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日本ジブチ地位協定

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ジブチ共和国における日本国の自衛隊等の地位に関する日本国政府とジブチ共和国政府との間の交換公文
通称・略称 日本ジブチ地位協定または日ジ地位協定
発効 2009年(平成21年)4月3日に
現況 有効
締約国 日本の旗 日本
ジブチの旗 ジブチ
言語 日本語フランス語
主な内容 在ジブチ自衛隊の日ジブチ間での取り扱い、ソマリア沖の海賊の対処
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日本ジブチ地位協定(にっぽんジブチちいきょうてい)は、2009年4月3日に署名された日本ジブチとの間における地位協定である。正式名称はジブチ共和国における日本国の自衛隊等の地位に関する日本国政府とジブチ共和国政府との間の交換公文(ジブチきょうわこくにおけるにほんこくのじえいたいとうのちいにかんするにほんこくせいふとジブチきょうわこくせいふとのあいだのこうかんこうぶん)[1]

経緯

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名称

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英語では、Japan Self Defense Force base in Djibouti。直訳すると、在ジブチ自衛隊基地となっている。

概要

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協定はPKO協力法の理念を参照し国連憲章105条「自己の任務を独立に遂行するために必要な特権及び免除を享有する」および国連軍地位協定モデル案「国連平和維持活動の軍事部門の軍事構成員は、受入国・地域で犯すことのあるすべての犯罪について、各参加国(注:兵員提供国のこと)の専属管轄に属する」(47項b)に準じ、また日本が過去、ザイール、クウェートと締約した交換公文に準じ[3][4]、全体的に派遣国(日本)側を配慮し、優遇した協定になっている。

自衛隊の派遣は国連安保理決議の要請に応じて決定されたものではなく(PKO活動ではない)海上警備行動の発令に従い独自に実施される主旨のものである[5][6]。交換公文は4月3日に署名され、同時に無償資金協力として8億6千万円の食料援助及び9億2500万円のラジオテレビ放送局番組作成機材整備計画に関する交換公文も書名された。

ジブチ基地内の条文

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ジブチ共和国政府の官吏は、日本国政府の権限のある代表者の同意を得てそれらに立ち入ることを許される。
施設、施設内にある用具類その他の資産及び部隊、海上保安庁又は連絡事務所の輸送手段は、捜索、 徴発、差押え又は強制執行を免除される。

とされ、ジブチ政府官吏による自衛隊の拠点内への出入りは日本国政府の権限ある代表者から許可を得て実施されるものとされている。

また、自衛隊の活動への介入、資産等の差し押さえは条約によって禁止されている。

自衛隊物資輸入時の検査

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ジブチ共和国政府は、活動又は要員の個人的な使用のための物品の輸入を許可し、かつ、それらについてすべての関税、租税及びこれらに類似する課徴金を免除する。ただし、倉入れ、運搬及びこれらに類似する役務に対する課徴金は、この限りでない。要員の手荷物は、検査を免除される。ただし、手荷物中に要員の個人的な使用のためでない物品又は輸出入がジブチ共和国の法律によって禁止されており、若しくはその検疫規則によって規制されている物品が含まれていると推定すべき十分な理由がある場合は、この限りでない。その場合には、検査は、当該要員又は日本国政府の権限のある代表者の立会いの下においてのみ行われなければならない

とされ、日本国政府及び防衛省による自衛隊の物資の輸入等についてジブチ側が制定している関税、租税及び課徴金は免除される。また輸入された自衛隊の物資等については、ジブチ側の検査は、日本国政府の権限のある代表者の立会いの下においてのみ実施される。

活動範囲

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活動のために、ジブチ共和国政府は、部隊、海上保安庁及び要員に対し、ジブチ共和国の領域(水域及び空域を含む。)内における移動の自由及び旅行の自由を認める。ジブチ共和国の領海内における移動の自由には、停船及び投びょうを含む。

と地位協定に記載されている。

税金の免除

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活動のために、部隊、海上保安庁及び連絡事務所並びにこれらが借り上げる輸送手段は、ジブチ共和国の領域内において、租税及びこれに類似する課徴金を支払うことなく、公道、橋、渡船施設、空港及び港を使用することができる。

とされ、現地で活動するため借り上げる輸送手段について租税あるいは課徴金を課されることなく、公道、橋、渡船施設、空港及び港を利用することができる(鉄道など記載されていない輸送手段については規定なし)。

検疫によるクラスター問題

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行に際し、自衛隊、日本の政治家の検疫や感染拡大防止対策についてジブチ側の規定が一切及ばず、自衛隊のジブチ出入国時の新型コロナウイルスに関する検査をしない、ジブチ政府側が把握できていなかったことが判明し[要出典]、自衛隊の拠点内でクラスターが発生した事が判明した[7]

裁判権

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要員については、

ジブチ共和国の領域内において、千九百六十一年四月十八日の外交関係に関するウィーン条約の関連規定に基づいて事務及び技術職員に与えられる特権及び免除と同様の特権及び免除をジブチ共和国政府により与えられる。

と規定され、更に

日本国の権限のある当局は、ジブチ共和国の領域内において、ジブチ共和国の権限のある当局と協力し て、日本国の法令によって与えられたすべての刑事裁判権及び懲戒上の権限をすべての要員について行使する権利を有する。

外交特権のある外交官と同様に、ジブチの裁判権には服さず、日本の当局が全ての裁判権を持つ。 この特権は、現地雇用職員には適用されない。

現地雇用職員は、いかなる特権又は免除も享有しない。

ジブチの自衛隊の拠点内について、ジブチの法令を適用しないという規定はないが、要員に対して裁判権を行使できないため執行が困難である。

ジブチ国民が自衛隊の拠点で事件または事故を起こした場合についてジブチの法令の適用を排除する規定はない。

過失犯について「法の空白」の論点

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自衛隊員の現地での「過失犯」は現地の法律でも日本の法律でも裁かれないため、法の空白が存在しているとの議論がある[8]。刑法の国外犯処罰規定に過失犯は含まれていないためであり、危険運転致死罪を含む自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律の場合も同様である。

協定に対する批判

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ジャーナリストの布施祐仁は、本協定について日米地位協定以上に不平等であり、治外法権を強いる内容であると論じている[9]

関連項目

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出典

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  1. ^ ジブチ共和国における日本国の自衛隊等の地位に関する日本国政府とジブチ共和国政府との間の交換公文について”. 外務省 (2009年4月3日). 2021年11月12日閲覧。
  2. ^ 駐日ジブチ共和国大使に聞く、世界で唯一自衛隊を受け入れている理由”. Time Out Tokyo. 2022年1月14日閲覧。
  3. ^ 岩本誠吾 2010, p. 122-124.
  4. ^ 三宅孝之 2019, p. 114、注釈11.
  5. ^ 第171回国会 衆議院 海賊行為への対処並びに国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動等に関する特別委員会 第6号 平成21年4月22日、発言者番号077(浜田靖一)
  6. ^ 安保理決議1816と1846は、ソマリア暫定政府(TFG)と、TFGが国連事務総長に事前に通知をおこなう各国が協力して、ソマリア領海内で、関連する国際法に合致する方法で海賊行為の抑止のためにすべての必要な措置をとることを一定期間認めるものである。この安保理決議はTFGとの協力国が一定の条件のもとで、海賊船舶の拿捕など、国連海洋法条約により明文化されている国際法に基づき海賊に対して各国が公海上でとることが可能な措置をソマリア領海内においても可能にするという枠組みである。第171回国会 衆議院 海賊行為への対処並びに国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動等に関する特別委員会 第6号 平成21年4月22日、発言者番号073(別所浩郎)
  7. ^ ジブチ派遣自衛隊員、コロナ感染21人 届け出なく拠点外で飲食も”. 毎日新聞. 2022年1月14日閲覧。
  8. ^ 「言論の府」体現 自衛隊派遣の「法の空白」でかみ合った議論 問題提起の山尾氏の思惑は…”. 毎日新聞. 2022年1月14日閲覧。
  9. ^ 日本は、自衛隊が駐留するジブチに「占領軍」のような不平等協定を強いている”. 日刊SPA! (2019年3月6日). 2021年11月12日閲覧。

参考文献

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  • 岩本誠吾「海外駐留の自衛隊に関する地位協定覚書 : 刑事裁判管轄権を中心に (廣岡正久教授定年御退職記念号)」『産大法学』第43巻第3/4号、京都産業大学法学会、2010年2月、1140-1115頁、ISSN 0286-3782 
  • 三宅孝之「日米地位協定における刑事裁判権・管轄権 -隷属的地位の日本と二重の矛盾集中の沖縄-」『島大法學』第62巻3・4、島根大学法文学部 島根大学大学院法務研究科、2019年2月、103-133頁、doi:10.24568/45547ISSN 05830362 

外部リンク

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