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昭和天皇コラージュ事件

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

昭和天皇コラージュ事件(しょうわてんのうコラージュじけん)は昭和天皇コラージュ作品を美術館が非公開にして閲覧を拒んだ事件[1]。別名は大浦訴訟(おおうらそしょう)[2]

概要

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東京都の美術家である大浦信行が、10点の版画シリーズ『遠近を抱えて』と題して1982年から1985年に制作した、昭和天皇の写真と一緒に歴史的名画の一部や人体解放図、家具や裸婦等の図解を組み合わせたコラージュ作品が、1986年富山県立近代美術館で開かれた「86富山の美術」展に出展された際に、富山県議会や複数の議員から「不快」と指摘された他、右翼団体から抗議があり、富山県知事が右翼に襲撃される事件が起こったことから、美術館が収蔵していた作品を非公開にし、住民らが条例に基づいて出した特別観覧請求を拒否した[3]。その後、作品の一部を作者に返却し、残りを第三者に売却して「86富山の美術」展示録を償却した[3]

この一連の措置に、作者を含む住民らが富山県と富山県教育委員会を相手に、損害賠償と作品の買戻し等を求める訴訟を起こした[3]

1998年12月16日富山地裁は見る権利の侵害に当たるとして閲覧を求めた11人の住民に対して計23万円を支払うよう命じる判決を被告である富山県に言い渡した[2][4]。控訴となり、2000年2月16日名古屋高裁は「観覧制度で作品を損傷しようとする者が紛れ込む可能性は否定できない」等とする被告である富山県の主張を受け入れ、一審判決を破棄して原告の請求を棄却した[2]。ただし、名古屋高裁の判決では富山県等が主張していた天皇の肖像権プライバシーの侵害については「象徴としての地位により制約を受ける」として退けた[3]

2000年10月27日最高裁は原告の上告を棄却し、判決が確定した[3]

脚注

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  1. ^ 島田真琴 (2021), p. 241.
  2. ^ a b c 「原告が逆転敗訴 昭和天皇コラージュ公開訴訟で高裁 【名古屋】」『朝日新聞朝日新聞社、2000年2月17日。
  3. ^ a b c d e 「「天皇コラージュ訴訟」上告棄却の波紋 現代美術を考える好機にも」『朝日新聞』朝日新聞社、2000年11月8日。
  4. ^ 「コラージュ訴訟 天皇肖像権侵害認めず 「象徴……制約受ける」/富山地裁判決」『読売新聞読売新聞社、1998年12月17日。

参考文献

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  • 憲法判例研究会 編『憲法』(増補版)信山社〈判例プラクティス〉、2014年6月30日。ASIN 4797226366ISBN 978-4-7972-2636-2NCID BB15962761OCLC 1183152206全国書誌番号:22607247 
  • 戸松秀典初宿正典 編『憲法判例』(第8版)有斐閣、2018年4月。ASIN 4641227454ISBN 978-4-641-22745-3NCID BB25884915OCLC 1031119363全国書誌番号:23035922 
  • 平野武『新・判例憲法』三和書房、1994年9月。ASIN 4783301751ISBN 9784783301752NCID BN1190850X 
  • 佐藤幸治土井真一 編『憲法』 2巻《基本的人権・統治機構》、悠々社〈判例講義〉、2010年4月。ASIN 4862420133doi:10.32286/00026096ISBN 978-4-86242-013-8NCID BB01867048OCLC 836288002全国書誌番号:21750875 
  • 島田真琴『アート・ロー入門 美術品にかかわる法律の知識』慶應義塾大学出版会、2021年4月7日。ASIN 4766427416ISBN 978-4-7664-2741-7NCID BC06592567OCLC 1246258697全国書誌番号:23514718 

関連項目

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