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和歌山隣人女性強盗殺人事件

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

和歌山隣人女性強盗殺人事件(わかやまりんじんじょせいごうとうさつじんじけん)とは2009年5月に発生した強盗殺人事件。

概要

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2009年5月7日和歌山県和歌山市で午後、和歌山市内の無職男性(当時54歳)が隣人宅に侵入し、ネックレスなど約30万円相当を盗んでいたが、帰宅した女性(当時68歳)に発見され、タオルなどで絞めて殺害し[1]5月9日遺体が発見された。犯人5月11日逮捕され、6月2日起訴された。

裁判

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和歌山地裁裁判裁判員裁判で行われた。9月14日裁判員の選任において41人が臨み、6人の裁判員と2人の補充裁判員が選任されて、2回の裁判が行われた[2]

9月14日の第1回公判が開かれ、被告人は「間違いありません」と起訴内容を認めた[3]。裁判では被告人が3月に配管工仕事がなくなり無職であり、3月末に受け取った給料約15万円を4月中にパチンコで使い果たしてしまい、5月1日に受け取った約12万円もパチンコにつぎ込んだ結果、事件直前の所持金は数十円と金銭的に困窮していたことが提示された[4]

9月15日の第2回公判では、被害者参加制度被害者の姪が意見陳述し、「死刑をお願いしたい」と処罰感情を述べた[5]。また、男性の裁判員が「生前にしてあげたかったことはありますか」と質問すると、姪は「子供も成長したので、母にしてやれなかったことを叔母にしてあげたいと思っていました。それがもう、お墓に手を合わせるしかできません」などと答えた[5][6]。午後からの被告人質問では、弁護側と検察側の他に裁判員も次々と被告人に疑問点をただし、被告人質問は終了した[7]。同日の論告求刑で検察側は「盗みに入ったのは遊興費に生活費を使ったためであり、有期懲役にする事情はない」として無期懲役求刑した。弁護側は起訴事実の内容を争わず、最終弁論で情状酌量の余地があると主張し、懲役25年が相当と述べ、裁判は結審した[1]

9月16日、判決公判が開かれ、和歌山地裁は被告人に対して求刑通り無期懲役の判決を言い渡した[1][8]。判決では「殺意は強固で、犯行態様も執拗で残忍」と指摘。一方で被告に有利な事情として、当初は空き巣目的だったことや、被告がこれまで犯罪と無縁の生活を送ってきたことなどを挙げた[8]。 判決言い渡し後、裁判長は「裁判員、裁判官からのメッセージを伝えます」と前置きし「今後の人生、現実から逃げることなく、罪を償ってほしい」と説諭した[8]。 閉廷後、裁判員6人と補充裁判員2人全員が記者会見に出席。それぞれ「いい経験になった」「参加してよかった」などと充実感を口にした。しかし「意見はどれぐらい判決に反映されたか」という質問に対しては、地裁の職員が守秘義務に反するとして回答を制止した[8]

検察と弁護人の双方が控訴しなかったため、10月1日に無期懲役の判決が確定した[9]

強盗殺人が裁判となったことや無期懲役の求刑及び判決[8]、無期懲役判決が確定したことは、裁判員裁判としてはこの事件が初めてだった[9]

脚注

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  1. ^ a b c “裁判員裁判、無期懲役の判決 和歌山の強盗殺人事件”. 朝日新聞. (2009年9月16日). オリジナルの2009年9月22日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20090922222905/http://www.asahi.com/national/update/0916/OSK200909160050.html 
  2. ^ “裁判員の選任手続き実施 千葉と和歌山”. 朝日新聞. (2009年9月14日). オリジナルの2024年10月6日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20241006170649/http://www.asahi.com/special/080201/TKY200909140310.html 
  3. ^ “【裁判員 和歌山地裁詳報】被告「借金で肩身狭いのがイヤで盗み決意」 (1/2ページ)”. MSN産経ニュース. (2009年9月14日). https://web.archive.org/web/20090924053333/http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/090914/trl0909142218022-n1.htm 2009年9月24日閲覧。 
  4. ^ “【裁判員 和歌山地裁冒頭陳述】「口封じに殺害」か「頭の中真っ白に」か (1/2ページ)”. MSN産経ニュース. (2009年9月14日). https://web.archive.org/web/20090924044624/http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/090914/trl0909142305030-n1.htm 2009年9月24日閲覧。 
  5. ^ a b “【裁判員 和歌山地裁】「胸がしめつけられる思い」遺族が処罰感情を訴える”. MSN産経ニュース. (2009年9月15日). https://web.archive.org/web/20090923014737/http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/090915/trl0909151132005-n1.htm 2009年9月23日閲覧。 
  6. ^ “【裁判員 和歌山地裁詳報】被告「とにかく死んでもらわなければ、と」 (1/3ページ)”. MSN産経ニュース. (2009年9月15日). https://web.archive.org/web/20090924052808/http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/090915/trl0909152205019-n1.htm 2009年9月24日閲覧。 
  7. ^ “【裁判員 和歌山地裁詳報】被告「とにかく死んでもらわなければ、と」 (3/3ページ)”. MSN産経ニュース. (2009年9月15日). https://web.archive.org/web/20090924044624/http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/090915/trl0909152205019-n3.htm 2009年9月24日閲覧。 
  8. ^ a b c d e “【裁判員 和歌山地裁】初の無期懲役判決”. MSN産経ニュース. (2009年9月16日). https://web.archive.org/web/20090923141921/http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/090916/trl0909161550003-n1.htm 2009年9月23日閲覧。 
  9. ^ a b “裁判員裁判初の無期確定、和歌山の強盗殺人”. 読売新聞. (2009年10月1日). https://web.archive.org/web/20091008024212/http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20091001-OYT1T00378.htm 2009年10月8日閲覧。