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篠宮神社シリーズ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
深夜ラジオから転送)
篠宮神社シリーズ
ジャンル ホラー小説
小説
著者 夜行列車
出版社 知翎文化/台湾
掲載サイト 怪談夜行列車、小説家になろうカクヨム
刊行期間 2019年2月4日 -
巻数 既刊2巻(2024年6月現在)
話数 第7作連載中(2024年6月現在)
漫画
原作・原案など 夜行列車
作画 武者辰虎
出版社 新潮社
掲載サイト ピッコマ
レーベル BUNCH COMICS
発表期間 2023年6月1日 -
巻数 既刊2巻(2024年6月現在)
テンプレート - ノート
プロジェクト 漫画
ポータル 文学漫画

篠宮神社シリーズ』(しのみやじんじゃシリーズ)は、夜行列車による日本ホラー小説シリーズ。昭和の終わりに九州の片田舎の町を突如襲った怨霊による復讐劇と、それを鎮めた二人の巫女の献身を描く「首くくりの町」に始まる。2024年7月現在、第七作「呪の曙」を連載中。

第一作「首くくりの町」は2019年1月24日にエブリスタ主催の「第6回 未完結でも参加できる執筆応援キャンペーン(テーマ「神様/悪魔/あやかし」)」に応募され、最高の準大賞[1](大賞は該当なし)を獲得した。

自身のサイト[2]小説家になろうカクヨムなどで公開された作品を基にyoutubeの複数のチャンネルで公開された朗読動画が人気を博し、2023年6月1日ピッコマにて武者辰虎によるコミカライズ連載が始まり、「YouTube総再生数550万回越え[3]」と宣伝されている。

台湾でも読者翻訳の本作が台湾のホラー小説投稿サイトへ投稿され、2021年10月12日に第一作「首くくりの町」が、2022年5月5日に第二作「山に入れなくなった話」が、台湾の出版社知翎文化から書籍化された。

あらすじ

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第一作「首くくりの町」[4]

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昭和が終わろうかとする時代、九州の片田舎にある小さな町。主人公は夏祭りの夜に、ある少女とその祖母と出会う。少女は兄の同級生で皐月、祖母は篠宮神社の先代巫女で「神嫁」と呼ばれたシズ婆さん。
それ以後、主人公は兄と共に篠宮神社に出入りするようになる。そして一年が過ぎ、夏祭りが近づいてきたころ、町に不穏な空気が流れ始める。
最初は付近に山犬や猿が頻繁に出没するようになり、次いで害獣駆除で山に入った猟友会の人達が全員首を吊った状態で発見される。その人達の死因が脳内出血と判明すると「祟りでは」との風評が流れ、篠宮神社神主によるお祓いを行われるが、翌日から山の野生動物たちが「まるで山から逃げるように」町に大挙して降りてくる。
徐々に露わになる災いに対して、近隣の九州・四国からも応援を受けた各宗派(神道仏教カトリック)が尽力するが、高熱と首吊り自殺の進行は食い止められず、ついに町中でも「首を吊った死体」が発見されるようになる。
そしてシズ婆さんによる霊視により、災いの元は「129人分の怨念が一つに集まった怨霊」と判明する。さらに篠宮神社の祭神から過去の因縁、かつて江戸時代末期にこの地で起こった悲劇と殺戮の連鎖が語られる。
篠宮神社の御守り(外伝)
「篠宮神社の神嫁」と呼ばれる篠宮皐月が作成した特製の御守り。この祭神の分身(分社)とも言うべき強力な御守りを、皐月の次女水無月の目を通して語る。
事故物件(外伝)
東京でサラリーマン生活を送る皐月の長男宗一郎。霊感ゼロの彼が、姉からの依頼で事故物件に無料で住む日常を描く。

第二作「山に入れなくなった話」[4]

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西日本の山中の寒村で生まれた主人公(前田浩二)は、小学校6年の時に2人の友達と禁じられた山に入り、恐ろしい存在(神)から問いかけられた。
「取って食べよか。親御の元に戻そうか」
そして「帰してください」と懇願し、一人だけ村(親御の元)に戻される。
時は流れ、東京代々木で映像の仕事をしている主人公は、オカルトビデオの編集作業中に、かつてTV用に撮影され「お蔵入り」となった映像を編集する。そして除霊場面で映し出された若いタレントと目が合う。
気になった主人公は映像の情報を調べるが、出演タレントは行方不明、除霊していた霊能者は急死していた。そして怪奇現象に襲われるようになり、入院した病院の看護師から霊能者を紹介される。映像に映っていた霊能者の娘も合流して行われた除霊は失敗、寺の本堂が半壊して死者・重傷者が出る大惨事となる。
追い詰められ絶望した主人公は街を漂いながら、遠くから聞こえる「どこかで聞いた声」に気付き、あの時から避けていた山に入る決意をする。そして山中まで追ってきた怨霊から逃げた先でかつて遭遇した神と再会を果たし、前回と同じ問いかけに「食べてください」とお願いする。

第三作「外国人労働者」[4]

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不法残留の中国人に憑りついている中国人の「父娘の怨霊」。相談を受けた主人公は言葉の壁に苦慮する。スマホの翻訳ソフトは「霊となった中国人」の声を拾えないのだった。知り合いの伝手を辿って中国人の霊能者と接触して助力を得ることに成功するが、「父親の霊」を封じた瞬間「狂った母親の霊」が現れる。

第四作「深夜ラジオ」[4]

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金曜深夜のラジオ番組「怪談ナイト」で、リスナーから投稿された心霊写真をツイッターに掲載したところ、思わぬ反響を呼ぶ。さらに投稿したリスナーの下には、写真館を営んでいた亡き祖父が溜め込んだ心霊写真が箱一杯にあるという。
反響に気をよくしたパーソナリティの近藤ジローは知り合いの鑑定士を呼んで、youtubeの生放送で「鑑定ライブ」を行う。
箱から次々に取り出され鑑定される心霊写真、しかし「ある一枚」を目にして鑑定士の手が止まる。そこには鑑定ライブの「今の場面」が映っていた。そして歪んで映っていた霊能者(勧請院)が突如昏倒する。混乱する現場で止め忘れられられたカメラが映す霊の顔。それは鑑定ライブを視聴していた人達に、様々な霊障を引き起こしていく。
混乱から一夜明け、心霊写真のお焚き上げ供養のため京都に向かう一行。放送局スタッフに加え、入院した霊能者の父(立花氏)が同行する。しかし箱を積んでいた立花氏の車が不可解な状況で崖下に転落、立花氏は死亡する。そして何とか箱を持ち込んだ高頼寺が、一週間後の放送日夜に全焼する。
対応に窮した番組スタッフは、旧知のオカルト雑誌編集者である篠宮水無月に助けを求める。そこに全焼した高頼寺から、生き残った僧(相楽氏)が三枚の心霊写真(「若い女」「老婆と子供」「山に懸かった黒い靄」)と共に到着する。凶悪な怨霊をその身に付けて。
急遽集められた霊能者6人と水無月により、何とか怨霊を写真に封じることに成功するが、そこで相楽氏から告げられた事実が波紋を広げる。それは箱の表に招霊、内部に除霊の札があり、招き寄せた霊を内部に閉じ込めて蟲毒のような状態にする、とのことであった。真相を求めて箱の持ち主を訪れた水無月達は、この箱が天道宗を名乗る宗教団体により作成されたことを突き止める。

第五作「拝啓 タラチヒメ様」(短編)[4]

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篠宮水無月は母の皐月から電話を受ける。篠宮神社に突然来た神の依頼で、以前知り合った前田(第二作「山に入れなくなった話」の主人公)に神(タラチヒメ)と接触するための「依り代」になって欲しいと連絡してくれ、との内容であった。
よく理解出来ていない前田であったが以前の恩があるため了承、水無月と共に篠宮神社に向かう。そして行われた遥拝の儀式。だが、勝手に眷属(前田)を使われたタラチヒメは、前田を故郷の山に連れ去る。

第六作「闇の鳴動」[4]

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鑑定ライブ事件によって判明した霊を使った蟲毒、それを実行している天道宗の存在。霊能者達がその調査に乗り出した直後に発生する集団自殺事件。
集団自殺を主導したと見られた通称ヨミこと丸山理恵は警察により射殺されるが、その遺体が運び込まれた病院で怪奇現象が発生する。前田の彼女が看護師として勤務していることから、笠根や水無月たち霊能者が集められる。
霊安室で除霊を開始した霊能者たちは、現れた怨霊に既視感を感じる。それは鑑定ライブ事件で除霊した「蟲毒によって合成された怨霊」と同質の感触だった。そして遺体に残された供身の入れ墨から、ヨミは天道宗によって作られた存在と推測する。そして天道宗の情報を求めて、ある中国人道士との接触を図る。

第七作「呪の曙(しゅのあけぼの)」[4]

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ヨミ騒動が天道宗によるテロ事件であると、自身が編集者として携わる月刊誌「OH! カルト」で告発した水無月。公表したことで、天道宗や招霊箱に関する情報が次々と集まってくる。その中には、国家(皇居)を標的とした「呪いの五芒星」や、平将門を神として祀る「北斗七星」を打ち消す「逆北斗七星」の存在があった。
そして怪談ナイトにゲスト出演した水無月は、ついに天道宗から連絡を受ける。意を決して天道宗と対面する水無月。しかし話し合いは平行線を辿り、時を同じくして二回目の集団自殺事件が発生、両者は相容れないままに分かれる。
天道宗の拠点(NPO法人ミルキーウェイ)や本拠地(道厳寺)を突き止め反撃を模索する水無月たちであったが、先手を取ったのは天道宗であった。史上最恐の怨霊平将門を神として祀り、その怨霊化を封じる北斗七星を構成する神社が一斉に炎上したのである。それに対して水無月たちはデモ隊を組織して公の場で天道宗を糾弾する一方、勧請院の協力で密かに天道宗施設を襲撃して招霊箱を奪取する。
さらに敵の本丸(道厳寺)への攻撃を検討していた水無月たちに、天道宗は招霊箱を使った大霊障で反撃を開始する。

登場人物

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主人公(第三作まで)

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小林ケイタ/篠宮慶宗
第一作の主人公。小学四年生の夏に皐月とシズ婆さんと知り合い、地元の篠宮神社に出入りするようになる。兄と妹がいるが、幼い時に両親が離婚して父親と妹の記憶はほとんどない。
怨霊の鎮めを受け継いだ皐月を最後まで見守り、後に皐月と結婚(婿養子)、篠宮神社の神主となり2男3女を儲ける。
妻の皐月が作った御守り(非売品)には及ばないが、自身も「効果のほどは折り紙つき」とされる御守りを作成している。
前田浩二
第二作の主人公。代々木の映像制作会社に勤務するエンジニア。西日本のとある山に住む神「タラチヒメ」の眷属。
小学生のころに故郷の禁じられた山で神と出会い、一人生還する。この件で一家は東京に移り、以後は心霊関連には関わらず、山に入ることも避けて生活していた。しかし仕事で扱った「お蔵入り映像」により怪奇現象に巻き込まれ、この件で笠根や伊賀野和美、篠宮水無月などと出会い、斎藤由香里とは交際に発展した。
入院した病院で笠根が「恐ろしい狐」を目撃していることから、最初の遭遇からずっとタラチヒメは気にかけていたと思われ、その後も「連れ去られたり」「視線で脅かされたり」とお気に入りであることがわかる。
このタラチヒメの前田に対する行動について水無月は、「自身が助けた(親御の元に戻した)存在を害そうとする行いに対して、自身に対する不敬と感じているのでは?」と推測している。
笠根
第三作の主人公。西東京の方明寺の僧。宗派の記載はないが真言宗系と思われる。
初出は第二作で、知り合いの斎藤由香里からの連絡で前田を方明寺に保護する。除霊失敗後も前田を気にかけ、高尾山まで連れていく。ちなみに除霊失敗で方明寺の本堂が半壊した上に同僚の僧に死者も出ているため、元々非協力的だった住職は明確に除霊反対派となり、以後は除霊に寺を使うことが難しくなっている。
第三作では言葉の通じない外国人(中国人)の除霊に悩み、伊賀野和美に「中国語が話せる霊能者」を探してもらい、紹介された老師が「狂った母親の霊」を封印した後、自身で父娘の霊を成仏させた。
その後も鑑定ライブ事件やヨミの除霊などに参加し、天道宗対策チームの主要メンバーとして登場する。

篠宮家

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篠宮皐月
第一作「首くくりの町」のヒロイン。篠宮神社の分家の生まれで、母の早紀江がシズ婆さんの娘。シズ婆さんから次期巫女として教育を受け、町を襲った怨霊の鎮めをシズ婆さんから受け継ぐ。鎮めが終わり生還した後に主人公と結婚。
シズ婆さん同様に「神嫁」と呼ばれ、次女水無月曰く「神様と仲が良すぎて普通に日常会話」するレベルとのこと。当人の霊能力も高いが一番の特徴は祭神の厚い加護であり、篠宮神社に居る場合に限るがほぼ祭神と同等の力を振るえる。また、夫の篠宮慶宗に頼まれて手作りした御守りは、5個を子供が持ち、残り5個が神社で保管されている(稀に貸し出されることがある)。
第二作「山に入れなくなった話」では前田が遭遇した「恐ろしい神」を霊視して、その正体を語った。第四作「深夜ラジオ」では電話だけで水無月の周囲の霊を感じ取って助言を行い、さらに旧知の嘉納康明を助っ人に動かしている。
本筋とは別件で難件を抱えており、神社を離れることは難しい状況。
シズ婆さん/篠宮シズ
(登場時)篠宮神社先代神主の奥さんで「神嫁」と呼ばれていた。
主人公と出会ったときには既に引退しており、足も弱っていた。そのため盆踊りを主人公に教えるように孫の皐月に頼んでいる。
町を襲った怨霊の鎮めるために尽力したが、その途中に寿命を迎えた。
篠宮静香
皐月の長女。東京で不動産関連の会社に勤務している。名前は「偉大な曾祖母(シズ婆さん)」から採られた。
幼い時から「次の神嫁」として常に祭神の傍に置かれるが、中学生ごろから笑顔が無くなってしまう。高校卒業後に東京に行き、そのまま就職して今に至る。霊能者としての素質は姉妹で一番高いと思われる。
第七作で登場。妹の水無月が天道宗と対決している状況を心配しているが、自身が参戦する気はない。だた、自分に火の粉が降りかかってきたら「自分で何とかする」と自信を覗かせている。また皐月を騒動に巻き込んだ場合に「万が一でもお母さんが死ぬようなことがあれば、下手したらウチの家系断絶するから」と、水無月に警告している。
篠宮宗一郎
皐月の長男。第一作外伝に登場、東京でサラリーマンをしている。
姉から紹介される事故物件に無料で住んでいるが、欠点は半年程度で次に引越すこと。霊感はゼロで、部屋で起こる霊障には慣れていて大抵は気にも留めない。
篠宮水無月
皐月の次女。東京でオカルト月刊誌「OH! カルト」の編集者としている。
第一作外伝に初登場、第二作の終盤で解説役として登場、怨霊だと思っていたものが「鬼」であることを見抜き、恐ろしい存在(タラチヒメ)の調査を行った。
第四作の鑑定ライブ時は取材のため外国に出張中で、帰国後に旧知の近藤ジローに請われて民明放送に向かう。これ以降(第五作を除き)ほぼ主人公的な立ち位置となる。
編集を担当しているオカルト月刊誌上でヨミ騒動の黒幕として天道宗を実名で糾弾、抗議デモを企画して毎回参加するなど、対天道宗運動の中心人物。
性格は陽気で楽観的、職業柄コミュニケーション能力も非常に高い。同世代で人見知り気味の連雀からは「篠宮さんが主人公すぎて辛い」と言われたことも。ただし、読者から相談を受けた招霊箱の回収では、若い女性という事で所有者(依頼者の親や祖父など年配者)の信用を得られずに交渉が難航する事もある。
多くの優れた霊能者と一緒に除霊を行う中で、霊能者としての自身の立ち位置を考える場面もある。
篠宮暁
水無月の双子の弟。兄宗一郎と同じく霊感ゼロ。母の「特製の御守り」を持っているが、たまに霊を憑けて帰り、水無月が祓っていた(練習用と思われる)。

霊能者

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嘉納康明
日本有数の霊力を自称する高名な霊能者。主に陰陽道系統の技を使う。
実際に霊能者としては篠宮皐月に「すごい力を持つ」と言われるほどだが、難件の対処のため借りた篠宮神社「特製の御守り」を解決後も返却せずに一年間使い続けた(豪邸が立つほど大儲けした)結果、神罰が下った前科があり、水無月からは銭ゲバ霊能者・拝金主義者と嫌われ「いつかトチって死ぬんじゃないか」とまで言われている。
第二作で主人公に依頼料2千万を要求したり、第六作で水無月からの取材依頼に30万要求するなど金に執着する面は健在だが、前述(神罰)の一件で皐月の依頼には無条件かつ無償で動く。修行中の伊賀野和美と面識があるが、宿敵が「鬼」の可能性があることを教えなかった。また、笠根とも会ったことがあるが覚えていなかった。
宗教界や経済界にコネクションが多く、天道宗対策でも意外と役に立っている。
伊賀野トク子
TVなどに出演していた有名な霊能者。伊賀野庵の創設者。
第二作で前田が編集した「お蔵入り映像」に出演しており、霊に憑かれたタレント(木崎美佳)の除霊を行っていた。この除霊の直後に急死する。
伊賀野和美
伊賀野トク子の娘で霊能者。伊賀野庵を引き継ぎ不動明王勧請し、その真言を得意とする。
母を殺した悪霊を駆除するため、霊能者として修行を続けていた。笠根からの連絡を受けて、伊賀野庵の僧たちと共に前田に取り憑いていた悪霊の除霊を試みるが失敗、重体となるが一命は取り留めた。
その後、鑑定ライブ事件やヨミの除霊などに参加。丸山理恵の霊を保護して、対天道宗では水無月と共に主役級の活動を行う。天道宗に対する抗議デモでは参加者の除霊を担当して、ネットで美人霊能者として有名になりつつある。
郭・鼬瓏(コウ・ユウロン)
周囲から「老師」と呼ばれている老齢の中国人。中国では有名な道士で、中国政府との軋轢から日本に拠点を移そうとしている。
第三作から登場。笠根の依頼で「狂った母親の霊」を封印し、去り際に「テンドウを知っているか?」と尋ねている。第六作で、日本で始める気功道場のPR動画を前田の会社に依頼。この時、前田に「狐の妖怪が憑いてる」と告げたことで「タラチヒメ」の不評を買い、次に会った時には神の怒りを解くため「謝罪」や「ご機嫌取り」をして前田を狼狽させている。
日本では宗教界の伝手を辿って「テンドウ」の情報を集めており、天道宗の情報を求めて接触した水無月たちに「テンドウ」を知った経緯や集めた情報を話したものの、探している目的には「研究のため」と曖昧な回答を返している。
皓・宇玄(ハオ・ユーシュエン)
老師の弟子で、日本語通訳を務める中国人。
第三作から登場。老師の指示で笠根・伊賀野和美と合流したが、「男の霊」を捕らえた後に乱入してきた「女の霊」により気絶させられる。
勧請院互秋
鑑定ライブに呼ばれた霊能者。
代々続く霊能者の家系に生まれ、父の能力が弱いため家業としては廃業したが、祖母の手解きを受けて霊能者として活動している。鑑定ライブ中に意識不明となり、代役として箱を運んでいた父親が途中で事故死している。
鑑定ライブ時に「女の怨霊」に取り憑かれ、それから一種の共存関係にある。蟲毒に苦しんだ怨霊は、それが天道宗による物と知り、女の怨霊独自に天道宗施設を襲撃していたが、後に水無月達と連携して活動するようになる。
通常時は勧請院が主導権を握っているが、女の怨霊の感情が高ぶると主導権を明け渡してしまう(その際には顔も変わる)。また徐々に同化が進んでいる様子も伺える。
連雀
鑑定ライブ事件の除霊に水無月が呼んだ霊能者。心霊風水師としてメディアに取り上げられ始めている若い女性。風水関連の書籍が人気の作家でもある。
当人曰く「私は何でも使う、神でも仏でもなんでも」とのことで、陰陽道や神道・仏教などの手法も使うことが出来る。そのため「特定の信仰を持つ人」に嫌われないか気にしたり、自室に「絶対見せられない物がある」と水無月のお泊りを断る場面がある。
表面上はクールを装っているが、実は寂しがりで悪戯好きな面がある。
神宮寺
鑑定ライブ事件の除霊に水無月が呼んだ霊能者。浅草の薬屋「泰雲堂」の店主。
店には心霊関係の相談も多く、霊に効くお香などもある。霊能者を紹介することもあるが、自身でも除霊が出来るオカルト界隈の重鎮。術式に関しては水無月にも判別が出来ない様で、独自色が強い手法と思われる。
飄々とした佇まいで、水無月が信頼して避難場所の一つに選んでいる。店には(押しかけ)弟子の宗方一樹がいる。
平野
友人の伊賀野和美に誘われて鑑定ライブ事件の除霊に参加した霊能者。降霊(霊媒)も行える。
見た目「普通のおばちゃん」。霊能者を職業としている訳ではなく、口コミで依頼を受けて除霊などを行っている。そのため家庭の事情が優先で、除霊や作戦会議などで都合がつかない場面もある。
相楽
京都にある高頼寺の僧。
高頼寺は昔から心霊写真など霊障を引き起こす物品のお焚き上げ供養で有名で、民明放送から心霊写真の対処を依頼された。その最中に高頼寺は全焼するが、唯一人無傷で脱出して3枚の心霊写真と共に東京に向かう。
事件後は京都に戻り、高頼寺の再建に努めている。
その他
水無月が鑑定ライブ事件の除霊で連絡を取った知り合いの霊能者の中には、予定が合わずに来なかった人もいる。作中では「川崎大師の菅原さん、修験道の小野寺さん、霊感カウンセラーの木崎さん」の名が出ており、今後に登場する可能性が残されている。

神、関係者

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篠宮神社の祭神
名は不詳。皐月曰く「フランクな性格」「感情表現が豊か」。好奇心も旺盛で、水無月が分身とも云うべき特製の御守りを持って他の神社にお参りするのを喜んでいる様子。突然現れた「少女の姿の神」とも直に打ち解けて、滞在中はテンションが上がっていた。
第一作「首くくりの町」では、町の住人の信仰心が薄まるにつれて祭神の人々に対する興味が薄れたことが、二百年前の怨霊を顕在化させた要因としている。(信仰が薄まる=神が弱くなる、といった事ではなく、地域の人々への興味が薄くなることで、怨霊を抑止する事にも興味を無くしつつある、といった図式)
水無月は一度だけ、「おかっぱ頭の少年」の姿を幻視したことがある。
タラチヒメ/天垂血比売(アメノタラチヒメ)
前田の故郷にある山に棲む神。姿は赤い着物を着た女性で、狐目が特徴。山で出会った子供に「取って食べよか。親御の元に戻そうか」と、詠う様に問いかける。
かつては五穀豊穣をもたらす神として神社に祀られていたが、その御社が山崩れで消失した後は新たな御社に宿ることはなく、それ以後は山全体が「荒ぶる神の神域」として立ち入りが禁止された。
御使いとしてを使い、病院や高尾山に入ろうとした笠根、前田の故郷の山に入ろうとした水無月が、それぞれ目撃して入るのを諦めている(前田には見えない)。水無月の場合は御守りから"やめとけ~"と感じたので「神域への進入」を拒否されたと思われるが、笠根の場合は状況から阻止する意図はなく、単に「強力な存在にビビった」だけと思われる。
篠宮皐月が前田に語ったところによると、「とある稲荷神社の比売神で、五穀豊穣や山の実りをもたらし」「子供を神隠しにしてしまう」とされ、この子供については「神様のあり方として子供をお供えする必要がある」と解説した。新しい御社に宿らなかったのも、元々は「子供をお供え(生贄)にしていた」が、そういう時代ではなくなったことを察して、人間との関係を再構築したためではないか、と推測している。
少女の姿の神
第五作で篠宮神社を訪れた神。髪は肩までのセミロングで無表情、洋服に赤い靴が特徴。
タラチヒメの山に入り帰ってこない眷属(鼬)を取り戻すため、以前タラチヒメと接触した(縁を繋いだ)ことがある篠宮神社の神嫁(皐月)にタラチヒメとの接触を依頼した。篠宮神社滞在中は祭神と仲良く過ごし、眷属が戻って来た時には「嬉しそうな表情」が垣間見えた。
その恩返しとして第六作で使者(松野)を使わして前田に助言を下そうとしたが、その時の前田の醜態を憐れんで自ら弁財天の境内に姿を現わして、「あの坊主(老師)には気をつけろ」と助言を与える。
ちなみに「タラチヒメ」とは仲が悪いらしく、常に呼び捨ての上に「キチガイ」とまで言っている。
松野
少女の姿の神に仕える神職。篠宮神社にも神に随行して訪れている。
神の助言を前田に伝えようと横浜を訪れたが、先に神が自ら助言を与えてしまったので挨拶と共に「ご連絡いただければ神様にお伝えする」と名刺を渡す。名刺には「松野製薬ホールディングス相談役」との肩書があり、この神が薬祖神に繋がる比売神でことを暗示している(可能性がある)。

怪談ナイト関係者

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近藤ジロー
怪談蒐集家を名乗るタレント。民明放送で金曜日深夜に放送している怪談ナイトのラジオパーソナリティ。タレント歴は長く、怪奇現象やオカルト界隈では有名人。
生配信での心霊写真鑑定を実行した結果(霊障によるリスナーの被害)については重く受け止めており、天道宗への抗議デモを主導するなど常に当事者として行動することを心がけている。失踪した勧請院からの接触を受け、その窓口ともなっている。
小林明美
民明放送アナウンサー。怪談ナイトを担当。
除霊場面に立ち会うなど当事者の一人として気丈に振舞っていたが、天道宗への抗議デモが開始されると、天道宗からの報復対象になることを恐れた局の判断で降板した。
阿部
民明放送のディレクター。怪談ナイト担当。
除霊以後も、制作側の代表として近藤と共に行動している。対天道宗の抗議活動を映像に残して、将来的にドキュメンタリー化を目論んでいる。
神楽坂右京
鑑定ライブに呼ばれた鑑定士。本業は古物商で、アンティーク商品を扱う過程で心霊関連の鑑定も行うようになる。
近藤ジローとは関西のラジオ番組で共演して友人となる。鑑定ライブ後は(事前の予定通り)商品仕入れのためフランスに出国したと思われ、作中には登場していない。
林田真由美(リスナーネーム:麦かぼちゃ)
怪談ナイトのリスナーで、亡くなった祖父(林田源三)が残した箱に入っていた心霊写真を番組に投稿した。
祖母と両親、姉が居る都内の女子高校生。問題の箱を何度か開け、学校の友人達と心霊写真を見た事もあったが、特に霊障は発生していない。心霊写真については姉に相談していたが、事件が大きくなるまで両親には話せなかった。

天道宗

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丸山理恵
第六作に登場。30歳過ぎの現在まで男性経験も正規の仕事もしたことがなく、自分で自分に「負け組」の烙印を押し、自殺を考えるようになって数年経った女性。
ネット上で自殺志願者の一人としてタツヤの勧誘を受け、男女の関係となったが最後は悪霊を憑けられ、集団自殺事件の首謀者ヨミとして警官に射殺される。遺体となって収容された病院で憑いていた悪霊が追い払われ、丸山理恵の霊は伊賀野和美に保護される。
タツヤ / 新藤辰也
天道宗のネット担当。小木勘助のサポートもしており、「先生」と呼んでいる。
SNSなどを駆使して自殺志願者を集め、薬と暗示により集団自殺事件を起こした張本人。最初の一連の集団自殺の現場に女装した姿を残し、後にヨミと呼ばれる存在を作り出した。
小木信一
天道宗の本部長。小木勘助の息子。水無月のインタビューでは招霊箱の作成は認めたものの、目的については開祖からの教えに基づく行為とし、それ以外(呪いの五芒星や集団自殺への関与など)は全て否定、「我々の教えの本質の部分も、他の宗教宗派と同じく人々の救済」と説明する。
小木勘助
天道宗の前本部長。鑑定ライブ事件の元になった招霊箱を林田源三氏(麦かぼちゃの祖父)に渡した人物。
水無月に対して「我々は日本国を呪詛しております。そしてヨミなる魔女があなた達を死に誘いざなう。誰もが見えるやり方で、誰も逃れられぬよう無差別に」と答えている。

その他

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斎藤由香里
第二作で前田が入院した新宿の病院の看護師。東新宿在住。やや霊感があり、前田の状況を察して旧知の笠根を紹介した。
前田の除霊に失敗して重傷を負った伊賀野和美もこの病院に入院して知り合いとなり、その後に取材に訪れた篠宮水無月とも面識がある。
後に前田と付き合い始め、運び込まれたヨミの遺体による怪奇現象を前田を通して笠根に相談する。
木崎美佳
ほぼ無名の若い女性タレント。第二作の前田が編集した「お蔵入り映像」に出演、映像では伊賀野トク子の除霊を受けている。伊賀野トク子の掲示板では、トク子の訃報のレスに行方不明と書き込みが残されている。
前田の周囲に度々現れるが、伊賀野和美によると一回目の除霊の数日後に再度除霊が行われ、その際に母トク子が急死、木崎美佳も死後数日経った状態で死亡していたとの事。
雪村洋悟
20代半ばのやや軽薄な印象の青年。先輩の会社で雇われている不法滞在者の中国人が「霊に憑かれている」ことで、知り合いだった笠根に相談を持ってきた。
霊感はなく霊も見えないが、老師が霊を封印する際に「口から泡を吹いて」気絶している。

用語

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作中での定義は、最初から鬼として生まれた妖怪物の怪(もののけ)や怪異の一種。
霊との一番の差は「あやふやながらも、ちゃんと生きて」いること。そのため成仏させることは出来ず、対処方法は消滅させるのも難しいため、追い払うことが基本となる。
第二作で主人公に憑いた鬼について水無月は、ベテランの伊賀野トク子に霊と誤認させた点から「過去に何人もの霊能者や陰陽師と戦ってきた」「結構ヤバめな奴」と予想している。
また「予備知識なしで見分けるのは難しい」とした上で、経験豊富な霊能者(嘉納康明など)なら鬼の可能性に気付いていたはずなのに、誰も伊賀野和美に教えなかった、と憤慨している。
ヨミ(黄泉
黒のワンピースに長い黒髪で顔を隠した女性。
新宿・池袋・渋谷を始めとした繁華街で突如発生した集団飛び降り事件の各現場から、ただ一人立ち去ったことから事件の主犯格とされた。
ネット上ではその容姿から「黒サダコ」と呼ばれていたが権利者から営業妨害の警告が出され、魔女-黄泉送りの魔女-黄泉の巫女-ヨミと変遷して定着する。マスコミでも「ネット上ではヨミと呼ばれている」としながら使われ、広く一般に呼び名として定着した。
その後、西新宿の高層ビル街に姿を現して、周囲で自殺が散発する大混乱を巻き起こしながら徘徊、最後は駆けつけた警官に射殺される。
その後、ネットで天道宗を激しく非難していた男性の自殺現場に現れ、さらに二回目以降の集団飛び降り事件でも各現場に現れている。
天道宗
開祖は天道実光兼房。明治後期の天道流神秘霊術研究會が前身の新興宗教。大正期の文献に「淫祠邪教(インシジャキョウ)ノ徒ナリ』という記載が見つかっている。
嘉納康明の調べで、熊野の宿坊大正4年昭和11年の宿泊記録が残されている事が判明。また鑑定ライブ事件の原因となった心霊写真を集めた林田源三氏への昭和45年の手紙には、「熊野における回峰行(真言を唱えながら峰々を巡る)」や「熊野大権現」との記載があり、そこから修験道熊野信仰)の系譜を引く宗派と推測され、呪術については陰陽道の系統を使う。
老師の情報によると、関東大震災時に中国から救援活動で来た世界紅卍字会の道士(老師の先生の先生)が「テンドウ」なる人物と出会っている。その道士は「テンドウ」を「邪教」と断じている。また老師自身が調べた結果、いくつかの文献に登場する「テンドウ」という人物の記載は時代によりバラバラであることから、天道宗の指導者の世襲名、または招霊箱を使って現在まで継続して存在している可能性もある。
「北斗七星」を模したレイライン
作中では以下の7神社が挙げられている。
  • 浅草と秋葉原の中間地点にある鳥声神社(鳥越神社
将門の「手」が埋葬されたとする伝承がある。
  • 日本橋兜町の歌舞渡神社(兜神社
将門を祀る鎧稲荷と合祀した神社。将門のが埋葬されたとする伝承がある。
  • 千代田区大手町の正門塚(将門塚
将門の首を祀る塚。
三之宮に将門を祀っている。
築土神社の創建時は将門が主祭神で、戦災により焼失するまで首桶なども残されていた。現在地に移動する前の場所に筑土八幡神社が残る。
将門を討った藤原秀郷が創建。病に罹った秀郷が、ここで将門を弔ったとの伝承がある。
将門の鎧を埋めたとする伝承がある。

出典

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  1. ^ 選考結果”. 2024年6月18日閲覧。
  2. ^ 怪談夜行列車” (2023年6月2日). 2024年6月18日閲覧。
  3. ^ YouTube総再生数550万回越えの怪談シリーズ『首くくりの町~篠宮神社シリーズ~』コミカライズ連載開始![新潮社]” (2023年6月2日). 2024年6月18日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g web作者サイトの作名