恋する豚研究所
本社(食肉加工場・レストラン) | |
種類 | 株式会社 |
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本社所在地 |
日本 千葉県香取市沢2459番1 |
設立 | 2012年2月9日 |
業種 | 水産・農林業 |
法人番号 | 2040001075746 |
事業内容 |
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代表者 | 代表取締役 飯田大輔 |
外部リンク | https://www.koisurubuta.com/ |
恋する豚研究所(こいするぶたけんきゅうじょ)は、千葉県香取市にある食肉及び食肉加工品の販売会社。香取市内に食肉加工場と食堂を有する。
2012年に設立し、2013年に食堂を開業した。運営会社の母体が社会福祉法人であり、当事業の拠点は就労継続支援A型の事業所である[1]。
事業内容
[編集]食肉及び農産品の販売と、肉加工品の企画・開発・製造・販売を事業としている[2]。社名は、「豚に恋する」のではなくて「豚が恋する」ということをイメージしてつけられている[3]。
豚肉
[編集]千葉県香取郡東庄町の在田農場(有限会社アリタホックサイエンス)を契約農場としており、「恋する豚」は在田農場のブランド豚の名称でもある[1][3]。千葉県を代表する銘柄豚肉である「チバザポーク」に選ばれている[4]。品種としてはLWD三元豚で、一般的なものである[3]。エサを工夫しており、パンの耳などの廃棄される食糧に麹菌や乳酸菌を加えて発酵させたものを使っている[5][6]。他の豚肉と比べ、グルタミン酸とイノシン酸が多く含まれており、不飽和脂肪酸も多く含まれている[3][5]。
工場・食堂
[編集]千葉県香取市に、豚肉の加工場と食堂、オフィス、売店を備えた建物がある[7]。 アトリエ・ワンが設計し、第21回千葉県建築文化賞で優秀賞を受賞している[8]。イタリアのヴィラの系譜を取り入れた造りを目指しており、赤い三角屋根の建物にロッジアが設けられている[9][10]。1階は豚肉の加工場で、2階に食堂とオフィスがある[7]。2階には水平連続窓が設けられ、周囲の杉林がどこからでも見えるようになっている[10]。この窓際には窓の清掃用にキャットウォークが設けられている[11]。この建物を目当てに訪れる建築関係者も多い[12][13]。
食堂では、しゃぶしゃぶやスチームハンバーグなどを提供している[14]。駅からは離れた交通不便な場所に立地しているが、食堂は週末には行列ができる[13]。2024年の記事によれば、年間来訪者は約9万人、待ち時間はピーク時で約1時間になることもあるという[14]。建物内の販売コーナーでは精肉や加工食品、千葉県内で作られた食品が売られている[5]。
隣地には、同じく福祉楽団が運営する栗源第一薪炭供給所がある。事業のためのサツマイモ畑や森林が広がっており、スイートポテトを販売している店舗や、薪や家具の製作するための木材加工場がある[12][14][15]。
販売
[編集]東急線沿線に住む30〜40代の独身女性をターゲットに、工場直売のほか、百貨店や都内のスーパー等に精肉・ハム・ソーセージ等を卸している[16]。ビジネスクラスの機内食として使用されたこともある[8]。肉製品以外にポン酢も販売しており、2018年の記事によれば年間4万本の売り上げがある[13]。
商品のパッケージやロゴはグラフィックデザイナーの福岡南央子が手掛けている[7]。福岡はもともと会社との関わりは無く、社長の飯田が電話で連絡を取り、対面で理念を伝えて仕事を依頼した[7]。福岡は名前にインパクトと可愛らしさを感じ、名前の面白さをイメージとして伝えるために「文字のかたちに硬さとぎこちなさを与えるのが良い」と考えて書体を決めた[17]。
事業形態
[編集]社会福祉法人福祉楽団が母体となっている。障害者総合支援法の就労継続支援A型事業であり、工場・食堂で働くスタッフの半数は障害者である[18]。
「福祉を売りにも言い訳にもしない」をコンセプトとし、建築や商品パッケージ、ウェブサイトには「福祉」や「障害」の文字を入れていない[16]。味や品質、ブランドが認められることで市場に受け入れられることを目指している[7][10]。
沿革
[編集]創業者となる飯田大輔は、創業前に社会福祉法人福祉楽団が運営する形で2003年に立ち上げた特別養護老人ホームで相談員をしていた。飯田は、介護の相談を受けて家を訪れた際、課題となっているのは介護を受ける人だけにとどまるものではなく、家の貧困や子供の教育問題など、様々な要因が複合的に関連していることに気づいた[16][7]。また、ヤマト福祉財団初代理事長である小倉昌男の著書を読み、障害者の働く場所では月給1万円の給料しか支払われていないこと、小倉は月給10万円を支払えるような仕事を目指してベーカリーショップ「スワンベーカリー」を立ち上げたことを知った[13][19]。
飯田は小倉のように、月給10万円を支払えるような新たな福祉事業を設立することを決めた。当時、福祉楽団の理事長をしていた伯父の在田正則が養豚場を営んでいた[20]ことから、その豚肉をリブランディングする形で障害者の働く施設を作ろうとした[13][12]。農業や福祉は土地に根付かざるを得ないため、ここで障害者の雇用をつくることで地域活性化にもつなげようと考えた[10]。準備には5年をかけ、ドイツの製造工場を見学するなどした[12][13]。
2012年2月9日に「株式会社恋する豚研究所」を設立[16][21]し、ハム・ソーセージの製造を開始した[12]。当初、認知度を上げるために、事業の理念とともに写真家の岡村隆広による写真と詩人や学者の寄稿が収録されたコンセプトブックを作成した。コンセプトブックは商品とともに著名人に送付したほか、通販で商品を購入した客へも送付した[7]。2013年に工場併設の食堂を開業した[13]。開業当初は客が少なく、1日8人という日もあった。「研究所」という名前から、近隣住民にも飲食店だと思われなかった。しかし開業から1年半後にテレビの取材を受けたことで来客が大幅に増加した[1]。
2016年には映像作家の山中有が制作したショートムービーをYoutubeで公開した[7]。
2019年4月に2軒目の食堂として、しゃぶしゃぶ等を提供している食堂の隣に「恋する豚研究所 スチームハンバーグ」を開業した[22][23]。
2019年5月、千葉県船橋市にLUNCH TABLE船橋夏見店を開業し、食堂としてしゃぶしゃぶ、塩コショー焼き定食を提供した[24]。株式会社シルバーウッドが運営する高齢者向け住宅「銀木犀<船橋夏見>」に併設されており、銀木犀の入居者が店員として掃除や仕込み、接客、配膳・下膳などの仕事に就いた[25][26]。しかし2021年5月に閉店した[27]。
2020年6月1日、東京都世田谷区に「恋する豚研究所 コロッケカフェ」を開業した[28][29]が、2022年3月に閉業した[30]。
論評
[編集]研究者の廣井良典は、「ケア」を専門職による閉じた領域ととらえずに大きな視座でとらえるという観点について論じ、その事例として恋する豚研究所を取り上げている。そして恋する豚研究所は、農業において生産・加工・流通の作業で福祉的な機能を兼ね備えていること、さらに流通や販売にクリエーターがかかわっていることから、「福祉(ケア)と農業とアートを組み合わせた試み」であると述べている[31]。
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LUNCH TABLE船橋夏見店(2021年4月24日)
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食堂で提供される「恋する豚のしゃぶしゃぶ定食」
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恋する豚を使用したテリーヌ。DIC川村記念美術館内のレストラン「ベルヴェデーレ」にて。
アクセス
[編集]脚注
[編集]- ^ a b c グリーンズ, greenz jp. “本当に美味しいものをつくれば、お客さんは来てくれる。障害者とともに働く「恋する豚研究所」の佐藤智行さんが試行錯誤のなかで気づいたこと”. greenz.jp. 2024年10月19日閲覧。
- ^ “会社概要”. 恋する豚研究所. 2024年10月19日閲覧。
- ^ a b c d “豚を育てる”. 恋する豚研究所. 2024年10月19日閲覧。
- ^ “恋する豚”. チバザポーク販売推進協議会. 2024年11月2日閲覧。
- ^ a b c “「恋する豚研究所」が注目した、おいしい豚を育てる発酵飼料とはどんな物?”. マルコメ (2018年3月). 2024年10月25日閲覧。
- ^ “豚も恋する?【恋する豚研究所】の挑戦”. J-WAVE (2018年6月). 2024年10月25日閲覧。
- ^ a b c d e f g h “社会に広がるPRの力(4)恋する豚研究所 農業×福祉×デザインという切り口で地域を元気にする活動を展開”. 広報会議 (宣伝会議) 94: pp.137-139. (11 2016).
- ^ a b 千葉県. “第21回(平成26年度)千葉県建築文化賞表彰作品について”. 千葉県. 2022年1月31日閲覧。
- ^ 内山媛理「希望のプロジェクト:脱成長時代の建築と建築家(03)資本と自然の間で 恋する豚研究所」『建築ジャーナル』第1356巻、建築ジャーナル、=2024-07、pp.44-46、ISSN 1343-3849。
- ^ a b c d 「恋する豚研究所:設計 アトリエ・ワン」『新建築』第88巻第6号、新建築社、=2013-05、pp.162-169、ISSN 1342-5447。
- ^ “会員公開講座 アトリエ・ワン+飯田大輔さん「地域を活かし、新たな仕事をつくる」”. 伊東建築塾. 2024年10月28日閲覧。
- ^ a b c d e “【会社づくりの参考書】レストランも農業も林業も本気で取り組む、福祉楽団が実践する創造する福祉”. 日本財団. 2024年10月19日閲覧。
- ^ a b c d e f g “なぜ"行列のできる福祉事業"ができたのか "恋する豚"に客も若者も集まる理由”. PRESIDENT Online(プレジデントオンライン) (2018年2月20日). 2022年1月31日閲覧。
- ^ a b c 山根正敬「恋するような豚を育てる「恋する豚研究所」の取り組み」『さぽーと:知的障害福祉研究』第71巻第4号、日本知的障害者福祉協会、2024年、pp.20-22、ISSN 1347-6521。
- ^ “恋する豚研究所、1K good neighbors POTATO&CAFÉ、WOOD&FURNITURE”. 日本財団. 2024年10月23日閲覧。
- ^ a b c d グリーンズ, greenz jp. “人を中心に考えると、すべては統合されていく。農業も福祉も、クリエイティブに取り組む「恋する豚研究所」に見る、これからの地域ケアのあり方”. greenz.jp. 2022年1月31日閲覧。
- ^ 『企業・ブランド・プロジェクトの個性を伝える オリジナルフォントとデザイン事例54』MdN編集部、エムディエヌコーポレーション、2024年3月。ISBN 978-4295206330。
- ^ “障がいを持つ人に働ける場を…「恋する豚研究所」が目指す“福祉”の理想像”. FNNプライムオンライン. 2022年1月31日閲覧。
- ^ 「FUKUSHIを創る 商品の価値を高め、正当に勝負する 「恋する豚研究所」に見るこれからの福祉」『月刊福祉』第106巻第5号、全国社会福祉協議会、2023年5月、pp.78-81、ISSN 1341-6669。
- ^ “こだわり肉を消費者に レストラン「恋する豚研究所」オープン 香取・栗源地区”. www.chibanippo.co.jp. 2022年1月31日閲覧。
- ^ “会社概要”. 恋する豚研究所. 2024年10月30日閲覧。
- ^ “ブロックチェーンで発電所と店舗をつなぐ 恋する豚研究所、新たなシステム導入”. 日本経済新聞 (2019年7月4日). 2022年1月31日閲覧。
- ^ “公式Instagram2019年4月3日の投稿”. Instagram (2019年4月). 2024年10月23日閲覧。
- ^ “公式Instagram2019年5月17日の投稿”. Instagram (2019年5月). 2024年10月23日閲覧。
- ^ 鴨川誠、新上五島町 (2021年9月). “恋する豚研究所LUNCH TABLE船橋夏見店”仕事付き”サービス付き高齢者向け住宅”. DEMENTIA-FRIENDLY COMMUNITIES. 2024年10月23日閲覧。
- ^ “介護のサービス内容は「働いてもらうこと」”. 日経BP総合研究所 (2019年7月4日). 2020年2月21日閲覧。
- ^ “facebook2021年7月4日投稿に対する返信”. facebook. 2024年10月19日閲覧。
- ^ “下北沢の線路跡に商業施設「BONUS TRACK」がオープン”. マイナビニュース (2020年4月1日). 2022年1月31日閲覧。
- ^ “公式Instagram2020年6月1日の投稿”. Instagram (2020年6月). 2024年10月30日閲覧。
- ^ “恋する豚研究所コロッケカフェ”. パンとケーキとコーヒーと (2022年5月). 2024年5月28日閲覧。
- ^ 広井良典「ケアの倫理と公共政策」『社会保障研究』1(1)(1),国立社会保障・人口問題研究所. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/11303031 (参照 2024-10-19)
- ^ “お店・アクセス”. 恋する豚研究所. 2024年11月2日閲覧。