気質物
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気質物(かたぎもの)は、江戸時代の浮世草子の一種である[1]。特定の職業や身分を設定し、そこに続する人々の特徴的な性格を描いた風俗小説である[2]。
歴史
[編集]江島其磧の『寛闊役者片気』が気質と題名を付けた初作だが、内容としては坂田藤十郎の死をあてこんだ好色物である[2]。実質的な気質物の第1作は其磧の『世間子息気質』である[2]。井原西鶴『本朝二十不孝』の影響が大きいが、『本朝二十不孝』よりも人間の性格と気質を題材にした点で画期的な作品だった[2]。『世間娘気質』『浮世親仁形気』も人気を博し、様々な模倣作も刊行された[2]。
享保以後の浮世草子は時代物が主流となり、気質物は一時期廃れるが、多田南嶺が再び気質物を手がけると再び刊行作品が増え始め、明和・安永期は気質物の刊行数が時代物の刊行数を圧倒する[2]。その後は、不自然な内容や技巧主義、単なる町人集成にとどまり、衰退した[2]。
気質物の浮世草子一覧
[編集]- 『寛濶役者片気』(1711年頃)[1]
- 『世間子息気質』(1715年)[1]
- 『世間娘容気』(1717年)[1]
- 『浮世親仁形気』(1720年)[1]
- 『世間手代気質』(1730年)[1]
- 『諸商人世帯気質』(1736年)[3]
- 『賢女心化粧』(1745年)[3]
そのほか『和漢遊女容気』もあったものの、これは一代男の後日譚であった[4]。
- 不明
- 永井堂亀友(兵作堂)
- 『風俗俳人気質』(1763年)[6]
- 『当世銀持気質』(1770年)[6]
- 『風流茶人気質』(1770年)[6]
- 『世間姑気質』(1772年)[6]
- 『赤烏帽子都気質』(1772年)[6]
- 『小児養育気質』(1773年)[6]
- 『世間旦那気質』(1773年)[6]
- 『笑談医者気質』(1774年)[7]
- 『世間仲人気質』(1774年)[7]
- 増谷大梁
- 大雅舎其鳳
明治・大正
[編集]この節の加筆が望まれています。 |
明治時代よりは小説神髄の影響を受けた当世書生気質の登場[9]によって「当世〇〇気質」という書が複数登場した。
- 『当世書生気質(坪内逍遥)[1]
- 『当世商人気質』(饗庭篁村)[2]
- 『当世権妻気質』(苔の屋一心)[3]
- 『当世会社気質』(奥村柾兮)[4]
- 『当世職人気質』(暁花園霞柳)[5]
- 『当世ハイカラ気質』(花の本詩庵)[6]
- 『当世女生気質 松の巻』(稲岡奴之助)[7]
- 『当世奥様気質』(福田琴月)[8]
- 『当世細君気質』(原題: That Wife of Mine、佐々木邦訳)[9]
- 『当世良人気質』(原題: That Husband of Mine、佐々木邦訳)[10]
- 『当世気質新奥様』(黒田湖山)[11]
- 『当世大学生気質』(東京帝国大学新聞社 編)[12]
出典
[編集]- ^ a b c d e f g h i j 気質物 コトバンク
- ^ a b c d e f g 日本古典文学大辞典編集委員会『日本古典文学大辞典第1巻』岩波書店、1983年10月、644-645頁。
- ^ a b c d e 藤岡作太郎 1917, p. 275.
- ^ 藤岡作太郎 1917, p. 274.
- ^ 藤岡作太郎 1917, p. 292.
- ^ a b c d e f g 藤岡作太郎 1917, p. 301.
- ^ a b c d 藤岡作太郎 1917, p. 302.
- ^ a b 藤岡作太郎 1917, p. 304.
- ^ 当世書生気質 コトバンク
参考文献
[編集]- 藤岡作太郎『近代小説史 (東圃遺稿 ; 巻第4)』大倉書店、1917年 。
外部リンク
[編集]- 其磧自笑傑作集: 上卷 Google Books
- 其磧自笑傑作集: 下卷 Google Books
- 校訂 気質全集 全 Google Books
- 校訂 珍本全集 上卷 Google Books