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「ラベンダー」の版間の差分

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39種。代表種は
39種。代表種は
* {{snamei|L. angustifolia}}
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'''ラベンダー'''({{en|lavender}})は、[[シソ科]]の背丈の低い[[常緑樹]]のラヴァンデュラ属({{snamei|lavandula}})の通称である。または、''[[:en:Lavandula angustifolia|Lavandula angustifolia]]'' (通称:ラベンダー、コモン・ラベンダー、イングリッシュ・ラベンダー、真正ラベンダー、narrow-leaved lavender。以下「コモン・ラベンダー」)を指す。ラヴァンデュラ属は39種が知られ、コモン・ラベンダーの近縁種や交雑種もラベンダーと呼ばれることがあるため、ラベンダーの名で販売される苗や精油がコモン・ラベンダーのものとは限らない
'''ラベンダー'''(英:{{en|lavender}}、仏:{{fr|lavande}})は、[[シソ科]]'''ラヴァンラ属'''ラベンダー属、{{snamei|lavandula}})の半[[木本]]性植物の通称である<ref name="宮崎">宮崎泰 著 『ハーブ―育てる・食べる』 偕成社 1995年</ref>。または、半耐寒性の小[[低木]]''[[:en:Lavandula angustifolia|Lavandula angustifolia]]'' (通称:ラベンダー、コモン・ラベンダー、イングリッシュ・ラベンダーなど)を指す。


== 概説 ==
== 概説 ==
[[画像:Lavandula_angustifolia_-_Köhler–s_Medizinal-Pflanzen-087.jpg|200px|thumb|right|''Lavandula angustifolia'']]
ラヴァンデュラ属は、[[春]]に[[紫]]や[[白]]、[[ピンク]]色の花を咲かせる様々な品種がある。中でも紫色の花が最もポピュラーであり、コモン・ラベンダーが有名。ちなみに、[[#色|ラベンダー色]]とは薄紫色を意味する。
'''ラヴァンドラ属'''(ラベンダー属、{{snamei|lavandula}})は、半[[木本]]性植物で、[[低木]]のような[[草本植物|草本]]、小低木、亜小低木である<ref name="upsonandrews">{{cite book|url=http://books.google.ca/books?id=xvgq-6VAX8kC |author=Upson T, Andrews S |title=The Genus Lavandula |publisher=Royal Botanic Gardens, Kew 2004 |accessdate=2012-03-30|isbn=9780881926422 |year=2004 }}</ref>。[[多年生]]のものとそうでないものがある。ヨーロッパ南部を中心に39種が知られ、高さは2メートル以下。原産地は地中海沿岸、インド、[[カナリア諸島]]、北アフリカ、中東などである<ref name="ローズ">ビル・ローズ 著 『図説 世界史を変えた50の植物』 柴田譲治 翻訳、 原書房、2012年</ref>。春に紫や白、ピンク色の花を咲かせる様々な種がある。中でも紫色の花が最もポピュラーである。多くの種は、花、葉、茎は細かい毛でおおわれており、その間に[[精油]]を出す腺がある<ref>レスリー・ブレムネス 著 『ハーブ事典 ハーブを知りつくすA to Z』 樋口あやこ 訳、文化出版社、1999年</ref>。揮発性の油を多く含むため、草食動物はほとんど食べないが、芳香で蜂などを引き寄せる。[[ユーカリ]]と同じように夏の熱さなどで自然発火し、野火をよぶ。種子は野火の後に発芽する性質がある<ref name="ローズ"></ref>。伝統的にハーブとして古代エジプト、ギリシャ、ローマ、アラビア、ヨーロッパなどで薬や調理に利用され、芳香植物としてその香りが活用されてきた。ラベンダー特有の香りがない種も一部存在する。園芸用としても愛好されている。


主にラベンダーと呼ばれる''L. angustifolia''(コモン・ラベンダー)だけでなく、その近縁種や交雑種もラベンダーと呼ばれることがあるため、ラベンダーの名で販売される苗や{{仮リンク|ラベンダー油|en|Lavender oil}}が''L. angustifolia'' のものとは限らない<ref name="NHK">日本放送出版協会 編集 『ハーブ&野菜 NHK趣味の園芸 新園芸相談』 日本放送出版協会、1992年</ref>。
花、葉、茎は細かい毛でおおわれており、その間に精油を出す腺がある<ref>レスリー・ブレムネス 著 『ハーブ事典 ハーブを知りつくすA to Z』 樋口あやこ 訳、文化出版社、1999年</ref>。


日本におけるラベンダーの初期の記述としては、[[江戸]][[文政]]期の西洋薬物書に「ラーヘンデル」「ラーヘンデル油」の名で詳細な説明がある<ref name="吉武">吉武利文 著 『香料植物 ものと人間の文化史 159』 法政大学出版局、2012年</ref>。[[幕末]]期には一部ではあるが、精油が輸入され、栽培も行われていたと考えられている。昭和期には香料原料として、北海道[[富良野]]地方などで栽培されて精油が生産され、1970年にピークを迎えたが、[[合成香料]]の台頭で衰退した<ref name="吉武"></ref>。現在では富良野などでラベンダー畑が観光資源となっている。
=== 利用 ===
[[画像:Lavandula_angustifolia_-_Köhler–s_Medizinal-Pflanzen-087.jpg|250px|thumb|right|コモン・ラベンダー]]
ラヴァンデュラ属は、[[ポプリ]]の材料、[[ハーブ]]ティー、観賞用(鉢植え)等々に利用される。


現代でも''L. angustifolia''(コモン・ラベンダー)や''L. latifolia''(スパイク・ラベンダー)、''L. x intermedia''(ラバンジン)などが[[精油]]を採るために栽培され、精油は[[香料]]として用いられたり、[[アロマセラピー]](芳香療法)として[[リラクセーション]]等に利用されている<ref name="宮崎"></ref>。
コモン・ラベンダーやコモン・ラベンダーと''[[:en:Lavandula latifolia|Lavandula latifolia]]'' (L.spica, 通称:スパイク・ラベンダー)の交配種ラバンジンの[[精油]]は、香料や[[アロマセラピー]]に用いられる。精油は、先端部分および花から、[[水蒸気蒸留]]で抽出される。ヨーロッパ薬局方には、コモン・ラベンダーの精油が収録されている。溶剤抽出法によるラベンダー・アブソリュートもある<ref name="バルチン">マリア・リス・バルチン 著 『アロマセラピーサイエンス』 田邉和子 松村康生 監訳、フレグランスジャーナル社、2011年</ref>。同じコモン・ラベンダーを用いても、抽出に用いる部位によって、精油の成分は大きく異なる。ラバンジンはコモン・ラベンダーより多くの精油を採ることができ、価格が安いため広く流通しているが、ラバンジンをコモン・ラベンダーとして販売する業者も存在する。ラバンジン油は、多少[[カンファー]]臭があり、コモン・{{仮リンク|ラベンダー油|en|Lavender oil}}とは成分組成も異なる<ref name="バルチン"></ref>。


ちなみに、{{仮リンク|ラベンダー色|en|Lavender (color)}}は薄紫色を意味する。
フランスには、乾燥させた花を小さな布袋に入れた一種の「香り袋」(サシェ)があり、それを洋服箪笥に入れたり、ワードローブの中に下げておいたりして、香りを衣類に移したり防虫剤として利用する。あるいはその香り袋をベッドの枕の近くなどに置いて寝室に漂う香りを楽しむ。枕のつめものの一部としてラベンダーを混ぜておいて、枕に頭を置くだけで中身が自然と揉まれて香りが漂うこと楽しむフランス人もいる。


== 語源 ==
葉のみならず花も食用とされ、[[チャールズ1世 (イングランド王)|チャールズ1世]]の妃[[ヘンリエッタ・マリア・オブ・フランス|ヘンリエッタ・マリア]]は、ラベンダーの花を刻んで粉砂糖と混ぜ、ローズウォーターでペースト状に練った砂糖菓子が大好物で、これをビスケットなどに塗って食べていたという{{要出典|date=2010年2月}}。
英語の''lavender'' は古フランス語の''lavandre'' に由来する。''lavandre'' の語源として様々な説があるが、「洗う」という意味の[[ラテン語]] ''lavo'' や''lavare'' から来るといわれる<ref>Concise Oxford Dictionary</ref>。古代[[ローマ人]]達は洗濯に用いたり、浴用香料として疲労や硬直した関節を和らげるために利用したという<ref>五明紀春 監修 『食材健康大事典―502品目1590種まいにちを楽しむ』 時事通信出版局、2005年</ref><ref name="ハットフィールド">A.W.ハットフィールド 著 『ハーブのたのしみ』 山中雅也・山形悦子 訳、八坂書房、1993年</ref>。学名の''Lavandula'' は他のヨーロッパ言語でラベンダーを指す言葉から[[リンネ]]が命名したと言われる。


しかし、この通説を裏付ける歴史的証拠はなく、一般的に古代ギリシャ人・ローマ人は、ラベンダーを入浴に利用しなかったなどの問題点がある。そのため、作り話である可能性がある。UpsonとAndrewsはローマ帝国での入浴に関する記述を確認したが、ラベンダーの使用はなかったという。UpsonとAndrewsは、ラテン語の''livere'' と中世ラテン語''lavindula'' から推測し、「青みを帯びた、青みがかった」を意味するラテン語''livere'' に由来するという説を提示している。
属名の ''Lavandula'' は「洗う」という意味の[[ラテン語]]に由来する。これは[[ローマ人]]達が入浴や洗濯の際にラベンダーを湯や水に入れることを好んだためとされる{{要出典|date=2010年2月}}。


=== 効能 ===
== 分類・種 ==
{{main|:en:Lavandula#Taxonomic table}}
ラベンダー(ラヴァンデュラ属)は様々な効能を期待されつつ[[ハーブ]]の一種として用いられている。種によって成分組成は異なり、香りや薬効も異なる。
[[File:Lavandula_latifolia_DehesaBoyalPuertollano.jpg|200px|thumb|right|''Lavandula latifolia'']]
[[File:Lavendula_lanata_1.JPG|200px|thumb|right|''Lavandula lanata'']]
[[File:Lavandula_dentata1.jpg|200px|thumb|right|''Lavandula dentata'']]
[[Image:Lavandula stoechas01.jpg|200px|thumb|right|''Lavandula stoechas'']]
[[File:Lavandula multifida.jpg|200px|thumb|right|''Lavandula multifida'']]
ヨーロッパ各地で盛んに[[品種改良]]が行われたことや、[[交雑]]種を生じやすい性質のために、呼び名や学名はかなり混乱しており、分類に関しては現在も研究が進められている。また植物学上の分類では同一種であっても、産地により抽出される精油の成分組成や香り、生物活性(効能)が異なる事から、生産地名を加えて区分しているものもある。歴史的にひとつの通称が、複数の種に用いられる例も見られる。同じ種のラベンダーでも、多数の通称を持つものも少なくない。


古代ローマでは、''[[:en:Lavandula stoechas|L. stoechas]]''(イタリアン・ラベンダー)、''L. pedunculata''(スパニッシュ・ラベンダー)、''[[:en:Lavandula dentata|L. dentata]]''(キレハ・ラベンダー) はローマ時代にすでに知られていた<ref name=Lis>{{cite book|url=http://books.google.ca/books?id=8gmsF-FQWuUC|editor=Lis-Balchin M|title=Lavender: The genus ''Lavandula''|publisher=Taylor and Francis|year=2002|isbn=9780203216521}}</ref>。地中海地方に自生するいくつかの種が活用されたが、それらはほとんど区別されることはなかった。''L. angustifolia''(コモン・ラベンダー)を初めて他と区別したのは、中世の修道女[[ヒルデガルト・フォン・ビンゲン]](ユリウス暦1098年 - 1179年)である。中世ヨーロッパでは、ヨーロッパのラベンダーはストエカス(''L. stoechas''、''L. pedunculata''、''L. dentata'') とラヴェンドラ (''L. spica''、''L. latifolia'')の2つのグループにわけられていた。[[リンネ]]は『植物の種』''Species Plantarum'' (1753年)で、当時知られていたラベンダーを一つの属にまとめた。5種のラベンダーが挙げられ、''L. multifida''、''L. dentata'' (スペイン) 、''L. stoechas''、''L. spica''。''L. pedunculata''は''L. stoechas'' に含まれていた。''L. angustifolia''と''L. latifolia'' は区別されず、''L. spica'' とされた。
コモン・ラベンダーには[[鎮痛]]や精神安定・[[防虫]]・[[殺菌]]などに効果があるとされる<ref>Salvatore Battaglia著 The Complete Guide to Aromatherapy 2nd ed. 218ページ 出版:The International Centre of Holistic Aromatherapy</ref>。


最初の近代的な分類で重要なものは、1937年にキューのDorothy Chaytorが行ったもので、28種をストエカス節、スパイカ節、スブヌダ節、プテロストエカス節、カエトスタシス節、デンタータ節の6つの節<ref>「節」は「属」の下位分類。</ref>に分けたが、容易に割り当てることのできない種が残された<ref>Chaytor D A. A taxonomic study of the genus Lavandula. 1937</ref>。栽培種や園芸種はスパイカ、ストエカス、プテロストエカスの3節から出ており<ref name="小松"></ref>、カエトスタシス節はインドやイラン、スブヌダ節はアラビアやソマリアに分布する<ref>[https://www.e-tisanes.com/info/q_and_a/gardening_35.html ガーデニングの基礎知識 ラベンダー] e-ティザーヌ</ref>。現在日本で見られるものは、園芸書ではイングリッシュ系(スパイカ節)、フレンチ系(ストエカス節、デンタータ節)、ラバンジン系(''L.a.ssp angustifolia''と''L. latifolia''の交雑種)、その他に大別される<ref name="萩尾">萩尾エリ子 『ハーブ―シンプル&ナチュラル』 池田書店、1998年</ref>。フレンチ系はイングリッシュ系より開花期が早い<ref name="萩尾"></ref>。スパイカ節(イングリッシュ系)の種は分類・学名に変遷があるため、現在でも''L. angustifoli''に''L. officinalis''や''L. vera''などの古い学名の使用するなど、学名の誤用が見られる<ref name="小松"></ref>。
揮発性の油であるコモン・ラベンダー油には、コモン・ラベンダーの水溶性成分などは含まれないため、ハーブとしての効能をそのまま精油に用いることはできない。コモン・ラベンダーの精油はアロマテラピーでもっとも使われるもののひとつで、様々な効能があるといわれている。一般に言われるコモン・ラベンダー精油の効能には、近世のハーブ療法家・{{仮リンク|ニコラス・カルペパー|en|Nicholas Culpeper}}(1616 – 1654)が[[チンキ]]やティーの形で治療に用いたスパイク・ラベンダーの効能が誤って引用されたものが少なくない。(チンキには水溶性・脂溶性成分が、ティーには水溶性成分が含まれる。)例えばスパイク・ラベンダーの水溶性成分には鎮痙作用があるが、これがコモン・ラベンダー精油の効能として転用されており、情報が混乱していることがわかる<ref name="バルチン"></ref>。


現代では、クライストチャーチ植物園などでBotanical Officerをしていたヴァージニア・マクノートン(Virginia McNaughton)は、スパイカ節、ストエカス節、プテロストエカス節、カエトスタシス節、スブヌダ節の5つの節に分かれるとしている<ref name="小松">小松美枝子 小松紀三男 著 『ラベンダーブック』 グラフ社、2008年</ref>。
コモン・ラベンダーや交雑種などラヴァンデュラ属の精油は、皮膚への感作性(生体を抗原に対して感じやすい状態にすること)を除けば、比較的安全性の高い精油である。ただし、精油や精油を用いた化粧品による[[接触性皮膚炎]]や[[アレルギー]]反応の報告があり、日本人のラベンダー精油の陽性率([[パッチテスト]]による)は、1997年に劇的に増加している。これは、近年のアロマブームの影響だと考えられている。ラバンジン精油で偽和(合成成分の添加など)が横行しており、これが広く利用された影響で、ラヴァンデュラ属の精油に対する感作が上昇しているようである<ref name="バルチン"></ref>。


最新の分類はTim UpsonとSusyn Andrewsによる2004年のもので、ラヴァンドラ亜種(ラヴァンドラ節、デンタータ節 、ストエカス節)、ファブリカ亜種(プテロストエカス節、スブヌダ節、カエトスタシス節、''Hasikenses'' 節)、サバウディア亜種(サバウディア節)の3亜種があるとされた<ref name="upsonandrews">{{cite book|url=http://books.google.ca/books?id=xvgq-6VAX8kC |author=Upson T, Andrews S |title=The Genus Lavandula |publisher=Royal Botanic Gardens, Kew 2004 |accessdate=2012-03-30|isbn=9780881926422 |year=2004 }}</ref>。以下、Tim UpsonとSusyn Andrewsによるによる分類。主な種を挙げる。
== 産地 ==

=== 原産地 ===
:;Ⅰ ラヴァンドラ(''Lavandula'')亜種
原産は[[地中海]]沿岸とされる。
:i. ラヴァンドラ(''Lavandula'')節 (3種):スパイカ節<ref name="小松"></ref>、園芸書などでイングリッシュ系<ref name="系">いわれる便宜的な分類。</ref>として知られる。
:*''[[w:Lavandula angustifolia|Lavandula angustifolia]]'' [[フィリップ・ミラー (園芸家)|Mill.]]:[[地中海]]沿岸原産<ref name="萩尾"></ref>の''L.a.ssp angustifolia''とピレネー山脈・北部スぺイン原産の''L.a.ssp pyrenaica''の2亜種を持つが、''L.a.ssp pyrenaica''はほとんど見られず、''L. angustifolia''といえば''L.a.ssp angustifolia''を指す<ref name="小松"></ref>。通称コモン・ラベンダー、イングリッシュ・ラベンダー、オールドイングリッシュ・ラベンダー、トゥルーラベンダー、真正ラベンダー。元々はフランスで栽培され始めた<ref name="小松"></ref>。葉は線形で対生し、若い茎では輪生する。葉の色は最初白っぽく、育つにつれ緑色になる<ref name="宮崎"></ref>。6~7月に、芳香のある青紫色の花を穂状にたくさんつける。日本の夏の高温多湿に弱い<ref name="NHK"></ref>。最高級の精油がとれ、高地で育てると高い品質になるが、花穂が短く採取量が少ないため、商業用に育てられるものは、''L. latifolia''(スパイク・ラベンダー)が多少とも交雑した雑種であると考えられている<ref>『世界大百科事典』 平凡社、1988年</ref><ref name="小松"></ref>。
:*''[[w:Lavandula latifolia|Lavandula latifolia]]'' Medik:通称スパイク・ラベンダー、ヒロハ(広葉)ラベンダー。ポルトガル原産。広がりのあるへら型の葉を持ち、グレイがかった紫の花穂をつける<ref name="NHK"></ref>。葉はラベンダーの中でも特に[[カンファー]]臭がする。''L. angustifolia''の3倍の精油を収穫できるが、香料としての品質は劣る。
:*''[[w:Lavandula lanata|Lavandula lanata]]'' Boiss:通称ウーリー・ラベンダー。スペイン南部の山地が原産<ref name="小松"></ref>。全草[[フランネル]]のような白綿毛で覆われており、花穂は好ましいカンファー臭がする<ref name="小松"></ref>。
:交雑種
:*''Lavandula x intermedia'':''L.a.ssp angustifolia''と''L. latifolia''の交雑種。通称ラバンジン、ラヴァンディン。耐寒性が強く高温多湿にもやや耐え<ref name="小松"></ref>、日本でも育てやすく、関東地方以西の気候に合う<ref name="NHK"></ref>。丈夫で花がたくさん咲き、精油も多く取れることから、商業用に広く栽培されている<ref name="小松"></ref>。香料としての精油の質は、''L. latifolia''よりさらに劣るが、低地でも栽培できる。不稔性で種ができにくく、挿し木で増やす<ref name="小松"></ref>。
:ii. デンタータ (''Dentatae'')節 (1種):フレンチ系<ref name="系">園芸書などでいわれる便宜的な分類。</ref>として知られる。
:*''[[w:Lavandula dentata|Lavandula dentata]] L.'':通称キレハ(切葉)ラベンダー、デンタータ・ラベンダー、フリンジド・ラベンダー、フレンチ・ラベンダー。世界中に広く分布するが、海外ではおもにフレンチ・ラベンダーと呼ばれる<ref name="小松"></ref>。葉が歯状になっており<ref name="小松"></ref>、苞葉のある薄紫の花穂<ref name="NHK"></ref>を1年の大半つける<ref name="小松"></ref>。変異種ができやすい<ref name="小松"></ref>。
:iii. ストエカス(Stoechas Ging.)節 (3種):フレンチ系<ref name="系">園芸書などでいわれる便宜的な分類。</ref>として知られる。
:*''[[w:Lavandula stoechas|Lavandula stoechas]]'' L.:通称イタリアン・ラベンダー、スパニッシュ・ラベンダー、フレンチ・ラベンダー、トップド・ラベンダー。歴史的にフレンチ・ラベンダーと呼ばれ<ref name="小松"></ref>、日本でもそう呼ばれることが多い。原産は地中海沿岸・北アフリカ<ref name="小松"></ref>。1~3nmの小さな花を無数につけ<ref name="小松"></ref>、花穂の先端に紫紅色の苞葉がある<ref name="NHK"></ref>。全草にカンファー様の清涼感ある香りがあり、短毛で覆われている<ref name="小松"></ref>。霜や寒さに弱い種が多いが、暑さには比較的強い。昔から薬用に使われてきた<ref name="NHK"></ref>。
:*''[[w:Lavandula pedunculata|Lavandula pedunculata]]'' Mill.(Cav.):通称スパニッシュ・ラベンダー、フレンチ・ラベンダー。主にスペインで見られるが、原産はポルトガル、北アメリカ、南バルカン半島、小アジア。花穂は丸くふくらみがあり華やかだが、あまり丈夫ではない<ref name="小松"></ref>。
:;Ⅱファブリカ(''Fabricia'')亜種
:iv. プテロストエカス(Pterostoechas Ging.)節 (16種)
:*''[[w:Lavandula multifida|Lavandula multifida]]'':通称ファーンリーフ・ラベンダー、レース・ラベンダー、ムルチフィダ・ラベンダー、エジプシャン・ラベンダー。愛らしい青紫の花穂をつけるが、ラベンダーの芳香はない<ref name="小松"></ref>。半耐寒性の多年草として園芸用に栽培される。
:*Lavandula canariensis Mill.:通称カナリー・ラベンダー。条件が良ければ1.5mにもなる<ref name="小松"></ref>。カナリア諸島原産<ref name="小松"></ref>。耐寒性がない<ref name="小松"></ref>。
:*''[[w:Lavandula pinnata|Lavandula pinnata]]'' L.:通称ピナータ・ラベンダー、ピンナタラベンダー、レースラベンダー。[[シダ]]のような特徴的な葉で、開花期には幻想的な美しさを持ち、園芸種として人気が高い<ref name="小松"></ref>。
:v. スブヌダ(''Subnudae'')節 (10種)
:*''[[:en:Lavandula nimmoi|Lavandula nimmoi]]'' Benth.
:vi. カエトスタシス(''Chaetostachys'')節 (2種)
:*''Lavandula bipinnata'' (Roth) Kuntze
:*''Lavandula gibsonii'' J. Graham
:vii. ''Hasikenses'' 節 (2種)
:*''Lavandula hasikensis'' A.G. Mill.
:*''Lavandula sublepidota'' Rech. f.
:;III. サバウディア(''Sabaudia'')亜種
:viii.サバウディア(''Sabaudia'')節 (2種)
:*''Lavandula atriplicifolia'' Benth.
:*''Lavandula erythraeae'' (Chiov.) Cufod.


=== 栽培地 ===
=== 栽培地 ===
{{出典の明記|date=2015年1月|section=1}}
高温多湿は苦手であり、[[西岸海洋性気候]]や[[亜寒帯湿潤気候]]の地域で多く栽培されている。
[[File:Vaucluse_lavanda.jpg|200px|thumb|left|プロヴァンス、ソー村]]
高温多湿は苦手な種が多く、[[西岸海洋性気候]]や[[亜寒帯湿潤気候]]の地域で多く栽培されている。


世界的に有名な生産地はフランスの[[プロヴァンス]]で、伝統的に多くの地域で商品作物として栽培され、ラベンダー畑が多数ある<ref name="ローズ"></ref>。特に{{仮リンク|ソー (ヴォクリューズ県)|fr|Sault (Vaucluse)}}(Sault<ref>フランス語ではauは「オ」と発音する。この地名では「l」「t」は読まない。</ref>)という村が有名で、ラベンダー農家が多数あり広大なラベンダー畑が広がる。ソー村の様々なラベンダー製品はフランス国内、ヨーロッパ、世界各地に届けられている。ソーでは毎年夏に1日ラベンダー祭が催され、ラベンダーを用いた様々な製品が通りに並び、普段は3000人位の村に世界各地から2万人ほどの観光客が訪れる。
[[File:Vaucluse_lavanda.jpg|200px|thumb|right|フランス、プロヴァンス、ソー村のラベンダー畑]]
世界的に有名なのはフランス[[プロヴァンス]]で、ラベンダー畑が多数あり、特に{{仮リンク|ソー (ヴォクリューズ県)|fr|Sault (Vaucluse)}}(Sault<ref>フランス語ではauは「オ」と発音する。この地名では「l」「t」は読まない。</ref>)という村が有名で、ラヴェンダー農家が多数いて広大なラベンダー畑がいくつも広がる。ソー村の様々なラヴェンダー製品がフランス国内、ヨーロッパ、世界各地に届けられている。ソーでは毎年夏に1日ラベンダー祭が催され、ラベンダーを用いた様々な製品が通りに並び、普段は3000人ほどしか住民がいない村に2万人ほどの観光客が世界各地から訪れる。


近年プロヴァンスでは、ラベンダー畑の[[バクテリア]]被害が深刻な問題になっている。異常気象の影響で、有害なバクテリアを媒介する[[ヨコバイ]]が大量発生し、2007年から2010年の間にラベンダー畑の50%が被害を受け、生産が大幅に落ち込んだ<ref>[http://lemurdufrancais.blog.fc2.com/blog-entry-36.html?sp 南仏ラベンダーの衰退 : La lavande du Midi dépérit] フランス語会話の壁 Le mur de la conversation en français</ref><ref>[http://ameblo.jp/iledesfleursparis/entry-11915074473.html ラベンダー農家の苦悩 その1] Île des fleurs Paris Tomomi</ref><ref>[http://ameblo.jp/lifeinfrance/entry-11598013177.html フランス産ラベンダーが窮地に] 南西フランス田舎暮らし</ref>。
[[画像:Nakafurano_02.jpg|200px|thumb|right|北海道、中富良野町のラベンダー畑]]
日本では[[北海道]]の[[富良野]]地方のラベンダー畑が全国的に有名であり、[[上富良野町]]、[[中富良野町]]、[[ニセコ町]]のシンボルとしても指定される。栽培発祥地は、[[札幌市]][[南区 (札幌市)|南区]][[南沢]]であり、[[1942年]]に栽培が開始された。札幌市では、[[幌見峠]]頂上([[宮の森]]地区)にあるラベンダー畑が有名であるが、規模は小さい。他にも、南沢にある[[東海大学]]札幌キャンパスでは、[[2002年]]よりラベンダーキャンパス計画として栽培開始される。


オーストラリアの[[タスマニア]]も生産地として知られる<ref name="ローズ"></ref>。
== 主な種 ==
ヨーロッパ各地で盛んに品種改良が行われたことや、交雑種を生じやすい性質のために、品種名や学名はかなり混乱している。また植物学上の分類では同一品種であっても、産地により抽出されるオイルの成分組成や香り、生物活性(効能)が異なる事から、生産地名を加えて区分しているものもある。
*コモン・ラベンダー(英:Common lavender、English Lavender、学名:''[[w:Lavandula angustifolia|Lavandula angustifolia]]'')
*ラバンジン(英:[[w:Lavandula_angustifolia#Hybrids|Lavandin]]、Dutch lavender、学名:''Lavandula x intermedia'')
*フレンチ・ラベンダー(英:French lavender、Spanish lavender、学名:''[[w:Lavandula stoechas|Lavandula stoechas]]'')
*デンタータ・ラベンダー(英:Topped lavender、学名:''[[w:Lavandula dentata|Lavandula dentata]]'')
*スパイク・ラベンダー(英:[[w:Spike lavender|Spike Lavender]]、学名:''[[w:Lavandula latifolia|Lavandula latifolia]]'')
*ムルチフィダ・ラベンダー(英:[[w:Fernleaf lavender|Fernleaf lavender]]、Egyptian lavender、学名:''[[w:Lavandula multifida|Lavandula multifida]]'')


日本では[[北海道]]の[[富良野]]地方のラベンダー畑が世界的にも知られ<ref name="ローズ"></ref>、[[上富良野町]]、[[中富良野町]]、[[ニセコ町]]のシンボルとしても指定される。栽培発祥地は、[[札幌市]][[南区 (札幌市)|南区]][[南沢]]であり、[[1942年]]に栽培が開始された。札幌市では、[[幌見峠]]頂上([[宮の森]]地区)にあるラベンダー畑が有名であるが、規模は小さい。他にも、南沢にある[[東海大学]]札幌キャンパスでは、[[2002年]]よりラベンダーキャンパス化計画として栽培されている。
<gallery>

Image:Lavandula stoechas01.jpg|フレンチ・ラベンダー
== 利用 ==
Image:Lavandula multifida.jpg|ムルチフィダ・ラベンダー
[[File:Lavender_cupcakes.jpg|200px|thumb|right|ラベンダーを使ったカップケーキ]]
</gallery>
ラヴァンドラ属は、[[ポプリ]]の材料、[[ハーブ]]ティー、料理の風味付け、化粧水などの美容、観賞用(鉢植え)等々に利用されてきた。また古くから、多くの薬効を持つハーブとして利用された。

ギリシア人は、シリアの都市ナールダ(おそらく現在のイラクの[[ドホーク]])から採って、ラベンダーを「ナルド」と呼んだ<ref>J.アディソン 著 『花を愉しむ事典』 樋口康夫・生田省悟 訳、八坂書房、2002年</ref><ref>引用元 Dr. William Thomas Fernie 著 ''Herbal Simples'' (Bristol Pub., 1895. ASIN: B0014W4WNE). [http://books.google.com/books?id=KYUfAAAAYAAJ&ots=FWTB-6ofVF&dq=William%20Thomas%20Fernie%20%22Herbal%20Simples%22&pg=PR3#v=onepage&q&f=false この本の電子書籍] Google bookで読むことができる。
'By the Greeks the name Nardus is given to Lavender, from Naarda, a city of Syria near the Euphrates, and many persons call the plant "Nard." St. Mark mentions this as Spikenard, a thing of great value. In Pliny's time, blossoms of the Nardus sold for a hundred Roman denarii (or L.3 2s. 6d.) the pound. This Lavender or Nardus was called Asarum by the Romans, because it was not used in garlands or chaplets. It was formerly believed that the asp, a dangerous kind of viper, made Lavender its habitual place of abode, so that the plant had to be approached with great caution.'</ref>。''L. latifolia''(スパイク・ラベンダー)は、最も高価な香料のひとつである{{仮リンク|甘松香|en|Nardostachys jatamansi}}(スパイクナルド)と混同され、重用された。[[新約聖書]]で[[マリア (マルタの妹)|ベタニアのマリア]]がイエスに注いだ「ナルドの[[香油]]」は、甘松香ではなくラベンダーの香油であったとも考えられている<ref name="小松"></ref>。ラベンダーの花は非常に高価で、古代ローマの[[プリニウス]]の時代には1ポンド当たり100デナリという高額であり、中世になっても貴重なものであった<ref name="ハットフィールド"></ref>。
[[File:Navettes_de_lanvande.JPG|200px|thumb|left|乾燥させたラベンダーを束ねたもの。防虫に用いる。]]
フランスなどでは、乾燥させた花を小さな布袋に入れた一種のサシェ(香り袋、匂い袋)があり、それを洋服箪笥に入れたり、ワードローブの中に下げておいたりして、香りを衣類に移したり防虫剤として利用する。あるいはサシェをベッドの枕の近くなどに置いて寝室に漂わせたり、枕のつめものの一部としてラベンダーを混ぜておいて、枕に頭を置くだけで中身が自然と揉まれて香りが漂うこと楽しむ。

花や葉は食用され、食欲増進のハーブとして料理や菓子の風味付けに用いられた。調味料としてサラダやドレッシングに利用されている<ref>{{cite book|title=Culinary Herbs: Their Cultivation Harvesting Curing and Uses|year=1912|publisher=Orange Judd Company|url=http://www.gutenberg.org/files/21414/21414-h/21414-h.htm#Page_97|author=M. G. Kains|editor=American Agriculturist|format=English}}</ref>。南フランスでラベンダーは伝統的に様々な用途に利用され、[[エルブ・ド・プロヴァンス]]というラベンダーを含むハーブミックスが広く知られるが、これはスパイス業者が作ったもので、伝統的な南仏[[プロヴァンス]]料理でラベンダーは用いられない<ref>J.-B. Reboul; ''Cuisiniere Provencale'' (1910)</ref><ref>{{Cite journal|doi=10.1177/0392192105055941|title=From its Birthplace in Egypt to Marseilles, an Ancient Trade: 'Drugs and Spices'|year=2005|last1=Laget|first1=F.|journal=Diogenes|volume=52|issue=3|pages=131 }}</ref>。近年、エルブ・ド・プロヴァンスは料理でよく使用されるようになってきている。

[[エリザベス1世]]はラベンダーの[[ジャム]]を好み、砂糖漬けを肉料理やフルーツ・サラダの薬味として、菓子や頭痛薬として食した<ref name="ハットフィールド"></ref>。[[チャールズ1世 (イングランド王)|チャールズ1世]]の妃[[ヘンリエッタ・マリア・オブ・フランス|ヘンリエッタ・マリア]]は、ラベンダーの花を刻んで粉砂糖と混ぜ、ローズウォーターでペースト状に練った砂糖菓子が大好物で、これをビスケットなどに塗って食べていたという{{要出典|date=2010年2月}}。

また、[[香水]]に使われる[[香料]]として重要な役割を果たした。ラベンダーの[[芳香]]成分をアルコールに溶かしたラベンダー水は、ローズマリー水([[ハンガリーウォーター]])と共に、最古の[[アルコール]]ベースの[[香水]]のひとつとされる<ref>諸江辰男 著 『香りの来た道』 光風社出版、1986年</ref>。1709年にイタリアの香料商[[ヨハン・マリア・ファリナ]]がドイツの[[ケルン]]で発売され人気となった香りのよい薬用酒「アクア・アドミラビリス」(奇跡の水)、後の「[[オーデコロン]]」(Eau de Cologne、ケルンの水)には、微量のラベンダーがブレンドされていた<ref name="ローズ"></ref><ref name="吉武"></ref>。

現代では、''L. angustifolia''(コモン・ラベンダー)や''L. x intermedia''(ラバンジン)の[[精油]]は、香料や[[アロマセラピー]]に用いられる。精油は、先端部分および花から、[[水蒸気蒸留]]で抽出される。ヨーロッパ薬局方には、''L. angustifolia''の精油が収録されている。溶剤抽出法によるラベンダー・アブソリュートもある<ref name="バルチン">マリア・リス・バルチン 著 『アロマセラピーサイエンス』 田邉和子 松村康生 監訳、フレグランスジャーナル社、2011年</ref>。同じ''L. angustifolia''を用いても、抽出に用いる部位によって、精油の成分は大きく異なる。''L. x intermedia''は''L. angustifolia''より多くの精油を採ることができ、価格が安いため広く流通しているが、''L. x intermedia''の精油を''L. angustifolia''の精油として販売する業者も存在する。''L. x intermedia''(ラバンジン)の精油は、多少[[カンファー]]臭があり、''L. angustifolia''(コモン・ラベンダー)の精油とは成分組成も異なる<ref name="バルチン"></ref>。

=== 効能・臨床研究 ===
[[File:LavenderEssentialOil.png|thumb|right|200px|ラベンダー油]]
ラヴァンドラ属は、[[ハーブ]]の一種として用いられ、様々な効能が期待されている。古くから多くの病気に対する万能薬として利用されており<ref name="ハットフィールド"></ref>、不安、不穏、不眠、うつ症状、精神安定、[[鎮痛]]、胃のむかつき、脱毛、[[防虫]]・[[殺菌]]などに効果があるとされ、民間療法または伝統療法として使われている<ref>Salvatore Battaglia著 The Complete Guide to Aromatherapy 2nd ed. 218ページ 出版:The International Centre of Holistic Aromatherapy</ref><ref name="厚生">[http://www.ejim.ncgg.go.jp/pro/overseas/c04/33.html ラベンダー 海外のサイト] 「統合医療」情報発信サイト [[厚生労働省]] 「統合医療」に係る情報発信等推進事業</ref>。アメリカのNational Center for Complementary and Integrative Health(NCCIH、旧 [[国立補完代替医療センター]])は、2012年時点では、伝承される多くの効能に対し、有効性が科学的に証明されたものはごくわずかしかないと述べている<ref name="厚生"></ref>。

精油も薬用され、[[第一次世界大戦]]時に病院で使用されていた<ref name=Grieve>Mrs. M. Grieve, ''A Modern Herbal'', Vol. II (New York: Dover Publications, Inc., 1971; ISBN 0-486-22799-5)</ref>。種によって成分組成は異なり、香りだけでなく薬効も異なる。

揮発性の油である精油には、''L. angustifolia''(コモン・ラベンダー)の水溶性成分などは含まれないため、ハーブとしての効能をそのまま精油に用いることはできない<ref>チンキには水溶性・脂溶性成分が、ティーには水溶性成分が含まれる。精油に水溶性成分は含まれない。</ref>。''L. angustifolia''の精油はアロマテラピーでもっとも使われるもののひとつで、様々な効能があるといわれている。生化学者のマリア・リス・バルチンは、一般に言われる''L. angustifolia''の精油の効能には、近世のハーブ療法家・{{仮リンク|ニコラス・カルペパー|en|Nicholas Culpeper}}(1616 - 1654)が記した''L. latifolia''(スパイク・ラベンダー)の効能で、[[チンキ]]やティーの形で治療に用いたものが誤って引用された例が少なくないと指摘している<ref name="バルチン"></ref>。例えば''L. latifolia''の水溶性成分には鎮痙作用<ref>内臓[[平滑筋]]の収縮・痙攣をゆるめて、内臓痛を和らげる作用。</ref>があるが、これが''L. angustifolia''の精油の効能として転用されており、情報が混乱していることがわかる<ref name="バルチン"></ref>。またカルペパーは、ラベンダーには[[癲癇]](てんかん)、痙攣(けいれん)など様々な症状に効果があると述べているが、スパイク油(ラベンダーの精油)は「その性質は極めて激しく刺すような刺激があるため、使用には注意を要する。」としている<ref name="ローズ"></ref>。

;効果があると考えられるもの
一部の予備的な研究結果では、ラベンダー油は、[[タイム]]油、[[ローズマリー]]油、[[シダーウッド]]油と組み合わせて使用すると、[[円形脱毛症]]に効果がある可能性が示されている<ref name="NIH">[http://www.nlm.nih.gov/medlineplus/druginfo/natural/838.html Lavender] the U.S. National Library of MedicineNational Institutes of Health(アメリカ国立衛生研究所)</ref><ref name="厚生"></ref>。いくつかの研究は、6 - 10週間ラベンダー油を経口摂取することで、不安や不眠を改善すること示唆しているが、抗不安薬[[ロラゼパム]]より効果は弱いようである<ref name="NIH"></ref>。ただし、初期のアロマセラピーにおけるラベンダー油での不安治療の研究は不十分であり、[[エビデンス]]足り得ない<ref name="NIH"></ref>。またいくつかの研究は、ラベンダー油の香りを嗅いでいると高齢者の転倒が減少する、帝王切開で静脈内鎮痛剤を使用しながらラベンダー油を吸入すると、術後の痛みが軽減することを示している<ref name="NIH"></ref>。

;効果がないと考えられるもの
[[がん]]による痛みの軽減、[[認知症]]の改善、[[会陰]]の痛みの軽減などの効果はないと考えられている<ref name="NIH"></ref>。

;エビデンスが不十分であるもの
鎮静効果([[興奮]])に関する臨床研究は不十分で、矛盾する研究結果があるが<ref name="厚生"></ref>、[[アルツハイマー症]]患者の興奮を改善する可能性がある。かゆみや[[炎症]]を起こしている皮膚([[湿疹]])、[[疝痛]]、[[便秘]]、[[鬱病]]、気分の落ち込み([[幸福感]])、[[月経]]痛、[[高血圧]]、[[不眠]]、[[偏頭痛]]、[[頭痛]]、[[シラミ]]、耳の[[感染症]]、傷の治療、食欲不振、歯痛、[[にきび]]、吐き気、がんに対する効果、蚊の忌避剤、防虫剤としての効果の研究は十分ではなく、さらなる研究が必要とされている<ref name="NIH"></ref>。

=== 安全上の懸念 ===
ラベンダーを経口摂取した場合、便秘、頭痛、食欲増加を引き起こす可能性がある<ref name="NIH"></ref>。ラベンダー油の経口摂取は、有害である可能性がある。<ref name="厚生"></ref>。

[[アメリカ国立衛生研究所]]は、妊娠中・授乳中におけるラベンダーの使用は、安全が確認されていないとしている<ref name="NIH"></ref>。

==== 皮膚刺激性 ====
''L. angustifolia''(コモン・ラベンダー)や''L. x intermedia''(ラバンジン)などラヴァンドラ属の精油は、皮膚への感作性<ref>生体をある抗原に対して感じやすくし、アレルギーが起こりやすい状態にすること。</ref>を除けば、比較的安全性の高い精油である。皮膚に使用すると刺激を感じることがある。精油や精油を用いた化粧品による[[接触性皮膚炎]]や[[アレルギー]]反応の報告があり、日本人のラベンダー油の陽性率([[パッチテスト]]による)は、1997年に劇的に増加している<ref>[https://www.jstage.jst.go.jp/article/skinresearch1959/23/4/23_4_421/_pdf 最近6年間における香料系パッチテスト陽性頻度 須貝哲郎、山本幸代、渡辺加代子、麻生五月] 「皮膚」第23巻、昭和56年</ref>。これは、近年のアロマブームの影響だと考えられている。''L. x intermedia''の精油で偽和(合成成分の添加など)が横行しており、これが広く利用された影響で、ラヴァンドラ属の精油に対する感作が上昇していると考えられる<ref name="バルチン"></ref>。[[名古屋大学]]医学部環境皮膚科学講座の杉浦真理子らは、化粧品の接触性皮膚炎に関する調査を行った。12年間に1000人以上の患者を対象に行ったパッチテストで、陽性率第1位はラベンダー油で、6.57%と突出して多かった<ref>[http://dermatology.blog97.fc2.com/blog-entry-83.html 化粧品によるかぶれ 原因物質ランキング] うはら皮膚科</ref><ref>[http://ci.nii.ac.jp/naid/110002426619 2-e アレルギー性接触皮膚炎 : ラベンダーオイルのヒトパッチテスト結果とモルモット皮膚感作試験結果 名大環境皮膚科 杉浦真理子、早川律子、加藤佳美、杉浦啓二] アレルギー 50(2・3), 231, 2001年 一般社団法人日本アレルギー学会</ref>。

2004年に[[in vitro]](試験管内で行う試験)で、ラベンダー油に[[細胞毒性]](細胞傷害性)が認められたという研究結果が公開された<ref>{{Cite journal | last1 = Prashar | first1 = A. | last2 = Locke | first2 = IC. | last3 = Evans | first3 = CS. | title = Cytotoxicity of lavender oil and its major components to human skin cells. | journal = Cell Prolif | volume = 37 | issue = 3 | pages = 22-29 |date=Jun 2004 | doi = 10.1111/j.1365-2184.2004.00307.x | PMID = 15144499 }}</ref>。これに対しアロマセラピストのロバート・ティスランドは、全てのin vitroは、その現象が起こる可能性を示唆するにすぎず、生体で同様の効果があると決めつけることはできないと述べている<ref name="Tisserand">{{Cite web | last = Tisserand | first = Robert | title = Lavender oil – skin savior or skin irritant? &laquo; Robert Tisserand | url = http://roberttisserand.com/2011/08/lavender-oil-skin-savior-or-skin-irritant/ | publisher = | date = 25 August 2011 | accessdate = 2013-11-06}}</ref>。

==== 光毒性 ====
2007年に様々な[[香料]]と{{仮リンク|感光性|en|Photosensitivity}}に関する研究が発表された。ラベンダーは光毒性反応を誘発すると言われているが、研究でそのような現象は認められなかった<ref name="Placzek-2007">{{Cite journal | last1 = Placzek | first1 = M. | last2 = Frömel | first2 = W. | last3 = Eberlein | first3 = B. | last4 = Gilbertz | first4 = KP. | last5 = Przybilla | first5 = B. | title = Evaluation of phototoxic properties of fragrances. | journal = Acta Derm Venereol | volume = 87 | issue = 4 | pages = 312–6 | month = | year = 2007 | doi = 10.2340/00015555-0251 | doi_brokendate = 2015-01-01 | PMID = 17598033 |quote=Also, oils of lemon, lavender, lime, sandalwood and cedar are known to elicit cutaneous phototoxic reactions, but lavender, sandalwood and cedar oil did not induce photohaemolysis in our assay...Lavender oil and sandalwood oil did not induce photohaemolysis in our test system. However, a few reports on photosensitivity reactions due to these substances have been published, e.g. one patient with persistent light reaction and a positive photo-patch test to sandalwood oil (20).}}</ref>

==== 女性化乳房 ====
精油の思春期前の少年への局所的・反復的使用は、男性の乳房が成長する[[女性化乳房]]の原因になるという見解がある<ref name="厚生"></ref><ref>{{Cite web |author1=Miranda Hitti |author2=Reviewer Louise Chang MD | title = Lavender Oil May Spur Breasts in Boys | url = http://www.webmd.com/parenting/news/20070131/lavender-oil-may-spur-breasts-boys | publisher = WebMD, LLC | date = 31 January 2007| accessdate = 2013-11-06}}</ref><ref name="Henley">{{Cite journal|doi=10.1056/NEJMoa064725|title=Prepubertal Gynecomastia Linked to Lavender and Tea Tree Oils|year=2007|last1=Henley|first1=Derek V.|last2=Lipson|first2=Natasha|last3=Korach|first3=Kenneth S.|last4=Bloch|first4=Clifford A.|journal=New England Journal of Medicine|volume=356|issue=5|pages=479 85|pmid=17267908 |url=http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa064725}}</ref>。

[[コロラド大学]]デンバー校の小児内分泌学者Clifford Blochによると、4歳・7歳・10歳の「思春期前女性化乳房」と診断した男児3人が、ラベンダーの香りの石けん、スキンローション、またはシャンプーか整髪料を使用しており、これらにはラベンダー油またはティーツリー油が含有されていた<ref name="日経サイエンス">[http://www.nikkei-science.com/?p=17660 ラベンダーで胸ぷっくり?日経サイエンス2007年6月号より ''New England Journal of Medicine'' 誌 2月1日号に報告]</ref>。これらの製品の使用をやめると、数カ月で女性化乳房の症状は消えた<ref name="日経サイエンス"></ref>。
アメリカ国立環境衛生科学研究所は、ヒト[[乳がん]]細胞を使って、これらの精油が[[遺伝子]]の発現にどう影響するかを調べた。その結果、主要な女性ホルモンである[[エストロゲン]]と似た働きをする他、男性ホルモンの[[アンドロゲン]]を阻害するらしいことが分かった<ref name="日経サイエンス"></ref>。

==== 相互作用 ====
薬剤、[[サプリメント]]との[[相互作用]]の可能性がある<ref name="厚生"></ref>。[[抱水クロラール]]、[[降圧薬]]、[[バルビツール酸系]]薬([[鎮静薬]])、[[ベンゾジアゼピン]]([[向精神薬]])、[[中枢神経]]抑制薬と相互作用があると考えられている<ref name="NIH"></ref>。眠気を引き起こす、または血圧を下げる可能性があるため、同様の効果を持つサプリメントと併用すると強い眠気が起こったり、血圧が大幅に低下する危険性がある<ref name="NIH"></ref>。中枢神経系に影響を与えると推測されるため、手術中に使用する薬剤との相互作用を防ぐために、手術の2週間前に使用を止める必要がある<ref name="NIH"></ref>。

== EUのREACH規則 ==
[[欧州連合]](EU)では、欧州における新しい化学品規制'''[[REACH]]'''(REACH規則、REACH法:Registration, Evaluation, Authorisation and Restriction of Chemicals)が、2008年から運用されている<ref name="経済産業省">[http://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/int/reach.html REACH(欧州化学品規制)について] 経済産業省</ref><ref>[http://blog.livedoor.jp/hennoji/archives/52336033.html アグリのお豆でコーヒーちゅう & 第56回各務ヶ原カンファレンスの報告] へんおじの闘病記</ref>。この規則では、EUで物質(調剤中の物質も該当)を年間1トン以上製造又は輸入する事業者に対し、登録手続が義務付けられている<ref name="経済産業省"></ref>。登録の他にも、条件に該当する場合は、認可、制限、届出などの義務がある<ref name="経済産業省"></ref>。対象には精油などの天然香料も含まれ、[[香料]]業界・生産農家・[[化粧品]]業界・[[アロマセラピー]]業界などで議論を巻き起こしている<ref name="その2">[http://ameblo.jp/iledesfleursparis/entry-11915101740.html ラベンダー農家の苦悩 その2] Île des fleurs Paris Tomomi</ref>。

ラベンダーの精油は[[アレルギー]]を引き起こす可能性があるとして、REACHの対象となっており、将来的に「内服または吸入した場合、死亡する可能性がある。」という赤と黒の警告ラベルが義務付けられる可能性がある<ref name="EU">[http://www.dailymail.co.uk/wires/ap/article-2746615/Lavender-farmers-rebel-against-EU-chemical-rules.html Lavender farmers rebel against EU chemical rules] Associated Press</ref>。精油は合成香料などと違い、生産地、生産年などでも成分組成が異なるため、その都度の検査が必要となり、流通も規制されるため、ラベンダー農家や精油業者とって大きな負担となる<ref>[http://ameblo.jp/iledesfleursparis/entry-11915168013.html ラベンダー農家の苦悩 その3] Île des fleurs Paris Tomomi</ref>。ラベンダー農家の多くは、天然物質である精油をReachの対象とすることに対し、「ラベンダーは化学製品ではない。Reachの適用反対」などのメッセージ看板を畑に掲げるなどして、反対の立場を表明している<ref name="EU">[http://www.dailymail.co.uk/wires/ap/article-2746615/Lavender-farmers-rebel-against-EU-chemical-rules.html Lavender farmers rebel against EU chemical rules] Associated Press</ref><ref name="その2"></ref>。


== 芳香成分 ==
== 芳香成分 ==
;''L. angustifolia''(コモン・ラベンダー)の精油
リナロール、酢酸リナリルを主要成分とする<ref>A. Prashar, I. C. Locke, C. S. Evans (2004). Cytotoxicity of lavender oil and its major components to human skin cells. Cell Proliferation 37 (3), 221-229.</ref>。
*[[酢酸リナリル]]
*[[酢酸リナリル]]
*[[リナロール]]
*[[リナロール]]
*β-{{仮リンク|カリオフィレン|en|Caryophyllene}}
*[[酢酸ラベンディル]]
*{{仮リンク|酢酸ラベンディル|en|Lavandulyl acetate}}
*[[テルビネン]]
*[[ファー]]
*(Z)-β-[[オシメン]]
*[[1,8-シネオール]]
*{{仮リンク|テルピン-4-オール|en|Terpinen-4-ol}}
*(E)-β-オシメン

他多数の成分からなる。

;''L. latifolia''(スパイク・ラベンダー)の精油
リナロール、[[シネオール|1,8-シネオール]](ユーカリプトール)、カンファー([[樟脳]])を主要成分とする。他多数の成分からなる。
<gallery>
File:Linalyl_acetate.svg|酢酸リナリル
File:Linalool-skeletal.png|リナロール
File:Eucalyptol.png|1,8-シネオール
File:Camphor_structure.png|カンファー
</gallery>

== 日本人とラベンダー ==
[[File:SeimiKaisouChemistry.jpg|200px|thumb|right|宇田川榕庵『[[舎密開宗]]』、蒸留装置]]
[[画像:Nakafurano_02.jpg|200px|thumb|right|北海道、中富良野町のラベンダー畑]]
ヨーロッパでは伝統的に精油が医療に利用されていたため、[[西洋医学]]([[蘭方]])が日本に伝わると、日本の医師や学者は西洋の薬用植物や精油、精油の蒸留法、利用法に興味を持ち、情報を集めて医療に利用した。ラベンダーは文政期に、[[宇田川玄真]](榛斎)訳述・[[宇田川榕庵]]補校による西洋薬物書『[[遠西医方名物考]]』(1822年)及び補遺(1934年頃)に「ラーヘンデル」「ラーヘンデル油」の名で詳しい説明があり、以降江戸後期の翻訳書・[[蘭学]]書にもラベンダーや精油についての記述がある<ref name="吉武"></ref>。フランス語の''lavande'' は、蘭学者の翻訳によりオランダ語の''lavendel'' (ラーヘンデル)として紹介された。翻訳作業を通して蘭方薬(西洋薬)に使う生きた植物を輸入しようという機運が高まった。[[遠藤正治]]によると、[[大槻玄沢]]と宇田川玄真が幕府に申請したオランダからの輸入のリストにはラベンダーも含まれていたという<ref name="吉武"></ref>。1819年には花と精油が輸入され、万延元年(1860年)に遣米使節団によってもたらされた植物の種子には、ラベンダーの種子が含まれていた<ref name="吉武"></ref>。日本の香り文化を研究する[[吉武利文]]は、本草学者山本榕室に送られた種子の記録や、旗本で本草家の馬場資生圃(1785年 - 1868年)のラベンダーの絵などから、幕末期には一部ではあるが、精油が輸入され、栽培も行われていたと考えられる、と述べている<ref name="吉武"></ref>。

ラベンダーの本格的な栽培・精油の蒸留は、1937年(昭和12年)に[[曽田香料]]株式会社の創業者・曽田政治が、フランスのアントワン・ヴィアル社からラバンデュラ・オフィキナリス(''Lavandu la officinalis'' )の種子を入手したことに始まり、1942年(昭和17年)には日本最初のラベンダー油が採取されたといわれてきた<ref name="キャンパス化">[http://www.u-tokai.ac.jp/lavender/rekishi.html ラベンダーキャンパス化計画 歴史] 東海大学</ref>。しかし吉武利文は、株式会社[[永廣堂]]の沿革には、1935年に[[伊豆]](富戸)でラベンダー油・ゼラニューム油(ゼラニウム油)の栽培・採油を開始したとあり、それ裏付ける1939年の資料もあるため、北海道より伊豆の方が少し早かった可能性もあると指摘している。戦時体制下であった当時、伊豆では国産香料の生産が目指され、[[クロモジ]]やゼラニウムの蒸留の他に、ラベンダーも試験的に栽培・蒸留が行われていたが、[[第二次世界大戦]]が始まると食料増産のためラベンダーの生産はできなくなった。戦後は、伊豆では一部に残るのみとなった。曽田香料は戦中ラベンダーの原種苗を保存し、終戦後は契約による委託栽培を募り、富良野地方などでラベンダーの栽培・蒸留が広く行われた。しかし、1972年(昭和47年)頃から[[合成香料]]技術の進歩と輸入自由化の影響を受けて衰退した<ref name="キャンパス化"></ref><ref>「ファーム富田×熊井明子×生活の木-ハーブ対談 当時は、誰もハーブを知らなかった」『生活の木 エイムック』 エイ出版社、2005年</ref>。

[[1960年]]代までは、ヨーロッパを旅する機会のない日本の一般大衆は、ラベンダーをほとんど知らなかった{{要出典|date=2015年1月}}。フランスではラベンダーの香り袋やラベンダー油を用いた製品がよく見られるため、フランスを旅したり滞在したことのある日本人は知る機会があった。日本が経済的に豊かになるにつれ海外旅行をする人が増え、ヨーロッパでラベンダー関連製品の香りを自身で体験し、興味を持つ人が増えた。

1975年に[[国鉄]]のカレンダーで北海道[[富良野]]のラベンダー畑が紹介され問い合わせが殺到し、観光資源として栽培されるようになった<ref name="キャンパス化"></ref>。人気テレビドラマ『[[北の国から]]』(1981年 - 1982年)でもラベンダー畑が登場して話題となった。富良野のラベンダー畑は、夏の北海道旅行で立ち寄る場所の一種の「定番」となり、多くの日本人がラベンダーに親しむようになった。

[[筒井康隆]]の小説『[[時をかける少女]]』(1967年)やその映像化作品であるテレビドラマ『[[タイム・トラベラー]]』(1972年)、および[[原田知世]]主演・[[大林宣彦]]監督の映画『[[時をかける少女 (1983年の映画)|時をかける少女]]』(1983年)に、物語の鍵としてラベンダーの香りが登場した。それらの作品(特に1983年の映画)に接した人は、その名前と香りの特徴を知った<ref>{{Cite web|publisher=[[日本経済新聞]]|url=http://www.nikkei.com/article/DGXDZO74319470W4A710C1MM8000/|date=2014-07-16|title=〔社説・春秋〕 いまでも熱心なファンが多い。薄暗い実験室。|accessdate=2014-10-27}}</ref>。


== ラベンダー色 ==
== ラベンダー色 ==
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ラベンダー色は[[同性愛]]者を象徴する色でもある。[[ピンク・トライアングル]]を参照。
ラベンダー色は[[同性愛]]者を象徴する色でもある。[[ピンク・トライアングル]]を参照。


== 出典・脚注 ==
== 日本人とラベンダー ==
昔から、フランスを旅したり滞在したことのある日本人はラベンダーのことを知っていた。フランスではラベンダーの香り袋やラベンダーオイルを用いた製品が頻繁に見られるからである。が、日本がまだあまり豊かでなかった時代、[[1960年]]代まではヨーロッパを旅する機会のない日本の一般大衆はラベンダーのことをほとんど知らなかった。

[[筒井康隆]]の小説『[[時をかける少女]]』やその映像化作品である『[[タイム・トラベラー]]』および1983年の[[原田知世]]主演・[[大林宣彦]]監督の映画『[[時をかける少女 (1983年の映画)|時をかける少女(映画)]]』に、物語の鍵となるものとして登場したことで、それらの作品(特に1983年の映画)に接した人は、海外経験がなくても、その名前と香りに特徴がある点を知った<ref>{{Cite web|publisher=[[日本経済新聞]]|url=http://www.nikkei.com/article/DGXDZO74319470W4A710C1MM8000/|date=2014-07-16|title=〔社説・春秋〕 いまでも熱心なファンが多い。薄暗い実験室。|accessdate=2014-10-27}}</ref>。

一方で日本が経済的に豊かになるにつれ海外旅行をする人が増え、ヨーロッパでラベンダー関連製品の香りを自身で体験する人が増え興味を持つ人が増えた。一度体験すると忘れられないような香りだからである。また、北海道でも栽培がおこなわれるようになったことで、さらに知られるようになり、北海道中富良野のファームがラベンダー製品を出荷するだけでなく畑を観光資源として活用し夏の北海道旅行で立ち寄る場所の一種の「定番」とさせたことで、非常に多くの日本人が親しむようになった。

== 出典 ==
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== 外部リンク ==
== 参考文献 ==
* 小松美枝子 小松紀三男 著 『ラベンダーブック』 グラフ社、2008年
* ビル・ローズ 著 『図説 世界史を変えた50の植物』 柴田譲治 翻訳、 原書房、2012年
* 吉武利文 著 『香料植物 ものと人間の文化史 159』 法政大学出版局、2012年
* Tim Upson、Susyn Andrews 著 ''The Genus Lavandula.'' Timber Pr 2004年

== 関連項目 ==
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{{-}}

== 外部リンク ==
*[http://hfnet.nih.go.jp/contents/indiv_agreement.html?556 ラベンダー - 「健康食品」の安全性・有効性情報] ([[国立健康・栄養研究所]])
*[http://hfnet.nih.go.jp/contents/indiv_agreement.html?556 ラベンダー - 「健康食品」の安全性・有効性情報] ([[国立健康・栄養研究所]])
*[http://www.u-tokai.ac.jp/lavender/ ラベンダー キャンパス化計画] ([[東海大学]])
*[http://www.u-tokai.ac.jp/lavender/ ラベンダー キャンパス化計画] ([[東海大学]])
*[http://www.ejim.ncgg.go.jp/pro/overseas/c04/33.html ラベンダー 海外のサイト] 「統合医療」情報発信サイト [[厚生労働省]] 「統合医療」に係る情報発信等推進事業
*[http://kakashi.sakura.ne.jp/100hana2014pdf/050213rabennda-.pdf ラベンダー] 花の縁 山田案山子


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2015年2月4日 (水) 13:05時点における版

ラヴァンドラ属
ラベンダー
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 双子葉植物綱 Magnoliopsida
: シソ目 Lamiales
: シソ科 Lamiaceae
: ラヴァンドラ属 Lavandula

39種。代表種は

  • Lavandula angustifolia
  • L. latifolia
  • L. stoechas
  • L. multifida
  • L. × intermedia

ラベンダー(英:lavender、仏:lavande)は、シソ科ラヴァンドラ属(ラベンダー属、lavandula)の半木本性植物の通称である[1]。または、半耐寒性の小低木Lavandula angustifolia (通称:ラベンダー、コモン・ラベンダー、イングリッシュ・ラベンダーなど)を指す。

概説

Lavandula angustifolia

ラヴァンドラ属(ラベンダー属、lavandula)は、半木本性植物で、低木のような草本、小低木、亜小低木である[2]多年生のものとそうでないものがある。ヨーロッパ南部を中心に39種が知られ、高さは2メートル以下。原産地は地中海沿岸、インド、カナリア諸島、北アフリカ、中東などである[3]。春に紫や白、ピンク色の花を咲かせる様々な種がある。中でも紫色の花が最もポピュラーである。多くの種は、花、葉、茎は細かい毛でおおわれており、その間に精油を出す腺がある[4]。揮発性の油を多く含むため、草食動物はほとんど食べないが、芳香で蜂などを引き寄せる。ユーカリと同じように夏の熱さなどで自然発火し、野火をよぶ。種子は野火の後に発芽する性質がある[3]。伝統的にハーブとして古代エジプト、ギリシャ、ローマ、アラビア、ヨーロッパなどで薬や調理に利用され、芳香植物としてその香りが活用されてきた。ラベンダー特有の香りがない種も一部存在する。園芸用としても愛好されている。

主にラベンダーと呼ばれるL. angustifolia(コモン・ラベンダー)だけでなく、その近縁種や交雑種もラベンダーと呼ばれることがあるため、ラベンダーの名で販売される苗やラベンダー油英語版L. angustifolia のものとは限らない[5]

日本におけるラベンダーの初期の記述としては、江戸文政期の西洋薬物書に「ラーヘンデル」「ラーヘンデル油」の名で詳細な説明がある[6]幕末期には一部ではあるが、精油が輸入され、栽培も行われていたと考えられている。昭和期には香料原料として、北海道富良野地方などで栽培されて精油が生産され、1970年にピークを迎えたが、合成香料の台頭で衰退した[6]。現在では富良野などでラベンダー畑が観光資源となっている。

現代でもL. angustifolia(コモン・ラベンダー)やL. latifolia(スパイク・ラベンダー)、L. x intermedia(ラバンジン)などが精油を採るために栽培され、精油は香料として用いられたり、アロマセラピー(芳香療法)としてリラクセーション等に利用されている[1]

ちなみに、ラベンダー色は薄紫色を意味する。

語源

英語のlavender は古フランス語のlavandre に由来する。lavandre の語源として様々な説があるが、「洗う」という意味のラテン語 lavolavare から来るといわれる[7]。古代ローマ人達は洗濯に用いたり、浴用香料として疲労や硬直した関節を和らげるために利用したという[8][9]。学名のLavandula は他のヨーロッパ言語でラベンダーを指す言葉からリンネが命名したと言われる。

しかし、この通説を裏付ける歴史的証拠はなく、一般的に古代ギリシャ人・ローマ人は、ラベンダーを入浴に利用しなかったなどの問題点がある。そのため、作り話である可能性がある。UpsonとAndrewsはローマ帝国での入浴に関する記述を確認したが、ラベンダーの使用はなかったという。UpsonとAndrewsは、ラテン語のlivere と中世ラテン語lavindula から推測し、「青みを帯びた、青みがかった」を意味するラテン語livere に由来するという説を提示している。

分類・種

Lavandula latifolia
Lavandula lanata
Lavandula dentata
Lavandula stoechas
Lavandula multifida

ヨーロッパ各地で盛んに品種改良が行われたことや、交雑種を生じやすい性質のために、呼び名や学名はかなり混乱しており、分類に関しては現在も研究が進められている。また植物学上の分類では同一種であっても、産地により抽出される精油の成分組成や香り、生物活性(効能)が異なる事から、生産地名を加えて区分しているものもある。歴史的にひとつの通称が、複数の種に用いられる例も見られる。同じ種のラベンダーでも、多数の通称を持つものも少なくない。

古代ローマでは、L. stoechas(イタリアン・ラベンダー)、L. pedunculata(スパニッシュ・ラベンダー)、L. dentata(キレハ・ラベンダー) はローマ時代にすでに知られていた[10]。地中海地方に自生するいくつかの種が活用されたが、それらはほとんど区別されることはなかった。L. angustifolia(コモン・ラベンダー)を初めて他と区別したのは、中世の修道女ヒルデガルト・フォン・ビンゲン(ユリウス暦1098年 - 1179年)である。中世ヨーロッパでは、ヨーロッパのラベンダーはストエカス(L. stoechasL. pedunculataL. dentata) とラヴェンドラ (L. spicaL. latifolia)の2つのグループにわけられていた。リンネは『植物の種』Species Plantarum (1753年)で、当時知られていたラベンダーを一つの属にまとめた。5種のラベンダーが挙げられ、L. multifidaL. dentata (スペイン) 、L. stoechasL. spicaL. pedunculataL. stoechas に含まれていた。L. angustifoliaL. latifolia は区別されず、L. spica とされた。

最初の近代的な分類で重要なものは、1937年にキューのDorothy Chaytorが行ったもので、28種をストエカス節、スパイカ節、スブヌダ節、プテロストエカス節、カエトスタシス節、デンタータ節の6つの節[11]に分けたが、容易に割り当てることのできない種が残された[12]。栽培種や園芸種はスパイカ、ストエカス、プテロストエカスの3節から出ており[13]、カエトスタシス節はインドやイラン、スブヌダ節はアラビアやソマリアに分布する[14]。現在日本で見られるものは、園芸書ではイングリッシュ系(スパイカ節)、フレンチ系(ストエカス節、デンタータ節)、ラバンジン系(L.a.ssp angustifoliaL. latifoliaの交雑種)、その他に大別される[15]。フレンチ系はイングリッシュ系より開花期が早い[15]。スパイカ節(イングリッシュ系)の種は分類・学名に変遷があるため、現在でもL. angustifoliL. officinalisL. veraなどの古い学名の使用するなど、学名の誤用が見られる[13]

現代では、クライストチャーチ植物園などでBotanical Officerをしていたヴァージニア・マクノートン(Virginia McNaughton)は、スパイカ節、ストエカス節、プテロストエカス節、カエトスタシス節、スブヌダ節の5つの節に分かれるとしている[13]

最新の分類はTim UpsonとSusyn Andrewsによる2004年のもので、ラヴァンドラ亜種(ラヴァンドラ節、デンタータ節 、ストエカス節)、ファブリカ亜種(プテロストエカス節、スブヌダ節、カエトスタシス節、Hasikenses 節)、サバウディア亜種(サバウディア節)の3亜種があるとされた[2]。以下、Tim UpsonとSusyn Andrewsによるによる分類。主な種を挙げる。

Ⅰ ラヴァンドラ(Lavandula)亜種
i. ラヴァンドラ(Lavandula)節 (3種):スパイカ節[13]、園芸書などでイングリッシュ系[16]として知られる。
  • Lavandula angustifolia Mill.地中海沿岸原産[15]L.a.ssp angustifoliaとピレネー山脈・北部スぺイン原産のL.a.ssp pyrenaicaの2亜種を持つが、L.a.ssp pyrenaicaはほとんど見られず、L. angustifoliaといえばL.a.ssp angustifoliaを指す[13]。通称コモン・ラベンダー、イングリッシュ・ラベンダー、オールドイングリッシュ・ラベンダー、トゥルーラベンダー、真正ラベンダー。元々はフランスで栽培され始めた[13]。葉は線形で対生し、若い茎では輪生する。葉の色は最初白っぽく、育つにつれ緑色になる[1]。6~7月に、芳香のある青紫色の花を穂状にたくさんつける。日本の夏の高温多湿に弱い[5]。最高級の精油がとれ、高地で育てると高い品質になるが、花穂が短く採取量が少ないため、商業用に育てられるものは、L. latifolia(スパイク・ラベンダー)が多少とも交雑した雑種であると考えられている[17][13]
  • Lavandula latifolia Medik:通称スパイク・ラベンダー、ヒロハ(広葉)ラベンダー。ポルトガル原産。広がりのあるへら型の葉を持ち、グレイがかった紫の花穂をつける[5]。葉はラベンダーの中でも特にカンファー臭がする。L. angustifoliaの3倍の精油を収穫できるが、香料としての品質は劣る。
  • Lavandula lanata Boiss:通称ウーリー・ラベンダー。スペイン南部の山地が原産[13]。全草フランネルのような白綿毛で覆われており、花穂は好ましいカンファー臭がする[13]
交雑種
  • Lavandula x intermediaL.a.ssp angustifoliaL. latifoliaの交雑種。通称ラバンジン、ラヴァンディン。耐寒性が強く高温多湿にもやや耐え[13]、日本でも育てやすく、関東地方以西の気候に合う[5]。丈夫で花がたくさん咲き、精油も多く取れることから、商業用に広く栽培されている[13]。香料としての精油の質は、L. latifoliaよりさらに劣るが、低地でも栽培できる。不稔性で種ができにくく、挿し木で増やす[13]
ii. デンタータ (Dentatae)節 (1種):フレンチ系[16]として知られる。
  • Lavandula dentata L.:通称キレハ(切葉)ラベンダー、デンタータ・ラベンダー、フリンジド・ラベンダー、フレンチ・ラベンダー。世界中に広く分布するが、海外ではおもにフレンチ・ラベンダーと呼ばれる[13]。葉が歯状になっており[13]、苞葉のある薄紫の花穂[5]を1年の大半つける[13]。変異種ができやすい[13]
iii. ストエカス(Stoechas Ging.)節 (3種):フレンチ系[16]として知られる。
  • Lavandula stoechas L.:通称イタリアン・ラベンダー、スパニッシュ・ラベンダー、フレンチ・ラベンダー、トップド・ラベンダー。歴史的にフレンチ・ラベンダーと呼ばれ[13]、日本でもそう呼ばれることが多い。原産は地中海沿岸・北アフリカ[13]。1~3nmの小さな花を無数につけ[13]、花穂の先端に紫紅色の苞葉がある[5]。全草にカンファー様の清涼感ある香りがあり、短毛で覆われている[13]。霜や寒さに弱い種が多いが、暑さには比較的強い。昔から薬用に使われてきた[5]
  • Lavandula pedunculata Mill.(Cav.):通称スパニッシュ・ラベンダー、フレンチ・ラベンダー。主にスペインで見られるが、原産はポルトガル、北アメリカ、南バルカン半島、小アジア。花穂は丸くふくらみがあり華やかだが、あまり丈夫ではない[13]
Ⅱファブリカ(Fabricia)亜種
iv. プテロストエカス(Pterostoechas Ging.)節 (16種)
  • Lavandula multifida:通称ファーンリーフ・ラベンダー、レース・ラベンダー、ムルチフィダ・ラベンダー、エジプシャン・ラベンダー。愛らしい青紫の花穂をつけるが、ラベンダーの芳香はない[13]。半耐寒性の多年草として園芸用に栽培される。
  • Lavandula canariensis Mill.:通称カナリー・ラベンダー。条件が良ければ1.5mにもなる[13]。カナリア諸島原産[13]。耐寒性がない[13]
  • Lavandula pinnata L.:通称ピナータ・ラベンダー、ピンナタラベンダー、レースラベンダー。シダのような特徴的な葉で、開花期には幻想的な美しさを持ち、園芸種として人気が高い[13]
v. スブヌダ(Subnudae)節 (10種)
vi. カエトスタシス(Chaetostachys)節 (2種)
  • Lavandula bipinnata (Roth) Kuntze
  • Lavandula gibsonii J. Graham
vii. Hasikenses 節 (2種)
  • Lavandula hasikensis A.G. Mill.
  • Lavandula sublepidota Rech. f.
III. サバウディア(Sabaudia)亜種
viii.サバウディア(Sabaudia)節 (2種)
  • Lavandula atriplicifolia Benth.
  • Lavandula erythraeae (Chiov.) Cufod.

栽培地

プロヴァンス、ソー村

高温多湿は苦手な種が多く、西岸海洋性気候亜寒帯湿潤気候の地域で多く栽培されている。

世界的に有名な生産地はフランスのプロヴァンスで、伝統的に多くの地域で商品作物として栽培され、ラベンダー畑が多数ある[3]。特にソー (ヴォクリューズ県)フランス語版(Sault[18])という村が有名で、ラベンダー農家が多数あり広大なラベンダー畑が広がる。ソー村の様々なラベンダー製品はフランス国内、ヨーロッパ、世界各地に届けられている。ソーでは毎年夏に1日ラベンダー祭が催され、ラベンダーを用いた様々な製品が通りに並び、普段は3000人位の村に世界各地から2万人ほどの観光客が訪れる。

近年プロヴァンスでは、ラベンダー畑のバクテリア被害が深刻な問題になっている。異常気象の影響で、有害なバクテリアを媒介するヨコバイが大量発生し、2007年から2010年の間にラベンダー畑の50%が被害を受け、生産が大幅に落ち込んだ[19][20][21]

オーストラリアのタスマニアも生産地として知られる[3]

日本では北海道富良野地方のラベンダー畑が世界的にも知られ[3]上富良野町中富良野町ニセコ町のシンボルとしても指定される。栽培発祥地は、札幌市南区南沢であり、1942年に栽培が開始された。札幌市では、幌見峠頂上(宮の森地区)にあるラベンダー畑が有名であるが、規模は小さい。他にも、南沢にある東海大学札幌キャンパスでは、2002年よりラベンダーキャンパス化計画として栽培されている。

利用

ラベンダーを使ったカップケーキ

ラヴァンドラ属は、ポプリの材料、ハーブティー、料理の風味付け、化粧水などの美容、観賞用(鉢植え)等々に利用されてきた。また古くから、多くの薬効を持つハーブとして利用された。

ギリシア人は、シリアの都市ナールダ(おそらく現在のイラクのドホーク)から採って、ラベンダーを「ナルド」と呼んだ[22][23]L. latifolia(スパイク・ラベンダー)は、最も高価な香料のひとつである甘松香英語版(スパイクナルド)と混同され、重用された。新約聖書ベタニアのマリアがイエスに注いだ「ナルドの香油」は、甘松香ではなくラベンダーの香油であったとも考えられている[13]。ラベンダーの花は非常に高価で、古代ローマのプリニウスの時代には1ポンド当たり100デナリという高額であり、中世になっても貴重なものであった[9]

乾燥させたラベンダーを束ねたもの。防虫に用いる。

フランスなどでは、乾燥させた花を小さな布袋に入れた一種のサシェ(香り袋、匂い袋)があり、それを洋服箪笥に入れたり、ワードローブの中に下げておいたりして、香りを衣類に移したり防虫剤として利用する。あるいはサシェをベッドの枕の近くなどに置いて寝室に漂わせたり、枕のつめものの一部としてラベンダーを混ぜておいて、枕に頭を置くだけで中身が自然と揉まれて香りが漂うこと楽しむ。

花や葉は食用され、食欲増進のハーブとして料理や菓子の風味付けに用いられた。調味料としてサラダやドレッシングに利用されている[24]。南フランスでラベンダーは伝統的に様々な用途に利用され、エルブ・ド・プロヴァンスというラベンダーを含むハーブミックスが広く知られるが、これはスパイス業者が作ったもので、伝統的な南仏プロヴァンス料理でラベンダーは用いられない[25][26]。近年、エルブ・ド・プロヴァンスは料理でよく使用されるようになってきている。

エリザベス1世はラベンダーのジャムを好み、砂糖漬けを肉料理やフルーツ・サラダの薬味として、菓子や頭痛薬として食した[9]チャールズ1世の妃ヘンリエッタ・マリアは、ラベンダーの花を刻んで粉砂糖と混ぜ、ローズウォーターでペースト状に練った砂糖菓子が大好物で、これをビスケットなどに塗って食べていたという[要出典]

また、香水に使われる香料として重要な役割を果たした。ラベンダーの芳香成分をアルコールに溶かしたラベンダー水は、ローズマリー水(ハンガリーウォーター)と共に、最古のアルコールベースの香水のひとつとされる[27]。1709年にイタリアの香料商ヨハン・マリア・ファリナがドイツのケルンで発売され人気となった香りのよい薬用酒「アクア・アドミラビリス」(奇跡の水)、後の「オーデコロン」(Eau de Cologne、ケルンの水)には、微量のラベンダーがブレンドされていた[3][6]

現代では、L. angustifolia(コモン・ラベンダー)やL. x intermedia(ラバンジン)の精油は、香料やアロマセラピーに用いられる。精油は、先端部分および花から、水蒸気蒸留で抽出される。ヨーロッパ薬局方には、L. angustifoliaの精油が収録されている。溶剤抽出法によるラベンダー・アブソリュートもある[28]。同じL. angustifoliaを用いても、抽出に用いる部位によって、精油の成分は大きく異なる。L. x intermediaL. angustifoliaより多くの精油を採ることができ、価格が安いため広く流通しているが、L. x intermediaの精油をL. angustifoliaの精油として販売する業者も存在する。L. x intermedia(ラバンジン)の精油は、多少カンファー臭があり、L. angustifolia(コモン・ラベンダー)の精油とは成分組成も異なる[28]

効能・臨床研究

ラベンダー油

ラヴァンドラ属は、ハーブの一種として用いられ、様々な効能が期待されている。古くから多くの病気に対する万能薬として利用されており[9]、不安、不穏、不眠、うつ症状、精神安定、鎮痛、胃のむかつき、脱毛、防虫殺菌などに効果があるとされ、民間療法または伝統療法として使われている[29][30]。アメリカのNational Center for Complementary and Integrative Health(NCCIH、旧 国立補完代替医療センター)は、2012年時点では、伝承される多くの効能に対し、有効性が科学的に証明されたものはごくわずかしかないと述べている[30]

精油も薬用され、第一次世界大戦時に病院で使用されていた[31]。種によって成分組成は異なり、香りだけでなく薬効も異なる。

揮発性の油である精油には、L. angustifolia(コモン・ラベンダー)の水溶性成分などは含まれないため、ハーブとしての効能をそのまま精油に用いることはできない[32]L. angustifoliaの精油はアロマテラピーでもっとも使われるもののひとつで、様々な効能があるといわれている。生化学者のマリア・リス・バルチンは、一般に言われるL. angustifoliaの精油の効能には、近世のハーブ療法家・ニコラス・カルペパー英語版(1616 - 1654)が記したL. latifolia(スパイク・ラベンダー)の効能で、チンキやティーの形で治療に用いたものが誤って引用された例が少なくないと指摘している[28]。例えばL. latifoliaの水溶性成分には鎮痙作用[33]があるが、これがL. angustifoliaの精油の効能として転用されており、情報が混乱していることがわかる[28]。またカルペパーは、ラベンダーには癲癇(てんかん)、痙攣(けいれん)など様々な症状に効果があると述べているが、スパイク油(ラベンダーの精油)は「その性質は極めて激しく刺すような刺激があるため、使用には注意を要する。」としている[3]

効果があると考えられるもの

一部の予備的な研究結果では、ラベンダー油は、タイム油、ローズマリー油、シダーウッド油と組み合わせて使用すると、円形脱毛症に効果がある可能性が示されている[34][30]。いくつかの研究は、6 - 10週間ラベンダー油を経口摂取することで、不安や不眠を改善すること示唆しているが、抗不安薬ロラゼパムより効果は弱いようである[34]。ただし、初期のアロマセラピーにおけるラベンダー油での不安治療の研究は不十分であり、エビデンス足り得ない[34]。またいくつかの研究は、ラベンダー油の香りを嗅いでいると高齢者の転倒が減少する、帝王切開で静脈内鎮痛剤を使用しながらラベンダー油を吸入すると、術後の痛みが軽減することを示している[34]

効果がないと考えられるもの

がんによる痛みの軽減、認知症の改善、会陰の痛みの軽減などの効果はないと考えられている[34]

エビデンスが不十分であるもの

鎮静効果(興奮)に関する臨床研究は不十分で、矛盾する研究結果があるが[30]アルツハイマー症患者の興奮を改善する可能性がある。かゆみや炎症を起こしている皮膚(湿疹)、疝痛便秘鬱病、気分の落ち込み(幸福感)、月経痛、高血圧不眠偏頭痛頭痛シラミ、耳の感染症、傷の治療、食欲不振、歯痛、にきび、吐き気、がんに対する効果、蚊の忌避剤、防虫剤としての効果の研究は十分ではなく、さらなる研究が必要とされている[34]

安全上の懸念

ラベンダーを経口摂取した場合、便秘、頭痛、食欲増加を引き起こす可能性がある[34]。ラベンダー油の経口摂取は、有害である可能性がある。[30]

アメリカ国立衛生研究所は、妊娠中・授乳中におけるラベンダーの使用は、安全が確認されていないとしている[34]

皮膚刺激性

L. angustifolia(コモン・ラベンダー)やL. x intermedia(ラバンジン)などラヴァンドラ属の精油は、皮膚への感作性[35]を除けば、比較的安全性の高い精油である。皮膚に使用すると刺激を感じることがある。精油や精油を用いた化粧品による接触性皮膚炎アレルギー反応の報告があり、日本人のラベンダー油の陽性率(パッチテストによる)は、1997年に劇的に増加している[36]。これは、近年のアロマブームの影響だと考えられている。L. x intermediaの精油で偽和(合成成分の添加など)が横行しており、これが広く利用された影響で、ラヴァンドラ属の精油に対する感作が上昇していると考えられる[28]名古屋大学医学部環境皮膚科学講座の杉浦真理子らは、化粧品の接触性皮膚炎に関する調査を行った。12年間に1000人以上の患者を対象に行ったパッチテストで、陽性率第1位はラベンダー油で、6.57%と突出して多かった[37][38]

2004年にin vitro(試験管内で行う試験)で、ラベンダー油に細胞毒性(細胞傷害性)が認められたという研究結果が公開された[39]。これに対しアロマセラピストのロバート・ティスランドは、全てのin vitroは、その現象が起こる可能性を示唆するにすぎず、生体で同様の効果があると決めつけることはできないと述べている[40]

光毒性

2007年に様々な香料感光性英語版に関する研究が発表された。ラベンダーは光毒性反応を誘発すると言われているが、研究でそのような現象は認められなかった[41]

女性化乳房

精油の思春期前の少年への局所的・反復的使用は、男性の乳房が成長する女性化乳房の原因になるという見解がある[30][42][43]

コロラド大学デンバー校の小児内分泌学者Clifford Blochによると、4歳・7歳・10歳の「思春期前女性化乳房」と診断した男児3人が、ラベンダーの香りの石けん、スキンローション、またはシャンプーか整髪料を使用しており、これらにはラベンダー油またはティーツリー油が含有されていた[44]。これらの製品の使用をやめると、数カ月で女性化乳房の症状は消えた[44]

アメリカ国立環境衛生科学研究所は、ヒト乳がん細胞を使って、これらの精油が遺伝子の発現にどう影響するかを調べた。その結果、主要な女性ホルモンであるエストロゲンと似た働きをする他、男性ホルモンのアンドロゲンを阻害するらしいことが分かった[44]

相互作用

薬剤、サプリメントとの相互作用の可能性がある[30]抱水クロラール降圧薬バルビツール酸系薬(鎮静薬)、ベンゾジアゼピン向精神薬)、中枢神経抑制薬と相互作用があると考えられている[34]。眠気を引き起こす、または血圧を下げる可能性があるため、同様の効果を持つサプリメントと併用すると強い眠気が起こったり、血圧が大幅に低下する危険性がある[34]。中枢神経系に影響を与えると推測されるため、手術中に使用する薬剤との相互作用を防ぐために、手術の2週間前に使用を止める必要がある[34]

EUのREACH規則

欧州連合(EU)では、欧州における新しい化学品規制REACH(REACH規則、REACH法:Registration, Evaluation, Authorisation and Restriction of Chemicals)が、2008年から運用されている[45][46]。この規則では、EUで物質(調剤中の物質も該当)を年間1トン以上製造又は輸入する事業者に対し、登録手続が義務付けられている[45]。登録の他にも、条件に該当する場合は、認可、制限、届出などの義務がある[45]。対象には精油などの天然香料も含まれ、香料業界・生産農家・化粧品業界・アロマセラピー業界などで議論を巻き起こしている[47]

ラベンダーの精油はアレルギーを引き起こす可能性があるとして、REACHの対象となっており、将来的に「内服または吸入した場合、死亡する可能性がある。」という赤と黒の警告ラベルが義務付けられる可能性がある[48]。精油は合成香料などと違い、生産地、生産年などでも成分組成が異なるため、その都度の検査が必要となり、流通も規制されるため、ラベンダー農家や精油業者とって大きな負担となる[49]。ラベンダー農家の多くは、天然物質である精油をReachの対象とすることに対し、「ラベンダーは化学製品ではない。Reachの適用反対」などのメッセージ看板を畑に掲げるなどして、反対の立場を表明している[48][47]

芳香成分

L. angustifolia(コモン・ラベンダー)の精油

リナロール、酢酸リナリルを主要成分とする[50]

他多数の成分からなる。

L. latifolia(スパイク・ラベンダー)の精油

リナロール、1,8-シネオール(ユーカリプトール)、カンファー(樟脳)を主要成分とする。他多数の成分からなる。

日本人とラベンダー

宇田川榕庵『舎密開宗』、蒸留装置
北海道、中富良野町のラベンダー畑

ヨーロッパでは伝統的に精油が医療に利用されていたため、西洋医学蘭方)が日本に伝わると、日本の医師や学者は西洋の薬用植物や精油、精油の蒸留法、利用法に興味を持ち、情報を集めて医療に利用した。ラベンダーは文政期に、宇田川玄真(榛斎)訳述・宇田川榕庵補校による西洋薬物書『遠西医方名物考』(1822年)及び補遺(1934年頃)に「ラーヘンデル」「ラーヘンデル油」の名で詳しい説明があり、以降江戸後期の翻訳書・蘭学書にもラベンダーや精油についての記述がある[6]。フランス語のlavande は、蘭学者の翻訳によりオランダ語のlavendel (ラーヘンデル)として紹介された。翻訳作業を通して蘭方薬(西洋薬)に使う生きた植物を輸入しようという機運が高まった。遠藤正治によると、大槻玄沢と宇田川玄真が幕府に申請したオランダからの輸入のリストにはラベンダーも含まれていたという[6]。1819年には花と精油が輸入され、万延元年(1860年)に遣米使節団によってもたらされた植物の種子には、ラベンダーの種子が含まれていた[6]。日本の香り文化を研究する吉武利文は、本草学者山本榕室に送られた種子の記録や、旗本で本草家の馬場資生圃(1785年 - 1868年)のラベンダーの絵などから、幕末期には一部ではあるが、精油が輸入され、栽培も行われていたと考えられる、と述べている[6]

ラベンダーの本格的な栽培・精油の蒸留は、1937年(昭和12年)に曽田香料株式会社の創業者・曽田政治が、フランスのアントワン・ヴィアル社からラバンデュラ・オフィキナリス(Lavandu la officinalis )の種子を入手したことに始まり、1942年(昭和17年)には日本最初のラベンダー油が採取されたといわれてきた[51]。しかし吉武利文は、株式会社永廣堂の沿革には、1935年に伊豆(富戸)でラベンダー油・ゼラニューム油(ゼラニウム油)の栽培・採油を開始したとあり、それ裏付ける1939年の資料もあるため、北海道より伊豆の方が少し早かった可能性もあると指摘している。戦時体制下であった当時、伊豆では国産香料の生産が目指され、クロモジやゼラニウムの蒸留の他に、ラベンダーも試験的に栽培・蒸留が行われていたが、第二次世界大戦が始まると食料増産のためラベンダーの生産はできなくなった。戦後は、伊豆では一部に残るのみとなった。曽田香料は戦中ラベンダーの原種苗を保存し、終戦後は契約による委託栽培を募り、富良野地方などでラベンダーの栽培・蒸留が広く行われた。しかし、1972年(昭和47年)頃から合成香料技術の進歩と輸入自由化の影響を受けて衰退した[51][52]

1960年代までは、ヨーロッパを旅する機会のない日本の一般大衆は、ラベンダーをほとんど知らなかった[要出典]。フランスではラベンダーの香り袋やラベンダー油を用いた製品がよく見られるため、フランスを旅したり滞在したことのある日本人は知る機会があった。日本が経済的に豊かになるにつれ海外旅行をする人が増え、ヨーロッパでラベンダー関連製品の香りを自身で体験し、興味を持つ人が増えた。

1975年に国鉄のカレンダーで北海道富良野のラベンダー畑が紹介され問い合わせが殺到し、観光資源として栽培されるようになった[51]。人気テレビドラマ『北の国から』(1981年 - 1982年)でもラベンダー畑が登場して話題となった。富良野のラベンダー畑は、夏の北海道旅行で立ち寄る場所の一種の「定番」となり、多くの日本人がラベンダーに親しむようになった。

筒井康隆の小説『時をかける少女』(1967年)やその映像化作品であるテレビドラマ『タイム・トラベラー』(1972年)、および原田知世主演・大林宣彦監督の映画『時をかける少女』(1983年)に、物語の鍵としてラベンダーの香りが登場した。それらの作品(特に1983年の映画)に接した人は、その名前と香りの特徴を知った[53]

ラベンダー色

HTMLカラーコード

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    lavender

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    lavenderblush

シンボリズム

ラベンダー色は同性愛者を象徴する色でもある。ピンク・トライアングルを参照。

出典・脚注

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  4. ^ レスリー・ブレムネス 著 『ハーブ事典 ハーブを知りつくすA to Z』 樋口あやこ 訳、文化出版社、1999年
  5. ^ a b c d e f g 日本放送出版協会 編集 『ハーブ&野菜 NHK趣味の園芸 新園芸相談』 日本放送出版協会、1992年
  6. ^ a b c d e f g 吉武利文 著 『香料植物 ものと人間の文化史 159』 法政大学出版局、2012年
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  16. ^ a b c いわれる便宜的な分類。 引用エラー: 無効な <ref> タグ; name "系"が異なる内容で複数回定義されています
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  23. ^ 引用元 Dr. William Thomas Fernie 著 Herbal Simples (Bristol Pub., 1895. ASIN: B0014W4WNE). この本の電子書籍 Google bookで読むことができる。 'By the Greeks the name Nardus is given to Lavender, from Naarda, a city of Syria near the Euphrates, and many persons call the plant "Nard." St. Mark mentions this as Spikenard, a thing of great value. In Pliny's time, blossoms of the Nardus sold for a hundred Roman denarii (or L.3 2s. 6d.) the pound. This Lavender or Nardus was called Asarum by the Romans, because it was not used in garlands or chaplets. It was formerly believed that the asp, a dangerous kind of viper, made Lavender its habitual place of abode, so that the plant had to be approached with great caution.'
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参考文献

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  • ビル・ローズ 著 『図説 世界史を変えた50の植物』 柴田譲治 翻訳、 原書房、2012年
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  • Tim Upson、Susyn Andrews 著 The Genus Lavandula. Timber Pr 2004年

関連項目

外部リンク