末吉暁子
末吉 暁子(すえよし あきこ、1942年8月27日 [1]- 2016年5月28日)は、日本の児童文学作家。
日本国際児童図書評議会(JBBY)元理事・日本ペンクラブ「子どもの本委員会」委員。
ロングセラー「ぞくぞく村のおばけ」シリーズや「ざわざわ森のがんこちゃん」のような、幼い子どもの心をつかむ楽しい幼年童話と、論理性と空想性が一致した長編ファンタジーの分野との両輪で書き続けた。女性ながら、恐竜や怪獣を使った作品が多いのも特徴の一つ。
略歴
[編集]神奈川県横浜市に生まれ、3歳のときに両親の出身地である[要出典]静岡県沼津市へ移住[1]。沼津市立片浜小学校・中学校、静岡県立沼津西高等学校を経て[2]、青山学院女子短期大学英文科を卒業[1]。1991年より2006年まで同校の非常勤講師も務めた。短大卒業後は講談社に入社し、女性向け雑誌「若い女性」の編集部、絵本出版部を経て、児童図書出版部にて児童書の編集を担当する[1]。編集者時代、佐藤さとるにすすめられて創作活動を開始[1]。この縁から挿絵は、佐藤と名コンビである村上勉の担当作品も多い。1975年、講談社退社後の『かいじゅうになった女の子』(偕成社)でデビュー[1]。
『星に帰った少女』で1977年に日本児童文芸家協会新人賞、1978年に日本児童文学者協会新人賞受賞[3][1]。
1983年、作家の佐藤や村上、鈴木悦夫や編集者である野上暁ら仲間と共に同人雑誌「鬼ヶ島通信」を創刊[1]。同誌は現在も年2回のペースで刊行中[4]。
1985年「だっくんあそぼうよ」シリーズでサンケイ児童出版文化賞受賞。1986年『ママの黄色い子象』で野間児童文芸賞受賞。
1996年より放送開始のNHK教育テレビの人形劇「ざわざわ森のがんこちゃん」の脚本を執筆。小学校低学年の道徳の授業の教材としても使用される。
1997年『地と潮の王』で産経児童出版文化賞推薦。1999年『雨ふり花さいた』で小学館児童出版文化賞受賞。2011年『赤い髪のミウ』で産経児童出版文化賞フジテレビ賞受賞。
2000年ごろからは、「子どもの本まつり」のイベントや小学校などで、声優たちとコラボした「ペープサート(紙人形劇)」の上演を行い、小学校や被災地を訪問。
主な作品
[編集]- 『かいじゅうになった女の子』(大橋歩、偕成社) 1975年
- 『ママ、あててみて』(林明子、偕成社) 1976年
- 『星に帰った少女』(赤星亮衛、偕成社) 1977年、のち新装版(こみねゆら、偕成社) 2003年
- 1978年日本児童文学者協会新人賞及び日本児童文芸家協会新人賞
- 『ひとりっ子ジュン』(大橋歩、文研出版) 1977年
- 『もりのかくれんぼう』(林明子、偕成社) 1978年
- 『きりんのえんぴつ』(水村まどみ、佼成出版社) 1980年
- 『はらぺこさんふたり?』(宮本忠夫、偕成社) 1980年
- 『ねずみのえいがかん』(田沢梨枝子、太平出版社) 1980年
- 『ぞうさんれいぞうこ』(田沢梨枝子、偕成社) 1981年
- 『ねこのえっちゃん』(奈良坂智子、講談社) 1981年
- 『デパートねずみにプレゼント』(黒岩明人、偕成社) 1981年
- 『ちょうちょいろのワンピース』(田中槇子、PHP研究所) 1982年
- 『にんぎょのいちごゼリー』(黒井健、フレーベル館) 1982年
- 『学校で泣いたことある?』(宮本忠夫、岩崎書店) 1982年
- 『霧のふる部屋』(牧野鈴子、講談社) 1982年、のち改題『いつか王子様が…』(講談社青い鳥文庫) 1987年
- 『ポストのなきむしおばけ』(中島きよし、講談社) 1982年
- 『にげだした魔女のほうき』(宮本忠夫、岩崎書店) 1983年
- 『まほうはないしょでかけようね』(牧野鈴子、ひくまの出版) 1984年
- 『あみだくじでおたんじょう会』(伊勢英子、あかね書房) 1984年
- 『こうかん日記で魔法をかけて』(小泉るみ子、偕成社) 1984年
- 『トキメキおまじない作戦』(小泉るみ子、偕成社) 1985年
- 『えんそくこわいぞあぶないぞ』(和歌山静子、偕成社) 1985年
- 『あの町この町吸血鬼』(和歌山静子、偕成社) 1990年
- 『いらっしゃいませかいじゅうです』(西川おさむ、秋書房) 1985年
- 『ママの黄色い子象』(講談社) 1985年、のち新装版(講談社青い鳥文庫) 2010年
- 「鬼ヶ島通信」に連載した作品。野間児童文芸賞を受賞
- 『いたずら子鬼のおくりもの』(垂石眞子、あかね書房) 1987年
- 『きせかえくまちゃん』(藤田三保、ケイエス企画) 1987年
- 『おしゃれなべべちゃん』(藤田三保、ケイエス企画) 1988年
- 『妖精のこぶたチョコレート』(小泉るみ子、偕成社) 1988年
- 『まちこさんのふしぎな海の旅』(徳田秀雄、講談社) 1988年
- 『ミステリーゾーン進学塾』(こぐれけんじろう、旺文社) 1989年
- 『ごめんねさとしくん』(太田大八、佼成出版社) 1990年
- 『たんていかぎだぬき』(西川おさむ、国土社) 1991年
- 『ないしょにしてね』(緒方直青、文溪堂) 1992年
- 『ホラーゾーン小学校』(中川大輔、旺文社) 1993年
- 『チョコレートくまちゃん』(伊東美貴、偕成社) 1994年
- 『赤い羽のアラ姫』(高橋由為子、偕成社) 1995年
- 『地と潮の王』(藤川秀之、講談社) 1996年
- 1997年産経児童出版文化賞推薦
- 『雨ふり花さいた』(こみねゆら、偕成社) 1998年
- 1998年小学館児童出版文化賞受賞
- 『世界一おじょーひんなチリチリ姫』(大留希美江、ポプラ社) 1996年
- 『チリチリ姫のぜったいないしょの冒険』(大留希美江、ポプラ社) 1997年
- 『へんな犬パンジー』(宮本忠夫、あかね書房) 2001年
- 『かいじゅうズングリのピザやさん』(西川おさむ、ポプラ社) 2002年
- 『ひこうきブルルーン!』(ふくだゆうこ、あかね書房) 2004年
- 『テーブルがおかのこうめちゃん』(仁科幸子、岩崎書店) 2005年
- 『かいじゅうぼうやも一年生』(山口みねやす、小学館) 2005年
- 『本の妖精リブロン』(東逸子、あかね書房) 2007年
- 『とうさんねこのたんじょうび』(たるいしまこ、◆BL出版) 2008年
- 『水のしろたえ』(丹地陽子、理論社) 2008年
- 『赤い髪のミウ』(平澤朋子、講談社) 2010年
- 2011年産経児童出版文化賞フジテレビ賞受賞
「おばけのおはるさん」シリーズ
[編集]- 『おばけのおはるさん』(岡本颯子、秋書房) 1980年、のち日本標準 2008年
- 『でしゃばりおばけのおはるさん』(和歌山静子、偕成社) 1983年
- 『おばけのおはるさんととらねこフニャラ』(むかいながまさ、偕成社) 1989年
- 『おばけのおはるさんととらねこフニャラ』(岡本颯子、日本標準) 2009年
- 『おばけのおはるさんはかわいこちゃん?』(むかいながまさ、偕成社) 1989年
- 『おばけのおはるさんのきもだめし』(むかいながまさ、偕成社) 1990年
- 『おばけのおはるさんディスコにいく』(むかいながまさ、偕成社) 1991年
「黒ばらさん」シリーズ
[編集]- 『2級魔法使い黒ばらさん』(牧野鈴子、文研出版) 1981年
- 『黒ばらさんの七つの魔法』(牧野鈴子、偕成社) 1991年
- 『黒ばらさんの魔法の旅だち』(牧野鈴子、偕成社) 2007年
「だっくんあそぼうよ」シリーズ
[編集](伊勢英子、ブックローン出版) 1985年 - 産経児童出版文化賞
- 『おふろだぞう』
- 『まねっこにゃんこ』
- 『どろんこおばけ』
「ぞくぞく村のおばけ」シリーズ
[編集](垂石眞子、あかね書房)
- 『ぞくぞく村のミイラのラムさん』 1989年
- 『ぞくぞく村の魔女のオバタン』 1989年
- 『ぞくぞく村のちびっこおばけグー・スー・ピー』 1990年
- 『ぞくぞく村の子鬼のゴブリン』 1991年
- 『ぞくぞく村のおおかみ男』 1993年
- 『ぞくぞく村のドラキュラのむすこ』 1994年
- 『ぞくぞく村の妖精レロレロ』 1995年
- 『ぞくぞく村のとうめい人間サムガリー』 1996年
- 『ぞくぞく村のがいこつガチャさん』 1997年
- 『ぞくぞく村の雪女ユキミダイフク』 1998年
- 『ぞくぞく村の雨ぼうずピッチャン』 1999年
- 『ぞくぞく村の魔女のオバタンの使い魔』 2000年
- 『ぞくぞく村のゾンビのビショビショ』 2002年
- 『ぞくぞく村の怪鳥ホヤホヤ』 2003年
- 『ぞくぞく村ののっぺらぼうペラさん』 2009年
- 『ぞくぞく村のかぼちゃ怪人』 2011年
- 『ぞくぞく村の魔法少女カルメラ』 2013年
- 『ぞくぞく村のランプの精ジンジン』 2015年
- 『ぞくぞく村のにじ色ドラゴン』 2016年
「ざわざわ森のがんこちゃん」
[編集]- 「ざわざわ森のがんこちゃん」シリーズ(武田美穂、講談社) 1996年 -
- 『あたらしいおともだち』 1997年
- 『いじわるバンバン』 1997年
- 『おかあさんきらい』 1998年
- 『学校へいくのいや』 1998年
- 『学校おばけのなぞ』 1998年
- 『たまごの子もり』 2002年
- 『森のキノコまじょ』 2006年
- 『フーフーまるがやってくる!』 2007年
- 「新・ざわざわ森のがんこちゃん」シリーズ(武田美穂、講談社) 2012年 -
- 『がんこちゃんはアイドル』 2012年
- 『うんちしたの、だあれ?』 2013年
- 『おばあちゃんのねがいごと』 2013年
- 「テレビ版ざわざわ森のがんこちゃん」シリーズ(スタジオノーヴァ、フレーベル館)
- 『がんこちゃんのたんじょうび』 2002年
- 『がんこちゃんはえらい!?』 2002年
- 『プリンセスがんこちゃん』 2003年
- 『がんこちゃんのすいえいたいかい』 2003年
- 『がんこちゃんのクリスマス』 2003年
「シルカ小学校のブキミともだち」シリーズ
[編集](原ゆたか、偕成社) 1996年
- 『カレーおばけのあかいぼうし』
- 『理科室のがいこつ ボキボキ』
- 『大足くんのぴかぴかスニーカー』
- 『砂場のおばけ ジャリッコ』
- 『夕やけこやけでブランコおばけ』
「魔法のおみやげ」シリーズ
[編集](原ゆたか、ポプラ社) 1999年
- 『魔法のおみやげ 1 こぶたシンデレラ』
- 『魔法のおみやげ 2 ながぐつをはいたどろぼうねこ』
- 『魔法のおみやげ 3 ねずみの町のおんがくたい』
「やまんば妖怪学校」シリーズ
[編集](おかべりか、偕成社) 2008年
- 『こいぬのクンは一年生』
- 『魔法のおたまをとりかえせ』
- 『クンがじゅもんをとなえたら』
「クルミ森のおはなし」シリーズ
[編集](多田治良、ゴブリン書房) 2009年 - 2010年
- 『クルミおばばの魔法のおふだ』
- 『クルミまつりは大さわぎ!』
- 『森の葉っぱのジグソーパズル』
- 『魔法のおふだをバトンタッチ』
村上勉挿絵作品
[編集]- 『けしゴムおばけ』(小学館) 1977年
- 『まどからきたとびうお』(講談社) 1978年
- 『ねこにごようじん』(ポプラ社) 1978年
- 『アミアミ人形の冒険』(偕成社) 1980年
- 『つばきの花のおよめさん』(偕成社) 1985年
- 『きょうはへんな日』(ベネッセコーポレーション) 1998年
「ねこのとらざえもん」シリーズ
[編集]- 『とらざえもんはまじょのねこ?』(小峰書店) 1983年
- 『とらざえもんとねずみのかげつかい』(小峰書店) 1986年
- 『ぼくおばけだぞ(やったぜ! ねこのとらざえもん)』(小峰書店) 1988年
- 『まいごのかえるちゃん(やったぜ! ねこのとらざえもん)』(小峰書店) 1988年
- 『けんかだいすき(やったぜ! ねこのとらざえもん)』(小峰書店) 1988年
岡本颯子挿絵作品
[編集]「きょうりゅうほねほねくん」シリーズ
[編集]- 『きょうりゅうほねほねくん』(あかね書房) 1993年
- 『ほねほねくんサーカスにいく』(あかね書房) 1994年
- 『ほねほねくんスキーにいく』(あかね書房) 1995年
- 『ほねほねくんの地下めいろ』(あかね書房) 1996年
- 『ほねほねくんとなぞの手紙』(あかね書房) 2002年
「くいしんぼうチップ」シリーズ
[編集]- 『チップのふしぎなかみひこうき』(あかね書房) 1999年
- 『チップのぼうけんたんじょう日』(あかね書房) 2001年
- 『チップとびっくりおばけやしき』(あかね書房) 2003年
- 『チップとまほうのフラッペ山』(あかね書房) 2005年
- 『チップとなぞのビー玉めいろ』(あかね書房) 2009年
翻訳
[編集]- 『じてんしゃにのったてんとうむし』(ヴィヴ・オールブライト、偕成社) 1980年
- 『ハニーちゃんのいちごつみ』(ダン・ボンフィリ、金の星社) 1980年
- 『ハニーちゃんのやきゅうせんしゅ』(ダン・ボンフィリ、金の星社) 1980年
- 『ハニーちゃんのケーキづくり』(ダン・ボンフィリ、金の星社) 1980年
- 『テーブルがおかのモンスターの日』(デイヴィッド・リュー、平野キャシー、AFCC) 2016年
参考文献
[編集]- 神宮輝夫『現代児童文学作家対談9 あまんきみこ・安房直子・末吉暁子』偕成社、1992年。