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| 画像キャプション = 5cm程度の比較的小さな子実
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| 名称 = ツキヨタケ
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[[File:Omphalotus guepiniformis Berk Neda 02.jpg|thumb|right|200px|ツキヨタケ15-20cm前後とかなり大型]]
[[File:Omphalotus guepiniformis Berk Neda 02.jpg|thumb|right|200px|ツキヨタケ(径15-20cm前後とかなり大型の子実体]]
'''ツキヨタケ'''は、[[ハラタケ目]][[ホウライタケ科]][[ツキヨタケ属]]に属する[[キノコ]]の一種。学名は''Omphalotus japonicus''。夏から秋にかけて[[ブナ]]や[[ナラ]]等の[[広葉樹]]の枯れ木に群生する。[[標高]]がやや高い場所は多く見られるキノコである。ワタリ、ワシタケ等の地方名がある。
'''ツキヨタケ'''(月夜茸)は、[[ハラタケ目]][[ホウライタケ科]][[ツキヨタケ属]]に属する[[キノコ]]の一種である。


日本を中心として[[極東ロシア]]や[[中国東北部]]にも分布し、晩夏から秋にかけて主に[[ブナ]]の枯れ木に群生する。子実体には主要な毒成分として[[イルジン]]Sを含有し、そのひだには[[生物発光|発光成分]]を有する。[[シイタケ]]や[[ムキタケ]]、[[ヒラタケ]]などと誤認されやすく、誤食した場合には下痢や嘔吐といった中毒症状から、死亡例も報告されている。
== 特徴 ==
紫褐色または黄褐色の[[キノコの部位#傘|かさ]]で、[[キノコの部位#柄|柄]]は短く、[[キノコの部位#つば|つば]]状の突起がある。新鮮なものはツキヨタケ中に含まれる成分である[[ランプテロフラビン]]の効果によって、暗闇で白色の[[キノコの部位#ひだ|ひだ]]が青白から蛍光緑に[[発光]]するが、熟成が進むと発光しない場合もある。柄を裂くと、紫褐色のシミがあるので他の食用キノコと見分けられるが、まれにシミのないものもあるので注意が必要である。色が地味で肉厚なので、おいしそうに見えることから、食用キノコと間違い誤食し[[中毒]]に至ることが多い。日本での毒キノコ中毒例の半数以上がツキヨタケによるものといわれるほどである。また、大きさはかなりばらついており、大きいものでは25cmほどのものもある。
=== 分布 ===
[[朝鮮半島]]、[[ロシア]]極東地方、中国東北部、[[ヨーロッパ]]、[[北アメリカ]]などに分布する。


== 有毒種 ==
== 名称 ==
旧属名 ''Lampteromyces'' は、古典ギリシア語の Lampteros(Λαπτερος:灯火)と Myces(μύκης:菌)とを組み合わせたもの<ref name=IHT/><ref name=Singer1947/>、また現在適用されている属名 ''Omphalotus'' は、同じくギリシア語の Omphalus(ὀμφαλύς:へそ)と Tus(τύς:耳)とを組み合わせたものである<ref name=IHT/>。
主要毒成分は[[セスキテルペン]]の[[イルジン|イルジンS]]([[:w:Illudin|Illudin]])などとされるが、イルジン類は主要症状の下痢の原因となる[[平滑筋]]弛緩作用を持たず、[[ムスカリン]]様の未知の物質が平滑筋弛緩作用を持つことが判明しており、[[鳥取大学]]で現在研究中である<ref>[http://www.cjrd.tottori-u.ac.jp/seeds_cgi/files/20110509161342_pdffile02.pdf 毒きのこの子実体生産と化合物ライブラリの商品化]、鳥取大学農学部附属菌類きのこ遺伝資源研究センター、2011年</ref><ref>[http://www.cjrd.tottori-u.ac.jp/seeds_cgi/files/20131002133009_pdffile02.pdf 毒きのこの利活用のための新イノベーション推進事業の展開]、鳥取大学農学部、2013年</ref>。


和名としては、初めに提案されていたクマヒラタケの名<ref name=Inoko/>ではなく、江戸時代に[[坂本浩然]]によって提唱された名であるツキヨタケが用いられることとなった<ref name=Kawamura1/>。
食後約30分から3時間程度で嘔吐や下痢などの[[食中毒]]の症状が現れ、見るものが[[青]]く見える[[幻覚]]症状を伴うことがある。最悪の場合、[[脱水 (医療)|脱水症状]]などで[[死]]に至ることもある。


地方名(方言名)は多く<ref>{{harvnb|『きのこの語源・方言事典』|ref= "きのこの語源・方言事典"}}には55種の地方名(方言名)が記録されている</ref>、カタハキノコ(青森県津軽地方)、カタハタケ(鹿児島県下)、カタヘラタケ(秋田県下)、岩手県下では「ドクキノコ」の名もある。また、秋田県(北秋田・鹿角)では、ドクアカリの名で呼ばれているという。さらに、ブナカタハ(青森県)・ブナタロウ(石川県白山山麓)などの名も知られている<ref name="きのこの語源・方言事典">{{Cite book |和書| author= 奥沢康正・奥沢正紀 | year =1999 | date = | title = きのこの語源・方言事典 | page= |edition = | publisher = 山と溪谷社 | place = | id = | isbn =978-4-63588-031-2 | url = | accessdate= |ref= "きのこの語源・方言事典" }} pp.434-435</ref>。
日本では古くから毒キノコとして知られており、『[[今昔物語集]]』では「和太利(わたり)」という名で登場し、和太利による毒殺未遂事件が取り上げられている(巻二十八・第十八話「[[金峰山]]の別当、毒茸を食ひて酔はぬ事」)。


なお、[[茨城県]]など一部地域では[[クサウラベニタケ]]を地方名で「ツキヨタケ」と呼んでいるため区別を要する<ref>{{Cite web|和書|url=http://www.foresternet.jp/app/srch2/get_file/10555 |title=「いっぽんしめじ」の見分け方|publisher=一般社団法人全国林業改良普及協会 |accessdate=2020-11-02}}</ref>。
=== 成分 ===
* 毒性分(胃腸系の中毒)イルジンS(''illudin S'')、イルジンM(''illudin M'')。</br>(細胞毒)dehydroilludin M、ネオイルジンA(''neoilludin A'')、ネオイルジンB(''neoilludin B'')<ref name="drg21">[http://www.drugsinfo.jp/2007/08/17-173300 ツキヨタケ] - 医薬品情報21</ref>
: illudin Sの毒性:LD50:マウス(腹腔 内)50mg/kg<ref name="drg21"/>。
* 発光物質 従来、ジヒドロイルジンS(dihydroilludin S)。デオキシイルジンM(deoxyilludine M)も発光物質と考えられていたが、ランプテロフラビンであることが判明している<ref>[http://ci.nii.ac.jp/naid/110006678837 月夜茸の発光物質ランプテロフラビンの構造と合成研究] 天然有機化合物討論会講演要旨集(31)、396-403、1989-09-1</ref>。
* 抗菌物質 レクチン
* 色素 アトロメチン、テレホール酸、ジロシアニン


== 形態 ==
[[キノコの部位#傘|かさ]]は半円形ないし腎臓形をなし(ごく稀に、倒木の真上に生えた場合に杯状の中心生となることがある<ref>[http://toolate.s7.coreserver.jp/kinoko/fungi/omphalotus_japonicus/index.htm ツキヨタケ]</ref>)、長径5-30cm程度になり、表面は湿時にはいくぶん粘性を示し、幼時は橙褐色から黄褐色でときに微細な鱗片を散在するが、老成するに従って紫褐色または黄褐色となり、にぶい光沢をあらわす。表皮は肉から剥離しにくく、[[水酸化カリウム]]・[[水酸化ナトリウム]]・[[アンモニア水]]・[[炭酸水素ナトリウム]]などの[[塩基性]]化合物によってすみやかに鮮青緑色に変色する(この呈色は、茹でたものや冷凍したもの、あるいは乾燥したものでも反応する)<ref name=AokiZuhan>青木実・日本きのこ同好会(著).名部みち代(編)、2008.日本きのこ図版(第一巻:ヒラタケ科・ヌメリガサ科・キシメジ科).日本きのこ同好会2、神戸.</ref>。ひだは垂生し、比較的幅広く、白色からクリーム色を呈する<ref name=IandHnew>{{Cite book |和書| others=今関六也・本郷次雄(編著) | year = 1997 | date = | title = 原色日本新菌類図鑑(I) | page=64|edition = | publisher = 保育社 | place = 大阪 | id = | isbn = 4-586-30075-2 | url = | accessdate= |ref= "原色日本新菌類図鑑I" }}</ref>。[[キノコの部位#柄|柄]]は通常はかさの一端に着き(まれにほぼ中心生)、太く短くて淡い黄褐色を呈し、[[キノコの部位#ひだ|ひだ]]との境界には低いリング状をなした隆起(不完全な[[キノコの部位#つば|内被膜]])がある<ref name=IandHnew />。かさは、柄の近くは厚いが周辺部は薄く、肉は軟質でほぼ白色<ref name=IandHnew />。柄の基部付近においては多くは紫黒色のしみ(まれに、ほとんどこれを欠くこともある<ref>大作晃一・吹春俊光、2010.おいしいきのこ 毒きのこ.191 pp.、主婦の友社、東京. {{ISBN2|978-4-07-2735602}}</ref>) を生じ、特徴的な味はない<ref name="新版北陸のきのこ図鑑">{{Cite book |和書| author=池田良幸 |others= 本郷次雄(監修) | year = 2013 | date = | title = 新版 北陸のきのこ図鑑 | page= 17 |edition = | publisher = 保育社 | place = | id = | isbn =4893791583 | url = | accessdate= |ref= "新版北陸のきのこ図鑑" }}</ref>。

[[子実体]]を構成する[[菌糸]]はしばしばやや厚壁で、[[クランプ]]を有する。[[キノコの部位#シスチジア|シスチジア]]はなく、[[胞子]]はほほ球形かつ薄壁で無色・平滑、[[ヨウ素]]液で青く染まらず(非アミロイド性)、径 13-17μm程度、[[胞子紋]]は通常は白色あるいはかすかに灰褐色を帯びる<ref name="IandHold">今関六也・本郷次男、1957.原色日本菌類図鑑.181 pp.保育社、大阪.{{ISBN2|458630023X}}</ref><ref name=IandHnew />が、いくぶん紫色を呈する場合もある<ref name=ImaiHokkaido>Imai, S., 1938. 「[https://hdl.handle.net/2115/12729 Studies on the Agaricaceae of Hokkaido I]」『北海道帝國大學農學部紀要』 43巻 1号 1938年 p.1-178</ref>。

== 生態 ==
晩夏から秋にかけて、おもに[[ブナ]]の倒木・切り株、あるいは立ち枯れ木などの上に群生する<ref name=ImaiHokkaido/><ref name=Ito>伊藤誠哉、1959.日本菌類誌(第2巻 第5号)担子菌類. 658 pp.養賢堂、東京.</ref><ref name="Imazeki1974">今関六也、1974.カラー日本のきのこ.199 pp.山と渓谷社、東京.{{ISBN2|9-784-63502-664-2}}.</ref><ref name="NandO">西野嘉憲・大場裕一、2013.光るキノコと夜の森.82 pp. 岩波書店、東京.{{ISBN2|978-4-00-005883-4}}.</ref><ref name=Haneda>羽根田弥太、1972.発光生物の話―よみもの動物記.225 pp. 北隆館、東京.</ref><ref name=Culture>山口修, 小林千明, 「[https://hdl.handle.net/10132/1061 Habitat segregation and cultural preference of ''Lampteromyces japonicus'' and ''Armillariella mellea'']」『兵庫教育大学研究紀要. 第3分冊, 自然系教育・生活・健康系教育』 Vol.14 (Ser.3) 1994年2月, p.19-23, (英文論文)</ref>。ときに[[イタヤカエデ]] <ref name=IandHnew/><ref name=Ito/><ref name=NandO/><ref name=Haneda/><ref name="Continue">今関六也・本郷次男、1965.続原色日本菌類図鑑.245 pp.保育社、大阪. {{ISBN2|4-586-30042-6}}.</ref><ref name=Matsuda>松田一郎、1965.ツキヨタケ.新潟県生物教育研究会誌 (2): 1-5</ref>や[[トチノキ]]<ref name=Continue/><ref name=Matsuda/>、あるいは[[ミズメ]]<ref>永田潤一、1937.有毒茸「ツキヨタケ」の食用法に就いて.茸類の研究 3(1): 60-62.</ref>・[[アカシデ]]<ref name=IandHnew/><ref>浜田稔、1971.春日山の植物目録(真菌類).奈良市史自然編 pp.178-184.奈良市.</ref><ref name="IHT">今関六也・本郷次雄・椿啓介、1970.標準原色図鑑全集14 菌類(きのこ・かび).保育社、大阪. {{ISBN2|978-4-58632-014-1}}.</ref>・[[イヌシデ]]・[[コナラ]]・[[ミズナラ]]<ref>吉見昭一、1973.夜光のツキヨタケ.Nature Study 19(12): 11.</ref>などの枯れ木に発生することもあり、また、ブナの自然分布がない北海道東北部などにおいては、[[トドマツ]]上に生じる<ref name=IandHnew/><ref name=Ito/><ref name=IHT/>。なお、人工栽培が試みられた例では、[[アカマツ]]・[[カラマツ]]・[[チョウセンゴヨウ]]・[[アベマキ]]・[[クヌギ]]・[[モンゴリナラ]]あるいは[[ヤマハンノキ]]などのおが屑上でも子実体が形成されることが確認されている<ref name=Korean>{{PDFlink|[http://ocean.kisti.re.kr/downfile/volume/mycology/GNHHDL/2010/v38n1/GNHHDL_2010_v38n1_80.pdf Ka, K.H., Park, H., Hur, T. C.; and W. C. Bac, 2010. Formation of fruiting body of ''Omphalotus japonicus'' by sawdust cultivation.]}} The Korean Journal of Mycology 38: 80-82.</ref>。

菌糸は一般的な真菌用の[[培地]](たとえばジャガイモ=ブドウ糖寒天培地<ref name=Korean/>や浜田培地<ref name=Culture/>)を用いて培養することができ、さらに滅菌したブナ材の小片を培地に加えることで、単位時間当たりの菌糸の生育が有意に促進される<ref name=Culture/>。なお、生態的には、木材中の[[リグニン]]を分解する白色腐朽菌とみなされている<ref name=Phylogeny>Kirchmair, M., Morandell, S., Stolz, D., Põder、R., and C. Strurbauer, 2004. "[https://doi.org/10.1080/15572536.2005.11832875 Phylogeny of the genus ''Omphalotus'' Based on Nuclear Ribosomal DNA-sequences.]" Mycologia 96: 1253-1260, {{doi|10.1080/15572536.2005.11832875}}.</ref>。

== 他の生物とのかかわり ==
子実体には、ほかの多くのキノコ類と同様に、多種多様な昆虫が集まる。九州の[[英彦山]]において、春季(4-5月)に採集されたツキヨタケの子実体(前年に発生し、内部が腐敗しかけたものの表層組織が乾固したことによって翌春まで残存したもの)からは51種の昆虫(偶発的に子実体に付着していた種をも含む)が得られた例がある<ref>槙原寛, 竹野功一, 中條道崇、「[https://doi.org/10.15017/23119 英彦山におけるツキヨタケより得られた昆虫類 I]」『九州大學農學部學藝雜誌』 26巻 1/4号, p.595-600, 1972年, {{NAID|110001716718}}, {{doi|10.15017/23119}}</ref>。また、韓国南部では、[[ゴミムシダマシ科]]に属するチビヒサゴゴミムシダマシ (''Cryphaeus rotundicollis'' Chûjô et Lee) およびクロツヤキノコゴミムシダマシ (''Platydema nigroaeneum'' Motschulsky) が、ツキヨタケの子実体(新鮮なものか腐敗しかけたものかは明らかにされていない)から見出された例が記録されている<ref>Boo, H. J., and W. L. Jong, 2011. "[https://doi.org/10.5656/KSAE.2011.07.0.29 Fungal Hosts of Fungivorous Tenebrionid Beetles(Tenebrionidae) in Korea.]" Korean Journal of Applied Entomology 50: 195-201, {{doi|10.5656/KSAE.2011.07.0.29}}.</ref>。

また、ツキヨタケの人工培養菌糸体は、[[マツノザイセンチュウ]] (''Bursaphelenchus xylophilus'' (Steiner & Buhrer) Nickle) を誘引し、かつこれを殺す性質がある<ref>Mamiya, Y., Hiratsuka, M. and M. Murata, 2005. "[https://doi.org/10.3725/jjn1993.35.1_21 Ability of wood-decay fungi to prey on the pinewood nematode, ''Bursaphelenchus xylophilus'' (Steiner and Buhrer) Nickle]" 『日本線虫学会誌』 35巻 1号 2005年 p.21-30, {{doi|10.3725/jjn1993.35.1_21}}</ref><ref name=Saikentou>春ロ佐知、中島清美、増田健太 ほか、[https://doi.org/10.24465/msb.21.2_88 ツキヨタケ(Omphalotus guepiniformis)由来物質illudin Sの毒性の再検討 : 抗菌および抗線虫活性] 『日本きのこ学会誌』 21巻 2号 2013年 p.88-91, {{doi|10.24465/msb.21.2_88}}</ref>が、誘引・殺傷の機構についてはまだ明らかにされていない。ただし、マツノザイセンチュウの誘引実験に際し、培養したツキヨタケの菌糸体を生きたままで用いた場合と熱湯で処理してから用いた場合とを比較すると、前者では[[ヒラタケ]]に匹敵するほど著しい誘引活性を示したのに対し、後者では対照とした菌(ハイイロカビ)にも劣る活性しか確認されなかったことから、ツキヨタケの菌糸の生死が誘引活性の発現に影響しているのではないかと推定されている<ref>真宮靖治、[https://doi.org/10.3725/jjn.36.1 数種木材腐朽菌の菌糸によるマツノザイセンチュウ誘引効果] 『日本線虫学会誌』 36巻 1号 2006年 p.1-9, {{doi|10.3725/jjn.36.1}}</ref>。なお illuden S には、グラム陰性・陽性菌に対する発育阻害や、サツマイモネコブセンチュウ(''eloidogyne incognita'')の致死率向上効果<ref name=Saikentou/>が認められている。

== 分布 ==
日本のブナ林にはごく普通に産する。北海道南部以南に広く分布し、鹿児島県(大隅半島)の高隈山が南限であるとされている<ref name=KankyoCHo>環境庁(編)、2000.改訂 日本の絶滅のおそれのある野生生物―レッドデータブック― 植物II(維管束植物以外).429 pp.財団法人自然環境研究センター、東京.</ref>。

日本国外では、[[極東ロシア|ロシア極東地方]]<ref>Vasil’eva, 1973. Agarikovye shliapochnye griby (por Agaricales) Primorskogo kraia.</ref>および[[中国東北部]]<ref name=RdandN> Redhead, S. A., and H. Neda, 2006. [https://doi.org/10.2307/25065705 (1741) Proposal to Conserve the Name ''Pleurotus japonicus'' against ''Agaricus guepiniformis'' and ''Pleurotus harmandii'' (Basidiomycota)]. Taxox 55: 1032-33.</ref>のほか、[[朝鮮半島]] <ref name=IHT/>にも分布する。ただし、朝鮮半島での発生は非常にまれであるといわれている<ref name=Korean/>。なお、中国産のものは国産とは異なる[[クレード]]であるため、別種の可能性が示唆されている<ref>菅野陽平, 坂田こずえ, 中村公亮, 野口秋雄, 福田のぞみ, 鈴木智宏, 近藤一成、「[https://doi.org/10.3358/shokueishi.58.113 PCR-RFLPによるツキヨタケの迅速判別法]」『食品衛生学雑誌』 58巻 3号 2017年 p.113-123, {{doi|10.3358/shokueishi.58.113}}, 日本食品衛生学会</ref>。

== 毒性 ==
=== 中毒症状 ===
=== 中毒症状 ===
摂食後30分から3時間で発症し、[[下痢]]と[[嘔吐]]が中心となり<ref name=Kawamura1915>[https://hdl.handle.net/2261/32970 Kawamura, S., 1915. Studies on the Luminous Fungus, ''Pleurotus japonicus'' sp. nov] 『東京帝国大学紀要』 理科. v35 art3, 1915.12.30, pp.1-29</ref>、あるいは[[腹痛]]をも併発する<ref name=Saikentou/><ref>岩井啓一郎、松本主之、江崎幹宏 ほか、[https://doi.org/10.11280/gee1973b.48.2493 ツキヨダケ摂取が原因と考えられた急性十二指腸炎の1例] 『日本消化器内視鏡学会雑誌』 2006年 48巻 10号 p.2493-2498, {{doi|10.11280/gee1973b.48.2493}}</ref>。景色が青白く見えるなどの幻覚症状がおこる場合もあり、重篤な場合は、[[痙攣]]・脱水・[[アシドーシスショック]]などをきたす。死亡例<ref>上嶋権兵衛、松橋京子、1985.フグ・キノコなどによる食中毒 『診断と治療』 73; 401-405, {{NAID|80002382971}}</ref>も少数報告されているが、キノコの毒成分自体によるものではなく、激しい下痢による脱水症状の2次的なものであると考えられる。
摂食後30分~3時間で発症し消化器系の[[下痢]]、[[嘔吐]]が中心症状であるが、重篤な場合は、[[痙攣]]、脱水、[[アシドーシスショック]]などを起こす。死亡例も少ないが報告されている。

=== 治療 ===
医療機関による処置が必要で、消化器系の症状に対しては、催吐・[[胃洗浄]]、あるいは吸着剤([[活性炭]]など)の投与が行われる。また、[[嘔吐]]や[[下痢]]による水分喪失の改善を目的とした補液も重要視される。重症例では血液吸着 DHP(Direct Hemoperfusion:直接血液灌流法)により、血中の毒素の吸着除去が行われることもある<ref name=Hayashida>林田昌子、清野慶子、伊関憲、「[http://id.nii.ac.jp/1348/00000197/ ツキヨタケ中毒の4症例]」『山形大学紀要 医学:山形医学』 2011年 29巻 2号 p.57-62</ref>。

=== 毒成分 ===
ツキヨタケから得られた毒成分は、当初はランプテロール<ref>中西 香爾・大橋守・鈴木沖・多田愈・山田泰司・稲垣清二郎、1963.ツキヨタケからのLampterolの単離.薬学雑誌 93: 377-380</ref><ref>Nakanishi, K., Tada, M., Yamada, Y., Ohashi., M., Komatsu, N., and H. Terakawa. 1963. [https://doi.org/10.1038/197292a0 Isolation of lampterol, an antitumour substance from ''Lampteromyces japonicus''] Nature 197 : 292, {{doi|10.1038/197292a0}}</ref>の名で呼ばれたが、後の研究<ref>Anchel, M., Hervey, A., and W. J. Robbins, 1950. "[https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1063187/ Antibiotic substances from Basidiomycetes.]" Proceedings of the National Academy of Science of USA 36 : 300-305, {{doi|10.1073/pnas.36.5.300}}</ref><ref>Anchel, M., Hervey, A., and W. J. Robbins, 1952. "[https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1063684/ Production of Illudin M and of a Fourth Crystalline Compound by ''Clitocybe Illudens''.]" Proceedings of the National Academy of Science of USA 38 : 927-928, {{doi|10.1073/pnas.38.11.927}}</ref> により、日本未産の有毒きのこである ''Omphalotus illudens'' から単離された[[イルジン]] ([[:en:Illudin|Illudin]]) と同一物質であることが明らかにされた。

主要な毒成分は、[[セスキテルペン]]に属するイルジンSおよびその異性体であるイルジンMなどとされている<ref name=Imazeki1974/><ref name=Nakanishi>Nakanishi, K., and M. Tada, 1963. [https://ui.adsabs.harvard.edu/abs/1963Natur.197..292N/abstract Isolation of lampterol, antitumour substance from ''Lampteromyces japonicus''] Nature 197: 292.</ref><ref name=Tanaka1990>Tanaka, K., Inoue, T., Kadota, S., and T. Kikuchi, 1990. Metabolism of illudin S, a toxic principle of ''Lampteromyces japonicus'', by rat liver. I. Isolation and identification of cyclopropane ring-cleavage metabolites. Xenobiotica 20: 671-681.</ref><ref name=Tanaka1992>Tanaka, K., Inoue, T., Kadota, S., and T. Kikuchi, 1992. Metabolism by rat liver cytosol of illudin S, a toxic substance of ''Lampteromyces japonicus''. II. Characterization of illudin S-metabolizing enzyme. Xenobiotica 22 : 33-39.</ref><ref name=Tanaka1996a>Tanaka, K., Inoue, T., Tezuka, Y., and T. Kikuchi, 1996. Metabolism of illudin S, a toxic substance of ''Lampteromyces japonicus'': urinary excretion of mercapturic acids in rat. Xenobiotica 26: 347-54.</ref><ref name=Tanaka1996b> Tanaka, K., Inoue, T., Tezuka, Y., and T. Kikuchi, 1996. Michael-type addition of illudin S, a toxic substance from ''Lampteromyces japonicus'', with cysteine and cysteine-containing peptides ''in vitro'' . Chemical and Pharmacological Bulletin 44: 273-279.</ref>。特に、主要な中毒症状の一つである[[嘔吐]]は、イルジンSによるものであるという<ref name=Enzo>笠原義正、板垣昭浩、久間木國男 ほか、[https://doi.org/10.3358/shokueishi.37.1 ツキヨタケの胃腸管毒性及び塩蔵による減毒] 『食品衛生学雑誌』 1996年 37巻 1号 p.1-7_1, {{doi|10.3358/shokueishi.37.1}}</ref><ref>McMorris. T. C., Kelner, M. J., Wang, W., Moon, S., and R. Taetle, 1990. On the mechanism of toxicity of illudins: the role of glutathione. Chemical Research in Toxicology 3: 574-579, {{doi|10.1021/tx00018a013}}</ref>。

イルジンSは黄色・不定形の物質で、100℃・15分の加熱では15パーセント程度しか分解されず、また、水にもある程度の溶解性を有するため、調理されたツキヨタケについて、子実体そのものを摂食せずとも汁を口にするだけで中毒する危険がある<ref name=Quantitative>笠原義正、伊藤健:[https://doi.org/10.3358/shokueishi.50.167 LC/MS/MSによるツキヨタケおよび食中毒原因食品中の illudin S の分析] 『食品衛生学雑誌』 2009年 50巻 4号 p.167-172, {{doi|10.3358/shokueishi.50.167}}</ref>。その一方で、塩蔵した後、塩抜きを兼ねて流水にさらすことで、ある程度の毒抜きがなされるとも考えられる(後述)。ある程度の脂溶性をも示すため、誤って炒め物などにした場合、混合して調理されたツキヨタケ以外の食材を食べたことで発症する場合がある<ref>大木正行、2005 「おそろしい毒きのこの正体」『食と健康』 (586):52-61. {{NAID|40006935059}}</ref>。いっぽう、イルジン類は、ツキヨタケのもう一つの主要な中毒症状たる下痢の原因となる[[平滑筋]]弛緩作用を持たない。平滑筋の弛緩作用は、[[ムスカリン]]類似の未同定物質によるものではないかと推定されている<ref>草野源次郎、1985.キノコの毒成分 『遺伝』 39(9): 32-36, {{ISSN|0387-0022}}</ref><ref>河野昌彦、「毒茸,ツキヨダケに関する法医学的研究」 久留米大学 1987年 博士論文 乙第1307号, {{NAID|500000017077}}</ref>。なお、野生のツキヨタケ子実体に含有されるイルジンSの含有量は、採集した場所や時期によって大きく変動(山形県産のサンプルでは、1.2-318.2 μg/子実体1g<ref name=Quantitative/>、あるいは8.3-776.2 μg/子実体1g<ref>和田章伸・笠原義正、2010. [http://www.eiken.yamagata.yamagata.jp/pdfshohou/shohou43.pdf#page=11 【原著】ツキヨタケの中毒成分illudin S のLC/MS/MS による分析] 『山形県衛生研究所報』 43: 1-5, {{ISSN|0513-4706}}</ref>)し、場合によってはこれをまったく含まないことすらあるという<ref name=KinokoGakkai>一柳剛、増田健太、春口佐知、金子依子 ほか、[https://doi.org/10.24465/msb.21.2_98 ツキヨタケ(''Omphalotus guepiniformis'')によるIlludin Sの生産] 『日本きのこ学会誌』 2013年 21巻 2号 p.98-102, {{doi|10.24465/msb.21.2_98}}</ref>。さらに、菌糸体の人工[[培養]]に際して液体[[培地]]を用いた場合には、イルジンSが培地中に分泌されるのに対し、木粉培地を使用した場合には、子実体形成後に培地内に残った菌糸体あるいは廃培地中にイルジンSが検出されなかったことから、子実体に含まれるイルジンSはまず菌糸体内で生成され、子実体形成に際して移送されるのではないかと推定されている<ref name=KinokoGakkai/>。

従来、食中毒の原因となったきのこの同定方法としては、食物の残りや患者の吐瀉物を顕微鏡で観察するのが主流であった<ref name="毒きのこ今昔286-288">{{Cite book |和書| author= 奥沢康正・奥沢淳治・久世幸吾・松下 裕恵 | year = 2004 | date = | title = 毒きのこ今昔―中毒症例を中心にして―. | page= |edition = | publisher = 思文閣出版 | place = 京都 | id = | isbn =978-4784212156 | url = | accessdate= |ref= "毒きのこ今昔" }} pp.286-288</ref>が、有毒成分を直接検出する方法も研究されている。ツキヨタケに関しては、中毒患者が食べ残した料理の中に含まれるイルジンSを[[ガスクロマトグラフィー|ガスクロマトグラフ]][[質量分析法|質量分析装置]] (GC/MS) で定量する方法(試料の処理方法や分析条件にもよるが、イルジンSの回収率は、ツキヨタケ以外の食用きのこにこれを混入した場合で84-94パーセント、ツキヨタケを加えた豚汁を分析試料に用いた場合で74.8パーセント)がある<ref name=Quantitative/><ref>Kanamori-Kataoka, M., Seto, Y., and M. Kuramoto, 2006. "[https://doi.org/10.1248/jhs.52.237 Development of a method for determining Illudin S in food by Gas Chromatography-Mass Spectrometry.]" 『Journal of Health Science』 2006年 52巻 3号 p.237-242, {{doi|10.1248/jhs.52.237}}</ref>。また、[[リアルタイムPCR]]法による同定も試みられている<ref name=PCR>Maeta, K., Ochi, T., Tokimoto, K., Shimomura, N., Maekawa, N., Kawaguchi, N., Nakaya, M., Kitamoto, Y., and T. Aimi, 2008. "[https://aem.asm.org/content/74/10/3306.short Rapid species identification of cooked poisonous mushcrooms by using Real-time PCR.]" Applied and Environment Microbiology 74: 3306-3309., {{doi|10.1128/AEM.02082-07}}</ref><ref name=Tsurida2012>Tsurida, S., Akai, K., Hiwaki, H., Suzuki, A., and H. Akiyama, 2012. [https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1271/bbb.120090 Multiplex real-time PCR assay for simultaneous detection of ''Omphalotus guepiniformis'' and ''Lentinula edodes''.]" Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry 76: 1343-1349, {{doi|10.1271/bbb.120090}}</ref>。[[ドクツルタケ]]・[[クサウラベニタケ]]・[[テングタケ]]など、毒成分を異にする他の有毒キノコ、あるいは食用キノコが試料中に混合していても、個々の有毒成分を迅速に定量可能な方法が確立されつつある<ref>多田裕之, 南谷臣昭, 神山恵理奈, 河村博、「[https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/9275339 LC-MS/MS によるキノコ及び魚介類の中毒成分迅速分析法]」『岐阜県保健環境研究所報』 2014年 21巻 p.1-7</ref>。

このほか、子実体には、細胞毒として働くジヒドロイルジンM (dihydroilludin M) や、ネオイルジン (Neoilludin) AおよびB<ref>Kuramoto, M., Tsukihara, T., and N. Ono , 1999. Neoilludins A and B, New Bioactive Components from ''Lampteromyces japonicus''. Chemistry Letters 28, 1113-1114.</ref><ref name=Saikentou/>なども含まれている。

== その他の成分 ==
子実体には、上記のほかにアトロメンチン・テレフォール酸・バリエガト酸・バリエガトルビンなどの色素が含まれている<ref name=Persoonia>{{cite journal|url=https://repository.naturalis.nl/pub/532108|author=Kirchmair, Martin, Reinhold Pöder, Christian G. Huber, and Orson K. Miller Jr. |title=Chemotaxonomical and morphological observations in the genus Omphalotus (Omphalotaceae) |journal=Persoonia - Molecular Phylogeny and Evolution of Fungi |volume=17 |issue=4 |pages=583-600 |date=2002-01 }}</ref>。アトロメンチンは、もとヒダハタケ科に置かれていた[[ニワタケ]]の子実体から初めて単離された青銅色の化合物であり、テレフォール酸は[[イボタケ科]]ほか多くのきのこの子実体中に普通に見つかる。バリエガト酸(橙色)およびバリエガトルビン(赤色)は、ともに[[ヌメリイグチ属]]の一種 (''Suillus variegatus'' (Sw.) Richon & Roze) から最初に得られた化合物である<ref>{{PDFlink|[http://www.agriculturejournals.cz/publicFiles/37205.pdf Velíšek, J., and K. Cejpek, 2011. Pigments of Higher Fungi: A Review. Czech Journal of Food Science 29: 87-102.]}}</ref><ref>Edwards R. L., and G. C. Elsworthy, 1967. Variegatic acid, a new tetronic acid responsible for the blueing reaction in the fungus ''Suillus'' (''Boletus'') ''variegatus'' (Swartz ex Fr.).</ref>。

また、'''LJAP''' (''Lampteromyces japonicus'' antibiotic protein) と称される一種の[[レクチン]]も見出されており、これには抗菌活性が認められたという<ref>Yoon, J. O., Min, T. J., and H. Yoon, 1995. "[http://www.koreascience.or.kr/article/JAKO199503040108434.page An antibacterial lectin from ''Lampteromyces japonicus'' “LJAP” (''Lampteromyces japonicus'' antibiotic protein).]" Agriculture chemistry and biotechnology 23: 46-52.</ref>。

[[ハラタケ目]]の菌としては珍しく、[[ペクチナーゼ]]や[[ポリメチルガラクツロナーゼ]]などの[[ペクチン]]分解[[酵素]]の活性が高いことでも知られている<ref>川合正允、1973.[https://doi.org/10.1271/nogeikagaku1924.47.523 担子菌におけるペクチナーゼおよび植物組織崩壊酵素の生産性] 『日本農芸化学会誌』 1973年 47巻 9号 p.523-527, {{doi|10.1271/nogeikagaku1924.47.523}}</ref>。


== 誤食されやすい食用キノコ ==
==== 治療 ====
[[ファイル:Sarcomyxa serotina 1.JPG|250px|thumb|ツキヨタケと間違われやすいムキタケ。]]
医療機関による処置が必要で、消化器系の症状に対しては、催吐、[[胃洗浄]]、吸着剤投与など。更に、補液、重症例では血液吸着 DHP(Direct Hemoperfusion、直接血液灌流法)による毒素の吸着。
[[ファイル:Pleurotus ostreatus JPG4.jpg|250px|thumb|ツキヨタケと間違われやすいヒラタケ。]]
全体に地味な色調を持ち、少しも毒々しくみえないこと・縦によく裂けること・不快な臭いや味がないこと・しばしば1か所で大量に採取されることなどから、日本におけるきのこ中毒(原因となったきのこが確定されたケース)には、ツキヨタケによるものがもっとも多い<ref name=Imazeki1974/><ref name=Tsurida2012/>。比較的幼い子実体は[[シイタケ]]に、成熟したものは[[ムキタケ]]や[[ヒラタケ]]に類似している。特に、シイタケやムキタケとは1本の枯れ木上に混じり合って発生することがあり、誤食の危険が大きい。日本では2014年に滋賀県高島市の[[道の駅]]で食用のヒラタケと間違えてツキヨタケをパック詰めし、それを食べた7人が食中毒の症状を訴えた<ref>[https://news.ntv.co.jp/category/society/259669 道の駅で毒キノコ販売、7人食中毒] - 日テレニュース(2014年9月22日)</ref>。


{| class="wikitable"
{| class="wikitable" style="text-align:right"
|+ 食中毒報告状況(2000-2015年度)厚生労働省<ref>{{Cite web|和書|title= 自然毒のリスクプロファイル:ツキヨタケOmphalotus guepiniformis(キシメジ科ツキヨタ属)|url=https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000142114.html |publisher= 厚生労働省|accessdate= 2020-02-26}}{{sic}}</ref>
|+食中毒報告状況(2000~2009年)厚生労働省
!年!!発生件数!!摂食者総数!!患者数
! !! 発生件数 !! 摂食者 !! 者数 !! 死者数
|-
|-
|2000||20件||91人以上||91人
| 2000 || 13 || 61 || 67 || 0
|-
|-
|2001||6件||80人||67人
| 2001 || 3 || 45 || 45 || 0
|-
|-
|2002||21件||117人||98人
| 2002 || 19 || 110 || 91 || 0
|-
|-
|2003||14件||55人||52人
| 2003 || 11 || 39 || 36 || 0
|-
|-
|2004||25件||93人||91人
| 2004 || 16 || 53 || 52 || 0
|-
|-
|2005||16件||73人||66人
| 2005 || 15 || 70 || 63 || 0
|-
|-
|2006||21件||90人||83人
| 2006 || 17 || 65 || 61 || 0
|-
|-
|2007||20件||99人||91人
| 2007 || 15 || 63 || 59 || 0
|-
|-
|2008||20件||97人||85人
| 2008 || 19 || 78 || 70 || 0
|-
|-
|2009||22件||74人||68人
| 2009 || 19 || 67 || 61 || 0
|-
| 2010 || 18 || 64 || 62 || 0
|-
| 2011 || 13 || 46 || 49 || 0
|-
| 2012 || 23 || 85 || 74 || 0
|-
| 2013 || 11 || 46 || 43 || 0
|-
| 2014 || 14 || 66 || 62 || 0
|-
| 2015 || 11 || 36 || 32 || 0
|}
|}


後三種は、子実体のいかなる発育段階においても、ひだに発光性を欠いている。また、シイタケでは肉がツキヨタケのそれに比べてより強靭であり、乾燥すると特有の香気を発する点が異なる。ムキタケはかさの表面に微毛を被るとともに、かさの表皮が容易に剥がれる点で区別される。ヒラタケは、柄にリング状の隆起(不完全なつば)がなく、ひだと柄との境界がより不明瞭なことで異なっている。さらに、ツキヨタケ以外の3種では、かさの表皮に[[塩基性]]化合物の水溶液を滴下しても緑色にならない<ref name=AokiZuhan/>こと、柄の肉に黒紫色のしみを生じない<ref name=ImaiHokkaido/>ことも識別の上で重要な性質である。
== 学名について ==
従来のツキヨタケの[[学名]](''Lampteromyces japonicus''(Kawam.) Sing.)は、[[1947年]]に[[ロルフ・シンガー]]によって新たに一[[属 (分類学)|属]]一[[種 (分類学)|種]]として[[記載]]されたものである。しかし、[[2002年]]になって[[ヨーロッパ]]や[[北アメリカ]]に分布する''Omphalotus''属との類似性が指摘された<ref name="日本の毒きのこ">長沢栄史 監修 『フィールドベスト図鑑14 日本の毒きのこ』 [[学研ホールディングス|学習研究社]]、[[2003年]][[10月4日]]初版発行、ISBN 4-05-401882-3、142 - 143頁</ref>(この場合、先名権により学名は''Omphalotus japonicus''となる<ref name="日本の毒きのこ"/>)。そして、[[根田仁]]は標本を比較検討した上で、[[1878年]]に[[マイルズ・ジョセフ・バークリー]]により報告された''[[ハラタケ属|Agaricus]] guepiniformis''と[[同定]]して''Omphalotus guepiniformis'' (Berk.) Neda の学名を与えた<ref name="Neda 2004">{{cite journal |author=Neda, Hitoshi |year=2004|title=Type studies of ''Pleurotus'' reported from Japan |journal=Mycoscience |volume=45 |issue= |pages=181–87 |doi=10.1007/s10267-003-0172-6}}</ref>。これにより、従来の''Lampteromyces''は[[シノニム]]となった。その後、根田らは[[2006年]]に''A. guepiniformis''ともう一つのシノニム''Pleurotus harmandii''に対して''O. japonicus''を[[保留名]]とするべきだと提案し<ref name="Redhead 2006">{{cite journal |author=Redhead, Scott A.; Neda, Hitoshi |title=(1741) Proposal to Conserve the Name ''Pleurotus japonicus'' against ''Agaricus guepiniformis'' and ''Pleurotus harmandii'' (Basidiomycota) |journal=Taxon |year=2006 |volume=55 |issue=4 |pages=1032–33 |jstor=25065705}}</ref>、[[2008年]]に[[命名法部会菌類委員会]]([[:w:Nomenclature Committee for Fungi|Nomenclature Committee for Fungi]])により正式に決定した<ref name="Norvell 2008">{{cite journal |author=Norvell, Lorelei L. |title=Report of the Nomenclature Committee for Fungi: 14 |journal=Taxon |year=2008 |volume=57 |issue=2 |pages=637–39 |jstor=25066033}}</ref>。


[[ムキタケ]]との手軽な識別法として、[[グアヤク]]脂の[[エタノール]]溶液(グアヤクチンキ)や硫酸バニリン溶液(純水3ccに[[硫酸|濃硫酸]]8ccを加え、[[バニリン]]1gを溶かす)を用いる方法があり、ツキヨタケはこれら2種類の試薬に対してなんら呈色を示さないが、ムキタケではグアヤクチンキで青緑色、硫酸バニリンで赤紫色の変色が起こる。ただし、これらの呈色が菌体中のいかなる成分によるものかは、明らかにされていない<ref>大木正行・吉川進・三浦則夫・山浦由郎、1985. キノコの呈色反応による毒キノコの理化学的鑑別法について. 日本菌学会ニュース (5):31-33, {{ISSN|0559-8974}}</ref>。
なお、''Omphalotus''属は欧米およびオーストラリアに分布し、発光性およびツキヨタケ同様[[イルジン]](本来、''O. illudens''から発見された)を含む毒キノコが多い。特に、''O. olearius''は[[w:Omphalotus olearius|Jack O'Lantern]]の名前で知られている。


これらの相違点に加え、シイタケ・ヒラタケ・ムキタケにおいては、それらの胞子はツキヨタケのそれに比べてずっと小さく、類球形を成すこともない<ref name=ImaiHokkaido/>。なお、山形県下の一部の地方では、茹でた後に塩蔵保存し、流水にさらしてから食用とする習慣がある<ref name="毒きのこ今昔275">{{harvnb|毒きのこ今昔|p=275|ref= "毒きのこ今昔"}}</ref>が、[[ハツカネズミ属|マウス]]を用いた実験によれば、熱処理したのみでは便重量の減少や消化管内容物の輸送の促進(ヒトの中毒時の下痢症状を示唆する)などがみられるのに対し、塩蔵(沸騰水中で10分間熱した後、菌体を1分あたり500mlの流速にて流水中に48時間さらし、水切りをしてから重量比で1.5倍量の食塩を加え、室温下で5週間保存)してから水中に投じて48時間の塩抜きを行ったツキヨタケの[[メタノール]]エキスを与えた実験区ではこれらの所見がなく、解剖時の胃の膨満や出血、あるいは消化管内壁の潰瘍性糜爛などもみられなかったという<ref name=Enzo/>。
ツキヨタケは伝統的に[[キシメジ科]]とされていたが、[[分子系統学]]の結果、キシメジ科から分離され、[[ツキヨタケ科]]を経て現在はホウライタケ科に分類される。


== 発光性 ==
== 類似の食用キノコ ==
子実体の各部のうち、発光性を有するのはひだのみで、かさや柄は、表面においても内部においても光らない。また、ひだが堅いものに触れたりして損傷した部分は光らなくなる<ref name=Kawamura1915/><ref name=Kawamura1>川村清一、[https://doi.org/10.15281/jplantres1887.24.281_165 月夜茸及ビ其發光現象ニ就テ (一)] 『植物学雑誌』 1910年 24巻 281号 p.165-177, {{doi|10.15281/jplantres1887.24.281_165}}</ref>。発光のピークはかさがじゅうぶんに開いた後の2-3日程度であるという<ref name=NandO/>。また、菌体が古くなると、光量は次第に小さくなる<ref name=Kawamura1/>が、小動物などにより食害された部分などを除けば、ひだの光量の低下は一個の子実体中において均等に起こり、部分的に光のむらが生じることはない<ref name=Kawamura1915/>。
[[画像:ムキタケ.jpg|250px|thumb|ツキヨタケと間違われやすいムキタケ。これは2cm。]]
幼菌は[[シイタケ]]に、成菌は[[ムキタケ]]、[[ヒラタケ]]に類似し、特にムキタケとは同一場所に生える場合もあり、間違え採集することも多い。


ひだの断面はいちように発光するが、胞子については「発光性を欠く」という報告<ref name=Kawamura1915/><ref name=Kawamura1/>と、「湿った場所に落ちると光る」という報告<ref name=Haneda/>とがある。さらに、菌糸体については、当初は発光しないとされていた<ref name=Kawamura1915/>が、測定機器の進歩により、肉眼的には検知することができない微弱な光を発していることが判明した。培養した菌糸において、多数の胞子を起源とした菌糸(重相菌糸)は、唯一個の胞子を発芽させて得た菌糸(単相菌糸)と比較して1000倍ほど高い光量を示したという<ref>D. Bermudes, D., Petersen, R. H., and K. H. Nealson, 1992. "[https://doi.org/10.1080/00275514.1992.12026208 Low-level bioluminescence detected in ''Mycena haematopus'' basidiocarps.]", Mycologia 84: 799-802, {{doi|10.1080/00275514.1992.12026208}}</ref>。
== 出典 ==

* [http://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/poison/kinoko_det_06.html 自然毒のリスクプロファイル:ツキヨタケOmphalotus guepiniformis(キシメジ科ツキヨタ属)] 厚生労働省
ひだを高温または低温に保った容器に入れると、次第に光量は小さくなり、60℃の空気中に15分間保つと、常温に戻しても発光は回復しなかったという報告<ref name=Kawamura1915/><ref name=Kawamura2>川村清一、[https://doi.org/10.15281/jplantres1887.24.282_203 月夜茸及ビ其發光現象ニ就テ (二)] 『植物学雑誌』 1910年 24巻 282号 p.203-213, {{doi|10.15281/jplantres1887.24.282_203}}</ref>がある。また、[[塩酸]]や[[水酸化カリウム]]溶液、あるいは無水[[エタノール]]、もしくは[[エーテル (化学)|エーテル]]や[[クロロホルム]]などの薬剤をひだに滴下した部分は光が弱くなり、もしくはまったく光らなくなるという観察結果も報告されている<ref name=Kawamura1915/><ref name=Kawamura3>川村清一、[https://doi.org/10.15281/jplantres1887.24.283_249 月夜茸及ビ其發見現象ニ就テ (三)] 『植物学雑誌』 1910年 24巻 283号 p.249-260, {{doi|10.15281/jplantres1887.24.283_249}}</ref>。同様に、[[二酸化炭素]]・[[窒素]]・[[水素]]などや、気化させた[[エーテル (化学)|エーテル]]・[[クロロホルム]]などを満たした容器中でも光を減じ、0.05気圧程度の真空容器内では、菌体が視認できないほどに光量が減少したとされている。一方で、[[酸素]]を満たした容器内での発光は、空気中におけるそれと差がないようにみえたという<ref name=Kawamura1915/><ref name=Kawamura3/>。60℃の熱水中に子実体を投入した場合には、瞬時にひだの発光性は失われ、これを常温の空気中に取り出しても光は復活しないと報告されている<ref name=Kawamura1915/>。

従来、[[イルジン]]S<ref name=Korean/>、ジヒドロイルジンS (dihydroilludin S) やデオキシイルジンM (deoxyilludine M) <ref>Endo, M., Kajiwara, M., and K. Nakanishi, 1970. "[https://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/1970/c2/c29700000309/unauth#!divAbstract Fluorescent constituents and cultivation of ''Lampteromyces japonicus''.]", Journal of the Chemical Society D (1070): 309-310, {{doi|10.1039/C29700000309}}</ref>などが発光の起因物質であると考えられていたが、それは誤りであり、ひだの発光は、ランプテロフラビン(5’-α-リボフラノシルリボフラビン)に起因するものである<ref name=Sympodium>磯部稔・Uyakul, D., 高橋宏幸・後藤俊夫、[https://doi.org/10.24496/tennenyuki.31.0_396 月夜茸の発光物質ランプテロフラビンの構造と合成研究] 『天然有機化合物討論会講演要旨集』1989年 31巻 p.396-403., {{doi|10.24496/tennenyuki.31.0_396}}, {{NAID|110006678837}}</ref><ref>Uyakul, D., Isobe, M., and T. Goto, 1990. "[https://doi.org/10.1016/S0040-4020(01)86700-4 Lampteroflavin, the first riboflavinyl alpha ribofuranoside as light emitter in the luminous mushroom, ''L. Japonicus''.]" Tetragedron 46: 1367-1378, {{doi|10.1016/S0040-4020(01)86700-4}}</ref>。

ランプテロフラビンは、新鮮なツキヨタケのひだの組織中に0.0005パーセント(重量比:1mg/生の子実体のひだ5kg)程度の割合で存在し、その蛍光スペクトルは、ツキヨタケのひだが放つ光とほぼ等しい波長である524nm付近に吸収極大を示す。またその光量は pH5-8の中性域においてもっとも低くなるとされている<ref name=Sympodium/><ref>Uyakul, D., Isobe, M., and T. Goto, 1989. "[https://doi.org/10.1016/0045-2068(89)90046-1 ''Lampteromyces'' bioluminescence: 3. Structure of lampteroflavin, the light emitter in the luminous mushroom, ''L. japonicus''.]" Bioorganic Chemistry 17: 454-460, {{doi|10.1016/0045-2068(89)90046-1}}</ref>。

== 分類学的位置づけ ==
日本の菌学界に初めて紹介された時点では、樹上生であるとともに発光性を有することから、''Pleurotus olearius'' DC(=''Omphalotus olearius'':後述)と同定されたが、これは誤りであった<ref name=Kawamura1/>。やや時代が下がって、この誤りがただされ、柄がかさの一端に側生することから、古典的な定義による ''Pleurotus'' 属([[ヒラタケ]]・[[ムキタケ]]・[[スギヒラタケ]]・[[ワサビタケ]]・シジミタケ・チャヒラタケなど、短い柄がかさの一端に生じるか、あるいはほぼ無柄で、かさの一端で朽ち木などの基質に直接に付着して生育する)に置かれ、''Pleurotus noctilucens'' Inoko の学名が提唱された<ref name=Inoko>Inoko, Y., 1889. Toxikologisches ueber einen Japanischen Giftschwamm. Mitteilung der Medikalishen Faclutät der Kaiserlish-Japanischen Universität, Tokyo 1: 277-306.</ref>。しかし ''P. noctilucens'' の名は、その時点ですでに別種の発光きのこ(フィリピン産:現在では、''Nothopanus noctilucens'' (Lév.) Sing. の学名が用いられている<ref>Singer R., 1973.. Diagnoses fungorum novorum Agaricalium III. Beihefte zur Sydowia 7: 1-106.</ref>)に与えられていた<ref>Saccard, 1887. Sylloge fungorum omnium hucusque cognitorum 5: 586.</ref>ために無効とされた<ref>田中延次郎、[https://doi.org/10.15281/jplantres1887.3.47 猪子吉人氏ノ日本有毒菌類第一編ヲ讀ム] 『植物学雑誌』 1889年 3巻 24号 p.47-51, {{doi|10.15281/jplantres1887.3.47}}</ref>。その後、日本産の新鮮な生標本に基づいてさらに詳しく検討されるとともに、やはり新種であると判断されて ''Pleurotus japonicus'' の学名が与えられた<ref name=Kawamura1915/>。のち、柄に不明瞭なつばを備えることをおもな理由として、古典的定義による ''Armillaria'' 属([[マツタケ]] やヌメリツバタケなどを含む)に移された<ref name=ImaiHokkaido/>が、[[胞子]]がほぼ球状をなすことや、ひだの組織の実質が類整型(Subegular:菌糸がほぼ平行に並んで配列し、互いに著しくもつれ合うことはない)の構造を有すること、あるいは子実下層がよく発達することなどを重視し、''Pleurotus'' や ''Armillaria'' からは独立させられ、新属 ''Lampteromyces'' が設立されるとともに ''L. japonicus'' の組み合わせが提唱された<ref name=Singer1947>Singer, R., 1947. "[https://doi.org/10.1080/00275514.1947.12017591 New genera of fungi III.]" Mycologia 39: 77-89, {{doi|10.1080/00275514.1947.12017591}}</ref>。

子実体が含有する成分の共通性によって、''Lampteromyces'' 属を ''Omphalotus'' 属に包含する意見が出され、''O. japonicus'' の組み合わせ名が提案された<ref name=Persoonia/>が、この処置はさらに[[分子系統]]学的解析の結果によって支持されることとなった<ref>[http://www.cybertruffle.org.uk/cyberliber/59350/0096/006/1253.htm Kirchmair, M., Morandell, S., Stolz, D., Pöder, R., and C. Sturmbauer, 2004. Phylogeny of the genus ''Omphalotus'' based on nuclear ribosomal DNA-sequences. Mycologia 96: 1253-1260.]</ref>。属内においては、[[タイプ種]]である ''O. olearius'' (DC) Sing. にもっとも近縁であると考えられている<ref name=Phylogeny/>。

[[ファイル:Omphalotus olearius.JPG|250px|thumb|''Omphalotus'' 属の基準種である ''O. olearius''。]]
いっぽうで、''Omphalotus'' 属の所属種として扱われてきた他の菌の[[標本]]との比較検討が行われた結果、日本産の標本(標本の産地や採集年月日については記述されていない)をもとにすでに新種記載がなされていた ''Agaricus guepiniformis'' Berk. <ref name=Berkeley1877>M. J. Berkeley, 1877. "[https://doi.org/10.1111/j.1095-8339.1877.tb00170.x Contributions to the Botany of H.M.S. ‘Challenger.’ XXXVIII. Enumeration of the Fungi collected during the Expedition of H.M.S. ‘Challenger.’ 1874-75.]" Journal of the Linnean Society of London, Botany 16: 38-54, {{doi|10.1111/j.1095-8339.1877.tb00170.x}}</ref>と同一種であることが明らかになり、[[国際藻類・菌類・植物命名規約]]上で先取権のある種形容名を生かして ''O. guepiniformis'' (Berk.) Neda の組み合わせが提唱された<ref>Neda, H., 2004. Type studies of ''Pleurotus'' reported from Japan. Mycoscience 45: 181-187.</ref>。しかしながら、''L. japonicus'' の学名が、特に日本においては中毒を防ぐための実用的見地から広く普及していたことに鑑み、この名を組み替えた ''O. japonicus'' を命名規約上での[[保留名]]として扱い、''O. guepiniformis''(および、同じく異名である ''Pleurotus harmandii'')の名に置き換えることが提案された<ref>Redhead, S. A., and H. Neda, 2006. (1741) Proposal to Conserve the Name ''Pleurotus japonicus'' against ''Agaricus guepiniformis'' and ''Pleurotus harmandii'' (Basidiomycota). Taxon 55 (4): 1032-33.</ref>。この提案は[[命名法部会菌類委員会]] ([[:en:Nomenclature Committee for Fungi|Nomenclature Committee for Fungi]]) によって審議され、正式に認められるにいたった<ref>Norvell, L. L., 2008. Report of the Nomenclature Committee for Fungi: 14. Taxon 57 637-639.</ref>。

[[科(分類学)|科]]レベルの位置づけとしては、長らく Tricholomataceae(キシメジ科)に置かれていた<ref name=Singer1947/>が、のちに、子実体が含有する成分の共通性などを根拠に、''Omphalotus'' 属などとともに Paxillaceae ヒダハタケ科に所属させる見解が示された<ref>Singer, R., 1986. The Agaricales in Modern Taxonomy (4 th and reviced edition). Koeltz Scientific Book, Koenigstein. {{ISBN2|3-87429-254-1}}.</ref>。また、分子系統学的解析の結果に基づき、独立した Omphalotaceae ツキヨタケ科を設立する意見<ref>Kämmerer, A., Besl, H., and A. Bresinsky, 1985. Omphalotaceae fam. nov. und Paxillaceae, ein chemotaxonomischer Vergleich zwier Pilzfamilien der Boletales. Pl. Syst. Evol. 150: 101-117.</ref>もあったが、2015年5月の時点では Marasmiaceae ホウライタケ科に所属させる見解が一般的なものとなっている。

== 類似する種 ==
''Lampteromyces'' の第二の種として記載された ''L. luminescens'' M. Zang は、チベットから見出され、胞子がきわめて微細な粒状突起をこうむるとともに、ひだに縁シスチジアを備える点でツキヨタケと区別された<ref>臧穆、我国西蔵高等真菌数新种.云南植物研究 1: 101-104 + 1 plate</ref>もので、ツキヨタケと同一種であるとする見解<ref name=Persoonia/>と、別種であるとする見解<ref>Yang, A.-L., and Femg, B., 2013. "[https://www.cabdirect.org/cabdirect/abstract/20133230266 The genus ''Omphalotus'' (Omphalotaceae) in China.]" Mycosyctema 32: 545-556. {{ISSN|1672-6472}}</ref>とがあり、両者の異同についてはまだ決着がついていない。

同じく中国(河南省)から記載された ''L. mangensis'' Jian Z. Li & X.W. Hu は、その原記載<ref>Li, J.-Z. and X. W. Hu, 1993. [http://en.cnki.com.cn/Article_en/CJFDTOTAL-HNSZ199302021.htm A new species of ''Lampteromyces'' from Hunan] Acta Scientiarum Naturalium Universitatis Normalis Hunanensis 16: 188-189.</ref>によれば、平滑・球形の胞子を有し、縁シスチジアはなく、柄には低いつば状の隆起を備えるとともに柄の肉が藍黒色を呈する点で日本産のツキヨタケに類似しているが、かさ・ひだ・柄はほぼ白色ないし淡い帯青紫色を示すことから別種として記載された菌である。二度目の採取記録は知られておらず、子実体の含有成分の分析も行われていない。また、ほかの類似種との間での分子系統学的検討もなされていないことから、暫定的に現在もツキヨタケとは独立した別種として扱われているが、所属としてはツキヨタケ同様に ''Omphalotus'' 属に移され、''O. mangensis'' (Jian Z. Li & X.W. Hu) Kirchm. & O.K. Mill., in Kirchmair, Pöder, Huber & Miller が当てられている<ref name=Persoonia/>。

== 古典上での記述 ==
日本では古くから[[毒キノコ]]として広く知られており、『[[今昔物語集]]』では'''和太利(わたり)'''という名で登場し、ヒラタケと偽ってこの菌を入れた汁物でもてなす毒殺未遂事件が取り上げられている(二十八巻「[[金峰山]]別当食毒茸不酔語第十八」)<ref name=Imazeki1974/><ref name=NandO/>。また、同じく二十八巻の十七話として、「藤の樹に発生した平茸を食したことによる中毒事件(左大臣御読経所僧酔茸死語第十七)」が題材とされているほか、同じ巻の第十九話(比叡山横川僧酔茸誦経語第十九)として、平茸とおぼしき茸を持ち帰ったところ、「これは平茸ではない」という者と「いや、平茸だから食べられる」という者とがあり、汁物にして食したところ中毒を起こした、と記述されている。後者の二つの例においては「和太利」の名こそ登場しないものの、これらもまたツキヨタケによるものではないかと推測されている<ref name="毒きのこ今昔179-190">{{harvnb|毒きのこ今昔|pp=179-190|ref= "毒きのこ今昔"}}</ref>。

江戸時代末期に著わされた[[続三州奇談]]では、本種とおぼしきキノコを指して'''闇夜茸'''の名が当てられ、「又闇夜茸と云う物あり。闇中に二・三茎を下げて歩けば、三尺四方は明るくして昼の如し:多く積む処には遠望火光に似てけり:是を煮て食ふに、吐瀉して多く煩ふ:味も劣れり、必ず食ふべからずとや」と記述されている<ref >日置謙(校訂)、1933.七尾網燐.続三州奇談 巻六.(合本三州奇談 p. 195-196.) 石川県図書館協会、金沢.</ref>。

同じく、江戸時代の天保6年(1835年)に[[坂本浩然]]が著した「菌譜(第二巻毒菌之部)」にも、「月夜蕈―又一種石曽根等ノ朽木横倒スルモノニ生ズ状チ硬木耳ノ如ク紫黒色夜間光アリ余野州探薬ノ時友人櫟齋卜同ク山中ノ栗樹ノ立枯ニ生ズルモノデ見ルニ香蕈ノ如シ傍テ是チ得テ家ニ帰リ酒肴トス食スルモノ皆腹痛、吐瀉急ニ樺皮チ煎ジ服サシメテ漸ク解ス故ニ知ル此菌ノ大毒アルコトヲ余ハ幸ニシテ免ガルルコトヲ得タリ謹ズンバアル可カラズ(石曽根などの倒木上に発生するもので、形状は[[キクラゲ]]に似て紫黒色を呈し、夜になると光る:また立ち枯れた[[クヌギ]]に発生しているシイタケに似た茸をみかけたが、これを酒の肴として食したところ、食べた者はみな腹痛と吐瀉とをきたしたので、[[カバノキ属|カンバ]]の樹皮を煎じて服用してことなきを得た:この茸に激毒が含まれているのは明らかなので、食用にしてはいけない)」との記述がある。「黒紫色で夜になると光る」菌が、現代の分類学上でなにに当たるのかは不明だが、「クヌギの立ち枯れ木に生じた、香蕈(=シイタケ)類似の茸」については、ツキヨタケを指すものである可能性が考えられる<ref name=Kawamura1/>。

== 保全状況 ==
1997年公表の環境省の第2次[[レッドリスト]]で、生育地である[[ブナ林]]の減少を理由に絶滅危惧II類にカテゴライズされたが<ref name=KankyoCHo/><ref>根田仁「[http://www.biodic.go.jp/cgi-db/gen/rdb_g2000_sy2.RDB_DETAIL?code=D0088&rank=&search_str=%a5%c4%a5%ad%a5%e8%a5%bf%a5%b1&start_row=1&gaku_n=&bunrui=% ツキヨタケ]」『[https://ikilog.biodic.go.jp/Rdb/env 絶滅危惧種情報]』環境省[[生物多様性センター]](2015年6月2日閲覧)</ref><ref>環境省『報道発表資料 [https://www.env.go.jp/press/press.php?serial=982 植物版レッドリストの作成について]』、1997年8月28日。(2015年6月2日閲覧)</ref>、2007年公表の第3次レッドリストでランク外とされた<ref>環境省『報道発表資料 [https://www.env.go.jp/press/press.php?serial=8648 哺乳類、汽水・淡水魚類、昆虫類、貝類、植物I及び植物IIのレッドリストの見直しについて]』、2007年8月3日。(2015年6月2日閲覧)</ref>。


== 脚注 ==
== 脚注 ==
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{{Reflist|30em}}
<div class="references-small"><references /></div>


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
* [[:en:Omphalotus olearius]] - ツキヨタケと類縁種であり、ツキヨタケと共通する有毒成分 (Illudin) を含む。
* [[キノコ]]
* [[ヤコウタケ]] - 発光性を有するキノコの一つ。
* [[:en:Omphalotus olearius]] - ツキヨタケと類縁種であり、同じ毒(Illudin)を含む。
* [[ツキヨタケ科]] - ツキヨタケ属を含んでいた科。現在では[[ホウライタケ科]]のシノニムとされる。


== 外部リンク ==
== 外部リンク ==
* {{PDFlink|[http://www.j-poison-ic.or.jp/ippan/tuki.pdf きのこによる中毒情報 ツキヨタケ]}} - 財団法人 日本中毒情報センター
* [https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000142114.html ツキヨタケ] - 厚生労働省
* {{PDFlink|[http://www.pref.miyazaki.lg.jp/contents/org/fukushi/eikanken/research/pdf/1612.pdf ツキヨタケによる食中におけるイルンSの分析]}} - 宮崎県衛生環境研究所
* [https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/kinoko/tsukiyod.html ツキヨタケ)キシメ] - 東京都福祉保健局


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2024年5月25日 (土) 15:53時点における最新版

ツキヨタケ
径5cm程度の比較的小さな子実体
分類
: 菌界 Fungi
亜界 : ディカリア亜界 Dikarya
: 担子菌門 Basidiomycota
亜門 : ハラタケ亜門 Agaricomycotina
: ハラタケ綱 Agaricomycetes
亜綱 : ハラタケ亜綱 Agaricomycetidae
: ハラタケ目 Agaricales
: ホウライタケ科 Marasmiaceae
: ツキヨタケ属 Omphalotus
: ツキヨタケ O. japonicus
学名
Omphalotus japonicus
(Kawam.) Kirchm. & O.K.Mill. (2002)
和名
ツキヨタケ(月夜茸)
ツキヨタケ(径15-20cm前後とかなり大型の子実体

ツキヨタケ(月夜茸)は、ハラタケ目ホウライタケ科ツキヨタケ属に属するキノコの一種である。

日本を中心として極東ロシア中国東北部にも分布し、晩夏から秋にかけて主にブナの枯れ木に群生する。子実体には主要な毒成分としてイルジンSを含有し、そのひだには発光成分を有する。シイタケムキタケヒラタケなどと誤認されやすく、誤食した場合には下痢や嘔吐といった中毒症状から、死亡例も報告されている。

名称

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旧属名 Lampteromyces は、古典ギリシア語の Lampteros(Λαπτερος:灯火)と Myces(μύκης:菌)とを組み合わせたもの[1][2]、また現在適用されている属名 Omphalotus は、同じくギリシア語の Omphalus(ὀμφαλύς:へそ)と Tus(τύς:耳)とを組み合わせたものである[1]

和名としては、初めに提案されていたクマヒラタケの名[3]ではなく、江戸時代に坂本浩然によって提唱された名であるツキヨタケが用いられることとなった[4]

地方名(方言名)は多く[5]、カタハキノコ(青森県津軽地方)、カタハタケ(鹿児島県下)、カタヘラタケ(秋田県下)、岩手県下では「ドクキノコ」の名もある。また、秋田県(北秋田・鹿角)では、ドクアカリの名で呼ばれているという。さらに、ブナカタハ(青森県)・ブナタロウ(石川県白山山麓)などの名も知られている[6]

なお、茨城県など一部地域ではクサウラベニタケを地方名で「ツキヨタケ」と呼んでいるため区別を要する[7]

形態

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かさは半円形ないし腎臓形をなし(ごく稀に、倒木の真上に生えた場合に杯状の中心生となることがある[8])、長径5-30cm程度になり、表面は湿時にはいくぶん粘性を示し、幼時は橙褐色から黄褐色でときに微細な鱗片を散在するが、老成するに従って紫褐色または黄褐色となり、にぶい光沢をあらわす。表皮は肉から剥離しにくく、水酸化カリウム水酸化ナトリウムアンモニア水炭酸水素ナトリウムなどの塩基性化合物によってすみやかに鮮青緑色に変色する(この呈色は、茹でたものや冷凍したもの、あるいは乾燥したものでも反応する)[9]。ひだは垂生し、比較的幅広く、白色からクリーム色を呈する[10]は通常はかさの一端に着き(まれにほぼ中心生)、太く短くて淡い黄褐色を呈し、ひだとの境界には低いリング状をなした隆起(不完全な内被膜)がある[10]。かさは、柄の近くは厚いが周辺部は薄く、肉は軟質でほぼ白色[10]。柄の基部付近においては多くは紫黒色のしみ(まれに、ほとんどこれを欠くこともある[11]) を生じ、特徴的な味はない[12]

子実体を構成する菌糸はしばしばやや厚壁で、クランプを有する。シスチジアはなく、胞子はほほ球形かつ薄壁で無色・平滑、ヨウ素液で青く染まらず(非アミロイド性)、径 13-17μm程度、胞子紋は通常は白色あるいはかすかに灰褐色を帯びる[13][10]が、いくぶん紫色を呈する場合もある[14]

生態

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晩夏から秋にかけて、おもにブナの倒木・切り株、あるいは立ち枯れ木などの上に群生する[14][15][16][17][18][19]。ときにイタヤカエデ [10][15][17][18][20][21]トチノキ[20][21]、あるいはミズメ[22]アカシデ[10][23][1]イヌシデコナラミズナラ[24]などの枯れ木に発生することもあり、また、ブナの自然分布がない北海道東北部などにおいては、トドマツ上に生じる[10][15][1]。なお、人工栽培が試みられた例では、アカマツカラマツチョウセンゴヨウアベマキクヌギモンゴリナラあるいはヤマハンノキなどのおが屑上でも子実体が形成されることが確認されている[25]

菌糸は一般的な真菌用の培地(たとえばジャガイモ=ブドウ糖寒天培地[25]や浜田培地[19])を用いて培養することができ、さらに滅菌したブナ材の小片を培地に加えることで、単位時間当たりの菌糸の生育が有意に促進される[19]。なお、生態的には、木材中のリグニンを分解する白色腐朽菌とみなされている[26]

他の生物とのかかわり

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子実体には、ほかの多くのキノコ類と同様に、多種多様な昆虫が集まる。九州の英彦山において、春季(4-5月)に採集されたツキヨタケの子実体(前年に発生し、内部が腐敗しかけたものの表層組織が乾固したことによって翌春まで残存したもの)からは51種の昆虫(偶発的に子実体に付着していた種をも含む)が得られた例がある[27]。また、韓国南部では、ゴミムシダマシ科に属するチビヒサゴゴミムシダマシ (Cryphaeus rotundicollis Chûjô et Lee) およびクロツヤキノコゴミムシダマシ (Platydema nigroaeneum Motschulsky) が、ツキヨタケの子実体(新鮮なものか腐敗しかけたものかは明らかにされていない)から見出された例が記録されている[28]

また、ツキヨタケの人工培養菌糸体は、マツノザイセンチュウ (Bursaphelenchus xylophilus (Steiner & Buhrer) Nickle) を誘引し、かつこれを殺す性質がある[29][30]が、誘引・殺傷の機構についてはまだ明らかにされていない。ただし、マツノザイセンチュウの誘引実験に際し、培養したツキヨタケの菌糸体を生きたままで用いた場合と熱湯で処理してから用いた場合とを比較すると、前者ではヒラタケに匹敵するほど著しい誘引活性を示したのに対し、後者では対照とした菌(ハイイロカビ)にも劣る活性しか確認されなかったことから、ツキヨタケの菌糸の生死が誘引活性の発現に影響しているのではないかと推定されている[31]。なお illuden S には、グラム陰性・陽性菌に対する発育阻害や、サツマイモネコブセンチュウ(eloidogyne incognita)の致死率向上効果[30]が認められている。

分布

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日本のブナ林にはごく普通に産する。北海道南部以南に広く分布し、鹿児島県(大隅半島)の高隈山が南限であるとされている[32]

日本国外では、ロシア極東地方[33]および中国東北部[34]のほか、朝鮮半島 [1]にも分布する。ただし、朝鮮半島での発生は非常にまれであるといわれている[25]。なお、中国産のものは国産とは異なるクレードであるため、別種の可能性が示唆されている[35]

毒性

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中毒症状

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摂食後30分から3時間で発症し、下痢嘔吐が中心となり[36]、あるいは腹痛をも併発する[30][37]。景色が青白く見えるなどの幻覚症状がおこる場合もあり、重篤な場合は、痙攣・脱水・アシドーシスショックなどをきたす。死亡例[38]も少数報告されているが、キノコの毒成分自体によるものではなく、激しい下痢による脱水症状の2次的なものであると考えられる。

治療

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医療機関による処置が必要で、消化器系の症状に対しては、催吐・胃洗浄、あるいは吸着剤(活性炭など)の投与が行われる。また、嘔吐下痢による水分喪失の改善を目的とした補液も重要視される。重症例では血液吸着 DHP(Direct Hemoperfusion:直接血液灌流法)により、血中の毒素の吸着除去が行われることもある[39]

毒成分

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ツキヨタケから得られた毒成分は、当初はランプテロール[40][41]の名で呼ばれたが、後の研究[42][43] により、日本未産の有毒きのこである Omphalotus illudens から単離されたイルジン (Illudin) と同一物質であることが明らかにされた。

主要な毒成分は、セスキテルペンに属するイルジンSおよびその異性体であるイルジンMなどとされている[16][44][45][46][47][48]。特に、主要な中毒症状の一つである嘔吐は、イルジンSによるものであるという[49][50]

イルジンSは黄色・不定形の物質で、100℃・15分の加熱では15パーセント程度しか分解されず、また、水にもある程度の溶解性を有するため、調理されたツキヨタケについて、子実体そのものを摂食せずとも汁を口にするだけで中毒する危険がある[51]。その一方で、塩蔵した後、塩抜きを兼ねて流水にさらすことで、ある程度の毒抜きがなされるとも考えられる(後述)。ある程度の脂溶性をも示すため、誤って炒め物などにした場合、混合して調理されたツキヨタケ以外の食材を食べたことで発症する場合がある[52]。いっぽう、イルジン類は、ツキヨタケのもう一つの主要な中毒症状たる下痢の原因となる平滑筋弛緩作用を持たない。平滑筋の弛緩作用は、ムスカリン類似の未同定物質によるものではないかと推定されている[53][54]。なお、野生のツキヨタケ子実体に含有されるイルジンSの含有量は、採集した場所や時期によって大きく変動(山形県産のサンプルでは、1.2-318.2 μg/子実体1g[51]、あるいは8.3-776.2 μg/子実体1g[55])し、場合によってはこれをまったく含まないことすらあるという[56]。さらに、菌糸体の人工培養に際して液体培地を用いた場合には、イルジンSが培地中に分泌されるのに対し、木粉培地を使用した場合には、子実体形成後に培地内に残った菌糸体あるいは廃培地中にイルジンSが検出されなかったことから、子実体に含まれるイルジンSはまず菌糸体内で生成され、子実体形成に際して移送されるのではないかと推定されている[56]

従来、食中毒の原因となったきのこの同定方法としては、食物の残りや患者の吐瀉物を顕微鏡で観察するのが主流であった[57]が、有毒成分を直接検出する方法も研究されている。ツキヨタケに関しては、中毒患者が食べ残した料理の中に含まれるイルジンSをガスクロマトグラフ質量分析装置 (GC/MS) で定量する方法(試料の処理方法や分析条件にもよるが、イルジンSの回収率は、ツキヨタケ以外の食用きのこにこれを混入した場合で84-94パーセント、ツキヨタケを加えた豚汁を分析試料に用いた場合で74.8パーセント)がある[51][58]。また、リアルタイムPCR法による同定も試みられている[59][60]ドクツルタケクサウラベニタケテングタケなど、毒成分を異にする他の有毒キノコ、あるいは食用キノコが試料中に混合していても、個々の有毒成分を迅速に定量可能な方法が確立されつつある[61]

このほか、子実体には、細胞毒として働くジヒドロイルジンM (dihydroilludin M) や、ネオイルジン (Neoilludin) AおよびB[62][30]なども含まれている。

その他の成分

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子実体には、上記のほかにアトロメンチン・テレフォール酸・バリエガト酸・バリエガトルビンなどの色素が含まれている[63]。アトロメンチンは、もとヒダハタケ科に置かれていたニワタケの子実体から初めて単離された青銅色の化合物であり、テレフォール酸はイボタケ科ほか多くのきのこの子実体中に普通に見つかる。バリエガト酸(橙色)およびバリエガトルビン(赤色)は、ともにヌメリイグチ属の一種 (Suillus variegatus (Sw.) Richon & Roze) から最初に得られた化合物である[64][65]

また、LJAP (Lampteromyces japonicus antibiotic protein) と称される一種のレクチンも見出されており、これには抗菌活性が認められたという[66]

ハラタケ目の菌としては珍しく、ペクチナーゼポリメチルガラクツロナーゼなどのペクチン分解酵素の活性が高いことでも知られている[67]

誤食されやすい食用キノコ

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ツキヨタケと間違われやすいムキタケ。
ツキヨタケと間違われやすいヒラタケ。

全体に地味な色調を持ち、少しも毒々しくみえないこと・縦によく裂けること・不快な臭いや味がないこと・しばしば1か所で大量に採取されることなどから、日本におけるきのこ中毒(原因となったきのこが確定されたケース)には、ツキヨタケによるものがもっとも多い[16][60]。比較的幼い子実体はシイタケに、成熟したものはムキタケヒラタケに類似している。特に、シイタケやムキタケとは1本の枯れ木上に混じり合って発生することがあり、誤食の危険が大きい。日本では2014年に滋賀県高島市の道の駅で食用のヒラタケと間違えてツキヨタケをパック詰めし、それを食べた7人が食中毒の症状を訴えた[68]

食中毒報告状況(2000-2015年度)厚生労働省[69]
年度 発生件数 摂食者 患者数 死者数
2000 13 61 67 0
2001 3 45 45 0
2002 19 110 91 0
2003 11 39 36 0
2004 16 53 52 0
2005 15 70 63 0
2006 17 65 61 0
2007 15 63 59 0
2008 19 78 70 0
2009 19 67 61 0
2010 18 64 62 0
2011 13 46 49 0
2012 23 85 74 0
2013 11 46 43 0
2014 14 66 62 0
2015 11 36 32 0

後三種は、子実体のいかなる発育段階においても、ひだに発光性を欠いている。また、シイタケでは肉がツキヨタケのそれに比べてより強靭であり、乾燥すると特有の香気を発する点が異なる。ムキタケはかさの表面に微毛を被るとともに、かさの表皮が容易に剥がれる点で区別される。ヒラタケは、柄にリング状の隆起(不完全なつば)がなく、ひだと柄との境界がより不明瞭なことで異なっている。さらに、ツキヨタケ以外の3種では、かさの表皮に塩基性化合物の水溶液を滴下しても緑色にならない[9]こと、柄の肉に黒紫色のしみを生じない[14]ことも識別の上で重要な性質である。

ムキタケとの手軽な識別法として、グアヤク脂のエタノール溶液(グアヤクチンキ)や硫酸バニリン溶液(純水3ccに濃硫酸8ccを加え、バニリン1gを溶かす)を用いる方法があり、ツキヨタケはこれら2種類の試薬に対してなんら呈色を示さないが、ムキタケではグアヤクチンキで青緑色、硫酸バニリンで赤紫色の変色が起こる。ただし、これらの呈色が菌体中のいかなる成分によるものかは、明らかにされていない[70]

これらの相違点に加え、シイタケ・ヒラタケ・ムキタケにおいては、それらの胞子はツキヨタケのそれに比べてずっと小さく、類球形を成すこともない[14]。なお、山形県下の一部の地方では、茹でた後に塩蔵保存し、流水にさらしてから食用とする習慣がある[71]が、マウスを用いた実験によれば、熱処理したのみでは便重量の減少や消化管内容物の輸送の促進(ヒトの中毒時の下痢症状を示唆する)などがみられるのに対し、塩蔵(沸騰水中で10分間熱した後、菌体を1分あたり500mlの流速にて流水中に48時間さらし、水切りをしてから重量比で1.5倍量の食塩を加え、室温下で5週間保存)してから水中に投じて48時間の塩抜きを行ったツキヨタケのメタノールエキスを与えた実験区ではこれらの所見がなく、解剖時の胃の膨満や出血、あるいは消化管内壁の潰瘍性糜爛などもみられなかったという[49]

発光性

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子実体の各部のうち、発光性を有するのはひだのみで、かさや柄は、表面においても内部においても光らない。また、ひだが堅いものに触れたりして損傷した部分は光らなくなる[36][4]。発光のピークはかさがじゅうぶんに開いた後の2-3日程度であるという[17]。また、菌体が古くなると、光量は次第に小さくなる[4]が、小動物などにより食害された部分などを除けば、ひだの光量の低下は一個の子実体中において均等に起こり、部分的に光のむらが生じることはない[36]

ひだの断面はいちように発光するが、胞子については「発光性を欠く」という報告[36][4]と、「湿った場所に落ちると光る」という報告[18]とがある。さらに、菌糸体については、当初は発光しないとされていた[36]が、測定機器の進歩により、肉眼的には検知することができない微弱な光を発していることが判明した。培養した菌糸において、多数の胞子を起源とした菌糸(重相菌糸)は、唯一個の胞子を発芽させて得た菌糸(単相菌糸)と比較して1000倍ほど高い光量を示したという[72]

ひだを高温または低温に保った容器に入れると、次第に光量は小さくなり、60℃の空気中に15分間保つと、常温に戻しても発光は回復しなかったという報告[36][73]がある。また、塩酸水酸化カリウム溶液、あるいは無水エタノール、もしくはエーテルクロロホルムなどの薬剤をひだに滴下した部分は光が弱くなり、もしくはまったく光らなくなるという観察結果も報告されている[36][74]。同様に、二酸化炭素窒素水素などや、気化させたエーテルクロロホルムなどを満たした容器中でも光を減じ、0.05気圧程度の真空容器内では、菌体が視認できないほどに光量が減少したとされている。一方で、酸素を満たした容器内での発光は、空気中におけるそれと差がないようにみえたという[36][74]。60℃の熱水中に子実体を投入した場合には、瞬時にひだの発光性は失われ、これを常温の空気中に取り出しても光は復活しないと報告されている[36]

従来、イルジンS[25]、ジヒドロイルジンS (dihydroilludin S) やデオキシイルジンM (deoxyilludine M) [75]などが発光の起因物質であると考えられていたが、それは誤りであり、ひだの発光は、ランプテロフラビン(5’-α-リボフラノシルリボフラビン)に起因するものである[76][77]

ランプテロフラビンは、新鮮なツキヨタケのひだの組織中に0.0005パーセント(重量比:1mg/生の子実体のひだ5kg)程度の割合で存在し、その蛍光スペクトルは、ツキヨタケのひだが放つ光とほぼ等しい波長である524nm付近に吸収極大を示す。またその光量は pH5-8の中性域においてもっとも低くなるとされている[76][78]

分類学的位置づけ

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日本の菌学界に初めて紹介された時点では、樹上生であるとともに発光性を有することから、Pleurotus olearius DC(=Omphalotus olearius:後述)と同定されたが、これは誤りであった[4]。やや時代が下がって、この誤りがただされ、柄がかさの一端に側生することから、古典的な定義による Pleurotus 属(ヒラタケムキタケスギヒラタケワサビタケ・シジミタケ・チャヒラタケなど、短い柄がかさの一端に生じるか、あるいはほぼ無柄で、かさの一端で朽ち木などの基質に直接に付着して生育する)に置かれ、Pleurotus noctilucens Inoko の学名が提唱された[3]。しかし P. noctilucens の名は、その時点ですでに別種の発光きのこ(フィリピン産:現在では、Nothopanus noctilucens (Lév.) Sing. の学名が用いられている[79])に与えられていた[80]ために無効とされた[81]。その後、日本産の新鮮な生標本に基づいてさらに詳しく検討されるとともに、やはり新種であると判断されて Pleurotus japonicus の学名が与えられた[36]。のち、柄に不明瞭なつばを備えることをおもな理由として、古典的定義による Armillaria 属(マツタケ やヌメリツバタケなどを含む)に移された[14]が、胞子がほぼ球状をなすことや、ひだの組織の実質が類整型(Subegular:菌糸がほぼ平行に並んで配列し、互いに著しくもつれ合うことはない)の構造を有すること、あるいは子実下層がよく発達することなどを重視し、PleurotusArmillaria からは独立させられ、新属 Lampteromyces が設立されるとともに L. japonicus の組み合わせが提唱された[2]

子実体が含有する成分の共通性によって、Lampteromyces 属を Omphalotus 属に包含する意見が出され、O. japonicus の組み合わせ名が提案された[63]が、この処置はさらに分子系統学的解析の結果によって支持されることとなった[82]。属内においては、タイプ種である O. olearius (DC) Sing. にもっとも近縁であると考えられている[26]

Omphalotus 属の基準種である O. olearius

いっぽうで、Omphalotus 属の所属種として扱われてきた他の菌の標本との比較検討が行われた結果、日本産の標本(標本の産地や採集年月日については記述されていない)をもとにすでに新種記載がなされていた Agaricus guepiniformis Berk. [83]と同一種であることが明らかになり、国際藻類・菌類・植物命名規約上で先取権のある種形容名を生かして O. guepiniformis (Berk.) Neda の組み合わせが提唱された[84]。しかしながら、L. japonicus の学名が、特に日本においては中毒を防ぐための実用的見地から広く普及していたことに鑑み、この名を組み替えた O. japonicus を命名規約上での保留名として扱い、O. guepiniformis(および、同じく異名である Pleurotus harmandii)の名に置き換えることが提案された[85]。この提案は命名法部会菌類委員会 (Nomenclature Committee for Fungi) によって審議され、正式に認められるにいたった[86]

レベルの位置づけとしては、長らく Tricholomataceae(キシメジ科)に置かれていた[2]が、のちに、子実体が含有する成分の共通性などを根拠に、Omphalotus 属などとともに Paxillaceae ヒダハタケ科に所属させる見解が示された[87]。また、分子系統学的解析の結果に基づき、独立した Omphalotaceae ツキヨタケ科を設立する意見[88]もあったが、2015年5月の時点では Marasmiaceae ホウライタケ科に所属させる見解が一般的なものとなっている。

類似する種

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Lampteromyces の第二の種として記載された L. luminescens M. Zang は、チベットから見出され、胞子がきわめて微細な粒状突起をこうむるとともに、ひだに縁シスチジアを備える点でツキヨタケと区別された[89]もので、ツキヨタケと同一種であるとする見解[63]と、別種であるとする見解[90]とがあり、両者の異同についてはまだ決着がついていない。

同じく中国(河南省)から記載された L. mangensis Jian Z. Li & X.W. Hu は、その原記載[91]によれば、平滑・球形の胞子を有し、縁シスチジアはなく、柄には低いつば状の隆起を備えるとともに柄の肉が藍黒色を呈する点で日本産のツキヨタケに類似しているが、かさ・ひだ・柄はほぼ白色ないし淡い帯青紫色を示すことから別種として記載された菌である。二度目の採取記録は知られておらず、子実体の含有成分の分析も行われていない。また、ほかの類似種との間での分子系統学的検討もなされていないことから、暫定的に現在もツキヨタケとは独立した別種として扱われているが、所属としてはツキヨタケ同様に Omphalotus 属に移され、O. mangensis (Jian Z. Li & X.W. Hu) Kirchm. & O.K. Mill., in Kirchmair, Pöder, Huber & Miller が当てられている[63]

古典上での記述

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日本では古くから毒キノコとして広く知られており、『今昔物語集』では和太利(わたり)という名で登場し、ヒラタケと偽ってこの菌を入れた汁物でもてなす毒殺未遂事件が取り上げられている(二十八巻「金峰山別当食毒茸不酔語第十八」)[16][17]。また、同じく二十八巻の十七話として、「藤の樹に発生した平茸を食したことによる中毒事件(左大臣御読経所僧酔茸死語第十七)」が題材とされているほか、同じ巻の第十九話(比叡山横川僧酔茸誦経語第十九)として、平茸とおぼしき茸を持ち帰ったところ、「これは平茸ではない」という者と「いや、平茸だから食べられる」という者とがあり、汁物にして食したところ中毒を起こした、と記述されている。後者の二つの例においては「和太利」の名こそ登場しないものの、これらもまたツキヨタケによるものではないかと推測されている[92]

江戸時代末期に著わされた続三州奇談では、本種とおぼしきキノコを指して闇夜茸の名が当てられ、「又闇夜茸と云う物あり。闇中に二・三茎を下げて歩けば、三尺四方は明るくして昼の如し:多く積む処には遠望火光に似てけり:是を煮て食ふに、吐瀉して多く煩ふ:味も劣れり、必ず食ふべからずとや」と記述されている[93]

同じく、江戸時代の天保6年(1835年)に坂本浩然が著した「菌譜(第二巻毒菌之部)」にも、「月夜蕈―又一種石曽根等ノ朽木横倒スルモノニ生ズ状チ硬木耳ノ如ク紫黒色夜間光アリ余野州探薬ノ時友人櫟齋卜同ク山中ノ栗樹ノ立枯ニ生ズルモノデ見ルニ香蕈ノ如シ傍テ是チ得テ家ニ帰リ酒肴トス食スルモノ皆腹痛、吐瀉急ニ樺皮チ煎ジ服サシメテ漸ク解ス故ニ知ル此菌ノ大毒アルコトヲ余ハ幸ニシテ免ガルルコトヲ得タリ謹ズンバアル可カラズ(石曽根などの倒木上に発生するもので、形状はキクラゲに似て紫黒色を呈し、夜になると光る:また立ち枯れたクヌギに発生しているシイタケに似た茸をみかけたが、これを酒の肴として食したところ、食べた者はみな腹痛と吐瀉とをきたしたので、カンバの樹皮を煎じて服用してことなきを得た:この茸に激毒が含まれているのは明らかなので、食用にしてはいけない)」との記述がある。「黒紫色で夜になると光る」菌が、現代の分類学上でなにに当たるのかは不明だが、「クヌギの立ち枯れ木に生じた、香蕈(=シイタケ)類似の茸」については、ツキヨタケを指すものである可能性が考えられる[4]

保全状況

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1997年公表の環境省の第2次レッドリストで、生育地であるブナ林の減少を理由に絶滅危惧II類にカテゴライズされたが[32][94][95]、2007年公表の第3次レッドリストでランク外とされた[96]

脚注

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  3. ^ a b Inoko, Y., 1889. Toxikologisches ueber einen Japanischen Giftschwamm. Mitteilung der Medikalishen Faclutät der Kaiserlish-Japanischen Universität, Tokyo 1: 277-306.
  4. ^ a b c d e f 川村清一、月夜茸及ビ其發光現象ニ就テ (一) 『植物学雑誌』 1910年 24巻 281号 p.165-177, doi:10.15281/jplantres1887.24.281_165
  5. ^ 『きのこの語源・方言事典』には55種の地方名(方言名)が記録されている
  6. ^ 奥沢康正・奥沢正紀『きのこの語源・方言事典』山と溪谷社、1999年。ISBN 978-4-63588-031-2  pp.434-435
  7. ^ 「いっぽんしめじ」の見分け方”. 一般社団法人全国林業改良普及協会. 2020年11月2日閲覧。
  8. ^ ツキヨタケ
  9. ^ a b 青木実・日本きのこ同好会(著).名部みち代(編)、2008.日本きのこ図版(第一巻:ヒラタケ科・ヌメリガサ科・キシメジ科).日本きのこ同好会2、神戸.
  10. ^ a b c d e f g 『原色日本新菌類図鑑(I)』今関六也・本郷次雄(編著)、保育社、大阪、1997年、64頁。ISBN 4-586-30075-2 
  11. ^ 大作晃一・吹春俊光、2010.おいしいきのこ 毒きのこ.191 pp.、主婦の友社、東京. ISBN 978-4-07-2735602
  12. ^ 池田良幸『新版 北陸のきのこ図鑑』本郷次雄(監修)、保育社、2013年、17頁。ISBN 4893791583 
  13. ^ 今関六也・本郷次男、1957.原色日本菌類図鑑.181 pp.保育社、大阪.ISBN 458630023X
  14. ^ a b c d e Imai, S., 1938. 「Studies on the Agaricaceae of Hokkaido I」『北海道帝國大學農學部紀要』 43巻 1号 1938年 p.1-178
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  16. ^ a b c d 今関六也、1974.カラー日本のきのこ.199 pp.山と渓谷社、東京.ISBN 9-784-63502-664-2.
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  18. ^ a b c 羽根田弥太、1972.発光生物の話―よみもの動物記.225 pp. 北隆館、東京.
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関連項目

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  • en:Omphalotus olearius - ツキヨタケと類縁種であり、ツキヨタケと共通する有毒成分 (Illudin) を含む。
  • ヤコウタケ - 発光性を有するキノコの一つ。

外部リンク

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