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「バリウム」の版間の差分

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アルカリ土類金属としては密度が大きく重いため、[[ギリシャ語]]で「重い」を意味する {{lang|el|βαρύς}} (barys) にちなんで命名された。「重晶石」のように、日本語でも「重」はバリウムを指すことがある。(ただし、比重は約3.5であるので[[軽金属]]に分類される)
アルカリ土類金属としては密度が大きく重いため、[[ギリシャ語]]で「重い」を意味する {{lang|el|βαρύς}} (barys) にちなんで命名された。「重晶石」のように、日本語でも「重」はバリウムを指すことがある。(ただし、比重は約3.5であるので[[軽金属]]に分類される)


== 単体の性質 ==
== 性質 ==
=== 物理的性質 ===
[[密度]]3.51 g/cm<sup>3</sup> (20 {{℃}})、[[融点]]729 {{℃}}、[[沸点]]1898 {{℃}}(1気圧)<ref>国立天文台 編, 『理科年表 第79冊』, p367 & 391, 丸善, 2005.</ref>。常温、常圧で安定な結晶構造は、体心立方構造 (BCC)。化学的性質は[[カルシウム]]、[[ストロンチウム]]に似るが、さらに反応性が高く、水と激しく反応する。
バリウムは[[鉛]]と同程度に柔らかく銀白色の外観を有する[[アルカリ土類金属]]である。[[金属光沢]]を有しているが、空気中では徐々に酸化されて白色の酸化被膜に覆われるため金属光沢は失われる<ref name=chitani193/>。[[密度]]3.51 g/cm<sup>3</sup> (20 {{℃}})、[[融点]]729 {{℃}}、[[沸点]]1898 {{℃}}(1気圧)<ref>国立天文台 編, 『理科年表 第79冊』, p367 & 391, 丸善, 2005.</ref>。密度が3.51 g/cm<sup>3</sup>と低いため[[軽金属]]に分類される<ref name=chitani193>[[#千谷1959|千谷 (1959)]] 193頁。</ref>。常温、常圧で安定な結晶構造は体心立方構造 (BCC)であり、その[[格子定数]]aは5.01である<ref name=chitani199>[[#千谷1959|千谷 (1959)]] 199頁。</ref>。

[[炎色反応]]においてバリウムは黄緑色の炎色を呈する<ref>[[#千谷1959|千谷 (1959)]] 198頁。</ref>。主要な輝線は524.2 nmおよび513.7 nmの緑色の[[スペクトル線]]であり、それらは双子線を示すアルカリ金属元素の輝線とは対照的に単線を示す<ref name=chitani199/>。

=== 化学的性質 ===
バリウムの化学的性質は[[カルシウム]]や[[ストロンチウム]]に類似しているものの、アルカリ土類金属元素の[[電気陰性度]]は原子番号が大きくなるにつれて小さく傾向があるため、バリウムはカルシウムやストロンチウムよりもさらに反応性が高い<ref>[[#千谷1959|千谷 (1959)]] 194頁。</ref>。このアルカリ土類金属元素の持つ性質の連続的な変化によって、バリウムの塩は他のアルカリ土類金属の塩と比較して水和しやすく、水に対する溶解度が低く、熱的安定性が優れているという性質を有している<ref name=CW267>[[#CW1987|コットン、ウィルキンソン (1987)]] 267頁。</ref>。2価のバリウムイオンの化学的性質は[[ユウロピウム]]や[[サマリウム]]、[[イッテルビウム]]イオンなど2価の希土類イオンと類似しており、バリウム鉱石中にこれらの元素が含まれていることがある<ref name=CW268>[[#CW1987|コットン、ウィルキンソン (1987)]] 268頁。</ref>。バリウムイオンは可視領域にスペクトルを持たないためバリウム化合物は全て無色であり、バリウム化合物の着色はアニオン側の持つ色や構造の欠陥に起因して生じたものである<ref name=CW277/>。

バリウムの電溶圧は[[水素]]よりも大きいため水と激しく反応して水素を発生させ、アルコールとも同様に激しく反応する<ref>[[#千谷1959|千谷 (1959)]] 195頁。</ref>。
:Ba + 2H<sub>2</sub>O → Ba(OH)<sub>2</sub> + H<sub>2</sub>
バリウムは空気中で徐々に酸化されて白色の酸化バリウムを形成し、この酸化物もまた水と激しく反応して水酸化バリウムとなる。水酸化バリウムはアルカリ土類金属の水酸化物の中では水に対する溶解度が高く強塩基性である<ref>[[#千谷1959|千谷 (1959)]] 196頁。</ref>。バリウムは高温で炭素と直接反応してイオン性アセチリドである炭化バリウムを生成する。この炭化物は加水分解によって[[アセチレン]]を発生させる。また、[[ホウ素]]、[[ケイ素]]、[[ヒ素]]、[[硫黄]]などとも直接反応してイオン性の化合物を形成するが、これらの化合物もまた容易に加水分解を受ける。オキソ酸とも反応して硫酸バリウムや硝酸バリウムのような化合物を形成し、それらの化合物は水に対する溶解性が低い<ref name=CW278>[[#CW1987|コットン、ウィルキンソン (1987)]] 278頁。</ref>。

バリウムの[[過塩素酸]]塩は[[ジエチレントリアミン]]によって[[錯体]]を形成するが、安定に存在できるのは固体常態のみであり溶液中では容易に解離する<ref>[[#CW1987|コットン、ウィルキンソン (1987)]] 279頁。</ref>。また、[[クラウンエーテル]]とも錯体を形成する<ref>[[#CW1987|コットン、ウィルキンソン (1987)]] 281頁。</ref>。バリウムは液体[[アンモニア]]に溶解して青色の溶液となり、ここからアンモニアを除去することでバリウムのアンミン錯体を得ることができる<ref name=CW277>[[#CW1987|コットン、ウィルキンソン (1987)]] 277頁。</ref>。

バリウムは[[アルミニウム]]、[[亜鉛]]、鉛および[[スズ]]を含むいくつかの金属と結合し、[[合金]]および[[金属間化合物]]を形成する<ref name=Ullmann>Robert Kresse, Ulrich Baudis, Paul Jäger, H. Hermann Riechers, Heinz Wagner, Jochen Winkler, Hans Uwe Wolf, "Barium and Barium Compounds" in Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, 2007 Wiley-VCH, Weinheim. {{DOI|10.1002/14356007.a03_325.pub2}}</ref>。

=== 同位体 ===
{{main|バリウムの同位体}}
自然より産出するバリウムは7つの同位体の混合物であり、[[天然存在比]]が最大のものは<sup>138</sup>Baの71.7 %である。バリウムは22の同位体が知られているが、それらのほとんどは[[半減期]]が数ミリ秒から数日の高い[[放射能]]を持つ放射性同位体である。例外として、10.51年という比較的長い半減期を持つ<sup>133</sup>Baがある<ref>{{cite book| author = David R. Lide, Norman E. Holden|title =CRC Handbook of Chemistry and Physics, 85th Edition| publisher = CRC Press|location = Boca Raton, Florida|year =2005| chapter = Section 11, Table of the Isotopes}}</ref>。<sup>133</sup>Baは原子物理学の研究におけるガンマ線探知機などにおいて校正用の標準線源として用いられる<ref>{{Cite web|title=標準線源 (09-04-03-02)|url=http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_No=09-04-03-02|publisher=高度情報科学技術研究機構 原子力百科事典|accessdate=2012-01-15}}</ref>。

== 歴史 ==
[[File:CWScheele.jpg|thumb|left|バリウムの発見者であるカール・ヴィルヘルム・シェーレ]]
バリウムの名称は、[[ギリシャ語]]で「重い」を意味する{{lang|el|βαρύς}} (barys)に由来しており、それは一般的なバリウムを含む鉱石が高密度であることを表している。中世初期の錬金術師たちはいくつかのバリウム鉱石を知っており、[[イタリア]]の[[ボローニャ]]で見つけられた滑らかな小石様の[[重晶石]]鉱石は「ボローニャの石」として知られていた。その石に光を照射するとその後輝き続ける(つまり[[蛍光]]を示す)ことから、魔女や錬金術師たちはこの石に魅力を感じていた<ref name=history>{{cite book| page = 80| url = http://books.google.com/?id=yb9xTj72vNAC| title = The history and use of our earth's chemical elements: a reference guide| author = Robert E. Krebs| publisher = Greenwood Publishing Group| year = 2006| isbn = 0313334382}}</ref>。

1774年、[[スウェーデン]]の[[カール・ヴィルヘルム・シェーレ]]が[[軟マンガン鉱]]に新しい元素が含まれていることを発見したが、その鉱石からバリウムを分離することは出来なかった。[[ヨハン・ゴットリーブ・ガーン]]もまた類似した研究を行い、シェーレによるバリウムの発見から2年後に[[酸化バリウム]]として鉱石から分離することに成功した。酸化バリウムは初め{{仮リンク|ルイ=ベルナール・ギュイトン・ド・モルヴォー|en|Louis-Bernard Guyton de Morveau}}によってbaroteと呼ばれており、[[アントワーヌ・ラヴォアジエ]]によってバリタ (baryta)と改名された。また、18世紀にはイギリスの鉱物学者である[[ウィリアム・ウィザリング]]も[[カンバーランド]]の鉛鉱山で産出する重い鉱石([[炭酸バリウム]]の鉱石である{{仮リンク|毒重石|en|Witherite}})について言及していた。1808年、イギリスの[[ハンフリー・デービー]]がバリウム塩の溶融塩電解によってバリウムの単体を初めて単離した<ref>Davy, H. (1808) "[http://books.google.com/books?id=gpwEAAAAYAAJ&pg=102#v=onepage&q&f=false Electro-chemical researches on the decomposition of the earths; with observations on the metals obtained from the alkaline earths, and on the amalgam procured from ammonia]," ''Philosophical Transactions of the Royal Society of London'', vol. 98, pages 333-370.</ref>。デービーは類似した性質を示す[[カルシウム]]の命名法に準じて{{#tag:ref|デービーは石灰を意味する「calcsis」の語尾に「-ium」を付けてカルシウムと命名した<ref>{{cite book|和書|title=元素を知る事典: 先端材料への入門|author=村上雅人|year=2004|page=102|publisher=海鳴社|isbn=487525220X}}</ref>。|group="注釈"}}、酸化バリウムを表すバリタ (baryta)の後ろに金属元素を意味する接尾語である「-ium」を付けてバリウム (barium)名付けた<ref name=history/>。[[ローベルト・ブンゼン]]および{{仮リンク|アウグストゥス・マーティセン|en|Augustus Matthiessen}}は、塩化バリウムと[[塩化アンモニウム]]の混合物を溶融させて電気分解を行うことによって純粋なバリウムを得た<ref>{{cite journal | doi = 10.1002/jlac.18550930301 | title = Masthead | year = 1855 | journal = Annalen der Chemie und Pharmacie | volume = 93 | issue = 3 | pages = fmi–fmi}}</ref><ref>{{cite journal | doi =10.1002/prac.18560670194 | title =Notizen | year =1856 | last1 =Wagner | first1 =Rud. | last2 =Neubauer | first2 =C. | last3 =Deville | first3 =H. Sainte-Claire | last4 =Sorel | last5 =Wagenmann | first5 =L. | last6 =Techniker | last7 =Girard | first7 =Aimé | journal =Journal für Praktische Chemie | volume =67 | pages =490–508}}</ref>。

電気分解および液体空気の分留が有意な酸素の生産方法として確立される以前は、過酸化バリウムを用いて純粋な酸素を生産する{{仮リンク|ブリン法|en|Brin process}}がバリウムの大規模な用途であった。これは、酸化バリウムを空気中で500から600度で熱して過酸化バリウムとし、この過酸化バリウムを700℃以上で熱することによって純粋な酸素を得るという方法である<ref>{{cite journal | last1 = Jensen | first1 = William B. | title = The Origin of the Brin Process for the Manufacture of Oxygen | journal = Journal of Chemical Education | volume = 86 | pages = 1266 | year = 2009 | doi = 10.1021/ed086p1266 | issue = 11 |bibcode = 2009JChEd..86.1266J }}</ref><ref>{{cite book | url = http://books.google.de/books?id=34KwmkU4LG0C&pg=PA681 | page = 681 | title = The development of modern chemistry | isbn = 9780486642352 | author1 = Ihde, Aaron John | date = 1984-04-01}}</ref>。
:2 BaO + O<sub>2</sub> ⇌ 2 BaO<sub>2</sub>

== 存在 ==
バリウムの宇宙全体の平均濃度の推定値は重量濃度で10 ppb、[[太陽]]における推定濃度も10 ppbである<ref>{{citation |url=http://www.webelements.com/barium/geology.html|title=Barium: geological information|work=Mark Winter, The University of Sheffield and WebElements Ltd, UK |publisher=WebElements |accessdate=2012-01-15}}</ref>。[[地殻]]においては比較的豊富に存在しており、その存在量は4.25×10<sup>2</sup> mg/kgである。また、海水中には1.3×10<sup>-2</sup> mg/L含まれる<ref>{{Cite web|title=The Element Barium|url=http://education.jlab.org/itselemental/ele056.html|publisher=Jefferson Lab.|accessdate=2012-01-15}}</ref>。地殻中において[[重晶石]](硫酸塩)や毒重石(炭酸塩)のような鉱物として存在している<ref name=Ullmann/>。毒重石の鉱石は、例えば北イングランドの{{仮リンク|ニューボロー|en|Newbrough}}近辺のセッティングストーンズ鉱山<ref>{{cite web | url = http://www.rock-site.co.uk/EZ/rs/rs/page151.php | title = Alston Moor Cumbria, UK| publisher = Steetley Minerals|accessdate=2012-01-15}}</ref>などにおいて17世紀から1969年までの間採掘されてきたが<ref>{{cite book | url = http://books.google.com/?id=JjEmAQAAIAAJ&dq=Settlingstones+Witherite+Mine&q=Settlingstones+#search_anchor | page = 28 | title = Industrial minerals | year = 1969}}</ref> 、現在はほとんど全てのバリウムは重晶石として採掘されている。重晶石の大きな鉱床は[[中国]]、[[ドイツ]]、[[インド]]、[[モロッコ]]および[[アメリカ]]で発見されており<ref name="CRC">{{cite book| author = C. R. Hammond |title = The Elements, in Handbook of Chemistry and Physics 81st edition| publisher =CRC press| year = 2000| isbn = 0849304814}}</ref>、2005年における確認埋蔵量は重晶石ベースで74,500万トンである<ref>{{Cite web|url=http://www.tohoku.meti.go.jp/2008/kankyo/recycle/date/30.pdf|title=2.30 バリウム(Ba)|publisher=[[経済産業省]] 東北経済産業局|accessdate=2012-01-15}}</ref>。バリウムを含む[[宝石]]としては濃い青色を示す[[ベニト石]](ベニトアイト)があり、[[カリフォルニア州]]の[[サンベニト郡 (カリフォルニア州)|サン・ベニト]]で産出する<ref>{{Cite book|title=宝石の写真図鑑 (地球自然ハンドブック) |author=キャリー・ホール|year=1996|publisher=日本ヴォーグ社|page=80|isbn=4529026914}}</ref>。


== 用途 ==
== 用途 ==
111行目: 141行目:


代表的な[[高温超伝導]]体である[[イットリウム系超伝導体]]の1成分として用いられる。また、BaZrO<sub>3</sub> は、バリウムを含む高温超伝導体を製造する時の[[るつぼ]]として用いられる。これは、溶融酸化バリウムと反応しないためである。溶融酸化バリウムは反応性が高いために他の材料ではるつぼの素材がとけてしまうからである。
代表的な[[高温超伝導]]体である[[イットリウム系超伝導体]]の1成分として用いられる。また、BaZrO<sub>3</sub> は、バリウムを含む高温超伝導体を製造する時の[[るつぼ]]として用いられる。これは、溶融酸化バリウムと反応しないためである。溶融酸化バリウムは反応性が高いために他の材料ではるつぼの素材がとけてしまうからである。

== 歴史 ==
1774年に[[スウェーデン]]の[[カール・ヴィルヘルム・シェーレ]]が[[軟マンガン鉱]]から発見。1808年に[[ハンフリー・デービー]]によって単体として取り出された。


== 法規制 ==
== 法規制 ==
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* [[フェライト (磁性材料)#六方晶フェライト|バリウムフェライト]] (BaFe<sub>12</sub>O<sub>19</sub>) - [[フェライト磁石]]として使われる。
* [[フェライト (磁性材料)#六方晶フェライト|バリウムフェライト]] (BaFe<sub>12</sub>O<sub>19</sub>) - [[フェライト磁石]]として使われる。


== 同位体 ==
==注釈==
{{reflist|group=注釈}}
{{main|バリウムの同位体}}

== 出典 ==
{{reflist}}


== 参考文献 ==
== 参考文献 ==
* {{cite book|和書|author=F.A. コットン, G. ウィルキンソン|others=中原 勝儼|title=コットン・ウィルキンソン無機化学(上)|publisher=培風館|year=1987|edition=原書第4版|isbn=4563041920|ref=CW1987}}
{{Reflist}}
* {{Cite book|和書|author=千谷利三|year=1959|title=新版 無機化学(上巻)|publisher=産業図書|ref=千谷1959}}


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==

2012年1月15日 (日) 14:42時点における版

セシウム バリウム ランタン
Sr

Ba

Ra
Element 1: 水素 (H),
Element 2: ヘリウム (He),
Element 3: リチウム (Li),
Element 4: ベリリウム (Be),
Element 5: ホウ素 (B),
Element 6: 炭素 (C),
Element 7: 窒素 (N),
Element 8: 酸素 (O),
Element 9: フッ素 (F),
Element 10: ネオン (Ne),
Element 11: ナトリウム (Na),
Element 12: マグネシウム (Mg),
Element 13: アルミニウム (Al),
Element 14: ケイ素 (Si),
Element 15: リン (P),
Element 16: 硫黄 (S),
Element 17: 塩素 (Cl),
Element 18: アルゴン (Ar),
Element 19: カリウム (K),
Element 20: カルシウム (Ca),
Element 21: スカンジウム (Sc),
Element 22: チタン (Ti),
Element 23: バナジウム (V),
Element 24: クロム (Cr),
Element 25: マンガン (Mn),
Element 26: 鉄 (Fe),
Element 27: コバルト (Co),
Element 28: ニッケル (Ni),
Element 29: 銅 (Cu),
Element 30: 亜鉛 (Zn),
Element 31: ガリウム (Ga),
Element 32: ゲルマニウム (Ge),
Element 33: ヒ素 (As),
Element 34: セレン (Se),
Element 35: 臭素 (Br),
Element 36: クリプトン (Kr),
Element 37: ルビジウム (Rb),
Element 38: ストロンチウム (Sr),
Element 39: イットリウム (Y),
Element 40: ジルコニウム (Zr),
Element 41: ニオブ (Nb),
Element 42: モリブデン (Mo),
Element 43: テクネチウム (Tc),
Element 44: ルテニウム (Ru),
Element 45: ロジウム (Rh),
Element 46: パラジウム (Pd),
Element 47: 銀 (Ag),
Element 48: カドミウム (Cd),
Element 49: インジウム (In),
Element 50: スズ (Sn),
Element 51: アンチモン (Sb),
Element 52: テルル (Te),
Element 53: ヨウ素 (I),
Element 54: キセノン (Xe),
Element 55: セシウム (Cs),
Element 56: バリウム (Ba),
Element 57: ランタン (La),
Element 58: セリウム (Ce),
Element 59: プラセオジム (Pr),
Element 60: ネオジム (Nd),
Element 61: プロメチウム (Pm),
Element 62: サマリウム (Sm),
Element 63: ユウロピウム (Eu),
Element 64: ガドリニウム (Gd),
Element 65: テルビウム (Tb),
Element 66: ジスプロシウム (Dy),
Element 67: ホルミウム (Ho),
Element 68: エルビウム (Er),
Element 69: ツリウム (Tm),
Element 70: イッテルビウム (Yb),
Element 71: ルテチウム (Lu),
Element 72: ハフニウム (Hf),
Element 73: タンタル (Ta),
Element 74: タングステン (W),
Element 75: レニウム (Re),
Element 76: オスミウム (Os),
Element 77: イリジウム (Ir),
Element 78: 白金 (Pt),
Element 79: 金 (Au),
Element 80: 水銀 (Hg),
Element 81: タリウム (Tl),
Element 82: 鉛 (Pb),
Element 83: ビスマス (Bi),
Element 84: ポロニウム (Po),
Element 85: アスタチン (At),
Element 86: ラドン (Rn),
Element 87: フランシウム (Fr),
Element 88: ラジウム (Ra),
Element 89: アクチニウム (Ac),
Element 90: トリウム (Th),
Element 91: プロトアクチニウム (Pa),
Element 92: ウラン (U),
Element 93: ネプツニウム (Np),
Element 94: プルトニウム (Pu),
Element 95: アメリシウム (Am),
Element 96: キュリウム (Cm),
Element 97: バークリウム (Bk),
Element 98: カリホルニウム (Cf),
Element 99: アインスタイニウム (Es),
Element 100: フェルミウム (Fm),
Element 101: メンデレビウム (Md),
Element 102: ノーベリウム (No),
Element 103: ローレンシウム (Lr),
Element 104: ラザホージウム (Rf),
Element 105: ドブニウム (Db),
Element 106: シーボーギウム (Sg),
Element 107: ボーリウム (Bh),
Element 108: ハッシウム (Hs),
Element 109: マイトネリウム (Mt),
Element 110: ダームスタチウム (Ds),
Element 111: レントゲニウム (Rg),
Element 112: コペルニシウム (Cn),
Element 113: ニホニウム (Nh),
Element 114: フレロビウム (Fl),
Element 115: モスコビウム (Mc),
Element 116: リバモリウム (Lv),
Element 117: テネシン (Ts),
Element 118: オガネソン (Og),
56Ba
外見
銀白色
一般特性
名称, 記号, 番号 バリウム, Ba, 56
分類 アルカリ土類金属
, 周期, ブロック 2, 6, s
原子量 137.33
電子配置 [Xe] 6s2
電子殻 2, 8, 18, 18, 8, 2(画像
物理特性
固体
密度室温付近) 3.51 g/cm3
融点での液体密度 3.338 g/cm3
融点 1000 K, 727 °C, 1341 °F
沸点 2170 K, 1897 °C, 3447 °F
融解熱 7.12 kJ/mol
蒸発熱 140.3 kJ/mol
熱容量 (25 °C) 28.07 J/(mol·K)
蒸気圧
圧力 (Pa) 1 10 100 1 k 10 k 100 k
温度 (K) 911 1038 1185 1388 1686 2170
原子特性
酸化数 2
(強塩基性酸化物)
電気陰性度 0.89(ポーリングの値)
イオン化エネルギー 第1: 502.9 kJ/mol
第2: 965.2 kJ/mol
第3: 3600 kJ/mol
原子半径 222 pm
共有結合半径 215 ± 11 pm
ファンデルワールス半径 268 pm
その他
結晶構造 体心立方
磁性 常磁性
電気抵抗率 (20 °C) 332 nΩ⋅m
熱伝導率 (300 K) 18.4 W/(m⋅K)
熱膨張率 (25 °C) 20.6 μm/(m⋅K)
音の伝わる速さ
(微細ロッド)
(20 °C) 1620 m/s
ヤング率 13 GPa
剛性率 4.9 GPa
体積弾性率 9.6 GPa
モース硬度 1.25
CAS登録番号 7440-39-3
主な同位体
詳細はバリウムの同位体を参照
同位体 NA 半減期 DM DE (MeV) DP
130Ba 0.106 % 中性子74個で安定
132Ba 0.101 % 中性子76個で安定
133Ba syn 10.51 y ε 0.517 133Cs
134Ba 2.417 % 中性子78個で安定
135Ba 6.592 % 中性子79個で安定
136Ba 7.854 % 中性子80個で安定
137Ba 11.23 % 中性子81個で安定
138Ba 71.7 % 中性子82個で安定

バリウム (: barium) は、原子番号 56 の元素元素記号Baアルカリ土類金属のひとつで、単体では銀白色の軟らかい金属。重晶石硫酸バリウム)、毒重石炭酸バリウム)などの鉱石として産出する。

アルカリ土類金属としては密度が大きく重いため、ギリシャ語で「重い」を意味する βαρύς (barys) にちなんで命名された。「重晶石」のように、日本語でも「重」はバリウムを指すことがある。(ただし、比重は約3.5であるので軽金属に分類される)

性質

物理的性質

バリウムはと同程度に柔らかく銀白色の外観を有するアルカリ土類金属である。金属光沢を有しているが、空気中では徐々に酸化されて白色の酸化被膜に覆われるため金属光沢は失われる[1]密度3.51 g/cm3 (20 °C)、融点729 °C沸点1898 °C(1気圧)[2]。密度が3.51 g/cm3と低いため軽金属に分類される[1]。常温、常圧で安定な結晶構造は体心立方構造 (BCC)であり、その格子定数aは5.01である[3]

炎色反応においてバリウムは黄緑色の炎色を呈する[4]。主要な輝線は524.2 nmおよび513.7 nmの緑色のスペクトル線であり、それらは双子線を示すアルカリ金属元素の輝線とは対照的に単線を示す[3]

化学的性質

バリウムの化学的性質はカルシウムストロンチウムに類似しているものの、アルカリ土類金属元素の電気陰性度は原子番号が大きくなるにつれて小さく傾向があるため、バリウムはカルシウムやストロンチウムよりもさらに反応性が高い[5]。このアルカリ土類金属元素の持つ性質の連続的な変化によって、バリウムの塩は他のアルカリ土類金属の塩と比較して水和しやすく、水に対する溶解度が低く、熱的安定性が優れているという性質を有している[6]。2価のバリウムイオンの化学的性質はユウロピウムサマリウムイッテルビウムイオンなど2価の希土類イオンと類似しており、バリウム鉱石中にこれらの元素が含まれていることがある[7]。バリウムイオンは可視領域にスペクトルを持たないためバリウム化合物は全て無色であり、バリウム化合物の着色はアニオン側の持つ色や構造の欠陥に起因して生じたものである[8]

バリウムの電溶圧は水素よりも大きいため水と激しく反応して水素を発生させ、アルコールとも同様に激しく反応する[9]

Ba + 2H2O → Ba(OH)2 + H2

バリウムは空気中で徐々に酸化されて白色の酸化バリウムを形成し、この酸化物もまた水と激しく反応して水酸化バリウムとなる。水酸化バリウムはアルカリ土類金属の水酸化物の中では水に対する溶解度が高く強塩基性である[10]。バリウムは高温で炭素と直接反応してイオン性アセチリドである炭化バリウムを生成する。この炭化物は加水分解によってアセチレンを発生させる。また、ホウ素ケイ素ヒ素硫黄などとも直接反応してイオン性の化合物を形成するが、これらの化合物もまた容易に加水分解を受ける。オキソ酸とも反応して硫酸バリウムや硝酸バリウムのような化合物を形成し、それらの化合物は水に対する溶解性が低い[11]

バリウムの過塩素酸塩はジエチレントリアミンによって錯体を形成するが、安定に存在できるのは固体常態のみであり溶液中では容易に解離する[12]。また、クラウンエーテルとも錯体を形成する[13]。バリウムは液体アンモニアに溶解して青色の溶液となり、ここからアンモニアを除去することでバリウムのアンミン錯体を得ることができる[8]

バリウムはアルミニウム亜鉛、鉛およびスズを含むいくつかの金属と結合し、合金および金属間化合物を形成する[14]

同位体

自然より産出するバリウムは7つの同位体の混合物であり、天然存在比が最大のものは138Baの71.7 %である。バリウムは22の同位体が知られているが、それらのほとんどは半減期が数ミリ秒から数日の高い放射能を持つ放射性同位体である。例外として、10.51年という比較的長い半減期を持つ133Baがある[15]133Baは原子物理学の研究におけるガンマ線探知機などにおいて校正用の標準線源として用いられる[16]

歴史

バリウムの発見者であるカール・ヴィルヘルム・シェーレ

バリウムの名称は、ギリシャ語で「重い」を意味するβαρύς (barys)に由来しており、それは一般的なバリウムを含む鉱石が高密度であることを表している。中世初期の錬金術師たちはいくつかのバリウム鉱石を知っており、イタリアボローニャで見つけられた滑らかな小石様の重晶石鉱石は「ボローニャの石」として知られていた。その石に光を照射するとその後輝き続ける(つまり蛍光を示す)ことから、魔女や錬金術師たちはこの石に魅力を感じていた[17]

1774年、スウェーデンカール・ヴィルヘルム・シェーレ軟マンガン鉱に新しい元素が含まれていることを発見したが、その鉱石からバリウムを分離することは出来なかった。ヨハン・ゴットリーブ・ガーンもまた類似した研究を行い、シェーレによるバリウムの発見から2年後に酸化バリウムとして鉱石から分離することに成功した。酸化バリウムは初めルイ=ベルナール・ギュイトン・ド・モルヴォーによってbaroteと呼ばれており、アントワーヌ・ラヴォアジエによってバリタ (baryta)と改名された。また、18世紀にはイギリスの鉱物学者であるウィリアム・ウィザリングカンバーランドの鉛鉱山で産出する重い鉱石(炭酸バリウムの鉱石である毒重石英語版)について言及していた。1808年、イギリスのハンフリー・デービーがバリウム塩の溶融塩電解によってバリウムの単体を初めて単離した[18]。デービーは類似した性質を示すカルシウムの命名法に準じて[注釈 1]、酸化バリウムを表すバリタ (baryta)の後ろに金属元素を意味する接尾語である「-ium」を付けてバリウム (barium)名付けた[17]ローベルト・ブンゼンおよびアウグストゥス・マーティセン英語版は、塩化バリウムと塩化アンモニウムの混合物を溶融させて電気分解を行うことによって純粋なバリウムを得た[20][21]

電気分解および液体空気の分留が有意な酸素の生産方法として確立される以前は、過酸化バリウムを用いて純粋な酸素を生産するブリン法英語版がバリウムの大規模な用途であった。これは、酸化バリウムを空気中で500から600度で熱して過酸化バリウムとし、この過酸化バリウムを700℃以上で熱することによって純粋な酸素を得るという方法である[22][23]

2 BaO + O2 ⇌ 2 BaO2

存在

バリウムの宇宙全体の平均濃度の推定値は重量濃度で10 ppb、太陽における推定濃度も10 ppbである[24]地殻においては比較的豊富に存在しており、その存在量は4.25×102 mg/kgである。また、海水中には1.3×10-2 mg/L含まれる[25]。地殻中において重晶石(硫酸塩)や毒重石(炭酸塩)のような鉱物として存在している[14]。毒重石の鉱石は、例えば北イングランドのニューボロー英語版近辺のセッティングストーンズ鉱山[26]などにおいて17世紀から1969年までの間採掘されてきたが[27] 、現在はほとんど全てのバリウムは重晶石として採掘されている。重晶石の大きな鉱床は中国ドイツインドモロッコおよびアメリカで発見されており[28]、2005年における確認埋蔵量は重晶石ベースで74,500万トンである[29]。バリウムを含む宝石としては濃い青色を示すベニト石(ベニトアイト)があり、カリフォルニア州サン・ベニトで産出する[30]

用途

造影剤として食道を造影したレントゲン写真

レントゲン造影剤として硫酸バリウムが使用される。硫酸バリウム以外のバリウム塩有毒なものが多い。

炎色反応では緑色になるため、花火などにも使われる。

代表的な高温超伝導体であるイットリウム系超伝導体の1成分として用いられる。また、BaZrO3 は、バリウムを含む高温超伝導体を製造する時のるつぼとして用いられる。これは、溶融酸化バリウムと反応しないためである。溶融酸化バリウムは反応性が高いために他の材料ではるつぼの素材がとけてしまうからである。

法規制

日本では毒物及び劇物取締法により硫酸バリウム以外のバリウム化合物は劇物に指定されている。

バリウムの化合物

注釈

  1. ^ デービーは石灰を意味する「calcsis」の語尾に「-ium」を付けてカルシウムと命名した[19]

出典

  1. ^ a b 千谷 (1959) 193頁。
  2. ^ 国立天文台 編, 『理科年表 第79冊』, p367 & 391, 丸善, 2005.
  3. ^ a b 千谷 (1959) 199頁。
  4. ^ 千谷 (1959) 198頁。
  5. ^ 千谷 (1959) 194頁。
  6. ^ コットン、ウィルキンソン (1987) 267頁。
  7. ^ コットン、ウィルキンソン (1987) 268頁。
  8. ^ a b コットン、ウィルキンソン (1987) 277頁。
  9. ^ 千谷 (1959) 195頁。
  10. ^ 千谷 (1959) 196頁。
  11. ^ コットン、ウィルキンソン (1987) 278頁。
  12. ^ コットン、ウィルキンソン (1987) 279頁。
  13. ^ コットン、ウィルキンソン (1987) 281頁。
  14. ^ a b Robert Kresse, Ulrich Baudis, Paul Jäger, H. Hermann Riechers, Heinz Wagner, Jochen Winkler, Hans Uwe Wolf, "Barium and Barium Compounds" in Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, 2007 Wiley-VCH, Weinheim. doi:10.1002/14356007.a03_325.pub2
  15. ^ David R. Lide, Norman E. Holden (2005). “Section 11, Table of the Isotopes”. CRC Handbook of Chemistry and Physics, 85th Edition. Boca Raton, Florida: CRC Press 
  16. ^ 標準線源 (09-04-03-02)”. 高度情報科学技術研究機構 原子力百科事典. 2012年1月15日閲覧。
  17. ^ a b Robert E. Krebs (2006). The history and use of our earth's chemical elements: a reference guide. Greenwood Publishing Group. p. 80. ISBN 0313334382. http://books.google.com/?id=yb9xTj72vNAC 
  18. ^ Davy, H. (1808) "Electro-chemical researches on the decomposition of the earths; with observations on the metals obtained from the alkaline earths, and on the amalgam procured from ammonia," Philosophical Transactions of the Royal Society of London, vol. 98, pages 333-370.
  19. ^ 村上雅人『元素を知る事典: 先端材料への入門』海鳴社、2004年、102頁。ISBN 487525220X 
  20. ^ “Masthead”. Annalen der Chemie und Pharmacie 93 (3): fmi–fmi. (1855). doi:10.1002/jlac.18550930301. 
  21. ^ Wagner, Rud.; Neubauer, C.; Deville, H. Sainte-Claire; Sorel; Wagenmann, L.; Techniker; Girard, Aimé (1856). “Notizen”. Journal für Praktische Chemie 67: 490–508. doi:10.1002/prac.18560670194. 
  22. ^ Jensen, William B. (2009). “The Origin of the Brin Process for the Manufacture of Oxygen”. Journal of Chemical Education 86 (11): 1266. Bibcode2009JChEd..86.1266J. doi:10.1021/ed086p1266. 
  23. ^ Ihde, Aaron John (1984-04-01). The development of modern chemistry. p. 681. ISBN 9780486642352. http://books.google.de/books?id=34KwmkU4LG0C&pg=PA681 
  24. ^ “Barium: geological information”, Mark Winter, The University of Sheffield and WebElements Ltd, UK (WebElements), http://www.webelements.com/barium/geology.html 2012年1月15日閲覧。 
  25. ^ The Element Barium”. Jefferson Lab.. 2012年1月15日閲覧。
  26. ^ Alston Moor Cumbria, UK”. Steetley Minerals. 2012年1月15日閲覧。
  27. ^ Industrial minerals. (1969). p. 28. http://books.google.com/?id=JjEmAQAAIAAJ&dq=Settlingstones+Witherite+Mine&q=Settlingstones+#search_anchor 
  28. ^ C. R. Hammond (2000). The Elements, in Handbook of Chemistry and Physics 81st edition. CRC press. ISBN 0849304814 
  29. ^ 2.30 バリウム(Ba)”. 経済産業省 東北経済産業局. 2012年1月15日閲覧。
  30. ^ キャリー・ホール (1996). 宝石の写真図鑑 (地球自然ハンドブック). 日本ヴォーグ社. p. 80. ISBN 4529026914 

参考文献

  • F.A. コットン, G. ウィルキンソン『コットン・ウィルキンソン無機化学(上)』中原 勝儼(原書第4版)、培風館、1987年。ISBN 4563041920 
  • 千谷利三『新版 無機化学(上巻)』産業図書、1959年。 

関連項目

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