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益子参考館

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
濱田庄司記念益子参考館[1]
Shoji Hamada Memorial Mashiko Sankokan Museum
地図
施設情報
正式名称 公益財団法人濱田庄司記念益子参考館[1][2]
愛称 益子参考館
専門分野 民芸(濱田庄司作品及び濱田庄司による生前の蒐集品展示)
館長 濱田友緒[2][3]
管理運営 公益財団法人濱田庄司記念益子参考館[1][2]
開館 1977年(昭和52年)4月10日[4][5][6][7](一般公開は同年4月12日[7]
所在地 321-4217
栃木県芳賀郡益子町益子3388[6]
位置 北緯36度28分14.65秒 東経140度6分30.25秒 / 北緯36.4707361度 東経140.1084028度 / 36.4707361; 140.1084028座標: 北緯36度28分14.65秒 東経140度6分30.25秒 / 北緯36.4707361度 東経140.1084028度 / 36.4707361; 140.1084028
外部リンク 濱田庄司記念益子参考館
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濱田庄司記念益子参考館(はまだしょうじきねんましこさんこうかん)[1]は、栃木県芳賀郡益子町にある濱田庄司の自邸の一部と[8]陶芸窯(工房)跡を活用した[9][10]栃木県の登録博物館。運営は「公益財団法人濱田庄司記念益子参考館」[1][9](はまだしょうじきねんましこさんこうかん、法人番号3060005007610)。

益子焼の陶芸家であり、民藝運動の主要人物であった濱田庄司が、濱田自身が参考にした蒐集品を、あらゆる人々に「参考にしてもらうために」[11]、自らの手で世界各地から蒐集した民藝品[12][13][14]を展示している博物館である[9][11][8][15]

沿革

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1924年大正13年)に濱田庄司益子町に移住し、1930年昭和5年)から現在の益子参考館及び濱田窯の敷地内に、益子町茂木町などに建てられていた近隣の複数の建物を徐々に購入移築していき、自身の生活と作陶の場としていった[16][17]

以前より自分の蒐集品を一般の人々にも見学して貰っていたが、より一層効果的に観覧が出来るように、1974年(昭和49年)12月9日、自身の80歳の誕生日を記念し「財団法人益子参考館」を設立[16]。濱田庄司所有の建築物とこれまでの蒐集品を寄付した[5]。そして1976年(昭和51年)9月27日に私立博物館登録を行った[16][1]

濱田庄司最晩年となった1977年(昭和52年)4月10日[7]、後進の民藝の道を志す人たちの創作や、一般の人たちも民藝品を鑑賞することの「参考にしてもらいたい」という想いの元に[11][18]、濱田庄司を初代館長として[19]、濱田の自邸の一部を使用し[20]、濱田自身が日本のみならず世界中から蒐集した様々な民藝品[9][11][16][21][22][23][12][13][14]を展示した「益子参考館」を開館した[24][5][25][26][6]。同日に開館式が行われ、4月12日から一般公開された[7]

1978年(昭和53年)1月、濱田庄司の逝去により濱田晋作が「益子参考館」の2代目館長となる[16][27][28]

濱田庄司逝去後の1978年(昭和53年)5月、観覧者の要望により、濱田庄司の作品の陳列も試み、大いに好評を得た[29]

濱田庄司逝去後の1978年(昭和53年)7月から始まった益子参考館の収蔵庫の建築と、細工場と登り窯の整備改修などを目的とした支援募金活動の主旨に「濱田庄司作品を観覧出来る施設を」の要望が入れられたため[30]、濱田邸内の長屋門の一つをその為の施設として転用することにし、土台を補修し、原形を留めながら改修。濱田庄司逝去から約10年後の1989年平成元年)4月、「濱田庄司記念館」として開館された[29]

2012年(平成24年)4月[2]、晋作が益子参考館館長を次男の濱田友緒に譲り、名誉館長に就任した[28]。3代目館長に就任した友緒は2011年(平成23年)に発生した東日本大震災濱田窯と共に被災した益子参考館の再建に尽力していった[31][32][33]

2013年(平成25年)、益子参考館が数多くの寄付金をもとにして再建し「益子参考館再建式典」を館内で開催した[31]

2014年(平成26年)4月25日、栃木県教育委員会は博物館法の規定により、当館の法人名を「公益財団法人濱田庄司記念益子参考館」に、そして博物館名も「公益財団法人濱田庄司記念益子参考館」と変更登録をすると公示した[1]

2015年(平成27年)、益子参考館内にある、震災で崩壊した後、再建を果たした濱田庄司の大窯登り窯を使用して、震災復興を記念する「濱田庄司登り窯復活プロジェクト」を開催。益子焼の陶芸家約100名が参加し焼成を行い好評を博した[34][35][36][33]。そして2018年(平成30年)には益子焼笠間焼の陶芸家計87名が参加し、第2回目となる登り窯復活祭プロジェクトを行った[37][31][38][33][39]

益子参考館で行われた「登り窯復活プロジェクトVol.2」区割表。
益子参考館で行われた「登り窯復活プロジェクトVol.2」区割表の近影。

施設

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いずれも濱田庄司が気に入った建物を益子町近辺から購入移築された建築物であり[10]、5棟の建物を展示館として[9]濱田庄司が気に入って収集した日本に留まらない「名も無き作り手たちの」[10]アジア、ヨーロッパ、中南米、太平洋諸国などの世界各国の陶磁器木工漆器金工染織など様々な工芸品を展示し公開している[7][9] [40][10][41]

また濱田庄司が作陶活動をしていた工房である細工場や登り窯も当時のまま置かれており[40][9]、その庭は木々や草花にあふれ、季節により様々な風景を楽しむ事が出来る[40][9]

そして屋外のあちこちにも沖縄の骨壺である「厨子甕」や陶器や石像など様々な蒐集品が展示されている[40][9]

長屋門[42][10]
益子参考館の入り口となる長屋門。
受付(西側)
長屋門の西側に、受付と案内所と売店がある。
1号館(東側)
年に2、3回展示替えを行い、濱田庄司の蒐集品や、濱田庄司と関わり合いがあった人々を題材とした展覧会を催している。
益子・セントアイヴス交流100年記念碑
長屋門入口左側に設置された
濱田庄司バーナード・リーチの交流の始まりから100年を記念して[43]益子町の益子参考館とセント・アイヴスリーチ・ポタリー英語: Leach Potteryにそれぞれ設置された記念碑。
益子の碑には「St Ives 9803km」の文字が、そしてセント・アイヴスの碑には「Mashiko 6091miles」の文字がそれぞれ記されている[44]
2号館
栃木県宇都宮市の特産物「大谷石」で作られた石蔵[11][10]を移築したものを展示室としている。
主に西洋[14]オリエント地方から[14]の蒐集品が展示されている。
3号館
こちらも「大谷石」で作られた石蔵[11][10]を展示室としている。
主に日本や[12]中国、韓国、台湾などのアジアから[13]の蒐集品が展示されている。
4号館[15]:上ん台[42]
「上ん台(うえんだい)」と呼ばれている濱田庄司の別邸[15][20][45]を展示室としている。
益子町の高野家の母屋を1942年(昭和17年)に購入移築、濱田家の離れとして来客用宿舎とした建物[15][20][5][46]。濱田庄司がもっとも気に入っていた母屋であり、移築した際に濱田庄司が民藝の趣向を凝らした意匠を加え、益子の職人に制作させた調度品を置くなどして様々に手を加えたため、民藝感に溢れた独特な雰囲気を体感出来る建物となっており、2002年(平成14年)8月30日に栃木県の有形文化財に指定された[46][47][48]
また2020年度(令和2年度)には笠間市と益子町が連携したストーリー「かさましこ」として、文化庁から「日本遺産」の構成文化財の一つに認定された[46]
現在は濱田庄司による英国などから[14]の蒐集品や日本の家具や木喰仏など[12]様々な蒐集品が展示されている。
また、濱田庄司の蒐集した家具が実際に使用できるスペースがあり、品物を直に体験できる機会を設けて、コーヒーや益子町産のハーブティーなどの[15]飲み物が提供されており休憩も可能[15]。トークショーや茶道の練習会、そしてミニコンサート[49]など、様々な企画が催されている。
細工場[42][50]
益子町の黒子家の作業所を1941年(昭和16年)に購入移築された細工場[11]。益子町の最初期の作業所の形式を残しており、2003年(平成15年)3月20日に益子町の有形文化財に指定された[51]
また2020年度(令和2年度)には笠間市と益子町が連携したストーリー「かさましこ」として、文化庁から「日本遺産」の構成文化財の一つに認定された[52]
濱田庄司が実際に使用していた手回し轆轤が置いてある。
登り窯[42]
濱田庄司が使用していた塩釉窯、赤絵窯、そして八室からなる大登り窯[11]が見学できる。
大登り窯は2003年(平成5年)11月5日に益子町の有形文化財に指定された[53]
東日本大震災の時に崩壊してしまったが修復され「濱田庄司登り窯復活プロジェクト」が2015年平成27年)と2018年平成30年)の2回、開催された[54]
また2020年度(令和2年度)には笠間市と益子町が連携したストーリー「かさましこ」として、文化庁から「日本遺産」の構成文化財の一つに認定された[55]
濱田庄司館
主に大皿や素描などの濱田庄司作の作品が展示されている長屋門[10]
河井寛次郎たち「濱田庄司と交流のあった作家たち」の作品も展示されている[10]

館内風景

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出典

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  1. ^ a b c d e f g 『栃木県公報』「平成26年4月25日 第2575号」P379「教育委員会」「栃木県教育委員会告示第9号」 - 国立国会図書館デジタルコレクション、2023年4月26日、PDFファイルダウンロードにより閲覧。
  2. ^ a b c d 洋泉社 2013, p. 10.
  3. ^ 公開情報”. 濱田庄司記念益子参考館. 2016年5月13日閲覧。
  4. ^ 陶芸家 濱田庄司と益子参考館”. 濱田庄司記念益子参考館. 2016年5月13日閲覧。
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  9. ^ a b c d e f g h i 洋泉社 2013, p. 11.
  10. ^ a b c d e f g h i 暮らしの図鑑 民藝と手仕事,翔泳社 2020, p. 172-175.
  11. ^ a b c d e f g h D&DEPARTMENT PROJECT編集部 2011, p. 20.
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  13. ^ a b c 水尾比呂志,益子参考館2 1978.
  14. ^ a b c d e 水尾比呂志,益子参考館3 1979.
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  19. ^ 坂井基樹,竹見洋一郎,則武優,株式会社美術出版社 2011, p. 151.
  20. ^ a b c d 『ふるさとのすまい 日本民家集』「関東」「栃木県」「浜田庄司氏宅 芳賀郡益子町」P213 - 国立国会図書館デジタルコレクション 2024年4月14日、国会図書館デジタルコレクション デジタル化資料個人送信サービスにて閲覧。
  21. ^ 『日本美術工芸』 (437)「美術時評」「目と手」P23 - 国立国会図書館デジタルコレクション、2023年4月22日、国会図書館デジタルコレクション デジタル化資料個人送信サービスにて閲覧。
  22. ^ 『博物館研究 = Museum studies』「コレクション」「 絵三島 草花文瓶 = Collection/Mishima-type vase with plant -財団法人 益子参考館 = Mashiko Ceramics Meseum-」浜田晋作、P15 - 国立国会図書館デジタルコレクション、2023年4月26日、 国会図書館デジタルコレクション デジタル化資料個人送信サービスにて閲覧。
  23. ^ 『民藝』(480)「今月号の図版」「浜田庄司蒐集品・益子参考館」 P32 - 48 - 国立国会図書館デジタルコレクション、2023年4月24日、国会図書館デジタルコレクション デジタル化資料個人送信サービスにて閲覧。
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  25. ^ 『民藝』(293)「益子参考館を見る」田中豊太郎、P17 - 国立国会図書館デジタルコレクション、2023年4月22日、 国会図書館デジタルコレクション デジタル化資料個人送信サービスにて閲覧。
  26. ^ 『民藝』(293) グラフ 「益子参考館の陳列」、P21 - 36 - 国立国会図書館デジタルコレクション、2023年4月22日、 国会図書館デジタルコレクション デジタル化資料個人送信サービスにて閲覧。
  27. ^ 『民藝』(557)「浜田晋作氏 下野県民賞受賞」 P13 - 国立国会図書館デジタルコレクション、2023年4月26日、国会図書館デジタルコレクション デジタル化資料個人送信サービスにて閲覧。
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  42. ^ a b c d 枻出版社,焼き物の里を訪ねて益子・笠間 2009, p. 40.
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  44. ^ 思いつなぐ記念碑除幕 益子・セントアイヴス交流100年【動画】|下野新聞 SOON
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  52. ^ 益子参考館細工場”. かさましこ 兄弟産地が紡ぐ〝焼き物語〟. 2023年4月18日閲覧。
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参考文献

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  • 『日本のやきもの 伝統の窯元を訪ねて【東日本編】』日本放送出版協会、1987年6月25日、6,100-102頁。ISBN 9784140803165 
  • 水尾比呂志 著、水尾比呂志 編『近代日本の陶匠 濱田庄司 京都で道を見つけ、英国で始まり、沖縄で学び、益子で育った』株式会社 講談社〈講談社カルチャーブックス 66〉、1992年11月20日、118-120頁。ISBN 9784061980549 :文献の表見返しに細工場の写真と、カバー裏面折り返し部分に案内記載有り。
  • 小山和『図説 日本の伝統工芸 東日本編』河出書房新社、1993年6月25日、52頁。ISBN 4309724876 
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  • 萩原健太郎,久野恵一 監修『民藝の教科書① うつわ』株式会社グラフィック社、2012年9月15日、150頁。ISBN 9784766123449 
  • 洋泉社『入門大人のやきもの やきものの「美」を観る・識る・創る!』洋泉社〈洋泉社MOOK〉、2013年5月27日、8-9,11頁。ISBN 9784800301345 
  • 永峰美佳 著、坂井編集企画事務所,酒井基樹,浅野靖菜 編『普段使いの器を探して やきものの里めぐり』株式会社JTBパブリッシング〈楽学ブックス【趣味 1】〉、2014年5月1日、142-144,146-147頁。ISBN 9784533096242 
  • 誠文堂新光社 編『スリップウェア Slipware 英国から日本へ受け継がれた民藝のうつわ その意匠と現代に伝わる制作技法』株式会社誠文堂新光社、2016年1月23日、21,31-32,42,46,49,62,84,99,115,118,127-128,138,142-144,229,237頁。ISBN 9784416615980 
  • 松原亨,カーサ ブルータス特別編集 編『器の教科書 ALL ABOUT UTSUWA〈完全保存版〉基礎からわかる、器のすべて!』マガジンハウス〈マガジンハウスムック MAGAZINE HOUSE MOOK extra issue〉、2016年9月10日、110-115,199頁。ISBN 9784838751259 
  • 『日々のうつわ 民藝のこころに触れる! 毎日使いの「暮らす器」探しの旅』株式会社 双葉社〈双葉社スーパームック TABILISTA BOOKS 07〉、2016年11月17日、71頁。ISBN 9784575456523 
  • 『うつわ作家名鑑 保存版 人気ギャラリーと目利きが選ぶうつわ 400点収録!』株式会社枻出版社〈エイムック 3900 Discover Japan_DESIGN〉、2017年12月10日、174頁。ISBN 9784777948871 
  • 萩原健太郎『にっぽんの美しい民藝 MINGEI Masterpieces of Japanese Folkcraft』株式会社エクスナレッジ、2020年9月4日、26-27頁。ISBN 9784767827858 
  • 暮らしの図鑑編集部 編『暮らしの図鑑 民藝と手仕事 長く使いたい暮らしの道具と郷土玩具61×基礎知識×楽しむ旅』株式会社翔泳社、2020年10月22日、135,172-175,210,頁。ISBN 9784798165455 
:文・写真 はるやまひろたか(コハルアン)

栃木県大百科事典

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国会図書館デジタルコレクション 個人向けデジタル化資料送信サービス」で閲覧可。

関連文献

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関連項目

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外部リンク

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公式サイト

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案内サイト

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特集記事

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訪問記

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