Proceedings of the 2004 Envisat & ERS Symposium'', Salzburg, Austria, [http://earth.esa.int/workshops/salzburg04/papers_posters/4A5_riedl_192.pdf online]</ref>が、[[地球温暖化]]の進行により、今後10年以内にこれも崩壊するだろうと言われている<ref name=Rignot>Rignot, Eric (2007) "Mass Balance and Ice Dynamics of Antarctic Peninsula Glaciers for IPY2007-2008" Proposal #359, International Polar Year Expression of Intent, [http://classic.ipy.org/development/eoi/details.php?id=359 online]</ref>。そのとき、1893年にラーセン一行が見た巨大な棚氷は、それからわずか1世紀ほどで消滅することになる。


== 名称の由来 ==
== 名称の由来 ==

2017年1月10日 (火) 08:04時点における版

南極の主要な棚氷を示した地図。
  ラーセンC棚氷
南極半島と棚氷の地図。崩壊前のラーセン棚氷が示されている。

ラーセン棚氷(らーせんたなごおり、: Larsen Ice Shelf)は、南極半島東岸に存在する棚氷である。ウェッデル海の北西部にあたり、ロンギング岬(Cape Longing)からハースト島(Hearst Island)の南までの間に広がっている。ラルセン棚氷ともよばれる。棚氷は大きく3つに分かれており、うち1つが20世紀に、もう1つは21世紀初頭に消滅し、2015年現在は最も南にある部分を残すのみとなっている。

構成と変化

ラーセン棚氷は3つに分けられる。北から南に向かってラーセンA、ラーセンB、ラーセンCと呼ばれている。

ラーセンA棚氷

ラーセンA棚氷は2000年以上前から存在していたと推定される棚氷。ラーセンA棚氷は1995年に崩壊した[1]

ラーセンB棚氷

ラーセンB棚氷は12000年もの歴史を持つとされる棚氷[2]。2002年2月には、ラーセンB棚氷も崩壊し[3]、2002年だけで3275平方キロメートルの面積を有する720立方キロメートルもの氷が失われた[4]

ラーセンC棚氷

ラーセンC棚氷は、南極の主要な棚氷のうち最北に位置している[1]。2016年にはイギリスに本拠を置く研究グループ「MIDAS」がラーセンC棚氷の亀裂の急速な拡大を報告している[1]

棚氷の崩壊と影響

棚氷の分離は必ずしも気候変動に関連して発生する現象ではなく地理学的なものであるが、地球温暖化が棚氷の分離を加速させているとみられている[1]

通常こうした棚氷は端から小さな氷山が徐々に分離して融解するが、ラーセンA、Bの崩壊では膨大な範囲の氷が多数の小片となって分解し、短期間のうちに消滅した点で異常とされる[4]。崩壊前には、棚氷の下が暖かい海流で削られていくのが確認されている[5]。崩壊は、わずか3週間ほどで終わった。この際には融けた水が大きな役割を果たし、表面付近で夏の日差しに照らされて池を形成したのち、隙間を通って氷の中へ流れ落ち、のように氷を破壊したと考えられている[6][7]

地球温暖化が棚氷の分離を加速させているとみられているが、その直接的な根拠は示されていない[1]

ただ、南極半島では1940年代以降10年に0.5℃の割合で気温が上昇しており、ラーセン棚氷の崩壊にも南極半島での地球温暖化が影響していると考えられている[8]

ラーセンC棚氷が分離すると5000平方キロメートルもの氷が漂流し始めることになる[1]

海面上昇も懸念されている。海面上昇は棚氷で堰き止められていた氷河が棚氷の崩壊によって海に浮かぶことなく大量に流入し、その流入速度が増すことによって生じると考えられている[1]。ラーセンC棚氷によって堰き止められている氷がすべて海に流入すると海面は10cm上昇すると推計されている[1]

名称の由来

この棚氷の「ラーセン」と言う名称は、1893年に氷に沿って南緯68度10分の地点まで航海したノルウェーの捕鯨船船長カール・アントン・ラーセン(Carl Anton Larsen)に因んでいる。[9]

参照資料

  1. ^ a b c d e f g h 南極の棚氷に亀裂 巨大な氷山が海に? BBC NEWS JAPAN、2017年1月10日閲覧。
  2. ^ Press Release (2005) "Ice Shelf disintigration threatens environment, Queen's study" Queens University, Kingston, Ontario, online
  3. ^ 南極、大陸の棚氷、割れ目が急拡大 消滅の可能性も 毎日新聞(2016年9月7日)
  4. ^ a b Hulbe, Christina (2002) "Larsen Ice Shelf 2002, warmest summer on record leads to disintegration" (Portland State University)
  5. ^ Pearce, Fred (2006) The Last Generation: How Nature Will Take Her Revenge for Climate Change, Eden Project Books, p. 92
  6. ^ Larsen B Ice Shelf Collapses in Antarctica
  7. ^ Antarctic Ice Shelf Collapse Triggered By Warmer Summers Office of News Services, University of Colorado at Boulder, Jan. 16, 2001
  8. ^ Connor, Steve (2005) "Ice shelf collapse was biggest for 10,000 years since Ice Age" The Independent, London (Aug 4), online
  9. ^ USGS GNIS: Larsen Ice Shelf

外部リンク