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{{Infobox 学者
'''藤井 澄二'''(ふじい すみじ、[[1920年]][[12月14日]] - [[2004年]][[1月30日]])は[[日本]]の[[工学者]]、[[工学博士]]。元[[富山県立大学]]学長、[[東京大学]]名誉教授、[[東京電機大学]]名誉教授。専門は[[機械工学]]、[[振動工学]]。[[従三位]][[勲二等]][[瑞宝章]]。
|名前=藤井 澄二
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|生年月日=[[1920年]][[12月14日]]
|生誕地={{JPN}} [[神奈川県]][[横浜市]][[神奈川区]]
|没年月日={{死亡年月日と没年齢|1920|12|14|2004|01|30}}
|死没地={{JPN}} 神奈川県横浜市[[青葉区 (横浜市)|青葉区]]
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|出身校=[[府立高等学校 (旧制)|府立高等學校]]<br />[[東京帝国大学]]
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|研究分野=[[振動工学]]、[[機械力学]]、[[制御工学]]、<br />[[ロボット工学]]、車両工学
|研究機関=第二[[陸軍航空技術研究所]]、<br />[[東京帝国大学]]、[[東京大学]]、<br />[[マサチューセッツ工科大学]]、<br />[[東京電機大学]]、[[富山県立大学]]
|博士課程指導教員=
|他の指導教員=
|博士課程指導学生='''東京大学''' - [[柴田碧]]{{Efn|[[柴田碧]]『[https://ci.nii.ac.jp/naid/500000463852 パンタグラフ架線系の動力学的研究]』東京大学〈博士学位論文〉、1958年3月29日。後、[[東京大学生産技術研究所]]{{R|鈴木2007}}<ref>“[https://www.jsme.or.jp/dmc/Message/shibata.pdf 簡明な文章・シミュレーション・機械の分野での人間工学]”. [[日本機械学会]]機械力学計測制御部門. 2017年9月24日閲覧。</ref>。}}、井口雅一{{Efn|井口雅一『[https://ci.nii.ac.jp/naid/500000457881 手動制御系の研究]』東京大学〈博士学位論文〉、1962年3月29日。後、東京大学<ref>{{Cite book|和書|title=絶え間のない挑戦が自動車技術の発展を支えていく |author=井口雅一 |publisher=公益法人自動車技術会 |url=http://www.jsae.or.jp/~dat1/interview/interview110629.pdf |accessdate=2014年2月20日}}(インタビュアー:永井正夫、2011年3月1日(火)、於:自動車技術会)</ref>。}}、佐藤寿芳{{Efn|佐藤寿芳『[https://ci.nii.ac.jp/naid/500000462065 機械構造物の耐震設計に関する研究]』東京大学〈博士学位論文〉、1963年3月29日。後、[[東京大学生産技術研究所]]{{R|鈴木2007}}。}}、吉本堅一{{Efn|吉本堅一『[https://ci.nii.ac.jp/naid/500000407769 人間を含む制御系の改善に関する研究]』、東京大学〈博士学位論文(甲第1926号)〉1969年3月29日。後、東京大学、[[防衛大学]]、[[埼玉工業大学]]{{R|Jc-IFToMM委員会}}。}}、[[井上博允]]{{Efn|[[井上博允]]『[https://ci.nii.ac.jp/naid/500000376675 人工の手の制御に関する研究]』東京大学〈博士学位論文(甲第2215号)〉1970年3月30日。}}、[[内山勝 (ロボット研究者)|内山勝]]{{Efn|[[内山勝 (ロボット研究者)|内山勝]]『[https://ci.nii.ac.jp/naid/500000297645 人工の手の運動制御に関する研究]』東京大学〈博士学位論文(甲第4240号)〉、1977年3月29日。}}<br />'''東京電機大学''' - [[大島徹]]{{Efn|name="大島徹"|[[大島徹]]『[https://ci.nii.ac.jp/naid/500000019304 生体形状の3次元自動測定システムとその応用に関する研究]』東京電機大学〈博士学位論文(甲第1号)〉、1987年3月19日。}}
|主な指導学生=
|学位=[[博士(工学)|工学博士]]
|称号=
|特筆すべき概念=
|主な業績=熱流体の[[自励振動]]<br />人間機械制御系<br />車両の動力学<br />バイラテラル制御<br />ロボット研究(藤井澄二研究室)
|主要な作品=
|影響を受けた人物={{仮リンク|デン・ハルトック|en|Jacob Pieter Den Hartog}}{{Sfn|東大広報|2004}}
|影響を与えた人物=[[高野政晴]]{{R|高野2001}}
|学会=[[日本機械学会]]、[[計測自動制御学会]]、[[日本ロボット学会]]、日本IFToMM会議、人間工学会
|主な受賞歴=[[紫綬褒章]]<br>[[従三位]][[勲二等]][[瑞宝章]]
|署名=
|公式サイト=
|脚注=
}}
'''藤井 澄二'''(ふじい すみじ、[[1920年]]([[大正]]9年)[[12月14日]]{{Sfn|富山県立大学ニュース|2004|p=2}} - [[2004年]]([[平成]]16年)[[1月30日]]{{Sfn|富山県立大学ニュース|2004|p=2}}{{Sfn|東大広報|2004}})は、[[機械工学]]を専門とする[[日本]]の[[研究者]]、[[教育者]]。[[博士(工学)|工学博士]]([[東京大学]])、東京大学[[名誉教授]]、[[東京電機大学]]名誉教授。[[振動工学]]、車両工学、[[人間工学]]、[[安全工学]]、[[制御工学]]、[[ロボット工学]]など、多岐にわたる実績があり、[[富山県立大学]]では初代[[学長]]を務めた。[[紫綬褒章]]、[[従三位]][[勲二等]][[瑞宝章]]{{Sfn|東大広報|2004}}{{Sfn|富山県立大学ニュース|2004|p=2}}。


[[東京帝国大学]][[助教授]]、[[東京大学]][[教授]]、[[東京大学大学院工学系研究科・工学部|工学部]]長、[[東京電機大学]]教授、[[理事]]、理工学部長、富山県立大学学長を務めると共に、[[日本機械学会]]会長、日本ロボット学会会長{{Sfn|東大広報|2004}}{{Sfn|富山県立大学ニュース|2004|p=2}}、日本IFToMM会議実行委員長{{Sfn|Jc-IFToMM委員会}}も歴任した。1960年代半ばから1970年代の東京大学藤井研究室におけるロボット研究は、その後のロボット制御のほとんどの基がここにあるとも言われている{{R|高野2001}}。
==略歴==
1920年に[[横浜市]][[神奈川区]]でクリスチャンの家庭の8人兄弟の4番目に生まれる。[[府立高等学校 (旧制) |府立高等學校]]を卒業後、1942年9月に東京大学を短縮卒業した。兵役により召集され、陸軍中尉として第二陸軍航空技術研究所で航空機のエンジン開発などに従事する。終戦後、東京帝国大学航空研究所を経て、[[理化学研究所]]に嘱託で勤務する。1947年に東京帝国大学工学部機械工学科助教授となり、1956年に教授に昇任した。同大学の評議員、工学部長、総長特別補佐などを務め、1981年に東京大学を退官する。同年に東京電機大学教授に就任し、同大学大学院理工学研究科委員長、理事、理工学部長を歴任した。1990年に東京電機大学名誉教授を授与される。後に、1987年より富山県立大学の創設準備委員会委員長として尽力し、1990年-1996年まで同大学初代学長を務めた。2004年1月30日に横浜市青葉区の福祉施設にて急性心不全のため逝去し、目黒大円寺で葬儀が執り行われた。享年83。


==研究活動==
== 生涯 ==
=== 生誕から終戦まで ===
エンジン開発などから振動学の研究を始め、1949年に工学博士(東京大学)を授与される。1953年にフルブライト基金で客員として[[マサチューセッツ工科大学]]などへ海外留学している。研究業績は機械振動学、車両工学、[[自動制御学]]、[[人間工学]]、[[安全工学]]、[[ロボット工学]]などで評価されており、産学官と多岐に影響を及ぼした。学会でも第58期[[日本機械学会]]会長、第1期日本ロボット学会会長を歴任しており、ロボット工学などの発展に貢献した。1986年に功績により[[紫綬褒章]]を授与されている。
[[1920年]]に[[神奈川県]][[横浜市]][[神奈川区]]で[[クリスチャン]]の家庭の8人兄弟の4番目に生まれる{{Sfn|東大広報|2004}}。小さいころから[[自然科学]]系の読書や、機械・実験装置づくりが好きな子供であった<ref>藤井澄二『たのしい工作室』p.1</ref>。[[府立高等学校 (旧制)|府立高等學校]]を卒業後、[[1942年]]9月に東京帝国大学を短縮卒業した。兵役により召集され、[[陸軍中尉]]として第二[[陸軍航空技術研究所]]で[[航空機]]の[[内燃機関|エンジン]]開発などに従事する。この時担当した航空機用エンジン[[過給機]]の開発実験において、[[自励振動]]の[[サージング]]に悩まされる{{Sfn|東大広報|2004}}。


=== 流体による自励振動の研究 ===
==著書==
終戦後、[[東京帝国大学航空研究所]](後に理工学研究所へ改組)に嘱託で勤務し、1947年に東京帝国大学工学部機械工学科助教授となる。この間、[[渦巻きポンプ|遠心式ポンプ]]の安定性およびサージングについて研究を行い、4報に渡る論文としてまとめている<ref>藤井澄二「[https://doi.org/10.1299/kikai1938.13.44_192 遠心式ポンプの安定性およびサージングについて 第1報]」、『日本機械学会論文集』第13巻第44号、1947年、 184-191頁。</ref><ref>藤井澄二「[https://doi.org/10.1299/kikai1938.13.44_192 遠心式ポンプの安定性およびサージングについて 第2報]」、『日本機械学会論文集』第13巻第44号、1947年、 192-201頁。</ref><ref>藤井澄二「[https://doi.org/10.1299/kikai1938.14.48-3_12 遠心式ポンプの安定性およびサージングについて 第3報]」、『日本機械学会論文集』第14巻第48号、1948年、 12-17頁。</ref><ref>藤井澄二「[https://doi.org/10.1299/kikai1938.14.48-3_17 遠心式ポンプの安定性およびサージングについて 第4報]」、『日本機械学会論文集』第14巻第48号、1948年、 17-25頁。</ref>。[[1949年]]に八ツ沢[[水力発電所]]で起きた圧力鉄管破損事故においては、弁の漏水によるウォーターハンマー(水槌)が原因であることを解明している{{Sfn|東大広報|2004}}。
*『たのしい工作室』(単著,[[小学館]], 1948)
*『遠心ポンプと軸流ポンプ』(共訳, A.J.ステパーノフ著, 白倉昌明・藤井澄二訳, [[丸善]], 1956)
*『技術者の数学(1)』(共訳, K.S.ミラー著, 佐藤常三・藤井澄二訳, [[共立出版]], 1959)
*『技術者の数学(2)』(共訳, K.S.ミラー著, 佐藤常三・藤井澄二訳, 共立出版, 1960)
*『機械振動論』(共訳, デン・ハルトック著, 谷口修・藤井澄二訳, [[コロナ社 (出版社)|コロナ社]], 1960)


これら[[振動工学]]の研究成果をまとめ、[[1949年]]に[[博士(工学)|工学博士]](東京大学)を取得した。また、[[1953年]]に[[マサチューセッツ工科大学]]に滞在した時には機械振動の権威、デン・ハルトック教授の薫陶を受けている{{Sfn|東大広報|2004}}。このように熱や流体により機械や[[工場|プラント]]に起こる自励振動の研究<ref>藤井澄二「[https://doi.org/10.1299/kikai1938.18.66_182 振動弁による流体柱の励振 (第1報)]」、『日本機械学会論文集』第18巻第66号、1952年、182-184頁。</ref><ref>藤井澄二、喜山宜志明「[https://doi.org/10.1299/kikai1938.18.73_40 振動弁による流体柱の励振 (第2報)]」、『日本機械学会論文集』第18巻第73号、1952年、40-43頁。</ref><ref>藤井澄二「[https://doi.org/10.1299/kikai1938.21.374 振動弁による流体柱の励振(第3報)]」、『日本機械学会論文集』第21巻第105号、1955年、 374-377頁。</ref>で実績があり、自身や研究室での経験を元にした講義のビデオが[[日本機械学会]]から出版されている(''節「[[#講義ビデオ|講義ビデオ]]」参照''){{R|名講義ビデオ}}。
==参考文献==
*[http://www.t.u-tokyo.ac.jp/public/2004/0827.html 東京大学工学部広報室]


=== 東京大学藤井澄二研究室 ===
当初は[[制御工学]]の講座ができるということで助教授に就任したが、実際は車両工学の講座ができたため、藤井は制御工学と車両工学双方の研究を行った{{Sfn|藤井澄二|1986|p=}}。車両工学の研究は自動車の振動問題<ref>藤井澄二「[https://doi.org/10.1299/kikai1938.22.178 自動車プロペラ軸の低い速度で起るふれまわり 第1報]」、『日本機械学会論文集』第22巻第115号、1956年、 178-181頁。</ref><ref>藤井澄二、柴田碧、重田達也「[https://doi.org/10.1299/kikai1938.22.489 自動車プロペラ軸の低い速度で起るふれまわり 第2報]」、『日本機械学会論文集』第22巻第119号、1956年、 489-491頁。</ref>や車両のだ行動の研究<ref>藤井澄二、吉本堅一「[https://doi.org/10.1299/kikai1938.40.3329 2軸貨車のだ行動の電子計算機による解析 第1報, 数学モデルの概要]」、『日本機械学会論文集』第40巻第340号、1974年、 3329-3334頁。</ref><ref>藤井澄二、吉本堅一、小林文彦「[https://doi.org/10.1299/kikai1938.41.806 2軸貨車のだ行動の電子計算機による解析 第2報, シミュレーション実験の結果]」、『日本機械学会論文集』第41巻第343号、1975年、 806-812頁。</ref>に加え、人間を含めた制御系など<ref>藤井澄二「[https://doi.org/10.5100/jje.1.2_9 自動車の操縦と人間工学]」、『人間工学』第1巻第2号、1965年、 9-17頁。</ref><ref>藤井澄二「[https://doi.org/10.1299/kikai1938.22.492 自動車の運動性能に対するかじ取装置の弾性の影響]」、『日本機械学会論文集』第22巻第119号、1956年、 492-496頁。</ref>、人間工学、制御工学も関連した研究に発展した。また、架線・[[集電装置|パンタグラフ]]系の設計法を提案し、[[東海道新幹線]]の実現に貢献している{{Sfn|東大広報|2004}}。

[[1956年]]には[[教授]]に昇任し、同大学の[[評議員]]、工学部長、[[学長|総長]]特別補佐などを務めていく。また、{{仮リンク|国際自動制御連盟|en|International Federation of Automatic Control}}(自動制御の国際組織)や人間工学会において、教育カリキュラムを検討する委員会でも活躍した{{R|IFAC教育|人間工学}}。

東京大学の[[機械工学科]]に[[原子力]]の研究会ができ、藤井も炉の制御や[[放射性物質]]を扱う[[マニピュレータ]]について考えるようになった{{Sfn|藤井澄二|1986|p=}}。マニピュレータの遠隔制御ではスレイブ側の反力をマスター側に返す必要があり、双動のあるバイラテラルサーボの研究を行うようになった<ref>藤井澄二、秋山守、杉野栄美、住川英男「[https://doi.org/10.11499/sicejl1954.5.60 油圧式バイラテラルサーボ機構の研究]」、『自動制御』第5巻第3号、1958年3月、 60-65頁。</ref><ref>藤井澄二、井口雅一「[https://doi.org/10.1299/kikai1938.24.929 動力かじ取装置における双動型サーボ機構の効果]」、『日本機械学会論文集』第24巻第147号、1958年、 929-934頁。</ref>。これが後に[[ロボット]]研究に発展する。[[1965年]]頃から論理機械や計算機による人工の手の研究{{Efn|「人工の手」は[[加藤一郎 (ロボット研究者)|加藤一郎]]と[[森政弘]]による造語<ref>[[加藤一郎 (ロボット研究者)|加藤一郎]] 編著、[[高西淳夫]]、[[菅野重樹]] 著 『マイロボット』 読売新聞社〈読売科学選書35〉、1990年12月、18頁。ISBN 4643901020。</ref>}}を開始し、1970年代には双腕マニピュレータの目標値修正制御、座標変換による書字動作、動的制御(速度のある制御、くぎ打ちロボットなど)、視覚認識、移動ロボットの制御などの研究が行われた{{Sfn|藤井澄二|1986|p=}}。この時期の藤井澄二研究室は、後のロボット制御のほとんどの基があると言われる程の実績を上げた{{R|高野2001}}。

社会的活動として、機構と機械の国際組織{{仮リンク|IFToMM|en|International Federation for the Promotion of Mechanism and Machine Science}}に日本も参加するため、[[早稲田大学]]の[[加藤一郎 (ロボット研究者)|加藤一郎]]教授や[[電気通信大学]]の石川二郎教授{{R|Jc-IFToMM委員会}}とともに、[[1978年]]に日本IFToMM会議を立ち上げている{{R|Jc-IFToMM紹介}}。更に1980年には、第58期の[[日本機械学会]]会長を務めた{{R|JSME会長}}。行政関係においても、研究行政、産業技術行政、運輸技術行政、[[防災]]技術行政([[消防庁]]、東京都)、交通機関における安全化と高速化の技術開発といったプロジェクトに参画し、指導的な役割を担った{{Sfn|東大広報|2004}}。

=== 東京電機大学 - 富山県立大学 - 死去 ===
[[1981年]]に[[東京電機大学]]教授に就任、同大学大学院理工学研究科委員長、理事、理工学部長を歴任した。研究では高速[[画像処理]]、多項目同時処理、高速動作を特徴とするキャッチングロボット<ref>{{Cite report|和書|author=藤井澄二、斉藤之男、島根喜一郎、前田明志、羽根吉寿正、川島忠雄、伊藤裕 |url= http://souken.dendai.ac.jp/db_pdf/data/70-P7.pdf |title=高機能ロボットに関する開発研究 |publisher=東京電機大学 総合研究所 システム研究部門 プロジェクト研究(1983 - 1984年度)報告書 |date=1984 }}</ref>、異構造マスターアームやリモート[[ティーチング]]を特徴とするリモートマニピュレータなどの研究に取り組み、極限作業ロボットの分科会にも参加している{{Sfn|藤井澄二|1986|p=}}。[[1983年]]には[[日本ロボット学会]]の初代会長にも就任し、1期2年務めている{{Sfn|東大広報|2004}}。

[[1987年]]より[[富山県立大学]]の創設準備委員会委員長として尽力し、[[1990年]]から[[1996年]]まで同大学の初代学長を務めた。同大学の[[短期大学部]]に[[専攻科]]が出来る際には、担当者に適切な指示を出している{{R|楠井追悼}}。[[2004年]][[1月30日]]に[[神奈川県]][[横浜市]][[青葉区 (横浜市)|青葉区]]の[[福祉施設]]にて[[急性心不全]]のため逝去し、[[目黒区]]の[[大円寺 (目黒区)|大円寺]]で[[葬儀]]が執り行われた{{Sfn|東大広報|2004}}{{R|吉川追悼}}。享年83。なお、遺言による寄付金100万円によって、日本IFToMM会議に若手育成基金「Young Investigator fund」が設立された{{R|Jc-IFToMM32}}。これにより、年1回のシンポジウムでBest Paper Award(Finalist 3件)が出されるようになった(Finalist 3件){{R|Jc-IFToMM32}}。

== 人物 ==
[[カトリック教会|カトリック]]で兄弟の多い家庭に生まれ育ち、[[バンカラ]]の気風を排した[[府立高等学校 (旧制)|旧制府立高等学校]]出身であり、戦争も経験した藤井は温厚な人柄で知られていた{{R|中島追悼|楠井追悼}}。実績を上げながらも粛々と研究を進める姿勢に尊敬を受けることもあった{{R|高野2001}}。

[[講義]]では、何も持ち込まずにいきなり[[黒板]]に式を書き始め、それでも分かりやすく面白い講義だったと言われている{{R|山川2011}}。また、[[東京電機大学]]では[[理工学部]]に[[大学院]]ができたばかりであり、大学院の講義に受講生が一人という時代もあった。当時の学生である[[大島徹]](後の富山県立大学教授、[[二関節筋]]を応用した研究で有名)は、分からないところを深夜まで指導してもらったと回想している{{R|大島追悼}}。

東京大学では学生主体で研究を進めさせるスタイルで、学生の心配を他所に「まあ、やってみようよ。」とよく言っており、博士課程の学生にはあえて単著で責任を持って原著論文を執筆・投稿させることもあった{{R|井上追悼}}。しかし学生よりも研究を深く認識しており、[[井上博允]]は学位審査前日に研究の意義を完璧に指摘されて感服していた{{R|井上追悼}}。

また、研究指導では手を抜かない厳しい一面もあり、大島徹は予備審査から1年以上に渡り再実験や論文修正をさせられており{{Efn|大島は予備審査から学位授与まで1年7か月かかっており{{R|大島追悼}}、学位が授与されたのは[[退学#中途退学と満期退学|単位取得満期退学]]して[[就職]]した後、1年後のことである<ref>{{Cite web|和書|title=大島 徹(Oshima, Toru) |publisher=富山県立大学 |url= http://isd.pu-toyama.ac.jp/~oshima/ |accessdate=2014-03-24}}</ref>。}}、学位取得時にも「君を研究者として認めたのではなく、研究者のスタートラインに立つのを認めただけです」と言われている{{R|大島追悼}}{{Efn|後に大島が[[富山県立大学]]へ呼ばれた際には、満面の笑みで「よく頑張っていますね」と成長を称えている{{R|大島追悼}}。}}。

== 略歴 ==
* [[1942年]]9月 - [[東京大学大学院工学系研究科・工学部|東京帝国大学第一工学部]] [[機械工学科]]{{Sfn|富山県立大学ニュース|2004|p=2}} 短縮卒業、東部第102部隊召集{{Sfn|東大広報|2004}}
* [[1943年]] - 第二[[陸軍航空技術研究所]]([[陸軍中尉]]){{Sfn|東大広報|2004}}
* [[1945年]] - [[東京帝国大学航空研究所]](後、理工学研究所に改組) 嘱託勤務{{Sfn|東大広報|2004}}
* [[1947年]]7月 - 東京帝国大学第一工学部(後、東京大学工学部) 機械工学科 [[助教授]]{{Sfn|東大広報|2004}}{{Sfn|富山県立大学ニュース|2004|p=2}}
* [[1949年]]7月 - [[博士(工学)|工学博士]](東京大学){{Sfn|東大広報|2004}}
* [[1953年]]9月 - [[マサチューセッツ工科大学]][[客員教授]]([[フルブライト・プログラム]]による留学、1954年8月まで){{Sfn|富山県立大学ニュース|2004|p=2}}{{Sfn|東大広報|2004}}
* [[1956年]] - 東京大学工学部 教授{{R|JRSJ追悼略歴}}{{Sfn|富山県立大学ニュース|2004|p=2}}
*: 退官までに、大学院協議会委員{{Sfn|東大広報|2004}}、評議員{{Sfn|東大広報|2004}}、工学部長(1978年){{R|JRSJ追悼略歴}}、総長特別補佐(1980年){{R|JRSJ追悼略歴}}を歴任。
* [[1981年]]3月 - 東京大学 定年退官(同年5月より[[名誉教授]]){{Sfn|富山県立大学ニュース|2004|p=2}}
* 1981年4月 - [[東京電機大学]] 教授{{Sfn|富山県立大学ニュース|2004|p=2}}
*: 退官までに、東京電機大学院理工学研究科委員長、理事、理工学部長(1985年){{R|JRSJ追悼略歴}}を歴任。
* [[1987年]]10月 - [[富山県立大学]] 創設準備委員会 委員長{{Sfn|東大広報|2004}}{{Efn|{{Harvnb|東大広報|2004}}には「''…昭和62年10月には、富山県より県立大学創設準備委員会委員長を委嘱され…''」とあることに基づくが、同時に就任したかどうかは不明。}}
* [[1989年]]4月 - 富山県立大学 創設準備顧問{{Sfn|富山県立大学ニュース|2004|p=2}}
* [[1990年]]3月 - 東京電機大学 退職(同年4月より名誉教授){{R|JRSJ追悼略歴}}{{Sfn|富山県立大学ニュース|2004|p=2}}
* 1990年4月 - 富山県立大学 学長(初代){{R|JRSJ追悼略歴}}{{Sfn|富山県立大学ニュース|2004|p=2}}
* [[1997年]]6月 - 富山県立大学 名誉教授{{Sfn|富山県立大学ニュース|2004|p=2}}

== 受賞、栄典 ==
* [[1977年]] - 東京都科学技術功労賞{{Sfn|東大広報|2004}}
* [[1986年]] - [[紫綬褒章]]{{R|JRSJ追悼略歴}}
* [[1991年]]5月 - 自動車技術会名誉会員{{R|JSAE2004}}
* [[1996年]] - 日本ロボット学会名誉会員推薦(名誉会長){{R|RSJ名誉会員}}
* [[1997年]] - [[勲二等]][[瑞宝章]]{{R|JRSJ追悼略歴}}
* [[2004年]] - 1月30日付で[[従三位]]{{Sfn|東大広報|2004}}
* [[2012年]] - 日本ロボット学会設立特別功労賞{{R|RSJ設立}}

== 社会的活動 ==
* [[日本機械学会]] - 第58期会長{{R|JSME会長}}(1980年4月2日 - 1981年4月1日)、名誉員(1986年推薦)<ref>“[https://www.jsme.or.jp/jsme/uploads/2016/09/meiyoin.pdf 一般社団法人 日本機械学会 名誉員一覧]”. [[日本機械学会]]. 2017年9月24日閲覧。</ref>
* [[日本ロボット学会]] - 設立メンバー{{R|RSJ設立}}、第1期会長{{Sfn|東大広報|2004}}(1983-1984年度)、名誉会員(名誉会長、1996年選出){{R|RSJ名誉会員}}
* [[計測自動制御学会]]{{Sfn|藤井・吉本|1983|p=8}}
* 人間工学会 - カリキュラム検討委員会委員長{{R|人間工学}}
* [[日本生体医工学会|日本ME学会]]{{Sfn|藤井・吉本|1983|p=8}}
* 航空宇宙学会{{Sfn|藤井・吉本|1983|p=8}}
* 日本IFToMM会議 - 設置準備委員会世話役、実行委員会委員長(1983-1988年度){{R|Jc-IFToMM紹介}}
* [[自動車技術会]] - 理事(1970年5月 - 1972年5月)、評議員(1972年5月 - 1978年5月)、名誉会員{{R|JSAE2004}}
* [[日本工学アカデミー]] - 会員<ref>[http://www.eaj.or.jp/eajnews/news99/news99-10-j.html EAJ News]、日本工学アカデミー、2014年2月21日閲覧。</ref>

== 著書 ==
=== 単著 ===
* 『[{{NDLDC|1168261}} たのしい工作室]』 [[小学館]]〈小国民シリーズ〉、1948年。
* 『機械力学 第1、第2』 [[鵜戸口英善]]ほか編、[[共立出版]]〈応用力学講座 6〉、1957-1958年、{{Ncid|BN1034875X}}。
* 『制御工学 1、2、3』 [[岩波書店]]〈岩波講座基礎工学 20〉、1967-1968年、{{Ncid|BN01827795}}
* 『藤井澄二論文選集』 藤井澄二教授還暦退官記念会、1982年1月、{{Ncid|BA71097276}}。

=== 共著・翻訳 ===
* A.J.ステパーノフ 著『遠心ポンプと軸流ポンプ』 白倉昌明、藤井澄二 訳、[[丸善]]、1956年、{{Ncid|BN04378224}}。
* K.S.ミラー 著『技術者の数学(1)』 佐藤常三、藤井澄二 訳、[[共立出版]]〈共立全書516〉、1959年、{{Ncid|BN02010769}}。
* K.S.ミラー 著『技術者の数学(2)』 佐藤常三、藤井澄二 訳、共立出版〈共立全書520〉、1960年、{{Ncid|BN02010769}}。
* {{仮リンク|デン・ハルトック|en|Jacob Pieter Den Hartog}} 著『機械振動論』 谷口修、藤井澄二 訳, [[コロナ社 (出版社)|コロナ社]]、1953年、{{Ncid|BN06576579}}{{Efn|1960年改訂、{{Ncid|BN0062700X}}。}}。
* 藤井澄二 ほか著『制御工学』 深海登世司、藤巻忠雄 監修、[[東京電機大学出版局]]、1985年9月。{{ISBN2|4501101008}}。

=== 講義ビデオ ===
* 『自励振動の話』 [[日本機械学会]]〈名講義シリーズ〉、[[丸善]]、1997年11月、[[VHS|ビデオテープ]]、ISBN 4888980845{{R|名講義ビデオ}}

== その他著作 ==
=== 解説 ===
(振動関連)
* 「[https://doi.org/10.1299/jsmemag.50.349_278 流體機械のサージングの現象]」『[[日本機械学会]]誌』第50巻第349号、1947年10月、278-282頁。
* 「[https://doi.org/10.1299/jsmemag.51.355_151 流体機械のサージング現象(その2) ―サージング防止の方法―]」『日本機械学会誌』第51巻第355号、1948年4月、151-155頁。
* 「[https://doi.org/10.1299/jsmemag.55.400_298 回転軸の振動における抵抗の役割]」『日本機械学会誌』第55巻第400号、1952年5月、298-301頁。
* 「[https://doi.org/10.1299/jsmemag.60.456_26 非線型振動の最近の諸問題]」『日本機械学会誌』第60巻第456号、1957年1月、26-29頁。
* 「[https://doi.org/10.1299/jsmemag.64.509_888 圧縮機および送風機の振動とその防止法]」『日本機械学会誌』第64巻第509号、1961年6月、888-893頁。
* 「[https://doi.org/10.1299/jsmemag.70.576_104 機械工学における自励振動の最近の問題]」『日本機械学会誌』第70巻第576号、1967年1月、104-111頁。
* 「[https://doi.org/10.1299/jsmemag.73.621_1327 不規則振動について]」『日本機械学会誌』第73巻第621号、1970年10月、1327-1328頁。

(制御関連)
* 「[https://doi.org/10.1299/jsmemag.59.449_476 サーボマニプレータの問題]」『日本機械学会誌』第59巻第449号、1956年6月、476-479頁。
* 「[https://doi.org/10.1299/jsmemag.62.480_64 バイラテラルサーボ機構の理論]」『日本機械学会誌』第62巻第480号、1959年1月、64-69頁。
* 「[https://doi.org/10.1299/jsmemag.63.494_396 高速度における自動車操縦の問題 ―アナログコンピュータによる解析―]」『日本機械学会誌』第63巻第494号、1960年3月、396-401頁。
* 「[https://doi.org/10.1299/jsmemag.69.569_656 自動制御教育について]」『日本機械学会誌』第69巻第569号、1966年6月、656-658頁。
* 「[https://doi.org/10.1299/jsmemag.70.585_1510 制御しやすい機械の設計のための人間工学]」『日本機械学会誌』第70巻第585号、1967年10月、1510-1518頁、井口雅一との共著。
* 「[https://doi.org/10.1299/jsmemag.80.708_1115 自動制御連合講演会とわが国の自動制御]」『日本機械学会誌』第80巻第708号、1977年11月、1115-1117頁。

(その他)
* 「[https://doi.org/10.5988/jime1966.18.891 デンハルトグ先生のこと]」『日本舶用機関学会誌』第18巻第12号、1983年12月、892-893頁。
* 「[https://doi.org/10.1299/jsmemag.75.636_5 機械工学とその境界分野]」『日本機械学会誌』第75巻第636号、1972年1月、5-6頁。
* 「[https://doi.org/10.1299/jsmemag.75.638_315 工学教育について]」『日本機械学会誌』第75巻第638号、1972年3月、315-316頁。

=== 回想・展望 ===
*「[https://doi.org/10.1299/jsmemag.75.646_1503 自励振動の研究の動機と過程]」『日本機械学会誌』第75巻第646号、1972年10月、 1503-1512頁。
* {{Wikicite|ref={{Sfnref|藤井・吉本|1983}} |reference=「[https://doi.org/10.7210/jrsj.1.4 ロボット研究の回顧と展望]」『日本ロボット学会誌』第1巻第1号、1983年4月、 4-8頁。吉本堅一との共著。}}
*「[https://doi.org/10.7210/jrsj.4.447 ロボット研究の動機・経過・展望]」『日本ロボット学会誌』第4巻第4号、1986年8月、 447-451頁。
*「[https://doi.org/10.1299/jsmemag.91.831_129 学びたい心、究めたい心]」『日本機械学会誌』第91巻第831号、1988年2月、 129-135頁。國枝正春との共著。

== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
=== 注釈 ===
{{Notelist}}
=== 出典 ===
{{Reflist|2|refs=
<ref name="JSME会長">藤井澄二「[https://doi.org/10.1299/jsmemag.84.750_429 第58期会長退任のあいさつ]」『日本機械学会誌』 84(750) 1981-05-05 p.429-430 </ref>
<ref name="JSAE2004">「[http://www.jsae.or.jp/21giju/2004/tsu580301.pdf 会告 名誉会員訃報]」『技術会通信』第58巻第3号、2004年、101頁。</ref>
<ref name="IFAC教育">藤井澄二「[https://doi.org/10.11499/sicejl1962.5.299 IFAC 教育委員会会議]」『計測と制御』第5巻第4号、1966年4月、299-301頁。</ref>
<ref name="人間工学">藤井澄二「[https://doi.org/10.5100/jje.5.19 人間工学カリキュラム委員会報告書]」、『人間工学』第5巻第1号、1969年、 19-27頁。</ref>
<ref name="高野2001">『高野政晴退官記念論文集』、および{{Cite web|和書|author=高野政晴|authorlink=高野政晴|publisher=高野政晴HomePage|url= http://takano.a.la9.jp/1robotcommentary/robot_criticism.htm |title=ロボット評論 (2) 日本におけるロボット研究の流行(2001.4.4)|date=2001-04-04|accessdate=2019-11-24}}</ref>
<ref name="山川2011">{{Cite book|和書|author=山川新二 |title=不規則データ処理の先駆的研究を拓き自動車の信頼性評価の近代化に貢献 |publisher=公益社団法人自動車技術会 |url= https://www.jsae.or.jp/~dat1/interview/interview110907.pdf |format=PDF |accessdate=2014-02-20}}(インタビュアー:高原正雄、2011年7月20日、於:アルカディア市ケ谷)</ref>
<ref name="JRSJ追悼略歴">「追悼 初代会長・名誉会員 藤井澄二氏を慎む」(略歴)『日本ロボット学会誌』第22巻第3号、2004年4月</ref>
<ref name="吉川追悼">[[吉川恒夫]]「追悼 ―藤井澄二氏を慎む―」『日本ロボット学会誌』第22巻第3号、2004年4月。</ref>
<ref name="井上追悼">[[井上博允]]「追悼」『日本ロボット学会誌』第22巻第3号、2004年4月。</ref>
<ref name="楠井追悼">楠井隆史「藤井初代学長の思い出」{{Harvnb|富山県立大学ニュース|2004|p=3}}</ref>
<ref name="中島追悼">中島恭一「藤井初代学長の追悼」{{Harvnb|富山県立大学ニュース|2004|p=2}}</ref>
<ref name="大島追悼">[[大島徹]]「藤井先生を偲んで」{{Harvnb|富山県立大学ニュース|2004|p=3}}</ref>
<ref name="鈴木2007">鈴木浩平「[https://doi.org/10.1299/kikaic.73.1607 研究と学会活動の思い出]」、『日本機械学会論文集C編』第73巻第730号、2007年、1607-1609頁。</ref>
<ref name="Jc-IFToMM紹介">{{Cite web|和書|url= http://www.jc-iftomm.org/japanese/introduction.html |title=日本IFToMM会議のご紹介 |accessdate=2014-02-11}}</ref>
<ref name="Jc-IFToMM32">{{Cite report|和書|url= http://www.jc-iftomm.org/japanese/news/News32.pdf |title=日本IFToMMニュースNo.32|format=PDF|date=2005-01}}</ref>
<ref name="Jc-IFToMM委員会">{{Cite web|url= http://www.jc-iftomm.org/japanese/committee.html |title=日本IFToMM会議実行委員会 |accessdate=2014-02-11}}</ref>
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}}

== 参考文献 ==
* 「追悼 初代会長・名誉会員 藤井澄二氏を慎む」『日本ロボット学会誌』第22巻第3号、2004年4月、(ページ番号は未記載、2ページ分)。<!-- 記事ごとに{{R|○○追悼}}といった形で指定。詳細はReflist中のrefs=の部分を参照。-->
* {{Cite journal|和書|title=藤井伊初代学長の追悼 |journal=富山県立大学ニュース |number=69 |date=2004-05 |pages=2-3 |url= https://www.pu-toyama.ac.jp/data/tpu_news/pdf/63.pdf |ref={{Sfnref|富山県立大学ニュース|2004}} }}
* {{Cite journal|和書|title=訃報 藤井澄二 名誉教授 |journal=学内広報 |number=1296 |publisher=東京大学広報委員会 |date=2004-09-08|page=23|url= https://www.u-tokyo.ac.jp/content/400004764.pdf |format=PDF|author=大学院工学系研究科|ref={{Sfnref|東大広報|2004}} }}

== 外部リンク ==
* 国立国会図書館デジタルライブラリー:藤井澄二著『[{{NDLDC|1168261}} たのしい工作室]』、1948年、小学館、2014年2月11日閲覧。
* {{Cite web|和書|url=http://www.t.u-tokyo.ac.jp/tpage/public/2004/0827.html |work=広報室から|publisher=[[東京大学大学院工学系研究科]]|date=2004-08-27|title=名誉教授藤井澄二先生を悼む|author=鎌田実 |archiveurl=https://archive.fo/foJW |archivedate=2012-12-18 |accessdate=2015-05-04}}

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2024年11月26日 (火) 14:23時点における最新版

藤井 澄二
人物情報
生誕 1920年12月14日
日本の旗 日本 神奈川県横浜市神奈川区
死没 (2004-01-30) 2004年1月30日(83歳没)
日本の旗 日本 神奈川県横浜市青葉区
居住 日本の旗 日本アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
出身校 府立高等學校
東京帝国大学
学問
研究分野 振動工学機械力学制御工学
ロボット工学、車両工学
研究機関 第二陸軍航空技術研究所
東京帝国大学東京大学
マサチューセッツ工科大学
東京電機大学富山県立大学
博士課程指導学生 東京大学 - 柴田碧[注釈 1]、井口雅一[注釈 2]、佐藤寿芳[注釈 3]、吉本堅一[注釈 4]井上博允[注釈 5]内山勝[注釈 6]
東京電機大学 - 大島徹[注釈 7]
学位 工学博士
主な業績 熱流体の自励振動
人間機械制御系
車両の動力学
バイラテラル制御
ロボット研究(藤井澄二研究室)
影響を受けた人物 デン・ハルトック英語版[5]
影響を与えた人物 高野政晴[6]
学会 日本機械学会計測自動制御学会日本ロボット学会、日本IFToMM会議、人間工学会
主な受賞歴 紫綬褒章
従三位勲二等瑞宝章
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藤井 澄二(ふじい すみじ、1920年大正9年)12月14日[7] - 2004年平成16年)1月30日[7][5])は、機械工学を専門とする日本研究者教育者工学博士東京大学)、東京大学名誉教授東京電機大学名誉教授。振動工学、車両工学、人間工学安全工学制御工学ロボット工学など、多岐にわたる実績があり、富山県立大学では初代学長を務めた。紫綬褒章従三位勲二等瑞宝章[5][7]

東京帝国大学助教授東京大学教授工学部長、東京電機大学教授、理事、理工学部長、富山県立大学学長を務めると共に、日本機械学会会長、日本ロボット学会会長[5][7]、日本IFToMM会議実行委員長[8]も歴任した。1960年代半ばから1970年代の東京大学藤井研究室におけるロボット研究は、その後のロボット制御のほとんどの基がここにあるとも言われている[6]

生涯

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生誕から終戦まで

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1920年神奈川県横浜市神奈川区クリスチャンの家庭の8人兄弟の4番目に生まれる[5]。小さいころから自然科学系の読書や、機械・実験装置づくりが好きな子供であった[9]府立高等學校を卒業後、1942年9月に東京帝国大学を短縮卒業した。兵役により召集され、陸軍中尉として第二陸軍航空技術研究所航空機エンジン開発などに従事する。この時担当した航空機用エンジン過給機の開発実験において、自励振動サージングに悩まされる[5]

流体による自励振動の研究

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終戦後、東京帝国大学航空研究所(後に理工学研究所へ改組)に嘱託で勤務し、1947年に東京帝国大学工学部機械工学科助教授となる。この間、遠心式ポンプの安定性およびサージングについて研究を行い、4報に渡る論文としてまとめている[10][11][12][13]1949年に八ツ沢水力発電所で起きた圧力鉄管破損事故においては、弁の漏水によるウォーターハンマー(水槌)が原因であることを解明している[5]

これら振動工学の研究成果をまとめ、1949年工学博士(東京大学)を取得した。また、1953年マサチューセッツ工科大学に滞在した時には機械振動の権威、デン・ハルトック教授の薫陶を受けている[5]。このように熱や流体により機械やプラントに起こる自励振動の研究[14][15][16]で実績があり、自身や研究室での経験を元にした講義のビデオが日本機械学会から出版されている(節「講義ビデオ」参照[17]

東京大学藤井澄二研究室

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当初は制御工学の講座ができるということで助教授に就任したが、実際は車両工学の講座ができたため、藤井は制御工学と車両工学双方の研究を行った[18]。車両工学の研究は自動車の振動問題[19][20]や車両のだ行動の研究[21][22]に加え、人間を含めた制御系など[23][24]、人間工学、制御工学も関連した研究に発展した。また、架線・パンタグラフ系の設計法を提案し、東海道新幹線の実現に貢献している[5]

1956年には教授に昇任し、同大学の評議員、工学部長、総長特別補佐などを務めていく。また、国際自動制御連盟英語版(自動制御の国際組織)や人間工学会において、教育カリキュラムを検討する委員会でも活躍した[25][26]

東京大学の機械工学科原子力の研究会ができ、藤井も炉の制御や放射性物質を扱うマニピュレータについて考えるようになった[18]。マニピュレータの遠隔制御ではスレイブ側の反力をマスター側に返す必要があり、双動のあるバイラテラルサーボの研究を行うようになった[27][28]。これが後にロボット研究に発展する。1965年頃から論理機械や計算機による人工の手の研究[注釈 8]を開始し、1970年代には双腕マニピュレータの目標値修正制御、座標変換による書字動作、動的制御(速度のある制御、くぎ打ちロボットなど)、視覚認識、移動ロボットの制御などの研究が行われた[18]。この時期の藤井澄二研究室は、後のロボット制御のほとんどの基があると言われる程の実績を上げた[6]

社会的活動として、機構と機械の国際組織IFToMM英語版に日本も参加するため、早稲田大学加藤一郎教授や電気通信大学の石川二郎教授[4]とともに、1978年に日本IFToMM会議を立ち上げている[30]。更に1980年には、第58期の日本機械学会会長を務めた[31]。行政関係においても、研究行政、産業技術行政、運輸技術行政、防災技術行政(消防庁、東京都)、交通機関における安全化と高速化の技術開発といったプロジェクトに参画し、指導的な役割を担った[5]

東京電機大学 - 富山県立大学 - 死去

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1981年東京電機大学教授に就任、同大学大学院理工学研究科委員長、理事、理工学部長を歴任した。研究では高速画像処理、多項目同時処理、高速動作を特徴とするキャッチングロボット[32]、異構造マスターアームやリモートティーチングを特徴とするリモートマニピュレータなどの研究に取り組み、極限作業ロボットの分科会にも参加している[18]1983年には日本ロボット学会の初代会長にも就任し、1期2年務めている[5]

1987年より富山県立大学の創設準備委員会委員長として尽力し、1990年から1996年まで同大学の初代学長を務めた。同大学の短期大学部専攻科が出来る際には、担当者に適切な指示を出している[33]2004年1月30日神奈川県横浜市青葉区福祉施設にて急性心不全のため逝去し、目黒区大円寺葬儀が執り行われた[5][34]。享年83。なお、遺言による寄付金100万円によって、日本IFToMM会議に若手育成基金「Young Investigator fund」が設立された[35]。これにより、年1回のシンポジウムでBest Paper Award(Finalist 3件)が出されるようになった(Finalist 3件)[35]

人物

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カトリックで兄弟の多い家庭に生まれ育ち、バンカラの気風を排した旧制府立高等学校出身であり、戦争も経験した藤井は温厚な人柄で知られていた[36][33]。実績を上げながらも粛々と研究を進める姿勢に尊敬を受けることもあった[6]

講義では、何も持ち込まずにいきなり黒板に式を書き始め、それでも分かりやすく面白い講義だったと言われている[37]。また、東京電機大学では理工学部大学院ができたばかりであり、大学院の講義に受講生が一人という時代もあった。当時の学生である大島徹(後の富山県立大学教授、二関節筋を応用した研究で有名)は、分からないところを深夜まで指導してもらったと回想している[38]

東京大学では学生主体で研究を進めさせるスタイルで、学生の心配を他所に「まあ、やってみようよ。」とよく言っており、博士課程の学生にはあえて単著で責任を持って原著論文を執筆・投稿させることもあった[39]。しかし学生よりも研究を深く認識しており、井上博允は学位審査前日に研究の意義を完璧に指摘されて感服していた[39]

また、研究指導では手を抜かない厳しい一面もあり、大島徹は予備審査から1年以上に渡り再実験や論文修正をさせられており[注釈 9]、学位取得時にも「君を研究者として認めたのではなく、研究者のスタートラインに立つのを認めただけです」と言われている[38][注釈 10]

略歴

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受賞、栄典

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社会的活動

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著書

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単著

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  • たのしい工作室小学館〈小国民シリーズ〉、1948年。
  • 『機械力学 第1、第2』 鵜戸口英善ほか編、共立出版〈応用力学講座 6〉、1957-1958年、NCID BN1034875X
  • 『制御工学 1、2、3』 岩波書店〈岩波講座基礎工学 20〉、1967-1968年、NCID BN01827795
  • 『藤井澄二論文選集』 藤井澄二教授還暦退官記念会、1982年1月、NCID BA71097276

共著・翻訳

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講義ビデオ

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その他著作

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解説

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(振動関連)

(制御関連)

(その他)

回想・展望

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脚注

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注釈

[編集]
  1. ^ 柴田碧パンタグラフ架線系の動力学的研究』東京大学〈博士学位論文〉、1958年3月29日。後、東京大学生産技術研究所[1][2]
  2. ^ 井口雅一『手動制御系の研究』東京大学〈博士学位論文〉、1962年3月29日。後、東京大学[3]
  3. ^ 佐藤寿芳『機械構造物の耐震設計に関する研究』東京大学〈博士学位論文〉、1963年3月29日。後、東京大学生産技術研究所[1]
  4. ^ 吉本堅一『人間を含む制御系の改善に関する研究』、東京大学〈博士学位論文(甲第1926号)〉1969年3月29日。後、東京大学、防衛大学埼玉工業大学[4]
  5. ^ 井上博允人工の手の制御に関する研究』東京大学〈博士学位論文(甲第2215号)〉1970年3月30日。
  6. ^ 内山勝人工の手の運動制御に関する研究』東京大学〈博士学位論文(甲第4240号)〉、1977年3月29日。
  7. ^ 大島徹生体形状の3次元自動測定システムとその応用に関する研究』東京電機大学〈博士学位論文(甲第1号)〉、1987年3月19日。
  8. ^ 「人工の手」は加藤一郎森政弘による造語[29]
  9. ^ 大島は予備審査から学位授与まで1年7か月かかっており[38]、学位が授与されたのは単位取得満期退学して就職した後、1年後のことである[40]
  10. ^ 後に大島が富山県立大学へ呼ばれた際には、満面の笑みで「よく頑張っていますね」と成長を称えている[38]
  11. ^ 東大広報 2004には「…昭和62年10月には、富山県より県立大学創設準備委員会委員長を委嘱され…」とあることに基づくが、同時に就任したかどうかは不明。
  12. ^ 1960年改訂、NCID BN0062700X

出典

[編集]
  1. ^ a b 鈴木浩平「研究と学会活動の思い出」、『日本機械学会論文集C編』第73巻第730号、2007年、1607-1609頁。
  2. ^ 簡明な文章・シミュレーション・機械の分野での人間工学”. 日本機械学会機械力学計測制御部門. 2017年9月24日閲覧。
  3. ^ 井口雅一『絶え間のない挑戦が自動車技術の発展を支えていく』公益法人自動車技術会http://www.jsae.or.jp/~dat1/interview/interview110629.pdf2014年2月20日閲覧 (インタビュアー:永井正夫、2011年3月1日(火)、於:自動車技術会)
  4. ^ a b 日本IFToMM会議実行委員会”. 2014年2月11日閲覧。
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参考文献

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  • 「追悼 初代会長・名誉会員 藤井澄二氏を慎む」『日本ロボット学会誌』第22巻第3号、2004年4月、(ページ番号は未記載、2ページ分)。
  • 藤井伊初代学長の追悼」『富山県立大学ニュース』第69号、2004年5月、2-3頁。 
  • 大学院工学系研究科「訃報 藤井澄二 名誉教授」(PDF)『学内広報』第1296号、東京大学広報委員会、2004年9月8日、23頁。 

外部リンク

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