大発見
『大発見』 | ||||
---|---|---|---|---|
東京事変 の スタジオ・アルバム | ||||
リリース | ||||
録音 | 2010年 - 2011年 | |||
ジャンル | J-POP、オルタナティヴ | |||
時間 | ||||
レーベル | EMIミュージック・ジャパン/Virgin Music | |||
プロデュース | 東京事変、井上雨迩 | |||
チャート最高順位 | ||||
| ||||
ゴールドディスク | ||||
| ||||
東京事変 アルバム 年表 | ||||
| ||||
『大発見』収録のシングル | ||||
|
『大発見』(だいはっけん 英題:Discovery)は、2011年6月29日に発売された日本のバンド東京事変の5枚目のスタジオ・アルバム[2][3]。発売元はEMIミュージック・ジャパン/Virgin Music。
概要
[編集]本作は前作『スポーツ』より約1年4ヶ月ぶりとなるスタジオ・アルバム[4]。既発の両A面シングル「空が鳴っている/女の子は誰でも」収録曲と配信限定シングル「天国へようこそ」と「ドーパミント!」のアルバム・バージョンを含む13曲にボーナス・トラックとして配信シングル版「天国へようこそ」を加えた全14曲を収録[4]。
アルバムタイトルの『大発見』は前作までと同様に椎名林檎の発案によるもの[5]。椎名が口にした『大』のついたタイトルという思い付きに対し、一度はチャネル縛りを忘れて『大』が付く言葉を出し合ったが、椎名が『大発見』ならディスカバリーチャンネルに繋がると気付き、最終的にそれに決まった[6]。前作までのチャネル縛りというマナーこそ踏襲したものの、アルバムのコンセプトに“スタンダード”、“プリミティブ”、“バック・トゥ・ルーツ”といった多くのセンテンスを内包している点などがそれまでのアルバムとは異なる[2][6]。椎名曰く「チャンネル縛りの起承転結の結を目指した」ということで、第二期東京事変における起である『大人 (アダルト)』、承の『娯楽 (バラエティ)』、転の『スポーツ』ときて、結びの結にあたる本作には、それまでのアルバムのすべての要素が入っている[5][7]。それまでの活動を総括した、東京事変としては一度ここで完結するというまとめのアルバム[8]。
“大いなる発見”というテーマの下に集まった楽曲は刄田綴色以外の4人(椎名林檎、浮雲、伊澤一葉、亀田誠治)が作曲クレジットに名を連ね(作詞は1曲を除いてすべて椎名)、しかもうち5曲は共作曲となっている[注 1][2]。すべての曲を『大発見』とするために全員の持っている力を総動員した結果、自然と共作が多くなった。しかし、それ以上にいずれの曲も作者の個性が前に出過ぎることがなくすべてバンドとしての曲になっており、メンバー曰く「一回曲を提出したらそこからは自分の手を離れて曲はバンドのもの」「クレジット上では誰かと誰かという表記になっていてもすべての曲に事変全員としての共作感がある」とのこと[2][9]。
サウンドメイキングはポップスからビートパンク、グラムロック、ジャズ、シャンソン、アフロビート、ブルースロック、ビッグバンドなど多彩[2][7]。
収録曲のタイトルはサブタイトルを除くと全て全角7文字に揃えられている[注 2]。
初回生産分のみ、大発見スリーブケース仕様。
制作の背景
[編集]制作期間は2010年10月から2011年5月まで[7]。2010年10月初旬、皆で持ち寄ったデモの視聴会で収録曲を選曲し、プリプロダクションを経てレコーディングを開始。制作は年をまたいで2011年2月まで行われたが、2月の刄田の不祥事によるバンドの活動休止と3月の東日本大震災の影響で、4月初旬まで一時制作がストップした[5]。
日頃「録って出しのストックなし」を売りにしている椎名林檎の関連作品には珍しく、本作では収録曲に対してプリプロダクションやレコーディングした曲数が多い[5][9]。候補曲も約30曲あった[6]。
本作では初めてプリプロダクションの段階からPro Toolsを使用し、曲の断片をすべて記録していった[9]。毎回それぞれのパートのアレンジを本番のレコーディングと同クオリティの音像で持ち帰った各メンバーが自分のプレイや楽曲の全体像を十二分に把握出来たため、スタジオの回数を重ねるごとに多くの要素を持ち込んで積み上げることが可能になった[6]。メンバー全員がこれほど長時間顔を突き合わせて作業したのは初めてのことで、そのことで全体を非常に緻密に作り上げることができた[9]。
前作に引き続き、椎名はタイアップ曲以外はあまり楽曲を提出せず、『大』のつくタイトル通りアルバム自体を大きなものにしようとして少し引いた位置からバンド全体を見ていた[8]。そのためには伊澤がどういう曲を書いてくるかが要点だとイメージしていたため、伊澤の書いたものを助作することに注力した[8]。
普段はあまり曲を持ってこない亀田誠治はいつになく制作意欲にかられ、5曲の候補曲を持ち込んでいる[10]。
今回浮雲は作家としては波に乗れず、曲の持ち込みも少なかった。その分、ギタープレイに力を入れている[9]。前作「スポーツ」においてスタンダードでロック的なパワーコードなどそれまで弾かなかったフレーズを解禁した彼は、本作でも以前は避けていたいかにもギターらしいギターを弾くなどギタリストとして硬軟さまざまな手札を切っている[11]。一方、提供曲については、他の曲はメンバー全員で形作っていくことが多かったのに対し、彼の曲はポップではないせいか他のメンバーがあまり口を出してこなかった[12]。
伊澤一葉は普段通りもっとも多くの曲を持ち込み、収録曲でも椎名・亀田との共作を含めるとメンバー最多の7曲にクレジットされている[13]。本作では鍵盤での音作りを避け、ほとんどの曲をギターで作っている[6]。「絶対値対相対値」「新しい文明開化」「空が鳴っている」「風に肖って行け」ではレコーディングでもギターを演奏している。それまでのアルバムではある程度のリフやフレーズを前もって準備していたが、今作ではあえて用意しなかった[14]。他のメンバーが演奏したり椎名が歌ったりするメロディに自分がどう瞬間的に反応して何を弾くかなど即興の可能性を見てみたくて、その場で弾いて生まれるものを試した[14]。
前作までリズム隊という概念を嫌っていた刄田綴色は今作では考えを改め、亀田と決めのポイントを合わせる形での、それまで東京事変では見られなかったベースとドラムで生み出すリズム隊然とした王道のグルーブを生み出している[7][10][15]。亀田とのやり取りが変わり、それまで相手の意図を聞き合うだけだったのがアイデアを提示し合うようになった[10][15]。
収録曲
[編集]各曲解説
[編集]- 天国へようこそ For The Disc(Where's Heaven For The Disc)
- 絶対値対相対値(Relative vs. Absolute)
- 6月13日より着うた・着うたフルが先行配信された。
- 伊澤が書いてきた曲に自分に寄せてきた曲だと感じた椎名が手を加えて完成した曲で、ギターソロのために空けておいた小節に歌を加えるなどしている[6]。
- 歌詞は椎名が初期の作品である「丸ノ内サディスティック」や「積木遊び」のように手癖やでたらめな瞬発力で書き上げた[17]。
- 新しい文明開化(Brand New Civilization)
- 東京メトロCMソング。5月20日より着うた、6月1日より着うたフルが先行配信された。
- 本作のリード曲であり、ミュージック・ビデオが制作され、本アルバムのTVCMにも使用された。
- 一旦は「ポップスとして違う気がする」として伊澤が引っ込めようとしていた曲を椎名が引き取り、楽器へのアプローチはそのまま残してボーカルの面から変えて完成させた曲[6]。
- 電気のない都市(City Without Electricity)
- 海底に巣くう男(Regardez Moi)
- 禁じられた遊び(Jeux Interdits)
- 6月13日より着うた・着うたフルが先行配信された。
- 「新しい文明開化」同様、レコーディング当日まで伊澤が悩んでいた曲に、歌入れ中だった椎名が歌詞と同時に大サビのメロディラインを作って完成させた曲[6]。
- のちに椎名が自身のソロライブでも幾度か披露した。
- ドーパミント! BPM103(Dopa-Mint! BPM103)
- 恐るべき大人達(Les Adultes Terribles)
- 21世紀宇宙の子(Child Of The 21st Century Universe)
- かつては男と女 (Un Homme Et Une Femme)
- 空が鳴っている(Reverberation)
- 7枚目の両A面シングル1曲目。
- 江崎グリコ「ウォータリングキスミント」CMソング。
- 風に肖って行け(Go With The Wind)
- 女の子は誰でも(Fly Me To Heaven)
- 天国へようこそ For The Tube(Where's Heaven For The Tube)
楽曲クレジット
[編集]作曲クレジットで先に名前が載っている人間がその楽曲のモチーフとなるデモを提出している[9]。
- 編曲:東京事変(M-13を除く)、服部隆之(M-13)
- 演奏:東京事変(M-13を除く)、東京マジカルビッグバンド(M-13)
# | タイトル | 作詞 | 作曲 | 時間 |
---|---|---|---|---|
1. | 「天国へようこそ For The Disc」 | 椎名林檎 | 椎名林檎 | |
2. | 「絶対値対相対値」 | 椎名林檎 |
| |
3. | 「新しい文明開化」 | 椎名林檎 |
| |
4. | 「電気のない都市」 | 椎名林檎 | 伊澤一葉 | |
5. | 「海底に巣くう男」 | 浮雲 | 浮雲 | |
6. | 「禁じられた遊び」 | 椎名林檎 |
| |
7. | 「ドーパミント! BPM103」 | 椎名林檎 | 伊澤一葉 | |
8. | 「恐るべき大人達」 | 椎名林檎 |
| |
9. | 「21世紀宇宙の子」 | 椎名林檎 |
| |
10. | 「かつては男と女」 | 椎名林檎 | 浮雲 | |
11. | 「空が鳴っている」 | 椎名林檎 | 亀田誠治 | |
12. | 「風に肖って行け」 | 椎名林檎 | 伊澤一葉 | |
13. | 「女の子は誰でも」 | 椎名林檎 | 椎名林檎 | |
14. | 「天国へようこそ For The Tube」(ボーナス・トラック) | 椎名林檎 | 椎名林檎 | |
合計時間: |
演奏
[編集]
|
|
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ 2011年に最もダウンロードされた作品は? 「iTunes Rewind 2011」発表、BARKS、2011年12月9日。
- ^ a b c d e “「大発見」ライナーノーツ”. 東京事変公式サイト. ユニバーサル ミュージック合同会社. 2018年6月11日閲覧。
- ^ “東京事変、5thアルバム『大発見』6/29発売決定”. BARKS (2011年5月10日). 2018年6月12日閲覧。
- ^ a b “東京事変、話題CMソング満載の「大発見」全貌公開”. 音楽ナタリー. ナターシャ (2011年5月30日). 2018年6月12日閲覧。
- ^ a b c d 「特集:東京事変ビューティフル・ディスカバリー(前編) 椎名林檎 瞬間を生きるために」『SWITCH』第29巻第6号、スイッチ・パブリッシング、2011年6月、28-34頁、2018年6月11日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n “「大発見」オフィシャル・インタビュー”. 東京事変公式サイト. ユニバーサル ミュージック合同会社. 2018年6月11日閲覧。
- ^ a b c d 「特集:東京事変ビューティフル・ディスカバリー(前編) TOKYO INCIDENTS STUDIO WORKS 2010-2011」『SWITCH』第29巻第6号、スイッチ・パブリッシング、2011年6月、40-45頁、2018年6月11日閲覧。
- ^ a b c 「椎名林檎インタビュー」『MUSICA』第5巻第7号、株式会社FACT、2011年7月、24-29頁、2018年6月19日閲覧。
- ^ a b c d e f 「浮雲・伊澤・刄田・亀田インタビュー」『MUSICA』第5巻第7号、株式会社FACT、2011年7月、30-33頁、2018年6月19日閲覧。
- ^ a b c 「特集:東京事変ビューティフル・ディスカバリー(前編) 亀田誠治 放熱の秘密、未来の希望」『SWITCH』第29巻第6号、スイッチ・パブリッシング、2011年6月、39頁、2018年6月11日閲覧。
- ^ a b c 「特集:東京事変ビューティフル・ディスカバリー(前編) 浮雲 蒼き雲が流れ行く先」『SWITCH』第29巻第6号、スイッチ・パブリッシング、2011年6月、36頁、2018年6月11日閲覧。
- ^ 「特集:東京事変ビューティフル・ディスカバリー(後編) 浮雲 親切心と理解」『SWITCH』第29巻第7号、スイッチ・パブリッシング、2011年7月、80頁、2018年6月11日閲覧。
- ^ 「特集:東京事変ビューティフル・ディスカバリー(後編) 伊澤一葉 泳ぎ着いた果ての音楽」『SWITCH』第29巻第7号、スイッチ・パブリッシング、2011年7月、81頁、2018年6月11日閲覧。
- ^ a b 「特集:東京事変ビューティフル・ディスカバリー(前編) 伊澤一葉 インプロヴィゼーションと色気」『SWITCH』第29巻第6号、スイッチ・パブリッシング、2011年6月、37頁、2018年6月11日閲覧。
- ^ a b 「特集:東京事変ビューティフル・ディスカバリー(前編) 刄田綴色 プレイングリスナーの眺め」『SWITCH』第29巻第6号、スイッチ・パブリッシング、2011年6月、38頁、2018年6月11日閲覧。
- ^ 「特集:東京事変ビューティフル・ディスカバリー(後編) 刄田綴色 天才と世界一」『SWITCH』第29巻第7号、スイッチ・パブリッシング、2011年7月、82頁、2018年6月11日閲覧。
- ^ a b c d e 「特集:東京事変ビューティフル・ディスカバリー(後編) 椎名林檎 そして見つけたもの」『SWITCH』第29巻第7号、スイッチ・パブリッシング、2011年7月、78頁、2018年6月11日閲覧。
- ^ a b 「特集:東京事変ビューティフル・ディスカバリー(後編) 亀田誠治 成長するということ」『SWITCH』第29巻第7号、スイッチ・パブリッシング、2011年7月、82頁、2018年6月11日閲覧。