山刀
山刀(やまかたな、やまがたな、さんとう)とは、主に山林での作業に用いられる刃物の総称である。蛮刀や山人刀(やまびとがたな、さんじんとう)と呼ばれることもある。
沖縄県には「山刀」と書いて“ヤマナジ”と読む独自の刃物が存在する(後述#琉球における山刀を参照)。
概要
[編集]山林や山間部において、樹木の刈り払いや樹皮もしくは果実の採取、または狩猟の際の止めさしや解体などの幅広い用途(場合によっては屋外での調理作業)に用いられる刃物を指す言葉で、形状や用途などに明確な定義があるものではないため、「山刀」といった場合にどのようなものを指すかは、この語が用いられる状況・文脈によって異なるが、三省堂の『大辞林』では
さん とう -たう【山刀】
やまがたな。
やま がたな【山刀】
山仕事をする人の用いる鉈(なた)のような形の刃物。
(『大辞林』第三版 より)
と定義している[1]。
やまがたな【山刀】
おもに焼畑などの山林伐採や狩猟の際の獲物の皮はぎなどに用いる刀。これを動物との格闘刺突に使用するのは危急の場合に限られる。
一般に小型で片刃のものが多く、野鍛冶(のかじ)に打たせたもの、または昔の脇指を切り縮めたものなどがある。
地方により名を異にし、九州山地ではヤマカラシ、四国西部でサッカン、中国山地でホウチョウ、青森県津軽地方でコバヤリ、秋田県阿仁でマキリ(これはアイヌ語と同じ)など各地ごとにちがっている。
(『世界大百科事典』第2版 より)
と記載されている[2]。
また、海外で同様の用途に用いられる刃物や、鉈様の刀剣類に対する和訳語として宛てられることもある。
「山刀」と呼ばれることのある刃物
[編集]- ウメガイ(ウメアイ) - サンカが用いたとされる刀剣[3]。
- 剣鉈 - 鉈のうち、剣のように切っ先があるもの。
- サバイバルナイフ - アウトドア用の多機能大型ナイフの総称。
- 山菜掘り - 山菜をはじめとした植物の採集に用いられるナイフの一種。ナイフというよりは園芸用こて(移植こて)に近いものである。
- レジャーナイフ - 山菜掘りの別称の一つ。
- タシロ - アイヌ民族の用いた汎用ナイフの一つで、マキリよりも大型のもの。
- ナガサ - マタギが用いる狩猟刀の一つ。
琉球における山刀
[編集]沖縄本島には「山刀」と書いて「ヤマナジ(やまなじ)」と読む刃物が存在しており[4]、これは刃先が大きく上に反った包丁の一種で、薪割りから調理までの幅広い用途に使われる汎用刃物である。琉球古武術にはこのヤマナジを用いた剣術も存在している[5]。
また、琉球諸島には、同じく「山刀」と書いて「ヤマカタナ(ヤマガタナ)(やまかたな(やまがたな)」と読む、緩く尖った切っ先を持つ先広の鉈がある[6]。
「山刀」の訳語が用いられることのある海外刀剣
[編集]- ククリ - ネパールのグルカ族をはじめとする諸種族、およびインドで使用される短刀の一種。
- ダホンパライ(ダホング) - フィリピンの南タガログ地方で用いられる鉈様の刀。
- ゴロック/パラング- マレー諸島で用いられる鉈様の刀剣。
- ボロ - タガログ語において日本語の「山刀」に相当する言葉で、鉈様の刃物を広く指す言葉。
- マチェテ(Machete) - ラテンアメリカで用いられる鉈もしくは汎用包丁を指す言葉。「マチェテ」はスペイン語読みであり、英語では「マシェット」となる。
脚注
[編集]- ^ Weblio 辞書 【山刀】
- ^ コトバンク 「山刀 サントウ」
- ^ 民俗学及び日本の刀剣史研究の視点からは実在について疑問視する考察もある。
- ^ 琉球・那覇方言データベース「ヤマナジ」
- ^ 本部流 - Motobu-ryū ->本部御殿手の武器術 山刀(小刀)
- ^ カニマン鍛冶工房日記 2011年12月25日「ヤマカタナ(山刀)づくり」
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参考文献
[編集]- 書籍
- 織本篤資:著『和式ナイフの世界』(ISBN 978-4890630585)並木書房:刊 1995年
- かくまつとむ:著、大橋弘:写真『日本鍛冶紀行 鉄の匠を訪ね歩く』(ISBN 978-4846526337) ワールドフォトプレス:刊 2006年
- 『mono特別編集 刃物大全 ワールド・ムック965』(ISBN 978-4846529659)ワールドフォトプレス:刊 2012年
- Webサイト
- ヨットと銃と犬たちとの日々>2014年8月4日月曜日
- カニマン鍛冶工房日記>山刀
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関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- 地産地消を楽しむ>地産地消な道具を訪ねて - ウェイバックマシン(2007年4月16日アーカイブ分) - 「山刀と呼ばれる狩猟用の剣鉈」として、日本各地の鍛冶屋と製造されている“山刀”が紹介されている