NMRパイプテクター
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NMRパイプテクター(えぬえむあーるパイプテクター)は、日本システム企画株式会社が平成7年[1][2][3]から発売している装置である。核磁気共鳴 (NMR) とは関係ない(#明治大学 参照)。関連して「謎水事件」[4]「謎水装置」[5][3][6]という用語が用いられることがあるが、日本システム企画はこれらの用語を営業妨害を目的としてネット上で多用されている誹謗中傷用語だと主張している[7]。
本頁では、必要に応じてNMRパイプテクターをNMR[注釈 1]と略記すると共に、日本システム企画についても解説を行う。
効能とその主張
日本システム企画は、本商品に以下の効能があると主張している[7]。
- 給水管を40年以上延命させる
- 赤錆を黒サビに変化させる
しかし、後述の通り、その主張は科学的根拠を欠いており、実際の使用事例であっても「給水管が延命される」「赤錆を黒サビに変化させる」という効果は観測されていない。また、テレビで取り上げられた際に販売業者は「理屈はいずれ出てくるが、放送時点では理屈がない」としている[8]。
測定方法
主要な水道管についての効果は「閉塞率」で数値化するとされる。 「閉塞率」は水道管内にファイバースコープを挿入しデジタルカメラで撮影した後、画像をプリントアウトし、目視で境界線を引いてプラニメータで算出する[9]。その後、1年後にも同様の方法で「閉塞率」を算出し、閉塞率の単純比較によって効果が実現したかどうかを決定するとされる。
しかし、この測定方法では、ファイバースコープが管内に固定できないため、1年後に同じ位置で撮影することができず、定点観測ができない[9]。加えて、水平断面ではなく魚眼レンズを使用したファイバースコープを用いるため、撮影された映像と実体とに大幅な乖離が生じる可能性が否定できない。
さらに、「閉塞率」が悪化したケースであっても、詳細な追加調査は行われず、推測が記載されるのみである[10]。
日本システム企画
種類 | 株式会社 |
---|---|
略称 | jspkk |
本社所在地 |
日本 〒151-0073 東京都渋谷区笹塚2-21-12 |
法人番号 | 8011001017719 |
代表者 | 熊野活行 |
日本システム企画株式会社(にほんシステムきかく)は、1988年創業[9]の東京都渋谷区に本社を構えるNMRパイプテクターを開発・販売する企業である。熊野はNMRパイプテクターの発明者でもある[1]。「流体活性化装置」として特許3952477号を保有する[11]が、同特許は製造方法についての特許である[9]。
ネット総会屋対策協議会
日本システム企画は、「ネット総会屋対策協議会」なるサイトと関連性があると指摘されている[12]。「ネット総会屋対策協議会」は、山本一郎についてネット総会屋だと批判するとともに、山本一郎の行動について列挙している[13]。加えて、日本システム企画は、山本一郎から営業妨害を受けていると主張している。さらに、暗黒通信団と山本一郎が関係あると主張し、「取締が実施できるよう世論の力を期待」するとしている[14]。暗黒通信団はこのサイトについてコメントを発表していない。
外部露出
腐食防食学会
広告において「世界で唯一の論文」と掲載されているのは、2003年に「第13回 アジア・太平洋防食会議」で発表された「論文」である[1]。しかし、アジア・太平洋防食会議の主催者である腐食防食学会によれば、同会議に提出された論文は査読を行っておらず、「学術誌に掲載される論文とは『別モノ』」としている[1]。熊野によれば、「世界で唯一」という文言の根拠は、イギリスケンブリッジ大学の教員から「そんな技術は世界で唯一だ」と言われたためだという[1]。しかし、ケンブリッジ大学は論座の取材について回答を行っていない[1]。
メディア
2019年10月5日には「朝日新聞」が運営する論座において、「『バッキンガム宮殿採用』装置にダメ出し続々」と銘打ち取り上げられた[3]。その後、2020年7月7日付で一部内容を訂正した[15]。しかし、2020年11月3日、記事内容について「誤りや状況の変化があった」として同記事が取り下げられた[15]。また、「週刊新潮」2020年9月24日号でも『自治体が続々採用 防錆装置にインチキの声』という題で、浦安市で導入を巡って紛糾していることが取り上げられた。
テレビ
2014年11月2日、同3日、同9日、2018年5月27日に放送された「賢者の選択」で取り上げられている。
企業魂
2019年2月28日にTOKYO MXで放送された「企業魂」ではホテルサーブ渋谷と福祉施設ケアハウスしらさぎに取材が入り、NMR[注釈 1]導入後の効果の実感などが取り上げられた[16]。
田村淳の訊きたい放題!
2019年11月23日、同月26日にTOKYO MXで放映された「田村淳の訊きたい放題!」では日本システム企画の社長である熊野 (当時) が出演している[17]。「田村淳の訊きたい放題!」で熊野が言及したことはいくらかの矛盾がある:
- NMR[注釈 1]は正規品
- 熊野はNMR[注釈 1]の在庫がないので、手に入れるには窃盗あるいは偽物を手に入れる必要があると主張した[18][8]しかし、実際にはYahoo!オークションで中古品が出回っていたため、「在庫がない」という部分は否定されないにしろ、全数管理ができていないことは明らかである[18]。もし、そうでなく、盗難事件が起こっていたのであれば、熊野は「盗難の連絡があって再設置した、警察には通報済み」という旨を発言していなければ矛盾が生じるが、番組内ではそのような発言はなかった[18]。
- NMR[注釈 1]に入っていたのは磁石と樹脂だけ
- 熊野はNMR[注釈 1]のそっくりな「偽物」が出回っていると主張し、番組の中でNMR[注釈 1]を分解したものを見せてもその場では判断がつかないとした[18][8]。番組の中で示されたのはNMR[注釈 1]を分解し、中の構造がわかるようになったものであった。「偽物」の注意喚起を行わないということは、「偽物」はないと見ていることが導かれる[18]。また、熊野が「偽物」との差異について質問された際には「ネジがついていない」という一点のみ回答した。しかし、ネジはNMR[注釈 1]を分解するために取り外されたものであるため、仮に「偽物」が実在するのであれば、精巧さはとても高い[8]。
- 効果測定期間
- 測定方法では「閉塞率」を1年後のデータと比較して効果を算出している。しかし、熊野は「10年経過しないと効果が出ないものを、なぜ返金は1年目だけなのか?」という番組側の質問に対して「10年後の検証だと10年後までお金が入ってこない」など、的外れな回答を行った[8]。
広告
日本システム企画は、東京メトロ[4][9]、札幌市営地下鉄[3]、福岡市営地下鉄[3]、都営地下鉄[19]などで広告を掲載している。しかし、2019年9月ごろ、多数の市民から批判を受けて広告文言を大幅に変更したことなどが指摘されている[9][20]。日本システム企画は1988年創業であり、変更前の「40年以上延命」といった文言の根拠は不明である。
修正後の広告では、「築35年の大手DPE工場配管の外側から装着~設置後14年経過した後でも防錆効果が持続、配管を49年間維持しています」との文言が登場する[20]。しかし、DPE工場では亜鉛メッキ鋼管 (SGP) というサビに弱い管が使われている。築30年以内のマンションで上水道にSGPを使っているものはまず無い[9]ので、比較対象が不適切であるとされる[9]。
都営地下鉄
東京都交通局が運営する都営地下鉄でも、当該広告は掲載されている[19]。同広告は、東京都交通局の「広告審査要領」[21]に抵触しているおそれがあると指摘されている[22][6]。また、都交通局の苦情に対応する対応体制についても批判されている[23][24][6]。さらに、都交通局は論座で掲載されたことを認識しているとされる[24]。
動作原理とその検証
日本システム企画の主張に科学的根拠がないとする研究、報告、指摘が多数なされている。
- 主張:「複数のレアメタルを入れた粘土を1200度で焼結」した「黒体放射焼結体」から照射される電磁波と磁石が形成する磁場を通過して、水素原子が共鳴する[1]
- 主張:「黒体放射焼結体」は「1200度で焼結させる際、内部ではエントロピーが上昇する。これがじわじわと低下するときに電磁波を出す」[1]
日本技術士会
日本技術士会千葉県支部は、1年の議論を経て、支部年次大会で「有用な効果はない」とする報告書を採択した[3]。報告書の中では、NMRパイプテクターを分解した結果、永久磁石以外のファクターが存在せず、よって磁気活水器[注釈 2]と差異がないとした[26][25]。しかし、日本システム企画は「NMRパイプテクターは磁気活水器とは異なる」旨主張した上[27]、日本技術士会の本部に連絡した[3]。2019年12月、日本技術士会の本部は同文書を技術士会のサイトから削除し[15][3]、日本技術士会の公式見解でないことを表明した[15][3]。取り下げの理由として「一般企業の商品の効用を公表する活動は日本技術士会の事業活動の範囲に含まれない」としている[28][15]。
横浜市
横浜市による検証については、「特定の電磁波により、赤錆を黒錆に変え、それによって配管内の塩素消費を抑えることができる」という仮定の元にたち、設置後に配管内の残留塩素濃度を測定している。それによって「赤錆を黒錆に変える」という効能を直接検証したわけではないから、NMRパイプテクターの主張する効果が十分に検証されたとは言えないとされる[9]。
同調査では鉄分値も測定していたが、その値については有意な変化がなかったとされた。また、水道管内にカメラを挿入することが難化したことなどが課題として調査のまとめとしてあげられた[9]。
2016年 (平成28年) にはより厳密な検証が行われた。横浜市はNMRパイプテクター2基を324万円で購入した[29]。残留塩素濃度についてはほぼ変化がなく、黒錆化及び鉄分値の評価についても特に変化が見られなかったと報告された。さらに、X線解析装置による錆の成分の比較も行われたが、上流側と下流側で成分に違いは見られなかった。最終的に、「配管内の水道水の残留塩素濃度減少防止の効果はほとんど確認することができず、また、配管内の赤錆の変化についても確認ができなかった」と結論付けられた[9][30]。
なお、横浜市の調査は同市水道局OBが設立した販売代理店のアクアエンジと契約を結んで開始し、平成25年11月にNMRパイプテクターを撤去、平成26年3月に契約が終了している[31]。
明治大学
まず、核磁気共鳴 (NMR) は、ある電磁波の作用により磁場と原子核との間に磁気スピンが起きる現象である。原子核を磁場の中に入れて現象を観測することで、分子構造を原子スケールで解析することができる[9]。
しかし、NMRパイプテクターにおいてはその現象は発生しない。配管に永久磁石を設置するという構造であり、核磁気共鳴を起こすために必要な電磁波を発生させる電源や電気回路がないためである。電源なしに位相が揃ったマイクロ波を発生させる素材はないため、熱力学の第2法則に反した主張を行っている。NMRが水に作用するという説明にも無理があり、「水分子の凝縮体を小さくすることによる余剰電子」はサビに作用しない[9]。
装置の副次的効果についても、データに問題があることが指摘されている[9]。
金魚の成長促進効果について、水槽にNMRパイプテクターをつけた場合とつけていない場合では、つけた場合の水槽内の個体が大きく成長することが主張されている。しかし、水槽内の個体が各10匹ほどであったこと、個体の分け方がランダムでなかったこと、追試がないことなどからこの結果を持ってNMRパイプテクターには金魚の成長促進効果があると主張するのは難しいとされる。逆に、有意な差が生まれて何の規制もなく運用されている装置である場合、倫理的な問題が生まれるため医療機器に準じた厳しい規制を受けるべきだとしている[9]。
NMRパイプテクターを通して精製された水で炊いた米が有意に美味しいという主張、血圧の抑制効果があるという主張も同様にデータのとり方に問題があるため、欠陥を抱えているとされる[9]。
また、「閉塞率」がわずかでも減少していれば効果ありとするなど、客観性に大きくかけた手法及び解釈が行われているとされる[9]。
さらに、問題点の指摘に対して「営業妨害を目的とした誹謗中傷」などとして対応しており、建設的な議論が展開されていないと指摘されている[9]。
総評の中で、明治大学はNMRパイプテクターを疑似科学として扱っている。また、マンションなどの管理組合も一般消費者として同様にして扱うなどの行政対応が提案されている[9]。
理科の探検
「理科の探検」は『「謎水装置」NMRパイプテクターに翻弄される人々』[32]という記事でNMRパイプテクターを取り上げ、「物理的には何の意味もないガラクタ」だと強く批判した[1]。同誌編集長の左巻健男によると、人格権が侵害されたとしてホストのロリポップ!に対し同ページの削除を求める「削除仮処分命令申立」が行われたという[26][33]。しかし実際は、裁判所による正式な削除仮処分命令申立は下っていない。地方裁判所がロリポップ!に連絡した後、ロリポップ!は左巻にメールを送信した。しかし、そのメールはメールのゴミ箱に入っていたため、左巻はそのメールの期限内に返答することができなかった。その後、ロリポップ!は左巻のサイト全体を閲覧できないようにして、批判を受けた[34]。その後、「熊野さん〔ママ〕たちは申し立てを取り下げた」[33]。
実例
- 2004年、東京都内の分譲団地にNMRパイプテクターが設置された。しかし、2014年、同団地の管理組合は施設の現状を示したレポートを提出した。レポートには、サビて真っ赤になった給水管の内部画像が貼付され、部屋では2019年でも赤錆が混ざった赤い水がでるとされる[33]。
- 東商信用録によれば、2006年に代理店契約を結んだとされるNTTファシリティーズ[35][5]や松井ビルグループが取引先としてあげられている[36]。
- グランドフロント大阪に取り付ける動きがあったとされる[37]。
浦安市
千葉県浦安市市議会では、2020年6月25日にNMRパイプテクターについての質問が行われた[38]。議員Aは、導入の経緯、及び導入の予定・日程・入札についての回答を求めた。しかし、生涯学習部長 (当時) は「パイプテクターの導入についてはこれまでの実績や導入効果、コスト面から有効であると判断し、導入を決めたもの」、「現在、文化会館[注釈 3]のパイプテター導入につきましては、契約に向け事務手続きを進めており、秋頃までに導入したいと考えております。」と噛み合わない回答をした[38]。その後、生涯学習部長は平成29年に相手方から浦安市の施設の中で実証実験を行い、その効果が現れたと判断されれば、導入を検討してほしいと伝えられ、文化会館[注釈 3]での実証実験結果をもって、導入を決めたものだと回答した[38]。
文化会館の採水においては、2018年5月14日には「全鉄値」が4.6ミリグラム毎リットルであったのに対し、同年7月24日には0.4ミリグラム毎リットル、2019年2月27日には0.2ミリグラム毎リットルとなった[38]。
議員Aは、田村淳の訊きたい放題!での10年ほどみてほしいとの熊野の発言とこの結果を比較し、再度の解析をしてからでも遅くはないとした[38]。
2020年9月24日、議員Aは6月の議会で行われた浦安市側の答弁に納得が行かないとして、同様にNMRパイプテクターについての質疑応答が行われた[39]。議員Aは、熊野が「田村淳の訊きたい放題!」で証明については大学で研究中だと述べたことについて、その結果が出てから導入しても遅くはないと主張した。また、横浜市の事例と民間のマンションの事例を取り上げ、市側の見解を示すように求めた。
生涯学習部長はこれについて、横浜市水道局に聞き取りを行ったとし、「NMR工法による…残留塩素減少防止効果の検証では…下流側における残留塩素濃度への影響は確認できなかった…という結論であり、NMRパイプテクターの性能・効果を評価したものではございません」との回答を得たとした。しかし、横浜市は調査の結論の中で「配管内の赤錆の変化についても確認ができなかった」ともしている。また、民間のマンションの事例については、「与り知らないところ」だとした[39]。
議員Aは、テレビで民間のマンションの事例も取り上げられているので、調べて見解を述べるように求めた。また、当該マンションについて、取り付ける位置のミスで、本来効果が出てはいけない部屋まで出てしまったので、返金が行われたという事例がテレビで言及されたことを取り上げた。さらに、左記の事例について、市側に事例の解釈を答弁するように述べると共に、「議会軽視も甚だしい」「通告制度そのものを、…否定するような対応」だと強く批判した[39]。
さらに、議員Aは契約書の内容について、購入の方法と、入札時期について質問した。それについて生涯学習部長は「1社随意契約で執行する予定」と答弁し、議員Aは「いや、それはあり得ない」と強く反発した。その後、市長が「文化会館での実証実験および、市民プラザ設置後の水質検査等に、…すこし時間をかけて、その後、経過観察をしてまいりたい」と答弁した[39]。
12月の議会でも、同様に取り上げられた[40]。文化会館への導入は見送られた[40]。議員は、9月の議会で取り上げられた水質調査の進捗、及び水質調査における採水方法を答弁するように求めた。 生涯学習部長は、JIS K 0101を使用して、「最初の…取水の時に、…淀み水をなくす形で…ある程度の水を流し、そのあとに水を大きな袋で採水し、そこから…250ccのボトルに、…くみ取り、…それを検査場に…、提出しているということ」と答弁した。しかし、JIS K 0101は試験方法であり、JIS K 0094を採取方法として用いる[40]。
2021年3月の議会でも、議員Aは継続的な水質試験の結果、文化会館[注釈 4]においてNMRパイプテクターは効果がないどころか、赤錆の値が高くなっていることに言及し、予算の繰越を批判した[41]。
2021年6月の議会でも、議員Aは情報公開で手に入れたという「設置証明書兼製品保証書」および「特約事項記述書」の条項、一般社団法人日本冷凍空調工業会のガイドライン、及び指標値の上下に言及した。言及のなかで、指標値を「非常に後出しジャンケン」と強く批判して、導入しないように求めた。さらに、研究結果の発表およびその時期について答弁を求めたが、市は確認待ちだと答え、いっとき堂々巡りとなった[42]。
NTTファシリティーズ
NTTファシリティーズも、NMRパイプテクターを設置している[43]。
肯定的評価
InnovationS-i
株式会社ノーズフーが運営するビジネスメディア「InnovationS-i」で表彰が行われた革新ビジネスアワード2019にて、日本システム企画はNMRパイプテクターが数々の歴史的建造部値に採用されるなど、画期的製品であるとビジネス部門優秀賞を受賞した[44]。
空調タイムス
空調・冷熱業界の専門紙である「空調タイムス」では、2018年5月30日、北海道の友愛記念病院でNMRパイプテクターの導入により配管修繕費の大幅削減と配管更生に成功した件が報じられた[45][46]。
問題
現行法上の問題
この節は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。 |
マンションの管理組合は現行の消費者生活法で定められた消費者ではないから、国民生活センターや同法を根拠として消費生活センターからの手助けは期待できない[6]。また、法の抜け穴状態であり、対応が難しいとされた[6]。 景品表示法の優良誤認であれば対処できるが、同法は個別の被害の救済を目的としないので、この場合には適用できない[6]。 不正競争防止法の虚偽表示については、経済産業省の担当者が「効果の有無は難しい」「例えば〔ミートホープ事件のように〕牛100%とうたっていたのに違う、のように明らかに違うと示せる話なら別」と話した[6]。
契約上の問題
日本システム企画は、効果がでなければ全額返金保証を約束しているが、「効果」の算出方法が設置当初と設置から1年後の「閉塞率」測定であり、また有効かどうか判定する基準が、閉塞率がその下げ幅の大小に関わらず改善したことと定義しているため、「10ポイント[注釈 5]減」という広告が疑問視されていると共に、契約前に厳密かつより正確な条件を付加して契約すること、及び評価や検査のときに日本システム企画と関係しない会社に依頼することが勧められている[47]。
さらに、保証内容が10年間に渡る交換保証、及び1年後に1度のみ起きる返金の機会のみであることについても問題視されている[48]。
裁判
A及びCの氏名を記載することは、削除の方針に抵触するためお控えください。 出典に実名が含まれている場合は、その部分を差し替えてください。 |
2021年6月18日、東京地方裁判所にて刑事裁判が行われた。日本システム企画編集部 (以下、編集部と略記) は、被告のA (以下、被告A、あるいは単にA) がハンドルネームaを使用してTwitter上でNMRパイプテクター (以下、NMRと略記) の営業妨害および誹謗中傷目的のツイートを行っていたとしている[49]。ハンドルネームaでNMRに関するツイートが行われていたことは事実である[50]。さらに、編集部は被告Aの居住する団地Bの全棟に「NMRパイプテクターが導入される事を妨害することが目的であると想定されました」と主張している[49]。続く段落では被告Aの実住所が記載されている[49]。
編集部は、日本システム企画が2018年2月13日に団地Bの3号棟で「赤錆閉塞率」の測定、及び3号棟の給水管ポンプにNMRの設置を行ったとしている。1年後の2019年2月13日には「赤錆閉塞率」が実質4ポイント[注釈 5]改善したとする[49]。
団地Bの管理組合は2019年5月の第32回通常総会で1号棟と2号棟の給水管ポンプ及び1号棟から3号棟の給湯配管にNMRを設置することを決議した。その直後、管理組合役員が大半交代し、団地Bの設備担当理事にAの父であるCが就任した。Cは、NMRの導入を止め、給水及び給湯配管の全面更新工事をするよう活動を開始した[49]。 それに対して編集部は、「赤錆閉塞率」のポイント[注釈 5]差を用いてNMRの効果を主張している。 2018年3月、Cは、A及びCの妻と共に、暗黒通信団の関係者とされる[注釈 6]Dの、NMRを「事実無根に誹謗中傷する文章[注釈 6]」を用いてNMRの導入反対集会を開催した。 編集部によれば、Aは2018年1月からTwitterでNMRに対して「誹謗中傷行為[注釈 6]」を行った。また、アメーバブログ、FC2ブログ、Yahoo知恵袋でも日本システム企画への誹謗中傷[注釈 6]を行った。さらにAは2019年3月にエキサイトブログでNMRの誹謗中傷[注釈 6]ブログを立ち上げた。
編集部によれば、2019年5月、Dは、暗黒通信団の主要メンバーであるEが編集した理科の探検にNMRを誹謗中傷[注釈 6]する記事を書いた。AとDは連帯してNMRの「営業妨害的活動[注釈 6]」を行ったとする。
編集部によれば、Cが講演をするなどの関係がある日本技術士会千葉県支部には、Dの兄弟であるFが所属している。また、2019年7月にネット上でFが主導して千葉県支部の名称を使い[注釈 6]、NMRの誹謗中傷[注釈 6]にあたる見解、『「NMRパイプテクター」の効果についての見解書』の発表を行った。しかし、左記の見解は編集部によれば日本技術士会本部の指示で削除された。さらに、日本システム企画のNoteによれば、日本技術士会はFの私的見解であったことを認めている[51]。日本システム企画は次の旨をNoteで主張している[51]。
- 見解の中で分解及び調査したとされる装置は、Fのもとに匿名で提供されたNMRの偽物である
- 偽物を分解しているために、見解の中では「永久磁石の磁力以外の物理的・化学的原理が組み込まれず〔後略〕」という誤った前提条件に基づいて議論が進められている
- NMRの赤錆防止効果は黒体放射焼結体より発生する特定の電磁波が要である
- 見解の中で導かれた結論は磁気活水器に対するものであり、NMRを評価するにあたっては不適切
編集部は、A及びC、暗黒通信団、日本技術士会千葉県支部の連携[注釈 6]によるNMRに対するネット上の誹謗中傷行為[注釈 6]は団地BにおけるNMR導入を妨害し、配管更新を行うとしていることと深いつながり[注釈 6]があると断言している[49]。 また、編集部によれば以下の点はAの偽証[注釈 6]であると断言している。
- Aの行為は他のマンションへの導入を妨害することが目的だった
- 編集部によれば、団地Bへの本格的なNMR導入を妨害すること[注釈 6]が主目的だとしている。
- Aのメリット及び利益は無い
- Aは日本システム企画に対して謝罪した
- 編集部によれば、Aから日本システム企画に対しての謝罪はなかった。
- NMRへの誹謗中傷[注釈 6]ブログは削除した
注釈
出典
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