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|名称=ハマボウ
|名称=ハマボウ
|画像=[[画像:hibiscus_hamabo.jpg|230px]]
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|分類体系 =[[APG III]]
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|種='''ハマボウ''' ''H. hamabo''
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'''ハマボウ''''''浜朴'''あるいは'''黄槿'''、''Hibiscus hamabo''は[[アオイ科]]の落葉低木である。
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{{Commonscat|Talipariti hamabo}}
'''ハマボウ'''(浜朴<ref name="鈴木ほか2014">{{Harvnb|鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文|2014|p=97}}</ref>・黄槿<ref name="鈴木ほか2014"/>、[[学名]]: ''Hibiscus hamabo'')は、[[アオイ科]][[フヨウ属]]の落葉低木。[[西日本]]から韓国[[済州島]]、[[奄美大島]]まで分布し、内湾海岸に自生する[[塩生植物]]である。夏に黄色の花を咲かせる。方言呼称にはヒシテバナ([[鹿児島市]][[喜入町|喜入]])等がある<ref name="牧野">牧野富太郎, 2008. モンテンボク, オオハマボウ, ハマボウ, サキシマハマボウ, 新牧野日本植物図鑑, 437-439p. 北隆館 ISBN 9784832610002</ref><ref name="中西1985">{{Cite journal|和書|author=中西弘樹 |title=半マングローブ植物3種の分布と生態 |journal=日本生態学会誌 |ISSN=0021-5007 |publisher=日本生態学会 |year=1985 |volume=35 |issue=1 |pages=85-92 |naid=110001881757 |doi=10.18960/seitai.35.1_85 |url=https://doi.org/10.18960/seitai.35.1_85}}</ref><ref name="鹿児島2002">鹿児島の自然を記録する会, 2002. ハマボウ, 「川の生きもの図鑑」66p, 南方新社 ISBN 493137669X</ref>。


== 概要 ==
== 名称 ==
[[和名]]は「浜辺に生える[[ホオノキ]]」の意にとられ、[[漢字]]も「浜朴」と書くが、[[牧野富太郎]]は「ホウ」の意味を不明とし、「フヨウ」の転訛ではないかとしている。牧野はまた、もう一つの漢字名「黄槿」(黄色の[[ムクゲ]])も誤用であろうとしている<ref name="牧野" />。[[中国語|中国名]]は、海濱黃槿<ref name="YList"/>。
[[千葉県]]以西から[[奄美大島]]、[[朝鮮半島]]の海岸沿いや河口付近の[[干潟]]の陸側や湿地帯に生育する。樹高は3mほどになり、全体に細かい毛に覆われている。葉は先端が尖った楕円形で互生する。
伊豆の[[メヒルギ]]群生地にも混生しており、潮間帯での植生が[[マングローブ]]に類似することから、[[ハマジンチョウ]]、[[ハマナツメ]]などと並び[[マングローブ#半マングローブ|半マングローブ]]植物と呼ばれることもある。<ref>http://ci.nii.ac.jp/naid/110001881757/</ref>


== 分布と生育環境 ==
花期は7月から8月で、5cm程度の、中心が赤褐色の黄色い花を咲かせる。花弁は付け根から回旋して伸び、中心の赤褐色部は船のスクリューのように見える。花の形態は同属の[[ハイビスカス]]や[[ムクゲ]]や[[フヨウ]]に似る。現存する個体数は多く、栽培も広く行われているが、干潟の減少や海浜部の造成のため天然状態での生息地が年々狭まっている。[[大阪府]]では[[絶滅]]種とされており、他の多くの府県で[[レッドリスト]]の絶滅危惧種とされている。<ref>http://www.jpnrdb.com/search.php?mode=map&q=06030832876</ref>
分布域は、[[太平洋]]側では本州の[[神奈川県]]以西から[[九州]]の[[奄美大島]]<ref name="鈴木ほか2014"/>、[[日本海]]側では韓国[[済州島]]から[[長崎県]][[対馬]]、[[島根県]][[隠岐諸島]]以南、南限は[[奄美大島]]である。日本海側の北限は嘗て長崎県対馬市佐護、次いで[[山口県]][[萩市]]笠山とされてきたが、隠岐諸島の生息地発見で大きく更新された。群落が多いのは[[九州]]西部(長崎県から[[熊本県]])および[[紀伊半島]]([[和歌山県]]から[[三重県]])の[[リアス式海岸]]の入り江だが、他にも大群落が見られる河口や入り江は多い<ref name="中西1985" /><ref name="鹿児島2002" /><ref name="島根県2013">島根県環境生活部自然環境課, 2013. 改訂しまねレッドデータブック2013 植物編 -島根県の絶滅のおそれのある野生植物-, [http://www.pref.shimane.lg.jp/environment/nature/shizen/yasei/red-data/kaiteishimaneRDB2013plant.data/14ikansoku1rui.pdf 維管束植物 絶滅危惧I類], 56p.2014.1.8閲覧</ref>。


河口や内湾など、[[汽水域]]の潮間帯上部から潮上帯の砂地や砂泥地に根を下ろす<ref name="鈴木ほか2014"/>。塩分に強く、満潮時には根元が海水に浸る位置に生えるが、海水が届かない位置にも生える。[[ヨシ]]、[[シオクグ]]、[[ハマサジ]]、[[メヒルギ]]等、他の塩生植物とも混生する。人為的なものを除けば海岸から離れて生えることはほぼない。また荒波が打ち寄せる海岸にも見られない。[[マングローブ]]が発達しない九州以北では[[ハマジンチョウ]]、[[ハマナツメ]]などと並び特徴的な生態を示す木であり、「半マングローブ植物」とも呼ばれる<ref name="中西1985" />。
和名の浜朴は「浜辺に生える[[ホオノキ]]」、黄槿は「黄色い[[ムクゲ]]」のことである。

== 形態・生態 ==
落葉広葉樹の低木で、樹高は1 - 3[[メートル]] (m) ほどだが<ref name="鈴木ほか2014"/>、枝はよく分かれ、株の内側はうっそうと茂る。周囲に障害がない所ではしばしば横に広がり、直径5&nbsp;mほどになる。幹は灰白色から淡褐色で滑らかであるが、縦に浅く裂ける<ref name="鈴木ほか2014"/>。[[葉]]は枝に[[互生]]する。直径3 - 8[[センチメートル]] (cm) ほどの円に近いハート形で、やや厚く、縁に細かい[[鋸歯]]がある。葉の裏や細い枝には灰白色の細毛が密生する。秋から初冬には[[紅葉]]し、葉が赤や黄色に変色して落ちるが、実は翌春まで残ることも多い。根は深くないが、倒れてもすぐ発根する<ref name="中西1985" /><ref name="鹿児島2002" />。

花期は7 - 8月で、直径7&nbsp;cm程度の、中心が赤褐色の黄色い花を咲かせる。花の形態は同属の[[ハイビスカス]]、[[ムクゲ]]、[[フヨウ]]等に似る。5枚の[[花弁]]は付け根から回旋して伸び、中心の赤褐色部は船のスクリューのように見える。花は1日でしぼむが、大きな株は夏季に毎日次々と開花する<ref name="牧野" /><ref name="鹿児島2002" />。[[果実]]は[[蒴果]]で、褐色の毛が密生する<ref name="鈴木ほか2014"/>。秋には先端が尖った鶏卵形の実をつけ、中には長さ4 - 5[[ミリメートル]] (mm) の豆のような黒褐色の[[種子]]が十数個ほどできる。果実の基部には[[萼片]]と副萼片がつく<ref name="鈴木ほか2014"/>。冬木の枝先につく果実には種子が残っていることが多い<ref name="鈴木ほか2014"/>。種子は海水に浸っても死なずに浮遊し、海を通して分布を広げることができる<ref name="中西1985" /><ref name="鹿児島2002" />。

[[冬芽]]は[[裸芽]]で、枝と共に灰白色の[[星状毛]]があり、側芽が枝に互生する<ref name="鈴木ほか2014"/>。[[托葉]]痕は枝を一周する<ref name="鈴木ほか2014"/>。葉痕は半円形で、[[維管束]]痕が3個から数個ほど輪状に並ぶ<ref name="鈴木ほか2014"/>。

== 人間との関係 ==
木材は[[キクラゲ]][[原木栽培]]のホダ木に使われる。嘗ては木材を[[水中メガネ]]の枠に、皮の繊維を[[ロープ]]に利用した<ref name="鹿児島2002" />。[[園芸]]用に栽培されることもある。

=== 減少と保全 ===
現存する個体数は多く、栽培も行われているが、河川改修や海浜部造成のため、良好な群落は減少している。日本の[[環境省]]が作成した[[維管束植物レッドリスト (環境省)|維管束植物レッドリスト]]では2012年版に至るまで掲載されていないが、絶滅種、または絶滅危惧種に指定している府県は2014年現在で1府19県に達し、本種の動向が注目されている。このうち[[大阪府]]では[[絶滅]]したとされている他、嘗て日本海側の北限とされていた長崎県[[対馬市]]佐護の群落も河川改修で消滅した<ref name="中西2010">{{Cite journal|和書|author=中西弘樹 |title=ハマボウの保全の歴史と現状(保全情報) |journal=保全生態学研究 |ISSN=1342-4327 |publisher=日本生態学会 |year=2010 |volume=15 |issue=1 |pages=153-158 |naid=110007618303 |doi=10.18960/hozen.15.1_153 |url=https://hdl.handle.net/10069/23337}}</ref><ref name="中西2012">中西弘樹, 2012. [http://www.ows-npo.org/member/backno/tokushu45forWeb.pdf <特集>海岸植物の保全 ハマユウとハマボウを例にして], NPO法人OWS 会報「季刊エブオブ」No.45. 2014.1.8閲覧 {{リンク切れ|date=2022年2月}}</ref><ref name="jpnrdb2012">[http://www.jpnrdb.com/search.php?mode=map&q=06030832835日本のレッドデータ検索システム]. 2014.1.8閲覧</ref>。
* 絶滅(EX) - [[大阪府]]<ref name="大阪府">大阪府 環境農林水産部 みどり・都市環境室みどり推進課 自然環境グループ. [https://www.pref.osaka.lg.jp/attach/217/00020568/sizen%5B1%5D-104.pdf 大阪府レッドリスト(3)]107p. 2014.1.8閲覧</ref>
* 絶滅危惧I類(CR+EN) - [[千葉県]]<ref name="千葉">千葉県環境生活部自然保護課, 2009. 千葉県レッドデータブック [http://www.bdcchiba.jp/endangered/rdb-a/rdb-p/rdb-2009p-3.pdf -植物・菌類編(2009年改訂版)-]115p.2014.1.8閲覧</ref>、[[神奈川県]]<ref name="神奈川">神奈川県自然環境保全センター/[[神奈川県立生命の星・地球博物館]] [http://www.e-tanzawa.jp/rdb06/2_detail.asp?spc=1273 ハマボウ] 神奈川県レッドデータブック2006 WEB版. 2014.1.8閲覧</ref>、[[兵庫県]]<ref name="兵庫">兵庫県農政環境部環境創造局自然環境課, 2010. [http://www.pref.hyogo.jp/JPN/apr/hyogoshizen/reddata2010/rdb2010/data/ribenka/a/266_hamabou.pdf ハマボウ], 兵庫県版レッドデータブック2010(植物・植物群落). 2014.1.8閲覧</ref>、[[岡山県]]<ref name="岡山">岡山県環境文化部 自然環境課, 2009. 岡山県版レッドデータブック2009, [http://www.pref.okayama.jp/seikatsu/sizen/reddatabook/pdf/p140.pdf ラセンソウ、ハマボウ]. 2014.1.8閲覧</ref>、[[島根県]]<ref name="島根県2013" />、[[香川県]]<ref name="香川">香川県環境森林部 みどり保全課, 2004. [http://www.pref.kagawa.lg.jp/kankyo/shizen/rdb/data/rdb1085.htm ハマボウ], 香川県レッドデータブック. 2014.1.8閲覧</ref>、[[徳島県]]<ref name="徳島">徳島県県民環境部環境総局環境首都課, 2001. [http://www.pref.tokushima.jp/_files/00176712/tayousei-08a.pdf 維管束植物]285p. 徳島県版レッドデータブック(レッドリスト). 2014.1.8閲覧</ref>、[[高知県]]<ref name="高知">高知県林業振興・環境部環境共生課 [http://www.pref.kochi.lg.jp/uploaded/attachment/67507.pdf 高知県レッドリスト(植物編)2010年改訂版<カテゴリー別>]23p. 2014.1.8閲覧</ref>
* 絶滅危惧II類(VU) - [[愛知県]]<ref name="愛知">愛知県環境部自然環境課, 2009. [http://www.pref.aichi.jp/kankyo/sizen-ka/shizen/yasei/rdb/ikansoku/plants_388.pdf ハマボウ], 「レッドデータブックあいち2009」388p. 2014.1.8閲覧</ref>、[[三重県]]<ref name="三重">三重県環境森林部自然環境室 [http://www.eco.pref.mie.lg.jp/rdb/pages/asp/detail.asp?detailid=52 ハマボウ], 三重県レッドデータブック2005. 2014.1.8閲覧</ref>、[[山口県]]<ref name="山口">山口県野生生物保全対策検討委員会, 2002.[http://eco.pref.yamaguchi.jp/rdb/html/10/100382.html ハマボウ], レッドデータブックやまぐち. 2014.1.8閲覧</ref>、[[愛媛県]]<ref name="愛媛">愛媛県自然保護課生物多様性係, 2003.[http://www.pref.ehime.jp/030kenminkankyou/080shizenhogo/00004541040311/detail/09_06_008100_5.html ハマボウ], 愛媛県レッドデータブック. 2014.1.8閲覧</ref>、[[福岡県]]<ref name="福岡">福岡県自然環境課, 2011. [http://www.fihes.pref.fukuoka.jp/kankyo/rdb/rdbs/detail/201100569 ハマボウ], 福岡県レッドデータブック2011. 2014.1.8閲覧</ref>
* 準絶滅危惧(NT) - [[和歌山県]]<ref name="和歌山">和歌山県環境生活部環境政策局環境生活総務課, 2012. [http://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/032000/032500/reddate2012/documents/shokubutu.pdf 保全上重要なわかやまの自然-和歌山県レッドデータブック2012改訂版]320p. 20141.8閲覧</ref>、[[佐賀県]]<ref name="佐賀">佐賀県くらし環境本部有明海再生・自然環境課, 2010. [http://www.pref.saga.lg.jp/web/kurashi/_1262/_33058/_18433/rdb.html レッドデータブックさが2010]. 20141.8閲覧</ref>、[[長崎県]]<ref name="長崎">長崎県環境部自然環境課, 2011. 長崎県レッドリスト(2011), [https://www.pref.nagasaki.jp/shared/uploads/2013/07/1373430037.pdf 維管束植物(23.6.30修正版)]19p. 20141.8閲覧</ref>、[[大分県]]<ref name="大分">大分県生活環境部生活環境企画課, 2011. [https://www.pref.oita.jp/10550/reddata2011/02/ss434.html ハマボウ], レッドデータブックおおいた2011. 2014.1.8閲覧</ref>、[[宮崎県]]<ref name="宮崎">宮崎県環境森林部自然環境課, 2007. [http://www.pref.miyazaki.lg.jp/contents/org/kankyo/shizen/reddatabook/2007kaitei.html 宮崎県版レッドリスト(2007年改訂版)]. 2014.1.8閲覧</ref>、[[鹿児島県]]<ref name="jpnrdb2012" />

各自治体の条例により、[[天然記念物]]、または許可なき採集等を禁じた「希少野生動植物種」として指定される例もある<ref name="中西2010" />。
{|
|- valign=top
|
*神奈川県[[横須賀市]][[天神島]](県指定・1953年)
* [[静岡県]][[下田市]][[大賀茂川]]河口(市指定・1969年)
*愛知県[[田原市]]堀切(県指定・1955年)
*和歌山県[[御坊市]]塩屋(市指定・1980年)
*山口県[[萩市]]笠山(市指定・1997年)
|
*香川県[[土庄町]]小部(町指定・1968年)
*徳島県[[美波町]][[田井川 (田井ノ浜)|田井川]]河口(旧由岐町指定・1989年)
* 「[[希少野生動植物保護条例|長崎県未来につながる環境を守り育てる条例]]」が指定する「希少野生動植物種」(2009年)<ref name="長崎2013">長崎県環境部自然保護課, 2013. [http://www.pref.nagasaki.jp/shared/uploads/2013/07/1374554135.pdf 希少野生動植物種保存地地域の指定状況]. 2014.1.8閲覧</ref>
*鹿児島県[[薩摩川内市]][[川内川]]河口(旧川内市指定・2000年)<ref name="鹿児島2002" />
*鹿児島県[[南さつま市]][[万之瀬川]]河口(国指定・2008年)
|}

===市町村のシンボル指定===
シンボルとして指定する市町村もある<ref name="中西2010" />。
*徳島県[[鳴門市]]の花(1983年)
*和歌山県御坊市の花木(1994年)
*福岡県[[糸島市]]の花(2011年)<ref name="糸島市">福岡県糸島市経営企画課, 2011.[http://www.city.itoshima.lg.jp/soshiki/6/itoshima-hanakiiro.html 糸島市「市の木、市の花、シンボルカラー」が決まりました]. 2014.2.12閲覧</ref>
*長崎県[[西海市]]の花木(2009年)
* [[熊本県]][[天草市]]の花(2009年)


==類似種==
==類似種==
; [[オオハマボウ]] ''H. tiliaceus'' [[カール・フォン・リンネ|L.]]
[[屋久島]]以南には近縁の[[オオハマボウ]](''H. tiliaceus'')があり、やはり海岸沿いに出現する。また、別属であるが[[サキシマハマボウ]](''Thespesia populnea'' (L.))も海岸性で、[[琉球諸島]]から熱帯アジア一帯に分布する。いずれも黄色の大輪の花をつける。
:[[屋久島]]・[[種子島]]以南の[[南西諸島]]、および[[小笠原諸島]]の海岸に生える。高さ4-12mに達する高木で、葉も10-15cmほどと大きい<ref name="牧野" />。
; [[モンテンボク]](テリハハマボウ、テリハノハマボウ) ''H. glaber'' (Matsum. ex Hatt.)Matsum. ex Nakai
:小笠原諸島の[[固有種]]。高さ10m、時に15mに達する高木。別名に「テリハ(照葉)」とある通り、葉に光沢がある。海岸ではなく山の斜面に生える。花はやや小さい<ref name="牧野" />。
; [[サキシマハマボウ]] ''Thespesia populnea'' (L. ) Sol ex Correa
:別属だが、海岸性で黄色の花をつける点ではハマボウ等に似ている。[[琉球諸島]]から熱帯アジア一帯に分布する<ref name="牧野" />。


== 脚注 ==
== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
<references/>
{{Reflist|30em}}

== 参考文献 ==
* {{Cite book|和書|author =鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文|title =樹皮と冬芽:四季を通じて樹木を観察する 431種|date=2014-10-10|publisher =[[誠文堂新光社]]|series=ネイチャーウォチングガイドブック|isbn=978-4-416-61438-9|page =97|ref=harv}}


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[[Category:アオイ科]]
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[[vi:Hibiscus hamabo]]

2024年8月21日 (水) 14:14時点における最新版

ハマボウ
ハマボウの花(静岡県南伊豆町・2007年7月)
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : コア真正双子葉類 Core eudicots
階級なし : バラ類 Rosids
階級なし : アオイ類 Malvids
: アオイ目 Malvales
: アオイ科 Malvaceae
亜科 : アオイ亜科 Malvoideae
: フヨウ属 Hibiscus
: ハマボウ H. hamabo
学名
Hibiscus hamabo Siebold et Zucc. (1841)[1]
シノニム
和名
ハマボウ(浜朴、黄槿)

ハマボウ(浜朴[3]・黄槿[3]学名: Hibiscus hamabo)は、アオイ科フヨウ属の落葉低木。西日本から韓国済州島奄美大島まで分布し、内湾海岸に自生する塩生植物である。夏に黄色の花を咲かせる。方言呼称にはヒシテバナ(鹿児島市喜入)等がある[4][5][6]

名称

[編集]

和名は「浜辺に生えるホオノキ」の意にとられ、漢字も「浜朴」と書くが、牧野富太郎は「ホウ」の意味を不明とし、「フヨウ」の転訛ではないかとしている。牧野はまた、もう一つの漢字名「黄槿」(黄色のムクゲ)も誤用であろうとしている[4]中国名は、海濱黃槿[1]

分布と生育環境

[編集]

分布域は、太平洋側では本州の神奈川県以西から九州奄美大島[3]日本海側では韓国済州島から長崎県対馬島根県隠岐諸島以南、南限は奄美大島である。日本海側の北限は嘗て長崎県対馬市佐護、次いで山口県萩市笠山とされてきたが、隠岐諸島の生息地発見で大きく更新された。群落が多いのは九州西部(長崎県から熊本県)および紀伊半島和歌山県から三重県)のリアス式海岸の入り江だが、他にも大群落が見られる河口や入り江は多い[5][6][7]

河口や内湾など、汽水域の潮間帯上部から潮上帯の砂地や砂泥地に根を下ろす[3]。塩分に強く、満潮時には根元が海水に浸る位置に生えるが、海水が届かない位置にも生える。ヨシシオクグハマサジメヒルギ等、他の塩生植物とも混生する。人為的なものを除けば海岸から離れて生えることはほぼない。また荒波が打ち寄せる海岸にも見られない。マングローブが発達しない九州以北ではハマジンチョウハマナツメなどと並び特徴的な生態を示す木であり、「半マングローブ植物」とも呼ばれる[5]

形態・生態

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落葉広葉樹の低木で、樹高は1 - 3メートル (m) ほどだが[3]、枝はよく分かれ、株の内側はうっそうと茂る。周囲に障害がない所ではしばしば横に広がり、直径5 mほどになる。幹は灰白色から淡褐色で滑らかであるが、縦に浅く裂ける[3]は枝に互生する。直径3 - 8センチメートル (cm) ほどの円に近いハート形で、やや厚く、縁に細かい鋸歯がある。葉の裏や細い枝には灰白色の細毛が密生する。秋から初冬には紅葉し、葉が赤や黄色に変色して落ちるが、実は翌春まで残ることも多い。根は深くないが、倒れてもすぐ発根する[5][6]

花期は7 - 8月で、直径7 cm程度の、中心が赤褐色の黄色い花を咲かせる。花の形態は同属のハイビスカスムクゲフヨウ等に似る。5枚の花弁は付け根から回旋して伸び、中心の赤褐色部は船のスクリューのように見える。花は1日でしぼむが、大きな株は夏季に毎日次々と開花する[4][6]果実蒴果で、褐色の毛が密生する[3]。秋には先端が尖った鶏卵形の実をつけ、中には長さ4 - 5ミリメートル (mm) の豆のような黒褐色の種子が十数個ほどできる。果実の基部には萼片と副萼片がつく[3]。冬木の枝先につく果実には種子が残っていることが多い[3]。種子は海水に浸っても死なずに浮遊し、海を通して分布を広げることができる[5][6]

冬芽裸芽で、枝と共に灰白色の星状毛があり、側芽が枝に互生する[3]托葉痕は枝を一周する[3]。葉痕は半円形で、維管束痕が3個から数個ほど輪状に並ぶ[3]

人間との関係

[編集]

木材はキクラゲ原木栽培のホダ木に使われる。嘗ては木材を水中メガネの枠に、皮の繊維をロープに利用した[6]園芸用に栽培されることもある。

減少と保全

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現存する個体数は多く、栽培も行われているが、河川改修や海浜部造成のため、良好な群落は減少している。日本の環境省が作成した維管束植物レッドリストでは2012年版に至るまで掲載されていないが、絶滅種、または絶滅危惧種に指定している府県は2014年現在で1府19県に達し、本種の動向が注目されている。このうち大阪府では絶滅したとされている他、嘗て日本海側の北限とされていた長崎県対馬市佐護の群落も河川改修で消滅した[8][9][10]

各自治体の条例により、天然記念物、または許可なき採集等を禁じた「希少野生動植物種」として指定される例もある[8]

市町村のシンボル指定

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シンボルとして指定する市町村もある[8]

類似種

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オオハマボウ H. tiliaceus L.
屋久島種子島以南の南西諸島、および小笠原諸島の海岸に生える。高さ4-12mに達する高木で、葉も10-15cmほどと大きい[4]
モンテンボク(テリハハマボウ、テリハノハマボウ) H. glaber (Matsum. ex Hatt.)Matsum. ex Nakai
小笠原諸島の固有種。高さ10m、時に15mに達する高木。別名に「テリハ(照葉)」とある通り、葉に光沢がある。海岸ではなく山の斜面に生える。花はやや小さい[4]
サキシマハマボウ Thespesia populnea (L. ) Sol ex Correa
別属だが、海岸性で黄色の花をつける点ではハマボウ等に似ている。琉球諸島から熱帯アジア一帯に分布する[4]

脚注

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  1. ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Hibiscus hamabo Siebold et Zucc. ハマボウ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年3月24日閲覧。
  2. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Talipariti hamabo (Siebold et Zucc.) Fryxell ハマボウ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年3月24日閲覧。
  3. ^ a b c d e f g h i j k l 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2014, p. 97
  4. ^ a b c d e f 牧野富太郎, 2008. モンテンボク, オオハマボウ, ハマボウ, サキシマハマボウ, 新牧野日本植物図鑑, 437-439p. 北隆館 ISBN 9784832610002
  5. ^ a b c d e 中西弘樹「半マングローブ植物3種の分布と生態」『日本生態学会誌』第35巻第1号、日本生態学会、1985年、85-92頁、doi:10.18960/seitai.35.1_85ISSN 0021-5007NAID 110001881757 
  6. ^ a b c d e f g 鹿児島の自然を記録する会, 2002. ハマボウ, 「川の生きもの図鑑」66p, 南方新社 ISBN 493137669X
  7. ^ a b 島根県環境生活部自然環境課, 2013. 改訂しまねレッドデータブック2013 植物編 -島根県の絶滅のおそれのある野生植物-, 維管束植物 絶滅危惧I類, 56p.2014.1.8閲覧
  8. ^ a b c 中西弘樹「ハマボウの保全の歴史と現状(保全情報)」『保全生態学研究』第15巻第1号、日本生態学会、2010年、153-158頁、doi:10.18960/hozen.15.1_153ISSN 1342-4327NAID 110007618303 
  9. ^ 中西弘樹, 2012. <特集>海岸植物の保全 ハマユウとハマボウを例にして, NPO法人OWS 会報「季刊エブオブ」No.45. 2014.1.8閲覧 [リンク切れ]
  10. ^ a b [1]. 2014.1.8閲覧
  11. ^ 大阪府 環境農林水産部 みどり・都市環境室みどり推進課 自然環境グループ. 大阪府レッドリスト(3)107p. 2014.1.8閲覧
  12. ^ 千葉県環境生活部自然保護課, 2009. 千葉県レッドデータブック -植物・菌類編(2009年改訂版)-115p.2014.1.8閲覧
  13. ^ 神奈川県自然環境保全センター/神奈川県立生命の星・地球博物館 ハマボウ 神奈川県レッドデータブック2006 WEB版. 2014.1.8閲覧
  14. ^ 兵庫県農政環境部環境創造局自然環境課, 2010. ハマボウ, 兵庫県版レッドデータブック2010(植物・植物群落). 2014.1.8閲覧
  15. ^ 岡山県環境文化部 自然環境課, 2009. 岡山県版レッドデータブック2009, ラセンソウ、ハマボウ. 2014.1.8閲覧
  16. ^ 香川県環境森林部 みどり保全課, 2004. ハマボウ, 香川県レッドデータブック. 2014.1.8閲覧
  17. ^ 徳島県県民環境部環境総局環境首都課, 2001. 維管束植物285p. 徳島県版レッドデータブック(レッドリスト). 2014.1.8閲覧
  18. ^ 高知県林業振興・環境部環境共生課 高知県レッドリスト(植物編)2010年改訂版<カテゴリー別>23p. 2014.1.8閲覧
  19. ^ 愛知県環境部自然環境課, 2009. ハマボウ, 「レッドデータブックあいち2009」388p. 2014.1.8閲覧
  20. ^ 三重県環境森林部自然環境室 ハマボウ, 三重県レッドデータブック2005. 2014.1.8閲覧
  21. ^ 山口県野生生物保全対策検討委員会, 2002.ハマボウ, レッドデータブックやまぐち. 2014.1.8閲覧
  22. ^ 愛媛県自然保護課生物多様性係, 2003.ハマボウ, 愛媛県レッドデータブック. 2014.1.8閲覧
  23. ^ 福岡県自然環境課, 2011. ハマボウ, 福岡県レッドデータブック2011. 2014.1.8閲覧
  24. ^ 和歌山県環境生活部環境政策局環境生活総務課, 2012. 保全上重要なわかやまの自然-和歌山県レッドデータブック2012改訂版320p. 20141.8閲覧
  25. ^ 佐賀県くらし環境本部有明海再生・自然環境課, 2010. レッドデータブックさが2010. 20141.8閲覧
  26. ^ 長崎県環境部自然環境課, 2011. 長崎県レッドリスト(2011), 維管束植物(23.6.30修正版)19p. 20141.8閲覧
  27. ^ 大分県生活環境部生活環境企画課, 2011. ハマボウ, レッドデータブックおおいた2011. 2014.1.8閲覧
  28. ^ 宮崎県環境森林部自然環境課, 2007. 宮崎県版レッドリスト(2007年改訂版). 2014.1.8閲覧
  29. ^ 長崎県環境部自然保護課, 2013. 希少野生動植物種保存地地域の指定状況. 2014.1.8閲覧
  30. ^ 福岡県糸島市経営企画課, 2011.糸島市「市の木、市の花、シンボルカラー」が決まりました. 2014.2.12閲覧

参考文献

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  • 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽:四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年10月10日、97頁。ISBN 978-4-416-61438-9