「血液ガス分析」の版間の差分
Anesth Earth (会話 | 投稿記録) |
Anesth Earth (会話 | 投稿記録) 英語版ウィキペディア Arterial blood gas test(2024年1月15日 15:47:01(UTC))版の翻訳に、出典つけて加筆、英語版の無出典記述は除去。前の版の個別出典のない記述は上書きとしています。血液ガス分析の項目よりも酸塩基平衡や個別の病態で記載されるべきかと思います。前の版の参考文献は今回の加筆の参考としてないので、関連文献に移動しました。いずれも良書ですので、再加筆の参考になると思います。下書きであるSpecial:PermaLink/100666507より転記。Wikipedia 翻訳支援ツール Ver1.32使用。 タグ: サイズの大幅な増減 2017年版ソースエディター |
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{{Infobox diagnostic |
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{{複数の問題 |
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| Name = 血液ガス分析 |
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| 出典の明記 = 2014年6月 |
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| Image = Davenport fig 10.jpg |
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| 参照方法 = 2012年2月 |
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| Width = 300px |
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| Caption = |
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| ICD10 = |
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| ICD9 = |
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| MeshID = D001784 |
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| MedlinePlus = 003855 |
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| LOINC = {{LOINC|24336-0}} |
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| OtherCodes = |
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}} |
}} |
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{{ページ番号|date=2014年6月}} |
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'''血液ガス分析'''(けつえきガスぶんせき、[[英語]]:blood gas analysis, '''BGA''')とは、[[血液]]中に含まれる[[酸素]]や[[二酸化炭素]]の量、あるいは [[水素イオン指数|pH]] を測定する検査。通常は[[動脈血]]を測定する。 |
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'''血液ガス分析'''(けつえきガスぶんせき、{{Lang-en-short|blood gas analysis}}、略称: '''BGA'''<ref>{{Cite web |title=血液ガス分析(BGA)|知っておきたい臨床で使う指標[14] {{!}} 看護roo![カンゴルー] |url=https://www.kango-roo.com/learning/4020/ |website=看護roo! |date=2017-01-30 |access-date=2024-06-01}}</ref>)は、[[酸素]]や[[二酸化炭素]]などの血液中のガスの量を測定するものである。通常の採血検査では[[静脈]]からの採血だが、血液ガス分析では通常、[[動脈]]が選択される。この場合、動脈血液ガス分析(Arterial blood gas、略称: '''ABG''')と呼ばれる。この検査では、[[注射器]]と[[注射針|細い針]]を用いて[[橈骨動脈]]から少量の血液を採取する必要があるが<ref>{{Cite web|url=http://www.patient.info/doctor/Arterial-Blood-Gases-Indications-and-Interpretation.htm |title=Arterial Blood Gases - Indications and Interpretation |author=Dr Colin Tidy |date=26 Jan 2015 |others=Reviewed by Dr Adrian Bonsall |website=Patient |access-date=2017-01-02}}</ref>、[[鼠径部]]の[[大腿動脈]]やその他の部位から採取することもある。[[動脈ライン|動脈カテーテル]]から採血することもできる。 |
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== 目的 == |
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主な目的は次の 3 つである。 |
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# [[呼吸]]([[ガス交換]])の状態を調べる。 |
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# 肺における酸素化を調べる。 |
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# 体内の[[酸]]・[[塩基]]平衡を調べる。 |
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BGAでは、動脈血[[酸素分圧]](PaO<sub>2</sub>)、{{仮リンク|動脈血二酸化炭素分圧|en|PaCO2|redirect=1|label=動脈血二酸化炭素分圧}}(PaCO<sub>2</sub>)、および血液の[[水素イオン指数|pH]]を測定する。さらに、動脈血[[酸素飽和度]](SaO<sub>2</sub>)も測定できる。このような情報は、重篤な疾患や呼吸器疾患の患者を治療する際には不可欠である。したがって、BGAは[[集中治療室]]で患者に行われる最も一般的な検査のひとつである。他の病棟や外来では、[[パルスオキシメーター|パルスオキシメトリー]]や[[カプノグラフィ|カプノグラフィー]]が、同様の情報を得るための侵襲性の低い代替方法であるが、正確性に劣り、血液ガス分析を完全に代替するものでは無い<ref>{{Cite web |title=Pulse Oximetry: Uses, Readings, and How It Works |url=https://www.healthline.com/health/pulse-oximetry |website=Healthline |date=2017-08-02 |access-date=2024-06-01 |language=en}}</ref><ref>{{Cite journal|last=Proulx|first=J.|date=1999-11|title=Respiratory monitoring: arterial blood gas analysis, pulse oximetry, and end-tidal carbon dioxide analysis|url=https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10652840/|journal=Clinical Techniques in Small Animal Practice|volume=14|issue=4|pages=227–230|doi=10.1016/S1096-2867(99)80015-2|issn=1096-2867|pmid=10652840}}</ref>。 |
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[[ヒト]]を始めとする[[高等生物]]は、生命活動に必要な[[エネルギー]]を得るために体内で酸素を消費して二酸化炭素を発生させている。体内で発生した二酸化炭素は血液([[静脈血]])に乗って[[肺]]に運ばれる。肺では呼吸によって血液中の二酸化炭素を放出する一方、酸素を血液中に取り込んでいる。こうして肺を通過した後の血液は酸素を豊富に含み、動脈血と呼ばれる。この血液を採取して酸素と二酸化炭素の量を調べることにより、肺が正常に機能しているかどうかがわかる。[[換気]]の指標としては [[#PaCO2|PaCO<sub>2</sub>]] が、酸素化の指標としては [[#PaO2|PaO<sub>2</sub>]] や [[#AaDO2|AaDO<sub>2</sub>]] がよく利用される。これらの値を正しく解釈するために[[呼吸数]]の併記が必要である。 |
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BGAでは、血液中の[[重炭酸塩]]濃度を測定することもできる。多くの血液ガス分析装置は、[[乳酸]]、[[ヘモグロビン]]、いくつかの[[電解質]]、酸素化ヘモグロビン、{{仮リンク|カルボキシヘモグロビン|en|carboxyhemoglobin|redirect=1}}、[[メトヘモグロビン]]の濃度も測定できる。BGAは、肺胞-毛細血管膜を介したガス交換を測定するために、主に[[呼吸器科]]および[[集中治療医学|集中治療科]]で行われる。BGAは、医学の他の分野でもさまざまに応用されている。測定値の組み合わせは複雑で解釈が難しいことがあるため、計算機<ref name="ABG interpreter">{{Cite web| author=Baillie K| title=Arterial Blood Gas Interpreter| url=http://www.prognosis.org/arterial_blood_gas_calculator.php| publisher=prognosis.org| access-date=2007-07-05| archive-date=2013-03-12| archive-url=https://web.archive.org/web/20130312041312/http://www.prognosis.org/arterial_blood_gas_calculator.php| url-status=dead}} - Online arterial blood gas analysis</ref>、[[ノモグラム]]、経験則<ref>{{Cite journal |last=Baillie |first=JK |title=Simple, easily memorised 'rules of thumb' for the rapid assessment of physiological compensation for acid-base disorders |journal=Thorax |volume=63 |issue=3 |pages=289–90 |year=2008 |pmid=18308967 |doi=10.1136/thx.2007.091223|doi-access=free }}</ref>が一般的に使用される。 |
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生命活動により体内では様々な[[有機酸]]が合成されるが、調節機構のはたらきにより、体内環境は常に pH 7.4 前後に保たれている。この調節機構が破綻して体内に酸が蓄積すると(例:腎不全など)体内の酸・アルカリのバランスが崩れ、それを代償するために呼吸回数が増えて二酸化炭素の量が減ることがある(二酸化炭素も「[[炭酸]]」という酸である)。動脈血中の二酸化炭素の量と pH を調べることにより、間接的に体内の酸・塩基平衡を知ることができる。 |
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BGAサンプルはもともと、分析のために医療現場から検査室に送られていた。近年では、[[臨床現場即時検査]](ポイントオブケア検査、POC検査)としても分析が可能である。 |
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== 検査対象 == |
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主なもののみ列挙すると[[呼吸不全]]がある患者、[[意識障害]]がある患者、[[ショック]]等、重篤な状態にある患者、呼吸機能を精査する必要のある患者([[手術]]前後の患者など)があげられる。呼吸状態の評価と酸塩基平衡の評価が必要と判断されれば必ずといってよいほど行われる検査である。 |
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== |
==採血== |
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[[ファイル:Arterial blood gas device.jpg|thumb| 卓上型の検査装置 ABL800 FLEX - {{仮リンク|ラジオメーター (企業)|en|Radiometer (company)|redirect=1|label=ラジオメーター社}}]] |
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大腿動脈([[鼠径]]部)、上腕動脈(肘)もしくは橈骨動脈(手首)などから採血する。採血管(シリンジ)には[[抗凝固薬]]が添加されており、採った血液の凝固を防ぐ。 |
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[[ファイル:Cobas221A.png|thumb|現代の血液ガス分析装置。この装置は、pH、{{仮リンク|二酸化炭素分圧|en|PCO2|redirect=1|label=pCO<sub>2</sub>}}、pO<sub>2</sub>、[[SaO2|SaO<sub>2</sub>]]、Na<sup>+</sup>、K<sup>+</sup>、Cl<sup>-</sup>、Ca<sup>2+</sup>、[[ヘモグロビン]](合計および誘導体である、O<sub>2</sub>Hb、MetHb、COHb、HHb、CNHb)、[[ヘマトクリット値|ヘマトクリット]]、[[総ビリルビン]]、[[グルコース]]、[[乳酸]]、[[尿素]]を測定することができる<ref>{{Cite web |title=cobas b 221 system |url=https://diagnostics.roche.com/global/en/products/instruments/cobas-b-221-2-system-ins-391.html |website=Diagnostics |access-date=2024-06-08 |language=en}}</ref>(Cobas b 221 -[[エフ・ホフマン・ラ・ロシュ]]社製).。]]血液ガス分析のための動脈血の採血は、通常、[[医師]]などの医療従事者が行う<ref>{{Cite journal |vauthors=Aaron SD, Vandemheen KL, Naftel SA, Lewis MJ, Rodger MA |title=Topical tetracaine prior to arterial puncture: a randomized, placebo-controlled, clinical trial |journal=Respir. Med. |volume=97 |issue=11 |pages=1195–1199 |year=2003 |pmid=14635973 |doi=10.1016/S0954-6111(03)00226-9 |doi-access=free }}</ref>。[[橈骨動脈]]から採血するのが最も一般的であるが、その理由は、[[橈骨動脈]]へのアクセスが容易で、圧迫して出血を抑えることができ、{{仮リンク|血管閉塞|en|vascular occlusion|redirect=1}}のリスクが少ないからである。どの橈骨動脈から採血するかは、{{仮リンク|アレンテスト|en|Allen's test|redirect=1}}の結果に基づいて選択される<ref name="geekymedics/agbS">{{Cite web |last1=Potter |first1=Lewis |title=How to take an Arterial Blood Gas (ABG) - OSCE Guide |url=https://geekymedics.com/arterial-blood-gas-sampling/ |website=Geeky Medics |access-date=24 February 2023 |date=7 January 2014}}</ref>。特に緊急時や小児の場合は、[[大腿動脈]](またはあまり使われないが{{仮リンク|上腕動脈|en|brachial artery|redirect=1}})も選択される。これらの動脈のいずれかにすでに留置された[[動脈ライン|動脈カテーテル]]から採血することもできる<ref>{{Cite journal | vauthors = Hager HH, Burns B | title = Artery Cannulation | publisher = StatPearls | date=July 31, 2020 | url = https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK482242/ | access-date = August 13, 2020 | pmid = 29489243}}</ref>。採血時と保存時は空気の混入を避ける<ref name=":1">{{Cite web |title=血液ガス分析(BGA)|知っておきたい臨床で使う指標[14] {{!}} 看護roo![カンゴルー] |url=https://www.kango-roo.com/learning/4020/ |website=看護roo! |date=2017-01-30 |access-date=2024-06-01}}</ref>。気泡はサンプルに溶け込み、不正確な結果をもたらすことがあるためである{{Sfn|飯野靖彦|2000|pp=6-7}}。血液サンプルに空気が混入すると、測定値の二酸化炭素濃度が異常に低くなり、酸素濃度が上昇する可能性がある{{Efn|これは吸入酸素濃度が室内気(酸素濃度21%)の場合であって、酸素吸入や人工呼吸中などは吸入酸素濃度を上げることができるため、空気混入時は逆に本来の値より計測値が低くなり得る。}}。 |
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動脈は高い圧力で血液が流れているため、採血後に血が止まりにくい{{Sfn|飯野靖彦|2000|p=6}}。また、[[静脈]]に比べると[[注射針]]による痛みも強い{{Sfn|飯野靖彦|2000|p=6}}。穿刺採血後は5分以上は圧迫止血が必要となる{{Sfn|飯野靖彦|2000|p=6}}。 |
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== 測定法 == |
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採血後直ちに測定を行うべきである(採血後時間が経つと値が変化するため)。血液ガス分析器にて自動測定される。また、採血シリンジ内に気泡がある場合、[[ヘンリーの法則]]に従い、[[#pO2|pO<sub>2</sub>]] は大気のそれ (158 [[mmHg]]) に近づき、[[#pCO2|pCO<sub>2</sub>]] は下がっていくので、出来るだけ検体が空気に触れないようにする。 |
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* 直接測定するもの |
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** 酸素分圧、炭酸ガス分圧、pH |
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* 計算して求めるもの |
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** 酸素飽和度、重炭酸イオン、[[#BE|BE]] |
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* 他の成績を加えて求めるもの |
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** AaDO<sub>2</sub>、シャント率、酸素含量、心拍出など |
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採血したときの酸素濃度や呼吸の状態は検査結果に大きく影響するので、(もし吸入していれば)吸入酸素濃度や(もし装着していれば)[[人工呼吸]]中など、条件は記載しておくべきである{{Sfn|飯野靖彦|2000|pp=6-7}}。とりわけ、[[人工呼吸器]]装着後は20分は経過しないと恒常状態にならないので、正しく評価できない{{Sfn|飯野靖彦|2000|pp=6-7}}。 |
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== 基準値(正常範囲) == |
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{{main|血液検査の参考基準値}} |
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基準値は施設により、また病状により異なるので、ここに示すのは参考値である。 |
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* 動脈血[[酸素分圧]] (PaO<sub>2</sub>): 80 ~ 100 [[Torr]] |
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* 動脈血二酸化炭素分圧 (PaCO<sub>2</sub>): 35 ~ 45 Torr |
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* pH: 7.36 ~ 7.44 |
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* [[重炭酸イオン]] (HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>): 22 ~ 26 m[[化学当量|Eq]]/L |
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* [[塩基余剰]] (BE): -2 ~ +2 mEq/L |
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* SaO<sub>2</sub>: 93 ~ 98 % |
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== 測定 == |
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[[人工透析]]の患者などでは静脈血で血液ガス分析を行うことがある。静脈血は組成が部位によって異なるので一概には言えないが、大腿静脈や肘静脈では PaO<sub>2</sub> は約 40 Torr で PaCO<sub>2</sub> は約 46 Torr が正常である。pH は変化してしまい、十分な血液ガス分析はできなくなるが、 HCO<sub>3</sub><sup>-</sup> は測定できるので代謝性アシドーシスの治療効果判定などは行うことができる。日本では何故か、血液生化学の項目に |
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血液ガス検体に使用される注射器には、プラスチック製とガラス製のものがある<ref name="nano.2006.1.2.223">{{Cite journal |last1=Wiwanitkit |first1=Viroj |title=Glass syringes are better than plastic for preserving arterial blood gas for oxygen partial pressure determination: an explanation based on nanomaterial composition |journal=International Journal of Nanomedicine |date=January 2006 |volume=1 |issue=2 |pages=223–224 |doi=10.2147/nano.2006.1.2.223 |pmid=17722540 |pmc=2426785 |doi-access=free }}</ref>。この注射器はあらかじめ包装されており、血液凝固を防ぐために少量の[[ヘパリン]]が含まれている。通常のシリンジならば、「ヘパリン化」が必要で、シリンジ内面をヘパリンで濡らす<ref name=":1" />。シリンジは密封して血液ガス分析装置まで運搬する<ref name="Horn">{{Cite journal |last1=Horn |first1=Klaus |last2=Gruber |first2=Rudolf |last3=Ugele |first3=Bernhard |last4=Küster |first4=Helmut |last5=Rolinski |first5=Boris |title=Total Bilirubin Measurement by Photometry on a Blood Gas Analyzer: Potential for Use in Neonatal Testing at the Point of Care |issue=10 |url=http://clinchem.aaccjnls.org/content/47/10/1845.long |journal=Clinical Chemistry |volume=47 |pages=1845–1847 |language=en |date=1 October 2001|doi=10.1093/clinchem/47.10.1845 |pmid=11568098 |doi-access=free }}</ref>。プラスチック製の血液ガスシリンジを使用する場合、サンプルは室温に保ったまま輸送し、15分以内に測定する必要がある<ref name=":1" />。分析までに長時間の遅延が予想される場合(すなわち、15分以上)、サンプルはガラスシリンジで採取し、直ちに氷中に置くべきである<ref name=":1" />。冷却する理由は、血液中の細胞が酸素を消費し、炭酸ガスを出すからである{{Sfn|飯野靖彦|2000|pp=6-7}}。つまり、分析を遅らせると、細胞呼吸が進行するため、酸素濃度が異常に低くなり、二酸化炭素濃度が高くなる可能性がある。 |
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HCO<sub>3</sub><sup>-</sup> の項目がないので苦肉の策である。 |
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近年は、[[グルコース]]、[[乳酸]]、[[ヘモグロビン]]、異常ヘモグロビン、[[ビリルビン]]、[[電解質]]の測定など、標準的な血液検査も血液ガス分析機で実施できる<ref>{{Cite web |url=https://meridian.allenpress.com/bit/article/41/5/377/141633/Blood-Gas-Analyzers |title=Blood Gas Analyzers |access-date=2024-06-01 |publisher=BI & T}}</ref>。 |
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{| class="wikitable" cellpadding="3" cellspacing="0" style="margin:auto; text-align:left; float:right; " |
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!nowrap|SaO<sub>2</sub>(%)!!nowrap|PaO<sub>2</sub>(mmHg) |
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|30||20 |
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|- |
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|60||30 |
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|- |
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|75||40 |
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|- |
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|90||60 |
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|- |
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|97.5||100 |
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|} |
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酸素解離曲線より、SaO<sub>2</sub> 90% は PaO<sub>2</sub> 60 mmHg、SaO<sub>2</sub> 60% は 30 mmHg に相当する。これを '''3・6・9 の法則'''という。それ以外に SaO<sub>2</sub> 97.5% は PaO<sub>2</sub> 100 mmHg、SaO<sub>2</sub> 75% は PaO<sub>2</sub> 40 mmHg、SaO<sub>2</sub> 30% は PaO<sub>2</sub> 20 mmHg を覚えておけば、ほとんどは事足りる。SaO<sub>2</sub> はあくまでも血液ガスから求めるが、非観血的な測定法が[[パルスオキシメーター]]による SpO<sub>2</sub> である。これは色素の波長分析で行っているので[[一酸化炭素中毒]]などでは測定値との乖離がみられる。 |
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== 結果 == |
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酸素のガス交換は[[肺胞]]壁の状態に強く影響される一方、二酸化炭素はあまり影響を受けない。すなわち、PaO<sub>2</sub> 異常→肺胞障害、PaCO<sub>2</sub> 異常→換気障害と考えることができる。 |
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=== pH === |
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[[血清pH]]が 7.4 未満になった(低下した)状態を'''[[アシデミア]]'''、7.4 より上になった(上昇した)状態を'''[[アルカレミア]]'''と言う。そして、平衡を[[酸性]]側にしようとする状態を'''アシドーシス'''([[:en:acidosis]])、平衡を[[塩基性]]側にしようとする状態を'''アルカローシス'''([[:en:alcalosis]])と言う。基本的に代償機構ではアシデミアがアルカレミアになるような大きな代償は起こらない。アシデミアがある時点で、呼吸性アシドーシスか代謝性アシドーシス、あるいはその両方が最初に起こったと考えてよいと言われている。 |
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=== PaCO<sub>2</sub> === |
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PaCO<sub>2</sub> は肺胞換気量の指標であり、他の要因に左右されない。PaCO<sub>2</sub>↑とは肺胞低換気を示し、具体的には換気障害([[呼吸停止]]、気管内異物、[[気管支炎]]、[[気管支喘息]]、[[慢性閉塞性肺疾患]]など)や循環障害([[心停止]]、[[肺梗塞]]など)でおこる。また二次性変化としては[[アシドーシスとアルカローシス#代謝性アルカローシス|代謝性アルカローシス]](下記参照)(pH 補正のため代償性に CO<sub>2</sub> が上昇する)でも起こりえる。PaCO<sub>2</sub>↓は肺胞過換気を示し、最も多いのは過換気([[過換気症候群]]、PaO<sub>2</sub> 低下による過換気など)によるものである。気をつけてほしいのは肺胞過換気でも PaO<sub>2</sub>↓となる病態は数多くある。こういったデータを見たら、過換気にも関わらず酸素のガス交換ができない病態と考える。具体的には痰づまりで閉塞性無気肺が起こったときにみられる所見である。酸素投与や理学療法による閉塞の解除が必要である。PaCO<sub>2</sub>↑で PaO<sub>2</sub>↓ならば、呼吸が止まりかけているということで[[人工呼吸器]]の適応を考えなければならない。二次的には[[アシドーシスとアルカローシス#代謝性アシドーシス|代謝性アシドーシス]](下記参照)(pH補正のため代償性に CO<sub>2</sub> が低下する)でも起こりえる。 |
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=== PaO<sub>2</sub> === |
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PaO<sub>2</sub> は気圧、吸気酸素濃度 (FiO<sub>2</sub>)、肺胞換気量、換気血流比、シャント、拡散障害で決定される。PaO<sub>2</sub>↓となることに病的な意義がある。酸素投与をしていれば上昇するのでどれくらいの FiO<sub>2</sub> かは常に考えなければならない。これだけの FiO<sub>2</sub> にしては低値であるというのも所見である。具体的には換気障害、循環障害、肺胞障害([[肺炎]]など)で低下しうる。これと PaCO<sub>2</sub> を組み合わせて病態を予測していく。 |
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=== AaDO<sub>2</sub> === |
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酸素に特有の事項として、肺胞レベルのガス交換が重要である。[[二酸化炭素]]においては、拡散能が優れている(酸素の約 20 倍)ために肺胞気中の分圧と動脈血中のそれが等しくなり、PACO<sub>2</sub> = PaCO<sub>2</sub> が成立した。これに対して、拡散能が比較的低い酸素においては、肺胞気中の分圧と動脈血内のそれのあいだに較差が生じることとなり、これを'''肺胞気・動脈血酸素分圧較差''' ('''AaDO<sub>2</sub>''') と呼ぶ。AaDO<sub>2</sub> の算出式は '''AaDO<sub>2</sub> = PAO<sub>2</sub> - PaO<sub>2</sub>''' であり、正常は 10 [[トル|Torr]] 以下である。20 Torr もあればかなり息苦しいと考えられる。 |
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AaDO<sub>2</sub> は、肺胞レベルのガス交換要因によって左右される。その要因としては下記のようなものがある。 |
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; 換気・血流比の不均衡分布 |
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: 低酸素血症の多くは換気・血流比の不均衡な分布による、AaDO<sub>2</sub> の増大である。換気・血流比を測るには吸気と血液両方にアイソトープを入れてコンピュータ解析をするという結構大変な検査である。 |
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; ガス拡散能力 |
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: 間質性肺炎や、肺水腫のような疾患では拡散障害が起こるといわれている。しかし、純粋に拡散のみの障害で低酸素血症が起こるかどうかは疑問である。というのも、拡散障害を起こす疾患は換気血流比不均衡分布、静脈性シャントなど他の因子も持っているからである。 |
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; 静脈性[[シャント]]の存在 |
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: 病的シャントの存在は低酸素血症をおこす。原因としては、左右シャントを伴うような解剖学的な異常、または、無気肺や肺水腫などでは肺毛細管の血流は肺胞気との接触を断たれる。難治性の低酸素血症の代表としてあげられる[[急性呼吸窮迫症候群]] (ARDS) もシャントが主な原因となっている。 |
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[[肺炎]]や[[閉塞性肺疾患]]などの多くの患者では換気・血流比の不均衡分布が著しくなり、AaDO<sub>2</sub> は大きくなる。[[間質性肺炎]]、[[肺線維症]]などでは換気・血流比不均衡とともに拡散障害も関与する。シャントの増大は ARDS や広範な[[無気肺]](初期)にもみられる。特に ARDS では AaDO<sub>2</sub> が著しく大きい。 |
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室内では吸入酸素分圧は 150 Torr なので、'''PaO<sub>2</sub> = 150 - PaCO<sub>2</sub>/0.8 - AaDO<sub>2</sub>''' [Torr] が成り立つ。 |
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厳密に計算するのなら '''PaO<sub>2</sub> = ("大気圧" - 47) × FiO<sub>2</sub> - PaCO<sub>2</sub>/0.8 - AaDO<sub>2</sub>''' [Torr] である。大気圧を 760 Torr、FiO<sub>2</sub> を 0.21 とすると上の式が出てくる。 |
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派生パラメータには、重炭酸濃度、動脈血酸素飽和度(略号: [[SaO2|SaO<sub>2</sub>]])、{{仮リンク|塩基過剰|en|Base excess|redirect=1}}などがある。重炭酸濃度は、測定されたpHとPCO<sub>2</sub>から[[ヘンダーソン・ハッセルバルヒの式]]を用いて算出される。SaO<sub>2</sub>は、測定された動脈血酸素分圧(PaO<sub>2</sub>)から導出され、測定されたヘモグロビンがすべて正常(オキシまたはデオキシ)ヘモグロビンであるという仮定に基づいて計算される<ref name=":0">{{Cite journal|author=Kofstad J|year=1996|title=Blood Gases and Hypothermia: Some Theoretical and Practical Considerations|journal=Scand J Clin Lab Invest Suppl|volume=224|pages=21–26|doi=10.3109/00365519609088622|pmid=8865418}}</ref>[10 |
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=== 呼吸係数(RI)および酸素化係数(P/F比) === |
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<!-- Respiratory Indexの訳として、酸素化係数でいいのだろうか? -->'''酸素化係数''' (RI) とは酸素療法中の AaDO<sub>2</sub> を補正するものである{{要出典|date=2023年6月}}。一般に FiO<sub>2</sub> が増加すると AaDO<sub>2</sub> も増加してしまい、評価が難しくなる。RI = FiO<sub>2</sub>/PaO<sub>2</sub> にて評価され、正常値は 0.5 未満である。酸素化係数(P/F比)とは PaO<sub>2</sub>/FiO<sub>2</sub> という値のことであり、ARDS や急性肺障害 ALI のスコアとしてよく用いられる。ARDS では 200 以下となる。200 を超える場合(文献によっては 200 ~ 300 の時)は急性肺障害 ALI という。 |
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===分析=== |
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=== 吸気酸素濃度の概算(FiO<sub>2</sub>) === |
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[[ファイル:Cobas b 121 Measurement Chamber (detail).jpg|thumb|Detail of measurement chamber of a modern blood gas analyzer showing the measurement electrodes. (Cobas b 121 - Roche Diagnostics)]] |
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FiO<sub>2</sub> は[[人工呼吸器]]を使用している場合は設定できるが、それ以外の酸素療法を行っている場合は計算が難しい。以下によく用いる酸素療法での FiO<sub>2</sub> の概算の方法を纏める。 |
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分析に使用される機械は、注射器から血液を吸引し、[[水素イオン指数|pH]]と酸素と二酸化炭素の[[分圧]]を測定する。重炭酸イオン濃度も計算される。これらの結果は通常5分以内に表示される.{{要出典|date=November 2021}}。 |
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==測定項目と基準値== |
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{| border="1" cellpadding="3" cellspacing="0" style="margin:auto; text-align:left;" |
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{{See also|血液検査の参考基準値#酸塩基及び血液ガス}} |
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|- style="text-align:left; background-color:#CCCCCC;" |
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これらは典型的な[[基準値]]であるが、分析装置や検査室によっては異なる範囲を採用している場合もある。 |
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!colspan="2"|鼻腔カニューレの場合!!colspan="2"|酸素マスクの場合!!colspan="2"|リザーバー付マスクの場合 |
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{| class="wikitable" |
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|- |
|- |
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! 分析項目 |
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|100%酸素流量(l/min)||FiO<sub>2</sub>(%)||100%酸素流量(l/min)||FiO<sub>2</sub>(%)||100%酸素流量(l/min)||FiO<sub>2</sub>(%) |
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! style="width: 8em;" | 基準値 |
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! 解釈 |
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|- |
|- |
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| [[水素イオン指数|pH]] |
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|1||24||5||40||6||60 |
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| 7.34–7.44<ref name="southwest">[https://web.archive.org/web/19980424232639/http://pathcuric1.swmed.edu/PathDemo/NRRT.htm Normal Reference Range Table] from The University of Texas Southwestern Medical Center at Dallas. Used in Interactive Case Study Companion to Pathologic basis of disease.</ref> |
|||
| rowspan="2" | [[水素イオン指数|pH]]<7.35または[[水素イオン|H<sup>+</sup>]]>45ならば、[[アシデミア]]、pH>7.45またはH<sup>+</sup><35ならば[[アルカレミア]]である。 |
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pH = log(1/[H<sup>+</sup>]) |
|||
で定義される{{Sfn|飯野靖彦|2000|pp=42-43}}。H+濃度が16nmol/L以下、または100nmol/L以下になると生命は生存できなくなる{{Sfn|飯野靖彦|2000|pp=42-43}}。[[細胞外液]]のpH変化は血清K<sup>+</sup>濃度に影響し、pH0.1の上昇に対して、[[カリウムイオン]]K<sup>+</sup>は0.6mEq/L低下する。pHの低下に対してもK<sup>+</sup>は同程度上昇する{{Sfn|飯野靖彦|2000|pp=42-43}}。 |
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|- |
|- |
||
| H<sup>+</sup> |
|||
|2||28||6||50||7||70 |
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| 35–45 n[[モル|mol]]/[[リットル|L]] (n[[濃度#Molality|M]]) |
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|- |
|- |
||
| 動脈血酸素分圧{{Anchors|PaO2|動脈血酸素分圧|PAO2}}(P<sub>a</sub>O<sub>2</sub>) |
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|3||32||7||60||8||80 |
|||
| {{Cvt|75-100|mmHg|kPa|sigfig=2|order=flip|disp=br}}<ref name="southwest" /> |
|||
| PaO<sub>2</sub>が低いということは、血液の[[心拍出量|酸素化]]に異常があるということであり、[[低酸素血症|低酸素'''血'''症]](hypox'''em'''ia)と呼ばれる。なお、P'''A'''O<sub>2</sub>は{{仮リンク|呼吸生理学|en|Respiratory physiology|redirect=1}}において、肺胞気の酸素分圧を意味する{{Sfn|諏訪邦夫|2006|p=1}}。aは動脈、Aは肺胞気である{{Sfn|諏訪邦夫|2006|p=1}}。 |
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|- |
|- |
||
| P<sub>a</sub>CO<sub>2</sub> |
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|4||36||||||9||90 |
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| {{Cvt|35-45|mmHg|kPa|sigfig=2|order=flip|disp=br}}<ref name="southwest" /> |
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| {{仮リンク|動脈血二酸化炭素分圧|en|PaCO2|redirect=1|label=動脈血二酸化炭素分圧}}(P<sub>a</sub>CO<sub>2</sub>)は、二酸化炭素の産生と排泄の指標であり、代謝速度が一定であれば、PaCO2はすべて[[換気 (医学)|換気]]による排泄によって決定される<ref name="O2_calc">{{Cite web | vauthors=Baillie K, Simpson A | title=Altitude oxygen calculator | url=http://www.altitude.org/oxygen_levels.php | publisher=Apex (Altitude Physiology Expeditions) | access-date=2006-08-10 | archive-url=https://web.archive.org/web/20170611073650/http://www.altitude.org/oxygen_levels.php | archive-date=2017-06-11 | url-status=dead }} - Online interactive oxygen delivery calculator</ref>。PaCO2が高い({{仮リンク|呼吸性アシドーシス|en|respiratory acidosis|redirect=1}}、あるいは{{仮リンク|高炭酸ガス血症|en|hypercapnia|redirect=1}})場合は換気不足(あるいはまれに[[代謝]]亢進)であり、PaCO2が低い({{仮リンク|呼吸性アルカローシス|en|respiratory alkalosis|redirect=1}}、あるいは{{仮リンク|低炭酸ガス血症|en|hypocapnia|redirect=1}})の場合は[[過換気]]を示す。 |
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|- |
|- |
||
| {{Chem2|link=重炭酸塩|HCO3–}} |
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|5||40||||||10||99 |
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| 22–26 mEq/L{{Sfn|飯野靖彦|2000|p=10|pp=}} |
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| [[重炭酸イオン]]、{{Chem2|HCO3-}}は、代謝上の問題([[ケトアシドーシス]]など)の有無を示す。{{Chem2|HCO3-}}が低ければ[[代謝性アシドーシス]]、高ければ{{仮リンク|代謝性アルカローシス|en|metabolic alkalosis|redirect=1}}を示す{{Sfn|飯野靖彦|2000|pp=24-25}}。血液ガス結果と一緒に表示されるこの値は、分析装置によって計算されることが多いため、直接測定された総CO2レベル(下記参照)との相関をチェックする必要があります。 |
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|- |
|- |
||
| SBC<sub>e</sub>{{Anchors|標準重炭酸濃度|SBCe}} |
|||
|6||44 |
|||
| 21 - 27 mmol/L |
|||
|} |
|||
| '''標準重炭酸濃度'''(standard bicarbonate concentration: SBC<sub>e</sub>)とは、CO2が5.33kPa(または40mmHg<ref name=":4">{{Cite web |title=The standard bicarbonate value {{!}} Deranged Physiology |url=https://derangedphysiology.com/main/cicm-primary-exam/required-reading/acid-base-physiology/Chapter%20602/standard-bicarbonate-value |website=derangedphysiology.com |access-date=2024-06-09 |language=en |first=Alex |last=Yartsev}}</ref>)、酸素飽和度が100、37℃のときの血液中の重炭酸イオン濃度である<ref>{{Cite web |url=http://www.nda.ox.ac.uk/wfsa/html/u13/u1312_03.htm |title=Acid Base Balance (page 3) |date=June 13, 2002 |archive-url=https://web.archive.org/web/20020613020114/http://www.nda.ox.ac.uk/wfsa/html/u13/u1312_03.htm |archive-date=2002-06-13 |access-date=2002-06-13}}</ref>。この概念は、重炭酸イオンの変化に対する代謝の寄与を表している。これは1957年にJorgensenとAstrupによって導入された。要するに、代謝以外の影響をすべて補正した場合の重炭酸塩の推定値ある。もし適切な[[換気 (医学)|換気]]を行っていたら、患者の重炭酸塩濃度はどの程度になるだろうか」という問いに答えるものである<ref name=":4" />。 |
|||
これらは参考値であり実際にはFiO<sub>2</sub>はさらに低値である。しかしそれを検出する方法は一般的ではない。 |
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|- |
|||
| {{仮リンク|塩基過剰|en|Base excess|redirect=1|label=BE}} |
|||
| 男{{Sfn|飯野靖彦|2000|p=10|pp=}}: −2.4 ~+2.2 mmol/L |
|||
女{{Sfn|飯野靖彦|2000|p=10|pp=}}: −3.3 ~+1.3 mmol/L |
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| {{仮リンク|塩基過剰|en|Base excess|redirect=1|label=塩基過剰(Base excess: BE)}}{{Anchors|塩基過剰|base excess}}とは、その血液検体のpHを7.4に戻すのにどれだけの強酸が必要かを表した指標である{{Sfn|飯野靖彦|2000|p=44}}。{{仮リンク|酸塩基平衡異常|en|Acid-base imbalance|redirect=1}}の代謝成分の評価に使用され、[[代謝性アシドーシス]]または[[代謝性アルカローシス]]の有無を示す。塩基過剰はPaCO2 = 40とした場合、pHとは下記の簡易計算式の関係が成り立つ{{Sfn|諏訪邦夫|2006|p=60}}。 |
|||
pH = 7.4 + BE/7 |
|||
しかしながら、BEは血液の変化を反映はするが、生体全体の変化(他の因子として、細胞や骨の緩衝作用も大きい)を反映しないことから、HCO3-の方が、酸塩基平衡異常を考える上では重要とされる{{Sfn|飯野靖彦|2000|p=44}}。 |
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=== HCO<sub>3</sub><sup>-</sup> === |
|||
|- |
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重炭酸イオン濃度である。アシドーシスとアルカローシスの解析を行うのに重要な数値である。 |
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| ''tCO<sub>2</sub>''{{Anchors|総二酸化炭素濃度|総二酸化炭素量|tCO2}} |
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| 23–30 mmol/L<ref name="brookside">{{Cite web |url=http://www.brooksidepress.org/Products/OperationalMedicine/DATA/operationalmed/Lab/ABG_ArterialBloodGas.htm |website=Brookside Associates |title=ABG (Arterial Blood Gas) |access-date=2017-01-02}}</ref><br />100–132 mg/dL<ref name="co2-molar">Derived from molar values using molar mass of 44.010 g/mol</ref> |
|||
| '''総二酸化炭素濃度'''(total CO<sub>2</sub>、'''tCO<sub>2</sub>''')とは、血液中の二酸化炭素{{仮リンク|PCO2|en|PCO2|redirect=1|label=PCO<sub>2</sub>}}と重炭酸イオン{{Chem2|HCO3-}}の合計である。これらの間には以下の関係が成り立つ。 |
|||
tCO<sub>2</sub> = <nowiki>[</nowiki>{{Chem2|HCO3-}}<nowiki>]</nowiki> + ''α''×PCO<sub>2</sub> |
|||
α=0.226mM/kPaであり、HCO-3は[[モル濃度|ミリモル濃度]](mM)(mmol/L)、PCO<sub>2</sub>はkPaで表される。この式から、tCO<sub>2</sub>より{{Chem2|HCO3-}}を算出できる。重炭酸イオン濃度は動脈血と静脈血でほとんど変わらない{{Sfn|飯野靖彦|2000|p=8}}。欧米では静脈血採血の電解質検査項目にNa+、Cl+、K+に加えてHCO3-も含まれている{{Sfn|飯野靖彦|2000|p=8}}。一方、日本では、 |
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=== BE === |
|||
BE とは base excess のことである。これは採取した動脈血を ''in vitro'' で PaCO<sub>2</sub> = 40 とした時の pH を測定して計算した HCO<sub>3</sub><sup>-</sup> 濃度から計算した値である。BE がプラスなら代謝性アルカローシス(頻回の[[嘔吐]]、[[下痢]]など)、BE がマイナスなら代謝性アシドーシス(ショック、[[腎不全]]、[[糖尿病]]など)が疑われるが、HCO<sub>3</sub><sup>-</sup> 濃度から計算した値に過ぎないので病態によって解釈が異なる。 |
|||
{{Quote|わが国の病院の多くが、電解質一般として静脈血でNa+、K+、CL-とセットで総CO2を測定しないのか理解しがたい。|[[黒川清]]}}とされ、一般的では無い{{Sfn|飯野靖彦|2000|p=8}}。[[代謝性アシドーシス]]を疑う状況では、静脈採血よりも痛い動脈採血を行わずに、{{Chem2|HCO3-}}の値から診断可能となるのである{{Sfn|飯野靖彦|2000|p=8}}。 |
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== 血液ガス分析の手順 == |
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ここでは非常に大まかな方法論を述べる。 |
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|- |
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* まず、PaCO<sub>2</sub> が 40 Torr より高いか低いかで肺胞低換気があるのか肺胞過換気があるのかを判断する。 |
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| C<sub>a</sub>O<sub>2</sub> |
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* 次に PaO<sub>2</sub> をみて、低酸素血症があるかどうか判断する。但し、室内気吸入ではその値はそのまま肺胞のガス交換状態を示しているが、酸素マスクなどで酸素吸入がなされていれば、それを考慮しなければならない。 |
|||
| 94-100%<ref>{{Cite web|url=https://www.mountsinai.org/health-library/tests/blood-gases | title = Blood Gases | access-date=2023-04-18}}</ref><br />(mL O<sub>2</sub>/dL blood) |
|||
* AaDO<sub>2</sub> をみて、肺胞レベルのガス交換障害があるかどうかを判断する。AaDO<sub>2</sub> が高値であればその原因を考え治療方針を立てる。 |
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| '''酸素含量'''(oxygen content){{Anchors|酸素含量|CaO2}}とは、血漿中に溶解している酸素とヘモグロビンと化学的に結合している酸素の合計であり、下式によって求められる。 |
|||
C<sub>a</sub>O<sub>2</sub> = (PaO<sub>2</sub> × 0.003) + (SaO<sub>2</sub> × 1.34 × Hb) |
|||
ここで、ヘモグロビン濃度(Hb)はg/dLで表される<ref>{{Cite web |url=http://www.meddean.luc.edu/lumen/MedEd/MEDICINE/pulmonar/physio/pf10.htm |title=Hemoglobin and Oxygen Transport Charles L |website=www.meddean.luc.edu |access-date=2024-06-09}}</ref>。呼吸生理学上、a、vはそれぞれ動脈、[[混合静脈血]](=肺動脈血)を意味し、それぞれの酸素含量はC<sub>a</sub>O<sub>2、</sub>C<sub>v</sub>O<sub>2</sub>と表記される<ref>{{Cite web |url=https://kokuhoken.net/jdsa/publication/file/journal/academic_term_info.pdf |title=用語に関するお知らせ |access-date=2024-06-09}}</ref><sub>。</sub> |
|||
またアシドーシスとアルカローシスの診断手順を纏める。これは[[混合性酸塩基異常]]を検出するための方法である。 |
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|} |
|||
: まずアシデミアがあるのかアルケミアがあるのかを調べる。基本的に代償機構ではアシデミアがアルケミアになるような大きな代償は起こらない。アシデミアがある時点で、呼吸性アシドーシスか代謝性アシドーシス、あるいはその両方が最初に起こったと考えてよい。 |
|||
: アシデミアあるいはアルケミアが代謝性のものなのか、あるいは呼吸性のものなのかを考える。 |
|||
: [[アニオンギャップ]] (AG)、AG = "ナトリウムイオン" - ("重炭酸イオン" + "クロールイオン") を計算する。AG が増加していればそれだけで代謝性アシドーシスの存在を意味する。また AG が増加していれば補正重炭酸イオンを計算する。これは ΔAG = AG - 12 として "補正重炭酸イオン" = "重炭酸イオン" + ΔAG で計算され、これは代謝性アシドーシスを来たした陰イオンの増加分がなかったと仮定した場合の重炭酸イオンの値である。 |
|||
: 代償性変化が一次性の酸塩基平衡異常に対して予測された範囲内にあるかどうかを検討する。この代償性変化が予測範囲を外れている場合は他の酸塩基平衡異常をきたす病態が存在することを意味する。代償性変化以外の混合性酸塩基異常というものは比較的ありふれた病態であり、代償性変化の予測値を用いることでそれらを検出することができ、血液ガス分析の診断能力をあげることができる。代償性変化の予測値は次のような経験則が知られている。 |
|||
; 代謝性アシドーシスの呼吸性代償 |
|||
: ΔpCO<sub>2</sub> = 1 ~ 1.3 × ΔHCO<sub>3</sub><sup>-</sup> MAX:pCO<sub>2</sub> = 15 mmHg |
|||
; 代謝性アルカローシスの呼吸性代償 |
|||
: ΔpCO<sub>2</sub> = 0.6 ~ 0.7 × ΔHCO<sub>3</sub><sup>-</sup> MAX:pCO<sub>2</sub> = 60 mmHg |
|||
; 呼吸性アシドーシスの代謝性代償 |
|||
: 急性 ΔHCO<sub>3</sub><sup>-</sup> = 0.1 × ΔpCO<sub>2</sub> MAX:HCO<sub>3</sub><sup>-</sup> = 30 |
|||
: 慢性 ΔHCO<sub>3</sub><sup>-</sup> = 0.3 ~ 0.35 × ΔpCO<sub>2</sub> MAX:HCO<sub>3</sub><sup>-</sup> = 42 |
|||
; 呼吸性アルカローシスの代謝性代償 |
|||
: 急性 ΔHCO<sub>3</sub><sup>-</sup> = 0.2 × ΔpCO<sub>2</sub> MAX:HCO<sub>3</sub><sup>-</sup> = 18 |
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: 慢性 ΔHCO<sub>3</sub><sup>-</sup> = 0.4~0.5 × ΔpCO<sub>2</sub> MAX:HCO<sub>3</sub><sup>-</sup> = 12 |
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== 理論 == |
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なお、通常は Δ 計算をおこなうときは HCO<sub>3</sub><sup>-</sup> は 24、pCO<sub>2</sub> は 40、AG は 12 を正常値として差分をとることが多い。 |
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{{Main|ヘンダーソン・ハッセルバルヒの式}} |
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正常な条件下では、[[ヘンダーソン・ハッセルバルヒの式|ヘンダーソン-ハッセルバルヒ式]]により、血液pHは次のように表される。 |
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:<math chem=""> \ce{pH} = 6.1 + \log_{10} \left ( \frac{[\ce{HCO3^-}]}{0.03 \times Pa\ce{CO2}} \right )</math> |
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== 呼吸状態の評価 == |
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上式では |
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=== 呼吸性アシドーシス === |
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* 6.1は正常体温における[[炭酸]]({{Chem2|H2CO3}})の[[酸解離定数]](pKa)である。 |
|||
PaCO<sub>2</sub> の上昇する病態の存在が考えられる。これは肺胞低換気の病態に等しく、呼吸器疾患、神経筋肉疾患、循環器疾患、[[人工呼吸器]]の調節不全で起こりえる。呼吸中枢から換気の指令が十分に行われない場合、これは延髄の呼吸中枢の障害や[[鎮静剤]]の抑制効果、代謝性アルカローシスによっておこる。呼吸中枢の命令に応じられない病態としては神経障害や横隔膜をはじめとする呼吸筋の障害や呼吸筋疲労が考えられる。また、肺のレベルで呼吸を行っていても、閉塞性無気肺など上気道閉塞が起こっているときも代謝性アシドーシスとなる。肺気腫、喘息でも同様の病態が生じる。この病態で低酸素血症を伴うとⅡ型呼吸不全となる。 |
|||
* [{{Chem2|HCO3-}}]は血液中の重炭酸イオン濃度(mEq/L) |
|||
* ''Pa''CO<sub>2</sub>は動脈血中の二酸化炭素分圧(mmHg) |
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である。 |
|||
呼吸不全によって生じた呼吸性アシドーシスがみられたら緊急事態である。生命維持のためには[[気管挿管]]のうえ人工呼吸器を使用する必要がある。なお、単に[[酸素]]のみ投与すると、呼吸中枢が抑制されるためむしろ呼吸停止を来す(CO<sub>2</sub> ナルコーシスと呼ばれる)おそれがあり危険である。 |
|||
===法則=== |
|||
=== 呼吸性アルカローシス === |
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# PaCO2が40mmHg以上または40mmHg未満で1mmHg変化すると、pHは0.008逆向きに変化する<ref>Stoelting: Basics of Anesthesia, 5th ed. p 321.</ref> |
|||
PaCO<sub>2</sub> の下降する病態の存在が考えられる。これは肺胞過換気の病態に等しく、中枢神経疾患、精神疾患、低酸素血症、薬剤、レスピレーターの調節不全で起こりえる。過換気症候群、ARDS などが代表的疾患である。低酸素血症を伴うとⅠ型呼吸不全となる。 |
|||
# [HCO- 3]が24mEq/Lより1mEq/L減少するごとに、PaCO2は約1mmHg減少する。 |
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# HCO- 3]が10mEq/L変化すると、pHは同じ方向に約0.15変化する。 |
|||
# pCO2とpHの関係を評価する:pCO2とpHが反対方向に動いている場合、すなわちpHが7.4未満のときにpCO2が↑、またはpHが7.4以上のときにpCO2が↓の場合は、呼吸障害が原因である。pCO2とpHが同じ方向に動いている場合、すなわちpHが7.4以上のときにpCO2↑、またはpHが7.4未満のときにpCO2↓である場合、代謝障害が原因である<ref name="EduLanche">{{Cite web |url=https://edulanche.com/arterial-blood-gas-abg-4-steps |title=Arterial Blood Gas (ABG) In 4 Steps |website=www.edulanche.com/ |publisher=EduLanche |access-date=2016-05-13}}</ref>。 |
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== 心臓手術患者の管理 == |
|||
=== 低酸素血症 === |
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{{Seealso|人工心肺装置}} |
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====症状==== |
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[[低体温症|低体温]][[人工心肺装置|人工心肺]]下で行われる心臓手術患者の血液ガス管理には、{{Anchors|pH-stat|α-stat}}pH-stat法とα-stat法の2つの方法が用いられてきた。 |
|||
頭痛、運動機能・判断力の低下、頻脈、中心性[[チアノーゼ]]、血圧低下、血管拡張による四肢の温まりなどがある。 |
|||
====原因==== |
|||
;拡散障害 |
|||
:拡散障害があると、血液は[[肺胞]][[毛細血管]]を循環する時間内に肺胞気と[[平衡]]状態にならず、肺胞気の酸素分圧よりも毛細血管血の酸素分圧が低くなる。 |
|||
;血流[[シャント]] |
|||
:血流シャントは短絡とも言い、短絡路を通った静脈血が肺胞で酸素を受け取った動脈血に混ざるため、動脈血の酸素分圧は低下する。先天性心奇形による[[右→左シャント]]、[[肺動脈瘻]]、[[無気肺]]などでは静脈血の換気が行われずに動脈血に混合する。血流シャントが要因となる場合、酸素投与は低酸素症の改善に無効である。 |
|||
;換気・血流比不均等分布 |
|||
:換気・血流比の不均等分布があるとき、動脈の酸素分圧は理想的な肺胞気よりも低くなる。 |
|||
* pH-stat法:ヒトの血液は温度が1℃低下するとpHは0.015上昇し、[[アルカローシス]]に傾く<ref name=":2">{{Cite journal|author=木村龍範|year=1994|title=低体温体外循環時のpH-stat管理とalpha-stat管理|url=https://www.jstage.jst.go.jp/article/jject1975/20/2/20_2_7/_pdf/-char/ja|journal=体外循環技術|volume=20|pages=7-10}}</ref>。よって、その温度でこれを補正するために[[人工心肺|人工肺]]に炭酸ガスを添加し、[[呼吸性アシドーシス]]で代償させる<ref name=":2" />。例えば、28℃でPaCO2を40mmHgに補正すると37℃ではPaCO2は約60mmHgとなる。 |
|||
====治療==== |
|||
* α-stat法:この方法では、PaCO<sub>2</sub>とpHに温度補正を行わず、正常体温すなわち37℃でPaCO<sub>2</sub> 40mmHgとpH 7.4を目指す<ref name=":3">{{Cite journal|last=Baraka|first=Anis|date=2004-02|title=Alpha-stat vs. pH-stat strategy during hypothermic cardiopulmonary bypass|url=https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15255667/|journal=Middle East Journal of Anaesthesiology|volume=17|issue=4|pages=705–712|issn=0544-0440|pmid=15255667}}</ref>。 |
|||
低酸素血症の治療として[[酸素療法]]、人工呼吸器、[[呼吸促進剤]]といった治療法がある。呼吸促進剤は肺胞低換気となる疾患に用いられそうだが、呼吸筋障害や呼吸筋疲労の場合は使用禁忌である。PaCO<sub>2</sub> が上昇しているⅡ型呼吸不全の患者に酸素投与を行うとき、換気抑制しないようにという意味で塩酸ドキサプラム(ドプラム)を 1.0 ~ 2.0 (mg/kg)/hour で静注することがある。また近年は[[睡眠時無呼吸症候群]]に対して NIPPV(非侵襲的陽圧換気療法)として nasalCPAP を用いることがある。 |
|||
中等度低体温体外循環下手術ではα-stat、超低体温循環停止下手術ではpH-statが優れているとされている<ref name=":2" /><ref name=":3" />。 |
|||
pH-stat法とα-stat法にはどちらも理論的な欠点がある。α-stat法は心筋機能を最適化するために選択される方法である。pH-stat法は、脳の自己調節機能(脳血流と脳の代謝速度の連関)を失わせる可能性がある。代謝に必要な以上に脳血流量を増加させることで、pH-stat法は脳微小塞栓や頭蓋内圧亢進を引き起こす可能性がある<ref name=":0" />。 |
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== 酸塩基平衡の評価 == |
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=== 代謝性アシドーシス === |
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代謝性アシドーシスには[[アニオンギャップ]]が増加するものとアニオンギャップが増加しない高クロール血性代謝性アシドーシスがある。AG の増加はそれだけで代謝性アシドーシスが存在するといえる重要な所見である。気をつけなければいけないこととして AG は低下する病態が存在することである。具体的には[[低アルブミン血症]]、IgG [[多発性骨髄腫]]、[[ブロマイド]]中毒、[[高カルシウム血症]]、[[高マグネシウム血症]]、[[高カリウム血症]]が存在する。特に低アルブミン血症のため AG の増加がマスクされることはよくあり、アルブミンが 1 mg/dL 低下するごとに AG は 2.5 ~ 3 mEq/L 低下することが知られている。これはアルブミンがアニオンであるためである。もし AG が増加していたら補正重炭酸イオンを計算する。これは ΔAG = AG - 12 とし、"補正重炭酸イオン" = "重炭酸イオン" + ΔAG で計算され、これは代謝性アシドーシスを来たした陰イオンの増加分がなかったと仮定した場合の重炭酸イオンの値である。そしてその値をもとに代償性変化が予測範囲内にあるかどうかを検討し、予測範囲外ならばどうような病態が合併したのかを考える。 |
|||
==関連項目== |
|||
==== AG増加性代謝性アシドーシス ==== |
|||
* [[アニオンギャップ]] |
|||
AG の増加は不揮発酸の蓄積を示す。人間の身体は電気的に中性である。即ち、陽イオンの価数だけ陰イオンが存在する。陽イオンは主にナトリウムイオンであり陰イオンはクロールイオン、重炭酸イオン、有機酸である。よって AG を以下のように定義すると大雑把に有機酸がどれ位あるのかを把握することができる。AG = "ナトリウムイオン" - ("クロールイオン" + "重炭酸イオン") である。正常値は 12 ± 2 mEq/L である。カリウムイオンを考慮することもあるがその場合は正常値が 16 前後となる。 |
|||
* {{仮リンク|動脈穿刺|en|Radial artery puncture|redirect=1}} |
|||
* [[化学平衡]] |
|||
* {{仮リンク|ヘモキシメトリー|en|Hemoximetry|redirect=1}} |
|||
* {{仮リンク|動静脈血酸素較差|en|Arteriovenous oxygen difference|redirect=1}} |
|||
== 脚注 == |
|||
;内因性物質の代謝によるもの |
|||
{{脚注ヘルプ}} |
|||
:[[乳酸アシドーシス]]やケトアシドーシス、[[尿毒症]]で起こる。ケトアシドーシスの原因としては[[糖尿病性ケトアシドーシス]]、アルコール性ケトアシドーシス、飢餓によるものが知られている。また重要な原因としては[[痙攣]]発作後の代謝性アシドーシスも AG 増加性代謝性アシドーシスである。これは痙攣発作によって筋肉から[[乳酸]]が放出されるためと考えられている。救急の現場では AG 増加性代謝性アシドーシスは KUSSMAL と覚えられる。これは糖尿病性ケトアシドーシス (diabetic Ketoacidosis)、尿毒症 (Uremia)、サリチル酸中毒 (Salicylic acid intoxication)、[[敗血症]] (Sepsis)、[[メタノール]] (Methanol)、[[アルコール中毒]] (Alcohol intoxication)、[[アスピリン中毒]] (Aspirin poisoning)、[[乳酸アシドーシス]] (Lactic acidosis) である。 |
|||
;外因性 |
|||
:[[メチルアルコール]]、[[エチレングリコール]]、[[サリチル酸]]、[[パラアルデヒド]]による中毒で起こる。 |
|||
=== 注釈 === |
|||
特に外因性の AG 増加性代謝性アシドーシスを疑う場合は浸透圧ギャップを計算してみると明らかになることもある。 |
|||
{{Notelist}} |
|||
=== 出典 === |
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==== 高クロール性代謝性アシドーシス ==== |
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{{Reflist|colwidth=30em}} |
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AGが増加しない代謝性アシドーシスである。頻度としてはこちらの方が明らかに多い。[[重炭酸イオン]]の喪失、尿細管での水素イオン分泌障害、[[塩酸]]の投与といった原因によって起こる。[[呼吸性アルカローシス]]の代償もこの機序で起こる。 |
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;重炭酸イオンの喪失 |
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:下痢や尿管 S 状結腸吻合、アセタゾラミドの投与によって重炭酸イオンは喪失される。また近位尿細管性アシドーシスでも重炭酸イオンの喪失は起こる場合がある。 |
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;尿細管での水素イオン分泌障害 |
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:[[近位尿細管性アシドーシス]]、[[遠位尿細管性アシドーシス]]、尿細管や腎間質の疾患、低アルドステロン症では尿細管での水素イオンの分泌障害がおき代謝性アシドーシスにいたる。なお[[尿細管性アシドーシス]]ではしばしば[[低カリウム血症]]を伴うことが特徴である。 |
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== 参考文献 == |
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==== 代謝性アシドーシスとカリウムの関係 ==== |
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'''アシドーシスは[[高カリウム血症]]を伴い、アルカローシスは[[低カリウム血症]]を伴う'''、とは臨床医学の格言の一つである。確かに代謝性アシドーシスを生じるような病態では組織、細胞傷害や腎機能の低下が生じていることが多く、高カリウム血症になりやすい。それに加えて、代謝性アシドーシスではカチオンバランスの維持のため細胞内から細胞外にカリウムが移動するといわれている。この機序では pH が 0.1 低下するごとに血清カリウム濃度が 0.6 mEq/L 上昇するといわれている。しかしこの細胞内からの移動に関してはメカニズムによって異なることが知られている。高クロール性代謝性アシドーシスではクロールイオンが細胞内に入りにくいため水素イオンが細胞内に入る代わりにカリウムが細胞外で排出されるが、AG 増加性代謝性アシドーシスでは水素イオンが細胞内に入る際、アニオンである有機酸も一緒に細胞内に入るため、カチオンバランスが崩れることがなく、カリウムの排出は起こらないといわれている。但し頻度としては圧倒的に高クロール性代謝性アシドーシスの方が多いため、格言は一概に誤りとは言えない。アシドーシスなのに低カリウム血症をきたす疾患としては[[下痢]]と[[尿細管性アシドーシス]]が知られている。 |
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* {{Citebook|和書 |title=一目でわかる血液ガス |date=2000-05-29 |year=2000 |publisher=メディカル・サイエンス・インターナショナル |edition= |author=飯野靖彦 |isbn=9784895922340 |ref=harv |editor-link=[[飯野靖彦]]}} |
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==== 代謝性アシドーシスの尿所見 ==== |
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アシデミアがあり血清重炭酸イオン濃度が低下しているような状態では代償機構として尿を酸性化し、体内をアルカリに保とうとする。腎機能障害がなければ尿 pH は 5 以下に低下するはずである。しかし尿の酸性化障害、尿細管アシドーシスがある場合はそのような代償機構が働かないとされている。腎臓の水素イオン排出力を調べるには尿アニオンギャップを計算すればよい。UAG = Na + K - Cl を定義する。正常値は 0 である。水素イオン排出が亢進しているとき、例えば下痢の時は UAG は -30 程度の負に傾くが遠位尿細管性アシドーシスなど水素イオン排出力が低下した病態では 25 程度に増加している。 |
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* {{Citebook|和書 |title=血液ガスの臨床 |date=2006-02-10 |year=2006 |publisher=中外医学社 |edition= |author=諏訪邦夫 |isbn=9784498031562 |ref=harv |editor-link=[[諏訪邦夫]]}} |
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=== 代謝性アルカローシス === |
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代謝性アルカローシスは一時的には血中 HCO<sub>3</sub><sup>-</sup> 濃度を上げるような異常のプロセスが存在することである。しかし、HCO<sub>3</sub><sup>-</sup> は本来は糸球体で濾過されて尿細管にて再吸収されるのだが再吸収量に域値があるため正常人では大量に HCO<sub>3</sub><sup>-</sup> を摂取しても代謝性アルカローシスには陥らない。即ち代謝性アルカローシスをみたら、 HCO<sub>3</sub><sup>-</sup> の産出機構の他に HCO<sub>3</sub><sup>-</sup> を排出できない病態、即ち代謝性アルカローシス維持機構が存在していると考えなければならない。 |
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== 関連文献 == |
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==== 代謝性アルカローシスの原因 ==== |
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これらは血中 HCO<sub>3</sub><sup>-</sup> 濃度を上昇させる因子である。代謝性アルカローシス維持機構が存在しなければ、これらの原因で代謝性アルカローシスが持続することは考えにくい。 |
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;水素イオンの喪失 |
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:頻度として多いのは[[嘔吐]]や[[胃液]]の吸引などである。胃液を排出することで水素イオンが消化管から喪失される。また尿中への排出されることもある。頻度としては[[利尿薬]]の投与や[[鉱質コルチコイド]]過剰などがあげられる。[[高カルシウム血症]]やペニシリン誘導体の投与でも起こりえる。また重要な法則である[[低カリウム血症]]でおこるアルカローシスは水素イオンの細胞内移動によって血中からは水素イオンが失われる。 |
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;HCO<sub>3</sub><sup>-</sup> 投与 |
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:大量の[[輸血]](クエン酸を含んでいる)やメイロンの投与である。 |
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;代償性変化 |
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:{{節スタブ}} |
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==== 代謝性アルカローシスの維持機構 ==== |
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尿中の HCO<sub>3</sub><sup>-</sup> 排出を抑制するものがアルカローシスの維持には必要である。頻度としては有効循環血漿量の低下によることが最も多い。 |
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;GFR の低下 |
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:[[糸球体濾過量]]の低下であり、腎不全でおこる。 |
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;HCO<sub>3</sub><sup>-</sup> 再吸収亢進 |
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:有効循環血漿量の低下や[[低カリウム血症]]で起こる。 |
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;腎臓における HCO<sub>3</sub><sup>-</sup> 産出増加 |
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:鉱質コルチコイド過剰、利尿薬の使用、高カルシウム血症、ペニシリン誘導体の投与はアルカローシスの発生機序でもあり維持機構でもある。 |
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==== 代謝性アルカローシスの尿所見 ==== |
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腎機能が正常の場合は尿中のクロールイオン濃度を測定することで原因がわかることもある。尿中Cl濃度が 10 mEq/L 以下の場合は循環血漿量の低下が強く疑われる。このような代謝性アルカローシスの多くは生理食塩水の[[輸液]]によって改善が見込め、Cl 反応性アルカローシスといわれている。[[利尿薬]]を用いていないにもかかわらず、尿中 Cl 濃度が 20 mEq/L 以上である場合は生理食塩水の輸液では改善が見込めないため Cl 不応性アルカローシスといわれている。Cl 不応性アルカローシスの原因としては[[鉱質コルチコイド]]過剰であることが多い。 |
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==== 嘔吐による代謝性アルカローシス ==== |
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嘔吐がおこり HCl が体内から失われると、細胞外液が減少し、脈拍の増加などの臨床所見がみられるにも拘わらず、尿中 Na 濃度は 20 mEq/L 以上である。通常は有効循環血液量が減少すると尿中 Na 濃度は 10 mEq 未満となるのだが、嘔吐ではこのような反応がマスクされる。これは HCO<sub>3</sub><sup>-</sup> 排泄のために遠位尿細管で Na や K を分泌するためと考えられている。代わりに嘔吐では尿中 Cl 濃度が 10 mEq/L 以下となるのが特徴的である。嘔吐が止まると、HCO<sub>3</sub><sup>-</sup> を排出しなくなるので、まずは Na の再吸収が正常に戻り、その結果水素イオンが分泌されるため、体内はアルカローシスにもかかわらず酸性尿が作られるようになる。この状態では尿中 Na 濃度は 10 mEq 以上となるが Cl は依然と低値のままである。有効循環血漿量が改善するとようやく代謝性アルカローシスが改善してくる。通常尿中 Cl の意義は尿中 Na と同様であるが、代謝性アルカローシスの場合は尿中 Na が体液量の指標にならず、尿中 Cl が指標となる。 |
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==== アルドステロン症による代謝性アルカローシス ==== |
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[[アルドステロン症]]では[[アルドステロン]]の過剰のため、尿中の Na, K, Cl の量が極めて多くなり、また酸性尿が生成される。アルドステロン症の代謝性アルカローシスは[[低カリウム血症]]によるものと考えられている。カリウムの欠乏がなければ、アルドステロン症であっても代謝性アルカローシスが起こらないか、起こっても比較的軽度である。アルドステロン症による代謝性アルカローシスは Cl 不応性アルカローシスである。 |
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==== 利尿薬による代謝性アルカローシス ==== |
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頻度としては高いのは[[ループ利尿薬]]、[[フロセミド]]の乱用による代謝性アルカローシスである。このような状態では[[低カリウム血症]]にもかかわらず、尿中 K 濃度が比較的高い(10 mEq/L 以下ならば低値、こういったときは[[下剤]]の乱用も考える)のが特徴である。尿中 Cl 濃度が高ければ利尿薬乱用の可能性が高まる。しかしそうでなければ、かなり稀ではあるが[[バーター症候群]]の可能性がある。バーター症候群と似た臨床像を呈する疾患として[[ギッテルマン症候群]]がある。両者の鑑別には尿中 Ca 濃度を測定すればよい。バーター症候群では尿中の Ca 濃度が上昇していることが多い。フロセミドの乱用(偽性バーター症候群)、バーター症候群ともに尿中 Ca 濃度が上昇する。これは尿からのカルシウムイオンの排出が促進するからである。[[高カルシウム血症]]ではその効果を期待して、多尿であるにもかかわらずフロセミドを治療として用いる。利尿薬による代謝性アルカローシスはアセタゾラミドの投与で改善しうる。ダイアモックスを 250 ~ 500 mg/day 投与し、高アンモニア血症に注意する。 |
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=== 代謝性アシドーシスの治療 === |
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代謝性アシドーシスの治療にはアルカリ剤の投与が行われる。HCO<sub>3</sub><sup>-</sup> の不足を補うため炭酸水素ナトリウムの投与が行われることが多い。 |
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:"不足 HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>" (mEq/L) = "体重"(kg) × 0.2 × (24 - "測定 HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>") |
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:"不足 HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>" (mEq/L) = "体重"(kg) × 0.2 × B.E. |
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から計算され、まず半分量を投与し pH をみながら追加していく。メイロンで行う場合は単位換算が必要である。7% メイロン 20 mL では 17 mEq/L であり、8.4% メイロン 20 mL では 20 mEq/L で計算する。一過性に PaCO<sub>2</sub> が上昇するため、十分な換気が確保された状態で行う。心肺蘇生時に必ず代謝性アシドーシスの補正は行うので、1 回の心肺停止でおよそ 10 mEq/L の炭酸水素ナトリウムが不足するため、50 kg の人ならば 7% メイロン 120mL が必要であるということは経験的わかっている。但し実際には 20 mL ずつ 10 分毎に投与といった方法で行う場合が多い。 |
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呼吸不全時の呼吸性アシドーシスが見られたときかつてはアシドーシスの補正のために[[重炭酸ナトリウム]]溶液を点滴するなどの処置がとられていたこともあったが、治療成績に変化はなく単なる補正の意義は小さいことが判明してきた。 |
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== 静脈血液による血液ガス分析 == |
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換気、酸素化の評価が必要な場合は動脈血液による血液ガス分析が必要であるが、酸塩基平衡を調べたい場合は静脈血による血液ガス分析で十分である。pH, PaCO<sub>2</sub>, HCO<sub>3</sub><sup>-</sup> に関しては動脈血と静脈血の相関係数は 0.9 以上とされている。平均誤差はpH 0.036 ± 0.006 (0.030 ~ 0.042), PaCO<sub>2</sub> 6.0 ± 1.0 (5.0 ~ 7.0), HCO<sub>3</sub><sup>-</sup> 1.5 ± 0.2 (1.3 ~ 1.7) とされている。() 内は 95% [[信頼区間]]を併記した。pH は小さくなり、PaCO<sub>2</sub> は大きくなり、HCO<sub>3</sub><sup>-</sup> は大きくなるため簡便な方法としては静脈血は動脈血と比べてpHが0.01 ~ 0.05 小さくなり、PaCO<sub>2</sub> は約 6 大きくなり、HCO<sub>3</sub><sup>-</sup> は約 2 大きくなると考えることが多い。また代謝性アシドーシスでは代償性呼吸性アルカローシスで代償されるが、十分に代償されている場合は HCO<sub>3</sub><sup>-</sup> に 15 を加えた値が PaCO<sub>2</sub> となっており、pH の小数点以下 2 桁がそのまま PaCO<sub>2</sub> となる。もし予想値より PaCO<sub>2</sub> が高ければ呼吸性アシドーシスの合併、PaCO<sub>2</sub> 低値ならば呼吸性アルカローシスが合併していると考えられる。 |
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== 参考文献 == |
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* {{Cite book|和書|author=工藤翔|coauthors=二村田朗|title=血液ガステキスト|edition=第2版|year=2003|publisher=文光堂|isbn=4830614153|oclc=123045685}} |
* {{Cite book|和書|author=工藤翔|coauthors=二村田朗|title=血液ガステキスト|edition=第2版|year=2003|publisher=文光堂|isbn=4830614153|oclc=123045685}} |
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* {{Cite book|和書|author=黒川清|title=水・電解質と酸塩基平衡 |edition=改訂第2版|year=2004|publisher=南江堂|isbn=452422422X|oclc=123070564}} |
* {{Cite book|和書|author=黒川清|title=水・電解質と酸塩基平衡 |edition=改訂第2版|year=2004|publisher=南江堂|isbn=452422422X|oclc=123070564}} |
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* {{Cite book|和書|author=深川雅史|coauthors=吉田裕明・ほか|editor=安田隆|title=レジデントのための腎疾患診療マニュアル|year=2005|publisher=医学書院|isbn=4260000497|oclc=170025824}} |
* {{Cite book|和書|author=深川雅史|coauthors=吉田裕明・ほか|editor=安田隆|title=レジデントのための腎疾患診療マニュアル|year=2005|publisher=医学書院|isbn=4260000497|oclc=170025824}} |
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==外部リンク== |
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{{Wikiversity|Arterial blood gasses}} |
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* [[アシドーシスとアルカローシス]] |
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== 外部リンク== |
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* [http://medt00lz.s59.xrea.com/ レジデント初期研修資料]:アシドーシスに対する治療など |
* [http://medt00lz.s59.xrea.com/ レジデント初期研修資料]:アシドーシスに対する治療など |
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{{呼吸器系}}{{Respiratory system procedures}}{{Normdaten}} |
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<!-- [[Category:Respiratory therapy]] --> |
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{{DEFAULTSORT:けつえきかすふんせき}} |
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<!-- [[Category:Diagnostic emergency medicine]] --> |
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<!-- [[Category:Diagnostic intensive care medicine]] --> |
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<!-- {{Blood tests}} --> |
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{{Respiratory system procedures}} |
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{{Normdaten}} |
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[[Category:血液検査]] |
[[Category:血液検査]] |
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[[Category:呼吸生理学]] |
[[Category:呼吸生理学]] |
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[[Category:腎臓学]] |
[[Category:腎臓学]] |
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[[Category:麻酔科学]] |
[[Category:麻酔科学]] |
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{{DEFAULTSORT:けつえきかすふんせき}} |
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{{Medical-stub}} |
2024年6月9日 (日) 11:08時点における版
血液ガス分析 | |
---|---|
医学的診断 | |
MeSH | D001784 |
MedlinePlus | 003855 |
LOINC | 24336-0 |
血液ガス分析(けつえきガスぶんせき、英: blood gas analysis、略称: BGA[1])は、酸素や二酸化炭素などの血液中のガスの量を測定するものである。通常の採血検査では静脈からの採血だが、血液ガス分析では通常、動脈が選択される。この場合、動脈血液ガス分析(Arterial blood gas、略称: ABG)と呼ばれる。この検査では、注射器と細い針を用いて橈骨動脈から少量の血液を採取する必要があるが[2]、鼠径部の大腿動脈やその他の部位から採取することもある。動脈カテーテルから採血することもできる。
BGAでは、動脈血酸素分圧(PaO2)、動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)、および血液のpHを測定する。さらに、動脈血酸素飽和度(SaO2)も測定できる。このような情報は、重篤な疾患や呼吸器疾患の患者を治療する際には不可欠である。したがって、BGAは集中治療室で患者に行われる最も一般的な検査のひとつである。他の病棟や外来では、パルスオキシメトリーやカプノグラフィーが、同様の情報を得るための侵襲性の低い代替方法であるが、正確性に劣り、血液ガス分析を完全に代替するものでは無い[3][4]。
BGAでは、血液中の重炭酸塩濃度を測定することもできる。多くの血液ガス分析装置は、乳酸、ヘモグロビン、いくつかの電解質、酸素化ヘモグロビン、カルボキシヘモグロビン、メトヘモグロビンの濃度も測定できる。BGAは、肺胞-毛細血管膜を介したガス交換を測定するために、主に呼吸器科および集中治療科で行われる。BGAは、医学の他の分野でもさまざまに応用されている。測定値の組み合わせは複雑で解釈が難しいことがあるため、計算機[5]、ノモグラム、経験則[6]が一般的に使用される。
BGAサンプルはもともと、分析のために医療現場から検査室に送られていた。近年では、臨床現場即時検査(ポイントオブケア検査、POC検査)としても分析が可能である。
採血
血液ガス分析のための動脈血の採血は、通常、医師などの医療従事者が行う[8]。橈骨動脈から採血するのが最も一般的であるが、その理由は、橈骨動脈へのアクセスが容易で、圧迫して出血を抑えることができ、血管閉塞のリスクが少ないからである。どの橈骨動脈から採血するかは、アレンテストの結果に基づいて選択される[9]。特に緊急時や小児の場合は、大腿動脈(またはあまり使われないが上腕動脈)も選択される。これらの動脈のいずれかにすでに留置された動脈カテーテルから採血することもできる[10]。採血時と保存時は空気の混入を避ける[11]。気泡はサンプルに溶け込み、不正確な結果をもたらすことがあるためである[12]。血液サンプルに空気が混入すると、測定値の二酸化炭素濃度が異常に低くなり、酸素濃度が上昇する可能性がある[注釈 1]。
動脈は高い圧力で血液が流れているため、採血後に血が止まりにくい[13]。また、静脈に比べると注射針による痛みも強い[13]。穿刺採血後は5分以上は圧迫止血が必要となる[13]。
採血したときの酸素濃度や呼吸の状態は検査結果に大きく影響するので、(もし吸入していれば)吸入酸素濃度や(もし装着していれば)人工呼吸中など、条件は記載しておくべきである[12]。とりわけ、人工呼吸器装着後は20分は経過しないと恒常状態にならないので、正しく評価できない[12]。
測定
血液ガス検体に使用される注射器には、プラスチック製とガラス製のものがある[14]。この注射器はあらかじめ包装されており、血液凝固を防ぐために少量のヘパリンが含まれている。通常のシリンジならば、「ヘパリン化」が必要で、シリンジ内面をヘパリンで濡らす[11]。シリンジは密封して血液ガス分析装置まで運搬する[15]。プラスチック製の血液ガスシリンジを使用する場合、サンプルは室温に保ったまま輸送し、15分以内に測定する必要がある[11]。分析までに長時間の遅延が予想される場合(すなわち、15分以上)、サンプルはガラスシリンジで採取し、直ちに氷中に置くべきである[11]。冷却する理由は、血液中の細胞が酸素を消費し、炭酸ガスを出すからである[12]。つまり、分析を遅らせると、細胞呼吸が進行するため、酸素濃度が異常に低くなり、二酸化炭素濃度が高くなる可能性がある。
近年は、グルコース、乳酸、ヘモグロビン、異常ヘモグロビン、ビリルビン、電解質の測定など、標準的な血液検査も血液ガス分析機で実施できる[16]。
派生パラメータには、重炭酸濃度、動脈血酸素飽和度(略号: SaO2)、塩基過剰などがある。重炭酸濃度は、測定されたpHとPCO2からヘンダーソン・ハッセルバルヒの式を用いて算出される。SaO2は、測定された動脈血酸素分圧(PaO2)から導出され、測定されたヘモグロビンがすべて正常(オキシまたはデオキシ)ヘモグロビンであるという仮定に基づいて計算される[17][10
分析
分析に使用される機械は、注射器から血液を吸引し、pHと酸素と二酸化炭素の分圧を測定する。重炭酸イオン濃度も計算される。これらの結果は通常5分以内に表示される.[要出典]。
測定項目と基準値
これらは典型的な基準値であるが、分析装置や検査室によっては異なる範囲を採用している場合もある。
分析項目 | 基準値 | 解釈 |
---|---|---|
pH | 7.34–7.44[18] | pH<7.35またはH+>45ならば、アシデミア、pH>7.45またはH+<35ならばアルカレミアである。
pH = log(1/[H+]) で定義される[19]。H+濃度が16nmol/L以下、または100nmol/L以下になると生命は生存できなくなる[19]。細胞外液のpH変化は血清K+濃度に影響し、pH0.1の上昇に対して、カリウムイオンK+は0.6mEq/L低下する。pHの低下に対してもK+は同程度上昇する[19]。 |
H+ | 35–45 nmol/L (nM) | |
動脈血酸素分圧(PaO2) | 10–13 kPa 75–100 mmHg[18] |
PaO2が低いということは、血液の酸素化に異常があるということであり、低酸素血症(hypoxemia)と呼ばれる。なお、PAO2は呼吸生理学において、肺胞気の酸素分圧を意味する[20]。aは動脈、Aは肺胞気である[20]。 |
PaCO2 | 4.7–6.0 kPa 35–45 mmHg[18] |
動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)は、二酸化炭素の産生と排泄の指標であり、代謝速度が一定であれば、PaCO2はすべて換気による排泄によって決定される[21]。PaCO2が高い(呼吸性アシドーシス、あるいは高炭酸ガス血症)場合は換気不足(あるいはまれに代謝亢進)であり、PaCO2が低い(呼吸性アルカローシス、あるいは低炭酸ガス血症)の場合は過換気を示す。 |
HCO− 3 |
22–26 mEq/L[22] | 重炭酸イオン、HCO− 3は、代謝上の問題(ケトアシドーシスなど)の有無を示す。HCO− 3が低ければ代謝性アシドーシス、高ければ代謝性アルカローシスを示す[23]。血液ガス結果と一緒に表示されるこの値は、分析装置によって計算されることが多いため、直接測定された総CO2レベル(下記参照)との相関をチェックする必要があります。 |
SBCe | 21 - 27 mmol/L | 標準重炭酸濃度(standard bicarbonate concentration: SBCe)とは、CO2が5.33kPa(または40mmHg[24])、酸素飽和度が100、37℃のときの血液中の重炭酸イオン濃度である[25]。この概念は、重炭酸イオンの変化に対する代謝の寄与を表している。これは1957年にJorgensenとAstrupによって導入された。要するに、代謝以外の影響をすべて補正した場合の重炭酸塩の推定値ある。もし適切な換気を行っていたら、患者の重炭酸塩濃度はどの程度になるだろうか」という問いに答えるものである[24]。 |
BE | 男[22]: −2.4 ~+2.2 mmol/L
女[22]: −3.3 ~+1.3 mmol/L |
塩基過剰(Base excess: BE)とは、その血液検体のpHを7.4に戻すのにどれだけの強酸が必要かを表した指標である[26]。酸塩基平衡異常の代謝成分の評価に使用され、代謝性アシドーシスまたは代謝性アルカローシスの有無を示す。塩基過剰はPaCO2 = 40とした場合、pHとは下記の簡易計算式の関係が成り立つ[27]。
pH = 7.4 + BE/7 しかしながら、BEは血液の変化を反映はするが、生体全体の変化(他の因子として、細胞や骨の緩衝作用も大きい)を反映しないことから、HCO3-の方が、酸塩基平衡異常を考える上では重要とされる[26]。 |
tCO2 | 23–30 mmol/L[28] 100–132 mg/dL[29] |
総二酸化炭素濃度(total CO2、tCO2)とは、血液中の二酸化炭素PCO2と重炭酸イオンHCO− 3の合計である。これらの間には以下の関係が成り立つ。 tCO2 = [HCO− α=0.226mM/kPaであり、HCO-3はミリモル濃度(mM)(mmol/L)、PCO2はkPaで表される。この式から、tCO2よりHCO− とされ、一般的では無い[30]。代謝性アシドーシスを疑う状況では、静脈採血よりも痛い動脈採血を行わずに、HCO− 3の値から診断可能となるのである[30]。 |
CaO2 | 94-100%[31] (mL O2/dL blood) |
酸素含量(oxygen content)とは、血漿中に溶解している酸素とヘモグロビンと化学的に結合している酸素の合計であり、下式によって求められる。
CaO2 = (PaO2 × 0.003) + (SaO2 × 1.34 × Hb) ここで、ヘモグロビン濃度(Hb)はg/dLで表される[32]。呼吸生理学上、a、vはそれぞれ動脈、混合静脈血(=肺動脈血)を意味し、それぞれの酸素含量はCaO2、CvO2と表記される[33]。 |
理論
正常な条件下では、ヘンダーソン-ハッセルバルヒ式により、血液pHは次のように表される。
上式では
である。
法則
- PaCO2が40mmHg以上または40mmHg未満で1mmHg変化すると、pHは0.008逆向きに変化する[34]
- [HCO- 3]が24mEq/Lより1mEq/L減少するごとに、PaCO2は約1mmHg減少する。
- HCO- 3]が10mEq/L変化すると、pHは同じ方向に約0.15変化する。
- pCO2とpHの関係を評価する:pCO2とpHが反対方向に動いている場合、すなわちpHが7.4未満のときにpCO2が↑、またはpHが7.4以上のときにpCO2が↓の場合は、呼吸障害が原因である。pCO2とpHが同じ方向に動いている場合、すなわちpHが7.4以上のときにpCO2↑、またはpHが7.4未満のときにpCO2↓である場合、代謝障害が原因である[35]。
心臓手術患者の管理
低体温人工心肺下で行われる心臓手術患者の血液ガス管理には、pH-stat法とα-stat法の2つの方法が用いられてきた。
- pH-stat法:ヒトの血液は温度が1℃低下するとpHは0.015上昇し、アルカローシスに傾く[36]。よって、その温度でこれを補正するために人工肺に炭酸ガスを添加し、呼吸性アシドーシスで代償させる[36]。例えば、28℃でPaCO2を40mmHgに補正すると37℃ではPaCO2は約60mmHgとなる。
- α-stat法:この方法では、PaCO2とpHに温度補正を行わず、正常体温すなわち37℃でPaCO2 40mmHgとpH 7.4を目指す[37]。
中等度低体温体外循環下手術ではα-stat、超低体温循環停止下手術ではpH-statが優れているとされている[36][37]。
pH-stat法とα-stat法にはどちらも理論的な欠点がある。α-stat法は心筋機能を最適化するために選択される方法である。pH-stat法は、脳の自己調節機能(脳血流と脳の代謝速度の連関)を失わせる可能性がある。代謝に必要な以上に脳血流量を増加させることで、pH-stat法は脳微小塞栓や頭蓋内圧亢進を引き起こす可能性がある[17]。
関連項目
脚注
注釈
- ^ これは吸入酸素濃度が室内気(酸素濃度21%)の場合であって、酸素吸入や人工呼吸中などは吸入酸素濃度を上げることができるため、空気混入時は逆に本来の値より計測値が低くなり得る。
出典
- ^ “血液ガス分析(BGA)|知っておきたい臨床で使う指標[14] | 看護roo![カンゴルー]”. 看護roo! (2017年1月30日). 2024年6月1日閲覧。
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参考文献
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- 諏訪邦夫『血液ガスの臨床』中外医学社、2006年2月10日。ISBN 9784498031562。
関連文献
- 工藤翔、二村田朗『血液ガステキスト』(第2版)文光堂、2003年。ISBN 4830614153。OCLC 123045685。
- 黒川清『水・電解質と酸塩基平衡』(改訂第2版)南江堂、2004年。ISBN 452422422X。OCLC 123070564。
- 田中和豊『問題解決型救急初期検査』医学書院、2008年。ISBN 4260004638。OCLC 676538912。
- 深川雅史、吉田裕明・ほか 著、安田隆 編『レジデントのための腎疾患診療マニュアル』医学書院、2005年。ISBN 4260000497。OCLC 170025824。
外部リンク
- レジデント初期研修資料:アシドーシスに対する治療など