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「京王クヤ900形電車」の版間の差分

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{{鉄道車両
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|車両名=京王クヤ900形電車
[[ファイル:Keio911DAX.jpg|thumb|240px|クヤ900(総合高速検測車「DAX」)]]
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'''京王クヤ900形電車'''(けいおうクヤ900かたでんしゃ)は、[[京王電鉄]][[京王線]]系統の[[事業用車]]([[試験車|総合検測車]])であり、[[架線]]と[[軌道 (鉄道)|軌道]]の動的検測機能を有している。
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'''DAX'''の[[鉄道の車両愛称|愛称]]を持ち、車体側面には「'''D'''ynamic '''A'''nalytical e'''X'''press」の大きな[[ロゴタイプ|ロゴ]]がある。ちなみに、日本語では「動的に/動きながら分析できる高速列車」となる。
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'''京王クヤ900形電車'''(けいおうクヤ900かたでんしゃ)は、[[2007年]]([[平成]]19年)に1両が製造された<ref name="年鑑2008p245"/> [[京王電鉄]][[京王線]]の[[架線]]及び[[軌道 (鉄道)|軌道]]検測用の[[事業用車]]である<ref name="年鑑2008p129"/><ref name="年鑑2009p115"/>。電動貨車編成に組み込まれ、営業列車と同じ速度で走行しながら架線、軌道の測定をおこなうことができ<ref name="年鑑2009p142"/>、「'''D'''ynamic '''A'''nalytical e'''X'''press」を略した'''DAX'''の[[鉄道の車両愛称|愛称]]がつけられている<ref name="年鑑2009p143"/>。


== 概要 ==
== 概要 ==
京王電鉄では、軌道と架線の検測は夜間に線路閉鎖を行ったうえ、[[モーターカー]]で検測車を牽引して行っていたが、速度が15 [[キロメートル毎時|km/h]]以下と遅いことから静的な測定しか行えなかったうえ、列車の動揺測定は別途営業列車に動揺試験機を搭載して行う必要があった<ref name="年鑑2009p142"/>。測定精度の向上のため、電動貨車編成中に組み込んで営業列車と同じ速度で検測が行えるよう<ref name="年鑑2009p142"/>、[[京王8000系電車|8000系]]と同様の[[ステンレス鋼|ステンレス]]車体に[[レーザー]]を使用した非接触式の測定器を搭載し<ref name="年鑑2009p143"/>、レーザー基準器を搭載する部分の床は高い剛性が求められることから二重床構造となっている<ref name="年鑑2009p142"/>。「'''D'''ynamic '''A'''nalytical e'''X'''press」を略した'''DAX'''の[[鉄道の車両愛称|愛称]]がつけられた<ref name="年鑑2009p143"/>。形式番号は当時最新鋭だった[[京王9000系電車|9000系]]のイメージをもたせるため900番台とし、下2桁は登場時編成を組んでいたデワ600形で使用されていなかった11をつかって911とされた<ref name="年鑑2009p143"/>。2ヶ月に1回、電動貨車編成に組み込まれて2日かけて京王線全線を検測している<ref name="年鑑2009p145"/>。登場時は[[京王6000系電車|デワ600形]]と編成を組んでいた<ref name="年鑑2009p142"/>が、[[2016年]](平成28年)以降は[[京王デヤ901・902形電車|デヤ901・デヤ902形]]と編成を組むよう変更される予定である<ref name="RF657p58"/>。
従来、軌道の状態は接触式測定器を装備した検測車を軌道[[モーターカー]]で夜間牽引して測定し、軌道の狂いによる列車の動揺は動揺試験機を列車に搭載して測定していた。一方[[架線|トロリ線]]を主体とした検査は、夜間に[[軌陸車]]を使用して検測していたが、検測速度が約15km/hと低速での静的解析であった。

架線と軌道の動的検測を実施することを目的として[[2008年]]に入線した。本形式の導入により、従来は夜間別々に、かつ静的にしか実施できなかった検測を、通常の列車と同じ速度で動的に実施することが可能になった。


== 車体 ==
== 車体 ==
[[ファイル:Keio kuya911 20081107.jpg|thumb|240px|構内入換時のみ、先頭に立つこともある]]
[[ファイル:Keio kuya911 20081107.jpg|thumb|240px|構内入換時のみ、先頭に立つこともある]]
車体は8000系と同様の構造のステンレス製とされたが、外板はビードレスとなった<ref name="年鑑2009p143"/>。構内[[入換 (鉄道)|入換]]の便を図るため、車体両端に[[操縦席|運転室]]が設けられ、運転室には乗務員の乗降用の開戸が設けられた<ref name="年鑑2009p143"/>。運転台機器はコストダウンと牽引車デワ600形との共通化のため6000系の廃車発生品が利用され、使用していない時はカバーで覆われ施錠されている<ref name="年鑑2009p143"/>。車体側面にはカラー帯と「DAX」のロゴが配され、構内運転時の視認性向上のため妻面にも側面同様の帯が巻かれている<ref name="年鑑2009p143"/>。側面には機材搬入用の扉が各側面に1箇所設けられたが、高さを二重床基準としたため、扉下辺の位置が高い<ref name="年鑑2009p143"/>。側面には作業机付近に片側につき4枚窓が設けられ、うち各2枚は下降式で開閉させることが出来る<ref name="年鑑2009p145"/>。レーザー基準器を搭載する部分の床は高い剛性が求められることから二重床構造となっている<ref name="年鑑2009p142"/>。
車体は[[ステンレス鋼]]製で車体長19.5m、[[新宿駅|新宿]]側・[[京王八王子駅|京王八王子]]側の双方に[[京王6000系電車|6000系]]から流用した運転台が設けられているが、あくまで構内入換用のため[[鉄道車両のモニタ装置#京王電鉄|TNS]](トレインナビゲーション装置)は搭載されていないなど、最低限のものになっている。[[鉄道のブレーキ|ブレーキ装置]]は[[電気指令式ブレーキ|電気指令式]]のHRD-1が採用された。

妻面上部には[[前照灯]]、[[尾灯]]が設けられ、スペースの制約から[[ワイパー]]も窓上に設けられた<ref name="年鑑2009p143"/>。妻面には編成を組む電動貨車との行き来のために扉が設けられ<ref name="年鑑2009p145"/>、扉両側には車両間の移動時に利用できるよう手すりが設けられている<ref name="年鑑2009p143"/>。

==走行機器==
===台車===
検測装置搭載のため、軸箱支持方式が9000系の軸梁式から円筒積層ゴム式に変更された東急車輛製TS-1035モノリンク式ボルスタレス台車が採用された<ref name="年鑑2009p145"/>。

===ブレーキ装置・保安装置===
ブレーキ装置は将来牽引車が変更されることを想定し、[[京王7000系電車|7000系]]付随車と同様の[[ナブテスコ]]製電気指令式空気ブレーキ装置(HRD-1)が採用された<ref name="年鑑2009p143"/>。車輪にフラットが発生すると計測に支障するため、[[フラット防止装置]]が設けられた<ref name="年鑑2009p144"/>。京王では車両基地構内にも[[自動列車停止装置|ATS]]が設置されているため、構内運転用の運転台にもATSが設置され、製造時に[[自動列車制御装置|ATC]]の導入が想定されていたため、ATC導入の準備がほどこされた<ref name="年鑑2009p144"/>。速度信号は連結される電動貨車の動力台車から得たものをジャンパ栓経由で受信している<ref name="年鑑2009p144"/>。床下にATS車上子を設置するスペースがないため、[[鉄道車両の台車|台車]]枠にATS車上子が設置された<ref name="年鑑2009p144"/>。
===空調装置・電源装置===
屋根上に8000系と同じ出力 64.0 k[[ワット|W]](55,000 k[[カロリー|cal]]/h)の[[エア・コンディショナー|冷房装置]]が搭載された<ref name="年鑑2009p144"/>。検測中は牽引車とは別に空調を制御できるよう新宿寄り運転台仕切壁背面に司令器が設置されている<ref name="年鑑2009p144"/>。暖房装置は作業スペース確保のため温風ヒーター式とされ、860 Wのもの6台が搭載された<ref name="年鑑2009p144"/>。空調、照明、検測装置などの電源は牽引車から[[交流]]200 Vの供給を受けるが、検測装置のメンテナンスなどの際には地上から交流200 Vを受電できるようになっており、両者が同時に供給された場合は車両側電源を優先するよう保護回路が設けられている<ref name="年鑑2009p144"/>。


==検測装置==
総合検測車としての目的のため、同社の営業車両では採用されなかった方式が各種採用されていることが大きな特徴である。京王八王子側に搭載されている架線検測用[[集電装置|パンタグラフ]]には同社初の下枠交差形が採用された。また、[[鉄道車両の台車|台車]]は[[京王9000系電車|9000系]]以来京王線の標準となっている軸梁支持方式ではなく、軸箱の円弧運動の抑制とレール検出器の搭載を目的に円筒積層ゴム支持方式が採用された。
測定精度の向上のため、電動貨車編成中に組み込んで営業列車と同じ速度で検測が行えるよう、各種機器が搭載されている<ref name="年鑑2009p142"/>。室内に検測機器用の電源装置、制御装置、計測用装置、高圧室が、二重床部分にはレーザー基準装置や動揺加速度計が搭載されている<ref name="年鑑2009p145"/>。台車に光式のレール測定装置が設置され、屋根上には検測用[[集電装置|パンタグラフ]]、投光器、観測用カメラなどが設けられた。パンタグラフは京王で唯一の下枠交差形PT-9001が採用され、検測時のみ上昇させている<ref name="年鑑2009p145"/>。


== 編成・運用 ==
床面は従来の床面とさらに275mm上にも歩行用の床面を設け、その二重床構造間に車体のたわみを補正する基準となる[[レーザー]]光を車体全長に通している。車内に搭載している測定機器の冷却のため、[[京王8000系電車|8000系]]と同等の[[エア・コンディショナー|冷房装置]]を屋根上に搭載している。
形式番号は当時最新鋭だった[[京王9000系電車|9000系]]のイメージをもたせるため900番台とし、下2桁は登場時編成を組んでいたデワ600形で使用されていなかった11をつかって911とされた<ref name="年鑑2009p143"/>。検測時はデワ600形編成中、デワ601とデワ621の間に組み込まれる<ref name="年鑑2009p143"/>。2007年(平成19年)11月に竣工した後、翌[[2008年]](平成20年)3月末まで試験及び調整を行い、2008年4月から稼働している<ref name="年鑑2009p145"/>。2ヶ月に1回、電動貨車編成に組み込まれて2日かけて京王線全線を検測している<ref name="年鑑2009p145"/>。登場時はデワ600形と編成を組んでいた<ref name="年鑑2009p142"/>が、[[2016年]](平成28年)以降はデヤ901・デヤ902形と編成を組むよう変更される予定である<ref name="RF657p58"/>。運転室は構内運転用であり、クヤ900形が営業線上で先頭に出ることはない<ref name="年鑑2009p143"/>。
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==脚注==
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===出典===
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[[制御車]]ではあるものの、運転台はあくまで構内のみの使用を目的にしており、同車が本線上で先頭に立つことはなく、同じ事業用車である[[京王6000系電車#事業用車デワ600形|デワ600形電車]]のデワ601とデワ621の中間に連結されて検測が行われる。
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<ref name="年鑑2009p187">[[#年鑑2009諸元|『鉄道車両年鑑2009年版』p187]]</ref>


<ref name="RF657p58">[[#RF657|『鉄道ファン』通巻657号p58]]</ref>
== 関連項目 ==
}}
* [[小田急クヤ31形検測電車|小田急クヤ31形検測電車「TECHNO-INSPECTOR」]] - 製造時期が近いため、検測方式など類似点が多い。


==参考文献==
*『[[鉄道ピクトリアル]]』通巻810号「鉄道車両年鑑2008年版」(2008年10月・電気車研究会)
**{{Cite journal ja-jp|和書|author=岸上 明彦|year=|month=|title=2007年度民鉄車両動向|journal=|issue=|pages= 122-151|publisher=|ref = 年鑑2008動向}}
**{{Cite journal ja-jp|和書|author=|year=|month=|title=各社別新造・改造・廃車一覧|journal=|issue=|pages= 242-255|publisher=|ref = 年鑑2008一覧}}
*『鉄道ピクトリアル』通巻825号「鉄道車両年鑑2009年版」(2009年10月・電気車研究会)
**{{Cite journal ja-jp|和書|author=岸上 明彦|year=|month=|title=2008年度民鉄車両動向|journal=|issue=|pages= 108-134|publisher=|ref = 年鑑2009動向}}
**{{Cite journal ja-jp|和書|author=京王電鉄(株)鉄道事業本部車両電気部車両課 落合伸晃|year=|month=|title=京王電鉄 クヤ900形(軌道架線総合高速検測車)|journal=|issue=|pages= 142-145|publisher=|ref = 年鑑2009}}
**{{Cite journal ja-jp|和書|author=|year=|month=|title=民鉄車両諸元表|journal=|issue=|pages= 187-189|publisher=|ref = 年鑑2009諸元}}
*『[[鉄道ファン (雑誌)|鉄道ファン]]』通巻657号(2016年1月・[[交友社]])
**{{Cite journal ja-jp|和書|author= |year=|month=|title=CAR INFO 京王電鉄デヤ901形・デヤ902形|journal=|issue=|pages= 56-58|publisher=|ref = RF657}}
{{京王電鉄の車両}}
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[[Category:京王電鉄の電車|900]]
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[[Category:2008年製の鉄道車両|けいおう電クヤ900]]
[[Category:2007年製の鉄道車両|けいおう電クヤ900]]
[[Category:東急車輛製造製の電車|けいおうくや900]]
[[Category:東急車輛製造製の電車|けいおうくや900]]

2015年12月18日 (金) 13:21時点における版

京王クヤ900形電車
クヤ900(総合高速検測車「DAX」)
(2008年5月11日 高幡不動駅
基本情報
製造所 東急車輛製造 [1]
主要諸元
軌間 1,372[2]
電気方式 直流1,500 V
設計最高速度 120[4]
自重 33.2 トン[3]
全長 20,100[2]
車体長 19,500[2]
全幅 2,800[3]
車体幅 2,770[2]
全高 4,045[2]
車体 ステンレス [4]
制動装置 全電気指令式空気ブレーキ [3]
保安装置 京王形ATS [5]
備考 製造時のデータ
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京王クヤ900形電車(けいおうクヤ900かたでんしゃ)は、2007年平成19年)に1両が製造された[1] 京王電鉄京王線架線及び軌道検測用の事業用車である[6][7]。電動貨車編成に組み込まれ、営業列車と同じ速度で走行しながら架線、軌道の測定をおこなうことができ[8]、「Dynamic Analytical eXpress」を略したDAX愛称がつけられている[4]

概要

京王電鉄では、軌道と架線の検測は夜間に線路閉鎖を行ったうえ、モーターカーで検測車を牽引して行っていたが、速度が15 km/h以下と遅いことから静的な測定しか行えなかったうえ、列車の動揺測定は別途営業列車に動揺試験機を搭載して行う必要があった[8]。測定精度の向上のため、電動貨車編成中に組み込んで営業列車と同じ速度で検測が行えるよう[8]8000系と同様のステンレス車体にレーザーを使用した非接触式の測定器を搭載し[4]、レーザー基準器を搭載する部分の床は高い剛性が求められることから二重床構造となっている[8]。「Dynamic Analytical eXpress」を略したDAX愛称がつけられた[4]。形式番号は当時最新鋭だった9000系のイメージをもたせるため900番台とし、下2桁は登場時編成を組んでいたデワ600形で使用されていなかった11をつかって911とされた[4]。2ヶ月に1回、電動貨車編成に組み込まれて2日かけて京王線全線を検測している[2]。登場時はデワ600形と編成を組んでいた[8]が、2016年(平成28年)以降はデヤ901・デヤ902形と編成を組むよう変更される予定である[9]

車体

構内入換時のみ、先頭に立つこともある

車体は8000系と同様の構造のステンレス製とされたが、外板はビードレスとなった[4]。構内入換の便を図るため、車体両端に運転室が設けられ、運転室には乗務員の乗降用の開戸が設けられた[4]。運転台機器はコストダウンと牽引車デワ600形との共通化のため6000系の廃車発生品が利用され、使用していない時はカバーで覆われ施錠されている[4]。車体側面にはカラー帯と「DAX」のロゴが配され、構内運転時の視認性向上のため妻面にも側面同様の帯が巻かれている[4]。側面には機材搬入用の扉が各側面に1箇所設けられたが、高さを二重床基準としたため、扉下辺の位置が高い[4]。側面には作業机付近に片側につき4枚窓が設けられ、うち各2枚は下降式で開閉させることが出来る[2]。レーザー基準器を搭載する部分の床は高い剛性が求められることから二重床構造となっている[8]

妻面上部には前照灯尾灯が設けられ、スペースの制約からワイパーも窓上に設けられた[4]。妻面には編成を組む電動貨車との行き来のために扉が設けられ[2]、扉両側には車両間の移動時に利用できるよう手すりが設けられている[4]

走行機器

台車

検測装置搭載のため、軸箱支持方式が9000系の軸梁式から円筒積層ゴム式に変更された東急車輛製TS-1035モノリンク式ボルスタレス台車が採用された[2]

ブレーキ装置・保安装置

ブレーキ装置は将来牽引車が変更されることを想定し、7000系付随車と同様のナブテスコ製電気指令式空気ブレーキ装置(HRD-1)が採用された[4]。車輪にフラットが発生すると計測に支障するため、フラット防止装置が設けられた[5]。京王では車両基地構内にもATSが設置されているため、構内運転用の運転台にもATSが設置され、製造時にATCの導入が想定されていたため、ATC導入の準備がほどこされた[5]。速度信号は連結される電動貨車の動力台車から得たものをジャンパ栓経由で受信している[5]。床下にATS車上子を設置するスペースがないため、台車枠にATS車上子が設置された[5]

空調装置・電源装置

屋根上に8000系と同じ出力 64.0 kW(55,000 kcal/h)の冷房装置が搭載された[5]。検測中は牽引車とは別に空調を制御できるよう新宿寄り運転台仕切壁背面に司令器が設置されている[5]。暖房装置は作業スペース確保のため温風ヒーター式とされ、860 Wのもの6台が搭載された[5]。空調、照明、検測装置などの電源は牽引車から交流200 Vの供給を受けるが、検測装置のメンテナンスなどの際には地上から交流200 Vを受電できるようになっており、両者が同時に供給された場合は車両側電源を優先するよう保護回路が設けられている[5]

検測装置

測定精度の向上のため、電動貨車編成中に組み込んで営業列車と同じ速度で検測が行えるよう、各種機器が搭載されている[8]。室内に検測機器用の電源装置、制御装置、計測用装置、高圧室が、二重床部分にはレーザー基準装置や動揺加速度計が搭載されている[2]。台車に光式のレール測定装置が設置され、屋根上には検測用パンタグラフ、投光器、観測用カメラなどが設けられた。パンタグラフは京王で唯一の下枠交差形PT-9001が採用され、検測時のみ上昇させている[2]

編成・運用

形式番号は当時最新鋭だった9000系のイメージをもたせるため900番台とし、下2桁は登場時編成を組んでいたデワ600形で使用されていなかった11をつかって911とされた[4]。検測時はデワ600形編成中、デワ601とデワ621の間に組み込まれる[4]。2007年(平成19年)11月に竣工した後、翌2008年(平成20年)3月末まで試験及び調整を行い、2008年4月から稼働している[2]。2ヶ月に1回、電動貨車編成に組み込まれて2日かけて京王線全線を検測している[2]。登場時はデワ600形と編成を組んでいた[8]が、2016年(平成28年)以降はデヤ901・デヤ902形と編成を組むよう変更される予定である[9]。運転室は構内運転用であり、クヤ900形が営業線上で先頭に出ることはない[4]

 
新宿
形式 デワ600 クヤ900 デワ600 デワ600
車両番号 601 911 621 631

脚注

出典

参考文献

  • 鉄道ピクトリアル』通巻810号「鉄道車両年鑑2008年版」(2008年10月・電気車研究会)
    • 岸上 明彦「2007年度民鉄車両動向」 pp. 122-151
    • 「各社別新造・改造・廃車一覧」 pp. 242-255
  • 『鉄道ピクトリアル』通巻825号「鉄道車両年鑑2009年版」(2009年10月・電気車研究会)
    • 岸上 明彦「2008年度民鉄車両動向」 pp. 108-134
    • 京王電鉄(株)鉄道事業本部車両電気部車両課 落合伸晃「京王電鉄 クヤ900形(軌道架線総合高速検測車)」 pp. 142-145
    • 「民鉄車両諸元表」 pp. 187-189
  • 鉄道ファン』通巻657号(2016年1月・交友社
    • 「CAR INFO 京王電鉄デヤ901形・デヤ902形」 pp. 56-58