地元にあって合一である立場に立つ教会
地元にあって合一である立場に立つ教会(じもとにあってごういつであるたちばにたつきょうかい、略称:地方教会または地方召会,中国語:地方教會,英語:Local churches、ローカル・チャーチ)は、新約聖書中の記述にある「・・・に在る教会」(例.コリントにある教会、エペソにある教会,他同様)という記述に基づき、地上における教会の境界線は唯一、都市にあるとする実行を行なうキリスト教系宗教組織である。ウォッチマン・ニーとウィットネス・リーは新約聖書の記述を先入観無くそのまま実行した実行者であり、「ローカル・チャーチ」という新しい教義を生み出した開祖ではない。日本語では、「教会」という単語のギリシャ語原文「ekklesia(エクレシア)」が「ek(エク)」「から」と、「kaleo(カレオー)」「召された」の派生語から成っていることから、召し出された者たち(会衆)すなわち、「召会」とする方がギリシャ語原文に忠実であるとし、地方召会と称されるのが通例である。また、キリスト教年鑑には「地元にあって合一である立場に立つ教会」という名称で掲載されている。
概要
ウォッチマン・ニーとウィットネス・リーの地方召会に関する著書はアメリカのリビング・ストリーム・ミニストリーから出版されており、日本においてはJGW日本福音書房から翻訳、出版されている。一部、ウォッチマン・ニーの著書を独自に翻訳、『ウォッチマン・ニーは「家の教会」の実行者であり地方召会の実行者ではない』と主張する信者もいるが、ニーの複数の著書に地方召会の実行についてのメッセージが残されていることから、この主張は完全な誤りであると判断される。地方召会に関する実行は教会の宇宙性、唯一性を否定するものではなく、ニー、リーの著書の中には教会の宇宙性、唯一性と地上における教会の実行上の形態としての地方召会が述べられている。
地方召会の実行者を総称して「主の回復」と呼ぶ場合があるが、「主の回復」は、教会の堕落により失われた「神が定めた本来の計画と実行」を聖書真理に基づき「回復」するという意味合いがある。この面から考えると、地方召会の実行は「回復」されるべき一項目にすぎず、「主の回復」の方が「地方召会」よりもより広義であると言える。また、地方召会の実行者を「ローカル・チャーチ」と総称しているのは主に外部の者であり、実行者自身は「ローカル・チャーチ」、「地方召会」を名称として捉えず、あくまで地方召会の「実行」として認識している。地方召会の実行者たちは本部を持たず、信者が居住する都市において「・・・に在る教会」という名称で個々に教会を運営している。日本においては法律に則り、地方公共団体が認可する宗教法人格を個々に取得している。地方召会の実行者たちは聖職者階級制度を持たず、個々の教会には牧師、神父などの聖職者階級が存在しない。ただし日本国の法律に則し、宗教法人の代表者、役員は信徒の中から選出し、行政上の報告を地方公共団体に行っている。
歴史
地方召会の実行は、1960年代後半から1970年代にかけて、アメリカのChristian Research Institute、Answers In Action等の団体から激しい反対に遭ったが、近年、対話により和解。2008年にChristian Research Instituteの代表者であるハンク・ハネグラフ、Answers In Actionの理事であるグレッチェン・パッサンティーノの声明文が発表され、過去の誤解の経緯、地方召会の実行の正統性などを明らかにした。また時を同じくし、アメリカの神学校であるフラー神学大学が声明文を発表。地方召会の実行者との長期的な対話と、ウォッチマン・ニーとウィットネス・リーの著書の徹底的な調査と検討を通して、地方召会の実行と彼らの持つ神学の正統性を認め、同時に地方召会の実行のカルト性を完全に否定した。さらにChristian Research Instituteは、2009年に団体で発行している「Christian Research Journal」を、タイトル名『We Were Wrong (わたしたちは間違っていた)』で発行。同団体が過去行った反対活動により地方召会の実行がカルト視され、大きな被害を与えた事を謝罪し、地方召会の実行の正統性を改めて詳細に論じた。これらの記事はとても詳細なものであり、62ページある紙面の内、50ページ以上を割いて論述された。
新約聖書に記述がある地方召会の実行が廃れてしまって後は、中国で1920年にクリスチャンになったウォッチマン・ニーにより地方召会の実行が再開され、1920年と1952年の間にニーは中国本土のいたるところに地方召会を設立した。ウォッチマン・ニーは1952年に中国共産党政権によって投獄され、1972年に獄中で殉教した。ニーは、共産主義者によって接収されるという出来事に際して、地方召会の実行の働きが失われないように、ウィットネス・リーに1948年に台湾に行くように依頼した。現在、地方召会の実行はアメリカ合衆国、極東、ヨーロッパ、ロシア、南アメリカ、アフリカ、そして、中東など世界中に広がっている。
「異端」とする見解
キリスト教界において、「地元にあって合一である立場に立つ教会」あるいはウィットネス・リーの教えを「異端」とする見解がある。
- 東京基督教大学 国際宣教センター・日本宣教リサーチの『JMR調査レポート(2017年4月)』[1]では「教義上あるいは信仰の実践上、キリスト教もしくはプロテスタントの一派と見なすことが困難とされるグループや教会の1つ」として、セブンスデー・アドベンチスト教会、イエス之御霊教団、萬国福音教団、聖書研究会(実際には統計に入れられており、聖書研究会は東京基督教大学支援会員であるという。詳細不明)、基督心宗教団、復元イエス・キリスト教団、真イエス教会日本総会、アメン教団、日本基督召団、原始福音(キリストの幕屋)、同仁キリスト教団と共に「地元にあって合一である立場に立つ教会」を挙げている。
- 神戸キリスト栄光教会牧師の菅原亘は著書において異端としてエホバの証人・末日聖徒イエス・キリスト教会(モルモン教)・世界基督教統一神霊協会(統一協会)・「ベレヤの教え」(ベレア、日本ベレア宣教会)と共に「ウィットネス・リー」を取り上げ「既成の教会のあり方を攻撃」し「無意味であるように教え」「自分たちのグループに誘う」と言及している。ただし、ウォッチマン・ニーには言及していない[2]。
地方召会に関する著書
- 『集会の生活』ウォッチマン・ニー JGW日本福音書房
- 『正常なキリスト者の召会生活』ウォッチマン・ニー JGW日本福音書房
- 『教会生活をさらに語る』ウォッチマン・ニー JGW日本福音書房
- 『教会の認識』ウィットネス・リー JGW日本福音書房
脚注
- ^ 『JMR調査レポート(2017年4月)』
- ^ 菅原亘『クリスチャンライフ テキストブック』プレイズ出版,2003年