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奥田靖雄

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
奥田 靖雄おくだ やすお
人物情報
生誕 (1919-10-19) 1919年10月19日
日本の旗 日本富山県富山市
死没 2002年3月22日(2002-03-22)(82歳没)
出身校 ハルピン学院
学問
研究分野 言語学
研究機関 建国大学宮城教育大学
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奥田 靖雄(おくだ やすお、1919年10月19日 - 2002年3月22日)は、日本言語学者国語教育理論家指導者

本名は布村政雄富山県富山市出身。日露協会立専門学校ハルピン学院卒業建国大学研究院助手。戦前は民族学専攻したが、戦後、言語学に転じ、言語学研究会および教育科学研究会・国語部会を指導。宮城教育大学教授を経て、同大学名誉教授学位は、文学博士大阪大学・1993年)。

略歴

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1919年10月19日、富山県富山市愛宕町に生まれる。。1932年に富山県立富山中学校(現・富山県立富山高等学校)に入学。1933年両親が死去。布村一男を頼って満州国に渡り、新京商業学校を経て、日露協会立専門学校ハルピン学院入学。ラグビー部に入部しTB(スリークォーター・バック)として活躍。卒業後、建国大学研究院助手(地理)を務めた。ツングース民族学を専攻し、1943年ツングース族の住む満州国興安北省の村で国民学校教諭となる。

1945年に新京ヤマトホテル支配人の娘であった奥田靖子と結婚[1]。戦争終結の混乱の中、村民の提供した馬車を駆って新妻を連れて大興安嶺山脈を越え、チチハルに逃れる。大連で連合軍のロシア語通訳を務める[2]

1948年に帰国。文献入手・現地調査が難しかったため、ツングース民族学の継続を断念、言語学に転ずる。民主主義科学者協会(民科)・言語科学部会での宮島達夫鈴木重幸、野村篤司、鈴木康之らすぐれた若手学者との出会いにより、民科言語部会、その後身の言語学研究会を中心に、ロシア文法学のヴィノグラードフらの理論を独自に発展させた連語[3]研究やアスペクト研究、文論の研究などで功績を残す。

1956年に教育科学研究会・国語部会の世話人となり、以後、没するまで、同会を指導したほか、各地の民間教育研究団体の講師として全国を精力的に回り、また、長く日本教職員組合教育研究全国集会(全国教研)の助言者として、国語教育の内容と方法を明らかにし、国語教育の理論と指導過程を科学的・体系的なものに整理した。中でも、文を「絵と感情に置き換える」と説明し、伝統的な三読法(通読・精読・未読)を科学的に体系化して発展させた、形象の知覚→分析→主題の理解→総合読みなどと進める読み方教育の方法は、戦後国語教育の土台となっていった。

1963年頃から、明星学園国語部の無着成恭、須田清らや、秋田県群馬県岡山県などの教師らと協同して国語科における言語教育の教科書「にっぽんご」シリーズの編集を始める。同シリーズは、全国の教師達に熱狂的に支持され、広まっていく。

1965年に教育科学研究会・国語部会の機関誌教育国語」を創刊、亡くなる1年前まで編集に直接携わった。

1971年宮城教育大学教授となる。1984年に定年退官。1993年大阪大学より文学博士号を授与される。2000年宮城教育大学名誉教授となる。

2001年4月8日脳梗塞で倒れ、入院する。2002年3月22日に死去。

著書

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  • 『正しい日本文の書き方』(春秋社1953年全国書誌番号:54002430NCID BN10741679。)
  • 『国語科の基礎』(むぎ書房1970年全国書誌番号:71010961NCID BN03147816。)
  • 『ことばの研究・序説』(むぎ書房1985年全国書誌番号:85034096NCID BN0103571X。)
  • 『奥田靖雄著作集-文学教育編-』(むぎ書房、2011年ISBN 978-4838401185
  • 『奥田靖雄著作集-言語学編(1)-』(むぎ書房、2015年ISBN 978-4-8384-0117-8
  • 『奥田靖雄著作集-言語学編(2)-』(むぎ書房、2015年。ISBN 978-4-8384-0116-1
  • 『奥田靖雄著作集-言語学編(3)-』(むぎ書房、2015年。ISBN 978-4-8384-0115-4
  • 『奥田靖雄著作集-国語教育編-』(むぎ書房2017年ISBN 978-4-8384-0114-7
  • 『奥田靖雄著作集 補遺編』 (むぎ書房、2022年。ISBN 978-4-8384-0113-0

編著書

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参考文献

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  • 鈴木重幸「奥田靖雄の言語学-とくに文法論をめぐって-」『ことばの科学 : 言語学研究会の論文集 3』(むぎ書房 1989年11月25日発行。全国書誌番号:90011032NCID BN00843606。)
  • 花薗悟「言語学者奥田靖雄氏の満洲時代について」(『近現代東北アジア地域史研究会ニューズレター』14、近現代東北アジア地域史研究会、2002年12月7日発行。NCID AN10474734ISSN 1345-1596。)
  • 奥田靖雄追悼文集刊行委員会編『追悼 奥田靖雄』(むぎ書房 2003年7月25日発行。ISBN 4838401191
  • 『国文学 解釈と鑑賞 872 三上章と奥田靖雄』(至文堂 2004年1月1日発行。NCID AN00265261ISSN 0386-9911。)
  • 『ことばの科学 12』(むぎ書房 2009年3月22日発行。ISBN 978-4838401314工藤真由美「奥田靖雄先生の言語学」、高瀬匡雄「奥田靖雄の国語教育論 初期の国語教育論を中心に」、山東功「奥田靖雄と時枝誠記」、「奥田靖雄先生 年譜および著作目録」を収録。
  • 花薗悟「満洲国時代の奥田靖雄」(『国文学 解釈と鑑賞 950 』(至文堂 2010年7月1日発行。NCID AN00265261ISSN 0386-9911。)所収)
  • 花薗悟「民主主義科学者協会言語科学部会-昭和二十年代の奥田靖雄」(『国文学 解釈と鑑賞 957 』(至文堂 2011年1月1日発行。NCID AN00265261ISSN 0386-9911。)所収)
  • 工藤真由美「新日本語学者列伝<奥田靖雄>」(『日本語学2013年2月号 』(明治書院 2013年2月10日発行号、所収。NCID AN00007073ISSN 0288-0822。)
  • 工藤浩「奥田靖雄」(『日本語文法事典』(大修館書店 2014年6月25日発行。ISBN 978-4469012866
  • 高瀬匡雄『奥田靖雄の国語教育論 子どもたちをすぐれた日本語のにない手に』(むぎ書房 2014年10月10日発行。ISBN 978-4838401123

脚注

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  1. ^ のちのペンネームは、この妻の名にちなむ。
  2. ^ しばしば「語学の天才であった」とされることがあるが、満洲仕込みのロシア語の実力を否定するものではないにせよ、氏の本当の才はむしろ、ロシア=ソビエト言語学の理論・方法論を咀嚼した上で大量の実例から日本語の法則を一般化する力にあるだろう。
  3. ^ 語結合」の項参照