巨大数
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巨大数(きょだいすう)とは、日常生活において使用される数よりも巨大な数(実数)のことである。非常に巨大な数は、数学、天文学、宇宙論、暗号理論、インターネットやコンピュータなどの分野でしばしば登場する。天文学的数字(てんもんがくてきすうじ)と呼ばれることもある。
巨大数論 (googology) というものがあり、天文学的数字を大きく上回る数を研究する学問である。天文学的数字も巨大数と呼ばれるが、巨大数論では特殊な表記を使用することでより大きな数を表現する。
なお、巨大数に対して、0ではないが0に限りなく近い正の実数のことを微小数(びしょうすう)という。
後述のように、巨大な数(や微小な数)を処理するために特殊な数学記号が使われている。
巨大数の使用例
巨大数は、例えば以下のような使用例がある。
- アメリカ合衆国で1年間に喫煙で消費されている紙巻きたばこの本数 - 約 1兆本 = 1012 本
- 人間の脳のシナプスの数 - 約 1014 本
- 人間の体の細胞の数 - 100兆個 = 1014 個以上
- 日本の2007年の国内総生産 - 561兆円 = 5.61×1014 円
- 一般的なコンピュータのハードディスクドライブの容量 - 1014 ~ 1016 ビット
- 国際連合加盟国の20世紀のGDP合計 - 30京円 = 3 × 1017 円
- アボガドロ定数 - 6.02214076 × 1023(定義値)
- 太陽の全放射量 - 約3.83 × 1026 ワット
- ジンバブエ・ドルのインフレーション率(2009年1月)- 6.5×10108 パーセント[1]
「天文学的」な巨大数
巨大数は、天文学の分野にも登場する。
- 1光年 ≒ 9.46×1015m
- 観測可能な宇宙に存在する原子の総数 - 1079 ~ 1081 個
- 地球の質量 - 6×1024kg
- 太陽の質量 - 2×1030kg
- インフレーション後の宇宙の大きさとして出された物理学者レオナルド・サスキンドによる解の一つ - m[2]
MD5のハッシュキーの長さは128ビットであり、2128 (約 3.402×1038 )通りのハッシュ値をとる。これは非常に良好なハッシュ関数であり、あるドキュメントが特定のハッシュ値をとる確率は 2-128 となっている。これは実質的にはゼロに等しい値である(ただし、誕生日のパラドックスに注意)。しかしながらこの数は、地球上に存在する原子の総数と比較するとまだまだ小さな数であり、観測可能な宇宙に存在する原子の総数よりも遥かに小さい数といえる。
組合せ論的数
組合せ数学において、組合せの場合の数などは急激に大きくなる数で、組合せ爆発といった語もある。たとえば、一意な要素の集合についての順列の数である階乗関数は、非常に急速に発散する関数である。それを拡張したものとして、超階乗も考えられている。
組合せ関数は、統計力学で扱われる巨大数を生成するために使われることがある。統計力学の分野で使用される数は、一般に対数を用いて表される。
- 無量大数 - 1068、1088とすることも
- グーゴル - 10100
- センティリオン - 米・加では10303、フランス、スペイン等の欧州大陸側では10600
- 知られている最大の素数 - 257885161 - 1 ≒ 5.818872662322464421751002×1017425169 (2013年2月発見)
- 不可説不可説転 -
- グーゴルプレックス - 10googol=
- 第一スキューズ数 - ≒
- グーゴルプレックスプレックス - 10googolplex=
- 第二スキューズ数 - ≒
- グーゴルプレックスプレックスプレックス - (数のクラス分け)
- トリトリ - 3↑↑↑3、3→3→3
- スタインハウスのメガ
- スタインハウスのメジストン
- モーザー数
- グラハム数[3]
日常の用語として使われる「天文学的 (数)」に対し、(あまり一般的ではないが)「組合せ論的 (数)」という語がある。
計算不可能な手続による巨大数の構成
ビジービーバー関数 Σ は、あらゆる計算可能関数よりも速く増大する関数の一例である。ビジービーバー関数自身は計算不可能である。引数が比較的小さな値であっても巨大な値を返す。n = 1, 2, 3, 4 に対して、Σ(n) の値はそれぞれ 1, 4, 6, 13 である。Σ(5) は未知であるが、4098以上の値をとる。Σ(6) は少なくとも 1.29×10865 である。また解析によるとΣ(23)がグラハム数を超えることが分かっている。
無限数
上述の数はすべて非常に巨大な数であるが、それでも有限である。数学の一部の分野では、無限大や超限数という定義をしている数がある。
- アレフ0 () は、整数の集合の濃度である。
- アレフ1 () は、アレフ0 の次に大きい濃度である。
- アレフ () あるいは は、実数の濃度である。命題 は、連続体仮説として知られている。
- 巨大基数は、ZFCではその存在が証明できないような大きな基数である。例えば、(弱・強)到達不可能基数、マーロ基数、(弱・強)コンパクト基数、可測基数等がある。
巨大数の表記法
巨大数の大きさは一般に指数を用いて表され、多くの現実的な目的においてはそれで十分である。しかし、モーザー数やグラハム数などは「10の10乗の10乗の…」を宇宙の果てまで続けても追い付かないほどのとてつもなく巨大な数であり、指数では表現しきれない。そのような超巨大な数を表現するために、多くの数学者が独特の表記法を考え出した。
- クヌースの矢印表記(タワー表記)は、指数の積み重なりである指数タワーを記述するための、非常に単純な表記法である。
- ハイパー演算子は、加法の繰り返しで乗法、乗法の繰り返しで冪乗を作ることを発展し、新たな演算を作っていくものであり、本質的にはタワー表記の別表記である。
- コンウェイのチェーン表記は、タワー表記の「矢印の増加」そのものの繰り返し、『「矢印の増加」に繰り返しを入れること』の繰り返しなどを表現できるようにし、さらに巨大な数を表せるようにしたものである。
- スタインハウス・モーザーの多角形表記は、巨大数を示すために多角形を使用している。
- 超階乗は階乗を拡張したものである。
- アッカーマン関数は、与える数が大きくなると急激に増大する関数である。
- 回転矢印表記はタワー表記やチェーン表記の拡張版で矢印の回転を繰り返すことにより従来のタワー表記やチェーン表記よりも遥かに巨大な数を表記できるようにしたものである。
- BEAFは配列表記やその拡張によりタワー表記やチェーン表記や回転矢印表記よりも遥かに巨大な数を表記できるようにした記法である。
これらの表記法で表されるような巨大数の逆数を取れば、「10のマイナス何乗」といった通常の指数では現実的に表現しきれないような微小数を表記することができる。
脚注
- ^ ZIMBABWE: Inflation at 6.5 quindecillion novemdecillion percent 2009年1月21日、Forbes ASIA、2019年1月26日閲覧
- ^ "Susskind's Challenge to the Hartle-Hawking No-Boundary Proposal and Possible Resolutions"
- ^ フィッシュ『巨大数論 第2版』インプレス R&D、東京、2017年。ISBN 9784802093194 。