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ウワミズザクラ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
杏仁子から転送)
ウワミズザクラ
分類
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
: バラ目 Rosales
: バラ科 Rosaceae
: ウワミズザクラ属 Padus
: ウワミズザクラ P. grayana
学名
Padus grayana (Maxim.) C.K.Schneid. (1906)[1]
シノニム
和名
ウワミズザクラ(上溝桜)、
ハハカ(波波迦)、
コンゴウザクラ(金剛桜)、ナタヅカ
英名
Japanese Bird Cherry

ウワミズザクラ(上溝桜[4]・上不見桜[5]学名: Padus grayana)は、バラ科ウワミズザクラ属の落葉高木。別名ハハカ[4]、コンゴウザクラ[4][6]、アンニンゴ[5]、ウワミゾ[5]サクラの仲間であるが、サクラらしからぬ白い小さな花が房状にたくさんつくのが特徴[5]。よく似たイヌザクラとは、花序枝に葉がつく事などで区別できる。

名称

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和名「ウワミズザクラ」は、古代亀卜(亀甲占い)で上面に溝を彫った板(波波迦)に使われた事に由来する[4][注 1]。また、葉がサクラに似ていることから「上溝桜」となり転訛したとされる[6]中国名は「灰葉稠李」[1]

分布・生育地

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日本中国湖北省四川省広西省)に分布し[7]、日本では北海道西南部と本州四国九州の低地や山地に分布する[8][4][9]。暖地の山野に自生し[7][6]、日当たりのよい谷間、沢の斜面、小川沿い、雑木林など湿潤した環境を好む[5]

形態・生態

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落葉広葉樹高木で、樹高は約20メートル (m) [4]樹皮は暗紫褐色でイヌザクラに比べて黒っぽい色をしており、横向きに長い皮目がある[4][9]。老木になると茶褐色を帯び、縦方向にもひび割れて網目状に裂ける[9]。小枝は紫褐色で皮目が多く[9]、側枝の多くは秋の落葉後に落る[9]。樹皮を傷つけると、桜餅のようなクマリンの強い香りがある[5]

互生し、長さ5 - 12センチメートル (cm) 、幅3 - 5 cm、卵形から卵状長楕円形で先が急に細くなり、縁にはとげ状の鋸歯がある[7][4]葉柄は長さ1 cmほどで短く、サクラ類の葉柄にある蜜腺は目立たない[8]。秋に黄葉し、黄色から明るい橙色に色づく[8][10]

花期は4 - 6月[4]。葉が芽吹いて展開したあとに[7]、本年枝の先から長さ6 - 10 cmほどの白い総状花序がでて、多数の雄蘂が目立ちブラシのように見える[4]は5弁花で花序に多数つく[4]

果期は9月[4]。花が終わるとできる緑色の果実は、直径約6 - 7ミリメートル (mm) の卵円形の核果で、初夏から初秋にかけて熟すにしたがって、黄色・橙色・赤色・黒色と変化していく[7][4][5]

冬芽は二年枝の脱落した側枝痕の横に側芽が互生し、こぶが突き出ているような様が特徴的である[9]。落枝痕は茶褐色で円形をしており、一年枝には落枝痕はない[9]。枝先には仮頂芽がつく[9]。形は卵形や円錐状[9]。葉痕は半円形や三角形で、維管束痕が3個みられる[9]

類似種

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ウワミズザクラとよく似た植物に、イヌザクラPadus buergeriana)、シウリザクラPadus ssiori)、エゾノウワミズザクラPadus avium)がある[11]。ウワミズザクラは、総状花序の下に葉がつき、葉の腺は葉身の下部にある[11]花柱は雄蕊よりも長く、花弁は雄蕊より短い[11]

一方、イヌザクラは総状花序の下部に葉がないことで見分けがつく[11]。また、シウリザクラは総状花序の下に葉がつくが、その葉は心形である[11]。エゾノウワミズザクラは総状花序の下に円形の葉がつき、花弁は雄蕊よりも長い[11]

利用

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植栽もされて庭木に用いられる[7]。材は軽くねばり強い事から建材のほか[7]、彫刻細工、版木、道具の柄などに利用される。樹皮は桜皮細工に使う[7]

初夏の緑色の未熟な果実、春の若芽や蕾、花を食用にできる[5]。ただし、果実に含まれるや未熟な部分には青酸配糖体プルナシンを含むため、加熱・あく抜き・塩漬けなどにして含有成分を十分分解させて利用する[12]。実、蕾、花はいずれも穂ごと摘んで採取する[5]。香りのよい、若い花穂と未熟の実を塩漬にしたものは杏仁子(あんにんご)といい[4][13]新潟県東北地方で食用とされる[7][5]。塩漬けにする未熟果は生のまま漬けるが、花と蕾はさっと湯通しにしてから漬ける[5]。ほかに、若芽・蕾・花を熱湯でさっと茹でて冷水にとり、三杯酢和え物煮びたしにしたり、若芽は生のまま天ぷらにする[5]

また、完熟前の赤い果実は果実酒に使われる[5]。黒く熟した実を果実酒に使うとする文献もあるが[6]、完熟した黒い実は苦いので果実酒に使わないとする意見もある[5]。実の3倍量のホワイトリカーおよびグラニュー糖と一緒に漬けこんでから、熟成までには3か月以上かかり、半年から1年で実を引き上げる[5]。出来上がった果実酒は琥珀色で、香りが良く仕上がる[5]

脚注

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注釈

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  1. ^ 現在でも大嘗祭の為の斎田点定の儀では亀卜により悠紀国と主基国とが選ばれるが、その際にも亀甲を灼くために上溝桜の波波迦木が用いられる。(鎌田純一『平成大禮要話』p.74 ISBN 4764602628

出典

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  1. ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Padus grayana (Maxim.) C.K.Schneid. ウワミズザクラ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年12月31日閲覧。
  2. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Prunus padus L. var. japonica Miq. ウワミズザクラ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年12月31日閲覧。
  3. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Prunus grayana Maxim. ウワミズザクラ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年12月31日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n 西田尚道監修 学習研究社編 2009, p. 85.
  5. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p 金田初代 2010, p. 114.
  6. ^ a b c d 亀田龍吉 2014, p. 74.
  7. ^ a b c d e f g h i 平野隆久監修 永岡書店編 1997, p. 176.
  8. ^ a b c 林将之 2008, p. 33.
  9. ^ a b c d e f g h i j 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2014, p. 169.
  10. ^ 亀田龍吉 2014, p. 75.
  11. ^ a b c d e f 辻井達一 1995, pp. 188–189.
  12. ^ 金田初代 2010, p. 115.
  13. ^ 本山荻舟『飲食事典』(初)平凡社、1958年12月25日、23,64,65頁。全国書誌番号:59001337 

参考文献

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関連項目

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外部リンク

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