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比良おろし

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
比良颪から転送)

比良おろし比良颪、ひらおろし)は、滋賀県比良山地東麓に吹く局地風。特に毎年3月26日に行われる天台宗の行事「比良八講」の前後に吹くものを比良八講・荒れじまいまたは比良八荒(ひらはっこう)と呼び、本格的な春の訪れを告げる風とされている。

特徴

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北西風向アイコン
近畿地方の地形図
比良おろしが生じる地域と代表的風向の目安。近畿地方の地形図に示す。

若狭湾及び丹波高地から琵琶湖に向かって、比良山地南東側の急斜面を駆け降りるように吹く北西の風である。

気圧配置とは明瞭な関係があり、等圧線が北東から南西に走る気圧配置のときに発生することが多い[1]

強い比良おろしが吹くときには、比良山地の尾根の上に風枕というが見られる。

影響

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比良山麓を走るJR西日本湖西線は、全線高架となっているうえ、真横から風を受けるため、比良おろしの影響を非常に強く受ける。1979年10月には台風16号の接近で暴風警報が発令されていた中、北小松駅 - 近江舞子駅間を走行中の貨物列車が突風で脱線し貨車2両が高架下に落下[2]、また1997年6月29日 0時00分ごろ、比良駅構内にて強風で運転抑止中のコンテナ貨物列車(電気機関車牽引・コンテナ貨車含め21両編成)のうち空コンテナを積んだコンテナ車計3両が横転する事故が起こった[注釈 1]鉄道総合研究所による調査の結果、このときの最大瞬間風速はコンテナ貨車の転覆限界風速である57メートル毎秒以上と推定されている[2][4][注釈 2]

この横転事故以後、強風による規制値が引き下げられたこともあり、JR湖西線は比良おろしのためしばしば運休となる。2006年度には運休は28回、延べ50時間にのぼった。

そのため、JR西日本は2007年10月に比良 - 近江舞子駅間の沿線山側に防風柵を設置し、運転規制を行う基準となる風速を従来の秒速25メートルから30メートルまで引き上げることを発表した。

防風柵は2008年12月1日から運用が開始され、これによって年間の運転見合わせ時間が、防風柵設置前の半分以下になる見込みである[6]

比良おろしはしばしば突風を伴うことから水難事故の原因にもたびたびなっており、事故例として以下の例が挙げられる。

脚注

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注釈

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  1. ^ 脱線したのは後ろから3両目から5両目の計3両で、積載状況は後ろから3両目は空コンテナ5個積み、4両目は空コンテナ1個および積コンテナ4個、5両目は空コンテナ5個積みだった[3]
  2. ^ 当時の現場の風速計は28日23時45分ごろに 43 m/s、翌29日0時ごろに 39 m/s を記録していた[3]。最大瞬間風速は風杯型風速計の指す3秒間平均風速の1.5倍から2倍、時には3倍にも達する[5]

出典

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  1. ^ 松井一幸・武田栄夫「ビワコダスから見た近江盆地の局地風 - その1 比良オロシ」『琵琶湖の風と文化 ビワコダス研究短報』別冊、琵琶湖地域環境教育研究会
  2. ^ a b “「比良おろし」を防げ JR湖西線の防風柵、運転規制3分の1に”. 産経新聞社. (2020年7月6日). https://www.sankei.com/article/20200706-NQ7Y2N2YYBN5HLTHHCJV7VNVCQ/ 2024年4月9日閲覧。 
  3. ^ a b "2.11 過去における強風が原因の鉄道事故の事例等". 東日本旅客鉄道株式会社 羽越線砂越駅〜北余目駅間 列車脱線事故 (PDF) (Report). 航空・鉄道事故調査委員会. p. 61. 2024年4月9日閲覧
  4. ^ 鈴木康弘. “台風の強風のため湖西線で貨物列車が脱線”. 日本の鉄道貨物輸送. 2024年4月9日閲覧。
  5. ^ 気象と気象用語”. 松山地方気象台 (2020年10月). 2024年4月9日閲覧。
  6. ^ "湖西線 比良〜近江舞子駅間における防風柵の完成について" (Press release). 2008年11月19日. 2009年1月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年4月9日閲覧
  7. ^ 松井一幸 (2003年10月5日). “2003年9月15日(月)に起きた蓬莱沖ヨット転覆事故と風”. 2003年10月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年4月9日閲覧。

外部リンク

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