南から来た男 (アルバム)
『南から来た男』 | ||||
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クリストファー・クロス の スタジオ・アルバム | ||||
リリース | ||||
録音 |
1979年7月 ワーナー・ブラザース・レコーディング・スタジオ、カリフォルニア州ノース・ハリウッド Pecan Street Studios、テキサス州オースティン | |||
ジャンル | ソフトロック、ヨット・ロック | |||
時間 | ||||
レーベル | ワーナー・ブラザース・レコード | |||
プロデュース | マイケル・オマーティアン | |||
クリストファー・クロス アルバム 年表 | ||||
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専門評論家によるレビュー | |
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レビュー・スコア | |
出典 | 評価 |
AllMusic | [1] |
『南から来た男』(みなみからきたおとこ、Christopher Cross)は原題ではセルフタイトルとなっているクリストファー・クロスのデビュー・アルバムで、1979年半ばにレコーディングされ12月にリリースされたこのアルバムは、3M デジタル・レコーディング・システム (3M Digital Recording System) を活用した初期のデジタル・レコーディング・アルバムのひとつである[2]。1981年のグラミー賞では、ピンク・フロイドのザ・ウォールを抑えて最優秀アルバム賞を受賞し[3]、1970年代末から1980年代初めにかけての最も影響力のあったソフトロックのアルバムのひとつと評されている[4][5]。この最優秀アルバム賞のグラミーは、本作のプロデューサーであるマイケル・オマーティアンに与えられた。
評価
[編集]スティーヴン・トマス・アールワインによると、このアルバムは「大ヒットとなり、広く賞賛され、少なくとも業界関係者の間では支持され(批評家たちはじっくり聴きなおしもしなかった)、マルチ=プラチナのセールスといくつものグラミーを獲得した。オールミュージックにおける後年の立場からの批評でアールワインは、本作のソフトロックのアルバムとしての成功は、ほとんどの聴き手にとって意味のないことだろうと述べ、本作が、その一貫した良質な楽曲とクロスの技巧的に優れたミュージシャンシップによって「当時、主流だったアルバム群の中の最良の部分であることは間違いない」とし、「その通り、彼は感傷的な雰囲気を好み、バラードをとても甘美にでき、また彼の旋律は豊かで楽曲の構成はしっかりしていて、そうした強固な基礎の上に、古典的といえるほどの輝きが、とりわけ深く印象に残るマイケル・マクドナルドのバッキング・ボーカルも含め、スタジオ・ミュージシャンのプロや友人たちによって提供されている」と述べている[1]。
このアルバムはまた、後年において、ヨット・ロックと称されるジャンルの鍵となる作品として賞賛されている。2009年にチャック・エディは雑誌『スピン (Spin)』にリストを発表したこのジャンルに欠かせない8点のアルバムのひとつとして、本作を挙げた[6]。雑誌『Vinyl Me, Please』のティモシー・マルコム (Timothy Malcolm) は、2017年に発表した最良のヨット・ロック・アルバム10点のひとつに本作を入れ、「このアルバムは、実のところヨット・ロックのジャンルからは音響的には少し外れており、アコースティック・ギターやストリングスが強調されている。しかし、そのメッセージはこのジャンルにぴったりであり、内面の平安を求める愚か者のためのものであって、そして何より、極めてスムーズに流れるのである」と述べている[7]。2018年にオンライン公開された The Vinyl District におけるマイケル・H・リトル (Michael H. Little) は、本作をこのジャンル最高のアルバムとし、また最もスムーズなアルバムのひとつだとも述べ、クロスを「ソフトロックの顔 (the face of soft rock)」にしたと評した[8]。
一方、ローリング・ストーンが選ぶオールタイムベストアルバム500 (Rolling Stone's 500 Greatest Albums of All Time) は、いずれのバージョンにおいても、このアルバムを取り上げていない[9]。
トラックリスト
[編集]全曲、クリストファー・クロス作詞作曲。
- セイ・ユール・ビー・マイン / Say You'll Be Mine - 2:53
- 愛はまぼろし / I Really Don't Know Anymore - 3:49
- スピニング / Spinning - 3:59:ヴァレリー・カーターとのデュエット曲
- もう二度と / Never Be the Same - 4:40
- 哀れなシャーリー / Poor Shirley - 4:20
- 風立ちぬ / Ride Like the Wind - 4:30
- ライト・イズ・オン / The Light Is On - 4:07
- セイリング / Sailing - 4:14
- ジゴロの芸人 / Minstrel Gigolo - 6:00
(以上、アナログ盤LPでは、「風立ちぬ」以降がB面[10]) - マリー・アン / Mary Ann - 2:52:2012年リリースの日本盤リマスターCDボーナス・トラック[11]
「マリー・アン」は、ヤマハ音楽振興会が主催した1980年の第11回世界歌謡祭のために書かれ、1980年に日本独自盤としてシングルがリリースされた楽曲である [12][13]。
パーソネル
[編集]- ラリー・カールトン - ギター・ソロ (2, 7)
- ヴァレリー・カーター - リード・ボーカル、バックグラウンド・ボーカル (3)
- レニー・カストロ (Lenny Castro) - パーカッション (1, 2, 4-7, 9)
- クリストファー・クロス - 編曲、リード・ボーカル、エレクトリック・ギター、アコースティック・ギター (1, 4, 6-9)、バックグラウンド・ボーカル (1, 5-8)、 ギター・ソロ (5, 6)
- Assa Drori - コンサートマスター
- ヴィクター・フェルドマン - ヴィブラフォン (3, 4)、パーカッション (3, 7, 8)
- チャック・フィンドレー - トランペット、フリューゲルホルン (3)
- ジェイ・グレイドン - ギター・ソロ (1, 4)
- ドン・ヘンリー - バックグラウンド・ボーカル (7)
- ジム・ホーン - サクソフォーン
- エリック・ジョンソン - ギター・ソロ (9)
- ジャッキー・ケルソ - サクソフォーン
- ニコレット・ラーソン - バックグラウンド・ボーカル (1)
- Myrna Matthews - バックグラウンド・ボーカル (4)
- Marty McCall - バックグラウンド・ボーカル (4)
- Lew McCreary - トロンボーン
- マイケル・マクドナルド - バックグラウンド・ボーカル (2, 6)
- Rob Meurer - 編曲、シンセサイザー (2-4, 6-8)、エレクトリックピアノ (3, 4, 7, 8)、チェレスタ (3)、アコースティック・ピアノ (5, 9)、オルガン (5)
- マイケル・オマーティアン - 編曲、アコースティック・ピアノ (1-4, 6, 7, 8)、シンセサイザー (9)、バックグラウンド・ボーカル (9)
- ストーミー・オマーティアン - バックグラウンド・ボーカル (4)
- Tomás Ramírez - サクソフォーン (9)
- Don Roberts - サクソフォーン
- Andy Salmon - エレクトリックベース
- J.D.サウザー - バックグラウンド・ボーカル (7)
- トミー・テイラー - ドラムス
プロダクション
[編集]- プロデューサー - マイケル・オマーティアン
- アシスタント・プロデューサー - Michael Ostin
- エンジニア/ミックス - Chet Himes
- セカンド・エンジニア - Stuart Gitlin
- マスタリング - Bobby Hata
- アートワーク - Danny Henderson and James Flournoy Holmes
- デザイン - James Flournoy Holmes and Wonder Graphics
- フラミンゴ・コンセプト - Jim Newhouse
チャート
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週間チャート[編集]
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年間チャート[編集]
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シングル – Billboard(アメリカ合衆国)
年 | シングル | チャート | 順位 |
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1980 | "Ride Like the Wind" | Pop Singles | 2 |
1980 | "Sailing" | Pop Singles | 1 |
1980 | "Never Be the Same" | Adult Contemporary | 1 |
1980 | "Never Be the Same" | Pop Singles | 15 |
1981 | "Say You'll Be Mine" | Pop Singles | 20 |
認定
[編集]国/地域 | 認定 | 認定/売上数 |
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オーストラリア (ARIA)[20] | Platinum | 70,000^ |
フランス (SNEP)[21] | Platinum | 300,000* |
ドイツ (BVMI)[22] | Gold | 250,000^ |
イタリア (FIMI)[23] | Gold | 200,000* |
オランダ (NVPI)[24] | Gold | 50,000^ |
ニュージーランド (RMNZ)[25] | Gold | 7,500^ |
スペイン (PROMUSICAE)[26] | Gold | 50,000^ |
イギリス (BPI)[27] | Platinum | 300,000^ |
アメリカ合衆国 (RIAA)[28] | 5× Platinum | 5,000,000^ |
* 認定のみに基づく売上数 |
受賞
[編集]年 | 部門 | 受賞 |
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1981 | 最優秀アルバム賞 | 南から来た男 |
最優秀ボーカル伴奏インストゥルメンタル編曲賞 | セイリング / "Sailing" | |
最優秀レコード賞 | ||
最優秀楽曲賞 | ||
最優秀新人賞 | クリストファー・クロス |
脚注
[編集]- ^ a b 南から来た男 - オールミュージック
- ^ Jim McCullaugh (November 1, 1980), “Digital the Major Topic For N.Y. AES Parley”, Billboard "The Christopher Cross LP, at number 32, uses the 3M digital technology"
- ^ Zach Schonfeld (February 15, 2016), The Most Ridiculous 'Album of the Year' Winners in Grammy History, Newsweek December 13, 2016閲覧。
- ^ Grammy Album of the Year winners 1959 – 2018-The Telegraph
- ^ Best New Artists Who Also Won Album Of The Year|GRAMMY.com
- ^ Eddy, Chuck (January 1, 2009). “8 Essential Yacht Rock Albums”. Spin June 8, 2020閲覧。.
- ^ Malcolm, Timothy (February 20, 2017). “The 10 Best Yacht Rock Albums To Own On Vinyl”. Vinyl Me, Please June 8, 2020閲覧。.
- ^ Little, Michael H. (July 11, 2018). “Graded on a Curve: Christopher Cross, Christopher Cross”. The Vinyl District. June 8, 2020閲覧。
- ^ Donoughue, Paul (26 September 2020). “Rolling Stone's 500 'greatest albums of all time' list makes us question the meaning of classic”. 2021年3月27日閲覧。
- ^ Christopher Cross – Christopher Cross - Discogs - 1979年US盤LP
- ^ Christopher Cross – Christopher Cross - Discogs - 2012年日本盤リマスターCD
- ^ “第11回世界歌謡祭 World Popular Song Festival in Tokyo '80”. ヤマハ音楽振興会. 2021年3月27日閲覧。
- ^ 南から来た男 - Discogs (発売一覧)
- ^ "Dutchcharts.nl – Christopher Cross – Christopher Cross" (in Dutch). Hung Medien.
- ^ "Charts.org.nz – Christopher Cross – Christopher Cross". Hung Medien.
- ^ "Christopher Cross | Artist | Official Charts". UK Albums Chart.
- ^ "Christopher Cross Chart History (Billboard 200)". Billboard.
- ^ “Top Billboard 200 Albums – Year-End 1980”. Billboard. February 26, 2021閲覧。
- ^ “Top Billboard 200 Albums – Year-End 1981”. Billboard. February 26, 2021閲覧。
- ^ “Platinum In Oz”. p. 35 (June 11, 1983). April 17, 2020閲覧。
- ^ "French album certifications – Christopher Cross – 1er Album" (French). Syndicat National de l'Édition Phonographique. 2019年8月26日閲覧。
- ^ "Gold-/Platin-Datenbank (Christopher Cross; 'Christopher Cross')" (German). Bundesverband Musikindustrie. 2019年8月26日閲覧。
- ^ “Sale 40 – Lot 492: Italian Gold Record Award For Christopher Cross”. Ira & Larry Goldberg Coins & Collectibles (2011年). April 30, 2013閲覧。
- ^ "Dutch album certifications – Christopher Cross – Christopher Cross" (Dutch). Nederlandse Vereniging van Producenten en Importeurs van beeld- en geluidsdragers. 2019年8月26日閲覧。 Enter Christopher Cross in the "Artiest of titel" box. Select 1983 in the drop-down menu saying "Alle jaargangen".
- ^ “New Zealand album certifications – Christopher Cross – 1er Album”. Recorded Music NZ. November 16, 2019閲覧。[リンク切れ]
- ^ Salaverrie, Fernando (September 2005) (スペイン語). Sólo éxitos: año a año, 1959–2002 (1st ed.). Madrid: Fundación Autor/SGAE. p. 957. ISBN 84-8048-639-2 August 26, 2019閲覧。
- ^ "British album certifications – Christopher Cross – Christopher Cross". British Phonographic Industry.
{{cite web}}
: Cite webテンプレートでは|access-date=
引数が必須です。 (説明) Select albums in the Format field. Select Platinum in the Certification field. Type Christopher Cross in the "Search BPI Awards" field and then press Enter. - ^ "American album certifications – Christopher Cross – Christopher Cross". Recording Industry Association of America. 2019年8月26日閲覧。
- ^ Christopher Cross|Artist|www.grammy.com
- ^ 23rd Annual GRAMMY Awards|1980|Grammy.com
- ^ 23rd Annual GRAMMY Awards|GRAMMY.com