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「エレクトラ (ソポクレス)」の版間の差分

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『'''エレクトラ'''』(エーレクトラー、{{lang-el|Ἠλέκτρα}}、{{lang-la|Electra}})は、[[古代ギリシャ]][[三大悲劇詩人]]の一人である[[ソポクレス]]が書いた[[悲劇]]。執筆された年は不明だが、後期の作品であると考えられている。本作の他に同じく[[ミケーネ]]の王[[アガメムノーン|アガメムノン]]の娘[[レクトラー|エレクトラ]]を主役にした[[エウリピデス]]の作品と、同じ伝説を扱っているがアガメムノンの息子の[[オレステース]]を主役に据えた[[アイスキュロス]]の作品がある。
『'''エレクトラ'''』(エーレクトラー、{{lang-grc|Ἠλέκτρα}}、{{lang-la|Electra}})は、[[古代ギリシャ]][[三大悲劇詩人]]の一人である[[ソポクレス]]が書いた[[悲劇]]。執筆された年は不明だが、『[[ピロクテテス (ソポクレス)|ピロクテテス]]』(紀元前409年)や『[[コロノスのオイディプス]]』(紀元前401年)と様々な文体上の共通点を有しており、このため後期の作品ではないかと考えられている。

[[トロイア戦争]]後の[[アルゴス]]の街を舞台とし、[[エーレクトラー|エレクトラ]]とその弟[[オレステース]]が、母である[[クリュタイムネーストラー]]と継父[[アイギストス]]に対して父[[アガメムノーン]]殺害の復讐を果たす物語である。

本作の他に同じく[[ミケーネ]]の王アガメムノーンの娘エレクトラを主役にした[[エウリピデス]]の作品と、同じ伝説を扱っているがアガメムノンの息子のオレステースを主役に据えた[[アイスキュロス]]の作品がある。

== 背景 ==
王であるアガメムノーンがトロイア戦争から帰還し、側女として[[カッサンドラー]]を連れて帰ってきた。アガメムノーンの妻クリュタイムネーストラーは夫のいとこであるアイギストスを恋人としており、アガメムノーンを殺害する。クリュタイムネーストラーは戦争がはじまる前にアガメムノーンが娘の[[イーピゲネイア]]を神々の命に応じて生け贄として殺したため、その復讐として夫殺しは正当であると信じていた。アガメムノーンとクリュタイムネーストラーの娘エレクトラはまだ小さい弟オレステースを母の手から救い、[[フォキス]]のストロフィオスのところに預ける。この芝居は、大人の男性となったオレステースが復讐を行い、王位を要求するつもりで数年後に帰ってくるところからはじまる。


== あらすじ ==
== あらすじ ==
[[トロイア戦争]]から帰還したアガメムノンは妻の[[クリュタイムネーストラー|クリュタイムネストラ]]とその情夫[[アイギストス]]によって暗殺された。劇は暗殺されたアガメムノンの墓前にアガメムノンの遺児オレステスが現れるところから始まる。オレステスは従者に、[[デルポイ#デルポイの神託|デルフォイの神託所]]で[[アポロン]]から授けられた策を説明し、二人はそれを実行に向かう。
[[トロイア戦争]]から帰還したアガメムノンは妻の[[クリュタイムネーストラー|クリュタイムネストラ]]とその情夫[[アイギストス]]によって暗殺された。劇は暗殺されたアガメムノンの墓前にアガメムノンの遺児オレステスが現れるところから始まる。オレステスは従者に、[[デルポイ#デルフィの神託|デルフォイの神託所]]で[[アポロン]]から授けられた策を説明し、二人はそれを実行に向かう。


オレステスが退場するのに代わってエレクトラが登場。アガメムノンの死やオレステスの不在を嘆く。そこにエレクトラの妹[[クリュソテミス]]や母クリュタイムネストラが現れる。エレクトラと彼女らが口論したのち、使者がオレステスが競技中に事故死したとの知らせを持ってくる。知らせを聞いたクリュタイムネストラやクリュソテミスは勝ち誇りながらその場を去る。残されたエレクトラが嘆いていると、そこにオレステスが現れ、先の知らせがアポロンの策による偽報なのだと説明する。
オレステスが退場するのに代わってエレクトラが登場。アガメムノンの死やオレステスの不在を嘆く。そこにエレクトラの妹[[クリュソテミス]]や母クリュタイムネストラが現れる。エレクトラと彼女らが口論したのち、使者がオレステスが競技中に事故死したとの知らせを持ってくる。知らせを聞いたクリュタイムネストラやクリュソテミスは勝ち誇りながらその場を去る。残されたエレクトラが嘆いていると、そこにオレステスが現れ、先の知らせがアポロンの策による偽報なのだと説明する。
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策を知らされたエレクトラはオレステスと協力してクリュタイムネストラを殺害。さらに偽報を聞いてやってきたアイギストスも捕らえて屋敷の中に引き立てていく。[[コロス]]が二人の勝利を称えながら劇は終わる。
策を知らされたエレクトラはオレステスと協力してクリュタイムネストラを殺害。さらに偽報を聞いてやってきたアイギストスも捕らえて屋敷の中に引き立てていく。[[コロス]]が二人の勝利を称えながら劇は終わる。


==類似の主題を扱った作品==
== 日本語訳 ==
オレステースの復讐の物語はギリシア悲劇においては人気のある題材であった。[[アテーナイ]]の主要な悲劇作家であった3人は全員、この主題を扱った芝居を書いており、現存している。ソポクレスの『エレクトラ』以外の作品としては以下のようなものがある。
*『エレクトラ』 [[山形治江]]訳、[[劇書房]]、2003年
*『[[コエーポロイ|供養する女たち]]』(紀元前258年) - [[アイスキュロス]]による[[オレステイア]]三部作のうちの一作である。
*『希臘悲壯劇 ソポクレース』 [[理想社]]、1941年
*『[[エレクトラ (エウリピデス)|エレクトラ]]』 - [[エウリピデス]]による戯曲で、おそらくは紀元前410年代の半ば頃、紀元前413年より前に書かれたのではないかと言われている。基本的にはソフォクレスと同じ物語だが、非常に異なった戯曲である。
*『ギリシア2』 [[人文書院]]、1960
*失われた[[叙事詩の環]]のひとつである『[[ノストイ]]』(『帰国譚』)の終わりの部分でこの物語が語られていたと考えられている。
*『ギリシャ悲劇全集2 [[鼎出版会]]、1978年
*[[ホメーロス]]の『[[オデュッセイア]]』にもこの出来事が登場する。
*『ギリシア悲劇2』 [[ちくま文庫]]、1986年
**元版 『世界古典文学全集8 アイスキュロスソポクレス』 [[筑摩書房]]、1964年
*『ギリシア悲劇全集4』 [[岩波書店]]、1990年
*『古典劇大系 第一巻希臘編1』 [[近代社]]、1925年
*『世界戯曲全集 第一巻希臘編』 近代社、1927年
*『ギリシア劇集』 [[新潮社]]、1963年


== 受容 ==
== 参考文献 == <!-- {{Cite book}} --> <!-- {{Cite journal}} -->
L・A・ポストは、ソポクレスの『エレクトラ』は「アクションの強調という点でギリシア悲劇の中でも特異な作品」であったと述べている<ref>{{cite journal |last=Post |first=L.A. |date=March 2, 1953 |title=Sophocles, Strategy, and the Electra |url=http://www.jstor.org/stable/4343363 |journal=The Classical Weekly |publisher=Johns Hopkins University Press |volume=46 |pages=150–153 |accessdate=30 December 2015}}</ref>。
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|title = アイスキュロス ソポクレス 世界古典文学全集8
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}}


== 脚注・出典 ==
== 翻案 ==
* 『エレクトラ』(''Elektra'') - [[フーゴ・フォン・ホーフマンスタール]]による1903年の翻案戯曲である。
{{脚注ヘルプ}}
* 『[[エレクトラ (リヒャルト・シュトラウス)|エレクトラ]]』(''Elektra'', Op. 58) - [[リヒャルト・シュトラウス]]が作曲し、[[フーゴ・フォン・ホーフマンスタール]]が台本を担当した。1909年の一幕もののオペラである。
* 『エレクトラ』(''Elektra'') - 2010年の[[マラヤーラム語]]による映画で、シャーマプラサード(Shyamaprasad)監督・共同脚本による心理ドラマである。

== 日本語訳 ==
*『ギリシア悲劇2 ソポクレス[[松平千秋]]訳、[[ちくま文庫]]、1986年
**『ギリシア悲劇全集 第2巻 ソポクレス』 [[人文書院]]、1960年、各・松平千秋訳
**『[[世界古典文学全集]]8 アイスキュロス ソポクレス』 [[筑摩書房]]、1964年
**『ギリシア劇集』 [[新潮社]]、1963
*『ギリシア悲劇全集4 ソポクレース大芝芳弘訳、[[岩波書店]]、1990年
*『エレクトラ』 [[山形治江]]訳、劇書房、2003年
*『古典劇大系 第一巻 希臘編1』 [[村松正俊]]訳、近代社、1925年
*『世界戯曲全集 第一巻 希臘編』 同上、近代社、1927年
*『希臘悲壯劇 ソポクレース』 [[内山敬二郎]]訳、[[理想社]]、1941年
*『ギリシャ悲劇全集2 内山敬二郎訳、鼎出版会、1978年、改訳

== 脚注 ==
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== 関連項目 ==
== 参考文献 ==
* {{Cite book|和書|author = |editor = [[高津春繁]]編|title = アイスキュロス ソポクレス 世界古典文学全集8|year = 1974|publisher = [[筑摩書房]]|series = |isbn = |page = }}

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* [[エーレクトラー]]


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[[Category:王女を主人公した物語]]
[[Category:王女を主人公した舞台作品]]
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[[Category:トロイア戦争を題材とした古典文学]]

2024年5月5日 (日) 14:18時点における最新版

エレクトラ』(エーレクトラー、古代ギリシア語: Ἠλέκτραラテン語: Electra)は、古代ギリシャ三大悲劇詩人の一人であるソポクレスが書いた悲劇。執筆された年は不明だが、『ピロクテテス』(紀元前409年)や『コロノスのオイディプス』(紀元前401年)と様々な文体上の共通点を有しており、このため後期の作品ではないかと考えられている。

トロイア戦争後のアルゴスの街を舞台とし、エレクトラとその弟オレステースが、母であるクリュタイムネーストラーと継父アイギストスに対して父アガメムノーン殺害の復讐を果たす物語である。

本作の他に同じくミケーネの王アガメムノーンの娘エレクトラを主役にしたエウリピデスの作品と、同じ伝説を扱っているがアガメムノンの息子のオレステースを主役に据えたアイスキュロスの作品がある。

背景

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王であるアガメムノーンがトロイア戦争から帰還し、側女としてカッサンドラーを連れて帰ってきた。アガメムノーンの妻クリュタイムネーストラーは夫のいとこであるアイギストスを恋人としており、アガメムノーンを殺害する。クリュタイムネーストラーは戦争がはじまる前にアガメムノーンが娘のイーピゲネイアを神々の命に応じて生け贄として殺したため、その復讐として夫殺しは正当であると信じていた。アガメムノーンとクリュタイムネーストラーの娘エレクトラはまだ小さい弟オレステースを母の手から救い、フォキスのストロフィオスのところに預ける。この芝居は、大人の男性となったオレステースが復讐を行い、王位を要求するつもりで数年後に帰ってくるところからはじまる。

あらすじ

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トロイア戦争から帰還したアガメムノンは妻のクリュタイムネストラとその情夫アイギストスによって暗殺された。劇は暗殺されたアガメムノンの墓前にアガメムノンの遺児オレステスが現れるところから始まる。オレステスは従者に、デルフォイの神託所アポロンから授けられた策を説明し、二人はそれを実行に向かう。

オレステスが退場するのに代わってエレクトラが登場。アガメムノンの死やオレステスの不在を嘆く。そこにエレクトラの妹クリュソテミスや母クリュタイムネストラが現れる。エレクトラと彼女らが口論したのち、使者がオレステスが競技中に事故死したとの知らせを持ってくる。知らせを聞いたクリュタイムネストラやクリュソテミスは勝ち誇りながらその場を去る。残されたエレクトラが嘆いていると、そこにオレステスが現れ、先の知らせがアポロンの策による偽報なのだと説明する。

策を知らされたエレクトラはオレステスと協力してクリュタイムネストラを殺害。さらに偽報を聞いてやってきたアイギストスも捕らえて屋敷の中に引き立てていく。コロスが二人の勝利を称えながら劇は終わる。

類似の主題を扱った作品

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オレステースの復讐の物語はギリシア悲劇においては人気のある題材であった。アテーナイの主要な悲劇作家であった3人は全員、この主題を扱った芝居を書いており、現存している。ソポクレスの『エレクトラ』以外の作品としては以下のようなものがある。

受容

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L・A・ポストは、ソポクレスの『エレクトラ』は「アクションの強調という点でギリシア悲劇の中でも特異な作品」であったと述べている[1]

翻案

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日本語訳

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  • 『ギリシア悲劇2 ソポクレス』 松平千秋訳、ちくま文庫、1986年
  • 『ギリシア悲劇全集4 ソポクレース』 大芝芳弘訳、岩波書店、1990年
  • 『エレクトラ』 山形治江訳、劇書房、2003年
  • 『古典劇大系 第一巻 希臘編1』 村松正俊訳、近代社、1925年、
  • 『世界戯曲全集 第一巻 希臘編』 同上、近代社、1927年
  • 『希臘悲壯劇 ソポクレース』 内山敬二郎訳、理想社、1941年
  • 『ギリシャ悲劇全集2』 内山敬二郎訳、鼎出版会、1978年、改訳

脚注

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  1. ^ Post, L.A. (March 2, 1953). “Sophocles, Strategy, and the Electra”. The Classical Weekly (Johns Hopkins University Press) 46: 150–153. http://www.jstor.org/stable/4343363 30 December 2015閲覧。. 

参考文献

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