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「リノール酸」の版間の差分

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他方で、日本人のリノール酸摂取量は平均して13-15g/日で過剰にω-6脂肪酸を摂取しており、ω-6脂肪酸由来の過剰な生理活性物質の産生を防ぐために、代表的なω-6脂肪酸であるリノール酸摂取量を7-8g/日に制限すべきとの意見もある<ref name="kinjotp1"/>。炎症性のある[[ロイコトリエン]]や[[プロスタグランジン]]のような[[アラキドン酸カスケード]]の原料であるω-6脂肪酸(リノール酸)の摂り過ぎとそれと代謝酵素が重複しているために拮抗関係にあるω-3脂肪酸(α-リノレン酸)との摂取バランスがこわれて過敏性が増加し[[アレルギー]]が惹起されやすくなっているとの報告もある<ref>馬場實、中川武正:食物アレルギーの手引き、南江堂、1、54-55、1994</ref>。
他方で、日本人のリノール酸摂取量は平均して13-15g/日で過剰にω-6脂肪酸を摂取しており、ω-6脂肪酸由来の過剰な生理活性物質の産生を防ぐために、代表的なω-6脂肪酸であるリノール酸摂取量を7-8g/日に制限すべきとの意見もある<ref name="kinjotp1"/>。炎症性のある[[ロイコトリエン]]や[[プロスタグランジン]]のような[[アラキドン酸カスケード]]の原料であるω-6脂肪酸(リノール酸)の摂り過ぎとそれと代謝酵素が重複しているために拮抗関係にあるω-3脂肪酸(α-リノレン酸)との摂取バランスがこわれて過敏性が増加し[[アレルギー]]が惹起されやすくなっているとの報告もある<ref>馬場實、中川武正:食物アレルギーの手引き、南江堂、1、54-55、1994</ref>。


ω-3脂肪酸とω-6脂肪酸の望ましい摂取比率は1:1から1:4であると言われている<ref>Tribole, Evelyn. [http://worldcat.org/oclc/77520775&referer=brief_results"The Ultimate Omega-3 Diet]" New York. McGraw-Hill. 2007 ISBN 13:978-0-07-146986-9
ω-3脂肪酸とω-6脂肪酸の望ましい摂取比率は1:1から1:4であると言われている<ref>Tribole, Evelyn. [http://worldcat.org/oclc/77520775&referer=brief_results"The Ultimate Omega-3 Diet]" New York. McGraw-Hill. 2007 ISBN 978-0-07-146986-9
</ref><ref>Lands, William E.M. "Fish, Omega-3 and Human Health" Champaign. AOCS Press. 2005 ISBN 1-893997-81-2</ref>。典型的な西洋での食事ではω-3脂肪酸とω-6脂肪酸の比率は 1:10から1:30の間で、ω-6脂肪酸の摂取が極めて高い実態にある<ref>{{cite journal |author=Freeman MP, Hibbeln JR, Wisner KL, ''et al.'' |title=Omega-3 fatty acids: evidence basis for treatment and future research in psychiatry |journal=J Clin Psychiatry |volume=67 |issue=12 |pages=1954–67 |year=2006 |month=December |pmid=17194275}}</ref><ref>{{cite journal |author=Lewis MD, Hibbeln JR, Johnson JE, Lin YH, Hyun DY, Loewke JD |title=Suicide deaths of active-duty US military and omega-3 fatty-acid status: a case-control comparison |journal=J Clin Psychiatry |volume=72 |issue=12 |pages=1585–90 |year=2011 |month=December |pmid=21903029 |pmc=3259251 |doi=10.4088/JCP.11m06879}}</ref>。この原因は、代表的な[[食用油]]の多くが高い比率のω-6脂肪酸を含んでいてω-3脂肪酸をほとんど含んでいないからである。
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2016年11月15日 (火) 17:28時点における版

リノール酸
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識別情報
CAS登録番号 60-33-3
特性
化学式 C18H32O2
モル質量 280.45 g/mol
密度 0.9 g/cm3
融点

−5 °C

沸点

229 °C

特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。
必須脂肪酸の代謝経路とエイコサノイドの形成。
食用油必須脂肪酸[2]
動物性脂肪等における必須脂肪酸の割合(飼料等に影響を受けている)[2]

リノール酸(リノールさん、: linoleic acid、数値表現 18:2(n-6)または18:2(Δ9,12))は、炭素数18の不飽和脂肪酸の1種である。9位と12位に炭素炭素間のシス型二重結合を2つ持っており、18:2(n-6) とも表記される n-6系の多価不飽和脂肪酸である。分子式 C18H32O2、示性式 CH3(CH2)4(CH=CHCH2)2(CH2)6COOH。

リノール (linoleic) はギリシャ語で亜麻の linon と油の oleic に由来する。油の oleic はオレイン酸 (oleic acid) の由来でもある。栄養学では、摂取することが必須の栄養素である必須脂肪酸である。

植物または微生物中で、ω6位に二重結合を作るΔ12-脂肪酸デサチュラーゼ によりオレイン酸の二重結合が1個増えてリノール酸が生成される。ヒトを含めた動物はΔ12-脂肪酸デサチュラーゼを有していないので自らリノール酸を合成することができない[3]

生理学

植物油に多く含まれ、特にベニバナ油(サフラワー油)やコーン油に多い。ヒトを含めた動物の体内ではリノール酸の不飽和化、炭素鎖の長鎖化が進行し、アラキドン酸からアラキドン酸カスケードと呼ばれる生体反応を経てプロスタグランジンなどの生理活性物質の原料となるほか、細胞膜の膜脂質として多く見られる。

リノール酸はn-6系の必須脂肪酸である。これはヒトを含む哺乳動物において、食餌からの摂取が不可欠であるためである。n-6系の必須脂肪酸の欠乏により、髪のパサつきや抜け毛などのほか、創傷の治癒の遅れが見られる。また、血中コレステロール値や中性脂肪値を一時的に低下させる作用を持つ。しかしながら、リノール酸の過度の摂取は、過度の摂取はアレルギーを悪化させたり、大腸癌などのリスクを高める。

最近の研究結果では、日常で摂取する飽和脂肪酸の一部(15%程度)をリノール酸に置き換えた場合、全死因死亡、心血管死亡、冠疾患死亡リスクが上昇する可能性が指摘されている[4]

不飽和脂肪酸共通の性質は不飽和脂肪酸の項に詳しい。

必要摂取量

国際的に脂質を評価しているISSFAL(International Society for the Study of Fatty Acids and Lipids)[5]は、2004年には、リノール酸の適正な摂取量は全カロリーの2%(4-5g)としている[6]。日本の1999年の報告では、リノール酸を2.4%(5-8g)が必要だとされた[7]

リノール酸の必要量は「日本人の食事摂取基準(2005年版)」で成人では、ω-6系脂肪酸は1日に7-12グラム以上とされている。日本人の食事摂取基準(2010年版)では、ω-6脂肪酸について1日9g前後の摂取が適正で、摂取上限は総摂取エネルギーの10%(22-30g)としている[8]

他方で、日本人のリノール酸摂取量は平均して13-15g/日で過剰にω-6脂肪酸を摂取しており、ω-6脂肪酸由来の過剰な生理活性物質の産生を防ぐために、代表的なω-6脂肪酸であるリノール酸摂取量を7-8g/日に制限すべきとの意見もある[3]。炎症性のあるロイコトリエンプロスタグランジンのようなアラキドン酸カスケードの原料であるω-6脂肪酸(リノール酸)の摂り過ぎとそれと代謝酵素が重複しているために拮抗関係にあるω-3脂肪酸(α-リノレン酸)との摂取バランスがこわれて過敏性が増加しアレルギーが惹起されやすくなっているとの報告もある[9]

ω-3脂肪酸とω-6脂肪酸の望ましい摂取比率は1:1から1:4であると言われている[10][11]。典型的な西洋での食事ではω-3脂肪酸とω-6脂肪酸の比率は 1:10から1:30の間で、ω-6脂肪酸の摂取が極めて高い実態にある[12][13]。この原因は、代表的な食用油の多くが高い比率のω-6脂肪酸を含んでいてω-3脂肪酸をほとんど含んでいないからである。

必須脂肪酸は、多くの代謝過程ではたらいているため、不足したり、種類のバランスが悪かったりすると、体調を崩す原因になるともいわれている。

植物油の脂肪酸組成

植物油の脂肪酸組成
植物油の脂肪酸組成[14][15][16]
種類 飽和脂肪酸 一価不飽和脂肪酸 多価不飽和脂肪酸 オレイン酸
(ω-9)
発煙点
多価合計 α-リノレン酸
(ω-3)
リノール酸
(ω-6)
水素添加
キャノーラ油 7.365 63.276 28.142 10 22 62 400 °F (204 °C) [17]
ココナッツ油 86.500 5.800 1.800 - 2 6 350 °F (177 °C) [18]
コーン油 12.948 27.576 54.677 1 58 28 450 °F (232 °C) [17]
綿実油 25.900 17.800 51.900 1 54 19 420 °F (216 °C) [17]
オリーブ油 13.808 72.961 10.523 1 10 71 374 °F (190 °C) [19]
パーム油 49.300 37.000 9.300 - 10 40 455 °F (235 °C) [20]
ピーナッツオイル 16.900 46.200 32.000 - 32 48 437 °F (225 °C) [17]
ひまわり油
(中オレイン種)
9.009 57.334 28.962 0.037 28.705 57.029 510 °F (266 °C) [17]
大豆油 15.650 22.783 57.740 7 54 24 460 °F (238 °C) [17]
ベニバナ油
(高オレイン種)
7.541 75.221 12.820 0.096 12.724 74.742 510 °F (266 °C) [17]
米油 19.7 39.3 35 1.6 33.4 39.1 450 °F (232 °C)
[要出典]
グレープ
シード
オイル
9.6 16 69.9 0.1 69.6 15.8 421 °F (216 °C)
[要出典]
アマニ油
(フラックスシードオイル)
8.976 18.438 67.849 53.368 14.327 18.316 225 °F (107 °C)
[要出典]
ごま油 14.2 39.7 41.7 0.3 41.3 39.3 350 °F (177 °C)
~450 °F (232 °C) [21]
[要出典]
水素添加
綿実油
(水素添加)
93.600 1.529 0.587 0.2 0.287 0.957
パーム油
(水素添加)
[要出典]
47.500 40.600 7.500
大豆油
(水素添加)
[要出典]
21.100 73.700 0.400 0.096[14]
値は重量パーセント

魚介類の脂肪酸

魚介類100g中の主な脂肪酸については魚介類の脂肪酸を参照のこと。

肉類中の必須脂肪酸

肉類100g中の必須脂肪酸については必須脂肪酸#肉類中の必須脂肪酸を参照のこと。

野菜中の必須脂肪酸

野菜(100g)中の必須脂肪酸量(mg)
野菜(100g)中の必須脂肪酸量(mg/100g)[22](注・野菜は脂質そのものの含有比率が低いため豊富に食べた場合に相当量となる)
野菜 部位、状態 ω-3
α‐リノレン酸
(mg/100g)
ω-6
リノール酸
(mg/100g)
えだまめ 500 2000
えだまめ 冷凍 500 3000
グリンピース 10 70
グリンピース 冷凍 30 200
日本かぼちゃ 果実、生 20 7
西洋かぼちゃ 果実、生 20 40
キャベツ 結球葉、生 9 10
レッドキャベツ 結球葉、生 7 6
きゅうり 果実、生 8 4
ケール 葉、生 40 20
こまつな 葉、生 60 8
しゅんぎく 葉、生 70 30
セロリ 葉柄、生 5 30
そらまめ 未熟豆、生 4 50
だいこん 葉、生 20 3
だいこん 根、皮つき、生 20 6
つまみな 葉、生 60 10
たまねぎ りん茎、生 1 20
スイートコーン 未熟種子、生 20 500
スイートコーン 未熟種子、ホール、冷凍 20 600
スイートコーン 未熟種子、カーネル、冷凍 20 500
トマト 果実、生 3 20
トレビス 葉、生 20 30
とんぶり ゆで 100 1000
なす 果実、生 0.9 4
にんじん 根、皮つき、生 4 30
きんとき 根、皮つき、生 5 30
きんとき 根、皮むき、生 7 50
にんにく りん茎、生 40 400
ねぎ 葉、生 40 40
はくさい 結球葉、生 20 3
ピーマン 果実、生 10 30
ほうれんそう 葉、生 100 30
まこも 茎、生 5 30
むかご 肉芽、生 10 50
大豆もやし 100 600
レタス 結球葉、生 10 10
サラダ菜 葉、生 50 20
コスレタス 葉、生 20 10
れんこん 根茎、生 3 20
ロケットサラダ 葉、生 50 10

工業的用途

リノール酸は、石鹸や乳化剤などの製造に用いられる。また、肌の保湿や、ニキビなどに対する局所的な抗炎症作用など肌に良い性質を持ち、化粧品にも使われている。

脚注

  1. ^ Beare-Rogers (2001年). “IUPAC Lexicon of Lipid Nutrition” (pdf). 2006年2月22日閲覧。
  2. ^ a b USDA National Nutrient Database
  3. ^ a b I章 最新の脂質栄養を理解するための基礎 ― ω(オメガ)バランスとは?脂質栄養学の新方向とトピックス
  4. ^ リノール酸の摂取増加で死亡リスクが上昇
  5. ^ ISSFAL (英語) (ISSFAL: International Society for the Study of Fatty Acids and Lipids)
  6. ^ Cunnane S, Drevon CA, Harris W, et al. "Recommendations for intakes of polyunsaturated fatty acids in healthy adults" ISSFAL Newsletter 11(2), 2004, pp12-25
  7. ^ 『第六次改定 日本人の栄養所要量―食事摂取基準』健康・栄養情報研究会編、第一出版、1999年。ISBN 9784804108940。53-54頁。
  8. ^ 脂質」『日本人の食事摂取基準」(2010年版)』pp77-108
  9. ^ 馬場實、中川武正:食物アレルギーの手引き、南江堂、1、54-55、1994
  10. ^ Tribole, Evelyn. "The Ultimate Omega-3 Diet" New York. McGraw-Hill. 2007 ISBN 978-0-07-146986-9
  11. ^ Lands, William E.M. "Fish, Omega-3 and Human Health" Champaign. AOCS Press. 2005 ISBN 1-893997-81-2
  12. ^ Freeman MP, Hibbeln JR, Wisner KL, et al. (December 2006). “Omega-3 fatty acids: evidence basis for treatment and future research in psychiatry”. J Clin Psychiatry 67 (12): 1954–67. PMID 17194275. 
  13. ^ Lewis MD, Hibbeln JR, Johnson JE, Lin YH, Hyun DY, Loewke JD (December 2011). “Suicide deaths of active-duty US military and omega-3 fatty-acid status: a case-control comparison”. J Clin Psychiatry 72 (12): 1585–90. doi:10.4088/JCP.11m06879. PMC 3259251. PMID 21903029. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3259251/. 
  14. ^ a b USDA National Nutrient database, Release 24,28”. United States Department of Agriculture. 2012/3/26,2016/03/21閲覧。
  15. ^ Fats, Oils, Fatty Acids, Triglycerides”. Scientific Psychic (R). 2012年3月26日閲覧。
  16. ^ 特に引用の表示がない場合、脂肪酸の値はUSDA National Nutrient databaseの値を掲載している。ω3-ω9の値については一部Scientific Psychic(R)の値となっている。
  17. ^ a b c d e f g Wolke, Robert L. (May 16, 2007). “Where There's Smoke, There's a Fryer”. The Washington Post. http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2007/05/15/AR2007051500398.html March 5, 2011閲覧。 
  18. ^ Nutiva, Coconut Oil Manufacturer,http://nutiva.com/the-nutiva-kitchen/coconut-oil-recipes/
  19. ^ The Culinary Institute of America (2011). The Professional Chef. New York: Wiley. ISBN 0-470-42135-5 
  20. ^ Scheda tecnica dell'olio di palma bifrazionato PO 64.
  21. ^ 精製度により発煙点は大きく変わる
  22. ^ 五訂増補 日本食品標準成分表 脂肪酸成分表編』野菜編から概算

関連項目

外部リンク