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[[画像:Four-leaf clover.jpg|thumb|[[四つ葉のクローバー]]を見つけると幸福になれるという伝説がある]]
[[画像:Four-leaf clover.jpg|thumb|[[四つ葉のクローバー]]を見つけると幸福になれるという伝説がある]]
'''幸福'''(こうふく、{{lang-el-short|εὐδαιμονία}}、{{lang-la-short|felicitas}}、{{lang-en-short|happiness}})とは、[[心]]が満ち足りていること<ref>『[[広辞苑]]』第五版 p.916</ref>。<!--{{要出典}}安心していること(さま)。-->'''幸せ'''(しあわせ)ともいう。[[人間]]は古来、幸福であるための方法に深い関心を寄せてきた。
'''幸福'''(こうふく、{{lang-el-short|εὐδαιμονία}}、{{lang-la-short|felicitas}}、{{lang-en-short|happiness}})とは、[[心]]が満ち足りていること<ref>『[[広辞苑]]』第五版 p.916</ref>。<!--{{要出典}}安心していること(さま)。-->'''幸せ'''(しあわせ)ともいう。[[人間]]は古来、幸福であるための方法に深い関心を寄せてきた。

幸福についての考察や、幸福であるためにはどのような生き方をすべきであるか、その方法論を提示した文章・書物は「[[幸福論]]」(''eudaemonics'')と呼ばれている。幸福を[[倫理]]の最高目的と考え、行為の基準を幸福におく説を[[幸福主義]]という。古典的には[[アリストテレス]]が典型であり、近代哲学では[[功利主義]]がその典型である。

本記事ではまず、[[哲学者]]や[[思想家]]や[[宗教家]]などによって幸福についてどのような考え方が提示されてきたのか見てゆく。→[[#哲学、思想、宗教における考え]]

その次に、近年の統計的な調査や[[精神医学]]的な調査・研究で明らかになった知見なども紹介することにする。→[[#統計的、精神医学的調査・研究]]

==哲学、思想、宗教における考え==
===ソクラテス===
[[File:Luca Giordano - Socrates.jpg|thumb|150px|ソクラテス(469?~399 B.C.)]]
[[ソクラテス]]は、「生きること」以上に「よく生きること」を重視し、正しく知ることが重要であると説いた。

===アリストテレス===
[[File:Aristotle Altemps Inv8575.jpg|thumb|150px|アリストテレス(384~322 B.C.)]]
[[アリストテレス]]は『[[ニコマコス倫理学]]』において、
幸福とはだれもが求める目標である、その特徴は、それが究極目標であること、つまりもはやそれが何かほかのものの手段にはなりえない、という点にある、と述べた<ref name="keyword">{{Cite book|和書|title=哲学 キーワード事典|publisher=[[新書館]]|year=2004|pages=pp.240-241}}</ref>。
つまり幸福は、それ自体のために求められる最高善であるとし、自足的で永続的な状態である、と見なした<ref name="keyword" />。幸福が最高目標、永続的であるのに対して、実生活の具体的な活動の過程で得られる快は安定性も永続性も欠いている、とし<ref name="keyword" />、[[幸福主義]]を唱えた。

またアリストテレスは、幸福とは、[[政治]]を実践し、または人間の[[プシュケー]](=[[心]]、[[霊魂]])の固有の[[形相]]である[[理性]]を発展させることであるとした。

===ヘレニズム期の考え方===
[[ヘレニズム]]期の哲学においては、幸福について考えが分かれる二つの学派があったとされる。[[ストア派]]と[[エピクロス派]]である。

;ストア派
ストア派では、[[コスモス|宇宙]]全体を貫く[[ロゴス]]との合一に幸福の理想が求められ<ref name="keyword" />、理性に従い欲望を制御して、どんなことがあっても動じない状態、即ち'''[[アパテイア]]'''が幸福であるとした。

ストア派は理性に従い[[徳]]を高めることが幸福であるとする一種の[[主知主義]]の立場である、ともされる。

;エピクロス派
エピクロス派は「快楽を得ることが幸福であるとした」などとされ、快楽主義などと表現される。ただし、エピクロス自身が言っていたことは、現代人がつい思い描いてしまうような、単純に享楽を求めるような"快楽主義"ではない。

エピクロス自身は、快を「感覚的な快」と、「精神的な快」に分けて考えていた<ref name="keyword" />。前者は[[生物|生き物]]に共通の反応ではあるが、人間あるいは賢者にとっての幸福というのは、精神的な快であるとし、'''[[アタラクシア]]'''である、としていたのである<ref name="keyword" />。アタラクシアとは、静かな心の平安、あらゆる苦痛と混乱を免れた精神の安定した境地のことである。
<!--エピクロス派は刹那的な快楽主義とは異なっており--><!--エピクロス派は、{{要出典}}適切な快楽が生の条件であるとするものである。-->
ヘレニズム期の幸福論を考察する時に、両派は対比され、一般にストア派は「[[禁欲主義]]」、エピクロス派は「快楽主義」と呼ばれ、てはいるが<ref group="注釈">ただしこれら古代哲学における禁欲主義、快楽主義という語は現代の通俗的用法とは必ずしも合致しないことは注意すべきである。</ref>、このように静かな<u>心の穏やかさ</u>を目指した面では軌を一にしている。「これら(両派)はいずれも、外部とのかかわりを可能なかぎり断って、もっぱら内面における安定ないし自足のうちに幸福の実現の可能性を求める立場であった<ref name="keyword" />」とも。欲望をどのように扱うかが、幸福論の中心的な課題であったとも。「この点では、苦しみの源である執着心(渇愛)から解放された涅槃寂静の境地に悟りの境地を求めた[[仏教]]の発想とも通じ合うところがある<ref name="keyword" />」ともされる。

===法華経===
[[仏教]][[経典]]の一つ『[[法華経]]』第二章にあたる「方便品」において、「衆生を<ruby><rb>饒益</rb><rp>(</rp><rt>にょうやく</rt><rp>)</rp></ruby><ref group="注釈">【饒、にょう】=ゆたかに</ref>し安楽ならしめたもう所多き」、つまり全ての人々の真の幸福と安楽のために『法華経』は説かれたのだ、とされている。
別の言い方をすると、一切衆生の[[成仏]]が、[[仏]]がこの世に出現した最大で究極の目的である、としているのである。そして『法華経』第十五章にあたる<ruby><rb>従地涌出品</rb><rp>(</rp><rt>じゅうじゆじゅっぽん</rt><rp>)</rp></ruby>には、[[釈迦]][[如来]]が説法をしていたときに大地が割れ、そこから無数の[[菩薩]]が涌き出てくる情景が描かれている(この菩薩を「<ruby><rb>[[地涌の菩薩]]</rb><rp>(</rp><rt>じゆのぼさつ</rt><rp>)</rp></ruby>」と呼ぶ)。これらの菩薩は、釈迦亡き後の[[末法]]の世において[[仏法]]を護持して広めてゆく存在であるが、この「地涌の菩薩」とは、他でもない我々普通の人間のことをあらわしており、民衆ひとりひとりが立ち上がり、他の人々までも幸せにしてゆく情景が[[オペラ]]さながらの手法で描かれているのである<ref>[[石原慎太郎]]『法華経を生きる』[[幻冬舎文庫]]、2000年、ISBN 4344400011 </ref>。
<!--
[[日蓮]]は[[法華経]]は末法の[[衆生]]のため、釈尊亡き時代の全ての命のために説かれた、と述べている。(「法華取要抄」)
-->
[[File:Miyazawa Kenji.jpg|thumb|right|120px|宮澤賢治(1896~1933)]]
[[宮沢賢治]]は『法華経』の学びから「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」(『農民芸術概論綱要』序論)を得た<ref>{{Cite journal|和書|author=熊田健二 |title=宮澤賢治とその宗教的世界:法華経的世界とイーハトーヴ |journal=アルテスリベラレス |issn=03854183 |publisher=岩手大学人文社会科学部 |year=1994 |month=dec |volume=55 |pages=1-20 |naid=110000095168 |doi=10.15113/00013476 |url=https://doi.org/10.15113/00013476}}</ref>。

===中国などの故事・格言等===
[[中国]]などの[[故事]]や[[格言]]にも幸福を主題としたものがある。

古代中国、[[紀元前2世紀]]頃の『[[淮南子]]』に掲載されている人間訓に「'''人生万事塞翁が馬'''」がある(この表現は元の[[僧侶|僧]]、[[熙晦機]]の[[漢詩]]「人間萬事塞翁馬 推枕軒中聽雨眠……」の冒頭にちなむ)「塞翁が馬」とも称される。

:「人生万事塞翁が馬」のあらすじ
{{Quote|ある塞(城塞)のほとりに、老人とその息子とが暮らしていた。ある日、彼ら親子の馬が突然逃げ出してしまったため、周囲の人々は馬を失った親子を気の毒がったが、当の老人は「不幸かどうかは果たして分からんよ」と、意にも介さない。間も無く、逃げ出した馬は立派な馬を連れて戻ってきた。不幸が転じて幸運となったために周囲の人々は親子の幸福を感心したが、老人はやはり意に介さない。間も無く、息子がこの馬から落ち脚が不自由となってしまったため周囲は同情したが、それでも老人は意に介さない。その後、[[戦争]]が始まって村の若者は皆[[歩兵|兵]]に徴収され、ほとんどが[[戦死]]してしまったが、息子は脚が不自由であるため村に残った。こうして、老人と息子は共に生き長らえ暮らした。}}

[[画像:Izumooyashiro89.JPG|thumb|right|150px|縒り合せた綱]]
「塞翁が馬」には、「'''禍福は糾える縄の如し'''」(人の幸・不幸は縒って作った[[ロープ|縄]]の目のように、交互に訪れるため片方ばかりは続かない、という意味)など、類似する故事、説話、慣用句なども数多い。

『[[晋書]]』(劉毅伝。7世紀頃)には、「'''棺を蓋いて事定まる'''」という格言がある。ある出来事や現象がその瞬間には幸福に見えようが不幸に見えようが、それが本当にそうなのかは、その後の長い時間を経て[[死|人生の幕引きの時]]を迎える時まで定まっていない、ということを述べている。

<small>例えば、ある人が子供の頃に憧れた職業に進むため、適性を無視してその方向に邁進、結果として途中で挫折した場合には、当人にとって大変な損失であり不幸である。よしんばその途中過程で、まだやり直しが利く段階での成功は、その瞬間には「幸福な出来事」といえるのかもしれないが、結果論から言えば「いよいよやり直しが利かなくなる状態に陥っただけ」ともいえる。</small>
<!--例えとしては特殊ケースに偏りすぎていて不適例えば、医師としての適性が現実には無いにも拘らず、高校生としての安易な感性で決めた将来の職業として医師を希望し、望みどおりに医学部に合格することは、一見幸福かもしれないが、長い目で見てその人物の人生を狂わしてしまう。-->

なお[[落語]]には「人の値打ちと煙草の味は、煙になって判るもの」(<small>煙草は火を付けて吸うまで良し悪しが判らない、のと同様に、人は[[葬式]]が終わって火葬されるまでは、どれだけの価値があったのか正確には判じ難い、という意味</small>)という件もあるという。

===キリスト教===
[[File:Jesus-Christ-from-Hagia-Sophia.jpg|thumb|150px|イエス・キリスト(4?B.C.~A.D.30?)]]
[[キリスト教]]が普及した[[中世ヨーロッパ]]においては、本来の幸福は個々の人間の努力によってどうにかできるようなものではなく、[[神の恵み|神からの恵み(恩寵)]]によってのみ真の至福は可能になる、と説かれた<ref name="keyword" />。

===ブレーズ・パスカル===
[[File:Blaise pascal.jpg|thumb|150px|ブレーズ・パスカル(1623~1662)]]
[[ブレーズ・パスカル]]は『[[パンセ]]』において幸福にも言及している。

{{Quotation|
誰もが幸福になりたいと思っている。そこに例外はない.....。これこそが、首を吊ろうとする人をもふくめて、あらゆる人間のあらゆる行為の動機である。(『[[パンセ]]』425)<ref name="keyword" />
}}
{{Quotation|
絶えず幸福になろうとしている状態にあるかぎり、われわれはけっして幸福になることがない。(『パンセ』172)<ref name="keyword" />
}}

現代[[フランス]]の代表的モラリストの一人であるコント=スポンヴィルは次のように説いた。「あるがままのものを認識し、できることを意志し、起こることを愛すること」<ref name="keyword" />

===アダム・スミス===
[[File:Akademiestraße 13.jpg|thumb|left|120px|アダム・スミス(1723~1790)]]
<ref>この項「経済と倫理:アダム・スミスに学ぶ」[[堂目卓生]][https://web.archive.org/web/20160304130019/http://www.geocities.jp/tokyomachikanekai/topics01/konwa0811/siryo02.pdf]による引用文集から作成。</ref>[[アダム・スミス]]は『道徳感情論』において「幸福は、平静と享楽にある。平静なしには享楽はありえないし、完全な平静があるところでは、どんなものごとでもそれを楽しむことが出来る」<ref>アダム・スミス『道徳感情論(上)』P.432</ref>とした。「[[健康]]で[[負債]]がなく、良心にやましいところのない人に対して何を付け加えることが出来ようか」<ref name="道徳感情論116">アダム・スミス『道徳感情論(上)』P.116</ref>。しかし「(健康で、負債がなく、良心にやましいところがない状態)につけ加えうるものは、ほとんどないにしても、それから取り去りうるものは多い。この状態と人間の繁栄の最高潮との間の距離は取るに足りないのに対し、それと悲惨のどん底との間の距離は無限であり巨大である<ref name="道徳感情論116"/>」「貧乏な人は、彼の貧困を恥じる。彼は、それが自分を人類の視野の外に置くこと、あるいは、他の人びとがいくらか彼に注意したとしても、自分が耐え忍んでいる悲惨と困苦について、彼らが、いくらかでも同胞感情をもつことはめったにないということを知っている。彼は(貧困と無視)双方の理由で無念に思う。無視されていることと、否認されることは、まったく別のものごとなのではあるが、それでもなお、無名であることが名誉と明確な是認という日の光を遮るように、自分が少しも注意を払われていないと感じることは、必然的に人間本性の最も快適な希望をくじき、最も熱心な意欲を喪失させる<ref>アダム・スミス『道徳感情論(上)』P.130</ref>」。

「人間がどんなに利己的なものと想定されうるにしても、あきらかに人間の本性の中には、何か別の原理があり、それによって、人間は他人の運不運に関心をもち、他人の幸福を--それを見る喜びの他にはなにも引き出さないにもかかわらず--自分にとって必要なものだと感じるのである。」「われわれが、他の人々の悲しみを想像することによって自分も悲しくなることがしばしばあることは明白であり、証明するのに何も挙げる必要はないであろう」<ref>アダム・スミス『道徳感情論(上)』P.23</ref>。この共感と同情による幸福の追求は彼の富国論のなかの重要な命題「成員の圧倒的大部分が貧困で惨めであるような社会は、繁栄した幸福な社会ではありえない」<ref>アダム・スミス『[[国富論]]』P.142</ref>に結実していることが発見できる。

===イギリスの功利主義===
近代に入り、キリスト教のものではない世俗的な価値観が現れると、[[イギリス]]においては、感性的な快のもたらす満足感が幸福なのだとする発想が芽生え<ref name="keyword" />、これが後に[[功利主義]]につながってゆくことになった<ref name="keyword" />。
[[File:Jeremy Bentham by Henry William Pickersgill detail.jpg|thumb|150px|ベンサム(1748~1832)]]
[[ジェレミ・ベンサム|ベンサム]]は、個人にとっての幸福は快が得られ苦痛が欠如した状態にある、と見なす快楽説を採用し、個々人の私的善の総和を最大幸福と見なし、「最大多数の最大幸福」の実現を社会的行為の基盤と見なした<ref name="keyword" />。

ただし、この考え方には修正が必要だとしたのが[[ジョン・スチュアート・ミル]]である。ミルは、何が快であり苦であるかには個人差があると考え、快楽計算に質的観点を導入してみせた<ref name="keyword" />。ミルは「太った豚よりも痩せたソクラテスであれ」という言葉でも知られている<ref name="keyword" />。

===マズロー===
<!--
===マズローの欲求モデル===
[[アブラハム・マズロー]](1908年 - 1970年)は人間の欲求は階層を成しており、低い段階の欲求が満たされるとより高い次元を求めるようになるという欲求5階層説を唱えた。
*生理的欲求 呼吸、飢え、渇き、睡眠、排泄などの本能に基づいた欲求。
*安全の欲求 安定した環境のなかで暮らしたいという欲求。
*所属と愛情の欲求 他者と関わりながら生きたいという欲求。
*自尊の欲求 人から価値を認めてもらいたいという欲求。
*自己実現の欲求 己の可能性を実現しようという欲求。
(彼の心理学は幸福に生きる人間のモデル化であった。{{要出典}})
-->
欲求に重点を置いた社会心理学者[[アブラハム・マズロー]] (1908年 - 1970年)の説明では、人の欲はある段階を達成すれば更なる高い段階を基準とするために「絶対的幸福というものは存在しない」などともされた。

===ヴィクトール・フランクルの思想===
[[ヴィクトール・フランクル]]は人間が実現できる価値を3つに分類している。
*創造価値:善や美を作り出す。
*体験価値:善や美を享受する。
*[[態度価値]]:人間らしい尊厳ある態度をとる。
創造価値、体験価値の実現は一般的に言われる幸福な状態である。最後の態度価値は、困難で悲惨な環境・状況のなかでも実現できる価値であり、環境だけが人間にとっての価値ではなく、たとえどのような環境に遭遇しても、それに対する自分自身の態度のとり方にこそ価値があると捉えることで幸福を得られることを、[[ヴィクトール・フランクル]]は著書で語った。彼は、[[アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所|アウシュヴィッツ]]という究極の状況下で人々が見せる様々な態度を目撃し、また、そのような状況下でも充実した生き方を見せた人に遭遇した実体験などもふまえてそれを語った。

===新宮秀夫による説明===
[[新宮秀夫]]は幸福とは満足、安心、豊かさなど人の願うことの中そのものにあるのではなく、それを得ようとしたり持続させようとする緊張感の中に幸福があるとする。そして幸福についての考え方を、[[複雑性]]に応じて四つの段階に分類する。数字が上の階は下より高級ということではなく、下の階の考え方を前提とすることにより成り立っているということである。
*第一のステージ:富、名声、恋、スポーツ、食事などを通じて快楽を得ることに幸福を感じる。
*第二のステージ:獲得した快楽を永続させようとするいとなみの中に幸福がある。
*第三のステージ:苦しみや悲しみを克服するいとなみの中に幸福がある。
*第四のステージ:克服できない苦しみの中に、幸福がある。
<!--
===中島義道===
[[中島義道]]は幸福の条件として以下の4つを挙げる。ただし彼はアンチ幸福論の立場をとり、世の中は不幸だらけであることを直視しない幸福論が真実を見る眼を曇らせるという。幸福の条件に到達することは容易ではなく、幸福は盲目、怠惰、狭量、傲慢であることによって成立する、と彼は主張する。
*自分の特定の欲望がかなえられていること。
*その欲望が自分の一般的信念にかなっていること。
*その欲望が世間から承認されていること。
*その欲望の実現に関して、他人を不幸に陥れない(傷つけない、苦しめない)こと。
-->

===その他の幸福論の主な著作===
<!--出典にもとづいて、もう少し詳細な内容を記述したほうがよいだろう-->
*[[エピクテトス]]『語録』:己の力の及ぶものと及ばないものを識別し、自己抑制をもって生きることを説く。
*[[バールーフ・デ・スピノザ]]『[[エチカ (スピノザ)|エチカ]]』:物事を永遠の相のもとで見ることが幸福(神に対する知的愛)への道であるとする。
*[[アルトゥル・ショーペンハウアー]]『幸福について』:目先の環境に振り回されるのをやめ、すべては空しいと諦観することで精神的落ち着きを得るべきである。世俗的な幸福の源泉を人のあり方・人の有するもの・人の印象の与え方に大別した上、肝心なのは「人のあり方」であるとする。『[[意志と表象としての世界]]』第四部では、自他の区別を去った意志の否定を説く。
*[[エミール=オーギュスト・シャルティエ]](アラン)『幸福論』:健全な身体によって心の平静を得ることを強調。すべての不運やつまらぬ物事に対して、上機嫌にふるまうこと。また社会的礼節の重要性を説く。
{{Quotation|人間は意欲すること、そして想像することによってのみ幸福である<ref name="#1">清水書院『最新版 倫理用語集』p.205 思索の広場 幸福あれこれ―先哲のことば</ref>。}}
*[[バートランド・ラッセル]]『幸福論』:己の関心を外部に向け、活動的に生きることを勧める。妬みは「わが身を不幸にする」ので、他人と自分を比較するのを止めなければならない。
{{Quotation|ほんとうに心を満足させる幸福は、わたくしたちのさまざまな能力を精いっぱい行使することから、またわたくしたちの生きている世界を十分に把握することから生まれるものである<ref name="#1"/>。}}
*[[カール・ヒルティ]]『幸福論』:神のそば近くあることが永続的な幸福を約束するとする宗教的幸福論。
{{Quotation|幸福の第一の必要欠くべからざる条件は、倫理的世界秩序に対する正しい信仰である<ref name="#1"/>。}}
{{Quotation|人生の幸福は、困難が少ない、あるいはまったくないということにあるのではなく、それらをすべてりっぱに克服することにあるのである<ref name="#1"/>。}}
*[[福田恆存]]『私の幸福論』:不公正な世の現実を見据え、弱点を弱点と認識した上でとらわれなく生きること。望むものを手に入れるために戦い、敗北しても悔いないこと。
*[[モーリス・メーテルリンク]]『[[青い鳥]]』:2人兄妹のチルチルとミチルが、夢の中で過去や未来の国に幸福の象徴である青い鳥を探しに行くが、結局のところそれは自分達に最も手近なところにある、鳥籠の中にあったという物語。
{{Quotation|なんだ、あれがきっと僕たちのさがしていた青い鳥なんだ。僕たちはずいぶん遠方までさがしに行ったけれど、ほんとうはここにしょっちゅういたんだな<ref name="#1"/>。}}

=== 近年の様々な見解 ===
<!--{{要出典}}幸福は価値判断を含む[[倫理]]的なものである。-->

<!--{{要出典}}幸福は価値判断を含む[[主観]]的なものである。恋愛に例えれば分かりやすいが、個人・個性の数だけ価値観があるが、個々人の主観的な[[価値観]]によって、本人が満ち足りていると感じている心理状態をいう{{要出典}}。-->

<!--[[客観]]に外形的様式として所定の状態があるわけではない。また、幸福度を数値化(定量化)することは非常に困難である。例えば、本人以外の誰かには “幸福ではない”と見える状況にいるとしても、その評価はあくまで観察者の主観におけるものであり、その状況を当人が幸福だと感じていれば、その検証は非常に困難である{{要出典|date=2009年10月}}。-->

幸福を欲求の充足に結びつけて考えてしまう人にとっては、欲求が満たされればそれは以前の状態に比べて幸福ということにはなるが、この欲求の正体が分からず、自分が何を求めているかが理解出来ずに焦燥感に駆られる人や、欲求に主導権を譲り渡してしまったことで、欲求が限りなく膨張しつづけそれを満たしつづけることが出来ず苦しむ人も少なくない、という。

この辺りは「曲肱の楽しみ」(曲肱:肘枕で寝る事・貧しい事の例え)等の語が端的に表している通り、やはり「楽しい」「幸福である」という状態はその主観において主体的に見出す事であり、如何なる状況においても、みずからの「心のありかた」を意識的に選び取ることによって見出すことができるとされている。

==統計的、精神医学的調査・研究==
<ref>出典:『こころと体の対話 精神免疫学の世界』神庭重信 ISBN 4-16-660041-9 p.86~「なにが幸福感を決めるのか」※著者は[[慶應義塾大学]]医学部および米国・メイヨクリニック出身、現 [[山梨医科大学]]教授。</ref>
1980年代から幸福感に関する心理学的・精神医学的な研究が盛んになってきた<ref name="対話86">『こころと体の対話 精神免疫学の世界』p.86</ref>。

世界各地の110万人のデータを検討したマイヤースらの1996年の研究によると、2割の人が「とても幸福である」と答え、約7割の人が「かなり幸福」あるいは「それ以上」と答えていた。

1990年のイングルハートによる分析では、ある程度以上裕福な[[先進国|先進諸国]]においては、個人の経済的裕福さと幸福感との間には関連性が見られなくなる<ref name="対話86" />。
[[ファイル:Salience network.jpg|サムネイル|'''顕著性ネットワーク'''は、創造的なアイデアとそうでないアイデアの選別に活躍し<ref>{{Cite journal|last=Chrysikou|first=Evangelia G.|last2=Jacial|first2=Constanza|last3=Yaden|first3=David B.|last4=van Dam|first4=Wessel|last5=Kaufman|first5=Scott Barry|last6=Conklin|first6=Christopher J.|last7=Wintering|first7=Nancy A.|last8=Abraham|first8=Rebecca E.|last9=Jung|first9=Rex E.|date=2020-10|title=Differences in brain activity patterns during creative idea generation between eminent and non-eminent thinkers|url=https://linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/S1053811920304973|journal=NeuroImage|volume=220|pages=117011|language=en|doi=10.1016/j.neuroimage.2020.117011}}</ref>、'''幸福感'''を含むあらゆる感情の一部でもあると言われている<ref name=":6">{{Cite journal|last=Touroutoglou|first=Alexandra|last2=Lindquist|first2=Kristen A.|last3=Dickerson|first3=Bradford C.|last4=Barrett|first4=Lisa Feldman|date=2015-09-01|title=Intrinsic connectivity in the human brain does not reveal networks for ‘basic’ emotions|url=https://academic.oup.com/scan/article/10/9/1257/1675553|journal=Social Cognitive and Affective Neuroscience|volume=10|issue=9|pages=1257–1265|language=en|doi=10.1093/scan/nsv013|issn=1749-5024|pmc=PMC4560947|pmid=25680990}}</ref>。]]
2010年のヴィタルらによる統計文献分析によると、幸福には基本的な神経基盤があることがわかった<ref>{{Cite journal|last=Vytal|first=Katherine|last2=Hamann|first2=Stephan|date=2010-12-01|title=Neuroimaging Support for Discrete Neural Correlates of Basic Emotions: A Voxel-based Meta-analysis|url=https://direct.mit.edu/jocn/article/22/12/2864/5011/Neuroimaging-Support-for-Discrete-Neural|journal=Journal of Cognitive Neuroscience|volume=22|issue=12|pages=2864–2885|language=en|doi=10.1162/jocn.2009.21366|issn=0898-929X}}</ref>。

2015年のトゥルートグルーらによる統計的文献分析によると、[[脳の大規模ネットワーク|'''顕著性ネットワーク''']]は幸福を含むすべての感情の一部である<ref name=":6" />。

2020年の統計的神経科学の文献分析によれば、幸福の本質は感情や行動によるものではなく、意味や自分に対する道徳的評価によるものである<ref>{{Cite journal|last=Tanzer|first=Joshua Ray|last2=Weyandt|first2=Lisa|date=2020-10|title=Imaging Happiness: Meta Analysis and Review|url=http://link.springer.com/10.1007/s10902-019-00195-7|journal=Journal of Happiness Studies|volume=21|issue=7|pages=2693–2734|language=en|doi=10.1007/s10902-019-00195-7|issn=1389-4978}}</ref>。

統計学的に見て、幸福感に大きな影響を与えているのは、婚姻状況<ref>1980~1990年に[[シカゴ大学]]によって行われた調査(『こころと体の対話 精神免疫学の世界』p.87)</ref>(未婚/既婚/離婚の違い)および[[信仰]]心であった(注. ここでいう「信仰心」とは主としてキリスト教の信仰のことである)。世界14ヶ国の16万人余りを対象とした国際研究では、幸福であると答えた人の率は、信仰心があつくて礼拝や儀式にもよく参加する人のほうが高かった([[ギャロップ]]社による調査)<ref name="対話86" />。

様々な統計的データによって明らかになったことは、幸福感の基線を決めるのは、環境の客観的な条件ではなく、個々人の'''内的特徴'''(「[[信仰]]心」や「ものの考え方」など)である、ということである<ref>『こころと体の対話 精神免疫学の世界』p.91</ref>。

また、幸福感を持っている人に共通する内的な特徴は以下の4つと指摘されている<ref>(『こころと体の対話 精神免疫学の世界』p.90)</ref>。
*自分自身のことが好きであること
*主体的に生きているという感覚を持てていること<ref name=":02">{{Cite journal|last=Fischer|first=Ronald|last2=Boer|first2=Diana|date=2011|title=What is more important for national well-being: Money or autonomy? A meta-analysis of well-being, burnout, and anxiety across 63 societies.|url=http://doi.apa.org/getdoi.cfm?doi=10.1037/a0023663|journal=Journal of Personality and Social Psychology|volume=101|issue=1|pages=164–184|language=en|doi=10.1037/a0023663|issn=1939-1315}}</ref>
*[[楽観主義|楽観的であること]]<ref name=":7">{{Cite journal|last=Bak-Klimek|first=Anna|last2=Karatzias|first2=Thanos|last3=Elliott|first3=Lawrie|last4=Maclean|first4=Rory|date=2015-03|title=The Determinants of Well-Being Among International Economic Immigrants: A Systematic Literature Review and Meta-Analysis|url=http://link.springer.com/10.1007/s11482-013-9297-8|journal=Applied Research in Quality of Life|volume=10|issue=1|pages=161–188|language=en|doi=10.1007/s11482-013-9297-8|issn=1871-2584}}</ref><ref>{{Cite journal|last=刘|first=泽军|date=2017|title=The Relationship between Positive Psychological Capital and Subjective Well-Being: A Meta-Analysis|url=http://www.hanspub.org/journal/PaperDownload.aspx?DOI=10.12677/AP.2017.71014|journal=Advances in Psychology|volume=07|issue=01|pages=104–115|doi=10.12677/AP.2017.71014|issn=2160-7273}}</ref><ref>{{Cite journal|last=Andersson|first=Gerhard|date=1996-11|title=The benefits of optimism: A meta-analytic review of the life orientation test|url=https://linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/0191886996001183|journal=Personality and Individual Differences|volume=21|issue=5|pages=719–725|language=en|doi=10.1016/0191-8869(96)00118-3}}</ref><ref name=":8">{{Cite journal|last=Carver|first=Charles S.|last2=Connor-Smith|first2=Jennifer|date=2010-01-01|title=Personality and Coping|url=https://www.annualreviews.org/doi/10.1146/annurev.psych.093008.100352|journal=Annual Review of Psychology|volume=61|issue=1|pages=679–704|language=en|doi=10.1146/annurev.psych.093008.100352|issn=0066-4308}}</ref><ref>{{Cite journal|last=Gordeeva|first=Tamara|last2=Sheldon|first2=Kennon|last3=Sychev|first3=Oleg|date=2020-03|title=Linking academic performance to optimistic attributional style: attributions following positive events matter most|url=http://link.springer.com/10.1007/s10212-019-00414-y|journal=European Journal of Psychology of Education|volume=35|issue=1|pages=21–48|language=en|doi=10.1007/s10212-019-00414-y|issn=0256-2928}}</ref>
*外向的であること<ref name=":8" /><ref>{{Cite journal|last=Wilt|first=Joshua|last2=Noftle|first2=Erik E.|last3=Fleeson|first3=William|last4=Spain|first4=Jana S.|date=2012-10|title=The Dynamic Role of Personality States in Mediating the Relationship Between Extraversion and Positive Affect|url=https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1467-6494.2011.00756.x|journal=Journal of Personality|volume=80|issue=5|pages=1205–1236|language=en|doi=10.1111/j.1467-6494.2011.00756.x|issn=0022-3506|pmc=PMC3492883|pmid=22092066}}</ref><ref name=":9">{{Citation|title=Associations between Mental Well-being and Personality from a Life Span Perspective|last=Kokko|first=Katja|last2=Rantanen|first2=Johanna|last3=Pulkkinen|first3=Lea|date=2015|url=http://link.springer.com/10.1057/9781137439963_8|publisher=Palgrave Macmillan UK|editor-last=Blatný|editor-first=Marek|pages=134–159|isbn=978-1-137-43995-6|language=en|doi=10.1057/9781137439963_8|access-date=2023-11-01}}</ref><ref name=":10">{{Cite journal|last=Anglim|first=Jeromy|last2=Horwood|first2=Sharon|last3=Smillie|first3=Luke|last4=Marrero|first4=Rosario|last5=Wood|first5=Joshua K|date=2019-12-14|title=Predicting Psychological and Subjective Well-Being from Personality: A Meta-Analysis|url=https://osf.io/gupxj|doi=10.31234/osf.io/gupxj}}</ref>、であると指摘されている

また、人は価値のある活動に積極的に参加し、自身のゴールをめざして前進するときに、より多くの幸福を感じることができる<ref>『こころと体の対話 精神免疫学の世界』p.88</ref>。精神的安定は外向性よりも幸福の重要な決定因子であり<ref name=":9" /><ref name=":1">{{Cite journal|last=Hills|first=Peter|last2=Argyle|first2=Michael|date=2001-12|title=Emotional stability as a major dimension of happiness|url=https://linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/S0191886900002294|journal=Personality and Individual Differences|volume=31|issue=8|pages=1357–1364|language=en|doi=10.1016/S0191-8869(00)00229-4}}</ref>、根性などの規律も幸福と相関する<ref name=":8" /><ref name=":9" /><ref name=":10" /><ref>{{Cite journal|last=Hou|first=Xiang-Ling|last2=Becker|first2=Nicolas|last3=Hu|first3=Tian-Qiang|last4=Koch|first4=Marco|last5=Xi|first5=Ju-Zhe|last6=Mõttus|first6=René|date=2022-12|title=Do Grittier People Have Greater Subjective Well-Being? A Meta-Analysis|url=http://journals.sagepub.com/doi/10.1177/01461672211053453|journal=Personality and Social Psychology Bulletin|volume=48|issue=12|pages=1701–1716|language=en|doi=10.1177/01461672211053453|issn=0146-1672}}</ref><ref>{{Cite journal|last=Bogg|first=Tim|last2=Roberts|first2=Brent W.|date=2004|title=Conscientiousness and Health-Related Behaviors: A Meta-Analysis of the Leading Behavioral Contributors to Mortality.|url=http://doi.apa.org/getdoi.cfm?doi=10.1037/0033-2909.130.6.887|journal=Psychological Bulletin|volume=130|issue=6|pages=887–919|language=en|doi=10.1037/0033-2909.130.6.887|issn=1939-1455}}</ref>。このため、不安から遠ざかり、曖昧さに寛容であることも重要である<ref>{{Cite journal|last=Jost|first=John T.|last2=Glaser|first2=Jack|last3=Kruglanski|first3=Arie W.|last4=Sulloway|first4=Frank J.|date=2003|title=Political conservatism as motivated social cognition.|url=http://doi.apa.org/getdoi.cfm?doi=10.1037/0033-2909.129.3.339|journal=Psychological Bulletin|volume=129|issue=3|pages=339–375|language=en|doi=10.1037/0033-2909.129.3.339|issn=1939-1455}}</ref>。自己超越性と変化に対する寛容性も幸福とわずかながら関連してい<ref name=":8" /><ref>{{Cite journal|last=Bilbao|first=María De los Ángeles|last2=Techio|first2=Elza|last3=Páez|first3=Darío|date=2007-03-26|title=Felicidad, cultura y valores personales: estado de la cuestión y síntesis meta-analítica|url=http://revistas.pucp.edu.pe/index.php/psicologia/article/view/1413|journal=Revista de Psicología|volume=25|issue=2|pages=233–276|doi=10.18800/psico.200702.005|issn=2223-3733}}</ref>。さらに、感じる能力が強い人ほど幸福である<ref>{{Cite journal|last=Bombari|first=Dario|last2=Schmid Mast|first2=Marianne|last3=Bachmann|first3=Manuel|date=2017-02|title=Felt power explains the link between position power and experienced emotions.|url=http://doi.apa.org/getdoi.cfm?doi=10.1037/emo0000207|journal=Emotion|volume=17|issue=1|pages=55–66|language=en|doi=10.1037/emo0000207|issn=1931-1516}}</ref>。したがって、感情的知性<ref>{{Cite journal|last=Diener|first=Ed|last2=Wolsic|first2=Brian|last3=Fujita|first3=Frank|date=1995-07|title=Physical attractiveness and subjective well-being.|url=http://doi.apa.org/getdoi.cfm?doi=10.1037/0022-3514.69.1.120|journal=Journal of Personality and Social Psychology|volume=69|issue=1|pages=120–129|language=en|doi=10.1037/0022-3514.69.1.120|issn=1939-1315}}</ref>と[[セルフコンパッション|自己同情]]<ref>{{Cite journal|last=Zessin|first=Ulli|last2=Dickhäuser|first2=Oliver|last3=Garbade|first3=Sven|date=2015-11|title=The Relationship Between Self-Compassion and Well-Being: A Meta-Analysis|url=https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/aphw.12051|journal=Applied Psychology: Health and Well-Being|volume=7|issue=3|pages=340–364|language=en|doi=10.1111/aphw.12051}}</ref><ref>{{Cite journal|last=Marsh|first=Imogen C.|last2=Chan|first2=Stella W. Y.|last3=MacBeth|first3=Angus|date=2018-08|title=Self-compassion and Psychological Distress in Adolescents—a Meta-analysis|url=http://link.springer.com/10.1007/s12671-017-0850-7|journal=Mindfulness|volume=9|issue=4|pages=1011–1027|language=en|doi=10.1007/s12671-017-0850-7|issn=1868-8527|pmc=PMC6061226|pmid=30100930}}</ref>は幸福を促進する。
[[ファイル:Dialog face to face.JPG|サムネイル|

介入方法は、一般的に[[対面|対面介入]]の方が有望な効果を示している<ref name=":17">{{Cite journal|last=Weiss|first=Laura A.|last2=Westerhof|first2=Gerben J.|last3=Bohlmeijer|first3=Ernst T.|editor-last=Coyne|editor-first=James|date=2016-06-21|title=Can We Increase Psychological Well-Being? The Effects of Interventions on Psychological Well-Being: A Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials|url=https://dx.plos.org/10.1371/journal.pone.0158092|journal=PLOS ONE|volume=11|issue=6|pages=e0158092|language=en|doi=10.1371/journal.pone.0158092|issn=1932-6203|pmc=PMC4915721|pmid=27328124}}</ref>。]]

=== 介入方法 ===
;感謝介入法<ref>{{Cite journal|last=Dickens|first=Leah R.|date=2017-07-04|title=Using Gratitude to Promote Positive Change: A Series of Meta-Analyses Investigating the Effectiveness of Gratitude Interventions|url=https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/01973533.2017.1323638|journal=Basic and Applied Social Psychology|volume=39|issue=4|pages=193–208|language=en|doi=10.1080/01973533.2017.1323638|issn=0197-3533}}</ref>
人を3つのグループに分け、それぞれのグループの各人に次のようなことを記録することを課題として与える。
* 第1グループには「最近1週間のうちに感謝したこと」。
* 第2グループには「面倒に思えたこと」。
* 第3グループには「起こった出来事」。
この実験を開始して9週間後に調べてみると、'''満足度が最も高かったのは'''、第1グループ、すなわち最近1週間のうちに'''感謝したことを記録しつづけたグループ'''であった。このグループの人々は他のグループに比べて[[健康]]状態も良好である、という結果が出た<ref name="shiawasewokagakusuru">『幸せを科学する』新曜社、2009年</ref>。このような手法を'''感謝介入法'''という。

;親切介入法
人を2つのグループに分け、それぞれのグループに次のようにさせた。
*片方のグループの人には、誰かに[[親切]]を行なって、かつ、それを記録するように指示する。
*もう片方のグループの人には、特には親切は行わせない。
これを'''親切介入法'''と呼ぶ。
この介入の1ヶ月前と1ヵ月後の幸福感を調査したところ、'''誰かに親切を行い、それを記録したグループのほうが幸福感が高かった'''<ref name="shiawasewokagakusuru" />。

「感謝しましょう」「ひとに親切にしましょう」といったことは、古来、多くの宗教や道徳などで説かれていることであるが、こうしたことには実は深い道理があり、感謝された側の人や親切にされた人を幸せにするだけでなく、感謝している当人や親切を行っている当人にも直接的に幸福をもたらしていることが、実証的な科学の方法でも証明されるようになってきているのである<ref name="shiawasewokagakusuru" /><ref name=":13">{{Cite journal|last=Rowland|first=Lee|last2=Curry|first2=Oliver Scott|date=2019-05-04|title=A range of kindness activities boost happiness|url=https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/00224545.2018.1469461|journal=The Journal of Social Psychology|volume=159|issue=3|pages=340–343|language=en|doi=10.1080/00224545.2018.1469461|issn=0022-4545}}</ref><ref name=":14">{{Cite journal|last=Curry|first=Oliver Scott|last2=Rowland|first2=Lee A.|last3=Van Lissa|first3=Caspar J.|last4=Zlotowitz|first4=Sally|last5=McAlaney|first5=John|last6=Whitehouse|first6=Harvey|date=2018-05|title=Happy to help? A systematic review and meta-analysis of the effects of performing acts of kindness on the well-being of the actor|url=https://linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/S0022103117303451|journal=Journal of Experimental Social Psychology|volume=76|pages=320–329|language=en|doi=10.1016/j.jesp.2018.02.014}}</ref>。[[対面|対面介入]]が最も有望な選択肢であり<ref name=":17" />、自分自身への親切も同様に効果的である<ref name=":13" />。

統計的な文献分析によると、以下のような介入も幸福度の向上に関連している:

* [[自己肯定感|ベストセルフ]]介入法<ref>{{Cite journal|last=Carrillo|first=Alba|last2=Rubio-Aparicio|first2=María|last3=Molinari|first3=Guadalupe|last4=Enrique|first4=Ángel|last5=Sánchez-Meca|first5=Julio|last6=Baños|first6=Rosa M.|editor-last=Tran|editor-first=Ulrich S|date=2019-09-23|title=Effects of the Best Possible Self intervention: A systematic review and meta-analysis|url=https://dx.plos.org/10.1371/journal.pone.0222386|journal=PLOS ONE|volume=14|issue=9|pages=e0222386|language=en|doi=10.1371/journal.pone.0222386|issn=1932-6203|pmc=PMC6756746|pmid=31545815}}</ref>
* [[回想法|回想]]介入法<ref>{{Cite journal|last=Tam|first=Wilson|last2=Poon|first2=Sum Nok|last3=Mahendran|first3=Rathi|last4=Kua|first4=Ee Heok|last5=Wu|first5=Xi Vivien|date=2021-02|title=The effectiveness of reminiscence-based intervention on improving psychological well-being in cognitively intact older adults: A systematic review and meta-analysis|url=https://linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/S0020748920303382|journal=International Journal of Nursing Studies|volume=114|pages=103847|language=en|doi=10.1016/j.ijnurstu.2020.103847}}</ref><ref>{{Cite journal|last=Chin|first=Annie M.H.|date=2007-01|title=Clinical Effects of Reminiscence Therapy in Older Adults: A Meta-Analysis of Controlled Trials|url=http://linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/S1569186107700037|journal=Hong Kong Journal of Occupational Therapy|volume=17|issue=1|pages=10–22|language=en|doi=10.1016/S1569-1861(07)70003-7}}</ref>
* [[ポジティブ心理学]]介入法<ref>{{Cite journal|last=Bolier|first=Linda|last2=Haverman|first2=Merel|last3=Westerhof|first3=Gerben J|last4=Riper|first4=Heleen|last5=Smit|first5=Filip|last6=Bohlmeijer|first6=Ernst|date=2013-12|title=Positive psychology interventions: a meta-analysis of randomized controlled studies|url=http://bmcpublichealth.biomedcentral.com/articles/10.1186/1471-2458-13-119|journal=BMC Public Health|volume=13|issue=1|language=en|doi=10.1186/1471-2458-13-119|issn=1471-2458|pmc=PMC3599475|pmid=23390882}}</ref><ref>{{Cite journal|last=White|first=Carmela A.|last2=Uttl|first2=Bob|last3=Holder|first3=Mark D.|editor-last=Pietschnig|editor-first=Jakob|date=2019-05-29|title=Meta-analyses of positive psychology interventions: The effects are much smaller than previously reported|url=https://dx.plos.org/10.1371/journal.pone.0216588|journal=PLOS ONE|volume=14|issue=5|pages=e0216588|language=en|doi=10.1371/journal.pone.0216588|issn=1932-6203|pmc=PMC6541265|pmid=31141537}}</ref><ref>{{Cite journal|last=Sin|first=Nancy L.|last2=Lyubomirsky|first2=Sonja|date=2009-05|title=Enhancing well-being and alleviating depressive symptoms with positive psychology interventions: a practice-friendly meta-analysis|url=https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/jclp.20593|journal=Journal of Clinical Psychology|volume=65|issue=5|pages=467–487|language=en|doi=10.1002/jclp.20593}}</ref><ref>{{Cite journal|last=Hendriks|first=Tom|last2=Schotanus-Dijkstra|first2=Marijke|last3=Hassankhan|first3=Aabidien|last4=de Jong|first4=Joop|last5=Bohlmeijer|first5=Ernst|date=2020-01|title=The Efficacy of Multi-component Positive Psychology Interventions: A Systematic Review and Meta-analysis of Randomized Controlled Trials|url=http://link.springer.com/10.1007/s10902-019-00082-1|journal=Journal of Happiness Studies|volume=21|issue=1|pages=357–390|language=en|doi=10.1007/s10902-019-00082-1|issn=1389-4978}}</ref><ref>{{Cite journal|last=Chakhssi|first=Farid|last2=Kraiss|first2=Jannis T.|last3=Sommers-Spijkerman|first3=Marion|last4=Bohlmeijer|first4=Ernst T.|date=2018-12|title=The effect of positive psychology interventions on well-being and distress in clinical samples with psychiatric or somatic disorders: a systematic review and meta-analysis|url=https://bmcpsychiatry.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12888-018-1739-2|journal=BMC Psychiatry|volume=18|issue=1|language=en|doi=10.1186/s12888-018-1739-2|issn=1471-244X|pmc=PMC6020379|pmid=29945603}}</ref>
* やりがいのある楽しい活動への参加介入法<ref name=":12">{{Cite journal|last=Mazzucchelli|first=Trevor G.|last2=Kane|first2=Robert T.|last3=Rees|first3=Clare S.|date=2010-03|title=Behavioral activation interventions for well-being: A meta-analysis|url=http://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/17439760903569154|journal=The Journal of Positive Psychology|volume=5|issue=2|pages=105–121|language=en|doi=10.1080/17439760903569154|issn=1743-9760|pmc=PMC2882847|pmid=20539837}}</ref>
* 強みの自覚介入法<ref name=":15">{{Cite journal|last=Schutte|first=Nicola S.|last2=Malouff|first2=John M.|date=2019-04-01|title=The Impact of Signature Character Strengths Interventions: A Meta-analysis|url=https://doi.org/10.1007/s10902-018-9990-2|journal=Journal of Happiness Studies|volume=20|issue=4|pages=1179–1196|language=en|doi=10.1007/s10902-018-9990-2|issn=1573-7780}}</ref>
* ヨガ介入法<ref name=":162">{{Cite journal|last=Hendriks|first=Tom|last2=de Jong|first2=Joop|last3=Cramer|first3=Holger|date=2017-07|title=The Effects of Yoga on Positive Mental Health Among Healthy Adults: A Systematic Review and Meta-Analysis|url=http://www.liebertpub.com/doi/10.1089/acm.2016.0334|journal=The Journal of Alternative and Complementary Medicine|volume=23|issue=7|pages=505–517|language=en|doi=10.1089/acm.2016.0334|issn=1075-5535}}</ref>
* 余暇介入法<ref>{{Cite journal|last=Kuykendall|first=Lauren|last2=Tay|first2=Louis|last3=Ng|first3=Vincent|date=2015-03|title=Leisure engagement and subjective well-being: A meta-analysis.|url=http://doi.apa.org/getdoi.cfm?doi=10.1037/a0038508|journal=Psychological Bulletin|volume=141|issue=2|pages=364–403|language=en|doi=10.1037/a0038508|issn=1939-1455}}</ref>

== 幸福と健康 ==
[[ファイル:Mukohjima Channel 01.JPG|サムネイル|[[大自然]]に囲まれることは、幸福度の向上と相関関係がある<ref>{{Cite journal|last=Capaldi|first=Colin A.|last2=Dopko|first2=Raelyne L.|last3=Zelenski|first3=John M.|date=2014-09-08|title=The relationship between nature connectedness and happiness: a meta-analysis|url=http://journal.frontiersin.org/article/10.3389/fpsyg.2014.00976/abstract|journal=Frontiers in Psychology|volume=5|doi=10.3389/fpsyg.2014.00976|issn=1664-1078|pmc=PMC4157607|pmid=25249992}}</ref>。]]
[[ファイル:Eat Happy im Edeka im IsarCenter Ottobrunn 2022-10-10.jpg|サムネイル|2021年国際摂食障害学会誌によると、幸福度を向上させる食べ方のひとつは、'''直感'''に従い、栄養価を気にせず好きな時に食べるという人間本来の食べ方に戻ることであるという<ref name=":18" />。]]
[[ハーバード大学医学大学院|ハーバード大学医学部]]によると、不幸と強く関連している健康状態の悪さを考慮に入れたとき、不幸だけでは寿命が短くなるわけではない<ref>{{Cite web|title=Happiness may not extend life|url=https://www.health.harvard.edu/mind-and-mood/happiness-may-not-extend-life|website=Harvard Health|accessdate=2021-01-07|first=Harvard Health|last=Publishing}}</ref>。しかし、実際には健康状態の悪さと不幸は密接に関係しているため<ref>{{Cite journal|last=Ngamaba|first=Kayonda Hubert|last2=Panagioti|first2=Maria|last3=Armitage|first3=Christopher J.|date=2017-10-01|title=How strongly related are health status and subjective well-being? Systematic review and meta-analysis|url=http://academic.oup.com/eurpub/article/27/5/879/3916886/How-strongly-related-are-health-status-and|journal=European Journal of Public Health|volume=27|issue=5|pages=879–885|language=en|doi=10.1093/eurpub/ckx081|issn=1101-1262}}</ref><ref name=":19" />、幸せな人は一般的に健康である。研究によると、平均して、人々の一般的な幸福レベルの50%は遺伝によって決定される。しかし逆にいうと、40%は人の管理下にあり、残りの10%は状況によって異なるということになる。[[ハーバード大学医学大学院|ハーバード大学医学部]]によると幸福を改善する方法は<ref name=":19">{{Cite web|title=Health and happiness go hand in hand|url=https://www.health.harvard.edu/mind-and-mood/health-and-happiness-go-hand-in-hand|website=Harvard Health|date=2021-11-01|accessdate=2021-11-20|language=en|first=Matthew|last=Solan}}</ref>、

# [[大自然|緑]]を見ること<ref>{{Cite journal|last=Capaldi|first=Colin A.|last2=Dopko|first2=Raelyne L.|last3=Zelenski|first3=John M.|date=2014-09-08|title=The relationship between nature connectedness and happiness: a meta-analysis|url=http://journal.frontiersin.org/article/10.3389/fpsyg.2014.00976/abstract|journal=Frontiers in Psychology|volume=5|doi=10.3389/fpsyg.2014.00976|issn=1664-1078|pmc=PMC4157607|pmid=25249992}}</ref>。
# 幸せな[[体験]]にお金を使うこと<ref name=":11" /><ref name=":27" /><ref name=":28">{{Cite journal|last=Carter|first=Travis J.|last2=Gilovich|first2=Thomas|date=2010-01|title=The relative relativity of material and experiential purchases.|url=http://doi.apa.org/getdoi.cfm?doi=10.1037/a0017145|journal=Journal of Personality and Social Psychology|volume=98|issue=1|pages=146–159|language=en|doi=10.1037/a0017145|issn=1939-1315}}</ref><ref name=":29">{{Cite journal|last=Zhang|first=Jia Wei|last2=Howell|first2=Ryan T.|last3=Caprariello|first3=Peter A.|last4=Guevarra|first4=Darwin A.|date=2014-06-01|title=Damned if they do, damned if they don’t: Material buyers are not happier from material or experiential consumption|url=https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0092656614000257|journal=Journal of Research in Personality|volume=50|pages=71–83|doi=10.1016/j.jrp.2014.03.007|issn=0092-6566}}</ref>。
# 幸せな人と一緒にいること。
# 感謝すること。
# 友人や家族との親密な関係を築くこと。
# 定期的に親切な行為を行うこと。
# ボランティア活動をすること。
# 若い頃の趣味を再開すること。
# 家事の委任などの時間節約にお金を使うこと。
# いつもと違う帰り道を辿るだけでいいので、新しいことを経験すること。
# 選択肢を少なくすること。
国際摂食障害学会誌によると、'''直感'''的な食事、つまり食べ物の栄養価をあまり気にせず、お腹が空いたときだけ食べることは、幸福感の増加とも関連しているという<ref name=":18">{{Cite journal|last=Linardon|first=Jake|last2=Tylka|first2=Tracy L.|last3=Fuller‐Tyszkiewicz|first3=Matthew|date=2021-07|title=Intuitive eating and its psychological correlates: A meta‐analysis|url=https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/eat.23509|journal=International Journal of Eating Disorders|volume=54|issue=7|pages=1073–1098|language=en|doi=10.1002/eat.23509|issn=0276-3478}}</ref>。子供にとって睡眠の質は幸福感にとって重要であり<ref>{{Cite journal|last=program collaborators for Environmental influences on Child Health Outcomes (ECHO)|last2=Blackwell|first2=Courtney K.|last3=Hartstein|first3=Lauren E.|last4=Elliott|first4=Amy J.|last5=Forrest|first5=Christopher B.|last6=Ganiban|first6=Jody|last7=Hunt|first7=Kelly J.|last8=Camargo|first8=Carlos A.|last9=LeBourgeois|first9=Monique K.|date=2020-09|title=Better sleep, better life? How sleep quality influences children’s life satisfaction|url=https://link.springer.com/10.1007/s11136-020-02491-9|journal=Quality of Life Research|volume=29|issue=9|pages=2465–2474|language=en|doi=10.1007/s11136-020-02491-9|issn=0962-9343|pmc=PMC7442661|pmid=32399666}}</ref>、自尊心の維持は国際移住者の幸福にとって重要である可能性がある<ref name=":7" />。[[瞑想]]<ref name=":20">{{Cite journal|last=Auty|first=Katherine M.|last2=Cope|first2=Aiden|last3=Liebling|first3=Alison|date=2017-05|title=A Systematic Review and Meta-Analysis of Yoga and Mindfulness Meditation in Prison: Effects on Psychological Well-Being and Behavioural Functioning|url=http://journals.sagepub.com/doi/10.1177/0306624X15602514|journal=International Journal of Offender Therapy and Comparative Criminology|volume=61|issue=6|pages=689–710|language=en|doi=10.1177/0306624X15602514|issn=0306-624X}}</ref>、[[マインドフルネス]]<ref name=":20" /><ref>{{Cite journal|last=Heckenberg|first=Rachael A.|last2=Eddy|first2=Pennie|last3=Kent|first3=Stephen|last4=Wright|first4=Bradley J.|date=2018-11|title=Do workplace-based mindfulness meditation programs improve physiological indices of stress? A systematic review and meta-analysis|url=https://linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/S0022399918305749|journal=Journal of Psychosomatic Research|volume=114|pages=62–71|language=en|doi=10.1016/j.jpsychores.2018.09.010}}</ref><ref>{{Cite journal|last=Mesmer-Magnus|first=Jessica|last2=Manapragada|first2=Archana|last3=Viswesvaran|first3=Chockalingam|last4=Allen|first4=Josh W.|date=2017-05-27|title=Trait mindfulness at work: A meta-analysis of the personal and professional correlates of trait mindfulness|url=https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/08959285.2017.1307842|journal=Human Performance|volume=30|issue=2-3|pages=79–98|language=en|doi=10.1080/08959285.2017.1307842|issn=0895-9285}}</ref>、ヨガ<ref name=":16">{{Cite journal|last=Hendriks|first=Tom|last2=de Jong|first2=Joop|last3=Cramer|first3=Holger|date=2017-07|title=The Effects of Yoga on Positive Mental Health Among Healthy Adults: A Systematic Review and Meta-Analysis|url=http://www.liebertpub.com/doi/10.1089/acm.2016.0334|journal=The Journal of Alternative and Complementary Medicine|volume=23|issue=7|pages=505–517|language=en|doi=10.1089/acm.2016.0334|issn=1075-5535}}</ref>、[[身体活動レベル|身体活動]]<ref>{{Cite journal|last=Won|first=Doyeon|last2=Bae|first2=Jung-sup|last3=Byun|first3=Hyun|last4=Seo|first4=Kwang-bong|date=2019-12-30|title=Enhancing Subjective Well-Being through Physical Activity for the Elderly in Korea: A Meta-Analysis Approach|url=https://www.mdpi.com/1660-4601/17/1/262|journal=International Journal of Environmental Research and Public Health|volume=17|issue=1|pages=262|language=en|doi=10.3390/ijerph17010262|issn=1660-4601|pmc=PMC6982302|pmid=31905948}}</ref><ref>{{Cite journal|last=Wiese|first=Christopher W.|last2=Kuykendall|first2=Lauren|last3=Tay|first3=Louis|date=2018-01-02|title=Get active? A meta-analysis of leisure-time physical activity and subjective well-being|url=https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/17439760.2017.1374436|journal=The Journal of Positive Psychology|volume=13|issue=1|pages=57–66|language=en|doi=10.1080/17439760.2017.1374436|issn=1743-9760}}</ref>は幸福感を向上させ、身体的魅力も幸福感と関連している<ref>{{Cite journal|last=Diener|first=Ed|last2=Wolsic|first2=Brian|last3=Fujita|first3=Frank|date=1995-07|title=Physical attractiveness and subjective well-being.|url=http://doi.apa.org/getdoi.cfm?doi=10.1037/0022-3514.69.1.120|journal=Journal of Personality and Social Psychology|volume=69|issue=1|pages=120–129|language=en|doi=10.1037/0022-3514.69.1.120|issn=1939-1315}}</ref>。

== 幸福と仕事 ==
[[ファイル:Time tracker.jpg|サムネイル|[[時間管理ソフトウェア|時間管理]]は幸福感にも良い影響を与える<ref name=":21" />。]]
幸福が成功につながるというのは、学界ではわりと一般的な認識であり、数多くの研究が幸福が成功につながることを示している<ref>{{Cite journal|last=Lyubomirsky|first=Sonja|last2=King|first2=Laura|last3=Diener|first3=Ed|date=2005-11|title=The Benefits of Frequent Positive Affect: Does Happiness Lead to Success?|url=http://doi.apa.org/getdoi.cfm?doi=10.1037/0033-2909.131.6.803|journal=Psychological Bulletin|volume=131|issue=6|pages=803–855|language=en|doi=10.1037/0033-2909.131.6.803|issn=1939-1455}}</ref><ref>{{Cite book |title=The Rewards of Happiness |url=https://academic.oup.com/edited-volume/38603/chapter/334701500 |publisher=Oxford University Press |date=2013-01-01 |doi=10.1093/oxfordhb/9780199557257.013.0009 |first=Katherine |last=Jacobs Bao |first2=Sonja |last2=Lyubomirsky}}</ref><ref>{{Cite journal|last=Boehm|first=Julia K.|last2=Lyubomirsky|first2=Sonja|date=2008-02|title=Does Happiness Promote Career Success?|url=http://journals.sagepub.com/doi/10.1177/1069072707308140|journal=Journal of Career Assessment|volume=16|issue=1|pages=101–116|language=en|doi=10.1177/1069072707308140|issn=1069-0727}}</ref><ref>{{Cite journal|last=Walsh|first=Lisa C.|last2=Boehm|first2=Julia K.|last3=Lyubomirsky|first3=Sonja|date=2018-05|title=Does Happiness Promote Career Success? Revisiting the Evidence|url=http://journals.sagepub.com/doi/10.1177/1069072717751441|journal=Journal of Career Assessment|volume=26|issue=2|pages=199–219|language=en|doi=10.1177/1069072717751441|issn=1069-0727}}</ref><ref>{{Cite journal|last=Camacho-Morles|first=Jesús|last2=Slemp|first2=Gavin R.|last3=Pekrun|first3=Reinhard|last4=Loderer|first4=Kristina|last5=Hou|first5=Hanchao|last6=Oades|first6=Lindsay G.|date=2021-09|title=Activity Achievement Emotions and Academic Performance: A Meta-analysis|url=https://link.springer.com/10.1007/s10648-020-09585-3|journal=Educational Psychology Review|volume=33|issue=3|pages=1051–1095|language=en|doi=10.1007/s10648-020-09585-3|issn=1040-726X}}</ref>。職場の幸福は、個々の従業員と組織全体のパフォーマンスを向上させ、イノベーション、生産性、エンゲージメント、保持、および仕事の質を向上させる<ref>{{Cite journal|last=Krekel|first=Christian|last2=Ward|first2=George|last3=De Neve|first3=Jan-Emmanuel|date=2019|title=Employee Wellbeing, Productivity, and Firm Performance|url=https://www.ssrn.com/abstract=3356581|journal=SSRN Electronic Journal|language=en|doi=10.2139/ssrn.3356581|issn=1556-5068}}</ref><ref>{{Cite web|title=The Foundations of Happiness at Work|url=https://www.edx.org/course/the-foundations-of-happiness-at-work|website=edX|accessdate=2021-01-07|language=en}}</ref>。つまり、幸せな人はより積極的で生産的であり、より質の高い仕事をする<ref>{{Cite journal|last=Lyubomirsky|first=Sonja|last2=King|first2=Laura|last3=Diener|first3=Ed|date=2005|title=The Benefits of Frequent Positive Affect: Does Happiness Lead to Success?|url=https://psycnet.apa.org/doiLanding?doi=10.1037/0033-2909.131.6.803|journal=Psychological Bulletin|volume=131|issue=6|pages=803–855|doi=10.1037/0033-2909.131.6.803|issn=1939-1455}}</ref>。その上、仕事で幸せな人はより早く昇進し、失業する可能性が低くなる<ref>{{Cite journal|last=Boehm|first=Julia K.|last2=Lyubomirsky|first2=Sonja|date=2008-02-01|title=Does Happiness Promote Career Success?|url=https://doi.org/10.1177/1069072707308140|journal=Journal of Career Assessment|volume=16|issue=1|pages=101–116|language=en|doi=10.1177/1069072707308140|issn=1069-0727}}</ref>。言い換えれば、従業員の幸福を促進する職場では、生産性と革新、顧客ロイヤルティの向上、離職率の低下などの収益のメリットがある<ref>{{Cite web|title=The Science of Happiness at Work Professional Certificate|url=https://www.edx.org/professional-certificate/berkeleyx-science-of-happiness-at-work|website=edX|accessdate=2021-01-07|language=en}}</ref>。そのため、会社への信頼性<ref>{{Cite journal|last=Sutton|first=Anna|date=2020-01|title=Living the good life: A meta-analysis of authenticity, well-being and engagement|url=https://linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/S019188691930577X|journal=Personality and Individual Differences|volume=153|pages=109645|language=en|doi=10.1016/j.paid.2019.109645}}</ref>、[[フレックスタイム制|柔軟な勤務形態]]<ref>{{Cite journal|last=Mache|first=Stefanie|last2=Servaty|first2=Ricarda|last3=Harth|first3=Volker|date=2020-12|title=Flexible work arrangements in open workspaces and relations to occupational stress, need for recovery and psychological detachment from work|url=https://occup-med.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12995-020-00258-z|journal=Journal of Occupational Medicine and Toxicology|volume=15|issue=1|language=en|doi=10.1186/s12995-020-00258-z|issn=1745-6673|pmc=PMC7083021|pmid=32206078}}</ref>や[[時間管理ソフトウェア|時間管理]]<ref name=":21">{{Cite journal|last=Aeon|first=Brad|last2=Faber|first2=Aïda|last3=Panaccio|first3=Alexandra|editor-last=Pérez-González|editor-first=Juan-Carlos|date=2021-01-11|title=Does time management work? A meta-analysis|url=https://dx.plos.org/10.1371/journal.pone.0245066|journal=PLOS ONE|volume=16|issue=1|pages=e0245066|language=en|doi=10.1371/journal.pone.0245066|issn=1932-6203|pmc=PMC7799745|pmid=33428644}}</ref>は幸福度を高める。また、自分の強みを活かせるようにすることは、幸福を高めることにつながる<ref name=":15" />。
[[ファイル:GDJ-World-Flags-Globe .svg|サムネイル|細部に気を配るよりも、[[地球]]規模で物事を考えたほうが幸福感が増すというのである<ref name=":22">{{Cite journal|last=Ji|first=Li-Jun|last2=Yap|first2=Suhui|last3=Best|first3=Michael W.|last4=McGeorge|first4=Kayla|date=2019-03-26|title=Global Processing Makes People Happier Than Local Processing|url=https://www.frontiersin.org/article/10.3389/fpsyg.2019.00670/full|journal=Frontiers in Psychology|volume=10|doi=10.3389/fpsyg.2019.00670|issn=1664-1078|pmc=PMC6448006|pmid=30984079}}</ref>。]]

== 幸福と社会 ==

* 多様な社会的交流は幸福度を高め<ref>{{Cite web |title=Can varied social interactions boost well-being? |url=https://www.health.harvard.edu/staying-healthy/can-varied-social-interactions-boost-well-being |website=Harvard Health |date=2023-04-01 |access-date=2023-03-21 |language=en |first=Heidi |last=Godman}}</ref>、悪い人間関係は幸福度を下げる<ref>{{Cite web |title=Fostering healthy relationships |url=https://www.health.harvard.edu/mind-and-mood/fostering-healthy-relationships |website=Harvard Health |date=2021-07-01 |access-date=2023-03-21 |language=en |first=Kelly |last=Bilodeau}}</ref>。一貫した関心に基づく利社会志向<ref>{{Cite journal|last=Weziak-Bialowolska|first=Dorota|last2=Bialowolski|first2=Piotr|last3=VanderWeele|first3=Tyler J.|last4=McNeely|first4=Eileen|date=2021-03|title=Character Strengths Involving an Orientation to Promote Good Can Help Your Health and Well-Being. Evidence From two Longitudinal Studies|url=http://journals.sagepub.com/doi/10.1177/0890117120964083|journal=American Journal of Health Promotion|volume=35|issue=3|pages=388–398|language=en|doi=10.1177/0890117120964083|issn=0890-1171|pmc=PMC8010894|pmid=33047616}}</ref><ref name=":23">{{Cite journal|date=2023|title=Supplemental Material for A Meta-Analysis of the Dark Side of the American Dream: Evidence for the Universal Wellness Costs of Prioritizing Extrinsic Over Intrinsic Goals|url=http://supp.apa.org/psycarticles/supplemental/pspp0000431/pspp0000431_supp.html|journal=Journal of Personality and Social Psychology|language=en|doi=10.1037/pspp0000431.supp|issn=0022-3514}}</ref>、自己成長、人間関係、健康を目標にすれば、幸福度を向上させる可能性を秘めており<ref name=":23" />、都市部の人々の平均幸福度は農村部の人々よりも著しく高く<ref>{{Cite journal|last=Jun-hua|first=Zhang|date=2011|title=A Meta-analysis Concerning Urban-Rural Well-being Difference: Comparative Analysis of Three Components|url=https://www.semanticscholar.org/paper/A-Meta-analysis-Concerning-Urban-Rural-Well-being-Jun-hua/832ad608c108205aae3e51f75af42af185e96575|journal=Journal of Shanghai Jiaotong University}}</ref>、やりがいのある楽しい活動への参加は幸福度を向上させる<ref name=":12" />。人生に意味を見出すことは、幸福感とも相関関係がある<ref>{{Cite journal|last=Jin|first=Yuchang|last2=He|first2=Mingcheng|last3=Li|first3=Junyi|date=2016|title=The relationship between meaning in life and subjective well-being in China: A Meta-analysis|url=http://journal.psych.ac.cn/xlkxjz/CN/10.3724/SP.J.1042.2016.01854|journal=Advances in Psychological Science|volume=24|issue=12|pages=1854|language=en|doi=10.3724/SP.J.1042.2016.01854|issn=1671-3710}}</ref>。細部の知覚にこだわるよりも、より大きな[[世界]]的構図を知覚する方が幸福度が高くなる<ref name=":22" />。感情の抑圧や怒りは、社会的幸福度の低下と相関している<ref>{{Cite journal|last=Chervonsky|first=Elizabeth|last2=Hunt|first2=Caroline|date=2017-06|title=Suppression and expression of emotion in social and interpersonal outcomes: A meta-analysis.|url=http://doi.apa.org/getdoi.cfm?doi=10.1037/emo0000270|journal=Emotion|volume=17|issue=4|pages=669–683|language=en|doi=10.1037/emo0000270|issn=1931-1516}}</ref>。
* エロス的な恋愛は幸福度が高く、遊び心や執着心のある恋愛関係は不幸と関連している<ref>{{Cite journal|last=Karandashev|first=Victor|date=2022-12-09|title=Adaptive and maladaptive love attitudes|url=https://interpersona.psychopen.eu/index.php/interpersona/article/view/6283|journal=Interpersona: An International Journal on Personal Relationships|volume=16|issue=2|pages=158–177|doi=10.5964/ijpr.6283|issn=1981-6472}}</ref>。
* 高齢者にとっても、人間関係は量より質であり<ref name=":26">{{Cite journal|last=Pinquart|first=Martin|last2=Sörensen|first2=Silvia|date=2000|title=Influences of socioeconomic status, social network, and competence on subjective well-being in later life: A meta-analysis.|url=http://doi.apa.org/getdoi.cfm?doi=10.1037/0882-7974.15.2.187|journal=Psychology and Aging|volume=15|issue=2|pages=187–224|language=en|doi=10.1037/0882-7974.15.2.187|issn=1939-1498}}</ref>、宗教は幸福を向上させる<ref>{{Cite journal|last=Ghufron|first=M Nur|last2=Suminta|first2=Rini Risnawita|date=2018-12-27|title=Apakah Beragama Membuat Bahagia? Meta-Analisis|url=http://journal.stainkudus.ac.id/index.php/fikrah/article/view/4081|journal=FIKRAH|volume=6|issue=2|pages=409|doi=10.21043/fikrah.v6i2.4081|issn=2476-9649}}</ref><ref>{{Cite journal|last=Li|first=Jia|last2=Wang|first2=Qi|date=2022-02|title=Religiosity and health among Chinese older adults: a meta-analytic review|url=https://www.cambridge.org/core/product/identifier/S0144686X20000835/type/journal_article|journal=Ageing and Society|volume=42|issue=2|pages=271–305|language=en|doi=10.1017/S0144686X20000835|issn=0144-686X}}</ref>。そして、高齢者にとって社会経済的地位と能力は幸福にとって重要である<ref name=":26" />。ちなみに、高齢者は平均的により他の人がどのような幸福感を抱いているかを認識できないことがある<ref>{{Cite journal|last=Ruffman|first=Ted|last2=Henry|first2=Julie D.|last3=Livingstone|first3=Vicki|last4=Phillips|first4=Louise H.|date=2008-01|title=A meta-analytic review of emotion recognition and aging: Implications for neuropsychological models of aging|url=https://linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/S0149763408000109|journal=Neuroscience & Biobehavioral Reviews|volume=32|issue=4|pages=863–881|language=en|doi=10.1016/j.neubiorev.2008.01.001}}</ref><ref>{{Cite journal|last=Hayes|first=Grace S.|last2=McLennan|first2=Skye N.|last3=Henry|first3=Julie D.|last4=Phillips|first4=Louise H.|last5=Terrett|first5=Gill|last6=Rendell|first6=Peter G.|last7=Pelly|first7=Rachel M.|last8=Labuschagne|first8=Izelle|date=2020-03|title=Task characteristics influence facial emotion recognition age-effects: A meta-analytic review.|url=http://doi.apa.org/getdoi.cfm?doi=10.1037/pag0000441|journal=Psychology and Aging|volume=35|issue=2|pages=295–315|language=en|doi=10.1037/pag0000441|issn=1939-1498}}</ref>。
* 社会的に差別されることは不幸と有意な相関関係があり、社会的弱者や子どもへの影響はさらに強く<ref>{{Cite journal|last=Schmitt|first=Michael T.|last2=Branscombe|first2=Nyla R.|last3=Postmes|first3=Tom|last4=Garcia|first4=Amber|date=2014|title=The consequences of perceived discrimination for psychological well-being: A meta-analytic review.|url=http://doi.apa.org/getdoi.cfm?doi=10.1037/a0035754|journal=Psychological Bulletin|volume=140|issue=4|pages=921–948|language=en|doi=10.1037/a0035754|issn=1939-1455}}</ref>、微妙な差別はあからさまな差別よりもはるかに有害で<ref>{{Cite journal|last=Walker|first=Sarah S.|last2=Corrington|first2=Abby|last3=Hebl|first3=Mikki|last4=King|first4=Eden B.|date=2022-04|title=Subtle Discrimination Overtakes Cognitive Resources and Undermines Performance|url=https://link.springer.com/10.1007/s10869-021-09747-2|journal=Journal of Business and Psychology|volume=37|issue=2|pages=311–324|language=en|doi=10.1007/s10869-021-09747-2|issn=0889-3268}}</ref>、被差別者の人生を台無しにするような深刻な結果をもたらす可能性がある<ref name=":222">{{Cite journal|last=Small|first=Mario L.|last2=Pager|first2=Devah|date=2020-05-01|title=Sociological Perspectives on Racial Discrimination|url=https://pubs.aeaweb.org/doi/10.1257/jep.34.2.49|journal=Journal of Economic Perspectives|volume=34|issue=2|pages=49–67|language=en|doi=10.1257/jep.34.2.49|issn=0895-3309}}</ref>。社会的支援も移住者の幸福にとって重要である<ref name=":7" />。日本人が海外に移住すると、その国では少数民族にもなる。[[少数民族]]の民族に対する誇りは、幸福度や健康の向上と相関関係がある<ref>{{Cite journal|last=Mewes|first=Ricarda|last2=Asbrock|first2=Frank|last3=Laskawi|first3=Johanna|date=2015-10|title=Perceived discrimination and impaired mental health in Turkish immigrants and their descendents in Germany|url=https://linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/S0010440X15001005|journal=Comprehensive Psychiatry|volume=62|pages=42–50|language=en|doi=10.1016/j.comppsych.2015.06.009}}</ref><ref>{{Cite journal|last=Rivas‐Drake|first=Deborah|last2=Syed|first2=Moin|last3=Umaña‐Taylor|first3=Adriana|last4=Markstrom|first4=Carol|last5=French|first5=Sabine|last6=Schwartz|first6=Seth J.|last7=Lee|first7=Richard|last8=Ethnic and Racial Identity in the 21st Century Study Group|date=2014-01|title=Feeling Good, Happy, and Proud: A Meta‐Analysis of Positive Ethnic–Racial Affect and Adjustment|url=https://srcd.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/cdev.12175|journal=Child Development|volume=85|issue=1|pages=77–102|language=en|doi=10.1111/cdev.12175|issn=0009-3920}}</ref>。
* [[ソーシャルメディア]](Youtube、Twitter、WhatsAppなど)は幸福度を低下させると考えられているが<ref>{{Cite journal|last=Marino|first=Claudia|last2=Gini|first2=Gianluca|last3=Vieno|first3=Alessio|last4=Spada|first4=Marcantonio M.|date=2018-01|title=The associations between problematic Facebook use, psychological distress and well-being among adolescents and young adults: A systematic review and meta-analysis|url=https://linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/S0165032717307012|journal=Journal of Affective Disorders|volume=226|pages=274–281|language=en|doi=10.1016/j.jad.2017.10.007}}</ref><ref name=":24">{{Cite web|和書|title=Misconceptions #3: Screen Time & Social Media - Misconceptions about happiness |url=https://www.coursera.org/lecture/the-science-of-well-being-for-teens/misconceptions-3-screen-time-social-media-441qR |website=Coursera |access-date=2023-08-27 |language=ja}}</ref><ref name=":25">{{Cite web |title=Scroll smarter to protect your mental health |url=https://www.health.harvard.edu/mind-and-mood/scroll-smarter-to-protect-your-mental-health |website=Harvard Health |date=2022-05-01 |access-date=2023-08-27 |language=en |first=Maureen |last=Salamon}}</ref>、写真をアップロードするなどの積極的で自己主導的な利用は、単に他人の投稿を閲覧するなどの依存的な利用よりも幸福度を低下させにくく<ref name=":24" /><ref name=":25" />、ソーシャルメディア上の友人を多く持つことは、より幸福度を高める可能性がある<ref>{{Cite journal|last=Huang|first=Chiungjung|date=2021-04-26|title=Correlations of online social network size with well-being and distress: A meta-analysis|url=https://cyberpsychology.eu/article/view/13805|journal=Cyberpsychology: Journal of Psychosocial Research on Cyberspace|volume=15|issue=2|language=en|doi=10.5817/CP2021-2-3|issn=1802-7962}}</ref>。

==幸福と法律==
なお、[[法律]]でも幸福は扱われている。[[人権|基本的人権]]には[[幸福追求権]]が含まれており、法律上誰でも等しく幸福になる権利を有していると考えられている。この幸福追求権は、他人の[[基本的人権]]を侵害しない限りに於いて、[[国家権力]]によって制約される事は無い。

== 幸福とお金 ==
経済的満足は主観的幸福に寄与し<ref>{{Cite journal|last=Ngamaba|first=Kayonda Hubert|last2=Armitage|first2=Christopher|last3=Panagioti|first3=Maria|last4=Hodkinson|first4=Alexander|date=2020-04|title=How closely related are financial satisfaction and subjective well-being? Systematic review and meta-analysis|url=https://linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/S2214804319300898|journal=Journal of Behavioral and Experimental Economics|volume=85|pages=101522|language=en|doi=10.1016/j.socec.2020.101522}}</ref>、高齢者の幸福に関しては、収入は教育よりも重要である<ref name=":26" />。しかし、金や名声や美貌を目指すことは人を不幸にする可能性があり<ref>{{Cite journal|date=2023|title=Supplemental Material for A Meta-Analysis of the Dark Side of the American Dream: Evidence for the Universal Wellness Costs of Prioritizing Extrinsic Over Intrinsic Goals|url=http://supp.apa.org/psycarticles/supplemental/pspp0000431/pspp0000431_supp.html|journal=Journal of Personality and Social Psychology|language=en|doi=10.1037/pspp0000431.supp|issn=0022-3514}}</ref><ref name=":2">{{Cite journal|last=Dittmar|first=Helga|last2=Bond|first2=Rod|last3=Hurst|first3=Megan|last4=Kasser|first4=Tim|date=2014|title=The relationship between materialism and personal well-being: A meta-analysis.|url=http://doi.apa.org/getdoi.cfm?doi=10.1037/a0037409|journal=Journal of Personality and Social Psychology|volume=107|issue=5|pages=879–924|language=en|doi=10.1037/a0037409|issn=1939-1315}}</ref>、[[物質主義|物質主義者]]はより不幸になる<ref name=":2" /><ref>{{Cite journal|last=Unanue|first=Wenceslao|last2=Rempel|first2=Konrad|last3=Gómez|first3=Marcos E.|last4=Van den Broeck|first4=Anja|date=2017|title=When and Why Does Materialism Relate to Employees’ Attitudes and Well-being: The Mediational Role of Need Satisfaction and Need Frustration|url=https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fpsyg.2017.01755|journal=Frontiers in Psychology|volume=8|doi=10.3389/fpsyg.2017.01755|issn=1664-1078|pmc=PMC5641344|pmid=29066992}}</ref><ref>{{Cite journal|last=Moldes|first=Olaya|last2=Ku|first2=Lisbeth|date=2020-10|title=Materialistic cues make us miserable: A meta‐analysis of the experimental evidence for the effects of materialism on individual and societal well‐being|url=https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/mar.21387|journal=Psychology & Marketing|volume=37|issue=10|pages=1396–1419|language=en|doi=10.1002/mar.21387|issn=0742-6046}}</ref>。ここ数十年の研究では、幸福と[[財産|金銭]]の関連性は非常に弱いが<ref name=":11" /><ref name=":4">{{Cite journal|last=Boyce|first=Christopher J.|last2=Daly|first2=Michael|last3=Hounkpatin|first3=Hilda O.|last4=Wood|first4=Alex M.|date=2017-04|title=Money May Buy Happiness, but Often So Little That It Doesn’t Matter|url=http://journals.sagepub.com/doi/10.1177/0956797616672271|journal=Psychological Science|volume=28|issue=4|pages=544–546|language=en|doi=10.1177/0956797616672271|issn=0956-7976}}</ref><ref>{{Cite web|和書|title=Our Mind Lies to Us About Happiness - Misconceptions about happiness |url=https://www.coursera.org/lecture/the-science-of-well-being-for-teens/our-mind-lies-to-us-about-happiness-7pOUz |website=Coursera |access-date=2023-08-27 |language=ja}}</ref><ref name=":0">{{Cite journal|last=Fischer|first=Ronald|last2=Boer|first2=Diana|date=2011|title=What is more important for national well-being: Money or autonomy? A meta-analysis of well-being, burnout, and anxiety across 63 societies.|url=http://doi.apa.org/getdoi.cfm?doi=10.1037/a0023663|journal=Journal of Personality and Social Psychology|volume=101|issue=1|pages=164–184|language=en|doi=10.1037/a0023663|issn=1939-1315}}</ref><ref name=":3">{{Cite journal|last=Judge|first=Timothy A.|last2=Piccolo|first2=Ronald F.|last3=Podsakoff|first3=Nathan P.|last4=Shaw|first4=John C.|last5=Rich|first5=Bruce L.|date=2010-10-01|title=The relationship between pay and job satisfaction: A meta-analysis of the literature|url=https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0001879110000722|journal=Journal of Vocational Behavior|volume=77|issue=2|pages=157–167|language=en|doi=10.1016/j.jvb.2010.04.002|issn=0001-8791}}</ref><ref name=":5">{{Cite journal|last=Steel|first=Piers|last2=Taras|first2=Vasyl|last3=Uggerslev|first3=Krista|last4=Bosco|first4=Frank|date=2018-05|title=The Happy Culture: A Theoretical, Meta-Analytic, and Empirical Review of the Relationship Between Culture and Wealth and Subjective Well-Being|url=http://journals.sagepub.com/doi/10.1177/1088868317721372|journal=Personality and Social Psychology Review|volume=22|issue=2|pages=128–169|language=en|doi=10.1177/1088868317721372|issn=1088-8683|pmc=PMC5892848|pmid=28770649}}</ref>、もちろん借金は人を不幸にする<ref>{{Cite journal|last=Tay|first=Louis|last2=Batz|first2=Cassondra|last3=Parrigon|first3=Scott|last4=Kuykendall|first4=Lauren|date=2017-06|title=Debt and Subjective Well-being: The Other Side of the Income-Happiness Coin|url=http://link.springer.com/10.1007/s10902-016-9758-5|journal=Journal of Happiness Studies|volume=18|issue=3|pages=903–937|language=en|doi=10.1007/s10902-016-9758-5|issn=1389-4978}}</ref>。[[経験]]や他人のために使うお金は幸福度を高めるし、自分の[[性格]]に本当に合った使い方をするお金も幸福度を高める<ref name=":11">{{Cite journal|last=Matz|first=Sandra C.|last2=Gladstone|first2=Joe J.|last3=Stillwell|first3=David|date=2016-05|title=Money Buys Happiness When Spending Fits Our Personality|url=http://journals.sagepub.com/doi/10.1177/0956797616635200|journal=Psychological Science|volume=27|issue=5|pages=715–725|language=en|doi=10.1177/0956797616635200|issn=0956-7976}}</ref><ref name=":27">{{Cite journal|last=Weingarten|first=Evan|last2=Goodman|first2=Joseph K|editor-last=Jeffrey Inman|editor-first=J|editor2-last=Stephen|editor2-first=Andrew T|date=2021-03-20|title=Re-examining the Experiential Advantage in Consumption: A Meta-Analysis and Review|url=https://academic.oup.com/jcr/article/47/6/855/5906525|journal=Journal of Consumer Research|volume=47|issue=6|pages=855–877|language=en|doi=10.1093/jcr/ucaa047|issn=0093-5301}}</ref><ref name=":28" /><ref name=":29" />。しかし現実には、人は自分の[[性格]]に合ったお金の使い方をしないので、結局幸福とお金の関連性は低いままである<ref name=":4" />。給与は幸福度とはあまり関係がないが<ref name=":3" />、幸福度の指標である<ref>{{Cite journal|last=Erdogan|first=Berrin|last2=Bauer|first2=Talya N.|last3=Truxillo|first3=Donald M.|last4=Mansfield|first4=Layla R.|date=2012-07|title=Whistle While You Work: A Review of the Life Satisfaction Literature|url=http://journals.sagepub.com/doi/10.1177/0149206311429379|journal=Journal of Management|volume=38|issue=4|pages=1038–1083|language=en|doi=10.1177/0149206311429379|issn=0149-2063}}</ref>人生の達成度は、所得'''95,000'''米ドルで最も高く、幸福度は所得'''60,000~75,000'''米ドルで最も高い<ref>{{Cite journal|last=Jebb|first=Andrew T.|last2=Tay|first2=Louis|last3=Diener|first3=Ed|last4=Oishi|first4=Shigehiro|date=2018-01-08|title=Happiness, income satiation and turning points around the world|url=https://www.nature.com/articles/s41562-017-0277-0|journal=Nature Human Behaviour|volume=2|issue=1|pages=33–38|language=en|doi=10.1038/s41562-017-0277-0|issn=2397-3374}}</ref>。収入よりも人間関係や文化的価値観が幸福の主な要因であり<ref name=":5" />、お金よりも個人主義的自由が幸福に関わっている<ref name=":0" />。


== 幸福の数値化と統計・研究 ==
== 幸福の数値化と統計・研究 ==

2024年6月29日 (土) 04:34時点における版

四つ葉のクローバーを見つけると幸福になれるという伝説がある

幸福(こうふく、: εὐδαιμονία: felicitas: happiness)とは、が満ち足りていること[1]幸せ(しあわせ)ともいう。人間は古来、幸福であるための方法に深い関心を寄せてきた。

幸福の数値化と統計・研究

世界幸福度ランキング

国際連合は、1人当たり国内総生産(GDP)や健康寿命、他者への寛容度などから「世界幸福度ランキング」を作成・公表している。2019年は156カ国・地域が対象で、トップ5はフィンランドデンマークノルウェーアイスランドオランダ社会保障が充実した北欧諸国が上位に目立つ(スウェーデンも第7位である)。日本は第58位であった[2]

国民総幸福量(GNH)

国民総幸福量(GNH、Gross National Happiness)とは元々、ブータンの民主化を進めた元国王が掲げた、国民の幸福を政治の目的とし、政策判断に現実に活かすために、幸福の量を具体的な数値・指標として定めたものである。背景には、先進諸国で採用されたGDPなどの経済指標が、人々の幸福に役立つどころか、むしろ反対に人々を不幸にしたり苦しめるような政策へと各政府を駆り立ててしまっている、という考えがある。

国民総幸福量という考え方は世界各国で反響を生んでおり、近年では日本でも、政策の評価は全国民の幸福感を統計的に計測した指標を参考にしたりすべきだ、といった内容の話は主要政党内や政府内などでも出るようになっている。

幸福の測定

日立製作所は、人が幸福を感じる度合いを測定する技術を開発。それを応用して企業従業員の幸福度をスマートフォンアプリで計測し、「前向きな言葉で会話する」「休憩時間にストレッチする」など従業員の満足度を高める方法を提案する事業を展開する新会社ハピネスプラネットを2020年に設立した [3]

知能指数・人口密度

幸福感は人口密度が増えるほど減り、知能が高いほど孤独でいる時間に幸福感を得る[4][5][6]

脳科学

幸福感を感じたときには、オキシトシンセロトニンドーパミンエンドルフィンという幸福感を引き起こす脳内物質が確認される[7]

  • セロトニンが放出されるのは、やすらぎや癒やしなどのリラックスしている時である[7]
  • オキシトシンが放出されるのは、他者との良いつながりがあるときである[7]
  • ドーパミンが放出されるのは、何かしらの達成・成功をなした時である[7]
  • エンドルフィンが放出されるのは、笑顔でいるとき、恋愛中、強い信念を抱いて行動している時、もしくは痛みの中で放出され痛みを緩和する[8]

幸福や不幸になれてしまって、幸福感や不幸感が無くなる現象を快楽順応(別名:ヘドニック・トレッドミル現象)と呼ぶ。一時の報酬が多くなっても、幸福感が一時的な物であるという現象の説明ともなっている。

経済学・政治学

主観的な幸福感の統計データ等を活用し、政策決定や経済に反映させる経済学を幸福の経済学英語版(幸せの経済学)と呼ぶ[9][10]

脚注

注釈

出典

  1. ^ 広辞苑』第五版 p.916
  2. ^ 日経ヴェリタス』2019年4月21日50面「Econo Graphics」
  3. ^ 日立、幸福度を測るアプリ提供で新会社日本経済新聞 ニュースサイト(2020年6月29日)2020年9月23日閲覧
  4. ^ Li, Norman P. (2016年11月). “Country roads, take me home… to my friends: How intelligence, population density, and friendship affect modern happiness” (英語). British Journal of Psychology. pp. 675–697. doi:10.1111/bjop.12181. 2022年10月30日閲覧。
  5. ^ IQが低い=友達が多い”. www.vice.com. 2022年10月30日閲覧。
  6. ^ 「IQが高い人たち」が生きづらさを感じた瞬間…本人らが明かした(週刊現代) @gendai_biz”. 現代ビジネス. 2022年10月30日閲覧。
  7. ^ a b c d 「仕事とお金で幸せは得られない!」脳科学が教える人生の結論”. ダイヤモンド・オンライン (2020年8月15日). 2022年10月30日閲覧。
  8. ^ 日本経済新聞社・日経BP社. “幸せ感よぶ脳内ホルモン 「エンドルフィン」の作り方|ヘルスUP|NIKKEI STYLE”. NIKKEI STYLE. 2022年10月30日閲覧。
  9. ^ 「国の幸福」を数値で計測 経済学で社会問題を解く”. 日本経済新聞 (2022年9月11日). 2022年11月9日閲覧。
  10. ^ 筒井, 義郎 (2012年). “経済学,幸福の経済学と主観的幸福度”. 心理学評論刊行会. doi:10.24602/sjpr.55.1_22. 2022年11月9日閲覧。

参考文献

関連書籍

関連項目

外部リンク