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ヒメジョオン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
姫女菀から転送)
ヒメジョオン
ヒメジョオン
ヒメジョオン
愛媛県広見町、2001年6月3日)
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : コア真正双子葉類 Core eudicots
階級なし : キク類 Asterids
階級なし : 真正キク類II Euasterids II
: キク目 Asterales
: キク科 Asteraceae
亜科 : キク亜科 Asteroideae
: シオン連 Astereae
: ムカシヨモギ属 Erigeron
: ヒメジョオン E. annuus
学名
Erigeron annuus (L.) Pers. (1807)[1]
シノニム
和名
ヒメジョオン(姫女
英名
annual fleabane、eastern daisy fleabane
亜種変種品種
  • E. a. ssp. strigosus
  • E. a. var. discoideus
  • ボウズヒメジョオン E. a. f. discoideus[1]

ヒメジョオン(姫女[4]学名: Erigeron annuus)は、キク科ムカシヨモギ属植物。背の高さが30〜150cmにもなる、白いを咲かせる越年草である。同属のハルジオンと共に、道端でよく見かける雑草である。中国植物名は、一年蓬や、白頂飛蓬ともいう[1]

名前の由来

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ヒメジョオンは漢字に直すと「姫女」となる[注 1]。「姫」は「小さい」、「女」は「中国産の野草」を表す。

同類のハルジオン(春紫)との類似より「ヒメジオン」と呼ぶのは、全く別種のヒメシオン(キク科シオン連シオン属)との混同となるため間違いである。ヒメシオン(姫紫)と区別するためにヒメジョオン(姫女)という名前が付いたという説もある。

なお、ハルジオンについては、植物学者の牧野富太郎が、同類のヒメジョオンとの類似から「ハルジョオン」の名が普及している、としている[注 2]

同じキク科シオン連ムカシヨモギ属であるヒメジョオンとハルジオン(俗称・ハルジョオン)は、見た目が非常に似ている上に、名称も紛らわしい。さらにヒメジョオンとは別種であるヒメシオンとも名称が紛らわしく、中国における「」が日本におけるヒメシオン(姫)を表す[注 1]ので、注意が必要である。

日本に入ってきた当初は「柳葉姫菊(やなぎばひめぎく)」と呼ばれたり[5]鉄道線路沿いに広がったことから「鉄道草(てつどうぐさ)」と呼ばれたりした。

分布・生育地

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北アメリカ原産[6]で、ヨーロッパアジア日本を含む)に移入分布する[7]。日本においては、北アメリカから渡来した帰化植物で、北海道本州四国九州の市街地から農地などに分布する[4]

日本には1865年頃に観葉植物として導入され、明治期には雑草となっていた[6]。現在では全国に広がり、各地で野生化している[4]在来種の植物の生育を邪魔する可能性があり、とくに自然豊かで希少な植物が多く生育する国立公園亜高山帯では問題となる[6]。そのため、ヒメジョオンは、ハルジオンとともに要注意外来生物に指定されているほか、日本の侵略的外来種ワースト100にも選定されている[6]

形態・生態

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一年草または越年草[4]。前年の秋に発芽し、根生葉を広げて越冬する[4]。若い時期は、根本から長い柄のついた卵形の(根出葉)を付ける[4]。やがて、が高く伸びると、根本の葉は無くなり、茎から出る細長い葉だけになる。互生する茎葉は披針形あるいは長楕円形で、茎と葉は黄緑色で、まばらにが生える[4]。茎は充実している[4]

花期は6 - 10月ごろ[4][5]。茎は初めは枝分かれせず、先の方で数回の枝分かれをして茎上部に散房花序をつくり、白か薄紫のを咲かせる[4]つぼみは下向きに垂れ下がらない[4]。花はヒマワリのような形だが、周りの花弁がとても細い。この花に見えるものは頭花で、小さな花の集合体であり、中央の黄色い部分は筒状花(管状花)といい、周辺の白い花びらのようなものは、舌状花という[4]。また、花弁の白い部分がやや紫がかる個体が見られることもあるが、これは清浄な空気の中で育った時にできるものである。

1個体あたり47,000以上の種子を生産し、さらにその種子の寿命が35年と長いこともあり、驚異的な繁殖能力をもっている[5]。したがって、駆除がとても難しい。

近縁種との見分け方

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ヒメジョオンとハルジオンは、花がよく似ていて混同されることがある。標準的には、ヒメジョオンの方が背が高く、花は小さくて数が多く、根本がすっきりしている。ヒメジョオンの茎には空洞がなく、ヒメジョオンの葉は茎を抱かない。これに対して、ハルジオンは、背は低く、花は大きくて少なく、根本に葉がある。また、ハルジオンのは下を向いて項垂れているような特徴がある。ハルジオンの茎には真ん中に空洞があり[5]、ハルジオンは茎を抱くように付く[5]。従って、しっかりと比べて見れば、はっきりと見分けがつく。

花だけが拡大された写真では、この両者の区別がとても難しい。標準的な花では、ヒメジョオンはハルジオンより花が一回り小さく、舌状花の数も少ないので、見分けられるが、判断が難しい場合もある。

なお、ヒメジョオンとハルジオン以外にも、ヘラバヒメジョオンなど近縁のものがあるので、注意が必要。

利用

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食べられる野草の一つとして知られる。茎が立つ前の若苗を食用とし、採取時期は関東地方以西が3 - 7月ごろ、東北地方が4 - 7月ごろ、北海道では5 - 7月ごろとされる[4]。葉は茹でて、おひたし和え物にしたり、生のまま天ぷらにする[4]。花や蕾も天ぷらに利用できる[4]。食味は「クセはなく、少しシュンギクに似た香りがある」と評されている[4]

脚注

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注釈

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  1. ^ a b ヒメジョオン(姫)のことを中国では「一年蓬」と表し、ヒメシオン(姫)のことを中国では「」と表す。なお、シオン()のことを中国でも「」と表すが、中国ではハルジオン(春)に相当する単語は無い。
  2. ^ ハルジオン“春紫の意で、著者の命名だが、ヒメジョオン(姫女)との類似からハルジョオンの名が普及している。”(牧野富太郎『牧野新日本植物図鑑 』629頁、北隆館(1961年))

出典

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  1. ^ a b c 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Erigeron annuus (L.) Pers. ヒメジョオン(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年4月6日閲覧。
  2. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Stenactis annua (L.) Cass. ex Less. ヒメジョオン(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年4月6日閲覧。
  3. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Phalacroloma annuum (L.) Dumort. ヒメジョオン(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年4月6日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p 高橋秀男監修 2003, p. 29.
  5. ^ a b c d e 岩槻秀明『街でよく見かける雑草や野草がよーくわかる本』秀和システム、2006年、242-244頁。ISBN 4-7980-1485-0 
  6. ^ a b c d 自然環境研究センター編著『日本の外来生物 : 決定版』多紀保彦監修、平凡社、2008年。ISBN 978-4-582-54241-7 
  7. ^ 国立環境研究所. “ヒメジョオン”. 侵入生物データベース ―外来種/移入種/帰化動植物情報のポータルサイト―. 2012年5月16日閲覧。

参考文献

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関連項目

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外部リンク

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