口語訳聖書
口語訳聖書(こうごやくせいしょ)[1]とは、口語文に翻訳された聖書のことである。日本国においては、日本聖書協会が出版した『聖書 口語訳[注 1]』を指す場合もある。
聖書が各国語に翻訳される際、口語は変遷して行くものであり、時間と共に文語と口語に乖離が起こる[3]。この乖離を埋めるための翻訳は、その時代の口語と近しい文体となり、文語訳聖書との対置として口語訳聖書と呼ばれる。
ドイツ語
[編集]- ルター訳(1892年改訂版)
18世紀のドイツでは、マルティン・ルター訳の聖書が300年間そのまま使用されていた[4]。一方で、出版者による差異が生じ、誤植や改変の箇所が無視できない数となった[4]。そこで、ドイツ福音教会会議(独: Deutsche Evangelische Kirchenkonferenz)は、ルターによる最終稿の完全な復元と、正書法に基づく現代語化を決定し、1892年に教会が責任も持って行う公的な校訂版(独: Kirchenamtliche Revision)を刊行した[3][4][5]。
英語
[編集]- 新改訂標準訳
『改訂訳(英: Revised Version・RV)』は、1611年に完成した『ジェームズ王欽定訳(英: King James Version・KJV)』を英国で大幅に改訂して1885年に完成したものである[6]。また、RVに参加した米国の聖書学者によって1901年に『アメリカ標準訳(英: American Standard Version・ASV)』が発行された[6]。ASVは、1952年の『改訂標準訳(英: Revised Standard Version・RSV)』を経て、さらに約40年後の1989年に出版された『新改訂標準訳(英: New Revised Standard Version・NRSV)』では、過去50年間の学究的成果を反映し、1950年代以降英語に起こった変化にも注意を払われたものとなった[6]。
日本語
[編集]- 新約聖書 口語訳
- フェデリコ・バルバロ(伊: Federico Barbaro)は、1910年(明治43年)刊行の『我主イエズスキリストの新約聖書』を参考にして、1953年(昭和28年)に『新約聖書 口語訳』をドン・ボスコ社[注 2]から出版した[8]。
- 口語聖書
- 日本聖書協会では、1950年(昭和25年)ごろになると戦後の現代かなづかい、当用漢字の制定などによる国語の変化や聖書学の急速な進歩で、1887年(明治20年)刊の『舊約全書』並びに1917年(大正6年)刊の『改譯新約聖書』への改訳要求が次第に高まってきたことを受け、1951年(昭和26年)4月、米英の聖書協会の協力を得て翻訳を始めた[9][10]。この翻訳は、初めて日本人の聖書学者によってなされ、1955年(昭和30年)までに完成し『口語聖書[注 1]』として出版された[9]。
脚註
[編集]註釈
[編集]出典
[編集]- ^ “戦後の口語訳ー現代日本語への翻訳”. 聖書和訳史概説. 明治学院大学図書館デジタルアーカイブス. 明治学院大学図書館. 2023年1月14日閲覧。
- ^ “口語聖書 (日本聖書協会): 1955”. 書誌詳細. 国立国会図書館サーチ. 国立国会図書館. 2023年1月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年1月16日閲覧。
- ^ a b 「宗教改革500年と聖書」『ソア』第44号、日本聖書協会、東京、2017年3月1日、3-9頁、2023年1月10日閲覧。
- ^ a b c “Dreihundert Jahre Wildwuchs”. Die Geschichte der Lutherbibel. Bibel. Deutsche Bibelgesellschaft. 2023年6月9日閲覧。
- ^ 吉田新「聖書翻訳の過去・現在・未来 ルター訳聖書2017年改訂版について」『東北学院大学キリスト教文化研究所紀要』第35号、東北学院大学キリスト教文化研究所、仙台、2017年6月30日、43-49頁、ISSN 1348-4621、全国書誌番号:01000924。
- ^ a b c 本多峰子「英語聖書の歴史」『ソア』第39号、日本聖書協会、東京、2012年3月1日、3-7頁、2023年1月10日閲覧。
- ^ “代表就任のご挨拶”. お知らせ. ドン・ボスコ社. カトリック・サレジオ修道会 (2022年4月1日). 2023年1月8日閲覧。
- ^ 高橋虔「日本における聖書の翻訳」『日本の神学』第1984巻第23号、日本基督教学会、東京、1984年、195-204頁、doi:10.5873/nihonnoshingaku.1984.195、ISSN 0285-4848、全国書誌番号:00012017。
- ^ a b 『口語新約聖書について』日本聖書協会、東京、1954年。 NCID BA45547987 。2023年1月8日閲覧。
- ^ “和訳史06 文語訳から口語訳へ”. 聖書翻訳の歴史. 聖書を知る. 日本聖書協会. 2023年1月8日閲覧。
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- 口語訳聖書(旧約:1955年版、新約:1954年版)