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四日市瞬時電圧低下事故

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
四日市瞬低事故から転送)

四日市瞬時電圧低下事故(よっかいちしゅんじでんあつていかじこ)あるいは、四日市瞬低事故(よっかいちしゅんていじこ)は、2010年(平成22年)12月に三重県四日市市中部電力四日市火力発電所で発生した、瞬時電圧低下事故。四日市コンビナートの工場などに、一時操業停止の影響が生じた。

原因

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2010年(平成22年)12月8日(水曜日)5時21分頃[1]、四日市火力発電所内にある変電所ガス開閉装置につながる送電線でショートが発生した。同装置は六フッ化硫黄で絶縁された導体線3本が通っているが、のちの調査で3本ともショートしていたことが判明した。これにより保護継電器が作動し、愛知県西部、三重県北部および岐阜県西部を中心とした一帯[1]で0.07秒間の電圧低下が生じた。電圧低下の割合は三重県桑名市の西名古屋変電所で約60 %、岐阜県輪之内町の南大垣変電所で約50 %であった[2]

中部電力は翌2011年2月18日に最終調査結果を発表し、事故の原因は、日立製作所1986年断路器を組み立てた際に、わずかなずれが生じたまま構成部品をボルトで連結したため、長い年月の間に力が弱まったボルトが脱落した結果、ショートが発生したと断定した[3][4][5]。そして責任は断路器を製造した日立製作所にあり、中部電力としては顧客への賠償には応じないとした。日立製作所の変電事業を継承した共同出資会社日本AEパワーシステムズ[注釈 1](当時)は責任を認め、再発防止に努めるとコメントした。

影響

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東芝四日市工場
瞬時電圧低下発生時よりNAND型フラッシュメモリ生産プラントのクリーンルームの空調が止まり、一部の生産ラインが停止した。同月10日午後3時までに復旧したが[7]、フラッシュメモリの生産再開には半年以上かかる見通しだという[2][8][注釈 2]。また停電による製造途絶により2011年1月・2月分の出荷量に減少が生じることと、100億円前後[要出典]の減収が見込まれた[2][10]。しかし当時は、新工場の竣工を直近に控えていたこともあり[11]東芝では四日市工場の操業停止の影響予想をアナウンスしていない。
コスモ石油四日市製油所
瞬時電圧低下発生時より、コジェネレーション設備17,500 kW×2基からなる自家発電設備が停止。製油所内が3時間にわたり停電し、蒸留脱硫などの設備が停止した。自家発電装置には、非常時には自動的に買電に切り替える安全装置があったが、停電のため正常に作動しなかった。同月10日より順次原油処理を再開し、通常操業に戻ったのは事故の翌週となった[2]
トヨタ車体いなべ工場
塗装ロボットのデータ一部消失により、操業開始が約1時間遅れた[2][10]

この他、四日市市の三菱化学東ソーパナソニック電工鈴鹿市本田技研工業桑名市の三重ごみ固形燃料発電所で一時操業が停止するなど[2]、三重県・岐阜県の大口需要家146件に影響が生じたと見られている[10]

脚注

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注釈

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  1. ^ 日立製作所 (50 %)・富士電機 (30 %)・明電舎 (20 %)の送配電事業を統合し2001年7月1日に設立したもの(括弧書きは合弁会社の持分)。2012年4月1日付で合弁解消に至り[6]、各事業所は元の会社に戻ることとなった。
  2. ^ 半導体製造においては原料ウェハーの投入から回路の仕上がりまでレジストの焼き込み現像・エッチング・イオン打ち込み拡散・洗浄・単結晶薄膜の成長・素子相互の配線などの行程を繰り返し行うため、回路が仕上がったウェハーが出てくるまでだけで4ないし5か月を要する[9]。装置の再調整を含め、順調に回路を焼き込んだウェハーが出てくる(=通常生産に戻る)までにはざっくり見積もっても半年以上掛かるのが普通である。なお出典の例はアナログ半導体のため直接比較はできないものの、高集積化が進むデジタル半導体ほどプロセスは繰り返し回数が増えるため、ウェハーができあがるまでだけでも長期間を要する傾向にある。かつて三菱電機(当時)西条工場で生産されていた1メガビットDRAMのダイシング前までの半導体プロセス工程の所要期間は30日だと、NHKスペシャル 『電子立国日本の自叙伝』第1回の放送で触れられている。

出典

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  1. ^ a b (プレスリリース)中部電力、2010年12月8日。https://www.chuden.co.jp/publicity/press/3120466_6926.html 愛知県、三重県および岐阜県における瞬時電圧低下について。2023年10月4日閲覧 
  2. ^ a b c d e f 瞬時電圧低下が及ぼす事業中断リスク』(pdf)(レポート)NKSJリスクマネジメント、2010年12月29日https://image.sompo-rc.co.jp/reports_org/101229_report.pdf2023年10月4日閲覧 
  3. ^ 愛知県、三重県および岐阜県における瞬時電圧低下の原因と対策について』(プレスリリース)中部電力、2011年2月18日https://www.chuden.co.jp/publicity/press/3138321_6926.html2023年10月4日閲覧 
  4. ^ (プレスリリース)中部電力、2011年2月18日。https://www.chuden.co.jp/publicity/press/__icsFiles/afieldfile/2020/02/07/0218.pdf。2023年10月4日閲覧 
  5. ^ 四日市の電圧急降下、日立製「断路器」に原因 中部電報告日本経済新聞、2011年2月18日
  6. ^ 日立製作所、富士電機、明電舎の変電・配電事業の合弁解消に関する最終合意のお知らせ』(pdf)(プレスリリース)日立製作所・富士電機・明電舎、2011年12月26日https://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2011/12/f_1226b.pdf2023年10月4日閲覧 
  7. ^ 四日市工場の通常操業開始について』(プレスリリース)東芝、2010年12月10日https://www.global.toshiba/jp/news/corporate/2010/12/pr1001.html2023年10月4日閲覧 
  8. ^ 佐藤岳大 (2019年7月1日). “第3四半期NAND市場、東芝メモリ停電で600万TB相当に影響も価格下落は続く〜7月中旬にも稼働再開予定”. 2023年10月4日閲覧。
  9. ^ 木村雅秀 (2012年2月17日). “Linear Technology社のBCP対策に学ぶ”. 日経クロステック. 2023年10月4日閲覧。
  10. ^ a b c 東芝の工場が瞬間停電で操業停止、NAND出荷量最大2割減も”. ロイター (2010年12月9日). 2023年10月4日閲覧。
  11. ^ 東芝四日市工場でNAND型フラッシュメモリ新製造棟を竣工』(プレスリリース)東芝、2011年7月12日https://www.global.toshiba/jp/news/corporate/2011/07/pr1201.html2023年10月4日閲覧