新生児メレナ
新生児メレナ | |
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概要 | |
分類および外部参照情報 | |
ICD-10 | P54.1 |
新生児メレナ(しんせいじメレナ、英: melena neonatorum)とは、新生児における消化管からの出血を来たす状態。新生児自身の出血である真性メレナと、分娩時の母親の出血に由来する仮性メレナがある[1]。真性メレナのみを新生児メレナとして仮性メレナを区別する文献[2]も有る。真性メレナの大部分はビタミンK欠乏による凝固因子の欠乏によるものであり[1]、単に新生児メレナや新生児真性メレナ[3]と述べた時にこれを指すことも有る。
分類
[編集]上記の通り、真性メレナと仮性メレナに分類される。
仮性メレナとは、新生児が飲み込んでいた母親の出血や羊水により消化管出血をきたしたように見えるものであり[2]、真性メレナは新生児由来の出血である[1]。
疫学
[編集]真性メレナでは、その大部分がビタミンKの欠乏によるものである[1]。1980年代に入り新生児にビタミンK補充療法が始まったことで現在では減少しているが[2]、胆道などに何らかの基礎疾患をもつ場合[2]の他、保護者や助産師が宗教やホメオパシーを信じることでビタミンKを与えない場合などに発症、死亡する例[4][5]も報告されている。2010年に日本助産師会が行った全国調査[6]では、助産所の1割弱でホメオパシーが行われビタミンK補充療法が行われないケースが報告された[5]。
ビタミンK欠乏性の減少に伴い、血小板減少症、播種性血管内凝固症候群、血友病等の易出血性疾患や、壊死性腸炎、腸重積、腸軸捻転、細菌やウイルスによる感染症、アレルギー、肛門周囲の炎症や裂傷などの他の原因で出血するケースが相対的に増えてきている[7]。
検査・治療
[編集]仮性メレナと真性メレナの鑑別には、HbFが新生児血液中に多く含まれることを利用したアプト (Apt) 試験が用いられる[1]。
真性メレナでは治療が必要となるため、原因の調査が必要となる。最も多いビタミンKの欠乏ではPT、APTT、出血時間がすべて延長する[8]他、異常プロトロンビンを検出する[2]。
脚注
[編集]- ^ a b c d e 原寿郎、高橋孝雄、細井創 編「第7章 新生児疾患 M 血液疾患 1 新生児出血性疾患」『標準小児科学』監修 内山聖(第8版)、医学書院、東京都文京区〈STANDARD TEXTBOOK〉、2013年12月13日、134頁。ISBN 978-4-260-01748-0。 NCID BB1431089X。
- ^ a b c d e 五十嵐隆 編「第19章 新生児学 VIII.血液疾患 A.新生児出血性疾患」『小児科学』(改訂第10版)文光堂、東京都文京区、2011年4月5日、314-315頁。ISBN 978-4-8306-3034-7。 NCID BB05418170。
- ^ 総編集 水口雅、市橋光、崎山弘 編「4 新生児疾患 II ビタミンK(VK)欠乏症(新生児真性メレナ)」『今日の小児治療指針』(第16版)医学書院、東京都文京区、2015年9月10日、164頁。ISBN 978-4-260-02084-8。 NCID BB19439703。
- ^ ビタミンKのお話 - 新小児科医のつぶやき
- ^ a b 杉岡寛子、片岡弥恵子「新生児へのビタミンK 投与に関するリーフレットの作成と評価」『聖路加看護大学紀要』第38号、聖路加看護大学、東京都中央区、2012年3月、10-17頁、ISSN 2189-1591、NAID 40019236938。
- ^ 加藤尚美 (2010年9月7日). “「ホメオパシー」に関する調査結果の公表について” (PDF). 日本助産師会. 2015年10月30日閲覧。
- ^ 荒木勤、鈴木俊治、増崎英明、高橋恒男、平原史樹「14.新生児の管理と治療 : C.産科疾患の診断・治療・管理(研修医のための必修知識)」『日本産科婦人科学会雑誌』第54巻第11号、日本産科婦人科学会、2002年11月、517-535頁、ISSN 0300-9165、NAID 110002097829。
- ^ 血液・呼吸器内科のお役立ち情報:ビタミンK依存性凝固因子の覚え方:血液凝固検査入門(17)