忘憂清楽集
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忘憂清楽集(ぼうゆうせいらくしゅう、忘憂清樂集)は、中国の古典的な囲碁に関する棋書で、現存する最古の棋書とされている。
成り立ち
[編集]北宋末期に、八代皇帝徽宗の待詔で、囲碁の国手とされる李逸民によって編集され、南宋初頭に印刷された。現存する原書は北京図書館所蔵の1式のみとされる。囲碁論、打碁の棋譜、定石、詰碁などが集められ、この時代の囲碁のルールや、打ち方についての貴重な資料となっている。
元・明代にはそれほど広まらなかったが、清代の蔵書家黄丕烈はこの本を探し求め、1802年に華陽橋の顧珊より入手する。黄丕烈の蔵書が散逸した際に、汪士鐘がこれを得、その散逸後には常熟の瞿鏞の鉄琴銅剣楼が入手、これが現在北京図書館に収蔵されている。
内容
[編集]書名
[編集]書名の「忘憂清楽」は、徽宗が囲碁(棋)について詠んだ詩である、
- 忘憂清楽在枰棋
- 仙子精攻歳未笄
- 窓下毎将図局案
- 恐防宣詔較高低
にちなんだもの。
棋論
[編集]- 「棋訣」宋代を代表する国手、劉仲甫による四編。布石(布置)、シノギ(侵凌)、戦い(用戦)、捨て石(取捨)について。
- 「棋経」仁宗の時代の翰林学士張擬による十三編。「棊経十三篇」などとも表記される。棋局、得算、権輿、合戦、虚実、自知、審局、度情、斜正、洞微、名数、品格、雑説などについて。
- 「論棋訣要雑説」張靖による。
棋譜
[編集]19局の棋譜が集められている。
- 「孫策詔呂範弈棋局面」196年の孫策と呂範の対局。最古の棋譜とされるが、偽作との説もある。
- 「晋武帝詔王武子弈棋局面」
- 「明皇詔鄭觀音弈棋局図」
- 「諸國手野戰轉換十格図」
- 「遇仙図」劉仲甫の棋譜
- 「爛柯図」西晋に王質という木こりが山中で二人の童子の碁を見ていたところ、気付いたら斧の柄が腐っていたという故事に基づく。
またこれらの記録から、当時は「切り賃」ルールが適用されていたことが判る。
その他
[編集]定石、詰碁などが収められている。
唐代の名手で、玄宗の棋待詔であった王積薪が発見したという妙手「一子解二征」も収められている。
白からの2つのシチョウを、黒1の1手で防いでいる。
出版物
[編集]日本語版
中国語版
- 『忘憂清樂集』 蜀蓉棋藝出版社 1987年
参考文献
[編集]- 平本弥星『囲碁の知・入門編』集英社 2001年
外部リンク
[編集]- 中華基督教會燕京書院囲棋学會「忘憂清樂集」
- 忘憂清楽集(塚本恵一) - ウェイバックマシン(2016年3月4日アーカイブ分)