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昭和館 (栃木県庁舎)

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昭和館
昭和館正面 地図
昭和館 (栃木県庁舎)の位置(栃木県内)
昭和館 (栃木県庁舎)
情報
旧名称 栃木県庁舎
用途 展示施設、レストラン[1]
旧用途 県庁舎[1]
設計者 佐藤功一[1][2]
施工 戸田組(現・戸田建設[3]
建築主 栃木県
事業主体 栃木県
管理運営 栃木県管財課[4]
構造形式 鉄筋コンクリート造一部鉄骨造[1][2]
建築面積 3,741 m² [2]
※1,129.54坪[2]
延床面積 15,495 m² [2]
※4,677.73坪[2]
状態 一般開放中[1]
階数 地上4階 - 地下1階[2]
エレベーター数 1基[4]
駐車台数 なし(来庁者駐車場利用)[5]
着工 1937年1月[2]
竣工 1938年10月3日[6]
開館開所 1938年(県庁舎として)[1]
2008年1月4日(展示施設として)[7]
所在地 320-8501
栃木県宇都宮市塙田一丁目1番20号[1]
座標 北緯36度33分53.4秒 東経139度53分2.8秒 / 北緯36.564833度 東経139.884111度 / 36.564833; 139.884111 (昭和館)座標: 北緯36度33分53.4秒 東経139度53分2.8秒 / 北緯36.564833度 東経139.884111度 / 36.564833; 139.884111 (昭和館)
備考 ※各種面積は現役県庁舎時代の値
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昭和館(しょうわかん)は、栃木県宇都宮市塙田一丁目にある建築物建築家佐藤功一が4代目の栃木県庁本庁舎として設計し、65年間県庁舎として利用されてきた[1][7]2003年(平成15年)に行政庁舎としての役割を終え、2008年(平成20年)より展示施設やイベント会場として再開館した[1]

建築

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1938年(昭和13年)10月に竣工した、鉄筋コンクリート造一部鉄骨造地上4階地下1階建ての建築物である[1]。現存するのは、4代目の栃木県庁舎のうちの正面部分に相当する[8]。設計者は地元・栃木県出身の建築家である佐藤功一[1]施工者は戸田組(現・戸田建設)である[3]。佐藤が設計し、同時期に建てられた滋賀県庁本館と意匠がよく似ている[8]。また、付近にある宇都宮中央警察署県庁前交番(2012年3月26日開設)は、レンガと石を用いて、昭和館の外観を模している[9]

外観はルネサンス様式を基調としたもので、1階の人造石の横目地の強調と、2階から4階までを貫く灰色の付柱(ピラスター)によるスケール感の強調を特徴とする[2][10]。付柱の柱身は縦の深い堀溝があり、柱頭には佐藤のオリジナルであるコンポジット式英語版の装飾を施している[10]。付柱と付柱のあいだの壁には薄茶色のスクラッチタイルを貼っている[2]

佐藤が設計した滋賀県庁と宮城県庁は中央部にドームを載せて威厳を出しているが、昭和館は一段高くしているだけである[2]。この一段高くなっている部分の内部は「正庁」と呼ばれる、庁舎内で最も優雅な雰囲気を持つ部屋であった[2]

内部のデザインはパルメット模様英語版で統一している[2][10]

現役庁舎時代の特徴

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間口118メートル×奥行き64メートルで[1][2]建築面積は1,129.54坪(≒3,741平方メートル)、延床面積は4,677.73坪(≒15,495平方メートル)であった[2]。建物は上から見ると「ロの字形」で、各室を結ぶ廊下は、北側と西側は外周部に、南側と東側は中庭側に配置することで、執務室の日照採光を確保していた[11][12]。3階に知事室と貴賓室があった[13]

本庁舎の西側にあった現存しない栃木県議会議事堂は、南側・西側の優美なファサードを特徴としていた[11][12]。議事堂を中庭ではなく西側に配置したのは、当時としては大胆な設計であった[2]

佐藤の作品は古典主義・重厚を特徴としつつ、本人は常にネオ(新しい)を追求していた[2]。4代目栃木県庁舎は古典主義的な形式美を重視しつつも、車寄せの庇柱に軽快さが見られるなど、佐藤の作品らしさが窺える[2]東京工業大学教授藤岡洋保は、「戦前の府県庁舎のデザインの到達点を示す建築」、「佐藤功一の現存作品中の傑作」と評した[2]。また佐藤は都市景観の視点を持っており、周辺の景観との調和を図りつつ、単調なスカイラインにアクセントをつけ、街区を引き締めるという考えの下で設計した[3]

昭和館

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昭和館は、4代目の栃木県庁舎として65年間利用された建物のうち、貴賓室や金庫室などを含む部分[7]曳家によって移動し[14]、内部を復元・保存したものである[7]。既に行政実務は行われていないが、栃木県庁舎の1棟と見なされている[15]

館内[4]
4階 正庁、多目的室4
3階 貴賓室、展示室(近代栃木のすがた、市町村情報室)、多目的室3
2階 ふくしレストラン、多目的室2
1階 展示室(4代目県庁舎と佐藤功一)、多目的室1
地下1階 免震装置見学室

館内のレストラン「ふくしレストラン」では障碍者スタッフが働いている[16]。開店当初は宇都宮市の知的障害者授産施設「富屋作業所」の利用者が店員を務めていた[17]。メニューの中心はビーフカレーと日替わりランチで、地産地消と手作りにこだわっている[16]。なお、ふくしレストランは休憩室を兼ねているため、飲食利用をしない人も入店できる[4]

昭和館の前には、2020年(令和2年)8月21日JA全農とちぎとイチゴ生産者らが寄贈した「いちご記念碑」が建立されている[18]

開館までの経緯

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栃木県庁は下都賀郡栃木町(現・栃木市)から河内郡宇都宮町に移転して以来、2度火災で焼失している[2]。そして栃木町時代から数えて4代目の庁舎が1937年(昭和12年)1月に着工し[2]、1938年(昭和13年)10月3日に完成した[6]。総工費は約120万円であった[16]日中戦争が開戦し、物資や資金が統制される中で建設せねばならず、栃木県民による寄付や無償奉仕が行われた[3]太平洋戦争中は、外壁を黒く塗って空襲を逃れた[6]

老朽化を理由とした4代目県庁舎の建て替えは、1986年(昭和61年)から議論されてきたが、庁舎の位置や階数をめぐって調整に時間がかかり、この間に知事は2回交代した[16]。一方、周辺の景観と調和していることから保存を求める声が上がり、一部保存が決定した[3]。完成からちょうど65年となる2003年(平成15年)10月3日に閉庁式が挙行され、宇都宮市立昭和小学校の6年生が「蛍の光」を演奏する中、栃木県旗の降納と福田昭夫栃木県知事)、梶克之栃木県議会議長)の両名による「栃木県庁」の表札の取り外しが行われ、行政庁舎としての役目を終了した[16]。同月中に取り壊し工事に着手し[16]2004年(平成16年)には最大秒速1ミリメートルという速さで曳家が行われた[14]。この曳家工事は約6,000トンある建物をその場で44度回転させ、南西方向へ34メートル移動した後、46度回転させて東へ27メートル移動させるという、大規模かつ複雑なものであった[14]

曳家によって空いた土地には5代目の県庁舎が建設され[14]、2007年(平成19年)12月14日に落成式が[7]、2008年(平成20年)1月4日仕事始めに合わせて開庁式が挙行された[19]。この開庁式に合わせて昭和館も開館した[7]。その4日後の1月8日には「ふくしレストラン」が館内で開店し、最初の客として福田富一知事らが来店した[17]

利用

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表彰式・結婚式などに使われる正庁

栃木県が実施する表彰式の会場として利用されることがある[20][21]

1階と3階にある展示室は、栃木県立文書館が展示を担当している[5]。1階は常設展示で、4代目県庁舎の建設経緯や設計者を紹介している[5]。3階は通常、栃木県や県内市町の史料の展示室であるが、企画展が行われることもある[5]。これまでに、結城紬益子焼日光彫・間々田紐などの制作実演や体験教室を内容とする「栃木県伝統工芸品展」(2009年10月9日10日[22]作新学院高等学校第98回全国高等学校野球選手権大会優勝記念写真展(2016年9月)[23]県民の日記念の「昭和の暮らし」展(2019年6月15日)などが開催されている[24][25]。県庁本館と連動した展示が行われることもあり、2013年(平成25年)2月から3月にかけて、「懐かしい“ふるさと とちぎ”回想展」と題して、昭和館では大正時代の尋常小学校通信簿ホーロー看板の展示、昭和30年代(1955年-1964年)のニュース映像の放映が行われ、県庁本館15階では明治から昭和のモノクロ写真展が開かれた[26]

結婚式場としても利用されている[27][28]2009年(平成21年)4月12日千葉県出身の新郎と宮城県出身の新婦が挙げた結婚式が第1号であり、県庁舎での挙式としては日本初の事例となった[27]披露宴はできないが、アーチ状の優美な天井とシャンデリアのある豪華な雰囲気で結婚式が挙げられる[28]

ライトアップ

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環境の日に合わせて緑色にライトアップした昭和館(2022年6月)[29]

社会への啓発のためにライトアップされることがある[30]。例えば、発達障害への理解を促すためのブルーライトアップ(2016年4月2日[30]女性に対する暴力撤廃の国際デーに合わせた紫色ライトアップ(2018年11月下旬)の実績がある[31]

ロケ

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映画ドラマなどのロケーション撮影が行われることがある[32]

交通

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栃木県庁の敷地の南東部に位置する[7]

脚注

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  1. ^ a b c d e f g h i j k l 岡田・市田 2020, p. 56.
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u 岡田 2003, p. 130.
  3. ^ a b c d e 岡田 2003, p. 131.
  4. ^ a b c d 昭和館案内”. 栃木県管財課 (2010年10月30日). 2021年1月2日閲覧。
  5. ^ a b c d e f g 昭和館展示”. 栃木県立文書館 (2020年12月1日). 2021年1月2日閲覧。
  6. ^ a b c 「県庁舎本館の閉庁式 65年の歴史に幕」2003年10月4日付朝刊、栃木北32ページ
  7. ^ a b c d e f g 塙和也「新県庁舎 落成式に国会議員や首長ら380人招く」毎日新聞2007年12月15日付朝刊、栃木版27ページ
  8. ^ a b 「近江の近代建築7選 ヴォーリズだけじゃない ② 県庁舎本館 どっしり構える存在感」朝日新聞2009年11月18日付朝刊、滋賀版27ページ
  9. ^ 「れんが調の新交番 県庁前に設置 宇都宮中央署、17年ぶり管内に」朝日新聞2012年3月27日付朝刊、栃木版28ページ
  10. ^ a b c 岡田・市田 2020, p. 57.
  11. ^ a b 岡田 2003, pp. 130–131.
  12. ^ a b 岡田・市田 2020, p. 56, 58.
  13. ^ 岡田・市田 2020, p. 58.
  14. ^ a b c d 「重さ6000トン動いた! 栃木県庁旧本館の曳家工事公開」読売新聞2004年6月17日付夕刊、社会面19ページ
  15. ^ 県庁舎配置図”. 栃木県管財課 (2016年5月27日). 2021年1月2日閲覧。
  16. ^ a b c d e f 武石将弘「ひと紀行 100年の行く末見守る 新 県庁舎 玄関にトチノキの舟/日光並木杉も建材に 県産食材にこだわり」読売新聞2008年2月24日付朝刊、栃木2、34ページ
  17. ^ a b "「ふくしレストラン」オープン 福田知事「情報発信の場に」"朝日新聞2008年1月9日付朝刊、栃木版26ページ
  18. ^ 李舜"「いちご王国」に記念碑 生産量日本一50年連続祝う JAと生産者、県に寄贈 県庁前でお披露目"毎日新聞2020年8月22日付朝刊、栃木版21ページ
  19. ^ "「新時代」へ奮起促す 仕事始め トップあいさつ"読売新聞2008年1月5日付朝刊、栃木北31ページ
  20. ^ 長谷川陽子「伝統的な技術とキャリア 伝統工芸士13人認定」朝日新聞2014年7月20日付朝刊、栃木版37ページ
  21. ^ "「県民の警官」に3警部補 県庁昭和館で表彰式"読売新聞2016年11月18日付朝刊、栃木2、32ページ
  22. ^ 「ひも細工・紬、作って着て実感 きょうまで、県庁で伝統工芸品展」朝日新聞2009年10月10日付朝刊、栃木版29ページ
  23. ^ 作新V あの感動を写真で再び 県庁で29日から 大優勝旗も展示」朝日新聞2016年10月17日付朝刊、栃木版27ページ
  24. ^ 「県民の日 雨でも楽し 県庁や各地でイベント」読売新聞2019年6月16日付朝刊、栃木1、29ページ
  25. ^ 「県産品をPR販売 県庁でイベント 東京五輪パラも」毎日新聞2019年6月16日付朝刊、栃木版23ページ
  26. ^ "明治〜昭和、県民のお宝と共に 「〝ふるさと とちぎ〟回想展」来月17日まで"朝日新聞2013年2月18日付朝刊、栃木版29ページ
  27. ^ a b 葛西大博「雑記帳 栃木県庁で12日 1組のカップルが…」毎日新聞2009年4月14日付朝刊、社会面29ページ
  28. ^ a b 尾河和子「♡♡公館結婚式♡♡ 気分はVIP」読売新聞2010年5月13日付朝刊、大阪版生活面A、17ページ
  29. ^ あすは「環境の日」 県庁昭和館が緑にライトアップ”. 下野新聞 (2022年6月4日). 2022年6月8日閲覧。
  30. ^ a b 「自閉症に理解を 啓発コンサート 来月2日、宇都宮」朝日新聞2016年3月30日付朝刊、栃木版26ページ
  31. ^ 「女性への暴力 ノー 県庁昭和館ライトアップ」朝日新聞2018年11月21日付朝刊、栃木版25ページ
  32. ^ ロケ実績”. 栃木県フィルムコミッション. 2022年11月3日閲覧。
  33. ^ 栃木県歴史散歩編集委員会 編 2007, p. 5.

参考文献

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  • 岡田義治 著「栃木県庁舎本館」、栃木県教育委員会事務局文化財課 編 編『栃木県の近代化遺産 栃木県近代化遺産(建造物等)総合調査報告書』栃木県教育委員会事務局文化財課、2003年3月、130-131頁。 全国書誌番号:20412997
  • 岡田義治・市田登『栃木の近代化遺産を歩く―建築に見る明治・大正・昭和―』随想舎、2020年4月24日、166頁。ISBN 978-4-88748-381-1 
  • 栃木県歴史散歩編集委員会 編 編『栃木県の歴史散歩』山川出版社〈歴史散歩⑨〉、350頁。ISBN 978-4-634-24609-6 

関連項目

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外部リンク

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